(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112091
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】ガラス製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 15/00 20060101AFI20230803BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20230803BHJP
C03C 23/00 20060101ALN20230803BHJP
【FI】
C03C15/00 B
C03C21/00 101
C03C23/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101978
(22)【出願日】2023-06-21
(62)【分割の表示】P 2019017926の分割
【原出願日】2019-02-04
(31)【優先権主張番号】10-2018-0016742
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】弁理士法人PORT
(72)【発明者】
【氏名】李 會 官
(72)【発明者】
【氏名】金 性 勳
(72)【発明者】
【氏名】金 勝 鎬
(72)【発明者】
【氏名】柳 淑 敬
(72)【発明者】
【氏名】柳 アン ナ
(72)【発明者】
【氏名】李 政 錫
(57)【要約】
【課題】ガラス製品及びその製造方法が提供される。
【解決手段】ガラス製品の製造方法は、ガラスバルク、及びガラスバルク上に配置された低屈折表面層を含む被処理ガラスを提供し、低屈折表面層をエッチングすること、を含み、低屈折表面層をエッチングすることは、低屈折表面層を酸洗浄し、酸洗浄された低屈折表面層を塩基洗浄すること、を含む。外部からの衝撃によって容易に破損しない高強度を有するガラス製品を提供することができる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスバルク、及び前記ガラスバルク上に配置された低屈折表面層を含む被処理ガラスを提供し、
前記被処理ガラスの表面を研磨すること、
を含み、
前記被処理ガラスの表面を研磨することは、前記低屈折表面層を少なくとも部分的に除去することを含む、ガラス製品の製造方法。
【請求項2】
前記被処理ガラスは、第1表面、及び前記第1表面と対向する第2表面を含み、
前記被処理ガラスの表面を研磨することは、前記第1表面を研磨することと、前記第2表面を研磨することと、を含む、請求項1に記載のガラス製品の製造方法。
【請求項3】
前記研磨の厚さは、100nm以上1000nm以下である、請求項1に記載のガラス製品の製造方法。
【請求項4】
前記研磨された被処理ガラスの研磨表面の粗さは、0.5nm以上50nm以下である、請求項3に記載のガラス製品の製造方法。
【請求項5】
前記被処理ガラスの前記低屈折表面層の厚さは、100nm以上500nm以下である、請求項1に記載のガラス製品の製造方法。
【請求項6】
前記低屈折表面層の屈折率は、前記ガラスバルクの屈折率より小さく空気の屈折率よりも大きい、請求項1に記載のガラス製品の製造方法。
【請求項7】
前記被処理ガラスは、表面側に配置された圧縮領域と内部に配置された引張領域とを含み、
前記低屈折表面層は前記圧縮領域内に配置され、前記低屈折表面層の厚さは前記圧縮領域の圧縮深さよりも小さい、請求項1に記載のガラス製品の製造方法。
【請求項8】
前記研磨された被処理ガラスの最大圧縮ストレスは、前記被処理ガラスの最大圧縮ストレスよりも小さい、請求項7に記載のガラス製品の製造方法。
【請求項9】
前記被処理ガラスの最大圧縮ストレスと前記研磨処理されたガラスの最大圧縮ストレスとの差は10Mpa以上100Mpa以下である、請求項8に記載のガラス製品の製造方法。
【請求項10】
前記研磨された被処理ガラスの圧縮深さは、前記被処理ガラスの圧縮深さと実質的に同一である、請求項7に記載のガラス製品の製造方法。
【請求項11】
前記研磨された被処理ガラスの最大引張ストレス(CT1)は、CT1≦-37.6*ln(t)+48.7を満たし、CT1の単位はMpaであり、tは前記研磨された被処理ガラスの厚さであって、mm単位である、請求項7に記載のガラス製品の製造方法。
【請求項12】
前記被処理ガラスの最大引張ストレスは、CT1’>-37.6*ln(t’)+48.7を満たし、CT1’の単位はMpaであり、t’は被処理されたガラスの厚さであって、mm単位である、請求項11に記載のガラス製品の製造方法。
【請求項13】
前記圧縮領域は、前記低屈折表面層の表面で最大圧縮ストレスを有する、請求項7に記載のガラス製品の製造方法。
【請求項14】
第1表面、及び前記第1表面と対向する第2表面を含み、前記第1表面で第1最大圧縮ストレスを有し、前記第2表面で第2最大圧縮ストレスを有する被処理ガラスを提供し、
前記第1表面及び前記第2表面のうちの少なくとも一つを研磨して前記第1最大圧縮ストレスと前記第2最大圧縮ストレスとの偏差を減少させること、
を含む、ガラス製品の製造方法。
【請求項15】
前記被処理ガラスはフローティング工法で製造され、
前記被処理ガラスの前記第1表面はフローティング流体接触面であり、
前記被処理ガラスの前記第2表面はフローティング流体非接触面である、請求項14に記載のガラス製品の製造方法。
【請求項16】
第1表面、前記第1表面と対向する第2表面、及び側面を含み、
前記第1表面から第1圧縮深さを有する第1圧縮領域、前記第2表面から第2圧縮深さを有する第2圧縮領域、及び前記第1圧縮領域と前記第2圧縮領域との間に配置された引張領域を含むガラスであって、
ガラスバルクと、前記ガラスバルクの側面上に配置された側面低屈折表面層とを含み、
前記側面低屈折表面層の屈折率は、前記ガラスバルクの屈折率より小さく空気の屈折率よりも大きいガラスを含む、ガラス製品。
【請求項17】
前記ガラスは、前記第1表面から前記第2表面まで実質的に同一の屈折率を有する、請求項16に記載のガラス製品。
【請求項18】
前記側面低屈折表面層の厚さは、100nm以上500nm以下である、請求項16に記載のガラス製品。
【請求項19】
前記ガラスバルクの前記第1表面上に配置された第1表面低屈折表面層をさらに含み、
前記第1表面低屈折表面層は、前記側面低屈折表面層と同一の物質からなり、
前記第1表面低屈折表面層は、前記側面低屈折表面層よりも厚さが小さい、請求項18に記載のガラス製品。
【請求項20】
前記第1表面及び前記第2表面の粗さは0.5nm以上50nm以下の範囲にある、請求項16に記載のガラス製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス製品は、表示装置を含む電子機器や建築資材などに多用される。例えば、液晶表示装置(LCD:liquid crystal display)、OLED(organic light-emitting diode)、電気泳動表示装置(EPD;electrophoretic display)などのフラットパネル表示装置の基板や、これを保護するウィンドウなどにガラス製品が適用される。
【0003】
