(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112094
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池材料
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20230803BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230803BHJP
H01M 4/62 20060101ALN20230803BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102139
(22)【出願日】2023-06-22
(62)【分割の表示】P 2021198612の分割
【原出願日】2017-06-23
(31)【優先権主張番号】62/353,663
(32)【優先日】2016-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515084719
【氏名又は名称】シックスケー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハディディ,カマル
(72)【発明者】
【氏名】ロベル,グレゴリー
(57)【要約】
【課題】製造工程に要する時間及びエネルギーを削減でき、不要な副生物の生成を抑制し得る、リチウムイオン電池材料を製造するための方法を提供することを課題とする。
【解決手段】出発物質を組み合わせて、リチウムを含む均質前駆体溶液を形成し、液滴生成器を用いて、制御されたサイズを有する前駆体溶液の液滴を生成する。これらの液滴をマイクロ波生成プラズマ中に導入し、そこで、ミクロン又はサブミクロンスケールのリチウム含有粒子が形成される。これらのリチウム含有粒子を捕集し、スラリーを形成して、リチウムイオン電池材料を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発物質を組み合わせて、リチウムを含む均質前駆体溶液を形成すること;
液滴生成器(droplet maker)を用いて、制御されたサイズを有する前記均質前駆体溶液の液滴を生成すること;
前記均質前駆体溶液の前記液滴をマイクロ波生成プラズマ中に導入すること;
前記マイクロ波生成プラズマからミクロン又はサブミクロンスケールのリチウム含有粒子を作製すること;
前記リチウム含有粒子を捕集すること;及び
前記リチウム含有粒子を含むスラリーを形成して、リチウムイオン電池材料を形成すること
を含む、リチウムイオン電池材料を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全内容が参照により本明細書に援用される2016年6月23日出願の「Microwave Plasma Process Possibilities for Manufacturing Lithium Ion Battery Materials」と題する米国特許仮出願第62/353,663号の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、電池材料を製造するための技術に関し、より詳細には、リチウムイオン(Liイオン)電池材料を製造するための技術に関する。
【背景技術】
【0003】
携帯電子デバイスのサイズがどんどん小さくなるに従って、これらのデバイスに電力を供給することのできるより小さくより軽量の電池に対する必要性が高まっている。より高エネルギーの電池に対する需要も、ハイブリッド車両及び完全電気車両の分野で高まっている。そのような車両は、従来の燃焼型エンジンによって引き起こされる大気汚染及び車両排出物を低減することにより、大気質を改善し得る。充電式Liイオン電池は、民生用電子機器及び電気車両用途の両方に用いられ得る。しかし、高コストで複雑な製造プロセスが、Liイオン電池に一般的に用いられるリチウム含有材料及びLiイオン電池のコストが高いことの一因であり続けている。
【0004】
Liイオン電池は、一般的に、アノードとして知られる負電極、カソードとして知られる正電極、及びアノードとカソードとの間にある電解質を含有する。充電時、Liイオン(Li+)は、カソードから電解質を通って移動し、アノードの構造内にインターカレートする。Liイオンは、グラファイトの層間のファンデルワールスギャップ内に埋め込まれることが可能であり、そこで放電まで貯蔵されることから、アノードのためのインターカレーション化合物としてグラファイトが用いられ得る。場合によっては、リチウム塩又はLiイオン伝導性ポリマーを含む有機溶液が、電解質として用いられ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Liイオン電池において、カソード又は正電極には、適切な量のリチウム遷移金属酸化物を含有する単一相材料が望ましい。そのような単一相材料の例としては、LiNi0.8Co0.2O2、LiCoO2、LiNixMnyCozO2、又はLiNixCoyAlzO2が挙げられる。特にLiNixMnyCozO2に関して、マンガン、ニッケル、及びコバルトの含有比を変化させることにより、電池の出力及びエネルギー性能を調整することができる。しかし、これらの単一相遷移金属酸化物の作製は、ボールミリング、ウェットミリング、焼結、洗浄、混合、グラインディングなどの時間及びエネルギーを要する処理工程を必要とし得る。場合によっては、1又は複数の初期処理工程でアルカリ性溶液が用いられ、それによって、不要な副生物が生成され得る。そのようなプロセスの複雑さが、Liイオン電池の高いコストの一因となっている。加えて、Liイオン電池材料の化学量論を調製又は最適化することは、大スケール又は商業的スケールでの達成が困難であるか、又は不可能であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の技術の例示的実施形態は、リチウム含有粒子を作製するための、及びLiイオン電池材料を調製するためのシステム並びに方法に関する。1つの態様では、本発明の技術は、リチウムイオン電池材料を作製するための方法に関する。この方法は、出発物質を
組み合わせて、リチウムを含む均質前駆体溶液を形成すること、及び液滴生成器(droplet maker)を用いて、制御されたサイズを有する均質前駆体溶液の液滴を生成することを含む。この方法はさらに、均質前駆体溶液の液滴をマイクロ波生成プラズマ中に導入すること、マイクロ波生成プラズマからミクロン又はサブミクロンスケールのリチウム含有粒子を作製すること、リチウム含有粒子を捕集すること、及びリチウム含有粒子を含むスラリーを形成して、リチウムイオン電池材料を形成することも含む。
【0007】
この技術の本態様の実施形態は、以下の特徴のうちの1又は複数を含み得る。ある実施形態では、リチウム含有粒子を捕集することは、リチウム含有粒子を急冷することを含み、この方法はまた、急冷流体の選択、急冷流体の流速の制御、又は急冷流体温度の制御によって、リチウム含有粒子の急冷速度を制御することも含む。ある実施形態では、この方法はまた、液滴生成器を用いて、均質前駆体溶液の液滴のサイズを制御することも含む。ある実施形態では、この方法はまた、プラズマガスの流速、マイクロ波生成プラズマのパワー密度、及び/又は液滴生成器から排出される液滴の速度を制御することによって、マイクロ波生成プラズマ内での液滴の滞留時間を制御することも含む。ある実施形態では、均質前駆体溶液は、酢酸リチウム、酢酸ニッケル、酢酸マンガン、及び酢酸コバルトの水和又は非水和形態の水溶液を含む。他の実施形態では、均質前駆体溶液は、硝酸リチウム、硝酸ニッケル、硝酸マンガン、及び硝酸コバルトの水溶液を含む。ある実施形態では、制御されたサイズの液滴を生成することは、異なる径を有する液滴の2つ以上の流れを生成することを含む。ある実施形態では、マイクロ波生成プラズマは、酸素ガス又は酸素含有ガス中で生成される。
