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特開2023-112160導電材分散液並びにこれを用いたリチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112160
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】導電材分散液並びにこれを用いたリチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20230803BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20230803BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/139
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103798
(22)【出願日】2023-06-23
(62)【分割の表示】P 2022507158の分割
【原出願日】2021-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2020039799
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591064508
【氏名又は名称】御国色素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121898
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 ひろみ
(72)【発明者】
【氏名】梶原 理恵
(57)【要約】
【課題】優れた性能の導電材分散液、これを用いたリチウムにオン電池用正極及びリチウムイオン二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも導電材、分散媒、ポリビニルアセタール系樹脂及びセルロース系樹脂を含有する導電材分散液であって、セルロース系樹脂100重量部に対してポリビニルアセタール系樹脂を10~200重量部含有する導電材分散液。。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも導電材、分散媒、ポリビニルアセタール系樹脂及びセルロース系樹脂を含有する導電材分散液であって、セルロース系樹脂100重量部に対してポリビニルアセタール系樹脂を10~200重量部含有する導電材分散液であって、導電材量が10~30重量%であり、ポリビニルアセタール系樹脂及びセルロース系樹脂を合計した量が導電材100重量部に対して3~30重量部であり、かつセルロース系樹脂の重量平均分子量が5000~50000である導電材分散液。
【請求項2】
導電材が、一次粒子径が30nm以下、かつDBP吸油量が160~250ml/100gであるカーボンブラックである請求項1記載の導電材分散液。
【請求項3】
ポリビニルアセタール系樹脂の平均重合度が100~600である請求項1又は2記載の導電材分散液。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の導電材分散液、電極活物質及びバインダーを混合し、電極基板に塗布、乾燥することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極の製造方法。
【請求項5】
請求項1、2又は3に記載の導電材分散液、電極活物質及びバインダーを混合し、電極基板に塗布、乾燥し、これを正極として組み込むことを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散性、導電性に優れ、かつ長期間適正な品質を維持することのでき、電極の作成に用いる電極ペーストの材料として好適な導電材分散液、並びにこのような導電材分散液を用いたリチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池の製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、実用化されている電池の中で最も高いエネルギー密度を示し、スマートフォンの様な携行電子機器や自動車への搭載も進んでいる。その中で、リチウムイオン二次電池の小型化、軽量化、長寿命化に加え、広い温度範囲での作動および安全性の向上などの更なる高性能化が要求されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、一般的に電極、セパレータ、電解質を含む電解液により構成される。また電極は、リチウムイオンを含む正極活物質と導電材、有機バインダー等を含む電極ペーストを集電体金属箔の表面に塗布して固着させた正極、及び、リチウムイオンの脱挿入可能な負極活物質と導電材、有機バインダー等を含む電極ペーストを集電体金属箔の表面に固着させた負極が用いられている。