スマートフォン、タブレットPCなどの携帯用電子機器が増えるにつれて、これらに適用されるガラス製品も外部からの衝撃に頻繁に晒される。携帯性のために薄いながらも、外部からの衝撃に耐えられる良好な強度を有するガラス製品の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、強度が向上されたガラス製品の製造方法を提供しようとすることである。
【0005】
本発明が解決しようとする他の課題は、強度が向上されたガラス製品を提供しようとすることである。
【0006】
本発明の課題は上述した課題に限定されない。上述していない別の技術的課題は、以降の記載から当業者に明確に理解できるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための一実施形態に係るガラス製品の製造方法は、ガラスバルク、及び前記ガラスバルク上に配置された低屈折表面層を含む被処理ガラスを提供し、前記低屈折表面層をエッチングし、エッチング処理されたガラスを形成すること、を含み、前記低屈折表面層をエッチングすることは、前記低屈折表面層を酸洗浄し、前記酸洗浄された前記低屈折表面層を塩基洗浄すること、を含む。
【0008】
上記の課題を解決するための他の実施形態に係るガラス製品の製造方法は、ガラスバルク、及び前記ガラスバルク上に配置された低屈折表面層を含む被処理ガラスを提供し、前記被処理ガラスの表面を研磨し、研磨処理されたガラスを形成すること、を含み、前記被処理ガラスの表面を研磨することは、前記低屈折表面層を少なくとも部分的に除去すること、を含む。
【0009】
上記の課題を解決するための別の実施形態に係るガラス製品の製造方法は、第1表面、及び前記第1表面と対向する第2表面を含み、前記第1表面で第1最大圧縮ストレスを有し、前記第2表面で第2最大圧縮ストレスを有する被処理ガラスを提供し、前記第1表面及び前記第2表面のうちの少なくとも一つを研磨して前記第1最大圧縮ストレスと前記第2最大圧縮ストレスとの偏差を減少させること、を含む。
【0010】
上記の課題を解決するための一実施形態に係るガラス製品は、ガラスバルク、及び前記ガラスバルク上に配置された低屈折表面層を含むガラスであって、前記ガラスの表面側に配置された圧縮領域と、前記ガラスの内部に配置された引張領域とを含み、前記低屈折表
面層の屈折率は、前記ガラスバルクの屈折率より小さく空気の屈折率よりも大きく、前記低屈折表面層は、前記圧縮領域内に配置され、前記低屈折表面層の厚さは、100nm未満であり、前記圧縮領域の圧縮深さよりも薄いガラスを含む。
【0011】
上記の課題を解決するための他の実施形態に係るガラス製品は、第1表面、前記第1表面と対向する第2表面、及び側面を含み、第1表面から第1圧縮深さを有する第1圧縮領域、前記第2表面から第2圧縮深さを有する第2圧縮領域、及び前記第1圧縮領域と前記第2圧縮領域との間に配置された引張領域を含むガラスであって、ガラスバルクと、前記ガラスバルクの側面上に配置された側面低屈折表面層とを含み、前記側面低屈折表面層の屈折率は、前記ガラスバルクの屈折率より小さく空気屈折率よりも大きいガラスを含む。
【0012】
その他の実施形態の具体的な事項は、詳細な説明及び図面に含まれている。
【発明の効果】
【0013】
一実施形態に係るガラス製品は、外部からの衝撃によって容易に破損しない高強度を有することができる。一実施形態に係るガラス製品の製造方法は、簡単な方法でガラス製品に高強度を与えることができる。
【0014】
実施形態に係る効果は上述した内容によって限定されず、さらに様々な効果が本明細書中に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】様々な実施形態に係るガラス製品の斜視図である。
【
図2】一実施形態に係る平板プレート状のガラス製品の断面図である。
【
図3】一実施形態に係るガラス製品のストレスプロファイルを示すグラフである。
【
図4】一実施形態に係るイオン交換工程を示す概略図である。
【
図5】一実施形態に係るガラス製品の製造方法のフローチャートである。
【
図6】低屈折表面層を含む強化ガラスの断面図である。
【
図7】強化ガラスの酸洗浄工程を示す断面図である。
【
図8】強化ガラスの塩基洗浄工程を示す断面図である。
【
図9】エッチング工程前後のストレスプロファイルを示すグラフである。
【
図10】エッチング方式によるガラス製品の表面を比較して示す平面写真である。
【
図11】エッチング方式によるガラス製品の表面を比較して示す平面写真である。
【
図12】様々な実施形態に係る2次イオン交換処理されたガラスのストレスプロファイルを示すグラフである。
【
図13】様々な実施形態に係る2次イオン交換処理されたガラスのストレスプロファイルを示すグラフである。
【
図14】他の実施形態に係るガラス製品の製造方法のフローチャートである。
【
図15】強化ガラスの研磨工程を示す断面図である。
【
図16】研磨工程が完了したガラス製品の断面図である。
【
図19】様々な実施形態に係るガラス製品の鉄球落下テスト結果を示すグラフである。
【
図20】様々な実施形態に係るガラス製品の鉄球落下テスト結果を示すグラフである。
【
図21】様々な実施形態に係るガラス製品の鉄球落下テスト結果を示すグラフである。
【
図22】ガラス製品サンプルに対するエッチング工程前後の圧縮ストレスを示すグラフである。
【
図23】ガラス製品サンプルに対するエッチング工程前後の圧縮深さを示すグラフである。
【
図24】ガラス製品サンプルに対する研磨工程前後の圧縮ストレスを示すグラフである。
【
図25】ガラス製品サンプルに対する研磨工程前後の圧縮深さを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の利点、特徴、及びそれらを実現する方法は、添付図面と共に詳細に後述されている実施形態を参照すると明確になるだろう。しかし、本発明は、以下で開示する実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現される。但し、本実施形態は、単に本発明の開示を完全たるものにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。本発明は、請求項の範疇によってのみ定められる。
【0017】
素子または層が他の素子または層の「上」にあると記載された場合は、他の素子または層の真上に存在する場合だけではなく、それらの間に別の層または別の素子が介在している場合を含む。明細書全体にわたって、同一の参照符号は同一の構成要素を指し示す。
【0018】
「第1」、「第2」などの用語は様々な構成要素を記述するために使用されるが、これらの構成要素はこれらの用語によって限定されない。これらの用語は、単に一つの構成要素を他の構成要素と区別するために使用されるものである。よって、以下で言及される第1構成要素は本発明の技術的思想内で第2構成要素であってもよい。
【0019】
本明細書において、「ガラス製品」は、全体がガラスからなるか、或いは部分的にガラスを含む物を指す。
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
ガラスは、タブレットPC、ノートPC、スマートフォン、電子書籍、テレビ、PCモニタだけでなく、表示画面を含む冷蔵庫、洗濯機など、ディスプレイを含む電子機器においてディスプレイを保護するためのウィンドウ、ディスプレイパネル用基板、タッチパネル用基板、導光板などの光学部材などに使用される。ガラスは、車用ダッシュボードなどのカバーガラス、太陽電池用カバーガラス、建築材の内装材、ビルまたは住宅の窓などにも使用できる。