【0008】
別の態様では、本発明の技術は、リチウムイオン電池材料を調製する方法に関する。この方法は、出発物質を組み合わせて、リチウムを含む均質前駆体溶液を形成すること、及び液滴生成器を用いて、制御されたサイズを有する均質前駆体溶液の液滴を生成することを含む。この方法はまた、均質前駆体溶液の液滴をマイクロ波生成プラズマ中に導入すること、マイクロ波生成プラズマからミクロン又はサブミクロンスケールのリチウム含有粒子を作製すること、及びリチウム含有粒子を急冷することも含む。この方法はまた、前駆体溶液の化学的性質、液滴サイズ、プラズマガス流量、マイクロ波生成プラズマ内での液滴の滞留時間、急冷速度、又はマイクロ波生成プラズマのパワー密度を制御することによって、リチウム含有粒子の多孔度、形態、粒子径、粒度分布、又は化学組成を調製することも含む。
【0009】
この技術の本態様の実施形態は、以下の特徴のうちの1又は複数を含み得る。ある実施形態では、リチウム含有粒子の形態を調製することは、マイクロ波生成プラズマ及びマイクロ波生成プラズマのアフターグロー領域内での液滴の滞留時間を制御することを含む。ある実施形態では、リチウムイオン粒子の多孔度を制御することは、均質前駆体溶液中の硝酸塩物質及び酢酸塩物質の量を制御すること、溶液前駆体の化学を制御すること、又はマイクロ波生成プラズマ内での液滴の滞留時間を制御することを含む。ある実施形態では、リチウム含有粒子の化学組成を制御することは、前駆体溶液中の出発物質の割合を制御することを含む。ある実施形態では、リチウムイオン粒子の粒子径を制御することは、前駆体溶液の液滴の液滴サイズを制御することか、又は前駆体溶液中の出発物質の濃度を制御することを含む。ある実施形態では、制御されたサイズを有する液滴を生成することは、異なる径を有する液滴の2つ以上の流れを生成することを含む。1つのそのような実施形態では、液滴の2つ以上の流れは、液滴生成器の異なるノズル又は開口部を用いて生成される。ある実施形態では、リチウムイオン粒子の化学組成を調製することは、均質前駆体溶液を形成する前にリチウムイオン粒子の所望される化学組成を決定すること、及びリチウムイオン粒子の所望される化学組成に基づいて出発物質の化学量論的割合を算出することを含む。
【0010】
別の態様では、本発明の技術は、式LiNixMnyCozO2で表され、式中、x≧0、y≧0、z≧0、及びx+y+z=1であるリチウム含有粒子を作製する方法に関する。この方法は、リチウム塩、ニッケル塩、マンガン塩、及びコバルト塩の組み合わせを溶媒中に溶解して均質前駆体溶液を形成すること、液滴生成器を用いて、制御されたサイズを有する均質前駆体溶液の液滴を生成すること、液滴をマイクロ波生成プラズマ中に導入すること、マイクロ波生成プラズマからミクロン又はサブミクロンスケールのLiNixMnyCozO2の粒子を作製すること、並びにLiNixMnyCozO2の粒子を捕集することを含む。この技術の本態様の1つの実施形態では、制御されたサイズを有する液滴を生成することは、LiNixMnyCozO2の粒子に多峰性の粒度分布を発生させる目的で、異なる径を有する液滴の2つ以上の流れを生成することを含む。
【0011】
別の態様では、本発明の技術は、式LiNixCoyAlzO2で表され、式中、x=約0.8、y=約0.15、z=約0.05であるリチウム含有粒子を作製する方法に関する。この方法は、リチウム塩、ニッケル塩、コバルト塩、及びアルミニウム塩の組み合わせを溶媒中に溶解して均質前駆体溶液を形成すること、液滴生成器を用いて、均一なサイズの均質前駆体溶液の液滴を生成すること、均一なサイズの液滴をマイクロ波生成プラズマ中に導入すること、マイクロ波生成プラズマからミクロン又はサブミクロンスケールのLiNixCoyAlzO2の粒子を作製すること、並びにLiNixCoyAlzO2の粒子を捕集することを含む。この技術の本態様の1つの実施形態では、制御されたサイズを有する液滴を生成することは、LiNixCoyAlzO2の粒子に多峰性の粒度分布を発生させる目的で、異なる径を有する液滴の2つ以上の流れを生成することを含む。
【0012】
本発明の技術の上記態様は、以下の利点のうちの1又は複数を提供する。ある実施形態では、数時間又は数日間ではなく、数秒間又は数分間でのリチウム含有粒子の作製が可能である。ある実施形態では、有害若しくは毒性の副生物を生成することなく又は限定的にしか生成することなく、又は多くの割合の出発物質を喪失することなく、リチウム含有粒子の作製が可能である。ある実施形態ではまた、単一の作製システムを用いて、異なる化学組成及び異なる特性(例:異なる密度又は形態)のリチウム含有粒子の作製も可能である。ある実施形態ではまた、様々なプロセスパラメータを制御又は調節することによって、特定のリチウム含有粒子の精密な調製も可能である。ある実施形態ではまた、制御された粒度分布を有するリチウム含有粒子の作製も可能である。ある実施形態ではまた、制御された単一の粒度分布、二峰性の粒度分布、又は多峰性の粒度分布を有するリチウム含有粒子の作製も可能である。ある実施形態では、カーボン、アルミナなどの異なる材料であってよい表面被覆を有するリチウム含有粒子の作製が可能である。
【0013】
本開示によって提供される前述の及び他の特徴並びに利点は、添付の図面とともに読むことによって、以下の例示的実施形態の記述からより充分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に従う、リチウム含有粒子を作製するための例示的方法のフローチャートである。
【
図2】
図2は、リチウム含有粒子を作製するための従来のバッチ処理技術10と本開示で述べる連続フロープロセス20との比較を示す。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に従う、Liイオン電池材料を調製するための例示的方法のフローチャートである。
【
図4】
図4は、例示的実施形態に従う、マイクロ波生成プラズマを用いたリチウム含有粒子を作製するためのシステムの例を示す。
【
図5】
図5は、例示的実施形態に従う、Liイオン電池材料を調製するためのシステムを示すブロック図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に従って作製されたリチウム含有粒子のX線回折パターンのグラフである。
【
図7】
図7は、
図6のリチウム含有粒子の例の拡大画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、リチウム含有粒子及びLiイオン電池材料を作製するための方法、システム、及び装置が提供される。Liイオン電池用のカソード材料は、例えばLiNixMnyCozO2又はLiNixCoyAlzO2などのリチウム含有遷移金属酸化物を含み得る。これらの材料は、リチウム原子の層が遷移金属酸化物多面体の層の間に位置する層状結晶構造を有する。Liイオンが結晶構造から脱インターカレートするに従って、遷移金属の原子価状態の増加によって電荷的中性が維持される。LiNixMnyCozO2又はLiNixCoyAlzO2は、比較的高いエネルギー密度(mAh/g)、高いサイクル性(充電/放電サイクルあたりの分解%)、及び熱安定性(≦100℃)などの望ましい特性を有する。
【0016】
従来の技術によると、Liイオン電池に用いるためのリチウム含有粒子の作製には、数時間から数日間にわたる8~10のプロセス工程が必要であり得る。ある技術によれば、リチウム含有粒子のための出発物質は、撹拌、沈澱、ろ過、洗浄、乾燥、篩掛け、混合、焼成、分級、及び被覆のすべてを、スラリーが形成され得る前に行う必要がある。
