(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112076
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】経口リファマイシンSV組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/395 20060101AFI20230803BHJP
A61K 9/32 20060101ALI20230803BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230803BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230803BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230803BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230803BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230803BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230803BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
A61K31/395
A61K9/32
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/24
A61P1/04
A61P1/12
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023101775
(22)【出願日】2023-06-21
(62)【分割の表示】P 2020526001の分割
【原出願日】2018-11-07
(31)【優先権主張番号】62/584,226
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505400004
【氏名又は名称】コスモ・テクノロジーズ・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルイジ モロ
(72)【発明者】
【氏名】ルイージ マリア ロンゴ
(57)【要約】
【課題】リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の持続放出プロファイルを得るために配合される、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩を含む経口医薬組成物の提供。
【解決手段】約600mgのリファマイシンSV、もしくはその製薬上許容される塩と、1種または複数の製薬上許容される賦形剤と、少なくとも1種の親油性化合物と、少なくとも1種の親水性化合物と、胃耐性コーティングとを含む、固体剤形の形態の経口医薬組成物であって、経口医薬組成物は、実質的に小腸において、リファマイシンSV、もしくはその製薬上許容される塩を放出するように配合されており、経口医薬組成物は、放出制御用、遅延放出用、および/または持続放出用に配合されていることを特徴とする、経口医薬組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約600mgのリファマイシンSV、もしくはその製薬上許容される塩と、
1種または複数の製薬上許容される賦形剤と、
不飽和または水素化アルコール(セチルアルコール、ステアリン酸アルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、またはオレイルアルコールなど)または脂肪酸(パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ラウリル酸、オレイン酸など)、その塩、そのエステル;ステアリンなどの脂肪酸モノ、ジ、またはトリグリセリドまたはそれらのポリエトキシル化誘導体;蜜蝋またはカルナバワックスなどのワックス;セラミド;コレステロール誘導体またはその混合物から選択される、少なくとも1種の親油性化合物と、
セルロース誘導体およびそれらのエステルおよび/または塩、例えば、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはナトリウムヒドロキシプロピルメチルセルロース)、アルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース(ナトリウムカルボキシメチルセルロースなど);ポリビニルアルコール;カルボキシビニル誘導体;デキストリン、ペクチン、デンプンおよびそれらの誘導体などの多糖類;天然または合成ゴム;アルギン酸;キシリトール、マルチトール、またはマンニトールなどの多価アルコールから選択される、少なくとも1種の親水性化合物と、
pH5~pH6.5の範囲のpHを有する水性媒体中に暴露される際に溶解および/または破壊される、胃耐性コーティングと
を含む、固体剤形の形態の経口医薬組成物であって、前記経口医薬組成物は、実質的に小腸において、リファマイシンSV、もしくはその製薬上許容される塩を放出するように配合されており、前記経口医薬組成物は、放出制御用、遅延放出用、および/または持続放出用に配合されていることを特徴とする、経口医薬組成物。
【請求項2】
少なくとも1種の両親媒性化合物をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の経口医薬組成物。
【請求項3】
前記経口医薬組成物は、実質的に、前記固体剤形が、腸の近位部の幽門通路内を通過した後に、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩を放出するように配合されていることを特徴とする、請求項1に記載の経口医薬組成物。
【請求項4】
前記固体剤形が約pH5~約pH6.5の範囲のpHを有する水性媒体中に置かれるとき、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩が前記固体剤形から放出されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の経口医薬組成物。
【請求項5】
前記固体剤形が、コアおよび前記コアを覆う胃耐性コーティングを含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の経口医薬組成物。
【請求項6】
対象への前記固体剤形の1または複数の投与により、前記対象の血漿中で約9.50時間のリファマイシンSVのtmax,0-24が示されることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の経口医薬組成物。
【請求項7】
対象への前記固体剤形の3以上の投与により、
前記対象の血漿中で約2.30±2.14ng/mLのリファマイシンSVのCmax,0-6が示される、
前記対象の血漿中で約6.23±4.52ng/mLのリファマイシンSVのCmax,0-24が示される、
前記対象の血漿中で約3.34±2.96(ng)(h)/mLのリファマイシンSVのAUC0-6が示される、および/または
ヒトへの3の経口医薬組成物の投与後に、前記対象の血漿中で約947.92±20.24(ng)(h)/mlのリファマイシンSVのAUC0-24が示される、
ことを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の経口医薬組成物。
【請求項8】
前記経口医薬組成物が投与される対象におけるリファマイシンSVの尿排出率が、前記対象に投与されるリファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の総量の1%以下であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の経口医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物が、2時間、USP<711>に準拠するUSP溶解装置II中に置かれる場合に、前記医薬組成物が、前記医薬組成物を構成する、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の量の10%以下を放出し、前記溶解装置が、pH1および37±0.5oCの温度で、0.1M塩酸および0.4%マクロゴールセトステアリルエーテルを含む1000mLの水溶液を含み、前記水溶液が、50rpmの速度で攪拌されることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の経口医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物が、1時間、USP<711>に準拠するUSP溶解装置II中に置かれる場合に、前記医薬組成物が、前記医薬組成物を構成する、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の量の約20%以下を放出し、前記溶解装置が、pH6.4および37±0.5oCの温度で、900mLの水性緩衝液を含み、前記水溶液が、100rpmの速度で攪拌されることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の経口医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物が、6時間、USP<711>に準拠するUSP溶解装置II中に置かれる場合に、前記医薬組成物が、前記医薬組成物を構成する、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の量の約50%以上を放出し、前記溶解装置が、pH6.4および37±0.5oCの温度で、900mLの水性緩衝液を含み、前記水溶液が、100rpmの速度で攪拌されることを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載の経口医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物が、約2重量%以下のリファマイシンS、または約1重量%以下のリファマイシンBを含有することを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の経口医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物が、10,000ppm以下のエタノールを含有することを特徴とする、請求項1から12のいずれかに記載の経口医薬組成物。
【請求項14】
前記固体剤形が、
3か月間、25oCおよび60%相対湿度での前記固体剤形の貯蔵後に2重量%未満のリファマイシンSを含有する、
3か月間、25oCおよび60%相対湿度での前記固体剤形の貯蔵後に1重量%未満のリファマイシンBを含有する、
1か月間、40oCおよび75%相対湿度での前記固体剤形の貯蔵後に2重量%未満のリファマイシンSを含有する、
1か月間、40oCおよび75%相対湿度での前記固体剤形の貯蔵後に1重量%未満のリファマイシンBを含有する、
1か月間、30oCおよび65%相対湿度での前記固体剤形の貯蔵後に2重量%未満のリファマイシンSを含有する、または
1か月間、30oCおよび65%相対湿度での前記固体剤形の貯蔵後に1重量%未満のリファマイシンBを含有する、
ことを特徴とする、請求項1から13のいずれかに記載の経口医薬組成物。
【請求項15】
前記固体剤形が、パッケージに収容され、前記パッケージが、熱および光から前記固体剤形を保護するための材料を含むことを特徴とする、請求項1から14のいずれかに記載の経口医薬組成物。
【請求項16】
前記固体剤形が、錠剤の形態であることを特徴とする、請求項1から15のいずれかに記載の経口医薬組成物。
【請求項17】
前記錠剤が、錠剤コアおよび前記錠剤コアを覆う胃耐性コーティングを含むことを特徴とする、請求項16に記載の経口医薬組成物。
【請求項18】
過敏性腸症候群(IBS)、下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)、下痢型および便秘型が交互に起こる過敏性腸症候群(IBS-M)の予防および/または治療に使用するための、請求項1から17のいずれかに記載の経口医薬組成物。
【請求項19】
前記経口医薬組成物が、約600mg、約1200mgまたは約1800mgの一日量で投与されることを特徴とする、請求項18に記載の使用のための、請求項1から17のいずれかに記載の経口医薬組成物。
【請求項20】
前記組成物が、一日に1、2、または3回投与されることを特徴とする、請求項18に記載の使用のための、請求項1から17のいずれかに記載の経口医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
腸管感染症は、さまざまな起源の外来病原体による腸のコロニー形成によって引き起こされるか、または通常存在する腸内微生物が毒性になることによって引き起こされる一般的な疾患である。
【0002】
ヒトの腸は、2つの異なる部分、すなわち、近位部と遠位部に分かれていることが知られており、
-近位部は、「小腸(small intestine)」または「小腸(small bowel)」と呼ばれ、頭尾方向に、十二指腸、空腸および回腸という名前で知られている3つの区域によって形成され、2つの生物学的弁、すなわち幽門と回盲弁との間に含まれ、
-遠位部は、「大腸(large intestine)」または「大腸(large bowel)」と呼ばれ、結腸および直腸-肛門(recto-anus)によって形成される(非特許文献1:Faller A, Scevola G. Anatomia e Fisiologia del Corpo Umano (Anatomy and Physiology of the Human Body). Vol I. Edizioni Minerva Medica, Turin, 1973, pp. 235-254)。腸のこの部分には、順に、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸および直腸として知られるいくつかの区域が含まれる。
【0003】
小腸と大腸の2つの部分は、小腸から大腸への腸内容物の通過を可能とするが、通常の状態では、大腸から小腸への通過を不可能にする回盲弁により解剖学的に機能的に分離されている。加えて、解剖学的構造の観点から、小腸は、大腸とはかなり異なっており、とりわけ機能的な観点(非特許文献2:Braga P C. Enteric microflora and its regulation. In Drugs in Gastroenterology. Raven Press, New York, 1991, pp. 501-508)から、小腸においては、大きな吸収面と特定の筋肉リング(muscular ring)によってサポートされた強い蠕動の存在し、大腸においては、表層上皮(fenestratum epithelium)および明白で整然とした陰窩の存在する点において、かなり異なっている。
【0004】
各解剖学的領域のpH条件、栄養素、酵素の存在、および異なる通過時間などの局所的な環境要因によって、どの微生物種が優勢であるかが決まり、特定の領域の細菌濃度が決まる。小腸内の細菌の濃度は、領域間の微小環境と解剖学的差異のために、大腸内の細菌の濃度よりも一般にはるかに低い。
【0005】
小腸と大腸の生理解剖学的特徴のこれらの多くの違いは、小腸を犠牲にして発生するいくつかの病状の特徴的な性質を説明する。
【0006】
消化器系の疾患は、異なる病因病理を有し、それらの診断を可能にする様々な症状を示すことに注意すべきである。表現「炎症性腸疾患」すなわちIBDは、主に潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む一連の慢性炎症性腸病変を示し、「過敏性腸症候群」すなわちIBSと混同してはならない。IBSは、分類されて、IBS-C(便秘型)またはIBS-D(下痢型)として提示され得るが、IBS-M(混合型)の提示では、混合した症状または両方の症状が交互に現れる期間が、同じ個人に存在してもよく、4番目のカテゴリIBS-U(未分類)も提案されているが、このサブカテゴリは、時間とともに個人ごとに変化し得る。
【0007】
IBDとは異なり、IBSは、粘膜の明らかな解剖学的障害を示さないため、主に機能性疾患とみなされる。純粋に臨床的な見地から、IBSは、腹痛、腹部膨満および腸機能の変化(下痢、便秘、またはその両方)による腸機能の障害を特徴とする。IBSの病因と病態形成は不明であるが、その発症の原因にはさまざまな要因が考えられ得る。これらの要因には、大抵、腸壁の平滑筋の緊張と活動の調節の異常、細菌性の刺激性物質の影響、心理的および感情的な影響が含まれる。IBSの病態生理と原因がよく理解されていないため、これまでの治療アプローチは、主に症状管理に焦点を当て、日常の機能を維持し、患者の生活の質を向上させてきた。今日までの治療介入の主力は、下痢のための鎮痙薬および止痢薬による薬理学的治療、便秘のための運動促進および高繊維食、ならびに疾患の機能的症状の緩和を目的とした胃腸運動性治療を規準化するための低用量抗うつ薬による支持療法である。ライフスタイル、食事の変更、心理カウンセリングについてのアドバイスを含む他の治療介入も使用される。しかし、IBSは、食事療法およびライフスタイルに関するアドバイス、カウンセリング、食物繊維の補給、心理療法、および/または薬物療法など、現在の治療オプションにしばしば反応しない。
【0008】
最近、プレグナンX受容体(PXR)、腸内微生物代謝産物を含む、さまざまな化学的刺激を感知して応答するリガンド活性化核受容体が、腸上皮で、炎症反応を調節して、創傷を増強し、炎症条件下でのバリア機能の治癒と維持する重要な役割を果たすことが報告されている(非特許文献3:Garg A et al in The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics、359:91-101、October 2016)。ヒトでは、PXRは、小腸、結腸、肝臓、および胆嚢で豊富に発現し、胃ではそれほど発現しない。PXRの活性化は、代謝酵素(CYP3A4など)を誘発し、生体異物とエンドバイオティクスの薬物動態に影響を与える可能性がある。さらに、PXRを活性化すると、炎症性サイトカインおよびケモカインの遺伝子発現を調節する重要な転写因子である核因子kB(NF-kB)のシグナル伝達が減衰することが示されている。消化管におけるPXRの分布と機能は、PXR機能が粘膜恒常性維持に役割を果たす可能性があることを示唆している。したがって、PXRの活性化は、IBS患者の治療効果に潜在的に貢献し得る。
【0009】