【0022】
ガラス製品には、強い強度を有することが要求される場合がある。たとえば、ウィンドウ用ガラスの場合、高い透過率と軽い重量の要件を満たすために薄い厚さを有しながらも、外部からの衝撃によって容易に破損しない強度を有することが好ましい。強度が強化されたガラスは、化学強化や熱強化などの方法で製造できる。
【0023】
強化ガラスの例を
図1に示す。
図1は、様々な実施形態に係るガラス製品の斜視図である。
図1を参照すると、一実施形態において、ガラス製品100は、平板シートまたは平板プレート状であってもよい。他の実施形態において、ガラス製品200、300は、曲がった部分を含む3次元形状であってもよい。例えば、平坦部のエッジが屈曲されてもよく(ガラス製品200を参照)、或いは全般的にカーブしていてもよい(ガラス製品300を参照)。ガラス製品100、200、300の平面形状は、長方形であるが、これに限定されず、角が丸い長方形、正方形、円形、楕円形などの様々な形状を有することができる。以下の実施形態では、ガラス製品100として、平面視長方形の平板プレートを例にして説明するが、これに限定されないことは明らかである。
【0024】
図2は一実施形態に係る平板プレート状のガラス製品の断面図である。
図2を参照すると、ガラス製品100は複数の表面US、RS、SSを含む。ガラス製品の表面は、第1表面US、第2表面RS及び側面SSを含む。平板プレート形状のガラス製品100における、第1表面USと第2表面RSは、広い面積を持つ主な表面(例えば、上面と下面)であり、側面SSは、第1表面USと第2表面RSとを連結する外側表面である。
【0025】
第1表面USと第2表面RSは厚さt方向に互いに対向する。ガラス製品100がディスプレイのウィンドウのように光を透過させる役割を果たす場合、光は、主に、第1表面US及び第2表面RSのうちのいずれか一方に進入してもう一方に透過してもよい。
【0026】
ガラス製品100の厚さtは、第1表面USと第2表面RSとの間の距離で定義される。ガラス製品100の厚さtは、これに限定されるものではないが、0.1mm以上2mm以下の範囲であってもよい。一実施形態において、ガラス製品100の厚さtは、約0.8mmであるかそれよりも薄くてもよい。他の実施形態において、ガラス製品100の厚さtは、約0.65mmであるかそれよりも薄くてもよい。別の実施形態において、ガラス製品100の厚さtは、約0.55mmであるかそれよりも薄くてもよい。別の実施形態において、ガラス製品100の厚さtは、約0.5mmであるかそれよりも薄くてもよい。別の実施形態において、ガラス製品100の厚さtは、約0.3mmであるかそれよりも薄くてもよい。ガラス製品100は、均一な厚さtを有するが、これに限定されず、領域ごとに互いに異なる厚さを有してもよい。
【0027】
強化されたガラス製品100は、圧縮領域CSR1、CSR2と引張領域CTRとを含む。圧縮領域CSR1、CSR2は、圧縮ストレスが作用する領域であり、引張領域CTRは、引張ストレスが作用する領域である。圧縮領域CSR1、CSR2はガラス製品100の表面US、RS、SSに隣接して配置され、引張領域CTRはガラス製品100の内部領域(または中央領域)に配置される。圧縮領域は、第1表面US及び第2表面RSだけでなく、側面SSにも隣接して配置できる。各表面US、RS、SSから深さ方向に延びる圧縮領域CSR1、CSR2の深さ(圧縮深さ)は、ほぼ均一であってもよいが、これに限定されるものではない。引張領域CTRは圧縮領域CSR1、CSR2によって取り囲まれる。
【0028】
図3は一実施形態に係るガラス製品のストレスプロファイルを示すグラフである。
図3のグラフにおいて、x軸はガラス製品100の厚さtの方向を示す。
図3において、圧縮ストレスが正の値、引張ストレスが負の値で示されている。本明細書において、圧縮/引張ストレスの大きさは、その値の符号とは関係のない絶対値の大きさを意味する。
【0029】
図2及び
図3を参照すると、ガラス製品100は、第1表面USから第1深さ(第1圧縮深さ)DOL1まで拡張された第1圧縮領域CSR1と、第2表面RSから第2深さ(第2圧縮深さ)DOL2まで拡張された第2圧縮領域CSR2とを含む。第1圧縮深さDOL1と第2圧縮深さDOL2との間には引張領域CTRが配置される。
図3に示されてはいないが、ガラス製品100の対向する側面SS同士の間にも同様に圧縮領域と引張領域を配置できる。
【0030】
第1圧縮領域CSR1と第2圧縮領域CSR2は、外部からの衝撃に抵抗して、ガラス製品100にクラックが発生したり、ガラス製品100が破損したりすることを防止する。第1および第2圧縮領域CSR1、CSR2の最大圧縮ストレスCS1、CS2が大きければ大きいほど、ガラス製品100の強度が大きいことが理解できる。外部からの衝撃は、通常、ガラス製品100の表面US、RS、SSを介して伝達されるので、ガラス製品100の表面US、RS、SSで最大圧縮ストレスCS1、CS2を有することが耐久
性の観点から有利である。第1および第2圧縮領域CSR1、CSR2の最大圧縮ストレスCS1、CS2は、700Mpa以上であってもよい。例えば、第1および第2圧縮領域CSR1、CSR2の最大圧縮ストレスCS1、CS2は、800MPa以上1050MPa以下の範囲であってもよい。一実施形態において、第1および第2圧縮領域CSR1、CSR2の最大圧縮ストレスCS1、CS2は、850MPa以上1000MPa以下の範囲であってもよい。
【0031】
第1圧縮深さDOL1と第2圧縮深さDOL2は、第1および第2表面US、RSに形成されたクラックまたは溝が、ガラス製品100内の引張領域CTRへ伝播することを阻止する深さであればよい。第1および第2圧縮深さDOL1、DOL2が大きければ大きいほど、クラックなどの伝播を効率よく防止することができる。
【0032】
第1および第2圧縮深さDOL1、DOL2は、20μm以上150μm以下の範囲であってもよい。一実施形態において、第1および第2圧縮深さDOL1、DOL2は、50μm以上100μm以下の範囲であってもよい。特定の実施形態において、第1および第2圧縮深さDOL1、DOL2は70μm以上85μm以下であってもよい。
【0033】
幾つかの実施形態において、これに限定されるものではないが、第1および第2圧縮深さDOL1、DOL2は、ガラス製品100の厚さtについて次の関係式を満たしてもよい
DOL1、DOL2≧0.1*t・・・(式1)
【0034】
図3に示すように、第1圧縮領域CSR1及び第2圧縮領域CSR2の圧縮ストレスは、表面US、RSで最も大きく(CS1、CS2参照)、内部に行くほど減少する。このような形態のストレスプロファイルはイオン交換工程を経て達成できる。イオン交換工程は、ガラス製品100内のイオンを他のイオンに交換する工程である。イオン交換工程を経てガラス製品100の表面US、RS、SSまたはその近くのイオンは、同一の原子が酸化状態を有するよりも大きなイオンに代替または交換できる。例えば、ガラス製品100がLi
+、Na
+、K
+、Rb
+などの1価アルカリ金属を含む場合、表面の1価陽イオンは、それよりもイオン半径の大きいNa
+、K
+、Rb
+、Cs
+イオンに交換できる。
【0035】
図4は一実施形態に係るイオン交換工程を示す概略図である。
図4では、ガラス内部のナトリウムイオン(Na
+)がカリウムイオン(K
+)に交換されることを示している。