【0017】
リチウム含有粒子を作製するための固体プロセスは、一般的に、化学量論的割合の固体前駆体の粉砕、及びそれに続く高温拡散反応による最終構造の形成を必要とする多工程プロセスである。そのようなプロセスからは、多くの場合、相不均質性、不均一な粒度分布、及びLiイオン拡散経路の抵抗の増加に繋がる低表面積を示す大きくて不規則な形状の粒子が作製される。表面積を高め、Liイオン拡散経路長さを最小限とするために、後処理による粒子径の低下が多くの場合必要とされる。集電板上にカソード材料をテープ成形する際の不規則形状粒子間の滑り摩擦及び凝集を克服するために、N-メチルピロリドンなどの高価で毒性の溶媒の使用が必要である。そのような溶媒は、製造プロセスの複雑性及びコストを高める。さらに、複数で長時間の処理工程により、純度を低下させる結果となる不純物のリスクも高まる。
【0018】
例えば、共沈によるLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2の合成は、従来から、NiSO4、CoSO4、及びMnSO4の溶液反応を含む多工程プロセスである。得られる(Ni1/3Mn1/3Co1/3)(OH)2は、およそ105℃で乾燥され、続いてLiOH・H2O)とおよそ500℃で反応され、次に900~1000℃で最大約10時間にわたって焼成される。得られる粉末は、球状、半球状、及び不規則形状の粒子を含む広い粒度分布を有する。化学廃溶液は、特別な取り扱い及び廃棄が必要であるサルファイト及び強塩基を含有しており、コストが増加する。
【0019】
噴霧熱分解技術も、Liイオンカソード材料の合成に用いられ得る。噴霧熱分解法の例は、LiNO3、Ni(NO3)、Co(NO3)2、及びMn(NO3)2の前駆体水溶液から開始するLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2の合成に用いられ得る。前駆体溶液は、超音波噴霧器を用いて噴霧され、炉又は火炎を用いて≧500℃に曝露され、ここで、前駆体溶液は、蒸発し、所望されるLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2粒子に分解される。しかし、そのような技術は、毒性又は不要である副生物を生成し得る。例えば、噴霧熱分解時に硝酸塩を用いると、NOxが生成する。加えて、高圧超音波噴霧器は、多大な粒度分布を生じさせ得るものであり、このことは、相及び形態の不均質性に繋がる可能性のある得られる粒子のサイズ依存性の熱履歴をもたらす。
【0020】
本開示で述べる技術によると、リチウム含有粒子は、数時間又は数日間ではなく数百ミ
リ秒間で完了することができるシングルフロープロセス(single flow process)を用い
て作製することができる。リチウム含有粒子を作製するためのプロセスが大きく単純化され、加速されるだけでなく、最終製品のサイズが非常により均一となり、多孔度、形態、及び化学組成の精密な調製が可能となる。本明細書で述べる技術を用いて、リチウム系電池のためのカソード、アノード、又は固体電解質材料を作製することができる。カソード、アノード、及び電解質のうちの1又は複数に用いられる例示的材料としては、限定されないが、LiNixMnyCozO2、LiNixCoyAlzO2、LiFePO4、Li8ZrO6、Li2FeMn3O8、Li4Ti5O12、SnO2、Co9S8、LiVP2O7、NaLaTi2O6、LixPOyNz、Liガーネット、及びLi10GeP2O12が挙げられる。
【0021】
化学的に均質で均一にサイズ制御された液滴フィードストック溶液と均質な熱処理との組み合わせにより、従来の固体、共沈、及び噴霧熱分解処理技術と比較して明確な利点がもたらされる。本開示の1つの実施形態では、均質前駆体溶液は、分子レベルで混合されて、溶液中の出発物質の均等な分布が確保される。前駆体溶液は、精密に制御されたサイズを有する液滴の1又は複数の流れを生成することができる液滴生成器を用いて液滴に成形される。ある実施形態では、液滴生成器は、各々その全体が参照により本明細書に援用される米国特許第9,321,071号及び米国特許出願公開第号2016/0228903号に記載される液滴生成器などの圧電式液滴生成器であってよい。1つの特定の実施形態では、液滴生成器は、液滴のサイズを、約±2%の粒度分布で精密な径に制御することができる。ある実施形態では、液滴生成器は、最終粒子に多峰性の粒度分布を発生させ得る異なる径を有する液滴の流れを生成するために、異なるサイズを有するノズル又は開口部を含んでよい。前駆体溶液の液滴は、次に、液滴の単一の流れ又は複数の直線状の流れとして、軸線方向にプラズマ中へ注入されてよい。プラズマは、例えば、層流ガス流及び実質的に均一な温度プロファイルを有する軸対称マイクロ波生成プラズマを含んでよい。そのようなマイクロ波生成プラズマの例は、各々その全体が参照により本明細書に援用される米国特許第8,748,785号、米国特許第8,951.496号、米国特許第9,023,259号、及び米国特許出願公開第2013/0270261号に見出すことができる。各液滴は、層流プラズマを通して同一の熱経路に従うものであり、作製された各粒子に対する同一の熱履歴が確保され、実質的に一定の最終組成が得られる結果となる。
【0022】
別の例としての実施形態では、本明細書で述べる技術を用いて、LiNixMnyCozO2(ここで、x≧0、y≧0、z≧0、及びx+y+z=1)及びLiNixCoyAlzO2(ここで、x=約0.8、y=約0.15、z=約0.05)の正極カソード粉末などのリチウム含有材料を、後処理の必要なく、単一の処理工程で作製することができる。多孔度、粒子径、粒度分布、相組成及び純度、マイクロ構造などの最終リチウム含有粒子の様々な特性を、様々なプロセスパラメータを微細に調整することによって、調製し、精密に制御することができる。ある実施形態では、これらのプロセスパラメータとしては、前駆体溶液の化学的性質、液滴サイズ、プラズマガス流量、プラズマプロセス雰囲気、プラズマ内での液滴の滞留時間、急冷速度、プラズマのパワー密度などが挙げられ得る。ある実施形態では、これらのプロセスパラメータを調製して、高表面積、特定の多孔度レベル、低抵抗Liイオン拡散経路、約±2%の狭い粒度分布を有し、ナノ結晶粒マイクロ構造を含有するミクロン及び/又はサブミクロンスケールの粒子を作製することができる。ある実施形態では、プラズマ内での液滴の滞留時間の制御は、プラズマガス流量を制御することによって、及び/又はマイクロ波生成プラズマのパワー密度を制御することによって行われてよい。ある実施形態では、急冷速度は、窒素、酸素、又はヘリウムなどの異なる急冷流体を選択することによって調節されてよい。例えば、ヘリウムは、他の流体よりも高い急冷速度を提供することができるが、作製プロセスに多大なコストが追加され得る。プラズマの様々な特性は、場合によっては、O2又は酸素、アルゴン、ヘリウム
などの様々な混合物を含み得るプラズマプロセス雰囲気を制御することによって調節されてもよい。
【0023】
ある実施形態では、前駆体溶液中に硝酸塩を用いる場合、硝酸塩がマイクロ波生成プラズマの熱と反応して発熱反応及びガスの急速な放出が引き起こされ得るものであり、それが多孔性をもたらす結果となることから、多孔度のより高いリチウム含有粒子が得られ得る。他の実施形態では、前駆体溶液中に酢酸塩を用いる場合、酢酸塩が硝酸塩と同様なマイクロ波生成プラズマの熱との反応を起こさないことから、硝酸塩を用いた場合よりも稠密なリチウム含有粒子が得られ得る。さらに、前駆体溶液の化学に酢酸塩を用いる場合、NOx排出物又は有害廃棄物が発生せず、連続的に運転することができる。理解されるように、リチウム含有粒子を所望される多孔度に調製する目的で、硝酸塩及び酢酸塩の様々な混合物及び割合が前駆体溶液に用いられてよい。
