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特開2023-112198積層セラミックコンデンサの製造方法及び積層セラミックコンデンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112198
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサの製造方法及び積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
H01G4/30 201N
H01G4/30 311
H01G4/30 311Z
H01G4/30 201K
H01G4/30 201L
H01G4/30 201D
H01G4/30 201G
H01G4/30 516
H01G4/30 515
H01G4/30 513
H01G4/30 512
H01G4/30 517
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104274
(22)【出願日】2023-06-26
(62)【分割の表示】P 2018169112の分割
【原出願日】2018-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 靖也
(72)【発明者】
【氏名】木暮 利光
(72)【発明者】
【氏名】小林 譲二
(72)【発明者】
【氏名】大野 亮
(57)【要約】
【課題】容量及び焼結性を損なわずに高い信頼性が得られる積層セラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】積層セラミックコンデンサは、積層部と、サイドマージン部と、接合部と、を具備する。上記積層部は、第1方向に積層された複数のセラミック層と、上記複数のセラミック層の間に配置され、ニッケルを主成分とする複数の内部電極と、を有する。上記サイドマージン部は、上記第1方向に直交する第2方向から上記積層部を覆う。上記接合部は、上記積層部と上記サイドマージン部との間に配置され、上記複数のセラミック層及び上記サイドマージン部よりもマグネシウム濃度が高い。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に積層された複数の内部電極が前記第1方向に直交する第2方向に向いた側面から露出するセラミック積層チップを作製し、
前記セラミック積層チップの前記側面に粘着剤を塗布したセラミックスシートを貼り付けることで、中央部と、前記中央部の外周に形成され前記中央部よりも前記第2方向における厚み寸法の小さい外縁部と、を含む粘着層を有するサイドマージン部を形成し、
前記セラミック積層チップと前記サイドマージン部とを有するセラミック素体を焼成し、
前記粘着層において、前記外縁部の前記第2方向における厚み寸法は、前記セラミック素体の表面において前記中央部の前記第2方向における厚み寸法の10%以上80%以下ある
積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法であって、
前記サイドマージン部を形成する工程では、
前記粘着剤を塗布した前記セラミックスシートを貼り付け、
前記セラミックスシートを前記側面で打ち抜き、
打ち抜かれた前記セラミックスシートと前記側面とを再圧着することで、前記サイドマージン部を成形する
積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法であって、
前記サイドマージン部を成形する工程では、さらに、加熱しながら前記セラミックスシートと前記側面とを再圧着する
積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項4】
第1方向に積層され、かつ前記第1方向と直交する第2方向に向いた側面から露出する端部の位置が前記第2方向に0.5μmの範囲内に相互に揃っている複数の内部電極を有するセラミック積層体と、
前記側面上に形成された接合層と、前記接合層上に形成された側部セラミック層と、を有し、前記第2方向から前記側面を覆うサイドマージン部と、
を具備するセラミック素体を備え、
前記接合層は、
前記第1方向と、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向と、における中央部と、
前記中央部の外周に形成され前記中央部よりも前記第2方向における厚み寸法の小さい外縁部と、を有し、
前記接合層において、前記外縁部の前記第2方向における厚み寸法は、前記セラミック素体の表面において前記中央部の前記第2方向における厚み寸法の40%以上80%以下ある
積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
請求項4に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記セラミック積層体の外側に設けられたニッケルを主成分とする外部電極を更に具備する
積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