【0036】
図4を参照すると、ナトリウムイオンを含むガラスを、硝酸カリウム(KNO
3)を含む溶融塩浴に浸漬させるなどの方法でカリウムイオンに露出させると、ガラス内部のナトリウムイオンが外部に排出され、その位置にカリウムイオンが代替される。交換されたカリウムイオンは、ナトリウムイオンよりもイオン半径が大きいため、圧縮ストレスを発生させる。交換されたカリウムイオンの量が多いほど、圧縮ストレスが大きくなる。イオン交換は、ガラスの表面を介して行われるので、ガラス表面のカリウムイオンの量(すなわち、密度)が最も多い。交換されたカリウムイオンの一部は、ガラスの内部に拡散されながら圧縮の深さを増加させることができるが、その量(密度)は、表面から離れるほど概して減少することができる。よって、ガラスは、表面の圧縮ストレスが最も大きく、内部に行くほど減少するストレスプロファイルを持つことができる。しかし、実施形態が前記例示したところに限定されるものではなく、イオン交換工程の温度、時間、回数、熱処理の有無などにより、ストレスのプロファイルは変更することができる。
【0037】
再び
図2および
図3を参照すると、ガラス製品100は、第1圧縮深さDOL1及び第2圧縮深さDOL2で中立ストレス(ストレス値が実質的に0である)を有し、それより
も内部領域では引張ストレスを有する。引張ストレスは、中心に行くほど同じかそれよりも増加してもよい。
【0038】
ストレスプロファイルにおける圧縮ストレスの傾きの絶対値は、引張ストレスの傾きの絶対値より大きくてもよい。ガラス製品100の内部領域では、引張ストレスを示しながら概して平均傾きが0である広い区間が存在しうる。引張領域CTR内の平均傾きが0である区間の幅(すなわち、ガラス製品の厚さ)は、第1および第2圧縮深さDOL1、DOL2より大きくてもよいが、これに限定されるものではない。
【0039】
引張領域CTR内にある引張ストレスは、第1および第2圧縮領域CSR1、CSR2の圧縮ストレスとバランスを取ることができる。すなわち、ガラス製品100内の圧縮ストレスの総和と引張ストレスの総和とは同一である。ガラス製品100内のストレスプロファイルが関数fxで表わされるとき、次の関係式が成り立つ。
【数1】
・・・(式2)
【0040】
第1圧縮領域CSR1と第2圧縮領域CSR2との最大圧縮ストレスCS1、CS2及び圧縮深さDOL1、DOL2が互いに同一であり、そのプロファイルが三角形状に近似し、引張領域CTRのプロファイルがほぼ長方形の形状に近似するガラス製品100の場合は、次の関係式が成り立つ。
CT1=(CS1*DOL1)/(t-2*DOL1)・・・(式3)
【0041】
式中、CT1は引張領域CTRの最大引張ストレスを示し、CS1は第1圧縮領域CSR1の最大圧縮ストレスを示す。
【0042】
ガラス製品100の内部の引張ストレスの大きさが大きいほど、ガラス製品100が壊れたときに破片が激しく放出され、ガラス製品100の内部から破砕が起こるおそれがある。ガラス製品100の脆弱性の基準を満たす最大引張ストレスは、次の関係式を満たしてもよい。
CT1≦-37.6*ln(t)+48.7・・・(式4)
【0043】
式中、CT1の単位はMPaであり、厚さtの単位はmmであり、ln(t)は厚さtに対する自然対数である。
【0044】
ガラス製品100の強度を高めるためには、圧縮ストレスCS1、CS2及び圧縮深さDOL1、DOL2が大きいことが好ましいが、圧縮ストレスの総和が大きくなると、式2または式3によって引張ストレスも一緒に大きくなる。高い強度を持ちながらも脆弱性の基準を満たすためには、最大圧縮ストレスCS1、CS2及び圧縮深さDOL1、DOL2は大きいものの、圧縮ストレスの総和(例えば、
図3における圧縮領域の面積)が小さくなるように、ストレスプロファイルを調節することが好ましい。ガラス製品100内のストレスプロファイルは、イオン交換工程、熱処理工程、後処理工程などによって制御できる。これについての具体的な説明は後述する。
【0045】
幾つかの実施形態に係るガラス製品100の最大引張ストレスCT1は、下記式5で規定する範囲内にあり、前記式4の条件を満たすことができる。
-37.6*ln(t)+10≦CT1≦-37.6*ln(t)+48・・・(式5)
【0046】
一実施形態に係るガラス製品100は、第1表面USおよび第2表面RSに低屈折表面層を有しないか、或いは非常に薄い(例えば、100nm未満)厚さの低屈折表面層を有してもよい。これは、イオン交換工程を経て、表面に厚さ100nm以上500nm以下の低屈折表面層を有するガラスが形成されるためである。上述したような実施形態に係るガラス製品100は、低屈折表面層を含む強化ガラスを用意し、低屈折表面層を全部または一部除去することにより製造できる。低屈折表面層の除去は、エッチングまたは研磨によって行われ得る。これについての具体的な方法は、以下の実施形態で詳細に説明される。
【0047】
図5は一実施形態に係るガラス製品の製造方法のフローチャートである。
図5を参照すると、一実施形態に係るガラス製品の製造方法は、低屈折表面層を含む強化ガラスを準備し(S11)、及び低屈折表面層をエッチングすること(S12)を含む。
【0048】
図6は低屈折表面層を含む強化ガラスの断面図である。
図6を参照すると、強化ガラス101は、イオン交換工程を経て得られる。強化ガラス101を製造する具体的な方法については、後述する。
【0049】
イオン交換工程は、ガラスの表面付近に圧縮ストレスを誘発するとともに、表面に低屈折表面層130を形成することができる。低屈折表面層130は、強化ガラス101のすべての表面(第1表面US、第2表面RS、側面SS)に形成できる。低屈折表面層130は、圧縮領域CSR1、CSR2内で強化ガラス101の表面US、RS、SS側に位置する。低屈折表面層130は、圧縮深さよりも小さい厚さを有する。低屈折表面層130の厚さは、100nm以上500nm以下である。圧縮領域CSR1、CSR2は、低屈折表面層130の表面で最大圧縮ストレスを有することができる。
【0050】
低屈折表面層130は、強化ガラス101のバルク(強化ガラスにおける、低屈折表面層を除いた部分、BLK)とは肉眼で識別できない。すなわち、通常の層状構造とは異なり、低屈折表面層130と強化ガラス101のバルクBLKは肉眼で層区分ができない。ただし、低屈折表面層130は、光学的な方法やその組成などにより強化ガラス101のバルクBLKとは区別できる。
【0051】
低屈折表面層130は、強化ガラス101のバルクBLKの屈折率よりも低い屈折率を有する。低屈折表面層130の屈折率は、空気の屈折率よりも大きく、強化ガラス101のバルクBLKの屈折率よりも小さい。強化ガラス101のバルクBLKの屈折率が1.5である場合、低屈折表面層130の屈折率または平均屈折率は1.48以下であるか1.45以下であり、幾つかの実施形態の場合には1.3以下であってもよい。低屈折表面層130は、強化ガラスのバルクBLKと光学界面を形成することができる。
【0052】
低屈折表面層130は、内部に微細気孔または微細溝を含んでもよい。微細気孔または微細溝は、空気で満たされて低屈折表面層130の平均屈折率を低下させる。
【0053】
