(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112219
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】基礎構造体
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20230804BHJP
【FI】
E02D27/01 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013834
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恵介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直弥
(72)【発明者】
【氏名】尻無濱 昭三
(72)【発明者】
【氏名】石渡 康弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 賢二郎
(72)【発明者】
【氏名】西村 真
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046BA21
2D046DA03
(57)【要約】
【課題】短期間で構築することができる基礎構造体を実現する。
【解決手段】この基礎構造体100であれば、第1下層プレキャスト部材11、第2下層プレキャスト部材12、第1上層プレキャスト部材21、第2上層プレキャスト部材22を所定の配置に設置した後、各部材間に固化材料Mを流し込んで充填し、その固化材料Mを固化させることで構築することができるので、比較的短期間での構築が可能になる。特に、従来技術の底版コンクリート(均しコンクリート)を省略し、第1下層プレキャスト部材11と第2下層プレキャスト部材12を用いるようにしたことで、コンクリートを養生する期間分、施工期間を短縮することができるので、基礎構造体100をより短期間で構築することを可能にした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤上に設置される下層プレキャスト部材と、前記下層プレキャスト部材上に設置される上層プレキャスト部材と、を備えている基礎構造体であって、
前記下層プレキャスト部材は、第1下層プレキャスト部材と、前記第1下層プレキャスト部材の少なくとも一方の側面に添わせた配置に設置される第2下層プレキャスト部材と、を有しており、
前記上層プレキャスト部材は、前記第1下層プレキャスト部材上に設置される第1上層プレキャスト部材と、前記第2下層プレキャスト部材上に設置されて前記第1上層プレキャスト部材の少なくとも一方の側面に添わせた配置に設置される第2上層プレキャスト部材と、を有しており、
前記第1下層プレキャスト部材の上面には上方に延在する第1鉄筋が配設されており、
前記第2下層プレキャスト部材の上面には、第2鉄筋が接続される継手が配設されており、
前記第1上層プレキャスト部材には、前記第1鉄筋に対応する位置に前記第1鉄筋を挿通可能な第1貫通孔が上下方向に設けられており、
前記第2上層プレキャスト部材には、前記継手に対応する位置に前記継手に接続させる第2鉄筋を挿通可能な第2貫通孔が上下方向に設けられており、
前記第1貫通孔の内径は前記第1鉄筋の直径よりも大きな寸法を有しており、前記第2貫通孔の内径は前記第2鉄筋の直径よりも大きな寸法を有していることを特徴とする基礎構造体。
【請求項2】
前記第2下層プレキャスト部材は、前記第1下層プレキャスト部材を挟む配置に設置され、
前記第2上層プレキャスト部材は、前記第1上層プレキャスト部材を挟む配置に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の基礎構造体。
【請求項3】
前記第1貫通孔と前記第1鉄筋の間および前記第2貫通孔と前記第2鉄筋の間には、固化材料が充填されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の基礎構造体。
【請求項4】
前記第2上層プレキャスト部材における前記第1上層プレキャスト部材と対向する側面には、側方に延在する第3鉄筋が配設されており、
前記第1上層プレキャスト部材における前記第2上層プレキャスト部材と対向する側面には、前記第3鉄筋に対応する位置に前記第3鉄筋が接続される継手孔が設けられており、
前記継手孔の内径は前記第3鉄筋の直径よりも大きな寸法を有していることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の基礎構造体。
【請求項5】
前記継手孔と前記第3鉄筋の間には、固化材料が充填されていることを特徴とする請求項4に記載の基礎構造体。
【請求項6】
前記第1上層プレキャスト部材と前記第2上層プレキャスト部材は隙間をあけて並設されており、