【0004】
特に、正極については、正極活物質として用いられているLiCoO2等の遷移金属とリチウムの複合酸化物は電子伝導性が低く、単独で使用する場合は十分な電池性能が得られない。よって、カーボンブラックやカーボンナノチューブといった炭素材料を導電材として用いる事で、電池の内部抵抗を下げ、本来の電池性能を引き出すことが試みられてきた。
【0005】
電池の内部抵抗を下げるためには、集電体と活物質、および活物質と活物質の間に良好な導電パスを形成する必要があり、そのためには、小粒子径で高ストラクチャーであるカーボンブラックや、外径が細く長いカーボンナノチューブといった高い導電性を示す導電材を用いる事が好ましい。しかし、このような導電材は凝集力が強いため不均一になりやすく、そのままでは十分な性能を引き出せないため、導電材を事前に最適な状態に分散した導電材分散液を使用する方法が知られており、導電材をより均一に分散し、かつ、粘度の上昇を抑えるために、分散剤の使用が提案されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許5628503号公報
【特許文献2】特開2011-184664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に書かれている方法では、未だ、粘度の上昇を抑える効果が十分ではない事が分かった。特に、導電材の濃度が高いときは、導電材分散液の粘度が大きく上昇してしまうので、取り扱い性が悪くなる。また、導電材分散液の貯蔵安定性も不十分であり経時とともに粘度が上昇してしまう。このような導電材分散液を使用して活物質とバインダー及び任意の添加剤と配合して電極ペーストを作製する場合、混練時の条件がばらつき生産性が落ちるばかりでなく、活物質に対する導電材の被覆量のバランスを崩した箇所が生じるため安定した品質を担保できなくなる可能性もある。
【0008】
この問題を回避するため、低濃度の導電材分散液を使用する事も考えられるが、その場合、溶媒の使用量が増え、乾燥工程での負荷が増加する。加えて、電極ペーストを適正な粘度範囲に収めるために電極組成設計の自由度が低下し、高性能化に向けた開発の足枷になる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定の樹脂の組み合わせにより、高濃度でも粘度を低く保つことができ、貯蔵安定性にも優れる事を見出して本発明に到達した。
【0010】
すなわち本発明は、貯蔵安定性に優れ、かつ導電材を高濃度に含有することができ、リチウムイオン二次電池の正極用に好適な導電材分散液、及びこのような導電材分散液を用いてリチウムイオン二次電池及びリチウムイオン二次電池用正極の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、導電材を分散媒中に高濃度で分散させた導電材分散液を使用する事で、電極ペースト製造時の混練時間を短縮できるとともに、でき上がった正極電極の面内バラつきが抑制され、安定した品質のリチウムイオン二次電池を提供できる。また、本発明により電極ペーストの固形分を上げる事ができるため、乾燥工程の時間を短縮できるだけでなく、使用される溶媒の絶対量を削減できる事から、溶媒を再生する負荷も減る。つまり、環境負荷を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
すなわち、本発明は、
(1) 少なくとも導電材、分散媒、ポリビニルアセタール系樹脂及びセルロース系樹脂を含有する導電材分散液であって、セルロース系樹脂100重量部に対してポリビニルアセタール系樹脂を10~200重量部含有する導電材分散液、
(2) 導電材が、一次粒子径が30nm以下、かつDBP吸油量が160~250ml/100gであるカーボンブラックである上記(1)記載の導電材分散液、
(3) ポリビニルアセタール系樹脂の平均重合度が100~600である上記(1)又は(2)記載の導電材分散液、
(4) セルロース系樹脂の重量平均分子量が5000~50000である上記(1)~(3)のいずれかに記載の導電材分散液、
(5)上記(1)、(2)、(3)、又は(4)に記載の導電材分散液、電極活物質及びバインダーを混合し、電極基板に塗布、乾燥することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極の製造方法、
(6)上記(1)、(2)、(3)又は(4)に記載の導電材分散液、電極活物質及びバインダーを混合し、電極基板に塗布、乾燥し、これを正極として組み込むことを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法、にある。
[導電材分散液]
本発明の導電材分散液は、少なくとも、分散媒、導電材、ポリビニルアセタール系樹脂、及び、セルロース系樹脂を含有する。
【0013】
<分散媒について>