【0024】
1つの例としての実施形態では、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2(NMC-333)を、1molの酢酸リチウム[Li(COOCH3)]、0.33molの酢酸ニッケル四水和物[Ni(COOCH3)2・4H2O]、0.33molの酢酸マンガン四水和物[Mn(COOCH3)2・4H2O]、及び0.33molの酢酸コバルト四水和物[Co(COOCH3)2・4H2O)]の水溶液を含む前駆体溶液を用いて作製することができる。この前駆体溶液が混合されて均質溶液とされ、上述のように、液滴生成器を用いて制御されたサイズを有する液滴に成形される。前駆体溶液の液滴は、次に、軸線方向にマイクロ波生成プラズマに導入され、そこで、液体が蒸発し、酢酸塩が分解し、残った遷移金属カチオンが酸素含有プラズマと反応して、所望される化学量論の球状セラミック粒子を得ることができる。
【0025】
別の選択肢としての実施形態では、異なる化学組成のLiNixMnyCozO2を、均質前駆体溶液中の出発物質の割合を調製することによって作製することができる。例えば、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2(NMC-532)、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2(NMC-622)、又はLiNi0.8Mn0.1Co0.1O2(NMC-811)を、異なる割合のリチウム、ニッケル、マンガン、及びコバルト塩を前駆体溶液に提供することによって作製することができる。
【0026】
LiPON又はLi10GeP2O12などの他のリチウム含有材料を、本明細書で述べる技術を用いて作製することができる。例えば、目標化学量論のLi3PO4-xNxを、硝酸リチウム及びリン酸アンモニウムの均質混合物を含む前駆体溶液を用いることによって作製することができる。本開示で述べる技術を用いて作製され得るさらなる材料としては、LMO(LiMnO2、Li2Mn2O4、又はLi1.12Mn1.88O2として存在し得る)、LTO(式Li4Ti5O12を示す)、LiVP2O7、LiFePO4、Li8ZrO6、Li2FeMn3O8などが挙げられる。
【0027】
ある実施形態によると、本開示で述べる技術及びシステムを用いて、カーボン被覆粒子(例:カーボンで被覆されたリチウム含有粒子)などのコアシェル構造を作製することができる。アルミナ被覆などの他の被覆又はシェルも、本明細書で述べる技術を用いて作製することができる。他の実施形態では、異なる種類の電池材料が、電池の集電板などの基材上に被覆又は層形成されてよい。これらの材料は、所望される厚さを有する別々の層として堆積されてよく、又は被覆の厚さ全体にわたって被覆の材料組成が少しずつ変化する連続勾配被覆として堆積されてもよい。これらの異なる材料の堆積は、ある実施形態では、初期前駆体溶液の組成を制御することによって行われてよい。
【0028】
図1は、本開示の実施形態に従う、リチウム含有粒子を作製するための例示的方法のフローチャート100である。工程101では、いくつかの出発物質が組み合わされて、リ
チウムを含む均質前駆体溶液が形成される。ある実施形態では、均質前駆体溶液は、前駆体溶液中において出発物質が均等に分布されるように、分子レベルで混合される。例えば、均質前駆体溶液は、酢酸リチウム、酢酸ニッケル四水和物、酢酸マンガン四水和物、及び酢酸コバルト四水和物などのすべて水などの溶媒に溶解された金属塩から成る水溶液を含み得る。別の例では、均質前駆体溶液は、硝酸リチウム、硝酸ニッケル、硝酸マンガン、及び硝酸コバルトなどのすべて水などの溶媒に溶解された金属塩から成る水溶液を含み得る。上記で考察したように、異なる化学量論的割合の出発物質からは、最終リチウム含有粒子の異なる化学組成が得られる結果となり得る。
【0029】
工程103では、制御されたサイズを有する均質前駆体溶液の液滴が、液滴生成器を用いて生成される。液滴生成器は、例えば、精密なサイズ及び径を有する液滴の1又は複数の流れを生成するように構成された圧電式液滴生成器であってよい。ある実施形態では、液滴のサイズは、液滴生成器のキャピラリープレートのキャピラリーノズル又は開口部のサイズ及び/又は形状に基づいて決定される。液滴生成器は、同じサイズを有する液滴の1又は複数の流れを、又は異なるサイズ及び径を有する液滴の様々な流れを生成するように構成されていてよい。1つの特定の実施形態では、液滴生成器は、液滴のサイズを、約±2%の粒度分布で精密な径に制御することができる。
【0030】
工程105では、均質前駆体溶液の液滴が、マイクロ波生成プラズマ中に導入される。ある実施形態では、液滴は、液滴生成器によって生成された液滴の流れ中の液滴の各々が同じ温度プロファイルに曝露されるように、マイクロ波プラズマトーチ中に軸線方向に注入されてよい。上記で考察したように、プラズマは、層流ガス流を有する軸対称マイクロ波生成プラズマを含んでよく、それによって、液滴は、プラズマ内で一定の熱経路に曝露される。
【0031】
工程107では、マイクロ波生成プラズマからミクロン及びサブミクロンスケールのリチウム含有粒子が作製される。1つの例としての実施形態では、液滴がマイクロ波生成プラズマを通過するに従って、液体が蒸発し、前駆体溶液中の酢酸塩及び/又は硝酸塩が分解し、残った遷移金属がプラズマと反応して、所望される化学組成の球状セラミック粒子が得られる。上記で考察したように、リチウム含有粒子の様々な特性を、マイクロ波生成プラズマ内での液滴の滞留時間などの異なるプロセスパラメータを制御することによって調製することができる。ある実施形態では、滞留時間は、プラズマガスの流速、マイクロ波生成プラズマのパワー密度、及び/又は液滴生成器から排出される液滴の速度を調節することによって制御することができる。
【0032】
工程109では、リチウム含有粒子が捕集される。ある実施形態では、リチウム含有粒子を捕集することは、例えば急冷チャンバーを用いて、粒子を急冷することを含む。リチウム含有粒子の急冷速度は、ある実施形態では、急冷流体の選択、急冷流体の流速の制御、又は急冷流体温度の制御によって制御することができる。急冷流体の例としては、酸素、窒素、液体窒素、又はヘリウムが挙げられる。別の実施形態では、リチウム含有粒子は、ガスを添加することなく、チャンバー中で自然に急冷される。別の選択肢としての実施形態では、本明細書で述べるリチウム含有粒子は、プラズマから直接基材上に被覆されてもよい。
【0033】
リチウム含有粒子が捕集されると、工程111において、リチウム含有粒子でスラリーが形成され、Liイオン電池材料が形成される。
【0034】
図2は、リチウム含有粒子を作製するための従来のバッチ処理技術10と本開示で述べる連続フロープロセス20との比較を示す。従来のバッチ処理技術10によると、ある量の出発物質は、いくつかの別々の処理工程を受ける必要があり、異なる機械及び化学反応
が必要となる。これらの工程としては、例えば、すべてスラリーが形成され得る前の撹拌、沈澱、ろ過、洗浄、乾燥、篩掛け、混合、焼成、分級、及び被覆が挙げられ得る。そのような技術は、出発物質の各バッチに対して完了するのに、最大で何日間も掛かり得る。対照的に、本開示で述べる連続プロセスフロー20は、ミリ秒から分の単位で完了することができる単一の連続工程で、一式の出発物質からリチウム含有粒子を形成することができる。具体的には、出発物質が溶解されて前駆体水溶液とされると、前駆体溶液の液滴が、単一工程でリチウム含有粒子が作製されるプラズマトーチ中へ導入される。プラズマトーチ内で発生する反応、システムの様々なコンポーネント、さらには前駆体溶液を作製することができる方法の例は、
