(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112049
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100826
(22)【出願日】2023-06-20
(62)【分割の表示】P 2019172759の分割
【原出願日】2019-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 整
(57)【要約】
【課題】すれ違い運転の支援の開始のタイミングがばらつくことを抑えることができる運転支援装置を提供すること。
【解決手段】車両1の周辺に位置する他車両を検出する他車両検出部30と、他車両の情報に基づいて車両1の周辺の状況を乗員に報知する報知部31と、を備える運転支援装置であって、報知部31は、車両1の車速を除く条件により構成される他車両と車両1とのすれ違いの報知条件を有し、報知条件成立時に、すれ違い地点に到達するまでの到達時間が所定時間以下の場合に報知を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周辺に位置する他車両を検出する他車両検出部と、前記他車両の情報に基づいて前記自車両の周辺の状況を乗員に報知する報知部とを備える運転支援装置であって、
前記報知部は、前記自車両の車速を除く条件により構成される前記他車両と前記自車両とのすれ違いの報知条件を有し、前記報知条件成立時に、すれ違い地点に到達するまでの到達時間が所定時間以下の場合に報知を実行する運転支援装置。
【請求項2】
前記報知部は、前記報知条件成立時の、前記すれ違い地点から前記自車両の現在地点までの距離と、前記自車両の現在車速と、に基づいて、前記すれ違い地点に到達するまでの到達時間を算出する請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記すれ違い地点は、前記自車両の前記他車両側の端部と、前記他車両の前記自車両側の端部とがすれ違う地点である請求項1または請求項2に記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、道路中で自車両と対向車両がすれ違うことのできる位置を推定し、そのすれ違い可能位置を表示装置に表示させることが記載されている。
【0003】
また、主に道路幅と自車両の車幅と対向車両の車幅とに基づいて、道路幅が狭い道路でのすれ違いである狭路すれ違いであるかを判定し、狭路すれ違いであると判定した場合に、自車両のすれ違い運転を支援するための制御を実行するものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、すれ違い地点を事前に推定した場合であっても、例えば対向車両または自車両が、お互いに接近している間に減速または加速してしまうと、すれ違い地点が変わってしまい、適切なタイミングで支援するための制御を実行できない。
【0006】
前方の道路幅、自車両または対向車量の速度に応じて、カメラの映像を表示させるようなすれ違い運転の支援の場合、自車両または対向車両の速度に閾値を設定して、車速が閾値以下になったときに支援を開始するようにすると、車速が閾値以下になるタイミングによって支援のタイミングが変わってしまうため、適切なタイミングで支援するための制御を実行できない。
【0007】
例えば、すれ違い地点に接近する際の自車両の車速が、すれ違い運転の支援の開始の条件の閾値より高い車速で接近して、すれ違い地点の直前で急減速する場合に支援が遅れてしまうが、単に車速の閾値を上げるだけでは、低い車速で接近する場合に、支援が早く開始されてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、すれ違い運転の支援の開始のタイミングがばらつくことを抑えることができる運転支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明は、自車両の周辺に位置する他車両を検出する他車両検出部と、前記他車両の情報に基づいて前記自車両の周辺の状況を乗員に報知する報知部とを備える運転支援装置であって、前記報知部は、前記自車両の車速を除く条件により構成される前記他車両と前記自車両とのすれ違いの報知条件を有し、前記報知条件成立時に、すれ違い地点に到達するまでの到達時間が所定時間以下の場合に報知を実行するものである。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によれば、すれ違い運転の支援の開始のタイミングがばらつくことを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る運転支援装置を搭載した車両の要部を示す機能構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る運転支援装置によって表示装置に表示される支援画像を説明するための概念図である。