炎症および免疫調節不全は、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)および憩室疾患などのいくつかの胃腸(GI)疾患の一因となる。炎症の2つの主要な調節因子であるPXRとNFκBの間の相互クロストークの変化は、IBDとIBSの炎症メカニズムの調節不全に役割を果たし得る。
【0010】
生体異物への絶え間ない曝露は、腸の炎症や損傷を引き起こす可能性があるだけでなく、免疫機能を損なう可能性もある。解毒メカニズムにおけるその役割に加えて、PXRは、NFκB活性の抑制を介して間接的に炎症を抑制することが示されている。NFκBは、炎症性サイトカインおよびケモカインの遺伝子発現を調節する主要な転写因子である。IBD患者は、非IBD患者に比べてNFκBの発現が有意に高くなる。NFκBの異常な活性化は、IBSの主要なメカニズムである腸の慢性炎症を引き起こす炎症誘発性サイトカインの過剰な産生につながる。
【0011】
小腸内細菌異常増殖(SIBO)は、正常なGIフローラの障害である。SIBOでは、末端にある空腸および回腸における細菌性生物の濃度が増加し、細菌の正常な分布が乱される。 SIBOでは、小腸内の細菌の数および/または種類が増加している。近位空腸吸引液(proximal jejunal aspirate)1mlあたり細菌数が105CFU以上という所見が典型的であり、正常の状態では、小腸内の細菌濃度は102CFU以下である。
【0012】
当業者による現在の見解によれば、SIBOは、膵臓機能不全、免疫不全症候群、憩室、以前の手術、強皮症、糖尿病における自律神経障害、放射線療法後の腸症、またはこれらの要因の組み合わせなどの基礎疾患の結果として生じ得る。SIBO患者の予後は、通常深刻であり、基礎疾患に関連している。結果として生じる栄養素の吸収不良は、さまざまな症状を引き起こし得る。例えば、SIBOの正常なGIフローラの分布と濃度のこの変化は、糖分子の代謝を変化させる。ここで、糖分子は、発酵反応の一部として、最初に、短鎖脂肪酸(SCFA)、二酸化炭素(CO2)および水素(H2)に分解される。CO2の大部分は腸内に残り、腹部膨満の症状を引き起こす。SCFAは浸透圧勾配を生成し、そうすることで腸管腔に水を吸収し、IBSで下痢の症状を引き起こす。
【0013】
結果として、IBS直接空腸吸引測定のより効果的な治療に対する重要な満たされていない医学的ニーズがあり、SIBOの診断は、遠位小腸の他のアクセスしにくい部分における細菌の異常増殖の評価を含まないため、偽陰性の結果につながり得る。侵襲性の低い水素呼気検査は、SIBOの程度に関する追加情報を提供できる。自然なGIフローラの回復を目的としたプレバイオティックおよびプロバイオティック療法がIBS患者によって経験的に長年にわたって使用されてきたにもかかわらず、抗生物質による細菌の異常増殖の根絶は、IBSの症状を軽減することが示されている。テトラサイクリン、アモキシシリン/クラブラン酸塩、メトロニダゾール、およびさまざまなフルオロキノロンを含む広範囲の抗生物質が、細菌の異常増殖を減らし、IBSを治療するために使用されてきた。しかしながら、これらの化合物はしばしば全身的な副作用を持っている。さらに、特に頻繁に使用される場合、それらはまた、細菌の種/株の抗生物質に対する一般的な耐性に寄与する可能性もある。
【0014】
その結果、SIBOおよび/またはIBSのより効果的で局所的に限定された治療に対する満たされていない重要な満たされていない医学的ニーズが存在する。
【0015】
コレラは、細菌であるVibrio choleraeで汚染された食品または水の摂取によって引き起こされる急性下痢感染症である。コレラは、特に第三世界の国々または開発途上国において、公衆衛生に対する世界的な脅威であり続けている。研究者は、毎年およそ130万から400万の症例があり、世界中で21 000から143,000の死亡があると推定している(非特許文献4:M. Ali et al。Updateed Burden of Cholera in Endemic Countries。Negl。Trop。Dis 2015、9(6))。コレラは風土病または伝染病である。
【0016】
コレラは糞口経路で伝染する。病原微生物は、酸に敏感で、ほとんどが胃で死ぬが、生存微生物は、小腸に付着してコロニーを形成し、そこで強力なコレラエンテロトキシン(CT、「コレラゲン」とも称する)を分泌する。コレラは非常に毒性のある疾患であり、子供と大人の両方に影響を与える深刻な急性水様性下痢を引き起こし、治療しないと数時間以内に死亡し得る。
【0017】
コレラに対するワクチンは存在するが、コレラ菌に対するその防御は数か月に限定される(非特許文献5:Cholera vaccines: WHO position paper-August 2017. Weekly epidemiological record. 92: 477-500. 25 August 2017)。したがって、ワクチンは、流行地域でのコレラの発生を完全に防ぐことはできない。コレラの現在の治療には、水様性下痢のために失われた体液と電解質を置き換えるための(経口または静脈内投与による)急速な水分補給が含まれる。さらに、抗生物質による治療が、特に、重度または中程度の脱水状態で、水分補給治療中に大量の便を出し続ける患者には特に推奨される。抗生物質の選択は、地域の抗生物質感受性パターンによって知らされるべきである。ほとんどの国で、ドキシサイクリンは、成人の第一選択治療として推奨され、アジスロマイシンは、子供と妊婦の第一選択治療として推奨される。また、アンピシリン、エリスロマイシン、およびフルオロキノロンは、コレラの治療に有効な抗生物質として報告されている。しかしながら、ここ数年、コレラ菌の多剤耐性株に関するいくつかの報告が専門の科学文献で発表されている(非特許文献6:T. Shrestha et al. BMC Infectious Diseases (2015) 15:104;非特許文献7: J Health Popul. Nutr. (2007), 25(2):241-243;非特許文献8: M. Kitaoka et al. Journal of Medical Microbiology (2011), 60, 397-407)。
【0018】
したがって、ビブリオ・コレラエ(Vibrio Cholerae)が宿主にコロニーを形成するGI管を標的とする可能性がある、コレラに対する新しい抗生物質療法が必要である。これにより、作用しなければならない場所で抗生物質の局所的な最大濃度が得られ、その結果、病原菌がより迅速に根絶し、症状がより迅速に解消する。
【0019】
現在、腸感染症の経口治療は、Gram+およびGram-バクテリアに対する広域スペクトル活性、胃環境などの強酸性環境に対する耐性、腸内バイオマスの存在に依存しない抗感染活性、適切な期間の腸内滞留、感染宿主細胞への良好な浸透性、および良好な忍容性などの特定の特性を備えなければならない、抗菌活性を有する物質を使用する。(非特許文献9:Braga P C. Interaction of antibiotics on enteric microflora. In: Drugs in Gastroenterology. Raven Press, New York, 1991, pp. 509-517)。
【0020】
今日使用されている経口製剤で投与される抗菌剤による治療には、少なくとも2つの制限がある。まず、抗菌剤は、適切に保護されていない場合、胃を通過する間に起こる酵素的または分解的な不活性化のために、その効力を失うかもしれない。
【0021】
さらに、現在使用されている医薬品の形態では、有効成分を個別の用量で投与できるが、消化管を通過するのにかかる時間と比べて放出が速すぎるため、有効成分により胃腸管全体に沿って無差別に抗感染作用が発揮される。
【0022】
さらに、消化管の消毒に使用される抗菌剤は、抗菌剤を含む従来の形態の投与に関連する治療の可能性を変更せずに維持するために、代謝率が高くないことが多いが、抗菌剤の存在に関連する治療効果の弱化を回避するために、代謝退化の現象が生じてはならない。
【0023】
したがって、そのような場合、SIBO、IBS、またはコレラにおける抗感染療法の真の有効性を確保するために、消化管内でのボーラスの通過を遵守して、大腸でのキャリーオーバー(carry over)が可能な小腸への持続された部位特異的な投与形態が必要である。
【0024】
肝性脳症(HE)は、一部の肝疾患患者に発症する脳障害である。HEは複雑な疾患であり、外見上の兆候または症状のない潜在的な状態から、生命にかかわる深刻な合併症を引き起こす可能性のある重篤な状態まで、さまざまな一連の疾患が含まれる。症状は、脳の進行性機能障害に関連し、人格の変化、知的障害、記憶障害、および意識喪失(昏睡)が含まれる場合がある。HEは、急性または慢性の肝臓(肝)疾患のある個人、または肝臓が門脈体循環シャントによってバイパスされている(肝臓疾患がない)個人に発生し得る。門脈体循環シャントは、胃腸管からの血液が肝臓を迂回することを可能にする異常な通路である。それらは、出生時(先天性)に存在するか、または生存中に獲得し得る。HEは、通常は肝臓により体内から排出される毒素が血液中に蓄積し、最終的には脳へと移動することによって引き起こされる。肝性脳症の症状の多くは、迅速に検出され、治療されると、元に戻る。HEの正確な病因は完全には理解されていない。アンモニアおよびマンガンを含む神経毒性物質は、肝不全の状況で脳内に侵入する可能性があると理論化されている。特に、アンモニアは、細菌の微生物叢によるアミン、アミノ酸、プリン、および尿素の分解によって胃腸管で生成される。通常、生成されたアンモニアは、クレブス-ヘンスライトサイクルによって尿素に変換されることにより、肝臓で解毒される。アンモニアは、グルタメートのグルタミンへの変換、すなわち、グルタミン合成酵素の活性に依存する反応でも消費される。肝硬変患者のHEでみられる高アンモニア血症には、2つの要因が関与している。第一に、機能している肝細胞の量が減少し、上記のプロセスによってアンモニアが解毒される機会が少なくなる。第二に、門脈体循環は、アンモニアを含む血液を肝臓から体循環にそらし得る。
【0025】
初期治療は、感染症、胃腸出血、特定の薬物または腎機能障害などの誘発事象を特定して、取り除くことを目的とする場合がある。そのような療法には、感染症を治療するための薬物療法、出血を緩和または抑制するための薬物療法または手順、エピソードを引き起こし得る薬物療法の使用の中止、および腎臓の問題に対する適切な療法が含まれる。
【0026】
肝性脳症は、肝硬変の慢性的衰弱性合併症である。肝硬変の別の合併症は、一般集団よりも肝硬変の患者でより一般的である細菌感染であり、非代償性肝硬変の患者は、代償病変の患者よりも感染しやすい。抗生物質はそのような感染症の治療の1つのコースである。さらに、消化管出血を伴う肝硬変患者では抗生物質による予防が必要である。
【0027】
IBD、特に潰瘍性大腸炎(UC)患者で、利用可能な医療療法が失敗したか、生命にかかわる深刻な合併症が発生した患者は、疾患を消散するために結腸と直腸を切除する手術(直腸結腸切除術)を受けなければならない。患者が全直腸結腸切除術を受けた後、回腸嚢肛門吻合(IPAA)と呼ばれる処置が行われる。IPAAでは、回腸、すなわち、小腸の最下部を肛門に接続して、便を貯蔵および排出できる構造(ポーチ)を作り出す。IPAAは、直腸があった会陰内に便のリザーバーを作り、患者の自発的な制御下で便が通過することで肛門の機能を回復させる。嚢炎は、嚢が刺激を受けて、炎症を起こしたときに起こる嚢の炎症(腫れ)である。炎症は、排便回数の増加、腹部のけいれんまたは膨満感、下腹部痛、またはときに血便を引き起こし得る。嚢炎の原因は完全には明らかではないが、ほぼ常に潰瘍性大腸炎または他の形態の大腸炎の患者で発生し、ときに、結腸に多くのポリープが形成される遺伝的(遺伝性)症状である、家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)の患者で発生する。嚢炎は通常、抗生物質の14日間コースで治療される。急性嚢炎(嚢炎の孤立したエピソード)は一般に、しばしば抗炎症薬に関連する、メトロニダゾール、リファキシミン、シプロフロキサシンなどの抗生物質で治療される。
【0028】
自然細菌性腹膜炎(SBP)は、腹腔内に外科的に治療可能な明らかな原因がない腹水感染として定義される。ほとんどの場合、肝硬変と腹水を伴う患者に発生するSBPの存在は、発熱、腹痛、または精神状態の変化などの示唆的な徴候および症状のために疑われるが、一部の患者は無症状であり、別の理由で病院に入院した後に穿刺を受けると検出される。SBPに苦しむ患者は、ひどい予後を示し、1年の死亡率は50%から90%の範囲である。SBPは、ベタラクタミック抗生物質またはキノロンなどの抗生物質で治療され、予防されるかもしれない。
【0029】
現在、腸内細菌叢と慢性肝疾患は密接に関連していることが十分に確立されている。この関連は、疾患の後期で最も明白である:肝硬変および肝機能障害は、腸内細菌の異常増殖、小腸の運動障害、腸透過性の増加、および免疫防御の減少に関連し、これらすべてが腸から体循環への細菌の移行を促進し、感染症を引き起こし、肝機能障害を悪循環で悪化させる。腸内細菌叢異常症(つまり、正常な腐生性腸内細菌叢の変化)は、肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、および心血管疾患などの慢性代謝障害に関与している。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、メタボリックシンドロームの肝症状であり、これらの代謝性疾患と同じ状況で進化する。したがって、最近の文献がNAFLDの病態生理学における腸内細菌叢の潜在的な役割を強調していることは驚くべきことではない。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、メタボリックシンドロームの有病率の増加を表す慢性肝疾患の共通原因である。NAFLDのほとんどの患者は、非進行性の単純な脂肪肝、すなわち非アルコール性脂肪肝(NAFL)を示す。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、炎症を伴う脂肪症と、最終的に肝硬変および肝細胞癌(HCC)に至る進行性線維症の存在によって広く定義されるNAFLDのより重篤な形態である。NAFLD患者のサブセットは、よく理解されていないメカニズムを介してNASHを発症する。証拠の増加により、腸内細菌叢と、細菌の転座と、NAFLD発生率との相関関係の存在が示唆される。高脂肪食に起因する腸内細菌叢の変化は、NASHおよび関連するHCCの悪化を引き起こし得る。肝性脳症、肝硬変、嚢炎、自然細菌性腹膜炎、NAFLD、NAFLおよびNASHの現在の治療法にはいくつかの欠点(低いまたは制限された有効性、合併症または副作用の暴発、再発)があるため、新しい治療法の開発が必要である。特に、細菌感染症はこれらの疾患の病因に重要な役割を果たすため、感染症を根絶し、抗生物質への全身曝露を制限するのに効果的な新しい抗生物質治療が強く求められる。
【0030】
特許文献1(US 8,263,120B2)は、特定の殺菌作用が必要とされる、大腸、特に結腸の感染を治療するためのリファマイシンSVおよび/またはメトロニダゾールなどの抗菌および/または抗感染活性を有する、少なくとも1つのリファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩を含む、制御放出および/またはプログラム放出の経口医薬組成物を記載している。特に、特許文献1(US 8,263,120B2)の経口医薬組成物は、小腸の一部に存在する細菌叢を変化させずに、リファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩を結腸内でのみ放出し、それにより局所的かつ限定的な抗感染効果をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】US 8,263,120B2
【特許文献2】WO0076478
【非特許文献】
【0032】
【非特許文献1】Faller A, Scevola G. Anatomia e Fisiologia del Corpo Umano (Anatomy and Physiology of the Human Body). Vol I. Edizioni Minerva Medica, Turin, 1973, pp. 235-254
【非特許文献2】Braga P C. Enteric microflora and its regulation. In Drugs in Gastroenterology. Raven Press, New York, 1991, pp. 501-508
【非特許文献3】Garg A et al in The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics、359:91-101、October 2016
【非特許文献4】M. Ali et al。Updateed Burden of Cholera in Endemic Countries。Negl。Trop。Dis 2015、9(6)
【非特許文献5】Cholera vaccines: WHO position paper-August 2017. Weekly epidemiological record. 92: 477-500. 25 August 2017
【非特許文献6】T. Shrestha et al. BMC Infectious Diseases (2015) 15:104
【非特許文献7】J Health Popul. Nutr. (2007), 25(2):241-243
【非特許文献8】M. Kitaoka et al. Journal of Medical Microbiology (2011), 60, 397-407
【非特許文献9】Braga P C. Interaction of antibiotics on enteric microflora. In: Drugs in Gastroenterology. Raven Press, New York, 1991, pp. 509-517
【非特許文献10】Handbook of pharmaceutical salts, P. Stahl, C. Wermuth, WILEY-VCH, 127-133, 2008
【非特許文献11】Handbook of Pharmaceutical Excipients, sixth edition 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