図1、4、及び5に関してより詳細に記載される。
【0035】
非常により早い処理時間(数分間対数日間)の利点を提供することに加えて、本発明の技術の実施形態は、様々な材料特性のカスタマイズ又は調製を可能とする。
図3は、本開示の実施形態に従う、Liイオン電池材料を調製するための例示的方法のフローチャート200である。工程201は、均質前駆体溶液を形成する前にリチウム含有粒子の所望される化学組成を決定することを含む。ある実施形態では、本明細書で開示される技術を用いて、NMC-333、NMC-532、NMC-622、NMC-811などの異なる化学組成を有する様々なリチウム含有粒子を作製することができる。上記で考察したように、これらのリチウム含有粒子の各々は、最終粒子の所望される特性に応じて、前駆体溶液に酢酸塩及び/若しくは硝酸塩、又は他の化学物質を用いて作製することができる。他の実施形態では、様々な化学組成のLiNi
xCo
yAl
zO
2又はLi
3PO
4-xN
xも作製することができる。
【0036】
リチウム含有粒子の所望される化学組成が決定されると、出発物質の化学量論的割合が工程203で算出される。これらの割合は、最終粒子の所望される化学組成に基づいており、所望される粒子を作製するために精密に調製され得る。1つの例としての実施形態では、NMC-333を作製するために、出発物質は、1molの酢酸リチウム[Li(COOCH3)]、0.33molの酢酸ニッケル四水和物[Ni(COOCH3)2・4H2O]、0.33molの酢酸マンガン四水和物[Mn(COOCH3)2・4H2O]、及び0.33molの酢酸コバルト四水和物[Co(COOCH3)2・4H2O)]を含んでよい。別の例では、NMC-333を作製するための出発物質は、1molの硝酸リチウム[LiNO3]、0.33molの硝酸ニッケル[Ni(NO3)2]、0.33molの硝酸マンガン[Mn(NO3)2]、及び0.33molの硝酸コバルト[Co(NO3)2]を含んでよい。NMC-532、NMC-622、NMC-811などを作製するためには、出発物質の異なる化学量論的割合が算出され得る。
【0037】
工程205は、リチウム含有粒子の形態を調製するべきかどうかの判定を行う。形態が調製されるべきである場合、方法は、工程207へ続き、そこで、リチウム含有粒子の形態を調製するために、マイクロ波生成プラズマ内での液滴の滞留時間が制御される。例えば、ある実施形態では、特定の温度での滞留時間を延長することによって、アモルファス相が最小限に抑えられるか又は除去され得る。滞留時間は、ある実施形態では、プラズマガスの流速、マイクロ波生成プラズマのパワー密度、及び/又は液滴生成器から排出される前駆体液滴の速度を制御することによって調製されてよい。
【0038】
方法は次に、リチウム含有粒子の多孔度が調製されるべきかどうかを判定するための工程209へと続く。多孔度が調製されるべきである場合、方法は、前駆体溶液中の硝酸塩物質及び酢酸塩物質の量の制御、溶液前駆体化学の制御、又はマイクロ波生成プラズマ内での液滴の滞留時間の制御を行う工程211に続く。上記で考察したように、前駆体溶液中に硝酸塩を用いる場合、より多孔性のリチウム含有粒子を得ることができ、一方前駆体溶液中に酢酸塩を用いる場合、より稠密なリチウム含有粒子を得ることができる。理解されるように、リチウム含有粒子を所望される多孔度に調製する目的で、硝酸塩及び酢酸塩
の様々な混合物及び割合が前駆体溶液に用いられてよい。
【0039】
方法は次に、リチウム含有粒子の粒子径が調製されるべきかどうかを判定するための工程213へと続く。粒子径が調製されるべきである場合、方法は、均質前駆体溶液の液滴の液滴サイズの制御、又は均質前駆体溶液中の出発物質の濃度の制御を行う工程215に続く。例えば、液滴に含まれる出発物質の濃度が高められる場合、溶液中の液体が蒸発する際の粒子の形成に利用可能である固体物質の濃度が高くなることから、得られるリチウム含有粒子は大きくなる。ある実施形態では、様々なサイズのリチウム含有粒子を、異なるサイズを有する液滴の異なる流れを生成することによって、同じプロセスフローで作製することができる。
【0040】
方法は次に、調製されたリチウム含有粒子を作製するために、所望されるパラメータでマイクロ波生成プラズマ中に液滴を導入する工程217へと続く。調製されたリチウム含有粒子が作製されると、それらは、
図1を参照して上記で考察したように、急冷及び/又は捕集されてよい。
【0041】
図4は、例示的実施形態に従う、マイクロ波生成プラズマを用いたリチウム含有粒子311を作製するためのシステム300を示す。この例としての実施形態では、圧電式液滴生成器301が、制御された液滴サイズを有するリチウム含有前駆体溶液の液滴303の流れを生成している。各液滴303は、上記で考察したように、所望される最終粒子を作製するために、精密に制御されたサイズ及び出発物質の濃度を有する。マイクロ波放射線源307は、プラズマチャンバー305内でプラズマを生成するために、導波路309を介してマイクロ波放射線を供給する。液滴303の流れは、軸線方向にプラズマチャンバー305へ導入され、各液滴は、プラズマチャンバー305内で実質的に均一な温度プロファイルに曝露される。上記で考察したように、マイクロ波生成プラズマは、リチウム含有粒子311を生成し、それはプラズマチャンバー305から排出され、粒子捕集器313を用いて捕集される。
【0042】
図5は、例示的実施形態に従う、Liイオン電池材料を調製するためのシステムを示すブロック
図400である。この特定の実施形態では、ユーザー入力デバイス401は、作製されるべきリチウム含有粒子の所望されるパラメータを指示するユーザーからの入力を受けてよい。例えば、ユーザー入力デバイス401は、所望される多孔度、形態、及び粒子径を有するNMC-532粒子を作製するための指示を受けてよい。コントローラ403は、ユーザー入力デバイスからの所望される粒子パラメータを受けて、システムの様々なコンポーネント及び前駆体を制御してよい(例:データベース又は参照表にアクセスすることによって、又は異なる入力に関連する制御プロセスを実行することによって)。例えば、コントローラ403は、所望される一式の特性を受けてよく、及び所望される粒子を作製する目的の前駆体溶液のための適切な出発物質一式を選択してよい。場合によっては、コントローラ403は、価格、用いられることになるプラズマガスの種類、最終粒子の所望される多孔度などに基づいて出発物質の種類を決定してよい。例えば、コントローラは、全体の生産コストの制限、粒子密度の増加、又は毒性副生物の制限の目的で、前駆体溶液に用いられることになる出発物質の種類を選択してよい。ある実施形態では、コントローラ403はまた、所望される溶液を作製するために、前駆体溶液のための所望される割合及び濃度の算出、及び溶液前駆体生成装置405の制御も行ってよい。コントローラ403はまた、所望されるサイズの液滴を生成するために、所望される液滴サイズの算出及び液滴生成器407の制御も行ってよい。場合によっては、コントローラ403は、液滴生成器407から排出される液滴の速度を調節するために、液滴生成器407を制御してよい。ある実施形態では、コントローラ403は、プラズマガスの流速を調節するために、プラズマガス流生成装置411を制御してよい。他の実施形態では、コントローラ403は、マイクロ波生成プラズマのパワー密度又は温度を調節するために、マイクロ波
放射線源409を制御してよい。例えば、マイクロ波放射線源409は、約6000Kの実質的に均一な温度プロファイルを生成するように制御されてよい。出発物質の量及び割合は、ある実施形態では、以下の表1に示される割合に従って選択されてよい。
【0043】
【0044】