【
図3】
図3は、本発明の第一実施例に係る運転支援装置によって算出される幅方向相対量、特に、重なり量を説明するための概念図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係る運転支援装置によって算出される幅方向相対量、特に、離隔量を説明するための概念図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係る運転支援装置によって算出される幅方向相対率、特に、重なり率を説明するための概念図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係る運転支援装置によって算出される幅方向相対率、特に、離隔率を説明するための概念図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施例に係る運転支援装置の運転支援動作を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、本発明の一実施例に係る運転支援装置の車速閾値変更動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係る運転支援装置は、自車両の周辺に位置する他車両を検出する他車両検出部と、他車両の情報に基づいて自車両の周辺の状況を乗員に報知する報知部とを備える運転支援装置であって、報知部は、自車両の車速を除く条件により構成される他車両と自車両とのすれ違いの報知条件を有し、報知条件成立時に、すれ違い地点に到達するまでの到達時間が所定時間以下の場合に報知を実行するよう構成されている。
【0013】
これにより、本発明の一実施の形態に係る運転支援装置は、すれ違い運転の支援の開始のタイミングがばらつくことを抑えることができる。
【実施例0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施例に係る運転支援装置を搭載した車両について説明する。
【0015】
図1に示すように、車両1は、第1カメラ2と、第2カメラ3と、第3カメラ4と、報知装置5と、ECU(Electronic Control Unit)6とを含んで構成される。第1カメラ2は、自車両としての車両1以外の他車両を含む車両1の周辺を撮影する。本実施例において、第1カメラ2は、車両1の進行方向を撮影するように設けられている。具体的には、第1カメラ2は、車両1の対向車を撮影できるように設けられている。
【0016】
第2カメラ3は、運転席から視認させることができない車両1の周辺の画像を撮影するように設けられている。具体的には、第2カメラ3は、他車両とのすれ違い走行を支援する支援画像を撮影する。
【0017】
第2カメラ3は、車両1の運転席側と反対側、すなわち、助手席側のドアミラーに少なくともレンズが下前方に露出するように埋め込まれている。本実施例において、第2カメラ3は、車両1の助手席側の側方を一部に含む周辺の路面を撮影する。例えば、第2カメラ3は、フロントフェンダーより前方から第2カメラ3の設置位置付近までの範囲を撮影する。
【0018】
例えば、幅が狭い道路で車両1が他車両とすれ違い走行を行う場合には、電信柱、電柱、ガードレール、側溝及び縁石などの助手席側の障害物に車両1を当てることなく、他車両を避ける必要がある。第2カメラ3は、車両1と助手席側の障害物との位置関係を運転者に視認させる画像を撮影する。
【0019】
第3カメラ4は、車両1の運転席側の側方の画像を撮影するように設けられている。具体的には、第3カメラ4は、すれ違い走行を行っている他車両を撮影することができるように設けられている。第3カメラ4は、例えば、運転席側のドアミラーに少なくともレンズが車両1の運転席側の側方に露出するように埋め込まれている。
【0020】
本実施例において、報知装置5は、第2カメラ3によって撮影された画像などを表示する表示装置7を含んで構成される。例えば、表示装置7は、設定された目的地までの経路を案内するナビゲーションシステムの表示装置によって構成される。
【0021】
表示装置7は、ナビゲーションシステムの表示装置以外の表示装置によって構成してもよい。すなわち、表示装置7は、運転席に着座している運転者が視認できるものであればいかなるものでもよく、例えば、運転席とフロントガラスとの間に移動させることができるように設けられた透光性を有する表示パネルや、画像を表示することが可能なフロントミラーやサイドミラーによって構成されてもよい。また、表示装置7は、2次元的に画像を表示したり投影したりするものでなくでも、例えば3Dホログラムのように3次元的に像を再生するものによって構成されてもよい。
【0022】