本発明に使用する分散媒は、特に限定されないが、電池のバインダーとしては、一般的にポリフッ化ビニリデンが使用されているので、それを溶解させる必要がある。そこで、一般的には、N-メチル-2-ピロリドンが適している。バインダーを均一に溶解させることができれば、他の成分が混在していても問題ない。
【0014】
<ポリビニルアセタール系樹脂について>
本発明の導電材分散液は、ポリビニルアセタール系樹脂を含有する。
ポリビニルアセタール系樹脂とは、一般にはポリビニルアルコール系樹脂(PVAと略記)にアルデヒドを脱水縮合させてアセタール化して得られる樹脂であり、アセタール基を含有する単位(PVAのビニルアルコール単位がアセタール化したもの)、水酸基を含有する単位(PVAのビニルアルコール単位に由来)、及びアセチル基を含有する単位(PVA製造時の未ケン化部分に由来)の少なくとも3種の繰り返し単位を有する高分子化合物である。従って、代表的には以下の式で表される(式1)。
本発明に用いるポリビニルアセタール系樹脂は特に限定されるものではなく、各種市販品を単独、もしくは2種類以上を併せて使用する事ができる。また、アセタール基は特に限定されるものではなく、公知の方法で合成された各種ポリビニルアセタール系樹脂を使用する事ができる。例えば、Rがブチル基であるポリビニルブチラール樹脂、Rがアセチル基であるポリビニルアセトアセタール樹脂などが挙げられる。
式1中のlは、50~90mol%、mは0~10mol%、nは10~50mol%が好ましい。特に好ましくは、lは、50~80mol%、mは0~5mol%、nは15~40mol%である。
市販品としては、エスレックB BL-1、エスレックB BL-10、エスレックB BL-S、エスレックB BX-L、エスレックK KS-10(以上商品名、積水化学工業株式会社製)、モビタールB14S、モビタールB16H、モビタールB20H、モビタールB30T、モビタールB30H、モビタールB30HH、モビタールB45M、モビタールB45H、モビタールB60T、モビタールB60H、モビタールB60HH、モビタール75H(以上商品名、クラレ株式会社製)などが挙げられる。
【0015】
これらの中でも特に平均重合度が 100 ~600が良く、好ましいのは150 ~600であり、より好ましいのは200 ~500であるポリビニルアセタール樹脂である。平均重合度は、JIS K6726に準じて測定する事ができる。
これらの内から溶媒に応じてよく溶けるものを選択すれば良く、N-メチル-2-ピロリドンを用いる場合は、エスレックBL-1、エスレックBL-10、エスレックBX-L、モビタールB14S、モビタールB16H、モビタールB20Hが適している。
【0016】
<セルロース系樹脂について>
本発明の導電材分散液は、セルロース系樹脂を含有する。
本発明に使用するセルロース樹脂系としては、セルロース骨格を有する高分子であれば特に限定されず、具体的にはセルロースのアルコール可溶化ブチレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、シアノエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースアンモニウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられる。
【0017】
これらの中でも特に、重量平均分子量が5,000~200,000である高分子であり、好ましくは重量平均分子量が5,000~100,000であり、さらに好ましくは重量平均分子量が5,000~50,000のセルロース樹脂である。
これらの内から溶媒に応じてよく溶けるものを選択すれば良く、N-メチル-2-ピロリドンを用いる場合は、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが適している。さらに電解液への耐性に優れている点では、セルロースアセテート、メチルセルロースが良く、これらを兼ね備えている点で、最も好ましいのはメチルセルロースである。
【0018】
<ポリビニルアセタール系樹脂及びセルロース系樹脂の添加量及と混合比率について>
導電材分散液中のポリビニルアセタール系樹脂及びセルロース系樹脂を合計した量としては、導電材100重量部に対して、3~30重量部が好ましく、さらに好ましくは5~20重量部、より好ましくは6~15重量部である。
ポリビニルアセタール系樹脂及びセルロース系樹脂の含有量が少なすぎると、導電材の凝集塊を十分に解せず不均一な状態のままであり、このような導電材分散液を活物質や有機バインダーと配合して得られる電極ペーストにより作製された塗膜の導電性が低下する傾向がある。導電材分散液におけるポリビニルアセタール系樹脂及びセルロース系樹脂の含有量が多すぎると、この導電材分散液を用いて得られた電極ペーストにより作製された塗膜中の抵抗成分が増えるため導電性が低下し、このような塗膜からなる正極を有するリチウムイオン二次電池を構成した場合、高容量化が困難になる場合がある。
【0019】
また、本発明では、前述のポリビニルアセタール系樹脂とセルロース系樹脂とを一定の比率で含有する。すなわち、セルロース系樹脂100重量部に対してポリビニルアセタール系樹脂を10~200重量部含有することを特徴とする。