請求項4に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記セラミック積層体の外側に設けられた銅を主成分とする外部電極を更に具備する
積層セラミックコンデンサ。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記複数の内部電極の主成分はニッケルである
積層セラミックコンデンサ。
【請求項8】
請求項4から6のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記複数の内部電極の主成分は銅である
積層セラミックコンデンサ。
【請求項9】
請求項4から8のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記接合層はガラス質を含む
積層セラミックコンデンサ。
【請求項10】
請求項4から9のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記外縁部は前記中央部の外周を取り囲むように環状に形成される
積層セラミックコンデンサ。
【請求項11】
請求項4から10のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記外縁部は前記セラミック積層体の表面から帯状に露出している
積層セラミックコンデンサ。
【請求項12】
請求項11に記載の積層セラミックコンデンサであって、
前記外縁部の前記第2方向の厚み寸法は前記表面から中央部に向かって徐々に厚くなっている
積層セラミックコンデンサ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドマージン部を備えた積層セラミックコンデンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサの製造方法において、内部電極の交差面積を増加させる観点等から、内部電極とセラミックグリーンシートからなる未焼成の積層体を作製した後、内部電極の周囲を保護するサイドマージン部を設ける技術が知られている。例えば特許文献1には、内部電極を側面に露出させた状態のグリーンチップの側面に側面用セラミックグリーンシートを貼り付けることで、生のセラミック保護層を形成する、積層セラミック電子部品の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-209539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、サイドマージン部を後付した場合、焼成や、面取りのためのバレル研磨等の工程において、サイドマージン部とチップ側面との接合部に、クラックや剥離等の不具合が発生しやすかった。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、サイドマージン部の接合部における不具合を抑制できる積層セラミックコンデンサの製造方法及び積層セラミックコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法は、第1方向に積層された複数の内部電極が上記第1方向に直交する第2方向に向いた側面から露出するセラミック積層チップを作製する工程を含む。
上記セラミック積層チップの上記側面に粘着剤を塗布したセラミックスシートを貼り付けることで、中央部と、上記中央部の外周に形成され上記中央部よりも上記第2方向における厚み寸法の小さい外縁部と、を含む粘着層を有するサイドマージン部が形成される。
上記積層チップと上記サイドマージン部とを有するセラミック素体が焼成される。
【0007】
この構成では、サイドマージン部が、外縁部を有する粘着層を介して積層チップの側面に貼り付けられる。これにより、サイドマージン部の剥離を抑制できる。さらに、粘着層の外縁部が薄く形成されることで、粘着部の外縁部における体積の膨張及び収縮等を抑制し、サイドマージン部の剥離やクラックの発生を効果的に抑制することができる。
【0008】
上記サイドマージン部を形成する工程では、
上記粘着剤を塗布した上記セラミックスシートを貼り付け、
上記セラミックスシートを上記側面で打ち抜き、
打ち抜かれた上記セラミックスシートと上記側面とを再圧着することで、上記サイドマージン部を成形してもよい。
これにより、中央部よりも厚みの薄い外縁部を含む粘着層を容易に形成することが容易できる。
【0009】
上記サイドマージン部を成形する工程では、さらに、加熱しながら上記セラミックスシートと上記側面とを再圧着してもよい。
これにより、粘着剤が柔らかくなり、サイドマージン部の成形が容易になる。
【0010】
また上記粘着層において、上記外縁部の上記第2方向における厚み寸法は、上記中央部の上記第2方向における厚み寸法の10%以上80%以下であってもよい。
これにより、粘着部の外縁部における体積の膨張及び収縮等を効果的に抑制し、サイドマージン部の剥離をより確実に抑制することができる。
【0011】
上記セラミックシートには、0.5μm以上10μm以下の厚みで上記粘着剤を塗布してもよい。