前記隙間には固化材料が充填されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の基礎構造体。
【請求項7】
前記第1下層プレキャスト部材と前記第1上層プレキャスト部材の間と、前記第2下層プレキャスト部材と前記第2上層プレキャスト部材の間の少なくとも一方には、水平調整用の薄板材が挿入可能とされており、
前記薄板材が挿入されてなるプレキャスト部材間の隙間には固化材料が充填されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の基礎構造体。
【請求項8】
前記第1下層プレキャスト部材および前記第2下層プレキャスト部材の下面には、地盤面との摩擦抵抗を増大させるための凹凸からなる摩擦抵抗部が形成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の基礎構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト部材を用いて構築する基礎構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高架式交通路や駅上家などを支える基礎構造体は、例えば以下の方法で構築されていた。
まず、基礎構造体を設置するための溝を形成し、その溝の底面から地中に基礎杭を打ち込む。次いで、溝に型枠を設置し、その型枠内に鉄筋を配筋してコンクリート材を打設する。そのコンクリート材を養生して硬化させることにより基礎杭を備えた基礎構造体が構築される。なお、掘削した地盤(溝)に土砂を埋め戻すこともある。
このような構築方法では施工期間が長期化する問題があるので、プレキャスト部材を用いて基礎構造体を短期間で構築する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術の場合、地盤上にコンクリート材を打設して養生し、硬化させてなる底版コンクリートを形成し、その底版コンクリート上にプレキャスト部材を設置するようになっているため、底版コンクリートを養生する期間分、施工期間を短縮する余地がまだあった。
【0005】
本発明の目的は、短期間で構築することができる基礎構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明は、
地盤上に設置される下層プレキャスト部材と、前記下層プレキャスト部材上に設置される上層プレキャスト部材と、を備えている基礎構造体であって、
前記下層プレキャスト部材は、第1下層プレキャスト部材と、前記第1下層プレキャスト部材の少なくとも一方の側面に添わせた配置に設置される第2下層プレキャスト部材と、を有しており、
前記上層プレキャスト部材は、前記第1下層プレキャスト部材上に設置される第1上層プレキャスト部材と、前記第2下層プレキャスト部材上に設置されて前記第1上層プレキャスト部材の少なくとも一方の側面に添わせた配置に設置される第2上層プレキャスト部材と、を有しており、
前記第1下層プレキャスト部材の上面には上方に延在する第1鉄筋が配設されており、
前記第2下層プレキャスト部材の上面には、第2鉄筋が接続される継手が配設されており、
前記第1上層プレキャスト部材には、前記第1鉄筋に対応する位置に前記第1鉄筋を挿通可能な第1貫通孔が上下方向に設けられており、
前記第2上層プレキャスト部材には、前記継手に対応する位置に前記継手に接続させる第2鉄筋を挿通可能な第2貫通孔が上下方向に設けられており、
前記第1貫通孔の内径は前記第1鉄筋の直径よりも大きな寸法を有しており、前記第2貫通孔の内径は前記第2鉄筋の直径よりも大きな寸法を有しているようにした。
ここで、第1貫通孔の内径が第1鉄筋の直径よりも大きな寸法を有していることで、第1貫通孔の内壁と第1鉄筋との間に所定のクリアランスが設けられているので、例えば、第1上層プレキャスト部材のレベル調整などで第1貫通孔に対し第1鉄筋がやや斜め向きになっても、第1貫通孔の内壁に第1鉄筋が接触し難くなっている。
また、第2貫通孔の内径が第2鉄筋の直径よりも大きな寸法を有していることで、第2貫通孔の内壁と第2鉄筋との間に所定のクリアランスが設けられているので、例えば、第2上層プレキャスト部材のレベル調整などで第2貫通孔に対し第2鉄筋がやや斜め向きになっても、第2貫通孔の内壁に第2鉄筋が接触し難くなっている。
【0007】
かかる構成の基礎構造体であれば、第1貫通孔の内径が第1鉄筋の直径よりも大きな寸法を有していて、第1鉄筋を第1貫通孔の延在方向に対し斜め向きに挿通可能に構成されているとともに、第2貫通孔の内径が第2鉄筋の直径よりも大きな寸法を有していて、第2鉄筋を第2貫通孔の延在方向に対し斜め向きに挿通可能に構成されているので、第1下層プレキャスト部材と第1上層プレキャスト部材の配置や、第2下層プレキャスト部材と第2上層プレキャスト部材の配置に僅かなずれがあっても、第1下層プレキャスト部材の上に第1上層プレキャスト部材を設置したり、第2下層プレキャスト部材の上に第2上層プレキャスト部材を設置したりすることができ、基礎構造体を比較的短期間で構築することができる。