図2の上段は、幅が狭い道路で車両1が他車両とすれ違い走行を行っている状態で、助手席側の障害物として、電柱10がある例を示している。この場合、
図2の下段に示すように、表示装置7には、車両1の助手席側の側方の画像11と、電柱10の画像12と、車両1と車両幅方向に重なり合わない領域を表す画像13とを含む支援画像が表示される。
【0023】
ECU6は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、フラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0024】
コンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをECU6として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、当該コンピュータユニットにおいて、CPUがROMに格納されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、本実施例におけるECU6として機能する。
【0025】
ECU6の入力ポートには、第1カメラ2と第2カメラ3と第3カメラ4とに加えて、車速を検出する車速センサ20及び操舵角を検出する操舵角検出部としての操舵角センサ21などの車両1の各種状態を検出する各種センサ類が接続されている。ECU6の出力ポートには、報知装置5を含む各種制御対象類が接続されている。
【0026】
ECU6は、各種センサ類から得られる情報に基づいて、各種制御対象類を制御する。例えば、ECU6は、車両1の周辺に位置する他車両を検出する他車両検出部30としての機能を有する。具体的には、ECU6は、第1カメラ2によって撮影された周辺画像からエッジ検出及びパターンマッチングなどによって、車両1に最も位置が近い他車両の画像を検出する。
【0027】
ECU6は、他車両の情報に基づいて車両1の周辺の状況を乗員に報知する報知部31としての機能を有する。ECU6は、報知装置5を制御することにより、車両1の周辺の状況を乗員に報知する。具体的には、ECU6は、第1カメラ2によって撮影された周辺画像から検出した他車両の画像に基づいて、第2カメラ3によって撮影された画像を表示装置7に表示させる。
【0028】
ECU6は、車両1の他車両側の端部と他車両の車両1側の端部との車両幅方向における距離である幅方向相対量に少なくとも応じて、車両1の周辺の状況を乗員に報知する。幅方向相対量は、車両1と他車両とが車両幅方向に重なり合う場合には重なり量を表し、車両1と他車両とが車両幅方向に離れている場合には離隔量を表す。
【0029】
車両1の他車両側の端部とは、車両1のなかで車両幅方向において最も他車両側に位置する端のことをいう。他車両の車両1側の端部とは、他車両のなかで車両幅方向において最も車両1側に位置する端のことをいう。
【0030】
例えば、
図3に示すように、車両1と他車両25とが車両幅方向に重なり合う場合には、幅方向相対量Lは、重なり量を表し、本実施例においては、正の値で表す。一方、
図4に示すように、車両1と他車両25とが車両幅方向に離れている場合には、幅方向相対量Lは、離隔量を表し、本実施例においては、負の値で表す。
図3及び
図4では、いずれも端部Pが車両1の他車両25側の端部であり、端部Qが他車両25の車両1側の端部である。
【0031】
すなわち、本実施例において、幅方向相対量Lが、正である場合には、車両1と他車両25との車両幅方向の重なり量を表し、負である場合には、その絶対値が車両1と他車両25との車両幅方向の離隔量を表す。
【0032】
図1において、ECU6は、車両1と他車両とが車両幅方向に重なり合う場合には重なり量が第1閾値TH1以下であること、車両1と他車両とが車両幅方向に離れている場合には離隔量が第2閾値TH2以下であることを条件として、車両1の周辺の状況を報知装置5に報知させる。
【0033】
第1閾値TH1及び第2閾値TH2は、予め実験的に定められた適合値である。なお、本実施例においては、後述するように第1カメラ2によって撮影された周辺画像をもとに、報知装置5による報知を制御するため、第1閾値TH1及び第2閾値TH2は、後述する第1上限値UL1及び第2上限値UL2に予め換算されている。
【0034】
ECU6は、第1カメラ2によって撮影された周辺画像を取得する機能と、車両1と他車両とが車両幅方向に重なり合う場合には周辺画像から重なり量と車両1の車幅Wとの割合を表す重なり率R1を算出し、車両1と他車両とが車両幅方向に離れている場合には周辺画像から離隔量と車両1の車幅Wとの割合を表す離隔率R2を算出する機能とを有する制御部32としての機能を有する。
【0035】
前述したように、ECU6は、第1カメラ2によって撮影された周辺画像から他車両の画像を検出する。本実施例において、ECU6は、