表1から分かるように、NMC-33を作製するための前駆体溶液は、16.34mLの硝酸リチウム、29.15mLの硝酸ニッケル、26.06mLの硝酸マンガン、及び18.29mLの硝酸コバルトの水溶液を含んでよい。NMC-532、NMC-622、及びNMC-811を作製するための硝酸リチウム、硝酸ニッケル、硝酸マンガン、及び硝酸コバルトの前駆体溶液の割合の例のリストも、上記表2に示される。NMC-532を作製するための1つの例としての前駆体溶液は、16.34mLの硝酸リチウム、48.59mLの硝酸ニッケル、28.93mLの硝酸マンガン、及び12.20mLの硝酸コバルトの水溶液を含む。NMC-622を作製するための例としての前駆体溶液は、16.34mLの硝酸リチウム、58.31mLの硝酸ニッケル、17.37mLの硝酸マンガン、及び12.20mLの硝酸コバルトの水溶液を含む。NMC-811を作製するための例としての前駆体溶液は、約16.34mLの硝酸リチウム、約38.87mLの硝酸ニッケル、約2.89mLの硝酸マンガン、及び約1.22mLの硝酸コバルトの水溶液を含む。
【0045】
本発明の技術の多くの利点のうちの1つは、リチウム含有電池材料の化学量論をカスタマイズすることができることである。相対的割合、添加剤、又は前駆体のうちの1又は複数を変化させることにより、材料の組成、純度、及び/又は相を調製することができる。加えて、溶液前駆体の化学量論を単に変更することによって、単一の商業的プラットフォーム上で、2つ以上の組成の製造が容易に可能である(例:NMC-532対NMC-622、LiMn2O4、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、LiMn1.5
Ni0.5O4、LiCoO2、LiNiO2など)。さらに、前駆体物質及び/若しくは添加剤に対する変動又は制御による勾配又は層状の組成変化も可能である。本開示で述べるプロセスが本質的に連続的であることにより、各層の化学組成がその厚さ方向全体にわたって変動して所望される物質のいずれの有益性をも利用することができるように、カソード材料の層ごとの積層が可能である。連続プロセスであることはまた、従来の電池生産技術で発生するバッチ間の変動も排除する。加えて、プロセスが単純であることにより、従来の生産技術では不可能であり得るか又は高コストであり得る迅速な材料開発及び新規な材料配合(例:広範なNMC配合及び/又はドーパントの添加)の有益性の研究も可能である。
【0046】
ある実施形態によると、
図5に記載のシステム又は類似のシステムを用いて、カーボン被覆粒子などのコアシェル構造を作製することもできる。アルミナ被覆などの他の被覆又はシェルも、本明細書で述べる技術を用いて作製することができる。他の実施形態では、異なる種類の電池材料が、電池の集電板などの基材上に被覆又は層形成されてよい。これらの材料は、所望される厚さを有する別々の層として堆積されてよく、又は被覆の厚さ全体にわたって被覆の材料組成が少しずつ変化する連続勾配被覆として堆積されてもよい。これらの異なる材料の堆積は、ある実施形態では、初期前駆体溶液の組成を制御することによって行われてよい。
【0047】
図6は、本開示の最適化されていない実施形態に従って作製されたリチウム含有粒子のX線回折パターンのグラフである。このグラフは、リチウム、ニッケル、マンガン、及びコバルトの塩を用い、O
2のプラズマ雰囲気中においてLiNi
0.5Mn
0.3Co
0.2O
2(NMC-532)を作製するための最適化されていないプロセスに対応している。この特定の例では、前駆体溶液は、硝酸リチウム、硝酸ニッケル、硝酸マンガン、及び硝酸コバルトの混合物を含んでいた。
図6のグラフは、NMC532の結晶相に対応する4つの算出されたX線回折分光(XRD)ピーク501、503、505、及び507を含む。最適化されていないプロセスであっても、観察されたプロットは、レファレンスピーク501、503、505、及び507に実質的に対応する4つのピーク502、504、506、及び508を含む。
【0048】
所望される量のニッケル及びコバルトは実現された一方で、一部のリチウムがプロセス中に失われ、少量の過剰のマンガンが生成された。リチウムの喪失及び過剰のマンガンに対する考え得るソリューションは、所望されるNMC-532を実現するようにプロセスを調製するために、前駆体溶液を約66%の追加の硝酸リチウムで高濃度化し、硝酸マンガンの量を僅かに少なくすることであり得る。上記で考察したように、プラズマのパワー密度、急冷速度、急冷温度、滞留時間などはすべて、作製される粒子を微細に調整するために制御されてよい。
【0049】
図7は、
図6のリチウム含有粒子の例の拡大画像600を示す。最終リチウム含有粒子及び最終粒子の形態は、プラズマ内での液滴の滞留時間の制御、及び/又は前駆体溶液の化学の最適化によって調製することができる。例えば、特定の温度での滞留時間を延長することによって、アモルファス相が減少されるか又は除去され得る。
【0050】
別の実施形態では、表2は、硝酸塩を用いてNMC-333を作製するための溶液の充填を示す。この特定の例では、表2の1番右のカラムは、硝酸リチウム、硝酸ニッケル、硝酸マンガン、及び硝酸コバルトのmLでの溶液の量を示す。NMC-333のためのこれらの塩溶液の合計は、97.94mL/mol又は984g/Lである。
【0051】
【0052】
例としての実施形態によると、本明細書で述べる技術を用いてコアシェル構造を作製することができる。電池材料がプラズマから排出され、急冷されて目標の粒子径とされた後、シェル材料がそれらの上に被覆されてよい。シェル材料は、ある実施形態では、液相経路又は気相経路のいずれから開始して作製されてもよい。気相経路によるカーボン被覆の例は、酸素と混合されたアセチレンガス(C2H2)を用いて電池材料の表面上にカーボンを堆積させることから開始されてよい。カーボンの作製のために、アセチレンガス及び酸素の混合物が、例えば2:1のアセチレン対酸素比を用いて酸素不足とされてよい。このガス混合物が、プラズマから排出されて急冷された後の流動する浮遊電池材料粒子を含有する反応チャンバー中に導入されてよい。電池材料粒子、アセチレン、及び酸素の混合物は、ノズルを通るように指向されてよく、ノズルの出口部分で、電池材料及びガスの流れが、火炎又は熱源を通って流されてよい。熱及び酸素がアセチレンを分解してカーボンとし、そのうちの一部が、電池材料粒子の表面上にシェルを形成することになる。アセチレン及び酸素の濃度、単位体積あたりの電池材料粒子、ノズルサイズ、並びに/又はノズル出口部での速度などの様々なパラメータを制御することによって、電池材料粒子コアの特性又は形態を改変することなく、シェルの厚さを、用途での必要性に応じて調整することができる。
【0053】
ある実施形態では、カーボンシェルはまた、アセチレン/酸素ガス混合物から、急冷された電池材料の流れをアセチレン/酸素火炎を通して又はその前に指向することによって形成されてもよい。冷粒子が火炎を通過するか又はその前を通るに従って、火炎内で生成されたカーボンが、粒子の表面上に堆積され得る。単位体積あたりの電池材料の数、電池材料の速度、アセチレン/酸素比、アセチレン/酸素体積流量、及びアセチレン/酸素火炎の形態を制御することによって、シェルの厚さを目標の仕様に調整することができる。
【0054】
シェル材料はまた、粒子がプラズマから排出され、急冷されて目標の粒子径とされた後、液体前駆体を用いて電池材料粒子上に被覆されてもよい。例えば、グルコースなどのモノサッカリド又はスクロースなどのジサッカリドの噴霧ミストが、水などの無機溶媒又はメタノールなどの有機溶媒に溶解される。上記で述べたように、粒子がプラズマから排出され、急冷された後、この溶液が、アトマイザーを用いて粒子上にスプレーされて、粒子が炭素含有液体で被覆され得る。これらの被覆粒子は次に、約300~800℃の酸素含有高温ゾーンに投入され得る。高温ゾーン内では、有機又は無機溶媒が蒸発して、電池材料の表面上にサッカリドの膜が残され得る。サッカリドの温度がその熱分解温度よりも高く上昇するに従って、カーボンが後に残され、カーボンシェルが形成される。ある実施形態では、カーボンシェルの多孔度及び厚さは、溶媒中のサッカリドの種類及びその濃度、