これにより、薄い外縁部を含む粘着層を形成することがより容易になる。
【0012】
本発明の他の形態に係る積層セラミックコンデンサは、セラミック積層体と、サイドマージン部と、を具備する。
上記セラミック積層体は、第1方向に積層され、かつ上記第1方向と直交する第2方向に向いた側面から露出する端部の位置が上記第2方向に0.5μmの範囲内に相互に揃っている複数の内部電極を有する。
上記サイドマージン部は、上記側面上に形成された接合層と、上記接合層上に形成された側部セラミック層と、を有し、上記第2方向から上記側面を覆う。
上記接合層は、
上記第1方向と、上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向と、における中央部と、
上記中央部の外周に形成され上記中央部よりも上記第2方向における厚み寸法の小さい外縁部と、を有する。
【0013】
この構成では、サイドマージン部が、外縁部を有する接合層を介して積層チップの側面に接合される。これにより、サイドマージン部の剥離を抑制できる。さらに、接合層の外縁部が薄く形成されることで、外縁部に付加される内部応力の影響を低減することができ、サイドマージン部の剥離やクラックの発生を効果的に抑制することができる。
さらに、仮にサイドマージン部に剥離等が生じた場合でも、接合層が積層チップの側面を覆うため、当該側面が保護される。これにより、当該側面における内部電極のショート等をより確実に防止することができる。
【0014】
具体的には、上記接合層において、上記外縁部の上記第2方向における厚み寸法は、上記中央部の上記第2方向における厚み寸法の40%以上80%以下であってもよい。
また、上記接合層の上記中央部の上記第2方向における厚み寸法は、0.3μm以上8μm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、サイドマージン部の接合部における不具合を抑制できる積層セラミックコンデンサの製造方法及び積層セラミックコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
図2】上記積層セラミックコンデンサの図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3】上記積層セラミックコンデンサの図1のB-B'線に沿った断面図である。
図4図3の一部を拡大して示す図である。
図5】上記積層セラミックコンデンサのサイドマージン部の構成を示す図である。
図6】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
図7】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
図8】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
図9】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
図10】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
図11】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
図12】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
図13】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
図14】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
図15】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
図16】上記実施形態の比較例に係る積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
図17】上記比較例に係る積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0018】
[積層セラミックコンデンサ10の構成]
図1~3は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。図2は、積層セラミックコンデンサ10の図1のA-A'線に沿った断面図である。図3は、積層セラミックコンデンサ10の図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0019】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を備える。セラミック素体11は、典型的には、Z軸方向を向いた2つの主面と、X軸方向を向いた2つの端面と、Y軸方向を向いた2つの側面と、を有する。なお、セラミック素体11の各面を接続する稜部は丸みを帯びている。
【0020】