低屈折表面層130は、シリコンリッチ層であってもよい。低屈折表面層130は、強化ガラス101のバルクBLKよりも高いシリコン含有量を有してもよい。低屈折表面層130のシリコン含有量が相対的に高いことは、強化ガラス101のイオン交換のために高温の塩処理過程を経るときにアルカリ金属またはアルカリ土類金属が除去されることにより相対的にシリコンの含有量が高くなったことに起因する。一実施形態において、低屈折表面層130のシリコン含有量は、強化ガラス101のバルクBLKのシリコン含有量に対して1.2倍以上1.4以下であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0054】
低屈折表面層130は、ナトリウムプア層であってもよい。低屈折表面層130は、強化ガラス101の表面US、RS、SSに位置するので、イオン交換を経てナトリウムが多く放出され、強化ガラス101のバルクBLKよりもナトリウム含有量が著しく小さいことがある。
【0055】
低屈折表面層130は、微細クラック135を含む場合がある。微細クラック135は、ガラス生産工程中の小さな摩擦、衝突または大気中の水分との反応で形成される。微細クラック135は、ガラスの強化工程中に発生し、強化工程の高温条件で拡大する。
【0056】
低屈折表面層130は、強化ガラス101の最外郭に位置し、微細クラック135などの欠陥を含む場合があるが、このような表面欠陥は、強化ガラス101の強度を低下させる原因になるおそれがある。
【0057】
したがって、一実施形態に係るガラス製品の製造方法は、被処理ガラスである強化ガラス101の低屈折表面層130をエッチングして除去する工程を含む。低屈折表面層130の除去によりガラス製品(
図2の100)の透過率が改善され、表面欠陥が改善される。低屈折表面層130が除去されることにより、ガラス製品(
図2の100)の厚さは多少減少する。
【0058】
上述した低屈折表面層130のエッチングは、酸洗浄工程と塩基洗浄工程を含んでもよい。酸洗浄工程は、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素などの無機酸、及び蟻酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、安息香酸などの有機酸のうちの少なくとも一つを含む酸性溶液を用いて行われる。塩基洗浄工程は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウムなどの無機アルカリ金属塩、酢酸ナトリウムなどの有機アルカリ金属塩、及びアンモニア水のうちの少なくとも一つを含む塩基性溶液を用いて行われる。
図7及び
図8では、硝酸を含む酸性溶液と水酸化ナトリウムを含む塩基性溶液とでそれぞれ酸洗浄及び塩基洗浄工程を行う場合が示されている。
【0059】
図7は、強化ガラスの酸洗浄工程を示す断面図である。
図7を参照すると、低屈折表面層130を含む強化ガラス101を、硝酸(HNO
3)を含む酸性溶液で洗浄する。酸洗浄工程は、強化ガラス101を酸性溶液に浸漬して攪拌する方式で行われてもよいが、スプレー方式またはその他の方式で行われてもよい。
【0060】
酸性溶液中の硝酸の含有量は、例えば約6wt%以下であり、例えば約2wt%以上5wt%以下であってもよい。酸性溶液のpHは1以上3以下の範囲であってもよい。酸洗浄工程は、30℃以上50℃以下の温度で0.5分以上5分以下または2分以上4分以下行われる。
【0061】
上述したような酸洗浄工程を完了しても、低屈折表面層130は実質的に殆ど除去されない。
【0062】
図8は、強化ガラスの塩基洗浄工程を示す断面図である。酸洗浄工程が完了した強化ガラス101を、水酸化ナトリウム(NaOH)を含む塩基性溶液で洗浄する。塩基洗浄工程は、強化ガラス101を塩基性溶液に浸漬して攪拌する方式で行われてもよいが、スプレー方式またはその他の方式で行われてもよい。
【0063】
塩基溶液中の水酸化ナトリウムの含有量は、例えば約6wt%以下であり、例えば約2wt%以上5wt%以下であってもよい。塩基性溶液のpHは12以上14以下の範囲であってもよい。塩基洗浄工程は、30℃以上50℃以下の温度で0.5分以上5分以下ま
たは2分以上4分以下行われる。
【0064】
塩基洗浄工程が完了すると、強化ガラス101の表面が約500nm前後の深さにエッチングされて、低屈折表面層130が除去できる。表面に形成された微細クラック135も、低屈折表面層130が除去されるときに一緒に除去できる。低屈折表面層130がすべて除去されると、
図2に示すようなガラス製品を形成することができる。
図2のガラス製品100は、
図6の強化ガラス101と比較したとき、ガラス製品100全体にわたって光学界面を持たないことが可能である。また、低屈折表面層130の除去により表面欠陥が改善されて強度が改善される。
【0065】
場合によっては、低屈折表面層130が部分的にのみ除去され、一部残留することがあるが、この場合にも、低屈折表面層130の厚さは減少する。微細クラック135は、表面から深さ方向に浸透するので、エッチング工程によって表面から深さ方向に低屈折表面層130が除去されると、微細クラックも無くなるか或いは減少する。よって、たとえ低屈折表面層130が100nm未満の薄い厚さで一部残留しても、エッチング工程を経てガラス製品100の強度が改善できる。
【0066】
上述したように、低屈折表面層130の除去は、主に塩基洗浄工程によって行われるが、酸洗浄工程なしに塩基洗浄工程のみを単独で行う場合には、低屈折表面層130のエッチングが円滑に行われない。酸洗浄工程は、それ自体が低屈折表面層130を除去しないが、低屈折表面層130を塩基洗浄工程によってよく除去できる状態に変えると推測される。同じ理由から、洗浄順序も、酸洗浄工程をまず行った後、塩基洗浄工程を行うことが好ましい。
【0067】
酸洗浄工程及び塩基洗浄工程によるエッチング工程は、主に低屈折表面層130をエッチングする。一実施形態において、洗浄溶液に対する強化ガラス101のバルクBLKのエッチング率は、低屈折表面層130のエッチング率よりも小さい。洗浄溶液の濃度、時間、温度などに応じて低屈折表面層130が完全に除去された後、強化ガラスバルクBLKの表面が洗浄溶液に晒されることがあるが、強化ガラスバルクBLKのエッチング率が低ければ、強化ガラスバルクBLKのオーバーエッチングが防止できる。
【0068】
強化ガラス101の表面がエッチングされると、その内部のストレスプロファイルも一緒に変化する。
【0069】
図9はエッチング工程前後のストレスプロファイルを示すグラフである。理解の便宜上、
図9ではストレスプロファイルを単純化して示している。
図9を参照すると、エッチング前の強化ガラスは、表面で最大圧縮ストレスCS1’を有する。エッチング工程により強化ガラスの表面が除去され、最大圧縮ストレスも変化する。上述したように、圧縮ストレスは、交換されたイオンの密度に比例するが、エッチング工程では新たなイオン供給がないうえ、イオンの拡散のための熱エネルギーも大きくないため、交換されたイオンの位置はほとんど変化しない。したがって、表面の圧縮ストレスは、エッチングによって除去された部分を除いては元のプロファイルをそのまま維持する。元のプロファイルが厚さ(深さ)に応じて減少する形状であった場合は、エッチング後において、ガラス製品の表面で最大圧縮ストレスCSを持つ。
【0070】
エッチング前の最大圧縮ストレスCS1’を有する強化ガラスの表面がエッチングによって除去されたので、エッチング後の最大圧縮ストレスCS1は、エッチング前の最大圧縮ストレスCS1’よりも減少する。エッチングで除去された厚さは、圧縮深さに比べて非常に小さいレベルに過ぎないが、最大圧縮ストレスの減少率は、圧縮ストレスプロファイルの傾きに応じて変わる。表面付近の圧縮ストレスプロファイルCS1’の傾きが急な