リファマイシンSVは現在、旅行者下痢(TD)と感染性大腸炎の治療のために開発中である。リファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩が、酸性のpHにより薬剤の完全性が損なわれ、投与された投与量の抗生物質効果を低下させ得る胃環境に曝されるのを防ぐために、胃保護錠に配合されている。TDおよび感染性大腸炎が主に胃腸管の最後の部分、特に結腸内に局在していることを考えると、リファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩の早期放出は、小腸または胃内に存在する酵素の代謝作用への起こり得る暴露を避けるために望ましくなく、小腸の水性液中の薬物の希釈も、おそらく回避されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明は、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の持続放出プロファイルを得るために配合される、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩を含む経口医薬組成物に関する。本発明の組成物の持続放出プロファイルは、腸の近位部分、すなわち小腸(十二指腸、空腸および回腸)で始まり、任意で大腸全体に続く、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の放出を示す。
【0035】
本発明の経口医薬組成物は、コレラまたは小腸細菌異常増殖(SIBO)および/または過敏性腸症候群(IBS)などの疾患または障害の予防および/または治療に有用である。
【0036】
本発明の経口医薬組成物はまた、肝性脳症、肝硬変、嚢炎、特発性細菌性腹膜炎,NAFLD、NAFLおよび/またはNASHなどの疾患または障害の予防および/または治療にも有用である。
【0037】
一態様では、約600mgのリファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩、および1種または複数の製薬上許容される賦形剤を含む固体剤形の形態の経口医薬組成物が提供され、経口医薬組成物は、放出制御用に配合されている。
【0038】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、経口医薬組成物は、持続放出用に配合されている。
【0039】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、経口医薬組成物は、遅延放出用に配合されている。
【0040】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、経口医薬組成物は、遅延放出および持続放出用に配合されている。
【0041】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、経口医薬組成物は、実質的に小腸で、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩を放出するように配合されている。
【0042】
一態様では、小腸細菌異常増殖(SIBO)の予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示されている経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0043】
一態様では、過敏性腸症候群(IBS)の予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示されている経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0044】
一態様では、下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)の予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示されている経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0045】
一態様では、下痢型および便秘型が交互に起こる過敏性腸症候群(IBS-M)の予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示されている経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0046】
一態様では、コレラの予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示されている経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0047】
一態様では、肝性脳症の予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示されている経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0048】
一態様では、肝硬変の予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示されている経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0049】
一態様では、嚢炎の予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示されている経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0050】
一態様では、特発性細菌性腹膜炎の予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示されている経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0051】
一態様では、NAFLDの予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示されている経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0052】
一態様では、NAFLの予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示されている経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0053】
一態様では、NASHの予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示されている経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0054】
一態様では、小腸細菌異常増殖(SIBO)の治療および/または予防を必要とする対象における、小腸細菌異常増殖(SIBO)を治療および/または予防する方法であって、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0055】
一態様では、過敏性腸症候群(IBS)の治療および/または予防を必要とする対象における、過敏性腸症候群(IBS)を治療および/または予防する方法であって、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0056】
一態様では、過敏性腸症候群(IBS)の治療および/または予防を必要とする対象における、過敏性腸症候群(IBS)を治療および/または予防する方法であって、IBSが下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)を伴う、方法が提供される。
【0057】
一態様では、過敏性腸症候群(IBS)の治療および/または予防を必要とする対象における、過敏性腸症候群(IBS)を治療および/または予防する方法であって、IBSが下痢型または便秘型が交互に起こる過敏性腸症候群(IBS-M)を伴う、方法が提供される。
【0058】
一態様では、コレラの治療および/または予防を必要とする対象における、コレラを治療および/または予防する方法であって、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0059】
一態様では、肝性脳症の治療および/または予防を必要とする対象における、肝性脳症を治療および/または予防する方法であって、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0060】
一態様では、肝硬変の治療および/または予防を必要とする対象における、肝硬変を治療および/または予防する方法であって、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0061】
一態様では、嚢炎の治療および/または予防を必要とする対象における、嚢炎を治療および/または予防する方法であって、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0062】
一態様では、特発性細菌性腹膜炎の治療および/または予防を必要とする対象における、特発性細菌性腹膜炎を治療および/または予防する方法であって、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0063】
一態様では、NAFLDの治療および/または予防を必要とする対象における、NAFLDを治療および/または予防する方法であって、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0064】
一態様では、NAFLの治療および/または予防を必要とする対象における、NAFLを治療および/または予防する方法であって、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0065】
一態様では、NASHの治療および/または予防を必要とする対象における、NASHを治療および/または予防する方法であって、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0066】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語、表記法および他の科学用語は、本開示が関係する当業者によって一般に理解される意味を有することが意図されている。場合によっては、一般的に理解されている意味を持つ用語は、明確にするため、および/またはすぐに参照できるように、本明細書中で定義される。したがって、そのような定義を本明細書に含めることは、当技術分野で一般に理解されているものに対する実質的な違いを表すと解釈されるべきではない。
【0067】
本明細書で使用する「両親媒性」という用語は、脂質に対する親和性および水に対する親和性を指す。
【0068】
本明細書で使用する「およそ」および「約」という用語は、測定で発生する可能性がある実験誤差の範囲を指し、例えば、10%、5%、2.5%、2%、または1%の誤差である。
【0069】
「生物学的同等性」という用語は、21 C.F.R.セクション314.3で定義された意味を有し、同じモル用量で同様の条件下で投与した場合に、薬物作用の部位でリファマイシンが利用可能になる速度および程度に有意差がないことを指す。特定の組成物を対象に投与したときに対象で観察されたリファマイシンの関連薬物動態値の90%信頼区間が、参照製品で観察された値の約80%から約125%以内の場合、2つの製品は生物学的に同等とみなされる。
【0070】
本明細書で使用される「コレラ」という用語は、微生物ビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae)による感染によって引き起こされるとして当業者に公知の病的状態を指す。
【0071】
本明細書で使用される「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」および「含む(containing)」という用語は、互換的に使用でき、オープンエンド(open-ended)の用語(すなわち「含むがこれに限定されない」を意味する)として解釈されるべきであり、「~から本質的になる(consist essentially of)」、「~から本質的になる(consisting essentially of)」、「~からなる(consist of)」、または「~からなる(consisting of)」などの用語に対してもサポートを提供するとみなされる。
【0072】
本明細書で使用される「から本質的になる(consist essentially of)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は互換的に使用でき、セミクローズド(semi-closed)の用語として解釈されるべきであり、本発明の基本的かつ新規な特性に実質的に影響する他の成分が含まれないことを意味する(したがって、任意の賦形剤は含み得る)。
【0073】
本明細書で使用される「からなる(consists of)」、「からなる(consisting of)」という用語は、互換的に使用することができ、クローズド(closed)の用語として解釈されるべきである。
【0074】
「コア」という用語は、リファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩、少なくとも1種の親油性化合物、少なくとも1種の親水性化合物、および任意で少なくとも1種の両親媒性化合物および任意で少なくとも1種の生理学的に許容される賦形剤のマトリックス、混合物、圧縮ブレンドまたは分散体を指す。
【0075】
剤形に関連して本明細書で使用される「遅延放出」という用語は、対象への剤形の経口投与直後以外の時間に薬物を放出する剤形を表す。
【0076】
剤形に関して本明細書で使用される「持続放出」という用語は、対象への剤形の経口投与後、長時間にわたって薬物を利用可能にするように配合されている剤形を表す。
【0077】
本明細書で使用される「胃耐性コーティング」という用語は、錠剤などの固体経口剤形などの組成物が、損傷することなく胃などの胃管を通過することを可能にし、次いで、例えば、胃腸管のpHが変化するときなど、環境条件が変化するときなどに、溶解または侵食されるか、実質的にまたは完全に溶解または侵食されて、その結果、剤形を構成する、リファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩が放出されるコーティングを指す。コーティングはコアに直接塗布されていてもよい。
【0078】
本明細書で使用される「親水性」という用語は、水に対する親和性を指す。
【0079】
本明細書で後に使用される「IBS」および「過敏性腸症候群」という用語は、腹痛、腹部膨満、および腸機能の変化(下痢、便秘、またはその両方)をもたらし得る機能性腸疾患として当業者に公知の状態を指す。どちらも)。本明細書で使用される「IBS」とは、IBS-C(便秘型)、IBS-D(下痢型)、IBS-M(混合型)、IBS-U(未分類)を含む。
【0080】
本明細書で使用される「大腸」という用語は、胃腸管または消化器系の最後の部分を指す。大腸には、盲腸、結腸、直腸、肛門管が含まれる。
【0081】
本明細書で使用される「親油性」という用語は、脂質に対する親和性および水性流体に対する乏しい親和性を指す。
【0082】
本明細書で使用される「マトリックス」という用語は、理想的にはそのすべての軸またはすべての体積で切断された場合の巨視的に均質な構造を指す。「均質な」という用語は、コア中の賦形剤が均質に分散または均質に混合されていることを必要としないが、コア構造中に別個の層がないことを説明することを意味する。
【0083】
本明細書で使用される「混合物」という用語は、物質が一緒に混合されるが化学的に結合されて新しい物質にならない2種以上の物質を混合することによって形成または生成される組成物を指す。
【0084】
投与量に関して本明細書で使用される「放出制御(modified release)」という用語は、時間経過および/または位置の薬物放出特性が、溶液または即時放出剤形などの従来の剤形では提供されない治療目的または便宜目的を達成するために選択される剤形を表す。放出制御固体経口剤形には、遅延放出および持続放出薬物製品の両方が含まれる。
【0085】
本明細書で使用される「製薬上許容される塩」という用語は、塩化化合物(salified compound)の生物学的有効性および特性を有し、哺乳動物、好ましくはヒトに投与したときに有害反応を生じない塩を指す。製薬上許容される塩は、無機塩でも有機塩でもよい。製薬上許容される塩の例には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、炭酸塩、炭酸水素塩、塩化物、臭化物、硫酸塩、硫酸水素塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、およびパラ-トルエンスルホン酸塩が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、製薬上許容される塩はナトリウムである。製薬上許容される塩に関するさらなる情報は、参照により本明細書に組み入れられる、非特許文献10(Handbook of pharmaceutical salts, P. Stahl, C. Wermuth, WILEY-VCH, 127-133, 2008)に見出すことができる。
【0086】
本明細書で使用される「生理学的に許容される賦形剤」という用語は、それ自体の薬理学的効果がなく、哺乳動物、好ましくはヒトに投与されたときに有害反応を引き起こさない物質を指す。生理学的に許容される賦形剤は、当技術分野で周知であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、非特許文献11(Handbook of Pharmaceutical Excipients, sixth edition 2009)に開示されている。
【0087】
本明細書で使用される「リファマイシンB」という用語は、ケミカルアブストラクトNo.13929-35-6および化学名4-O-(カルボキシメチル)リファマイシン;[(1,2-ジヒドロ-5,6,17,19,21-ペンタヒドロキシ-23-メトキシ-2,4,12,16,18,20,22-ヘプタメチル-1,11-ジオキソ-2,7-(エポキシペンタデカ[1,11,13]トリエンイミノ)ナフト[2,1-b]フラン-9-イル)オキシ]酢酸21-アセタートを有する化合物を指す。
【0088】
本明細書で使用される「リファマイシンS」という用語は、ケミカルアブストラクトNo.13553-79-2および化学名5,17,19,21-テトラヒドロキシ-23-メトキシ-2,4,12,16,18,20,22-ヘプタメチル-2,7-(エポキシペンタデカ[1,11,13]トリエンイミノ)ナフト[2,1-b]フラン-1,6,9,11(2H)-テトラオン21-アセタートを有する化合物を指す。