図5に示すように、周辺画像において、他車両の画像を取り囲む矩形(以下、単に「他車両領域」という)40の底辺を軸として、この軸と車両1の通行領域に相当する領域41の他車両画像側との交点を基準点Oとし、車両1の通行領域に相当する領域側(図中左側)を正の領域、その対称側(図中右側)を負の領域として、重なり率R1及び離隔率R2を算出する。
【0036】
車両1の通行領域とは、周辺画像上の上下方向各位置に車両1が存在する場合に対応する車両1の車幅を示すものであり、周辺画像上で上方になるほど車両1の通行領域は小さくなる。
【0037】
図5において、ECU6は、周辺画像において、基準点Oから他車両領域40の車両1側の辺までのピクセル数を周辺画像における幅方向相対量lとして算出する。ECU6は、周辺画像において、車両1の通行領域に相当する領域41の軸上の幅のピクセル数を周辺画像における車幅wとする。
【0038】
車幅wとは、車両1が他車両と車両前後方向において同じ位置に存在すると仮定する場合に、周辺画像に写る車両1の車幅を表す。ECU6は、重なり率R1をl/wによって算出する。
【0039】
図6において、ECU6は、離隔率R2を重なり率R1と同様に算出する。ただし、周辺画像における幅方向相対量lは、負になるので、ECU6は、離隔率R2を|l/w|によって算出する。
【0040】
重なり率R1及び離隔率R2は、幅方向相対率Rとして一意に扱うこともでき、幅方向相対率Rは、l/wによって算出することができる。すなわち、車両1と他車両とが車両幅方向に重なり合う場合には幅方向相対率Rは、正となり、車両1と他車両とが車両幅方向に離れている場合には幅方向相対率Rは、負となる。
【0041】
図1において、ECU6は、車両1と他車両とが車両幅方向に重なり合う場合には、重なり率R1が第1上限値UL1以下であること、車両1と他車両とが車両幅方向に離れている場合には、離隔率R2が第2上限値UL2以下であることを条件として、車両1の周辺の状況を乗員に報知する。
【0042】
すなわち、ECU6は、幅方向相対率Rが第1上限値UL1(以下、「上限値UL」ともいう)以下、かつ、第2上限値UL2の反数(以下、「下限値DL」ともいう)以上であることを条件として、車両1の周辺の状況を乗員に報知する。
【0043】
上限値ULは、車両1の前を走行している先行車をすれ違い走行が必要な他車両として検出しないように考慮された値に設定される。本実施例においては、重なり量が車両1の車幅W(
図3又は
図4参照)の半分であること、すなわち上限値ULは50%に設定されている。
【0044】
下限値DLは、他車両とすれ違い走行をするときの余裕が考慮された値に設定される。本実施例においては、離隔量が車両1の車幅Wの1/4であること、すなわち下限値DLは-25%に設定されている。
【0045】
ECU6は、車両1の周辺の状況を乗員に報知する報知条件として、幅方向相対率Rが上限値UL以下、かつ、下限値DL以上であることに加えて、車両1と他車両との車間距離D(
図3又は
図4参照)が所定値Dth以下であることを含む。
【0046】
所定値Dthは、他車両とすれ違い走行を開始するときの一般的な車間距離として、本実施例においては、10mに設定されている。
【0047】
車間距離Dは、第1カメラ2をステレオカメラによって構成することで、ECU6が測定できるようにしてもよく、レーザーレーダやミリ波レーダ等の測距センサを車両1に設けることで、ECU6が測定できるようにしてもよい。
【0048】
ECU6は、報知条件が成立した状態で、車速センサ20によって検出された車速が車速閾値Vth以下となったことを契機として、車両1の周辺の状況を乗員に報知する。
【0049】
ECU6は、報知条件が成立した状態が所定時間継続している場合、車速閾値Vthを変更する。
【0050】
ECU6は、報知条件が成立した状態が所定時間継続していて、かつ車両1が減速状態である場合、車速閾値Vthを変更する。減速状態は、例えば、ブレーキペダルが操作されていること、減速度が検出されていること、などにより判定される。
【0051】
ECU6は、例えば、他車両検出部30の検出周期ごとに実行される報知条件が成立しているか否かを判定する処理において、報知条件が継続して成立している回数をカウントし、カウント値が所定値以上になったことで、報知条件が成立した状態が所定時間継続していると判定する。
【0052】
報知条件が成立しているか否かを判定する処理は、例えば、第1カメラ2のフレームレート(情報取得タイミングの周期)で実行される。
【0053】
ECU6は、車速閾値Vthを変更する場合、通常の車速閾値Vthである第1車速よりも高速な第2車速に変更する。
【0054】
ECU6は、他車両と車両1とのすれ違い完了条件が成立したか否かを判定するすれ違い完了判定部33としての機能を有する。すれ違い完了条件は、ECU6によって検出される他車両の基準点が車両1の基準点よりも車両1の前後方向で後側となったら成立する。