外部電極14,15は、セラミック素体11の端面を覆い、セラミック素体11を挟んでX軸方向に対向している。外部電極14,15は、セラミック素体11の端面から主面及び側面に延出している。これにより、外部電極14,15では、X-Z平面に平行な断面、及びX-Y平面に平行な断面がいずれもU字状となっている。なお、外部電極14,15の形状は、図1に示すものに限定されない。
【0021】
外部電極14,15は、電気の良導体により形成されている。外部電極14,15を形成する電気の良導体としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0022】
セラミック素体11は、セラミック積層体(積層体)16と、サイドマージン部17と、を有する。積層体16には、X軸方向を向いた2つの端面16aと、Y軸方向を向いた2つの側面16bと、Z軸方向を向いた2つの主面16cと、が形成されている。サイドマージン部17は、積層体16の2つの側面16bをそれぞれ被覆している。
【0023】
積層体16は、容量形成部18と、容量形成部18のZ軸方向両側にそれぞれ設けられたカバー部19と、を有する。容量形成部18は、Z軸方向にセラミック層を介して積層された内部電極12,13を有する。
【0024】
第1内部電極12及び第2内部電極13は、それぞれ、X-Y平面に沿って延びるシート状に構成される。第1内部電極12は、一方の端面16aまでX軸方向に延び、第1外部電極14に接続される。第2内部電極13は、他方の端面16aまでX軸方向に延び、第2外部電極15に接続される。これにより、第1外部電極14と第2外部電極15との間に電圧が印加されると、第1内部電極12と第2内部電極13との間のセラミック層に電圧が加わり、容量形成部18に当該電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0025】
内部電極12,13は、電気の良導体により形成されている。内部電極12,13を形成する電気の良導体としては、典型的にはニッケル(Ni)が挙げられ、この他にも銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0026】
セラミック素体11では、内部電極12,13間の各セラミック層の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0027】
なお、セラミック層は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)系、チタン酸カルシウム(CaTiO)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO)系、酸化チタン(TiO)系などで構成してもよい。
【0028】
カバー部19は、絶縁性セラミックスで形成されるが、例えばセラミック素体11で用いられた誘電体セラミックスを含んでいてもよい。これにより、カバー部19と容量形成部18との間に発生し得る内部応力が抑制される。
【0029】
内部電極12,13は、容量形成部18のY軸方向の全幅にわたって形成され、積層体16の両側面16bに露出している。これらの内部電極12,13の端部の位置は、Y軸方向に0.5μmの範囲内に相互に揃っている。両側面16bには、内部電極12,13間及びこれらと外部との間の絶縁性を確保する等の観点から、サイドマージン部17が設けられている。
【0030】
図4は、図3の一部を拡大して示す図である。
サイドマージン部17は、側面16b上に形成された接合層20と、接合層20上に形成された側部セラミック層21と、を有する。
【0031】
側部セラミック層21は、X-Z平面に沿って延びる略平板状であって、サイドマージン部17の本体を構成する。側部セラミック層21は、絶縁性セラミックスで形成されるが、カバー部19と同様に内部応力抑制等の観点から、積層体16で用いられた誘電体セラミックスで形成されてもよい。
【0032】
接合層20は、後述するように、粘着性の高い樹脂及びセラミック材料等を含む粘着剤が焼成されることによって形成され、側部セラミック層21と側面16bとを接合する機能を有する。接合層20も、積層体16及び側部セラミック層21で用いられたセラミック材料と同種のセラミック材料を含んでいてもよく、その他にガラス質等の成分を含んでいてもよい。
【0033】
図5は、接合層20の構成を示す図であり、セラミック素体11から側部セラミック層21を除去して接合層20をY軸方向から見た図である。実際には、セラミック素体11において接合層20と側部セラミック層21は分離できないが、図5では分離した態様を模式的に示している。
【0034】
図4及び5に示すように、接合層20は、X軸方向及びZ軸方向における中央部22と、中央部22の外周に形成された外縁部23と、を有する。外縁部23は、中央部22の外周を取り囲むように環状に形成される。
【0035】
中央部22は、厚み寸法がほぼ均一に構成される。中央部22のY軸方向における厚み寸法D1は、X軸方向及びZ軸方向の中心部分における寸法であり、例えば、0.3μm以上8μm以下である。
【0036】