場合、エッチングの深さが浅くても、最大圧縮ストレスCS1は有意に減少する。
【0071】
一実施形態において、エッチングによる最大圧縮ストレスの減少率(CS1’-CS1)/CS1’は10%以下であってもよい。エッチングによる最大圧縮ストレスの減少量(CS1’-CS1)は10Mpa以上100Mpa以下であってもよい。例えば、前記減少量(CS1’-CS1)は、50Mpa以上100Mpa以下であるか或いは約60Mpa以上70Mpa以下の範囲であってもよい。
【0072】
エッチング後の最大圧縮ストレスCS1が減少することにより、圧縮領域の圧縮ストレスの総和も減少する。それにより、前述した式2を満たすために引張領域の引張ストレスの総和も減少する。引張ストレスの総和が変わると、引張領域でのストレスプロファイルが変わり、中立ストレスポイントも変わる。実験的に確認されたところによれば、エッチング前の第1圧縮深さDOL1’とエッチング後の第1圧縮深さDOL1は有意な変化なく実質的に同一である。これは、中立ストレスポイントが強化ガラスの内部に移動したことを意味する。
【0073】
エッチングによって引張ストレスの総和が減少すると、最大引張ストレスも減少してもよい。しかし、これに限定されるものではなく、中立ストレスポイントの変化および/または引張ストレスプロファイルの傾きの変化のみで、減少したストレスを補償することができれば、最大引張ストレスは同一に維持されることも可能である。
【0074】
エッチングによって最大引張ストレスが減少する実施形態において、前述した式4のガラス製品の脆弱性の基準は、エッチング後のガラス製品に適用される。完成したガラス製品ではない、エッチング前の強化ガラスは、その基準を必ずしも満たさなければならないわけではない。このような観点の幾つかの実施形態において、エッチング前の強化ガラスとエッチング後のガラス製品は、次の関係式を満たしてもよい。
CT1’>-37.6*ln(t’)+48.7、CT1≦-37.6*ln(t)+48.7・・・(式6)
【0075】
式6中、CT1’とt’は、それぞれエッチング前の最大引張ストレスと強化ガラスの厚さとを示し、CT1とtは、エッチング後の最大引張ストレスとガラス製品の厚さとを示す。
【0076】
前記式6に基づいて、強化ガラスは、式4による脆弱性の限界を超える条件で製造し、エッチングによって、引張ストレスが式4を満たすように調節してもよい。しかしながら、これに限定されるものではなく、エッチング前後の強化ガラスの最大引張ストレスCT1’、CT1が全て前記式4を満たしてもよい。
【0077】
図10及び
図11はエッチング方式によるガラス製品の表面を比較して示す平面写真である。
図10はフッ化水素酸(HF)で強化ガラスをエッチング処理したガラス製品の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)写真であり、
図11は
図7及び
図8を参照して説明した方法で強化ガラスをエッチング処理したガラス製品の走査顕微鏡写真である。
【0078】
フッ化水素酸(HF)も、強化ガラスの表面の微細クラックを除去する上で有効に使用できる。例えば、強化ガラスの表面をフッ化水素酸(HF)で処理し、微細クラックを中心に緩やかな凹部が作られるように微細クラックの周辺を研磨またはエッチングすることにより、微細クラックを除去することができる。しかし、フッ化水素酸(HF)によるエッチングは、
図10に示すように、ガラス製品の表面に粒状斑形状の凹部を残すため、光
学的特性が低下し、凹部がユーザーに視認できる。
【0079】
一方、硝酸を含む酸性溶液と水酸化ナトリウムを含む塩基性溶液とでエッチングを行うと、
図11に示すように、微細クラックを除去しながらもガラス製品の表面を粒状斑の凹部が形成されることなく実質的に平坦にすることができる。
【0080】
以下、低屈折表面層のエッチング工程の前に提供される強化ガラスの製造方法について説明する。
【0081】
まず、強化前のガラスを用意する。強化前のガラスは、フロート法、フュージョン法、スロットダウンドロー法などの様々な方式で製造できる。強化前のガラスは、アルカリアルミノシリケートガラス等であってもよい。強化前のガラス組成物は、SiO2及びAl2O3を含んでもよい。強化前のガラス組成物はNa2Oをさらに含んでもよい。強化前のガラス組成物は、K2O、B2O3、Li2O、MgO、CaO、ZnO、ZrO2、Fe2O3、SnO2及びP2O5のうちの少なくとも一つを含んでもよい。幾つかの実施形態において、強化前のガラスは、Li2OとP2O5を実質的に含有していなくてもよい。幾つかの実施形態において、強化前のガラスはLi2O、P2O5及びB2O3を含有しなくてもよい。実施形態に係るガラス製品は、Li2O、P2O5および/またはB2O3を含有しなくても、強化工程と低屈折表面層除去工程を介して700Mpa以上の圧縮ストレスを有し、前記式1を満たす十分な圧縮深さを有することができる。
【0082】
次いで、強化前のガラスを強化する。強化前のガラスは、1次イオン交換工程および2次イオン交換工程によって強化できる。
【0083】
1次イオン交換工程は、ガラスを、カリウムイオン(K+)を含む溶融塩(molten salt)に露出させる工程を含んでもよい。該溶融塩は、例えば、硝酸ナトリウム(NaNO3)と硝酸カリウム(KNO3)とが混合された塩であってもよい。1次イオン交換工程は、歪み点より50℃低い温度に対して±20℃である温度で行われてもよい。例えば、ガラスの歪点が約580℃である場合、1次イオン交換工程は約500℃以上の温度(例えば、約530℃)で行われてもよい。1次イオン交換工程の時間は3時間以上8時間以下(例えば、約5時間)であってもよいが、これに限定されない。1次イオン交換工程を介してカリウムイオンがガラスの内部に進入してガラスの表面付近に圧縮ストレスを示すことができる。
【0084】
1次イオン交換工程の後、ストレス緩和工程がさらに行われてもよい。ストレス緩和工程は、約500℃以上の温度(例えば、約530℃)で1時間以上3時間以下(例えば、約2時間)行われてもよい。ストレス緩和工程を経て最大圧縮ストレスが減少し、カリウムイオンが内部に拡散して圧縮深さが大きくなることがある。ストレス緩和工程は、空気中または液体中で行われてもよい。液体内で行われる場合、カリウムイオンとナトリウムイオンとの混合塩に浸漬させた状態で熱処理を施すことにより、ストレスを緩和することができる。ストレス緩和工程は省略されてもよい。
【0085】
ストレス緩和工程の後に2次イオン交換工程が行われる。ガラスを、2次イオン交換工程は、カリウムイオンを含む、溶融された単一塩に露出させることによって行われてもよい。2次イオン交換工程は、1次イオン交換工程よりも低い温度及び短い時間行われてもよい。たとえば、2次イオン交換工程は380℃以上460℃以下(例えば、約420℃)の温度範囲で1時間以上3時間以下または1.3時間以上2時間以下行われてもよい。
【0086】
2次イオン交換を介してガラス表面の浅い部分に圧縮ストレスを大きく増加させることができる。
【0087】