【0089】
本明細書で使用される「リファマイシンSV」および「リファマイシン」という用語は交換可能であり、ケミカルアブストラクトNo.6998-60-3および化学名(2S,12Z,14E,16S,17S,18R,19R,20R,21S,22R,23S,24E)-21-(アセチルオキシ)-6,9,17,19-テトラヒドロキシ-23-メトキシ-2,4,12,16,18,20,22-ヘプタメチル-1,11-ジオキソ-1,2-ジヒドロ-2,7-(エポキシペンタデカ[1,11,13]トリエンイミノ)ナフト[2,1-b]フラン-5-オール,および(2S,12Z,14E,16S,17S,18R,19R,20R,21S,22R,23S,24E)-5,6,9,17,19-ペンタヒドロキシ-23-メトキシ-2,4,12,16,18,20,22-ヘプタメチル-1,11-ジオキソ-1,2-ジヒドロ-2,7-(エポキシペンタデカ[1,11,13]トリエノイミノ)ナフト[2,1-b]フラン-21-イルアセタートを有する化合物を指す。
【0090】
本明細書で使用される用語「リファマイシンナトリウム」、「リファマイシンナトリウム塩」、「ナトリウムリファマイシン」、「リファマイシンSVナトリウム」、「リファマイシンSVナトリウム塩」、および「ナトリウムリファマイシンSV」は交換可能であり、ケミカルアブストラクトNo.14897-39-3を有するリファマイシンSVのナトリウム塩を指す。
【0091】
本明細書における「600mgのリファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩」という表現は、600mgの量の、乾燥物質(無水)としてのリファマイシンSV、または600mgの、乾燥物質としてのリファマイシンSVの製薬上許容される塩を指し、限定するわけではないが、600mgの量のリファマイシンSVのナトリウム塩、または乾燥物質(無水)としてのリファマイシンSV600mgに等しい量の、リファマイシンSVの製薬上許容される塩を含む。一態様では、乾燥物質としてのリファマイシンSVのナトリウム塩600mgは、乾燥物質としてのリファマイシンSV 582mgに相当する。一態様では、リファマイシンSVのナトリウム塩600mgは、リファマイシンSV 582mgおよびナトリウムイオン18mgに相当する。
【0092】
本明細書で使用される場合、「予防する(prevent)」、「予防(prevention)」、および「予防する(preventing)」という用語は、所与の状態を獲得または発症するリスクの低下または阻害、あるいは、 病気ではないが、疾患または障害のある人の近くにいる、または近くにいる可能性のある対象における再発または前記状態の低下または阻害を指す。
【0093】
本明細書で使用される「SIBO」および「小腸内細菌異常増殖」という用語は、小腸内細菌異常増殖として当業者に公知の状態を指し、正常なGIフローラの障害である。SIBOでは、末端にある空腸および回腸における細菌性生物の濃度が増加し、細菌の正常な分布が乱される。SIBOでは、小腸内の細菌の数および/または種類が増加している。近位空腸吸引液1mlあたり105CFU以上の細菌の所見が典型的であり、正常の状態では、小腸内の細菌濃度は102CFU以下である。
【0094】
本明細書で使用される「小腸」という用語は、胃と大腸の間の胃腸管の領域であり、食物の最終吸収の大部分が行われる腸の近位部分を指す。小腸は、十二指腸、空腸、回腸の3つの異なる領域を有している。
【0095】
本明細書で使用される「治療する(treat)」、「治療(treatment)」、および「治療する(treating)」という用語は、治療的処置を指す。例えば、治療的処置は、1つ以上の治療(例えば、本発明の組成物などの1つ以上の治療薬)の投与から生じる、疾患または障害が介在する状態の進行、重症度および/または期間の低減または改善、または疾患または障害が介在する状態の1つ以上の症状(具体的には、1つ以上の識別可能な症状)の寛解を含む。特定の実施形態では、治療的処置は、疾患または障害が介在する状態の少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善を含む。他の実施形態では、治療的処置は、例えば、識別可能な症状の安定化による物理的、例えば、物理的パラメータの安定化による生理学的、またはその両方による、疾患または障害が媒介する状態の進行の阻害を含む。他の実施形態では、治療的処置は、疾患または障害が媒介する症状の軽減または安定化を含む。
【0096】
「Cmax,0-6」:選択した間隔(0-6時間)で達成された最大血漿濃度。
【0097】
「Cmax,0-24」:選択した間隔(0~24時間)で達成された最大血漿濃度。
【0098】
「tmax,0-6」:Cmax,0-6を達成するための時間。
【0099】
「tmax,0-24」:Cmax,0-24を達成するための時間。
【0100】
「λz」:可能な場合、少なくとも3つの点を使用した対数線形回帰により、初回投与後に計算された終末消失速度定数(terminal elimination rate constant)。
【0101】
「t1/2」:可能な場合、ln2/λzとして最初の投与後に計算された半減期。
【0102】
「AUC0-6」:台形法で計算された、選択した間隔(0~6時間)での濃度/時間曲線下の面積。
【0103】
「AUC0-24」:台形法で計算された、選択した間隔(0~24時間)での濃度/時間曲線下の面積。
【0104】
「AUC0-∞」:可能な場合、AUC0-6+Ct/λz(Ctは最後の測定可能な薬物濃度)として、最初の投与後に計算された、無限に外挿された濃度-時間曲線下の面積。
【0105】
「Clt/F」:可能であれば、投与量/AUC0-∞として、初回投与後に計算された全身クリアランス。
【0106】
「Clr」:初回投与後にAe0-6/AUC0-6として計算された腎クリアランス。
【0107】
「Vz/F」:可能であれば、投与量/λzxAUC0-∞として最初の投与後に計算された、見かけの最終分布体積(terminal volume of distribution)。
【0108】
「Cmax,ss,12-18」:定常状態で達成された、選択した間隔(12-18時間)での最大血漿濃度。
【0109】
「Cmin,ss,12-18」:定常状態で達成された、選択した間隔(12-18時間)での最小血漿濃度。
【0110】
「AUCss,12-18」:台形法で計算された、定常状態での選択した間隔(12-18時間)での濃度/時間曲線下の面積。
【0111】
「AUCss,0-24」:台形法で計算された、定常状態での選択した間隔(0~24時間)での濃度/時間曲線下の面積。
【0112】
「tmax,ss,12-18」:Cmax,ss,12-18を達成するための時間。
【0113】
「Cave,12-18」:AUCss,12-18/τ(τは投与間隔(6時間))として計算された、選択された間隔(12-18時間)の平均血漿濃度。
【0114】
「PTF%12-18」:
【0115】
【0116】
として、選択した間隔(12~18時間)で計算されたピーク値トラフ値変動。
【0117】
「Ae0-24」:選択した間隔(24時間)の間に尿中に排泄された分析物の総量。
【0118】
「%Ae0-24」:(Ae0-24/用量x3)x100として計算された、尿中に排泄された分析物の量のパーセンテージ。
【0119】
EC50:最大有効濃度の半分:これは、ベースラインと最大応答の中間で応答を誘発する、試験化合物の濃度を指す。
【0120】
IC50:最大阻害濃度の半分:これは、ベースラインと最大応答の中間で応答を阻害する、試験化合物の濃度を指す。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【
図1】実験セクションで報告された本発明による、試験リファマイシンSV 600mgコーティング錠による健常人の研究治療中の1日目と7日目の平均(±標準偏差(SD))リファマイシンSV濃度(ng/mL)対時間プロファイルを示す。1:リファマイシンSV濃度対1日目の時間(●);7:リファマイシンSV濃度対7日目の時間(□)。
【
図2】PXR転写活性のリファマイシンSV刺激を示す。このテストでは、リファマイシンSV(黒塗りの□)活性を、リファキシミン(黒塗りの▽)およびリファンピシン(●)(対照として使用)と比較している。データは3つの独立した実験から計算された。
【
図3】リファマイシンSV阻害NFkB活性(TNFαにより誘発)を示す。テストでは、リファマイシンSV(黒塗りの□)活性を、FDAからIBS-Dの承認を得た薬剤である、リファキシミン(黒塗りの▽)と比較している。データは2つの独立した実験から計算された。
【
図4A】NFkBレポーター細胞株において、PMAによって誘発されるNFkB転写活性のリファマイシンSV(黒塗りの□)、リファキシミン(黒塗りの▽)またはリファンピシン(●)阻害を示す。
【
図4B】NFkBレポーター細胞株において、TNFαによって誘発されるNFkB転写活性のリファマイシンSV(黒塗りの□)、リファキシミン(黒塗りの▽)またはリファンピシン(●)阻害を示す。
【
図4C】NFkBレポーター細胞株において、LPSによって誘発されるNFkB転写活性のリファマイシンSV(黒塗りの□)、リファキシミン(黒塗りの▽)またはリファンピシン(●)阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0122】
一態様では、約600mgのリファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩,および1種または複数の製薬上許容される賦形剤を含む、固体剤形の形態の経口医薬組成物が提供され、経口医薬組成物は、放出制御用に配合されている。一態様では、乾燥物質としてのリファマイシンSVのナトリウム塩600mgは、乾燥物質としてのリファマイシンSV582mgに相当する。
【0123】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、経口医薬組成物は、持続放出用に配合されている。
【0124】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、経口医薬組成物は、遅延放出用に配合されている。
【0125】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、経口医薬組成物は、遅延放出および持続放出用に配合されている。
【0126】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、経口医薬組成物は、実質的に小腸で、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩を放出するように配合されている。
【0127】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、経口医薬組成物は、実質的に、前記固体剤形が、腸の近位部の幽門通路(pylorus passage)内を通過した後に、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩を放出するように配合されている。
【0128】
一態様では、1種または複数の親油性化合物、親水性化合物および両親媒性化合物を更に含む、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0129】
一態様では、1種または複数の親油性化合物を更に含む、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0130】
一態様では、1種または複数の親水性化合物を更に含む、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0131】
一態様では、1種または複数の両親媒性化合物を更に含む、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0132】
一態様では、1種または複数の親油性化合物および1種または複数の親水性化合物を更に含む、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0133】
一態様では、1種または複数の親油性化合物および1種または複数の両親媒性化合物を更に含む、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0134】
一態様では、1種または複数の親水性化合物および1種または複数の両親媒性化合物を更に含む、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0135】
一態様では、胃耐性コーティングを更に含む、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0136】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、固体剤形が約pH5~約pH7.5の範囲のpHを有する水性媒体中に置かれるとき、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩が固体剤形から放出される。他の態様では本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、固体剤形が、約pH5~約pH7、または約pH5~約pH6.5、または約pH5~約pH6の範囲のpHを有する水性媒体中に置かれるとき、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩が固体剤形から放出される。
【0137】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、固体剤形がコアおよびコアを覆う胃耐性コーティングを含む。一態様では、コアは、コア中に見出される成分のマトリックス、混合物、圧縮ブレンドまたは分散体である。一態様では、コーティングはコアに直接塗布される。一実施形態では、コアは、1種または複数の微結晶性セルロース、ラクトース(ラクトース一水和物など)、コロイド状二酸化ケイ素,ポビドンおよび/またはコポビドン、および微結晶性セルロースも含んでいてもよい。
【0138】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、対象への固体剤形の1または複数の投与により、対象の血漿中で約9.50時間のリファマイシンSVのtmax,0-24が示される。
【0139】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、対象への固体剤形の3以上の投与により、対象の血漿中で約2.19±1.94ng/mLのリファマイシンSVのCmax,0-6が示される。一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、対象への固体剤形の3以上の投与により、対象の血漿中で約2.19ng/mL超のリファマイシンSVのCmax,0-6が示される。
【0140】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、対象への固体剤形の3以上の投与により、対象の血漿中で約5.79±4.24ng/mLのリファマイシンSVのCmax,0-24が示される。一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、対象への固体剤形の3以上の投与により、対象の血漿中で約5.79ng/mL超のリファマイシンSVのCmax,0-24が示される。
【0141】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、対象への固体剤形の3以上の投与により、対象の血漿中で約3.26±2.85(ng)(h)/mLのリファマイシンSVのAUC0-6が示される。一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、対象への固体剤形の3以上の投与により、対象の血漿中で、約3.26(ng)(h)/mL超のリファマイシンSVのAUC0-6が示される。
【0142】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、対象への固体剤形の3以上の投与により、対象の血漿中で、約43.67±20.15(ng)(h)/mLのリファマイシンSVのAUC0-24が示される。一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、対象への固体剤形の3以上の投与により、対象の血漿中で、約43.67(ng)(h)/mL超のリファマイシンSVのAUC0-24が示される。
【0143】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、対象への経口医薬組成物の投与により、対象の血漿中で、本明細書に開示された値の約80%~125%の範囲内にある、リファマイシンSVのAUCおよび/またはCmaxが示される。
【0144】
一態様では、本明細書に開示された経口医薬組成物のいずれかと生物学的同等性である、経口医薬組成物が提供される。
【0145】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、経口医薬組成物が投与される対象におけるリファマイシンSVの尿排出率が、対象に投与されるリファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の総量の約1%以下である。
【0146】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、当該医薬組成物が、2時間、USP<711>に準拠するUSP溶解装置II中に置かれる場合に、当該医薬組成物が、医薬組成物を構成する、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の量の約10%以下を放出し、当該溶解装置が、pH1および37±0.5oCの温度で、0.1M塩酸および0.4%マクロゴールセトステアリルエーテルを含む1000mLの水溶液を含み、当該水溶液が、50rpmの速度で攪拌される。他の態様では本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、当該医薬組成物が、2時間、USP<711>に準拠するUSP溶解装置II中に置かれる場合に、当該医薬組成物が、医薬組成物を構成する、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の量の約5%以下、約2.5%以下、約2%以下、約1%以下を放出し、当該溶解装置が、pH1および37±0.5oCの温度で、0.1M塩酸および0.4%マクロゴールセトステアリルエーテルを含む1000mLの水溶液を含み、当該水溶液が、50rpmの速度で攪拌される。