この割合で含有することにより、均一で良好な安定性を有する導電材分散液を得ることができ、導電材分散液の低粘度化及び安定性の良化の効果が優れる。より好ましくはセルロース系樹脂100重量部に対して10~150重量部であり、さらに好ましくは25~100重量部である。
【0020】
<導電材について>
本発明に使用する導電材としては、カーボンブラック及びカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、黒鉛、グラフェン、ハードカーボン等が好適である。カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等が使用できる。また、これらの導電材1種を単独で又2種以上を併せて用いることができる。
【0021】
カーボンブラックの平均一次粒子径は、50nm以下が好ましく、40nm以下が特に好ましく、30nm以下がより好ましい。また、平均一次粒子径は、10nm以上が好ましく、15nm以上が特に好ましい。カーボンブラックの平均一次粒子径が大きすぎると、電極ペーストから得られる塗膜の導電性が低下する傾向がある。また、小さすぎると導電材分散液及び電極ペーストの粘度が高くなりすぎて、カーボンブラックの分散が困難になり、十分な導電性を発揮できなくなる場合がある。
【0022】
平均一次粒子径とは、ASTM:D3849-14に準拠して、透過型電子顕微鏡を用いて測定された算術平均粒子径を示す。なお、平均一次粒子径は、一般に導電材の物性を評価するために用いられる。
【0023】
カーボンブラックのDBP吸油量は、160~250ml/100gが好ましく、より好ましくは、170~240ml/100g、最も好ましいのは170~230ml/100gである。カーボンブラックのDBP吸油量が小さすぎると、カーボンブラック粒子同士の繋がりが短く、導電性に欠ける。また、大きすぎると導電材分散液及び電極ペーストの粘度が高くなりすぎて、カーボンブラックの分散が困難になり、十分な導電性を発揮できなくなる場合がある。
【0024】
DBP吸油量は、JIS6217-4に準拠して測定すれば良い。また、DBP吸油量は、ストラクチャーと呼ばれるカーボンブラック粒子同士が融着した状態であるアグリゲートの発達の度合いを反映している事から、導電性の指標として用いられている。
【0025】
分散液中のカーボンブラックの分散粒子径は、最大粒子径として40μm以下が好ましく、30μm以下がさらに好ましく、より好ましくは20μm以下である。一般的に、導電材等の分散体の粒子状態の管理には、平均粒子径が用いられている。しかしながら、平均粒子径を用いた場合には、粗大粒子の存在を考慮していないため、平均粒子径の値が小さい場合でも実際には最大粒子径として40μmを超える粗大粒子が存在している場合がある。この場合は、リチウムイオン二次電池の電極塗膜中での活物質と導電材の分布が不均一化し電池性能を損なう可能性が出てくる。
【0026】
最大粒子径は、JIS K5600-2-5に準拠し、グラインドゲージを用いて測定すればよい。
【0027】
カーボンブラックの純度は、99.90~100質量%が好ましく、99.95~100質量%が好ましい。なお、カーボンブラックの純度は、JIS K1469またはJIS K6218に準拠して測定した灰分を不純物とし、その不純物量に基づき算出できる。
【0028】
これらの特徴を持つカーボンブラックとしては、アセチレンブラックが挙げられ、具体的には、デンカブラック粉状品、デンカブラック粒状品、デンカブラックFX-35、デンカブラックHS-100、デンカブラックLi Li-100、デンカブラックLi Li-250、デンカブラックLi Li-400、デンカブラックLi Li-435等(以上商品名、デンカ株式会社製)がある。この中でも特に適しているのは、デンカブラックFX-35及びデンカブラックLi Li-435である。
【0029】
カーボンナノチューブは、略円筒形状をなした炭素結晶である。カーボンナノチューブは、その平均外径が、90nm以下が好ましく、30nm以下が特に好ましく、20nm以下がさらに好ましく、15nm以下が最も好ましい。また、その平均外径は、1nm以上、又は5nm以上が好ましい。カーボンナノチューブの平均外径が大きすぎると、電極ペーストから得られる塗膜の導電性が低下する傾向がある。また、小さすぎると導電材分散液及び電極ペーストの粘度が高くなりすぎて、カーボンナノチューブの分散が困難になる場合がある。
【0030】
カーボンナノチューブの平均外径とは、透過型電子顕微鏡の10万倍以上の倍率の画像を用いて測定した十分なn数の外径の算術平均値である。
【0031】
カーボンナノチューブとして、具体的には、昭和電工社製VGCF-X(平均外径30nm)、ARKEMA社製C100(平均外径10-15nm)、U100(平均外径10-15nm高純度品)、Nanocyl社製NC7000(平均外径10nm)、NC2150、NC3100、BAYER社製BaytubesC150(平均外径13-16nm)、BaytubesC150P(平均外径13-16nm)、及び保土ヶ谷化学社製MWNT(平均外径40-90nm)等が挙げられる。また、カーボンナノチューブは、1種を単独で又2種以上を併せて用いることもできる。