【0055】
他車両の基準点は、他車両の前後方向における前端から後端までの範囲内に含まれる。車両1の基準点は、車両1の前後方向における前端から後端までの範囲内に含まれる。具体的には、他車両の基準点は、他車両の前端、後端、及び、前後方向における中点のいずれかに相当する。車両1の基準点は、車両1の前端、後端、及び、前後方向における中点のいずれかに相当する。
【0056】
具体的には、ECU6は、他車両の基準点を通る基準線が車両1の基準点を通る基準線よりも車両1の前後方向で後側となったら、すれ違い完了条件が成立したと判定する。他車両の基準線は、他車両の前後方向における前端から後端までの範囲内を垂直に通る。車両1の基準線は、車両1の前後方向における前端から後端までの範囲内を垂直に通る。
【0057】
以上のように構成された本実施例の運転支援装置による運転支援動作について
図7を参照して説明する。なお、以下に説明する運転支援動作は、ECU6が作動している間、繰り返し実行される。
【0058】
まず、ステップS1において、ECU6は、他車両を検出しているか否かを判断する。この処理において、ECU6は、前回に実行したステップS1において、他車両を検出している場合には、検出済みの他車両を継続して検出しているか否かを判断する。
【0059】
一方、ステップS1を最初に実行する場合、又は、前回に実行したステップS1において、他車両を検出していない場合には、ECU6は、新たな他車両を検出しているか否かを判断する。
【0060】
他車両を検出していないと判断した場合には、ECU6は、運転支援動作を終了する。他車両を検出していると判断した場合には、ECU6は、ステップS2の処理を実行する。
【0061】
ステップS2において、ECU6は、ステップS1で検出している他車両(以下、「検出他車両」ともいう)と車両1との車間距離Dを算出する。ステップS2の処理を実行した後、ECU6は、ステップS3の処理を実行する。
【0062】
ステップS3において、ECU6は、車間距離Dが所定値Dth以下であるか否かを判断する。この処理において、ECU6は、車間距離Dが所定値Dth以下であれば、車両1と検出他車両とがすれ違い走行をする可能性があると判断し、車間距離Dが所定値Dth以下でなければ、車両1と検出他車両とがすれ違い走行をする状態ではないと判断する。
【0063】
車間距離Dが所定値Dth以下でないと判断した場合には、ECU6は、運転支援動作を終了する。車間距離Dが所定値Dth以下であると判断した場合には、ECU6は、ステップS4の処理を実行する。
【0064】
ステップS4において、ECU6は、車速センサ20によって検出された車速が車速閾値Vth以下であるか否かを判断する。この処理において、ECU6は、車速が車速閾値Vth以下であれば、車両1と検出他車両とがすれ違い走行をする可能性があると判断し、車速が車速閾値Vth以下でなければ、車両1と検出他車両とが狭路ですれ違い走行をする状態ではないと判断する。
【0065】
車速が車速閾値Vth以下でないと判断した場合には、ECU6は、運転支援動作を終了する。車速が車速閾値Vth以下であると判断した場合には、ECU6は、ステップS5の処理を実行する。
【0066】
ステップS5において、ECU6は、周辺画像における幅方向相対量lを算出する。具体的に
図5を参照して説明すると、ECU6は、周辺画像における基準点Oから他車両領域40の車両1側の辺までのピクセル数を周辺画像における幅方向相対量lとして算出する。ステップS5の処理を実行した後、ECU6は、ステップS6の処理を実行する。
【0067】
ステップS6において、ECU6は、幅方向相対率Rを算出する。具体的に
図5を参照して説明すると、ECU6は、周辺画像における車両1の通行領域に相当する領域41の軸上の幅のピクセル数を周辺画像における車幅wとして算出する。
【0068】
ECU6は、ステップS5で算出した幅方向相対量lを周辺画像における車幅wで除することにより、幅方向相対率Rを算出する。ステップS6の処理を実行した後、ECU6は、ステップS7の処理を実行する。
【0069】
ステップS7において、ECU6は、幅方向相対率Rが上限値UL以下、かつ、下限値DL以上であるか否かを判断する。この処理において、ECU6は、幅方向相対率Rが上限値UL以下、かつ、下限値DL以上であれば、車両1と検出他車両とがすれ違い走行をする可能性があると判断し、幅方向相対率Rが上限値UL以下でない、又は、下限値DL以上でなければ、車両1と検出他車両とがすれ違い走行をする状態ではないと判断する。
【0070】
幅方向相対率Rが上限値UL以下でない、又は、下限値DL以上でないと判断した場合には、ECU6は、運転支援動作を終了する。幅方向相対率Rが上限値UL以下、かつ、下限値DL以上であると判断した場合には、ECU6は、ステップS8の処理を実行する。