1次イオン交換工程、ストレス緩和工程及び2次イオン交換過程を経たガラス製品は、高い表面圧縮ストレスと十分な大きさの圧縮深さを達成することができる。圧縮ストレスプロファイルは、ガラス製品の表面付近で急激な傾斜を有し、ガラス製品の内部に行くほど傾斜が緩やかになる。例えば、圧縮ストレスプロファイルは、表面から第1ポイントまでの平均勾配(絶対値)が40MPa/μm以上200MPa/μm以下である第1区間と、第1区間よりも表面からさらに遠くに位置し、平均傾き(絶対値)が2MPa/μm未満である第2区間とを含むことができる。第1区間と第2区間はいずれも圧縮領域内に位置する。該第1区間は、表面から15μmを超える深さまで延長されてもよい。幾つかの実施形態において、圧縮ストレスプロファイルは、圧縮領域内で平均傾きが0MPa/μmであるポイントを含んでもよい。
【0088】
図12及び
図13は、様々な実施形態に係る2次イオン交換処理されたガラスのストレスプロファイルを示すグラフである。
図12において、第1グラフPL11は、1次イオン交換工程の後に約30分間2次イオン交換工程を行ったものである。第2グラフPL12は、1次イオン交換工程の後に約60分間2次イオン交換工程を行ったものである。第3グラフPL13は、1次イオン交換工程の後に約90分間2次イオン交換工程を行ったものである。第4グラフPL14は、1次イオン交換工程の後に約120分間2次イオン交換工程を行ったものである。
図12を参照すると、2次イオン交換工程の進行時間によって傾きが急激に変化するポイントである転移点が異なることを確認することができる。
図12において、第1~第4グラフPL11~PL14の転移点は、それぞれ9μm、12μm、15μm、17μmであって、2次イオン交換工程時間が増加するほど転移点の深さが大きくなる傾向を示す。
【0089】
図13において、第5グラフPL21は、1次イオン交換工程の後にストレス緩和工程を行った後、30分間2次強化工程を行ったものである。第6グラフPL22は、1次イオン交換工程の後にストレス緩和工程を行った後、120分間2次強化工程を行ったものである。第7グラフPL23は、1次強化工程の後にストレス緩和工程なしに60分間2次強化工程を行ったものである。第8グラフPL24は、1次強化工程の後にストレス緩和工程なしに90分間2次強化工程を経たものである。
【0090】
図13を参照すると、ストレス緩和工程の追加有無によっても転移点の制御が可能であることが分かる。すなわち、第5グラフPL21及び第6グラフPL22から分かるように、ストレス緩和工程をさらに経ても、2次強化工程の持続時間を制御することにより、転移点の位置を変更させることができる。また、第7グラフPL23及び第8グラフPL24に示すように、ストレス緩和工程を経なくても、2次強化工程の時間を制御することにより、転移点の位置を容易に制御することができる。
【0091】
上述した強化ガラスの製造方法についてのさらに具体的な説明と様々な実施形態が、本出願人によって2017年4月13日付で出願された韓国特許出願第10-2017-0048080号に開示されている。該出願に記載された内容は、本明細書に十分に開示されたように援用されて包含される。
【0092】
図14は他の実施形態に係るガラス製品の製造方法のフローチャートである。
図14を参照すると、本実施形態に係るガラス製品の製造方法は、低屈折表面層を含む強化ガラスを準備し(S21)、及び低屈折表面層を研磨すること(S22)を含む。
【0093】
低屈折表面層を含む強化ガラス、及びこれを準備すること(S21)は、
図5及び
図6の実施形態と同様であるので、重複説明は省略する。強化ガラスを用意した後、低屈折表面層を研磨する(S22)。
【0094】
図15は強化ガラスの研磨工程を示す断面図である。
図15を参照すると、研磨工程は化学機械研磨方式で行われてもよい。具体的には、化学機械研磨装置510及び研磨スラリー520を用いて、被処理ガラスである強化ガラス130の第1表面USと第2表面RSを研磨する。図面では、説明の便宜上、第1表面USの研磨と第2表面RSの研磨とを同時に示したが、第1表面USの研磨と第2表面RSの研磨は順次行われてもよい。例えば、化学機械的研磨装置510のステージ(図示せず)に第2表面RSが対向するように強化ガラス101を配置し、上側に晒された第1表面USを研磨した後、強化ガラス101を裏返して第2表面RSを研磨してもよい。他の実施形態として、第1表面US及び第2表面RSのうちのいずれか一つのみ研磨工程を行うこともできる。
【0095】
研磨の厚さは、例えば、100nm以上1000nm以下(例えば、約500nm前後)の範囲で調節できる。第1表面の研磨の厚さと第2表面の研磨の厚さは同一であってもよく異なっていてもよい。
【0096】
図16は研磨工程が完了したガラス製品の断面図である。
図16を参照すると、ガラス製品102の第1表面USと第2表面RSは、低屈折表面層が研磨されて除去されるが、側面SSは、研磨対象から除外されて低屈折表面層131がそのまま残留してもよい。すなわち、ガラス製品102の第1表面USと第2表面RSは
図2に示したガラス製品100とは実質的に同一であるが、側面SS部分は低屈折表面層131を含む点で
図2に示したガラス製品100とは異なる。第1表面USと第2表面RSとにおいて低屈折表面層が除去されることにより、第1表面USから第2表面RSまでの厚さ方向の区間に光学界面が形成されず、屈折率が実質的に一定に維持できる。側面SSに残留する低屈折表面層131の厚さは、100nm以上500nm以下であってもよい。研磨後にも、第1表面USまたは第2表面RSに低屈折表面層が残留してもよいが、この場合、第1表面USまたは第2表面RSの低屈折表面層の厚さは、側面SSの低屈折表面層131の厚さよりも薄い。
【0097】
ガラス製品102の側面SSに低屈折表面層131が残留することにより、当該部位に微細クラックがあるか光学特性差を示すことがあるが、ガラス製品102の側面SSは、第1表面USまたは第2表面RSとは異なり、一般に光透過に大きく寄与する部分ではなく、側面SSの微細クラックは、ガラス製品102全体の強度に及ぼす影響が僅かである。よって、
図16のガラス製品102の場合にも、
図2に示したガラス製品100と同等レベルの光学特性及び強度を有することができる。
【0098】
本実施形態に係る研磨工程は、ガラス製品の第1表面と第2表面の圧縮ストレス特性を均一にすることにも活用できる。
【0099】
例えば、板ガラスの製造方法のいずれかであるフローティング法は、スズ(Tin)浴にガラス組成物を流す方式で行うが、この場合は、スズ浴に接触する面とスズ浴に接触しない面とは異なる組成を持つ場合がある。それにより、ガラス強化工程後にスズ接触面(例えば、第1表面)と非接触面(例えば、第2表面)との間の圧縮ストレスの偏差が約40Mpa程度発生することがあるが、研磨によってガラスの表面を適切な厚さに除去することにより、接触面と非接触面との間の圧縮ストレスの偏差を減少させることができる。例えば、圧縮ストレスの偏差を20Mpa以下または10MPa以下に減少させることができる。研磨工程の場合、表面ごとに研磨するか否かを選択することができ、第1表面の研磨の厚さと第2表面の研磨の厚さとが互いに異なるように調節することができるので、接触面と非接触面に対する個別的な圧縮ストレスの制御が可能である。例えば、圧縮ストレスが相対的に大きい表面をさらに多く研磨することにより、これら間の圧縮ストレスの偏差をさらに容易に制御することができる。
【0100】