溶媒の種類、溶液がアトマイザーを通される圧力、反応チャンバー内でのアトマイザーの向き、酸素濃度、及び高温ゾーン内の温度を制御することによって調整又は調製され得る。
【0055】
アルミナ(Al2O3)などの非カーボン被覆も、上記で述べたカーボン被覆と同様にして、液体前駆体を用いて作製することができる。1つの例としての実施形態では、液体前駆体は、硝酸アルミニウムなどの明確な濃度で溶解されたアルミニウム前駆体を含有する水などの無機溶媒又はメタノールなどの有機溶媒である。この溶液が、後プラズマ反応器中のアトマイザーを用いて急冷された粒子上にスプレーされて、硝酸アルミニウム含有液体で粒子が被覆され得る。これらの被覆粒子は、次に、約200~1000℃の酸素含有高温ゾーンに投入され得る。高温ゾーン内では、溶媒が蒸発して、粒子の表面上に硝酸アンモニウムの膜が残される。硝酸アルミニウムの温度がその熱分解温度よりも高く上昇するに従って、アモルファス酸化アルミニウムが、電池材料粒子の表面上に形成される。所望される場合、その結晶化温度に到達した際に、結晶酸化アルミニウムが、約400~1000℃の範囲内で形成されてよい。ある実施形態では、アルミナシェルの多孔度及び厚さは、アルミニウム塩の種類、溶媒中のアルミニウム塩の濃度、溶媒の種類、溶液がアトマイザーを通される圧力、反応チャンバー内でのアトマイザーの向き、高温ゾーン内の酸素濃度、及び/又は高温ゾーン内の温度などの様々なパラメータを制御することによって調整又は調製され得る。
【0056】
ある実施形態では、リチウムイオン電池の性能は、カソード材料の配合によって決定され得る。例えば、スピネル型酸化リチウムマンガン(LiMn2O2)カソード材料は、高い放電率を可能とするが、比較的低いエネルギー密度を示し、このことは、使用可能なエネルギーが枯渇した場合に素早く電池の交換が可能である電動工具の場合に有益であり得る。酸化リチウムニッケルコバルトアルミニウム(NCA:LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)カソード材料は、電気車両のような高エネルギー用途及び中程度の放電率の場合によく適し得る。酸化リチウムコバルト(LCO:LiCoO2)カソード材料は、高いエネルギー密度を有し、小型/軽量電池が可能であるが、放電率は低いため、携帯電話及びラップトップコンピュータのような用途によく適し得る。様々なカソード材料組成物を勾配カソード電池に組み込むことによって、より広い用途のハイブリッドな特性が可能となり得る。ある実施形態では、1つの材料が別の材料の上に明確な界面で堆積される層状カソードが作製され得る。他の実施形態では、カソードの組成が一つの材料から次の材料へ、材料間に明確な界面なしに連続的に遷移する連続可変カソード(continuously variable cathode)が作製され得る。
【0057】
別の例としての実施形態では、金属塩から複数の前駆体水溶液が作製されてよい。各前駆体溶液は、所望される異なるカソード材料の化学量論/組成を示してよく、それ自体のプラズマと関連付けられたそれ自体の液滴生成器に充填されてよい。例えば、第一の前駆体溶液は、酢酸リチウム及び酢酸マンガンを含有して、スピネル型LMOを生成してよい。第二の前駆体溶液は、酢酸リチウム、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、及び硝酸アルミニウムを含有して、NCAを生成してよい。第三の前駆体溶液は、酢酸リチウム及び酢酸コバルトを含有して、LCOを生成してよい。1つの例としての実施形態では、連続被覆プロセスが実行されて、スピネル型LMO前駆体溶液が第一の液滴生成器に供給されてよく、その溶液が、第一のプラズマを通して注入され、例えばアルミニウムから成っていてよい集電板上に堆積される。場合によっては、集電板は、集電板全体が覆われるように、プラズマ下を、前方に動かされ、前後にラスターされてよい(rastered)。集電体が動く速度及びパターン、並びに/又は前駆体の供給速度を制御することによって、膜厚さを決定することができる。所望される厚さのスピネル型LMOが堆積されると、被覆された集電板は、NCA堆積ゾーンへ投入されてよく、そこで、NCA前駆体溶液が、第二の液滴生成器を用いて第二のプラズマ中へ注入される。続いて、集電板は、LCO堆積ゾーンへ投
入されてよく、そこで、LCO前駆体溶液が、第三の液滴生成器を用いて第三のプラズマ中へ注入される。LCO被覆領域から排出された後、電池カソードは、電池内にすぐに設置できる状態であり得る。各層の厚さは、ある実施形態では、前駆体供給速度の調整並びに/又は集電板が動く速度及びパターンの制御によって、独立して制御することができる。1つの例としての実施形態では、各層の所望される厚さは、約34~100μmであり、合わせた厚さは、約100~300μmである。
【0058】
別の実施形態では、異なる被覆が、単一の液滴生成器及びプラズマを用いて作製され、堆積されてもよい。例えば、集電板は、スピネル型LMOの層でまず被覆されてよく、次に、液滴生成器は、スピネル型LMO層の上にNCAの層を堆積するために、NCA前駆体溶液で充填されてよい。続いて、NCA層が所望される厚さまで堆積されると、液滴生成器は、LCO前駆体溶液で充填されてよく、集電板がLCO層で被覆されるまでプロセスが継続される。この例としての実施形態では、各層の厚さは、前駆体供給速度及び集電板供給速度によって、独立して制御することができる。
【0059】
別の例としての実施形態では、本明細書で述べる技術を用いて、連続勾配カソード構造を作製することができる。例えば、カソード被覆の組成を次第に変化させるために、液滴生成器に投入される前駆体溶液の組成が、被覆プロセスの間全体にわたって連続的に変動されてよい。これは、ある実施形態では、一式の構成成分液体前駆体を用い、溶液前駆体の化学を連続的に変動させることによって実現され得る。1つのそのような例では、集電板のカソード組成は、カソードと電解質との界面において、LiMn1.5Ni0.5O4からLiMn2O4まで連続的に変動されてよい。3つの別々の容器が、各々、酢酸リチウム、酢酸マンガン、又は酢酸ニッケルを含む単一の構成成分金属塩で充填されてよい。第四の混合容器には、3つの単一構成成分容器から供給されてよく、この第四の混合容器は、3つの金属塩溶液の均質溶液を作製するために一定の撹拌が施されていてよい。この混合容器は、まず、LiMn1.5Ni0.5O4の形成に必要な金属塩溶液の化学量論比で充填されてよい。この溶液を用いて、集電板上に、明確な長さ及び幅で約1~50μmの範囲内であってよい第一のカソード層が作製されてよい。第一の層が堆積された後、第四の混合容器中の溶液体積は、液滴生成器から排出されるモル流量に等しい流量で、等モル量の酢酸リチウム前駆体及び酢酸マンガン前駆体によって混合容器を連続的に補充することによって、一定に維持されてよい。ニッケル塩を補充しないことによって、被覆プロセス全体を通して、最終被覆中のニッケルの濃度を連続的に減少させることができる。ある実施形態では、混合容器中の前駆体の体積は、定められた長さ、幅、及び厚さを有するカソード(又は他の電池コンポーネント)の作製に必要な材料の体積に基づいて決定されてよい。
【0060】