【0071】
ステップS8において、ECU6は、車両1の周辺の状況を報知装置5に報知させていなければ、車両1の周辺の状況を報知装置5に報知させる。本実施例において、ECU6は、第2カメラ3によって撮影された支援画像を表示装置7に表示させていなければ、第2カメラ3によって撮影された支援画像を表示装置7に表示させる。ステップS10の処理を実行した後、ECU6は、運転支援動作を終了する。すなわち、ECU6は、報知装置5による報知を継続する。
【0072】
なお、本実施例の運転支援動作における他車両とは、上述するように車両1に最も位置が近い他車両を表す。
【0073】
本実施例の運転支援装置による車速閾値変更動作について
図8を参照して説明する。なお、以下に説明する車速閾値変更動作は、ECU6が作動している間、第1カメラ2の画像取得ごとに(フレームレートで)実行される。
【0074】
まず、ステップS11において、ECU6は、他車両を検出しているか否かを判断する。この処理において、ECU6は、前回に実行したステップS11において、他車両を検出している場合には、検出済みの他車両を継続して検出しているか否かを判断する。
【0075】
一方、ステップS11を最初に実行する場合、又は、前回に実行したステップS11において、他車両を検出していない場合には、ECU6は、新たな他車両を検出しているか否かを判断する。
【0076】
他車両を検出していないと判断した場合には、ECU6は、ステップS20の処理を実行する。他車両を検出していると判断した場合には、ECU6は、ステップS12の処理を実行する。
【0077】
ステップS12において、ECU6は、ステップS11で検出している他車両(以下、「検出他車両」ともいう)と車両1との車間距離Dを算出する。ステップS12の処理を実行した後、ECU6は、ステップS13の処理を実行する。
【0078】
ステップS13において、ECU6は、車間距離Dが所定値Dth以下であるか否かを判断する。この処理において、ECU6は、車間距離Dが所定値Dth以下であれば、車両1と検出他車両とがすれ違い走行をする可能性があると判断し、車間距離Dが所定値Dth以下でなければ、車両1と検出他車両とがすれ違い走行をする状態ではないと判断する。
【0079】
車間距離Dが所定値Dth以下でないと判断した場合には、ECU6は、ステップS20の処理を実行する。車間距離Dが所定値Dth以下であると判断した場合には、ECU6は、ステップS14の処理を実行する。
【0080】
ステップS14において、ECU6は、周辺画像における幅方向相対量lを算出する。具体的に
図5を参照して説明すると、ECU6は、周辺画像における基準点Oから他車両領域40の車両1側の辺までのピクセル数を周辺画像における幅方向相対量lとして算出する。ステップS14の処理を実行した後、ECU6は、ステップS15の処理を実行する。
【0081】
ステップS15において、ECU6は、幅方向相対率Rを算出する。具体的に
図5を参照して説明すると、ECU6は、周辺画像における車両1の通行領域に相当する領域41の軸上の幅のピクセル数を周辺画像における車幅wとして算出する。
【0082】
ECU6は、ステップS14で算出した幅方向相対量lを周辺画像における車幅wで除することにより、幅方向相対率Rを算出する。ステップS15の処理を実行した後、ECU6は、ステップS16の処理を実行する。
【0083】
ステップS16において、ECU6は、幅方向相対率Rが上限値UL以下、かつ、下限値DL以上であるか否かを判断する。この処理において、ECU6は、幅方向相対率Rが上限値UL以下、かつ、下限値DL以上であれば、車両1と検出他車両とがすれ違い走行をする可能性があると判断し、幅方向相対率Rが上限値UL以下でない、又は、下限値DL以上でなければ、車両1と検出他車両とがすれ違い走行をする状態ではないと判断する。
【0084】
幅方向相対率Rが上限値UL以下でない、又は、下限値DL以上でないと判断した場合には、ECU6は、ステップS20の処理を実行する。幅方向相対率Rが上限値UL以下、かつ、下限値DL以上であると判断した場合には、ECU6は、ステップS17の処理を実行する。
【0085】
ステップS17において、ECU6は、カウンタCに1を加算する。すなわち、ECU6は、報知条件が成立している時間を計測する。ステップS17の処理を実行した後、ECU6は、ステップS18の処理を実行する。
【0086】
ステップS18において、ECU6は、カウンタCの値が所定値N以上である否かを判断する。この処理において、ECU6は、カウンタCの値が所定値N以上であれば、報知条件が成立した状態が所定時間以上継続したと判断し、カウンタCの値が所定値N以上でなければ、報知条件が成立した状態が所定時間以上継続していないと判断する。