ガラス製品の表面研磨は、ガラス製品のエッチングと組み合わせられてもよい。例えば、ガラス製品のエッチング後に第1表面の圧縮ストレスが第2表面の圧縮ストレスより大きいと予想される場合、第1表面研磨工程を行って第1表面の圧縮ストレスを第2表面の圧縮ストレスレベルに下げることができる。逆に、ガラス製品のエッチングの前に研磨を介して表面間の圧縮ストレスの偏差を減らした後、エッチング工程を行うこともできる。
【0101】
一方、ガラス製品102が研磨スラリー520を用いて研磨される場合、研磨スラリー520の粒子サイズに応じて所定の表面粗さを出すことができる。
【0102】
研磨工程がガラス製品102の表面粗さに及ぼす影響を調べるために、研磨工程が行われた2つのガラス製品サンプルを用意した。
【0103】
図17はガラス製品サンプル1の平面写真であり、
図18はガラス製品サンプル2の平面写真である。
図17及び
図18に示すように、研磨工程を行ったサンプルからいずれも表面に微細なムラがあることを確認することができた。
【0104】
ガラス製品サンプル1、2に対してRa値とRz値を調べた。研磨前のガラス製品1、2のRaは0.444nmであり、Rzは7.1297nmであった。研磨後のガラス製品サンプル1のRaは1.633nmであり、Rzは44.286nmであった。研磨後のガラス製品サンプル2のRaは1.404nmであり、Rzは22.928nmであった。研磨により粗さが微細に増加したが、透過率を確保することが可能な基準である0.5nm以上50nm以下の範囲内であることが確認され、研磨による粗さの増加はガラス製品の光学特性に及ぼす影響が殆どないことが分かる。
【0105】
実施形態に係るエッチング工程がガラス製品の強度に及ぼす影響を評価するために、複数のガラス製品サンプルに対して鉄球落下テストを行った。鉄球落下テストは、ガラス製品サンプル上に約150gの鉄(Fe)球を落下させたとき、ガラス製品サンプルが破損する鉄球の落下高さを測定する方式で行われた。鉄球落下テストでガラス製品サンプルが破損する鉄球の落下高さが高ければ高いほど、ガラス製品サンプルがさらに大きな衝撃に耐えることができ、強度が高いと解釈される。
【0106】
図19~
図21は様々な実施形態に係るガラス製品の鉄球落下テストの結果を示すグラフである。
【0107】
図19のガラス製品サンプルは、約530℃で70重量%の硝酸カリウム(KNO
3)と約30重量%の硝酸ナトリウム(NaNO
3)から構成された中性塩で1次イオン交換処理した後、約420℃で100重量%の硝酸カリウム(KNO
3)から構成された中性塩で2次イオン交換処理したサンプルである。
【0108】
図20のガラス製品サンプルは、約530℃で70重量%の硝酸カリウム(KNO
3)と約30重量%の硝酸ナトリウム(NaNO
3)から構成された中性塩で1次イオン交換処理した後、約530℃で熱処理し、再び約420℃で100重量%の硝酸カリウム(KNO
3)から構成された中性塩で2次イオン交換処理したサンプルである。
【0109】
図21のガラス製品サンプルは、
図20と同様に、約530℃で70重量%の硝酸カリウム(KNO
3)と約30重量%の硝酸ナトリウム(NaNO
3)から構成された中性塩で1次イオン交換処理した後、約530℃で熱処理し、再び約420℃で100重量%の硝酸カリウム(KNO
3)から構成された中性塩で2次イオン交換処理し、熱処理時間を
図20のガラス製品のサンプルよりも2倍以上にしたサンプルである。
【0110】
図19~
図21のテストはいずれも、エッチング前後で14個のガラス製品サンプルに対して行われた。ここで、エッチング工程は、酸洗浄工程と塩基洗浄工程の順に行われた。
【0111】
図19を参照すると、エッチング前のガラス製品サンプルの破損高さは、約35cm~約95cmまで相対的に広く分布している。この中の有効データ(図面のボックス表示された部分に属するデータ)を参照すると、エッチング前のサンプルの破損高さは約45cm~約67cmである。これに対し、エッチング後のサンプルの破損高さは110cmと均一であった。
【0112】
図20を参照すると、エッチング前のガラス製品サンプルの破損高さは、約20cm~約90cmまで相対的に広く分布している。この中の有効データ(図面のボックス表示された部分に属するデータ)を参照すると、エッチング前のサンプルの破損高さは約35cm~約60cmである。エッチング後のサンプルの破損高さは約100cm~約110cmであった。
【0113】
図21を参照すると、エッチング前のガラス製品サンプルの破損高さは、有効データ(図面のボックス表示された部分に属するデータ)を基準に約70cm~約90cmであった。また、エッチング後のサンプルの破損高さは110cmと均一であった。
【0114】
図19~
図21のすべてのサンプルから、エッチング後の破損高さが改善され且つ均一になったことが分かる。
【0115】
エッチング工程(酸洗浄工程と塩基洗浄工程の順に行う)によって圧縮ストレスと圧縮深さがどのように変化するかを評価するために、21個のガラス製品サンプルに対してエッチング前後の圧縮ストレスと圧縮深さを測定した。その結果を表1に示し、
図22及び
図23にグラフで示す。
【表1】
【0116】
図22はガラス製品サンプルに対するエッチング工程前後の圧縮ストレスを示すグラフである。
図23はガラス製品サンプルに対するエッチング工程前後の圧縮深さを示すグラフである。
【0117】
表1及び
図22を参照すると、エッチング前のガラス製品サンプルの圧縮ストレスの平均は約957Mpaであるのに対し、エッチング後のガラス製品サンプルの圧縮ストレスの平均は約890Mpaであって、概して60Mpa~至70Mpa程度減少した。圧縮ストレスの分布は、エッチング後の場合が相対的に減少した幅を持つ。
【0118】
表1及び
図23を参照すると、エッチング前のガラス製品サンプルの圧縮深さの平均は約78.3μmであり、エッチング後のガラス製品サンプルの圧縮深さの平均は約78.2μmであった。測定誤差を考慮すると、エッチング前後の圧縮深さの有意な差は殆どないと解釈される。
【0119】
次に、研磨工程によって圧縮ストレスと圧縮深さがどのように変化するかを評価するために、38個のガラス製品サンプルに対してエッチング前後の圧縮ストレスと圧縮深さを測定した。その結果を表2に示し、
図24及び
図25にグラフで示す。
【表2】
【0120】
図24はガラス製品サンプルに対する研磨工程前後の圧縮ストレスを示すグラフである。
図25はガラス製品サンプルに対する研磨工程前後の圧縮深さを示すグラフである。
【0121】
表2及び
図24を参照すると、研磨前のガラス製品サンプルの圧縮ストレスの平均は約928Mpaであるのに対し、研磨後のガラス製品サンプルの圧縮ストレスの平均は約897Mpaであって、概して10Mpa~50Mpa程度減少した。圧縮ストレスの分布は、研磨後の場合が相対的に減少した幅を持つ。
【0122】
表2及び
図25を参照すると、研磨前のガラス製品サンプルの圧縮深さの平均は約74μmであり、エッチング後のガラス製品サンプルの圧縮深さの平均は約74μmであって、ほぼ同一であった。
【0123】
以上、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明のその技術的思想や必須の特徴を変更することな
く他の具体的な形態で実施できることを理解することができるだろう。よって、上述した実施形態は、すべての面で例示的なもので、限定的なものではないと理解すべきである。
【符号の説明】
【0124】
100 ガラス製品
130 低屈折表面層
135 微細クラック