また、例えば、薄板材を用いて第1下層プレキャスト部材上の第1上層プレキャスト部材のレベル調整を行ったり、薄板材を用いて第2下層プレキャスト部材上の第2上層プレキャスト部材のレベル調整を行ったりして、第1上層プレキャスト部材や第2上層プレキャスト部材の姿勢がレベル調整程度変わったとしても、第1鉄筋と第1上層プレキャスト部材(第1貫通孔)が接触したり、第2鉄筋と第2上層プレキャスト部材(第2貫通孔)が接触したりすることはなく、レベル調整の妨げにはならないので、所望するレベル調整を行うことができ、基礎構造体を好適に構築することができる。
【0008】
特に、従来技術(上記特許文献1)の底版コンクリート(均しコンクリート)を省略し、第1下層プレキャスト部材と第2下層プレキャスト部材を用いるようにしたことで、コンクリートを養生する期間分、施工期間を短縮することができるので、基礎構造体をより短期間で構築することを可能にした。
【0009】
また、望ましくは、
前記第2下層プレキャスト部材は、前記第1下層プレキャスト部材を挟む配置に設置され、
前記第2上層プレキャスト部材は、前記第1上層プレキャスト部材を挟む配置に設置されているようにする。
【0010】
こうすることで、基礎構造体の拡張を行い易くなる。
【0011】
また、望ましくは、
前記第1貫通孔と前記第1鉄筋の間および前記第2貫通孔と前記第2鉄筋の間には、固化材料が充填されているようにする。
【0012】
第1貫通孔と第1鉄筋の間および第2貫通孔と第2鉄筋の間に固化材料を充填して固化させるようにして、より強固な基礎構造体を構築することができる。
【0013】
また、望ましくは、
前記第2上層プレキャスト部材における前記第1上層プレキャスト部材と対向する側面には、側方に延在する第3鉄筋が配設されており、
前記第1上層プレキャスト部材における前記第2上層プレキャスト部材と対向する側面には、前記第3鉄筋に対応する位置に前記第3鉄筋が接続される継手孔が設けられており、
前記継手孔の内径は前記第3鉄筋の直径よりも大きな寸法を有しているようにする。
ここで、継手孔の内径が第3鉄筋の直径よりも大きな寸法を有していることで、継手孔の内壁と第3鉄筋との間に所定のクリアランスが設けられているので、例えば、第1上層プレキャスト部材や第2上層プレキャスト部材のレベル調整などで継手孔に対し第3鉄筋がやや斜め向きになっても、継手孔の内壁に第3鉄筋が接触し難くなっている。
【0014】
継手孔の内径が第3鉄筋の直径よりも大きな寸法を有していて、第3鉄筋を継手孔の延在方向に対し斜め向きに挿通可能であれば、第1上層プレキャスト部材と第2上層プレキャスト部材の配置に僅かなずれがあっても、第1上層プレキャスト部材と第2上層プレキャスト部材を並設することができる。
また、例えば、薄板材を用いて第1下層プレキャスト部材上の第1上層プレキャスト部材のレベル調整を行ったり、薄板材を用いて第2下層プレキャスト部材上の第2上層プレキャスト部材のレベル調整を行ったりして、第1上層プレキャスト部材や第2上層プレキャスト部材の姿勢がレベル調整程度変わったとしても、第3鉄筋と第1上層プレキャスト部材(継手孔)が接触することはなく、レベル調整の妨げにはならないので、所望するレベル調整を行うことができる。
【0015】
また、望ましくは、
前記継手孔と前記第3鉄筋の間には、固化材料が充填されているようにする。
【0016】
継手孔と第3鉄筋の間に固化材料を充填して固化させるようにして、より強固な基礎構造体を構築することができる。
【0017】
また、望ましくは、
前記第1上層プレキャスト部材と前記第2上層プレキャスト部材は隙間をあけて並設されており、
前記隙間には固化材料が充填されているようにする。
【0018】
第1上層プレキャスト部材と第2上層プレキャスト部材が隙間をあけて並設されていれば、例えば、薄板材を用いて第1下層プレキャスト部材上の第1上層プレキャスト部材のレベル調整を行ったり、薄板材を用いて第2下層プレキャスト部材上の第2上層プレキャスト部材のレベル調整を行ったりして、第1上層プレキャスト部材や第2上層プレキャスト部材の姿勢がレベル調整程度変わったとしても、第1上層プレキャスト部材と第2上層プレキャスト部材が接触したり干渉したりすることはなく、レベル調整の妨げにはならないので、所望するレベル調整を行うことができる。
そして、その隙間に固化材料を充填して固化させるようにして、より強固な基礎構造体を構築することができる。
【0019】
また、望ましくは、
前記第1下層プレキャスト部材と前記第1上層プレキャスト部材の間と、前記第2下層プレキャスト部材と前記第2上層プレキャスト部材の間の少なくとも一方には、水平調整用(レベル調整用)の薄板材が挿入可能とされており、
前記薄板材が挿入されてなるプレキャスト部材間の隙間には固化材料が充填されているようにする。
【0020】