【0087】
カウンタCの値が所定値N以上でないと判断した場合には、ECU6は、車速閾値変更動作を終了する。カウンタCの値が所定値N以上であると判断した場合には、ECU6は、ステップS19の処理を実行する。
【0088】
ステップS19において、ECU6は、車速閾値Vthに第2車速を設定し、車速閾値変更動作を終了する。
【0089】
ステップS20において、ECU6は、カウンタCの値をゼロにリセットする。ステップS20の処理を実行した後、ECU6は、ステップS21の処理を実行する。
【0090】
ステップS21において、ECU6は、車速閾値Vthに第1車速を設定し、車速閾値変更動作を終了する。
【0091】
以上のように、本実施例に係る運転支援装置は、他車両と車両1とのすれ違いの報知条件が所定時間継続して成立した場合、報知を行なうか否かを判定するための車速閾値Vthを変更するため、不要な報知を抑制することができる。また、すれ違うための減速が遅れている場合でも、早期に車両1の周辺の状況を報知することができ、すれ違い運転の支援の開始のタイミングがばらつくことを抑えることができる。
【0092】
また、他車両と車両1とのすれ違いの報知条件が所定時間継続して成立し、かつ車両1が減速状態である場合、車速閾値Vthを変更する。車両1が減速状態であり、かつ報知条件が所定時間継続して成立している場合は、運転者による減速動作が遅れていることが考えられる。よって、報知条件が所定時間継続して成立し、かつ車両1が減速状態である場合は、車両1の周辺の状況を報知することによってすれ違い運転の支援の開始のタイミングがばらつくことを抑えることができる。
【0093】
また、所定時間は、他車両検出部30の検出周期ごとに報知条件が成立しているか否かを判定する処理を実行し、報知条件が継続して成立する回数により計測される。カメラ等のセンサ類の検出周期(例えば、フレームレート)ごとに報知条件が成立しているかの判定を行なうため、検出周期が短いセンサ類の結果を用いることで、遅滞なく車両1の周辺の状況を報知することができる。また、報知条件の判定とともに車速閾値の変更を行なっているため、早期に車速閾値の変更を反映させることができ、時間を計測する場合に比べ早期に車両1の周辺の状況を報知することができる。
【0094】
また、車速閾値Vthを第1車速より速度の高い第2車速に変更するため、車速が高い場合でも早期に車両1の周辺の状況を報知することができる。
【0095】
なお、本実施例において、幅が狭い道路で車両1が他車両とすれ違い走行を行う場合の例について説明したが、第1カメラ2、第2カメラ3及び第3カメラ4の位置及び姿勢を後方側に調整することで、本実施例に係る運転支援装置は、幅が狭い道路で車両1が他車両と後進のすれ違い走行を行うことを支援することもできる。
【0096】
幅が狭い道路で車両1が他車両と後進のすれ違い走行を行うことを支援する場合には、ECU6は、他車両の基準点が車両1の基準点よりも車両1の前後方向で後側となったら、すれ違い完了条件が成立すると判定するのに代えて、他車両の基準点が車両1の基準点よりも車両1の前後方向で前側となったら、すれ違い完了条件が成立すると判定する。
【0097】
また、本実施例で参照した各図においては、車両1が左側通行の道路を走行している例を示しているが、本実施例は、車両1が右側通行の道路を走行する場合であっても、各図における車両1に対する左右を入れ替えることにより、容易に適用させることができる。
【0098】
また、本実施例においては、報知装置5を表示装置7によって構成した例について説明した。これに対し、報知装置5は、警報を発する警報装置によって構成してもよい。報知装置5を構成する警報装置は、車室内に音を出力するスピーカ、運転席に向けて光を照射するランプ及び、運転席に着座している運転者に振動を伝える偏心モータなど運転席に着座している運転者に警報を発することができるデバイスであれば、いかなるものでもよく、2つ以上のデバイスを組み合わせて報知装置5の警報装置を構成してもよい。また、報知装置5は、第2カメラ3によって撮影された画像などを表示する表示装置と、警報を発する警報装置とによって構成してもよい。
【0099】
例えば、報知装置5を表示装置7と警報装置とによって構成し、幅方向相対率Rが負の場合には、表示装置7の表示による報知を行い、幅方向相対率Rが正となった場合には、表示装置7の表示による報知に加えて、警報装置に警報を発させるようにしてもよい。
【0100】
更に、幅方向相対率Rが正の状態で、幅方向相対率Rが大きくなるにつれて、警報装置に発させる警報の強度を高くしていくようにしてもよい。このように、幅方向相対率Rに応じて報知装置5による報知の態様を変化させるようにしてもよい。
【0101】