外縁部23は、中央部22よりもY軸方向における厚み寸法が小さく構成される。外縁部23は、図1に示すように、セラミック素体11の表面から帯状に露出しており、例えば、当該表面から中央部22に向かってY軸方向に徐々に厚くなるように構成される。外縁部23のY軸方向における厚み寸法D2は、セラミック素体11の表面における寸法であり、例えば、中央部22の厚み寸法D1の40%以上80%以下である。
【0037】
サイドマージン部17が上記構成の接合層20を有することで、後述するように、製造過程におけるサイドマージン部17の剥離やクラックの発生を効果的に抑制でき、歩留まりを向上させることができる。さらに、仮にサイドマージン部17に剥離等が生じた場合でも、接合層20が積層体16の側面16bを覆うため、側面16bが保護される。これにより、側面16bにおける内部電極のショート等の不具合をより確実に防止することができる。
【0038】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図6は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。図7~15は積層セラミックコンデンサ10の製造過程を模式的に示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、図6に沿って、図7~15を適宜参照しながら説明する。
【0039】
(ステップS01:セラミック積層チップ116の作製)
ステップS01では、容量形成部18を形成するための第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102と、カバー部19を形成するための第3セラミックシート103と、を積層し、切断することで、未焼成のセラミック積層チップ(積層チップ)116を作製する。
【0040】
図7に示すセラミックシート101,102,103は、誘電体セラミックスを主成分とする未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。第1セラミックシート101には、第1内部電極12に対応する未焼成の第1内部電極112が形成される。第2セラミックシート102には、第2内部電極13に対応する未焼成の第2内部電極113が形成される。第3セラミックシート103には、内部電極が形成されていない。
【0041】
各内部電極112,113は、X軸方向に平行な切断線Lxを横切り、かつY軸方向に平行な切断線Lyに沿って延びる複数の帯状の電極パターンを有する。これらの内部電極112,113は、印刷法等により、導電性ペーストをセラミックシート101,102に塗布することで形成される。
【0042】
セラミックシート101,102は、図7に示すように、Z軸方向に交互に積層される。セラミックシート101,102の積層体は、容量形成部18に対応する。セラミックシート103は、セラミックシート101,102の積層体のZ軸方向上下面に積層される。セラミックシート103の積層体は、カバー部19に対応する。
なお、セラミックシート101,102,103の積層枚数等は、適宜調整可能である。
【0043】
続いて、セラミックシート101,102,103の積層体をZ軸方向から圧着し、切断線Lx,Lyに沿って切断する。これにより、図8に示す積層チップ116が作製される。
【0044】
積層チップ116は、未焼成の内部電極112,113が形成された未焼成の容量形成部118と、未焼成のカバー部119と、を有する。積層チップ116には、切断線Lxに対応する切断面である側面116bと、切断線Lyに対応する切断面である端面116aと、が形成される。側面116bからは、未焼成の内部電極112,113の端部が露出している。
【0045】
(ステップ02:サイドマージン部117形成)
ステップS02では、積層チップ116の側面116bにサイドマージン部117を形成する。以下、形成方法の一例を示す。
【0046】
まず、図9に示すように、平板状の弾性部材S1の上にセラミックシート117sを配置し、テープTで一方の側面116bを保持した積層チップ116の他方の側面116bをセラミックシート117sに対向させる。セラミックシート117sには、粘着剤Nが塗布されている。弾性部材S1は、フッ素ゴム、シリコーンゴム等、弾性を鑑みて適宜選択できる。
【0047】
粘着剤Nは、典型的には、有機バインダ等の樹脂材料と、セラミック材料と、を含む。
その他、粘着剤Nには、ガラス質等が適宜含まれていてもよい。粘着剤Nは、例えば、0.5μm以上10μm以下の厚みとなるように塗布される。
【0048】
次に、図10に示すように、積層チップ116の側面116bにセラミックシート117sを貼り付ける。具体的には、弾性部材S1上のセラミックシート117sに対して、積層チップ116をY軸方向に加圧し、側面116bとセラミックシート117sとを圧着する。圧着は、粘着剤Nの粘着性を高めるため、加熱しながら行われてもよい。
【0049】