【0032】
本開示の導電材分散液が、カーボンナノチューブを含有する場合、凝集せずに、1本ずつ独立して分散するほど好ましい。電極ペーストから得られる塗膜の導電性に優れるためである。
カーボンブラック、カーボンナノチューブ等、複数種類の導電材を組み合わせて使用することも差し支えない。
【0033】
導電材分散液中に含有する導電材量としては、10~30重量%が適しており、好ましくは12~25重量%であり、より好ましくは13~22重量%である。
導電材分散液における導電材の含有量が少なすぎると、電極ペースト調製時の総固形分が低下し、適正な粘度よりも低くなるため、ムラが生じ不均一な塗膜になる。不均一な塗膜とは、活物質と導電材が偏在化している状態の塗膜、又は目付量(集電体上の塗布量)が位置によってバラついている状態の塗膜を指す。活物質と導電材が偏在化している状態の塗膜を正極に有するリチウムイオン二次電池を構成した場合、導電性が低下したり、電荷が偏ったりして、高速充放電や耐久性をといった性能を損なう可能性がある。目付量が位置によってバラついている状態の塗膜を用いて複数のリチウムイオン二次電池を製造した場合、リチウムイオン二次電池の1つ1つの容量がばらつくため、歩留まりが悪くなる可能性がある。導電材分散液における導電材の含有量が多すぎると、導電材分散液の流動性が低下し、電極ペースト調製時のハンドリングが悪くなる場合がある。
【0034】
<任意成分について>
本発明の導電材分散液は、本発明の目的の範囲内で、導電材、セルロース系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂及び分散媒以外の任意成分を適宜含有してよい。このような任意成分としては、例えば、分散剤(上述したセルロース系樹脂及びポリビニルアセタール系樹脂以外の成分であって導電材を分散する機能を有する成分を指す);リン化合物;硫黄化合物;有機酸;アミン化合物やアンモニウム化合物などの窒素化合物;有機エステル;並びに、各種シラン系、チタン系及びアルミニウム系のカップリング剤等従来公知の添加剤が挙げられる。任意成分は、1種を単独で又2種以上を併せて用いることができる。
【0035】
分散剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリビニルブチラール、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、各種ゴム、リグニン、ペクチン、ゼラチン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、ポリビニルアルコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、キチン類、キトサン類、及びデンプン等の非イオン性分散剤が挙げられる。
【0036】
分散剤の配合量は、導電材100質量部に対して、0.1~100質量部が好ましく、0.1~50質量部がより好ましい。
【0037】
リン化合物としては、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、亜リン酸トリエチル、及び亜リン酸トリフェニル等が挙げられる。
【0038】
硫黄化合物としては、ブタンチオール、n-ヘキサンチオール、硫化ジエチル、及びテトラヒドロチオペン等が挙げられる。
【0039】
有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸、カプリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、しゅう酸、琥珀酸、アジピン酸、マレイン酸、グルタール酸、安息香酸、2-メチル安息香酸、4-メチル安息香酸及びそれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0040】
アミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ドコデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、イソオクチルアミン、イソアミルアミン、アリルアミン、シアノエチルアミン、シクロプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロペンチルアミン、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、ベンジルアミン、アニシジン、アミノベンゾニトリル、ピペリジン、ピラジン、ピリジン、ピロール、ピロリジン、メトキシアミン、メトキシエチルアミン、メトキシエトキシエチルアミン、メトキシエトキシエトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミン、エトキシアミン、n-ブトキシアミン、2-ヘキシルオキシアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、アミノアセトアルデヒドジメチルアセタール、ヒドロキシアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、2-ヒドロキシプロピルアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリトリエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、2-エチルジアミン、2,2-(エチレンジオキシ)ビスエチルアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-メチルピペリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリ-n-ブチルアミン、アンモニウムヒドロキシド、イミダゾル、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロオクタン、タウリン、ヒドラジン、ヘキサメチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、及びアジピン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0041】
アンモニウム化合物としては、例えば、2-エチルヘキシルカルバミン酸2-エチルヘキシルアンモニウム、2-エチルヘキシル炭酸2-エチルヘキシルアンモニウム、2-シアノエチルカルバミン酸2-シアノエチルアンモニウム、2-シアノエチル炭酸2-シアノエチルアンモニウム、2-メトキシエチルカルバミン酸2-メトキシエチルアンモニウム、2-メトキシエチル炭酸2-メトキシエチルアンモニウム、n-ブチルカルバミン酸n-ブチルアンモニウム、n-ブチル炭酸n-ブチルアンモニウム、t-ブチルカルバミン酸t-ブチルアンモニウム、t-ブチル炭酸t-ブチルアンモニウム、イソブチルカルバミン酸イソブチルアンモニウム、イソブチル炭酸イソブチルアンモニウム、イソプロピルカルバミン酸イソプロピルアンモニウム、イソプロピルカルバミン酸トリエチレンジアミニウム、イソプロピル炭酸イソプロピルアンモニウム、イソプロピル炭酸トリエチレンジアミニウム、エチルカルバミン酸エチルアンモニウム、エチルヘキシルカルバミン酸ピリジニウム、エチル炭酸エチルアンモニウム、オクタデシルカルバミン酸オクタデシルアンモニウム、オクタデシル炭酸オクタデシルアンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、ジオクタデシルカルバミン酸ジオクタデシルアンモニウム、ジオクタデシル炭酸ジオクタデシルアンモニウム、ジブチルカルバミン酸ジブチルアンモニウム、ジブチル炭酸ジブチルアンモニウム、トリエトキシシリルプロピルカルバミン酸トリエトキシシリルプロピルアンモニウム、トリエトキシシリルプロピル炭酸トリエトキシシリルプロピルアンモニウム、ヘキサメチレンイミンカルバミン酸ヘキサメチレンイミニウム、ヘキサメチレンイミン炭酸ヘキサメチレンイミニウムアンモニウム、ベンジルカルバミン酸ベンジルアンモニウム、ベンジル炭酸ベンジルアンモニウム、メチルデシルカルバミン酸メチルデシルアンモニウム、メチルデシル炭酸メチルデシルアンモニウム、モルホリンカルバミン酸モルホリニウム、モルホリン炭酸モルホリウム、重炭酸2-エチルヘキシルアンモニウム、重炭酸2-シアノエチルアンモニウム、重炭酸2-メトキシエチルアンモニウム、重炭酸t-ブチルアンモニウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸イソプロピルアンモニウム、重炭酸ジオクタデシルアンモニウム、重炭酸トリエチレンジアミニウム、及び重炭酸ピリジニウム等、並びに、これらの誘導体又は混合物等が挙げられる。
【0042】
有機エステルとしては、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸-n-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、アクリル酸メチル、しゅう酸ジメチル、琥珀酸ジメチル、クロトン酸メチル、安息香酸メチル、2-メチル安息香酸メチル、及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0043】
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシシラン)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びγ-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0044】