【0147】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、医薬組成物が、1時間、USP<711>に準拠するUSP溶解装置II中に置かれる場合に、医薬組成物が、前記医薬組成物を構成する、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の量の約20%以下を放出し、溶解装置が、pH6.4および37±0.5oCの温度で、900mLの水性緩衝液を含み、前記水溶液が、100rpmの速度で攪拌される。一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、医薬組成物が、1時間、USP<711>に準拠するUSP溶解装置II中に置かれる場合に、医薬組成物が、医薬組成物を構成する、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の量の約15%以下、約10%以下、約5%以下、約2.5%以下、約2%以下、または約1%以下を放出し、溶解装置が、pH6.4および37±0.5oCの温度で、900mLの水性緩衝液を含み、当該水溶液が、100rpmの速度で攪拌される。
【0148】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、医薬組成物が、3時間、USP<711>に準拠するUSP溶解装置II中に置かれる場合に、医薬組成物が、医薬組成物を構成する、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の量の約20%~約60%を放出し、溶解装置が、pH6.4および37±0.5oCの温度で、900mLの水性緩衝液を含み、前記水溶液が、100rpmの速度で攪拌される。
【0149】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、医薬組成物が、6時間、USP<711>に準拠するUSP溶解装置II中に置かれる場合に、医薬組成物が、前記医薬組成物を構成する、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の量の約50%以上を放出し、溶解装置が、pH6.4および37±0.5oCの温度で、900mLの水性緩衝液を含み、水溶液が、100rpmの速度で攪拌される。他の態様では本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、医薬組成物が、6時間、USP<711>に準拠するUSP溶解装置II中に置かれる場合に、医薬組成物が、医薬組成物を構成する、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の量の約60%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、または約95%以上を放出し、溶解装置が、pH6.4および37±0.5oCの温度で、900mLの水性緩衝液を含み、当該水溶液が、100rpmの速度で攪拌される。
【0150】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、医薬組成物が約2重量%以下のリファマイシンSを含有する。他の態様では本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、組成物が、約1.5重量%以下、約1.25重量%以下、約1重量%以下、約0.75重量%以下、約0.5重量%以下、約0.25重量%以下、約0.2重量%以下、約0.1重量%以下,または約0.05重量%以下のリファマイシンSを含有する。
【0151】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、医薬組成物が、約1重量%以下のリファマイシンBを含有する。他の態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、医薬組成物が、約0.75重量%以下、約0.5重量%以下、約0.25重量%以下、約0.2重量%以下、約0.15重量%以下、または約0.1重量%以下のリファマイシンBを含有する。
【0152】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、医薬組成物は、10,000ppm以下のエタノールを含有する。他の態様では本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、医薬組成物は、7,500ppm以下、7,000ppm以下、6,000ppm以下、5,500ppm以下、5,000ppm以下、または4,500ppm以下のエタノールを含有する。
【0153】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、固体剤形が、3か月間、25oCおよび60%相対湿度での固体剤形の貯蔵後に約2重量%未満のリファマイシンSを含有する。他の態様では本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、固体剤形が、3か月間、25oCおよび60%相対湿度での固体剤形の貯蔵後に、約1重量%未満、約0.75重量%未満、約0.5重量%未満、約0.25重量%未満、または約0.1重量%未満のリファマイシンSを含有する。
【0154】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、固体剤形が、1か月間、40oCおよび75%相対湿度での固体剤形の貯蔵後に、約2重量%未満のリファマイシンSを含有する。他の態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、固体剤形が、1か月間、40oCおよび75%相対湿度での固体剤形の貯蔵後に、約1.75重量%未満、約1.5重量%未満、約1.25重量%未満、約1重量%未満、約0.75重量%未満、約0.5重量%未満、約0.25重量%未満、または約0.1重量%未満のリファマイシンSを含有する。
【0155】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、固体剤形が、1か月間、40oCおよび75%相対湿度での固体剤形の貯蔵後に、1重量%未満のリファマイシンBを含有する。他の態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、固体剤形が、1か月間、40oCおよび75%相対湿度での固体剤形の貯蔵後に、約0.75重量%未満、約0.5重量%未満、約0.25重量%、または約0.1重量%未満のリファマイシンBを含有する。
【0156】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、固体剤形が、1か月間、30oCおよび65%相対湿度での固体剤形の貯蔵後に、2重量%未満のリファマイシンSを含有する。他の態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、固体剤形が、1か月間、30oCおよび65%相対湿度での固体剤形の貯蔵後に、約1.75重量%未満、約1.5重量%未満、約1.25重量%未満、約1重量%未満、約0.75重量%未満、約0.5重量%未満、約0.25重量%未満、または約0.1重量%未満のリファマイシンSを含有する。上記のすべてのリファマイシンSの重量%は、組成物中に存在するリファマイシンSV(表示された品質説明(labeled claim)として)の量に関して測定される。
【0157】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、固体剤形が、1か月間、30oCおよび65%相対湿度での固体剤形の貯蔵後に、1重量%未満のリファマイシンBを含有する。他の態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、固体剤形が、1か月間、30oCおよび65%相対湿度での固体剤形の貯蔵後に、約0.75重量%未満、約0.5重量%未満、約0.25重量%未満、または約0.1重量%未満のリファマイシンBを含有する。
【0158】
上記の実施形態において、リファマイシンSおよびリファマイシンBの重量%は、組成物中のリファマイシンSVの表示された品質説明の量で割った、それぞれリファマイシンSおよびリファマイシンBの量として表される。例えば、600mgのナトリウムリファマイシンSVを含むことを意図した組成物は、600mgのナトリウムリファマイシンSVの表示された品質説明の量を有するであろう。600mgのナトリウムリファマイシンSVのこのような表示された品質説明の量はまた、582mgのリファマイシンSVの表示された品質説明の量に対応しても、しなくてもよい。
【0159】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、固体剤形が、パッケージに収容され、パッケージが、熱および光から固体剤形を保護するための材料を含む。一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、パッケージが、アルミニウムを含む。一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、パッケージが、アルミニウムブリスターパッケージを含む。
【0160】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、固体剤形が、錠剤の形態である。一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、錠剤が、錠剤コアおよび錠剤コアを覆う胃耐性コーティングを含む。一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、胃耐性コーティングが、アクリル酸ポリマー、アクリル酸コポリマー、メタクリル酸ポリマー、およびメタクリル酸コポリマーの1種または複数を含む。一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、胃耐性コーティングが、コーティング組成物を使用して、錠剤コアに適用される。一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、コーティング組成物が、有機溶媒および水の1種または複数を含む。一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、有機溶媒が、1種または複数の有機アルコールを含む。一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、1種または複数の有機アルコールが、エタノールおよびポリエチレングリコールのうちの1種または複数から選択される。一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、コーティング組成物が、実質的に水を含まない。一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、コーティング組成物が、実質的にエタノールをを含まない。
【0161】
一態様では、小腸細菌異常増殖(SIBO)の発生/再発の予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0162】
一態様では、過敏性腸症候群(IBS)の発生/再発の予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0163】
一態様では、下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)の発生/再発の予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0164】
一態様では、下痢型および便秘型が交互に起こる過敏性腸症候群(IBS-M)の発生/再発の予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0165】
一態様では、コレラの発生/再発の予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0166】
一態様では、肝性脳症の発生/再発の予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。一態様では、顕性肝性脳症(HE)再発のリスクの低減および/または突発的な顕性HE(breakthrough overt HE)再発のリスクの低減に使用するための、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0167】
一態様では、肝硬変の発生/再発の予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0168】
一態様では、嚢炎の発生/再発の予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0169】
一態様では、特発性細菌性腹膜炎の発生/再発の予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0170】
一態様では、NAFLDの発生/再発の予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0171】
一態様では、NAFLの発生/再発の予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0172】
一態様では、NASHの発生/再発の予防および/または治療に使用するための、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0173】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、経口医薬組成物が、リファマイシンSVの製薬上許容される塩の約600mg,約1200mgまたは約1800mgの一日量で、対象に投与される。一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、経口医薬組成物が、リファマイシンSVのナトリウム塩を含み、約582mg,約1164mgまたは約1746mgのリファマイシンSVに相当する一日量で、対象に投与される。
【0174】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、組成物が、一日に1,2、または3回、対象に投与される。
【0175】
一態様では、小腸細菌異常増殖(SIBO)の治療および/または予防を必要とする対象における、当該治療および/または予防の方法が提供され、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0176】
一態様では、過敏性腸症候群(IBS)の治療および/または予防を必要とする対象における、当該治療および/または予防の方法が提供され、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。一態様では、IBSが、下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)を伴う、治療方法が提供される。一態様では、IBSが、下痢型または便秘型が交互に起こる過敏性腸症候群(IBS-M)を伴う、治療方法が提供される。
【0177】
一態様では、コレラの治療を必要とする対象に、当該治療をする方法が提供され、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0178】
一態様では、肝性脳症の治療および/または予防を必要とする対象における、当該治療および/または予防の方法が提供され、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。一態様では、顕性肝性脳症(HE)再発のリスクの低減を必要とする対象における、当該リスクの低減、および/または突発的な顕性HE再発のリスクの低減を必要とする対象における、当該リスクの低減の方法が提供され、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0179】
一態様では、肝硬変の治療および/または予防を必要とする対象における、当該治療および/または予防の方法が提供され、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0180】
一態様では、嚢炎の治療および/または予防を必要とする対象における、当該治療および/または予防の方法が提供され、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0181】
一態様では、特発性細菌性腹膜炎の治療および/または予防を必要とする対象における、当該治療および/または予防の方法が提供され、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0182】
一態様では、NAFLDの治療および/または予防を必要とする対象における、当該治療および/または予防の方法が提供され、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0183】
一態様では、NAFLの治療および/または予防を必要とする対象における、当該治療および/または予防の方法が提供され、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0184】
一態様では、NASHの治療および/または予防を必要とする対象における、当該治療および/または予防の方法が提供され、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0185】
一態様では、本明細書に開示される治療方法のいずれかが提供され、経口医薬組成物が、リファマイシンSVの製薬上許容される塩の600mg、1200mgまたは1800mgの一日量で、対象に投与される。一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、経口医薬組成物が、リファマイシンSVのナトリウム塩を含み、約582mg、約1164mgまたは約1746mgのリファマイシンSVに相当する一日量で、対象に投与される。
【0186】
一態様では、本明細書に開示される任意の治療方法が提供され、経口医薬組成物が、一日に1,2,3回、または複数回、対象に投与される。