さらに、積層チップ116をセラミックシート117sに向かってY軸方向に強く加圧する。積層チップ116は、セラミックシート117sとともに弾性部材S2に局所的に深く沈み込む。このとき、側面116bの外縁に沿ってセラミックシート117sにせん断力が作用し、このせん断力がセラミックシート117sのせん断強さ以上になると、セラミックシート117sが打ち抜かれる。これにより、図11に示すように、積層チップ116とともに沈み込んだセラミックシート117sの一部が切り離される。本工程で用いられる弾性部材S2は、弾性を鑑みて適宜選択でき、弾性部材S1と同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0050】
打ち抜き工程において、弾性部材S2に対して積層チップ116をY軸方向に押し込む速度は、例えば10~50mm/sec程度とすることができる。また、積層チップ116を押し込んだY軸方向最下点での保持時間は、1秒未満の短い時間とすることができる。これにより、弾性部材S2に対して積層チップ116を勢い良く押し込むことができ、側面116bの外縁によってセラミックシート117sに大きなせん断力を及ぼすことができる。したがって、セラミックシート117sが、側面116bの外縁形状に沿った適切な形状に打ち抜かれる。
また、本工程は、セラミックシート117s等の不要な変形を防止する観点から、常温(20℃前後)で行なわれてもよい。
【0051】
続いて、図12に示すように、打ち抜かれたセラミックシート117sを弾性部材S3に対して加圧し、セラミックシート117sと側面116bとを再圧着する。
本工程で用いられる弾性部材S3は、フッ素ゴム、シリコーンゴム等、弾性を鑑みて適宜選択でき、例えば、弾性部材S2よりも硬い材料で形成されてもよい。より具体的には、弾性部材S3は、弾性部材S2よりもJIS K 6253に準拠したゴム硬さAの値で1~30程度大きくてもよい。
再圧着は、粘着剤Nの粘着性を高めるため、50~150℃程度に加熱しながら行われてもよい。
これにより、粘着層120と、側部セラミック層121と、を有するサイドマージン部117が成形される。
【0052】
そして、他方の側面116bについても、同様にサイドマージン部117を形成する。
【0053】
図13は、本工程で作製されたセラミック素体111の斜視図であり、図14はセラミック素体111のX-Z平面における断面図である。
セラミック素体111は、積層チップ116と、サイドマージン部117と、を有する。
【0054】
サイドマージン部117の粘着層120は、X軸方向及びZ軸方向における中央部122と、中央部122の外周に形成された外縁部123とを有する。外縁部123は、中央部122よりもY軸方向における厚み寸法D12が小さく、セラミック素体111の表面から中央部122に向かって徐々に厚くなるように構成される。中央部122は、X-Z平面に沿った略平板状に構成される。
【0055】
図13及び図14に示すように、外縁部123の厚み寸法D12は、セラミック素体111の表面におけるY軸方向に沿った寸法であり、例えば中央部122の厚み寸法D11の10%以上80%以下である。
中央部122の厚み寸法D11は、X軸方向及びZ軸方向における中心点のY軸方向に沿った寸法であり、例えば0.5μm以上10μm以下である。
【0056】
粘着層120は、例えば、図12に示す再圧着において、弾性部材S3の材質(弾性)、加熱温度、加圧時の相対速度及び加圧の大きさ等の条件を調整することにより、上記適切な形状に成形することができる。
具体的には、再圧着工程において、弾性部材S3に対して押圧対象物である積層チップ116(セラミックシート117s)を押し込む速度は、打ち抜き工程の1/10~1/50程度、つまり、0.2mm/sec以上5mm/sec未満とすることができる。さらに、積層チップ116を押し込んだY軸方向最下点での保持時間は、打ち抜き工程よりも長い、1~10秒とすることができる。このような条件でゆっくりと再圧着することで、側面116b、粘着層120及びセラミックシート117sを確実に接合できるとともに、中央部122と外縁部123を適切な形状に成形することができる。
【0057】
(ステップS03:バレル研磨)
ステップS03では、図13に示すようなセラミック素体111に対してバレル研磨を施し、面取りする。バレル研磨は、例えば、複数のセラミック素体111を水等の液体とともにバレル容器に封入し、当該バレル容器に回転や振動を与えることにより行われる。バレル容器には、適宜研磨媒体を加えてもよい。
【0058】
本ステップのバレル研磨により、各面を接続する稜部及び角部が丸みを帯び、図15に示すようなセラミック素体111が形成される。これにより、本ステップ以降において、セラミック素体111(セラミック素体11)の衝突等による破損を抑制できる。
【0059】
(ステップS04:焼成)
ステップS04では、ステップS03で得られたセラミック素体111を焼成することにより、図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11を作製する。ステップS04における焼成温度は、セラミック素体111の焼結温度に基づいて決定することができる。また、焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0060】
(ステップS05:外部電極形成)