チタンカップリング剤としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンセンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0045】
アルミニウム系カップリング剤としては、例えば、各種アルミニウムキレート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウム・ビスエチルアセテート・ジイソプロピレート、アセトアルコジシアルミニウムジイソプロビレート、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0046】
<分散液の粘度について>
本発明の導電材分散液の粘度は、好ましくは50~5000mPa・sであり、より好ましくは80~3000mPa・sであり、さらに好ましくは、80~2000mPa・sである。分散液の粘度が50mPa・s未満であると、分散液中の導電材の沈降を抑制するのが難しく、長期間品質を維持するのが難しくなる。更に活物質、バインダー及び導電材分散液を混合して作製された電極ペーストの粘度が最適な範囲を下回り、狙いの膜厚の塗膜を均一に作製するのが難しくなる。また、分散液の粘度が5000mPa・sを超えると電極ペーストの粘度も上がり、混練と塗工が困難になる。
【0047】
導電材分散液の粘度は、JIS K7117-1に準拠し、B形粘度計を使用して測定すればよい。
【0048】
<導電材分散液の作製方法>
本発明の導電材分散液の作製方法は、以上説明した各成分を所定の配合割合で含有し、所望の粘度とすることができれば、その作製方法は限定されないが、以下の方法が好ましい。
まず、分散媒(N-メチル-2-ピロリドンが好ましい)に、ポリビニルアセタール系樹脂とセルロース系樹脂を溶解させる。その溶液に、必要に応じ任意成分及び導電材を混合し、その後ビーズミル等の一般的な分散装置により、凝集している導電材を解砕しながら分散し、所定の粘度となるまで分散を継続する。こうして所定の濃度において、所定の分散粒子径、粘度を有する導電材含有分散液を得ることができる。
分散装置は、最大粒子径が20μm以下に分散できる装置が好ましいが、特にビーズミルに限るものではなく、ボールミル、ジェットミル等が挙げられる。
【0049】
[導電材分散液のリチウムイオン二次電池への利用]
本発明の導電材分散液の利用方法としては、本発明の導電材分散液、正極用活物質及びバインダー等と混合して、電極基板に塗布するための電極ペーストとし、リチウムイオン二次電池を得る事ができる。その方法としては、従来知られている各種の方法を採用する事ができる。代表的な例として、本発明の導電材分散液を正極活物質、バインダーと混合してスラリー化し、これを電極基板に塗布、乾燥し、電極を形成する。これをリチウムイオン二次電池の正極とし、グラファイト等の炭素材からなる負極との間に多孔質の絶縁材料であるセパレータを挟み、容器の形状に応じて円筒状や扁平状に巻かれて収納され、そこに電解液を注入する。こうして得られる本発明のリチウムイオン二次電池は、長期間に渡って充放電を繰り返しても性能を維持することができる。
【実施例0050】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0051】
実施例及び比較例で使用したカーボンブラック、ポリビニルアセタール系樹脂、セルロース系樹脂、活物質、バインダーを以下に示す。
【0052】
<カーボンブラック>
・デンカブラックLi Li-435(商品名。デンカ株式会社製):アセチレンブラック、一次粒子径23nm、DBP吸油量220ml/100g、以下、Li-435と略記する。
【0053】
<ポリビニルアセタール系樹脂>
・エスレックB BL-1(商品名。積水化学工業株式会社製):ポリビニルブチラール樹脂、平均重合度300、水酸基量36mol%、ブチラール化度63mol%、以下、BL-1と略記する。
・エスレックB BL-10(商品名。積水化学工業株式会社製):ポリビニルブチラール樹脂、平均重合度250、水酸基量28mol%、ブチラール化度71mol%、以下、BL-10と略記する。
・エスレックB BX-L(商品名。積水化学工業株式会社製):ポリビニルアセタール樹脂、平均重合度250、水酸基量32mol%、アセタール化度67mol%、以下、BX-Lと略記する。
・モビタールB16H(商品名。クラレ株式会社製):ポリビニルブチラール樹脂、平均重合度250~300、水酸基量26~30mol%、ブチラール化度70~73mol%、以下、B16Hと略記する。
・モビタールB20H(商品名。クラレ株式会社製):ポリビニルブチラール樹脂、平均重合度250~500、水酸基量26~30mol%、ブチラール化度70~73mol%、以下、B20Hと略記する。
【0054】
<セルロース樹脂>
・メチルセルロース:重量平均分子量35000~45000、メトキシ基置換度1.8、以下、MCと略記する。重量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いて測定する事ができる。ゲルろ過クロマトグラフィーでの測定条件の例を以下に記す。