【0187】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかを対象に投与することを含む、本明細書に開示される任意の治療方法が提供され、経口医薬組成物が、対象に、1日3回、1日以上投与される。他の態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかを対象に投与することを含む、本明細書に開示される任意の治療方法が提供され、経口医薬組成物が、対象に、1日3回、1日以上、または2日以上、または3日以上、または4日以上、または5日以上、または6日以上、または7日以上、または8日以上、または9日以上、10日以上、または11日以上、または12日以上、または13日以上、14日以上、または15日以上、または16日以上、または17日以上、または18日以上、または19日以上、または20日以上、または21日以上、または22日以上、または23日以上、または24日以上、または25日以上、または26日以上、または27日以上、または28日以上、または29日以上、または30日以上投与される。
【0188】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかを対象に投与することを含む、本明細書に開示される任意の治療方法が提供され、経口医薬組成物が、対象に、1日3回、1日投与される。他の態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかを対象に投与することを含む、本明細書に開示される任意の治療方法が提供され、経口医薬組成物が、対象に、1日3回、2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,または30日投与される。
【0189】
一態様では、対象に本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量を投与することを含む、IBS-Dを有する対象を治療する方法が提供され、対象への経口医薬組成物の投与後、対象は、ブリストル便形状スケールの改善を経験する。他の態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかの有効量の投与後、対象は、ブリストル便形状スケールでのスコアが6または7である便を対象が経験する週当たりの日数が20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上減少することを経験する。
【0190】
一態様では、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩が、リファマイシンナトリウムである、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0191】
一態様では、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩が、リファマイシンナトリウムである、本明細書に開示される使用または方法のいずれかが提供される。
【0192】
一態様では、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の持続放出プロファイルを得るために配合される、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩、好ましくは、そのナトリウム塩を含む、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0193】
一態様では、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩を、小腸(十二指腸、空腸および回腸)で放出する、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩、好ましくは、そのナトリウム塩を含む、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0194】
一態様では、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩を、小腸(十二指腸、空腸および回腸)での放出を開始し、大腸に続くことがあってもよい、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩、好ましくは、そのナトリウム塩を含む、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供される。
【0195】
一実施形態では、リファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩は、腸の近位部分、すなわち小腸の開始部での胃耐性コーティングの溶解および/または破壊の後に開始して、本発明の組成物から放出される。本発明の一実施形態では、リファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩は、腸の近位部分、すなわち小腸における幽門通過後にのみ、胃耐性コーティングの溶解および/または破壊で開始して、本発明の組成物から放出される。本発明の一実施形態では、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩は、組成物が約pH5~約pH7.5、好ましくは約pH5.5~約pH7.0、より好ましくは約pH6.0~約pH6.5の媒体に曝露される場合、本発明の組成物から放出される。好ましい実施形態では、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩は、組成物が約pH6.4の媒体に曝露されると、本発明の組成物から放出される。本発明の一実施形態では、リファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩は、約3~約12時間の時間にわたって、好ましくは4から11時間の時間にわたって、より好ましくは約5時間から約10時間、さらにより好ましくは約5時間から約9時間の時間にわたって、80%を超える量で本発明の組成物から放出される。好ましい実施形態では、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩は、本発明の組成物から約6時間の時間にわたって80%を超える量で放出される。本発明の一実施形態では、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩は、約pH5から約pH7.5の媒体に曝露された場合、約3~約12時間の時間にわたって80%を超える量で本発明の組成物から放出される。
【0196】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩が、小腸で始まり、場合により大腸まで続いて、本発明の組成物から放出される。
【0197】
一態様では、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩、好ましくはそのナトリウム塩を含む、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、幽門通過後にのみ、腸の近位部分において、胃耐性コーティングの溶解および/または破壊後に、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の放出を開始する。
【0198】
一態様では、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩、好ましくはそのナトリウム塩を含む、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩は、組成物が約pH5~約pH7.5、好ましくは約pH5.5~約pH7.0、より好ましくは約pH6.0~約pH6.5の媒体に曝露される場合、放出される。
【0199】
一態様では、本明細書に開示される経口医薬組成物のいずれかが提供され、組成物が約pH5.5の媒体に曝露されると、組成物からリファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の放出を開始する。別の実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、組成物が約pH6.0の媒体に曝露されると、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の放出を開始する。別の実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、組成物が約pH6.4の媒体に曝露されると、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の放出を開始する。
【0200】
本発明は、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩、好ましくはそのナトリウム塩を含む、経口医薬組成物に関し、組成物の投与から約3時間後に、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の放出を開始し、最大12時間継続し得る。好ましくは、放出は約3時間後に始まり、最大9時間続く。
【0201】
本発明によるリファマイシンSVの適切な塩は、ナトリウムまたはカリウム、好ましくはナトリウム塩から選択することができる。
【0202】
本発明の経口医薬組成物は、コレラおよび/またはSIBOおよび/またはIBSの予防および/または治療に有用である。特に、本発明の経口医薬組成物は、IBS-C、IBS-D、IBS-Mおよび/またはIBS-Uの予防および/または治療に有用である。好ましくは、本発明の組成物は、IBS-Dの予防および/または治療に有用である。
【0203】
本発明の経口医薬組成物はまた、肝性脳症、肝硬変、嚢炎、特発性細菌性腹膜炎、NAFLD、NAFLおよび/またはNASHなどの疾患または障害の予防および/または治療にも有用である。
【0204】
一実施形態では、本発明による経口医薬組成物は、リファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩、少なくとも1種の親油性化合物、少なくとも1種の親水性化合物、場合により少なくとも1種の両親媒性化合物および場合により胃耐性コーティングを含む。
【0205】
本発明の経口医薬組成物中のリファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩、すなわちリファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩の投薬量は、約400mg/用量単位~約2400mg/用量単位、約400mg/用量単位~約2000mg/用量単位、約400mg/用量単位~約1500mg/用量単位、約400mg/用量単位~約1000mg/用量単位、約400mg/用量単位~約800mg/用量単位、約500mg/用量単位~約700mg/用量単位、または約550mg/用量単位~約650mg/用量単位、好ましくは約600mgの、無水形態(乾燥)である、リファマイシンSVまたはその薬学的に許容される塩であり得る。より好ましくは、本発明の経口医薬組成物中のリファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩の投薬量は、約600mg/用量単位の無水形態(乾燥)のリファマイシンSVナトリウム塩であり得る。上記の投薬量はすべて、無水形態(乾燥ベース)であることが意図されている。
【0206】
一態様では、経口医薬組成物が(乾燥物質として)リファマイシンSVのナトリウム塩を含む場合、医薬組成物中のリファマイシンSV(乾燥物質として)の当量(equivalent amount)は、約388mg/用量単位~約2328mg用量単位、約388mg/用量単位~約1940mg/用量単位、約388mg/用量単位~約1455mg/用量単位、約388mg/用量単位~約960mg/用量単位、約388mg/用量単位~約776mg/用量単位、約485mg/用量単位~約679mg/用量単位、または約533.5mg/用量単位~約630.5mg/用量単位、好ましくは約582mgの無水形態(乾燥)のリファマイシンSVである。より好ましくは、本発明の経口医薬組成物中のリファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩の投薬量は、582mg/用量単位の無水形態(乾燥)のリファマイシンSVに等しい、約600mg/用量単位の無水形態(乾燥)のリファマイシンSVナトリウム塩である。上記の投薬量はすべて、無水形態(乾燥ベース)であることが意図されている。
【0207】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、無水形態(乾燥)で、約600mg~約2400mg、約600mg~約1800mg、約600mg~約1200mg、約800mg~約2400mg、約600mg~約2400mg、1200mg~約2400mg、または約1200mg~約1800mgの範囲の一日量で投与される。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、無水形態(乾燥)で、約600mgまたは約1200mgまたは約1800mgの一日量で投与される。
【0208】
一実施形態では、経口医薬組成物がリファマイシンSVのナトリウム塩を含む場合、一日量で投与される医薬組成物中の乾燥物質としてのリファマイシンSVの当量は、無水形態(乾燥)で、約582mg~約2328mg、約582mg~約1746mg、約582mg~約1146mg、約776mg~約2328mg、約1164mg~約2328mg、または約1164mg~約1746mgの範囲にある。一実施形態では、本発明の医薬組成物中の乾燥物質としてのリファマイシンSVの当量、このような医薬組成物は、無水形態(乾燥)で約582mgまたは約1164mgまたは約1746mgの一日量で投与される。
【0209】
本発明の経口医薬組成物中のリファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩、すなわちリファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩の好ましい投薬量は、無水形態(乾燥)で約600mg/用量単位であるか、または無水形態(乾燥)のリファマイシンSVのナトリウム塩の600mg/用量単位からなる場合、無水形態(乾燥)のリファマイシンSVの582mg/用量単位に等量である。リファマイシンSVまたはその塩の含水量は一般に約12~17%であることが知られている。したがって、本発明によれば、無水形態(乾燥)のリファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩を指す。上記の無水形態のリファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩の投薬量の1つを得るために、重み付けされる物質は、水分含量によって補正されなければならない。
【0210】
本発明の一実施形態によれば、前記少なくとも1種の親油性化合物と前記少なくとも1種の親水性化合物との重量比は、約1:30~約1:90、好ましくは約1:66または約1:67である。
【0211】
本発明の一実施形態によれば、前記少なくとも1種の親油性化合物と前記少なくとも1種の任意の両親媒性化合物との重量比は、約1:1~約6:1、好ましくは約3:1である。
【0212】
本発明の一実施形態によれば、前記少なくとも1種の任意の両親媒性化合物と前記少なくとも1種の親水性化合物との重量比は、約1:10~約1:30、好ましくは約1:20である。
【0213】
本発明の一実施形態によれば、リファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩、好ましくはそのナトリウム塩と、前記少なくとも1種の親油性化合物との重量比は、約10:1~約30:1、好ましくは約20:1である。
【0214】
本発明の一実施形態によれば、リファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩、好ましくはそのナトリウム塩と、前記少なくとも1種の親水性化合物との重量比は、約1:1~約6:1、好ましくは約3:1である。
【0215】
本発明の一実施形態によれば、リファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩、好ましくはそのナトリウム塩と、少なくとも1種の任意の両親媒性化合物との重量比は、約30:1~約90:1、好ましくは約60:1である。
【0216】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1種の親油性化合物は、不飽和または水素化アルコール(セチルアルコール、ステアリン酸アルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、またはオレイルアルコールなど)または脂肪酸、その塩、エステル(パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ラウリル酸、オレイン酸など);ステアリンなどの脂肪酸モノ、ジ、またはトリグリセリドまたはそれらのポリエトキシル化誘導体;蜜蝋またはカルナバワックスなどのワックス;セラミド;コレステロール誘導体またはその混合物から選択することができる。ステアリン酸またはその塩の1種(例えば、ステアリン酸マグネシウムなど)は、好ましい少なくとも1種の親油性化合物である。別の実施形態では、親油性化合物は、水素化脂肪アルコールのエステルである。一実施形態では、親油性化合物は、ステアリルフマル酸ナトリウムである。任意選択で、少なくとも1種の親油性化合物は、約250℃より低い、好ましくは約30~約200℃の融点を有する。
【0217】
別の実施形態によれば、少なくとも1種の親水性化合物は、ヒドロゲルとして公知の、一般に架橋または線状のポリマーまたはコポリマー物質、すなわち、乾燥状態から水和状態に移行するときに、いわゆる「分子緩和」を受ける物質、つまり、高分子鎖に存在する極性基によって多数の水分子が配位した後、質量および重量が著しく増加する物質により表される。特に、少なくとも1種の親水性は、セルロース誘導体およびそれらのエステルおよび/または塩、例えば、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはナトリウムヒドロキシプロピルメチルセルロース)、アルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース(ナトリウムカルボキシメチルセルロースなど);ポリビニルアルコール;カルボキシビニル誘導体;多糖類、例えば、デキストリン、ペクチン、デンプンおよびそれらの誘導体;天然または合成ゴム;アルギン酸;多価アルコール、例えば、キシリトール、マルチトール、マンニトールから選択することができる。マンニトールまたはナトリウムカルボキシメチルセルロースは、好ましい少なくとも1種の親水性化合物である。より好ましくは、それらは両方とも本発明の経口医薬組成物に含まれる。例えば、少なくとも1種の親水性化合物は、デンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウムを含み得る。一実施形態では、少なくとも1種の親水性化合物はデンプンを含む。一実施形態では、少なくとも1種の親水性化合物は、デンプングリコール酸ナトリウムを含む。