さらなる実施形態では、2つ以上の異なるカソード材料を単一の基材上に堆積させるのではなく、連続プロセスを用いて、カソード、アノード、及び固体電解質材料を堆積又は構築してもよい。例えば、上述のように、カソード材料の1又は複数の層が基材上に堆積された後、カソードは、カソード層上に固体電解質材料を直接堆積させるように構成されたプラズマ下に配置されてよい。所望される厚さの固体電解質材料が構築されると、次に、カソード/電解質層は、アノード材料を堆積するように構成されたプラズマ下に配置されてよい。アノード材料が堆積されると、集電板が、スチレンブタジエンコポリマー又はポリフッ化ビニリデンなどのバインダーによってアノードに取り付けられてよい。
【0061】
例示的フローチャートは、本明細書において、説明の目的で提供されるものであり、方法の限定されない例である。当業者であれば、例示的方法が、例示的フローチャートに示されるよりも多い又は少ない工程を含んでもよいこと、及び例示的フローチャートの工程が、説明のためのフローチャートに示される順番とは異なる順番で実施されてもよいことは認識されるであろう。
【0062】
例示的実施形態の記載において、明瞭化の目的で特定の専門用語が用いられる。記載の目的で、各特定の用語は、類似の目的を達成するために同様に作用するすべての技術的及び機能的均等物を少なくとも含むことを意図している。加えて、特定の例示的実施形態が複数のシステム要素、デバイスコンポーネント、又は方法工程を含むいくつかの場合では、それらの要素、コンポーネント、又は工程は、単一の要素、コンポーネント、又は工程に置き換えられてもよい。同様に、単一の要素、コンポーネント、又は工程は、同一の目的を果たすものである複数の要素、コンポーネント、又は工程に置き換えられてもよい。さらに、例示的実施形態は、特定の実施形態を参照して示され、記載されてきたが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、その形態及び詳細事項において様々な置換及び変更が成されてもよいことは理解されるであろう。なおさらに、他の態様、機能、及び利点も、本発明の範囲内である。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩、ニッケル塩、マンガン塩、及びコバルト塩の組み合わせを溶媒中に溶解して均質前駆体溶液を形成すること;
前記均質前駆体溶液をマイクロ波生成プラズマ中に導入すること;
前記マイクロ波生成プラズマから、ミクロン又はサブミクロンスケールの、式LiNi
x
Mn
y
Co
z
O
2
で表され、式中、x≧0、y≧0、z≧0、及びx+y+z=1であるリチウム含有粒子を作製すること;
前記リチウム含有粒子を捕集すること;及び
前記リチウム含有粒子を含むスラリーを形成して、リチウムイオン電池材料を形成すること;
を含む、リチウムイオン電池材料を製造するための方法。
【請求項2】
前記マイクロ波生成プラズマ内での前記均質前駆体溶液の滞留時間を制御することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リチウム含有粒子を捕集することが、前記リチウム含有粒子を急冷することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロ波生成プラズマが、酸素ガス又は酸素含有ガス中で生成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記導入することが、前記均質前駆体溶液の液滴を、マイクロ波プラズマシステムの前記マイクロ波生成プラズマ又は前記マイクロ波生成プラズマのアフターグロー領域に導入することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記導入することが、前記液滴を前記アフターグロー領域に導入することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
異なる径のうち第1の径を有する前記液滴の第1のセットが、第1の均一なサイズを有
し、異なる径のうち第2の径を有する前記液滴の第2のセットが、第2の均一なサイズを有する、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記リチウム含有粒子が、LiNi
0.5
Mn
0.3
Co
0.2
O
2
(NMC-532)、LiNi
0.6
Mn
0.2
Co
0.2
O
2
(NMC-622)、又はLiNi
0.8
Mn
0.1
Co
0.1
O
2
(NMC-811)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記均質前駆体溶液が、酢酸リチウム、酢酸ニッケル、酢酸マンガン、及び酢酸コバルトの水和又は非水和形態の水溶液を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記均質前駆体溶液が、硝酸リチウム、硝酸ニッケル、硝酸マンガン、及び硝酸コバルトの水溶液を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前駆体溶液の化学的性質、プラズマガス流量、前記マイクロ波生成プラズマ内での滞留時間、急冷速度、又は前記マイクロ波生成プラズマのパワー密度のうちの少なくとも1つを制御することによって、前記リチウム含有粒子の多孔度、形態、粒子径、粒度分布、又は化学組成のうち少なくとも1つを調製することをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記リチウム含有粒子が、カーボン又はアルミナで被覆されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
リチウム塩、ニッケル塩、マンガン塩、及びコバルト塩の組み合わせを溶媒中に溶解して均質前駆体溶液を形成すること;
前記均質前駆体溶液をマイクロ波生成プラズマ中に導入すること;
前記マイクロ波生成プラズマから、ミクロン又はサブミクロンスケールの、式LiNi
0.8
Co
0.15
Al
0.05
O
2
で表されるリチウム含有粒子を作製すること;
前記リチウム含有粒子を捕集すること;及び
前記リチウム含有粒子を含むスラリーを形成して、リチウムイオン電池材料を形成すること;
を含む、リチウムイオン電池材料を製造するための方法。
【請求項14】
前記マイクロ波生成プラズマ内での前記均質前駆体溶液の滞留時間を制御することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記リチウム含有粒子を捕集することが、前記リチウム含有粒子を急冷することを含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記マイクロ波生成プラズマが、酸素ガス又は酸素含有ガス中で生成される、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記導入することが、前記均質前駆体溶液の液滴を、マイクロ波プラズマシステムの前記マイクロ波生成プラズマ又は前記マイクロ波生成プラズマのアフターグロー領域に導入することを含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記導入することが、前記液滴を前記アフターグロー領域に導入することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
異なる径のうち第1の径を有する前記液滴の第1のセットが、第1の均一なサイズを有
し、異なる径のうち第2の径を有する前記液滴の第2のセットが、第2の均一なサイズを有する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記リチウム含有粒子が、カーボン又はアルミナで被覆されている、請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。