装置:Prominence(島津製作所株式会社製)
カラム:OHpakSB-802.5HQ(Shodex株式会社製)、
OHpakSB-804HQ(Shodex株式会社製)
検出器:RI
溶離液:0.5M NaCl水溶液
流量:1.0ml/min
試料濃度:0.2wt/vol%
カラム温度:40℃
【0055】
<活物質>
・セルシードC-5H(商品名。日本化学工業株式会社製):正極用活物質コバルト酸リチウム(LiCoO)、D50 7.2μm、比表面積0.46m/g、以下LCOと略記する。
【0056】
<バインダー>
・KFポリマーW#1100(商品名。クレハ株式会社製):ポリフッ化ビニリデン、平均分子量280000、以下、PVDFと略記する。
【0057】
実施例及び比較例における各種の評価は、以下の方法により行った。
<分散液粘度、分散液の貯蔵安定性>
実施例1に記載する方法により作製した導電材分散液の粘度は、B形粘度計(TVB-10:商品名。東機産業株式会社製)を用いて、25℃、60rpmの速度で回転させた際に測定される60秒後の数値を用いる。
また、分散液の貯蔵安定性は、25℃で、1週間静置した後の各分散液の粘度を測定し、初期の各分散液の粘度に対する変化の度合いを以下の基準にて評価した。
○:初期粘度に対する変化量の絶対値が10%以下。
△:初期粘度に対する変化量の絶対値が10%を超え15%以下。
×:初期粘度に対する変化量の絶対値が15%を超える。
【0058】
<電極ペーストの貯蔵安定性>
プラスチック容器に16.45質量部のLCO、3.22質量部のPVDF溶液(PVDF:0.48質量部)、実施例及び比較例で得られた導電材分散液2.63質量部及び、2.70質量部のN-メチル-2ピロリドンを仕込み、あわとり練太郎(商品名。シンキー株式会社製)を用いて混練し、電極ペーストを得た。なお、導電材分散液中に含有されるポリビニルアセタール樹脂及びセルロース樹脂はバインダー成分とみなし、添加したPVDFと合わせて量を総バインダー量とした。
【0059】
得られた電極ペーストの粘度は、以下に示す条件にてレオメーターを用いて測定した。
装置:HAAKE MARSIII(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)
センサー:Cone C35/1°
測定温度:25℃
シェアレート:10s-1
測定時間:60秒
【0060】
また、電極ペーストの貯蔵安定性は25℃で、1週間静置した後の各電極ペーストの粘度を測定し、初期の各電極ペーストの粘度に対する変化の度合いを以下の基準にて評価した。なお、1週間後の電極ペーストの粘度を測定する際は、沈降を解消させるため、事前にあわとり練太郎にて2000rpmで20秒間混合した。
◎:初期粘度に対する変化量の絶対値が10%以下。
○:初期粘度に対する変化量の絶対値が10%を超え15%以下。
△:初期粘度に対する変化量の絶対値が15%を超え20%以下。
×:初期粘度に対する変化量の絶対値が20%を超える。
【0061】
(実施例1)
プラスチック瓶に分散媒として78.4質量部のN-メチル-2-ピロリドン、1.12質量部のMC、0.48質量部のBL-1を仕込み、混合して溶解させる。その後、20質量部のLi-435を仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで6時間分散して導電材分散液を得た。得られた分散液の「分散液粘度」、「分散液の貯蔵安定性」、「電極ペーストの貯蔵安定性」、それぞれ上記の方法により求めた。結果は表1に示す。
【0062】
(実施例2~10、比較例1~11)
表1に示す組成(ポリビニルアセタール樹脂種、混合比率)を変更した以外は実施例1と同様にして導電材分散液を得た。得られた導電材分散液の各種測定も同様に行った。結果は表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示した結果より、ポリビニルアセタール樹脂及びセルロース樹脂を含有する実施例1~10の導電材分散液は、初期粘度が2000mPa・s以下であり、特に実施例1~3の電極ペーストの貯蔵安定性は、初期粘度に対する変化量の絶対値が10%以下と最も変化量が低く抑えられている。
いずれか一方しか含有していない比較例1~6及びポリビニルアセタール樹脂とセルロース樹脂の混合比率が本発明の範囲を外れている比較例7~11は導電材分散液の初期粘度が2000mPa・sを超えており取り扱い性が著しく損なわれる。このように本発明の導電材分散液は初期粘度も貯蔵安定性も比較例より優れている上、電極ペーストの貯蔵安定性向上の効果が大きいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明により、優れた性能の導電材分散液、これを用いたリチウムにオン電池用正極及びリチウムイオン二次電池の製造方法を提供できることができることがわかる。