【0218】
一実施形態によれば、本発明の組成物は、少なくとも1種の吸湿性物質をさらに含む。少なくとも1種の吸湿性物質の存在は、貯蔵および/または湿気への暴露後にリファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩が損傷しないことを確実にするために、組成物自体の湿度レベルを制御および/または修正することを可能にする。少なくとも1種の吸湿性物質は、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、マルトデキストリンまたはそれらの混合物から選択されてもよい。好ましくは、少なくとも1種の吸湿性物質はマンニトールである。
【0219】
上記のように、リファマイシンSVまたはその塩は、約12~17%の含水率を有し、したがって、配位する水の含量がより低い他の補助物質との接触を介して、組成物自体における、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩の安定性を維持または改善するさらなる必要がある。
【0220】
組成物の水分含有量の制御は、組成物中のリファマイシンSVまたはその塩の安定性プロファイルの維持または改善に寄与することに加えて、錠剤の場合に、より適切な圧縮特性も確実にし、産業用圧縮手順(industrial compression procedure)の機械的応力に対する許容できる耐性プロファイルをを生み出す。
【0221】
本発明に従って任意に使用することができる少なくとも1種の両親媒性化合物は、I型またはII型の極性脂質(レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン)、セラミド、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(Transcutol(登録商標))などのグリコールアルキルエーテル、天然または合成ゴムを含む。レシチンは、組成物中の好ましい少なくとも1種の両親媒性化合物である。
【0222】
本発明による経口医薬組成物はまた、少なくとも1種の生理学的に許容される賦形剤、例えば、キトサン、ポリアクリルアミド、天然または合成ゴム、アクリル酸ポリマーおよびコポリマーなどの生体接着性賦形剤も含み得る。
【0223】
いずれの場合も、異なる環境では上記の化合物および/または賦形剤が異なる挙動を示す可能性があることに留意すべきである。
【0224】
本発明による経口医薬組成物は、参照により本明細書に組み込まれる、特許文献2(WO0076478)に記載されているより一般的な錠剤製造プロセスまたは方法に従って製造することができる。
【0225】
一実施形態によれば、本発明の経口医薬組成物は、ポリメタクリレート、アクリル酸および/またはメタクリル酸のポリマーまたはコポリマー、またはセルロースアセトフタレートなどのセルロース誘導体を含み得る胃耐性コーティング(フィルム)で覆われ得る。好ましい実施形態によれば、胃保護コーティングは、Eudragit S100(メタクリル酸-メチルメタクリレートコポリマー)1:2、Eudragit L100(メタクリル酸-メチルメタクリレート1:1コポリマー)および/またはEudragit L30 D55(メチルアクリル酸-エチルアクリレート1:1コポリマー)として商業的に知られている化合物を含むがこれらに限定されないポリメタクリレートを含む。好ましい実施形態によれば、胃保護コーティングは、メタクリル酸-メチルメタクリレート1:1コポリマー(Eudragit L100)を含む。別の好ましい実施形態によれば、胃保護コーティングは、メチルアクリル酸-エチルアクリレート1:1コポリマー(Eudragit L30 D55)を含む。一実施形態では、胃耐性コーティング(フィルム)は、タルク、クエン酸トリエチル、二酸化チタン、および経口医薬組成物に色を与える1種または複数の化合物の1種または複数をさらに含んでもよい。
【0226】
一実施形態によれば、胃耐性コーティングの可溶化に使用される溶媒は、有機、水性および/またはそれらの混合物であり得る。有機溶媒は、エタノール、イソプロパノール、アセトンまたはそれらの混合物の中から選択することができる。好ましくは、有機溶媒はエタノールである。
【0227】
驚くべきことに、本発明の胃耐性コーティングを得るために使用される水性溶媒は、リファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩の医薬組成物への改善された安定性を保証し、リファマイシンSV、またはその製薬上許容される塩自体の不純物の形成を低減することができる。これは、水の存在に対するリファマイシンSVまたはその塩の既知の反応性を考慮して、非常に驚くべきことに発見され、そのようなリファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩の安定化が本発明の組成物で得られることは予期されなかった。一実施形態では、水性胃耐性コーティングは、25℃および60%の相対湿度で24ヶ月後、総不純物が約2.0重量%未満であることを確実にする。別の実施形態では、水性胃耐性コーティングは、25℃/60%RHで24ヶ月後、総不純物が約1.5重量%未満であることを確実にする。
【0228】
一実施形態では、水性胃耐性コーティングは、25℃および60%の相対湿度で36ヶ月後、総不純物が約3.0重量%未満であることを確実にする。別の実施形態では、水性胃耐性コーティングは、25℃および60%の相対湿度で36ヶ月後、総不純物が約2.5重量%未満であることを確実にする。別の実施形態において、水性胃耐性コーティングは、25℃および60%の相対湿度で36ヶ月後、総不純物が約2.0重量%未満であることを確実にする。上記の総不純物の重量%は、(表示された品質説明としての)リファマイシンSVの量に対して算出される。
【0229】
本発明の医薬組成物の胃耐性コーティングは、上記に開示した本発明の医薬組成物からのリファマイシンSVまたはその医薬的に許容される塩の放出の開始を調節することができる。
【0230】
さらなる実施形態によれば、胃耐性コーティングはまた、任意選択で、少なくとも1種の可塑剤、少なくとも1種の染料、またはそれらの混合物を含むことができる。
【0231】
本発明の経口医薬組成物は、錠剤、カプセル、顆粒および/または微小顆粒、好ましくは錠剤から選択され得る。
【0232】
本発明の実施形態によれば、経口医薬組成物は、コアおよび胃耐性コーティングを含む錠剤である。別の実施形態では、経口医薬組成物は、本質的にコアおよび胃耐性コーティングからなる錠剤である。別の実施形態では、経口医薬組成物は、コアおよび胃耐性コーティングからなる錠剤である。一実施形態では、コーティングはコアを覆う。別の実施形態では、コーティングはコア上またはコアに直接塗布される。
【0233】
一実施形態では、コアは、本明細書に記載されるコア中に見出される成分を含むマトリックスである。別の実施形態では、コアは、本明細書に記載のコア中に見出される成分を含む混合物である。一実施形態では、コアは、本明細書に記載されるコア中に見出される成分を含む圧縮ブレンドである。一実施形態では、コアは、本明細書に記載のコア中に見出される成分を含む分散体である。
【0234】
一実施形態において、コアは、成分が本明細書に記載されるそれらの成分を含む成分からなるマトリックスである。別の実施形態では、コアは、成分が本明細書に記載されるそれらの成分を含む成分からなる混合物である。一実施形態では、コアは、成分が本明細書に記載されるそれらの成分を含む成分からなる圧縮ブレンドである。一実施形態では、コアは、成分が本明細書に記載されるそれらの成分を含む成分からなる分散体である。
【0235】
一実施形態によれば、コアは、リファマイシンナトリウムSV、アスコルビン酸、レシチン、ステアリン酸、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、マンニトール、コロイド状無水シリカおよびステアリン酸マグネシウムを含み得る。胃耐性コーティングは、ポリ(メタクリル酸-エチルアクリレート1:1-Eudragit L30 D55)またはポリ(メタクリル酸-メチルメタクリレート1:1-Eudragit L100)、1種以上の染料(二酸化チタンおよび酸化第二鉄など)、タルク、クエン酸トリエチルおよび任意でPEG6000を含み得る。胃耐性コーティングは、水性またはアルコール性(有機の)溶液で調製されてもよい。
【0236】
したがって、本発明の経口医薬組成物の利点の1つは、小腸に対するその特定の部位特異性によって表される。本発明の特定の組成物のおかげで、リファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩は、実際には、腸の近位部分の開始部での胃耐性コーティングの溶解および/または破壊の後に開始して、組成物から放出され、SIBOおよび/またはIBSおよび/またはコレラの影響を受ける部分において、リファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩の治療効果を最大にする。
【0237】
本発明の経口医薬組成物の別の利点は、リファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩の改善された安定化を得ることの可能性によって表される。
【0238】
別の実施形態では、本発明の経口医薬組成物は、pH1で測定した場合、約2時間にわたって約10%未満の溶解速度を有する。
【0239】
一実施形態では、本発明の経口医薬組成物は、約pH6.4で測定した場合、約1時間にわたって約20%未満の溶解速度を有する。
【0240】
一実施形態では、本発明の経口医薬組成物は、約pH6.4で測定した場合、約3時間にわたって約20%~約60%の溶解速度を有する。
【0241】
一実施形態では、本発明の経口医薬組成物は、約pH6.4で測定した場合、約6時間にわたってリファマイシンSVの約80%以上の溶解速度を有する。
【0242】
本発明によれば、溶解は、37°±2℃で100rpmでパドルを備えたUSP溶解装置タイプIIを用いて測定される。
【0243】
一実施形態では、本発明の経口医薬組成物は、37°±2°Cで100rpmのパドルを備えたUSP溶解装置タイプIIで約pH6.4で測定した場合、約1時間で約20%未満、約3時間で約20%~約60%、約6時間で約80%以上の溶解速度を有する。
【0244】
いくつかの実施形態では、リファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩は、小腸でのみ放出されるため、治療および有効性を最大化する必要がある場合、リファマイシンSVまたはその塩、好ましくはナトリウム塩の完全な放出を確実にする。
【0245】
他のいくつかの実施形態では、リファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩は、小腸で始まり、大腸内で継続して放出される。
【0246】
本発明の経口医薬組成物は、細菌の異常増殖を正常な増殖レベルにダウンレギュレートするため、SIBOおよび/またはIBSの予防および/または治療に特に有用である。
【0247】
本発明の経口医薬組成物は、コレラの予防および/または治療に特に有用である。
【0248】
したがって、一実施形態では、本発明は、上記の本発明の経口医薬組成物を、SIBO、IBSおよび/またはコレラの予防および/または治療を必要とする対象、好ましくはヒト対象(human subject)に投与することを含む、SIBO、IBSおよび/またはコレラを予防および/または治療する方法である。
【0249】
一実施形態では、本発明は、IBS-C、IBS-D、IBS-Mおよび/またはIBS-Uの予防および/または治療する方法、好ましくは、IBS-Dの治療方法であって、本発明の経口医薬組成物を、IBS-C、IBS-D、IBS-Mおよび/またはIBS-Uの予防および/または治療を必要とする対象、好ましくはヒト対象に投与することを含む。
【0250】
別の実施形態では、本発明は、本発明の経口医薬組成物を、コレラの治療を必要とする対象、好ましくはヒト対象に投与することを含む、コレラを治療する方法である。
【0251】
別の実施形態では、本発明は、本発明の経口医薬組成物を、肝性脳症、肝硬変、嚢炎および/または特発性細菌性腹膜炎の治療および/または予防を必要とする対象、好ましくはヒト対象に投与することを含む、肝性脳症、肝硬変、嚢炎および/または特発性細菌性腹膜炎を治療および/または予防する方法である。
【0252】
別の実施形態では、本発明は、本発明の経口医薬組成物を、NAFLD、NAFLおよび/またはNASHの治療および/または予防を必要とする対象、好ましくはヒト対象に投与することを含む、NAFLD、NAFLおよび/またはNASHを治療および/または予防する方法である。
【0253】
本発明の経口医薬組成物は、好ましくは、約600mg/用量単位のリファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩を無水形態(すなわち、リファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩、好ましくはリファマイシンSVナトリウム塩)で含む。本発明の経口医薬組成物が無水形態のリファマイシンSVナトリウム塩600mg/用量単位を含む場合、無水形態のリファマイシンSVの当量は、582mg/用量単位である。
【0254】
一実施形態では、組成物は、約1800mg/日の最適な毎日の投薬量に到達するために、好ましくは1日3錠の錠剤(すなわち、一日に3回(t.i.d)または一日に1回全部一緒に)の投与計画に従って投与される。前記t.i.d.の毎日の投与計画は、好ましくは14日間続くが、数ヶ月間続くこともある。
【0255】
別の実施形態では、本発明の経口医薬組成物は、約1200mg/日の最適な毎日の投薬量に到達するために、好ましくは1日2錠の錠剤(すなわち、一日に2回(b.i.d.)または一日に1回全部一緒に)の投与計画に従って投与される。前記b.i.d.の毎日の投与計画は、好ましくは1~4週間、好ましくは14日間続くが、数か月続くこともある。
【実施例0256】
以下の実験のセクションでは、本発明の内容を何ら限定することなく本発明を詳細に説明する。
【0257】
実施例1:表1に開示された定性的/定量的組成を有するリファマイシンナトリウム600mg持続放出性コーティング錠を製造した。
【0258】
有機フィルムコート(胃耐性コーティング)
【0259】
【0260】
リファマイシンSV(ナトリウム塩)、アスコルビン酸、レシチン、ステアリン酸およびステアリン酸マグネシウムの一部を、分散体の均一性が得られるまで適切な容器で混合した。次に、マンニトール、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびシリカを加え、混合物を再度混合した。ステアリン酸マグネシウムの添加が完了し、粉末を回転打錠機内で圧縮して、錠剤コアを得た。次に、これらを、溶媒としてエタノールを使用して、Eudragit L100、クエン酸トリエチル、タルク、二酸化チタンおよび赤色三二酸化鉄でパンコートユニット(pan coat unit)でコーティングして、胃耐性コーティング層を塗布した。次に、錠剤を、水溶液でポリエチレングリコール6000を追加することにより研磨した。
【0261】
調製した錠剤を、表2の条件下でpH1における溶出試験で評価した。:
【0262】
【0263】
溶解試験は、pH1の溶解媒体1000mLを試験容器に移し、溶液を37°C±0.5°Cに加温することで実施した。組成物の1錠を試験容器に加えた。2時間後、各容器の溶解媒体をサンプリングし、濾過し、UV可視分光光度計を使用して、溶解媒体を含むブランクに対して分析した。
【0264】
溶解時間の終了時(2時間)に、各容器の溶解媒体をサンプリングし、濾過し、UV可視分光光度計を使用してブランクに対して分析した。試験容器内の錠剤から放出されたリファマイシンSVナトリウムの量を、次式を使用して計算した。
【0265】
【0266】
pH1での溶解試験において、実施例1に従って製造された錠剤から放出されたリファマイシンSVの量を表3に開示する。
【0267】
【0268】
調製された錠剤は、表4の条件下でのpH6.4での溶解試験でも評価された。
【0269】
【0270】
試験溶液は、6.8gの一塩基リン酸カリウム(KH2PO4)および0.5gのNaOHを約400mLの精製水に溶解し、精製水で総量1000mLに希釈することで調製した。分析手順で使用する標準溶液は、溶解媒体に溶解した0.67mg/mLリファマイシンSV W.Sの溶液として調製した。
【0271】
溶解試験は、900mLのpH6.4緩衝液を試験容器に移し、溶液を37°C±0.5°Cに加温することで実施した。組成物の1錠を試験容器に加えた。所定のサンプリング時間で、各容器の溶解媒体をサンプリングし、濾過し、UV可視分光光度計を使用して、溶解媒体を含むブランクに対して分析した。試験容器内の錠剤から放出されたリファマイシンSVナトリウムの量を、次式を使用して計算した。
【0272】
【0273】
pH6.4での溶解試験において、実施例1に従って製造された錠剤から放出されたリファマイシンSVの量を表5に開示する。
【0274】
【0275】
安定性:安定性研究は、新しい製剤の安定性研究に関するICHガイドラインに従って、実施例1に従って製造された1バッチの錠剤に対して実施された。錠剤を、25℃/60%RHに置いた。結果を以下の表5aに報告する。
【0276】
【0277】
実施例2:表6に開示された定性的/定量的組成を有するリファマイシンナトリウム600mg持続放出コーティング錠を製造した。
【0278】
水性フィルムコート(胃耐性コーティング):
【0279】
【0280】
安定性:安定性研究は、新しい製剤の安定性研究に関するICHガイドラインに従って、実施例2に従って製造された1バッチの錠剤に対して実施された。錠剤を、25℃/60%RHに置いた。結果を以下の表6aに報告する。
【0281】
【0282】