ステップS05では、ステップS04で得られたセラミック素体11のX軸方向両端部に外部電極14,15を形成する。一例として、まず、導電性ペーストをセラミック素体11のX軸方向両端部に塗布し、この導電性ペーストを焼き付けて下地膜を形成する。次に、下地膜が形成されたセラミック素体11をメッキ液に浸漬させて電解メッキを行うことで、1又は複数のメッキ膜を形成する。
これにより、図1~3に示すような積層セラミックコンデンサ10が形成される。
【0061】
なお、上記のステップS05における処理の一部を、ステップS04の前に行ってもよい。例えば、ステップS04の前に未焼成のセラミック素体111のX軸方向両端面に未焼成の電極材料を塗布し、ステップS04において、未焼成のセラミック素体111を焼成すると同時に、未焼成の電極材料を焼き付けて外部電極14,15の下地層を形成してもよい。また、脱バインダ処理したセラミック素体111に未焼成の電極材料を塗布して、これらを同時に焼成してもよい。
【0062】
以上により、積層セラミックコンデンサ10が完成する。この製造方法では、内部電極12,13が露出した積層体16の側面16bにサイドマージン部17が後付けされるため、セラミック素体11における複数の内部電極12,13の端部のY軸方向の位置が、0.5μm以内のばらつきでZ軸方向に沿って揃う。
【0063】
[本実施形態の作用効果]
図16及び図17は、本実施形態の比較例に係るサイドマージン部217を有する未焼成のセラミック素体211を示す図であり、図16は斜視図、図17図4に対応する部分の拡大断面図である。
サイドマージン部217は、X-Z平面内でY軸方向における厚みがほぼ均一な粘着層220と、粘着層220上に形成された側部セラミック層221と、を有する。このため、セラミック素体211の表面において、粘着層220の外縁部223が比較的幅広に露出する。
【0064】
比較例に係る粘着層220は、ステップS04の焼成により除去される成分を多く含むため、側部セラミック層221と比較して焼成後の体積収縮が大きい。このため、焼成時に、粘着層220の外縁部223に大きな応力が付加され、クラックや剥離が起きやすくなる。
【0065】
また、粘着層220では、セラミック素体211の表面に露出する面積が大きい。このため、ステップS03のバレル研磨工程において、粘着層220が、バレル研磨に用いられる液体を吸収し膨張しやすくなる。ステップS04の焼成工程において、吸収された液体も揮発するため、粘着層220が大きく収縮し、粘着層220と側面116bとの間で剥離がより生じやすくなる。また、粘着層220の体積膨張時に微小なクラック(マイクロクラック)が形成されることがあり、このマイクロクラックも焼成後の接合層におけるクラックや剥離の原因となる。
【0066】
さらに、外部電極14,15の形成のため電解メッキを行う際、露出する粘着層220の表面から、メッキ液に粘着層220の成分の一部(例えばガラス質等)が溶解しやすくなる。粘着層220のガラス成分等の溶出により、セラミック素体11が劣化するおそれがある。
【0067】
これに対し、本実施形態のサイドマージン部117では、粘着層120の外縁部123が薄く、かつ比較例に係る外縁部223よりも小さな体積で構成される。このため、焼成後の体積収縮量を低減させ、外縁部123及び焼成後の接合層20でのクラックや剥離を抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態に係る粘着層120では、セラミック素体111の表面から露出する面積も低減できる。これにより、バレル研磨工程において粘着層120が液体を吸収しにくくなり、体積膨張を抑制できる。
さらに、外縁部123を薄く形成することで、バレル研磨前の段階でもサイドマージン部117の外縁を湾曲して形成することができる。この結果、面取りのためのバレル研磨の時間を短縮でき、粘着層120の液体の吸収及び体積膨張をより抑制できる。
【0069】
また、電解メッキ時における接合層20からのガラス成分等の溶出を抑制し、セラミック素体11の劣化を防止することができる。
【0070】
以上により、粘着層120(接合層20)によって側面116b(側面16b)の外縁においても確実にサイドマージン部117(サイドマージン部17)を接合することができるとともに、焼成後の接合層20のクラックや剥離を効果的に抑制することができる。
【0071】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0072】
10…積層セラミックコンデンサ
11,111…セラミック素体
12,13,112,113…内部電極
16…セラミック積層体(積層体)
116…セラミック積層チップ(積層チップ)
16b,116b…側面
17,117…サイドマージン部
20…接合層
120…粘着層
21,121…側部セラミック層
22,122…中央部
23,123…外縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図16
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