また、本実施例においては、フロントフェンダーより前方から第2カメラ3の設置位置付近までの範囲が第2カメラ3によって撮影された画像が表示装置7に表示されるが、本実施例に係る運転支援装置は、第2カメラ3より後方や、後輪付近が撮影された画像を表示装置7に表示させるようにしてもよい。さらに、本実施例に係る運転支援装置は、撮影された画像ではなく、予め設定された画像を表示装置7に表示するようにしてもよい。
【0102】
また、本実施例においては、ECU6が他車両検出部30と、報知部31と、制御部32と、すれ違い完了判定部33との機能を有するものであるが、ECU6は、1つでなくても、異なる複数のECUによって構成されてもよい。
【0103】
また、本実施例における他車両には、自動車に限らず、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスなどが含まれる。
【0104】
また、
図5及び
図6を参照して説明した幅方向相対率Rの算出するために用いられる車両1の通行領域に相当する領域41は、広めに変更することができるようにしてもよい。これにより、車幅をはみ出すように荷物を積載した車両に対しても、適切な情報を報知することができる。また、車両の運転に不安を感じている運転手に対して、余裕をもったすれ違い走行を行わせることができる。
【0105】
また、本実施例において、ECU6が、車両1の他車両側の端部と他車両の車両1側の端部との車両幅方向における距離である幅方向相対量から算出される幅方向相対率に少なくとも応じて、車両1の周辺の状況を乗員に報知するため、幅方向相対率は、100%を超えることはない。
【0106】
これに対し、例えば、車両1が左側通行の道路を走行している場合には、ECU6は、車両1の右端と他車両の右端との相対的な距離から幅方向相対率を算出するようにしてもよい。
【0107】
この場合には、幅方向相対率は、100%を超えることがある。幅方向相対率が100%を超えた場合には、ECU6は、左折する先行車両や左寄りに走行している先行車両をすれ違い走行をする他車両として検出しないため、車両1の周辺の状況を乗員に報知しない。
【0108】
また、本実施例においては、上述した運転支援動作によって支援画像を表示装置7に表示させるモード、支援画像を表示装置7に表示させないモード、及び、無条件に支援画像を表示装置7に表示させるモードのうち、いずれかのモードに切り替えることができるスイッチを車両1に設けてもよい。
【0109】
また、本実施例においては、第3カメラ4によって撮影された検出画像51からすれ違い完了条件が成立したか否かを判定したが、車車間通信などの他の態様により検出または取得される車両1と他車両との相対位置情報を用いて、すれ違い完了条件が成立したか否かを判定するようにしてもよい。
【0110】
また、本実施例においては、各基準点を「前端」、「後端」、及び、「前後方向における中点」としたが、これに限定されず、実験や適合によって「自車両と他車両がすれ違い完了した」と見なせる任意の点を基準点としてもよい。
【0111】
本実施例の他の態様としては、報知条件が成立していて、すれ違い地点に到達するまでの到達時間が所定時間以下の場合に、車両1の周辺の状況を報知装置5に報知させる。
【0112】
具体的には、
図1におけるECU6は、他車両と車両1との車間距離Dと、他車両と車両1の車速と、に基づいて他車両と車両1がすれ違いを開始する地点であるすれ違い地点を算出する。すれ違い地点は、例えば、他車両と車両1が現在の車速のまま走行した場合に、他車両の前後方向における前端と車両1の前後方向の前端とがすれ違う地点である。
【0113】
ECU6は、すれ違い地点から車両1の現在地点までの距離を現在の車両1の車速で除算して車両1がすれ違い地点に到達するまでの到達時間を算出する。
【0114】
以上のように、本実施例の他の態様に係る運転支援装置は、報知条件が成立していることに加え、すれ違い地点に到達するまでの到達時間が所定時間以下の場合に、車両1の周辺の状況を報知する。このため、車速によらず、すれ違い地点に到達するまでの到達時間により車両1の周辺の状況を報知することができ、すれ違い運転の支援の開始のタイミングがばらつくことを抑えることができる。
【0115】
本実施例では、各種センサ情報に基づきECU6が各種の判定や算出を行なう例について説明したが、これに限らず、車両1が外部サーバ等の車外装置と通信可能な通信部を備え、該通信部から送信された各種センサの検出情報に基づき車外装置によって各種の判定や算出が行なわれ、その判定結果や算出結果を通信部で受信して、その受信した判定結果や算出結果を用いて各種制御を行なってもよい。
【0116】
以上、本発明の実施例について開示したが、本発明の範囲を逸脱することなく本実施例に変更を加えられ得ることは明白である。本発明の実施例は、このような変更が加えられた等価物が特許請求の範囲に記載された発明に含まれることを前提として開示されている。