実施例3:リファマイシンSVの抗炎症特性のin vitro評価
炎症はIBSの病因に主要な役割を果たしており、このため、炎症を抑制するリファマイシンSVの能力が特徴付けられた。PXR刺激とNFkB阻害による評価は、IBSとの関連で腸環境を模倣した細胞系でin vitroで実施した。
【0283】
PXR活性を分析および定量化するためのアッセイ:
ヒトPXRの本質的で高レベルの発現を提供するように設計された独自のヒト細胞を利用する核内受容体アッセイシステムを使用して、PXRに対するリファマイシンSVアゴニスト活性のEC50を決定した。
【0284】
Indigo Biosciences(ペンシルベニア州、USA)のこのアッセイ製品は、ヒトPXRのハイブリッド型を発現する細胞を利用している。PXR DNA結合ドメイン(DBD)をコードするN末端配列は、酵母のGAL4-DBDのもので置換されており、ネイティブPXRリガンド結合ドメイン(LBD)および他のC末端ドメインはそのままで機能している。リガンド相互作用は、受容体を活性化し、常駐ルシフェラーゼレポーター遺伝子に機能的にリンクされているGAL4 DNA結合配列にそれを結合させる。従って、処理されたレポーター細胞におけるルシフェラーゼ活性の変化を定量化することは、PXR活性の変化の高感度な代理測定を提供する。このレポーターアッセイシステムの主な用途は、ヒトPXRに対して作用し得るアゴニストまたはアンタゴニストの機能的活性を定量化するためのテストサンプルのスクリーニングである。リファマイシンSVの濃度の増加をリファキシミンと比較してテストし、リファンピシンをアッセイの陽性対照として使用した。実験を3回繰り返し、標準偏差を計算した。EC50および95%CIは、Prism統計分析ソフトウェアを使用して決定され、対数(アゴニスト)対応答-可変勾配(4パラメータ)として表されるデータポイントを介して非線形曲線を適合した。p値は、Prismパラメトリック、対応のあるt検定分析(Prism parametric, paired t test analysis)を使用して計算した。
【0285】
NFkB活性を測定するためのアッセイ:
NFkB転写因子のリファマイシンSVアンタゴニズムのIC50を測定するアッセイでは、PXRアッセイと同様のレポーターシステムを使用した。Indigo BiosciencesのNFkB核内受容体アッセイシステムは、NF-kBレポーターで一過性にトランスフェクトされたヒト腎臓上皮細胞を利用する。これらのレポーター細胞からの転写活性として測定されるNFkB生物学的活性は、すべての細胞内分子相互作用とin vivoで発生すると予測できるイベントの同じオーケストレーションを要求する。
【0286】
細胞を、30ng/mLのTNFαの存在下、アンタゴニストモード下で処理して、NFkB炎症カスケードを刺激した。リファマイシンSVの濃度の増加を、リファキシミンと比較してテストした。24時間後、NFkB転写活性に比例するルミネセンスを定量化した。実験を、2回繰り返し、標準偏差を計算した。IC50および95%CIは、Prism統計分析ソフトウェアを使用して決定され、log(阻害剤)対応答(3パラメーター)として表されるデータポイントを介して非線形曲線を適合した。p値は、Prismパラメトリック、対応のあるt検定分析を使用して計算した。
【0287】
実験結果は、リファマイシンSVがPXR転写活性の刺激においてリファキシミンよりも200~440倍強力であることを示した。さらに、リファマイシンSVは、NFkB転写活性の阻害においてリファキシミンよりも4000倍強力である。
【0288】
提示されたすべてのデータは、リファマイシンSVがリファキシミンよりはるかに優れた強力な抗炎症活性を備えていることを示している。これらの特性により、リファマイシンSVは、IBS治療の非常に優れた候補であり、IBS、特にIBS-Dの症状の軽減を示されることを意図した製剤のための理想的な基質となる。もちろん、患者の治癒のための効果的なツールであるためには、適切な量のリファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩が患者に投与され、適切な薬力学的活性を示すことができる器官に送達されることを確実にするために向けられた前掲の実施例で確認されているように、リファマイシンSVまたはその製薬上許容される塩は、適切な用量で、理想的な送達速度および範囲で投与されなければならない。
【0289】
実施例4:薬物動態および安全性評価:
実施例1の錠剤(リファマイシンSVナトリウム600mg錠剤)を、男性および女性の健常人で試験して、1800mg/日の累積1日摂取量に対する本発明の錠剤TIDのリファマイシンSVの単回投与(1日目に)および複数回投与(7日後)後に得られた投与の安全性およびPKプロファイルを評価した。
【0290】
試験の一次エンドポイントは、600mgのt.i.d.(一日に3回)の投与計画に従って、健康な対象に投与された実施例1の錠剤の単回投与(1日目)および複数回投与(7日目)後の血漿および尿中のリファマイシンSVの薬物動態の評価であった。
【0291】
試験の二次エンドポイントは、連続14日間のt.i.d.投与計画に従って投与された実施例1の錠剤の安全性および耐容性の評価であった。すべての研究対象は、以下のように1日目から14日目までの複数回投与計画に従って実施例1の錠剤を受け取った:
-ナトリウムリファマイシンSV 1800mg、実施例1の600mg錠剤1錠として、1日3回(t.i.d.)連続7日間、08:00±1h(朝食前)、14:00±1h(昼食前)および20:00±1時間(夕食前)。各治療日における、1回目と2回目の投与間隔、および2回目と3回目の投与間隔τ=6時間。1日の3回目の投与と翌日の1回目の投与間隔τ=12時間。
-8日目の退院後、対象は自宅で同じ投与計画に従って14日目まで合計42回の投与を続けた。
【0292】
評価のための薬物動態基準は、以下の通りであった:
-実施例4の錠剤の最初の投与後の血漿リファマイシンSVのCmax,0-6,tmax,0-6,AUC0-6,AUC0-∞,t1/2,λz,Clt/F,ClrおよびVz/F;
-リファマイシンSV600mg錠剤の最初の3回投与後の血漿リファマイシンSVのCmax,0-24,tmax,0-24およびAUC0-24;
-リファマイシンSV600mg錠剤の最後の複数回投与後の血漿リファマイシンSVのCmax,ss,12-18,tmax,ss,12-18,Cmin,ss,12-18,Cave,12-18,PTF%12-18およびAUCss,12-18;
-リファマイシンSV600mg錠剤の最後の3回投与後の血漿リファマイシンSVのAUCss,0-24;および
-リファマイシンSV600mg錠剤の最初の3回および最後の3回の複数回投与後の尿中リファマイシンSVのAe0-24および%Ae0-24。
【0293】
薬物動態パラメータおよび結果:
試験製剤による試験治療中の1日目と7日目の平均(+SD)リファマイシンSV濃度(ng/mL)対時間プロファイルを
図1に示す。
【0294】
治療の1日目と7日目に測定および計算された血漿リファマイシンSVの薬物動態パラメータを以下に示す。中央値(範囲)が表7に示されているtmaxを除き、平均±SDが報告されている(N=18)。
【0295】
【0296】
Cmax,0-6は、「ピーク濃度」、つまり経口投与後0~6時間の時間での薬物のピーク血漿濃度に対応し、tmax,0-6は、「ピーク濃度までの時間」、すなわち経口投与後の薬物の経口投与後0~6時間の時間でピーク血漿濃度に到達するまでの時間に対応する。
【0297】
Cmax,0-24は、「ピーク濃度」、つまり経口投与後0-24時間の時間での薬剤のピーク血漿濃度に対応し、tmax,0-24は、「ピーク濃度までの時間」、すなわち経口投与後の薬物の経口投与後0~24時間の時間でピーク血漿濃度に到達するまでの時間に対応する。
【0298】
AUCは、「曲線下面積」、すなわち、濃度-時間曲線の積分(単回投与後または定常状態後)に対応する。特に、AUC0-6は、6時間までの曲線下の面積であり、AUC0-24は24時間までの曲線下の面積であり、AUC0-∞は、無限大までの曲線下の面積である。
【0299】
治療の1日目と7日目に計算された、尿中に排泄されたリファマイシンSVの総量は、以下の表8に報告されている(平均値±SDが報告されている)。
【0300】
【0301】
安全性の結果:
重篤な有害事象は報告されておらず、有害事象のために研究を中止した対象はいなかった。リファマイシンSVによる治療後、バイタルサイン、BW、ECG、または実験室パラメータに有意な変化は観察されなかった。複数回投与治療の間、肝機能または腎機能の有意な変化は観察されなかった。
【0302】
結論:
リファマイシンSV600mg錠剤の単回および複数回のt.i.d.投与後の全身的に利用可能なリファマイシンSVのPKプロファイルおよび安全性を、18人の健康な男性と女性の対象で調査した。対象は、1日量1800mgのリファマイシンSVに14日間連続して初めて曝露された。リファマイシンSVのPKは、1日目と7日目に血漿と尿で調査された。1日目、リファマイシンSVは、初回投与の9時間後からすべての対象の血漿レベルで定量化できた。平均して、リファマイシンSVは、9.5時間の中位時間でピークに達した(Cmax,0-24:6.23±4.52ng/mL)。7日目に、すべての対象は、各サンプリング時間で血漿中にリファマイシンSVの定量可能なレベルを有した。リファマイシンSVは、7日目の最初の投与の2時間後にピークに達し、その後、1日目とほぼ同様のレベルまで減少した。t.i.d.治療の7日後、リファマイシンSVの吸収は、速度と程度において、わずかに増加し、蓄積の顕著な兆候を示さなかった。尿中に排泄されたリファマイシンSVの総量は、7日目に0.0033%であった。
【0303】
リファマイシンSV600mg錠剤は、優れた安全性プロファイルを示した。
【0304】
実施例5:細菌株に対するリファマイシンSVの活性
SIBOおよび/またはIBSの治療におけるリファマイシンSVおよびその塩の有効性は、表9に示すように、他の抗菌剤と比較した、特定の病原性細菌株、すなわち、通常IBS患者、特にIBS-D患者に存在するMethanobrevibacter smithiiに対するMIC(最小発育阻止濃度(Minimum Inhibiting Concentration))の評価によって検証された。
【0305】
【0306】
当然のことながら、リファマイシンSVは、SIBOおよび/またはIBS治療に適していると既に記載されている他の活性剤よりも効果的である。
【0307】
リファキシミンおよびリファンピシンの活性と比較した、PXR転写活性のアゴニズムのアッセイにおけるリファマイシンSVの活性を、表10に示す。
【0308】
【0309】
PXR転写効力に対するアゴニスト活性のEC50値に基づくと、リファマイシンSVは、リファキシミンおよびリファンピシンよりも200~440倍強力である。このアッセイにおけるリファキシミンとリファマイシンSVとの効力の差は、統計的に有意であると決定され、p値は0.018であった。30μMのリファキシミンは、0.3μMのリファマイシンSVより2.5倍効力が低くなる。これは、PXR転写活性の刺激において、リファマイシンSVがリファキシミンより250倍強力であると解釈される。したがって、リファマイシンSVは、炎症性腸疾患に効果的であり、PXR活性の刺激においてより強力であることが確認される(実際、100倍低い用量を使用している)。リファマイシンSVはまた、実験的アッセイで陽性対照として使用されているリファンピシンよりも180倍強力であることが示されている。
【0310】
実施例6A:NFkBアゴニズムアッセイにおけるリファマイシンおよびリファキシミンの活性
リファマイシンSVおよびリファキシミンのNFkBアゴニズムの作用を、アッセイで試験した。結果を表11に示す。
【0311】
【0312】
実施例6B:レポーター細胞株におけるNFkB転写活性の阻害
NFκB阻害がリファマイシン誘発PXR活性化時に発生することを確立するために、全長NFκBを発現し、上流のNFκB遺伝子応答要素に機能的にリンクされたルシフェラーゼレポーター遺伝子を保有するレポーター細胞株を、PMA、TNFαまたはLPSで刺激して、NFκBを誘発した。リファマイシンまたはリファキシミンを、これらの刺激された細胞に用量滴定した。24時間のインキュベーション後、NFκB転写活性に関連する発光を定量した。リファマイシンは、PMA誘発NFκB活性の拮抗においてリファキシミンより強力であり、IC
50値はそれぞれ1.56x10
-8M対9.3910
-8Mであり、リファキシミンの6倍の高い効力を示した(
図4A)。リファマイシンはまた、IC
50値が1.48x10
-5M(
図4B)のTNFα誘発NFκB活性、およびIC50値が3.49x10
-6M(
図4C)のLPS誘発NFκB活性を拮抗した。全く対照的に、リファキシミンは、テストされた最高濃度まで、TNFα誘発NFκB活性もLPS誘発NFκB活性も阻害しなかった。これらの結果は、炎症刺激に関係なく、リファマイシンによるPXR活性化とNFκB阻害との間に確かな相関関係を確立する。
【0313】
PXRはNFκBの阻害を通じて間接的に炎症を調節できるため、データは、リファマイシンがNFκB活性のアンタゴニズムを介して腸の免疫機能を正常化する代替経路または並行経路を誘導することを示している。リファマイシンは、PMA、TNFα、およびLPS誘発NFκB活性の強力なアンタゴニズムを示した。PMAは、プロテインキナーゼCを直接活性化することにより、細胞表面受容体を介して媒介されるNFκBの誘発を回避する。したがって、PMA誘発NFκBのアンタゴニズムは、複数の細胞表面受容体からのシグナル伝達の潜在的な阻害の指標である。リファマイシンは、PMA誘発NFκBの拮抗においてリファキシミンよりも強力であった。TNFα受容体がNFκBを刺激するために特異的に活性化された場合、リファマイシンは、TNFα誘発シグナル伝達に強力に拮抗したが、リファキシミンは効果がなかった。さらに重要なことに、LPS誘発NFκBのリファマイシンによる強力な阻害があったが、リファキシミンは効果がなかった。
【0314】
興味深いことに、これらのデータは、PMA誘発NFκBのみを阻害したリファキシミンとは対照的に、リファマイシンがPMA、TNFα、およびLPS誘発NFκBを強力に阻害したため、リファマイシンによるNFκBの阻害は刺激に依存しないことを示している。PMAまたはジアシルグリセロール活性化PKCは、それぞれ、T細胞受容体、またはT細胞およびマスト細胞などの免疫細胞で発生するIgE誘発NFκBにとって重要である。一方、結腸上皮細胞で発生するTNFまたはLPS誘発NFκBには、他のシグナル伝達因子(TRAF、TNFR関連因子)が必要である。最も重要なことは、IBSまたはIBDとの関連性から、NFκBの生物学的機能が結腸上皮細胞で確認されたことである。リファマイシンは、NFκBで制御されるケモカインであるIL-8のIL1β誘発合成を有意に阻害した。炎症を誘発するためのこれらの細胞依存要件は、さまざまな標的細胞に作用することにより、リファマイシンの抗炎症性の可能性が広いことを意味するが、これは、調節不全の免疫細胞および上皮細胞の相互作用がいくつかのGI障害の病因に寄与するためである。
【0315】
実施例7:下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)を伴う対象における実施例1の600mg錠剤の有効性および安全性のフェーズII、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ制御、概念実証研究。
【0316】
IBS-Dに苦しむ対象は、3つの治療グループの1つにランダムに割り当てられ(1:1:1)、次の治療のいずれかを14日間連続して受ける。
【0317】
治療グループ1:
実施例1の錠剤は、以下のスケジュールに従って対象に1日3回(t.i.d.)投与される:(a)朝に600mgの1錠剤;(b)午後に600mgの1錠剤;および(c)夕方に600mgの1錠剤。
【0318】
治療グループ2:
実施例1の錠剤は、1日2回(b.i.d.)、それに加え、釣り合う用量のプラセボを1日1回(q.d.)、以下のスケジュールに従って対象に投与される。(a)朝に600mgの1錠剤(b)午後のプラセボ1錠剤;(c)夕方に600mgの1錠剤。
【0319】
治療グループ3:
プラセボ錠剤は、以下のスケジュールに従って1日3回(t.i.d.)対象に投与される:(a)朝にプラセボ1錠剤;(b)午後にプラセボ1錠剤。(c)夕方にプラセボ1錠剤。
【0320】
すべての対象は、割り当てられた錠剤をt.i.d.、理想的には次の時間に服用する:07:30±2h、15:30±2hおよび23:30±2h、14日間。治療週の後には、10週間のフォローアップ週が続く。
【0321】
研究の主なエンドポイントは、毎日の評価に基づいて、腹痛と便の硬さの複合症状の緩和が毎週ある対象として定義された毎週のレスポンダーの割合であろう。腹痛の軽減は、ベースラインと比較して、少なくとも30%の腹痛スコアの週平均の減少として定義され、便の硬さの軽減は、7ポイントのブリストル便形状スケールに従い、ベースライン7と比較してタイプ6またはタイプ7の硬さを有する便が少なくとも1回ある、週当たりの日数が50%以上減少するとして定義される。
【0322】
ブリストル便スケールは、便の密度を段階的に視覚化した尺度である。これは、消化管通過時間の代用として検証され、クロストリジウムディフィシル感染症(CDI)のための欧州臨床微生物学および感染症学会によって「下痢」を定義するために使用される。スケールのパラメータを表12に示す。
【0323】
上記のスケジュールに従って実施例1の600mg錠を1日2回または3回投与された対象は、ベースラインと比較して、少なくとも30%の腹痛スコアの週平均の減少として測定される腹痛の緩和、および7ポイントのブリストル便形状スケールに従い、ベースライン7と比較してタイプ6またはタイプ7の硬さを有する便が少なくとも1回ある、週当たりの日数が50%以上減少すると測定される便の硬さの軽減を観察する。
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【0325】
本開示の主題は、特徴の様々な組み合わせおよび準組み合わせを含む特定の例示的な実施形態を参照して、かなり詳細に説明および示されているが、当業者は、本開示の範囲内に包含される、他の実施形態およびその変形および改変を容易に理解するであろう。さらに、このような実施形態、組み合わせ、および準組み合わせの説明は、請求される主題が、請求項に明示的に記載されるもの以外の特徴または特徴の組み合わせを必要とすることを表すことを意図されない。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に包含されるすべての改変および変形を含むことが意図されている。