薄板材を用いて第1下層プレキャスト部材上の第1上層プレキャスト部材のレベル調整を行って生じた隙間や、薄板材を用いて第2下層プレキャスト部材上の第2上層プレキャスト部材のレベル調整を行って生じた隙間に固化材料を充填して固化させるようにして、基礎構造体を構築することができる。
【0021】
また、望ましくは、
前記第1下層プレキャスト部材および前記第2下層プレキャスト部材の下面には、地盤面との摩擦抵抗を増大させるための凹凸からなる摩擦抵抗部が形成されているようにする。
【0022】
第1下層プレキャスト部材と第2下層プレキャスト部材の下面に、地盤面との摩擦抵抗を増大させる摩擦抵抗部が形成されているので、地盤上に設置した第1下層プレキャスト部材と第2下層プレキャスト部材は地盤面からずれ難くなっており、第1下層プレキャスト部材と第2下層プレキャスト部材を安定した状態で地盤上の所定位置に据え付けることができる。
そして、その第1下層プレキャスト部材と第2下層プレキャスト部材を、例えば、従来技術(上記特許文献1)の底版コンクリート(均しコンクリート)として好適に機能させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、短期間で構築することができる基礎構造体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態の基礎構造体を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態の基礎構造体を示す上面図(a)と正面図(b)と側面図(c)である。
【
図3】基礎構造体を構成する第1下層プレキャスト部材を示す上面図(a)と側面図(b)である。
【
図4】基礎構造体を構成する第2下層プレキャスト部材を示す上面図(a)と側面図(b)である。
【
図5】基礎構造体を構成する第1上層プレキャスト部材を示す上面図(a)と正面図(b)と側面図(c)である。
【
図6】基礎構造体を構成する第2上層プレキャスト部材を示す上面図(a)と正面図(b)と側面図(c)である。
【
図7】本実施形態の基礎構造体を構築する手順を示す説明図(a)(b)(c)である。
【
図8】本実施形態の基礎構造体を構築する手順を示す説明図(a)(b)である。
【
図9】本実施形態の基礎構造体を構築する手順を示す説明図(a)(b)(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明に係る基礎構造体の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
本実施形態では、プレキャスト部材を用いて構築する基礎構造体について説明する。
【0026】
本実施形態の基礎構造体100は、例えば、
図1、
図2(a)(b)(c)に示すように、地盤G上に設置される下層プレキャスト部材10(11,12)と、下層プレキャスト部材10上に設置される上層プレキャスト部材20(21,22)と、を備えている。
【0027】
下層プレキャスト部材10は、第1下層プレキャスト部材11と、第1下層プレキャスト部材11を挟む配置に設置される第2下層プレキャスト部材12と、を有している。
本実施形態では、2本の第1下層プレキャスト部材11が並設されて地盤G上に設置されており、その2本の第1下層プレキャスト部材11を挟む配置に、それぞれ2本の第2下層プレキャスト部材12が並設されて地盤G上に設置されている。
【0028】
上層プレキャスト部材20は、第1下層プレキャスト部材11上に設置される第1上層プレキャスト部材21と、第2下層プレキャスト部材12上に設置されて第1上層プレキャスト部材21を挟む配置に設置される第2上層プレキャスト部材22と、を有している。
本実施形態では、第1上層プレキャスト部材21が2本の第1下層プレキャスト部材11の上に設置されており、第2上層プレキャスト部材22が2本の第2下層プレキャスト部材12の上に設置されている。
なお、本実施形態では基礎構造体100を構築する作業性を考慮して、比較的小型の第1下層プレキャスト部材11と第2下層プレキャスト部材12を用い、それぞれ2本並設する態様にしたが、並設された2本の第1下層プレキャスト部材11を一体化した大きさを有する第1下層プレキャスト部材を1本用いたり、並設された2本の第2下層プレキャスト部材12を一体化した大きさを有する第2下層プレキャスト部材を1本用いたりするようにしてもよい。
【0029】
図3(a)(b)に示すように、第1下層プレキャスト部材11の上面には上方に延在する第1鉄筋30が配設されている。
本実施形態の第1下層プレキャスト部材11には、第1鉄筋30が2本配設されている。
具体的には、第1下層プレキャスト部材11には、略L字状の第1鉄筋30がその一端を上面から上方に延在させるように配筋されている。なお、第1下層プレキャスト部材11には他の鉄筋や帯筋が配筋されているが、それらの図示は省略する。
また、第1下層プレキャスト部材11の下面には、地盤面との摩擦抵抗を増大させるための凹凸加工が施されてなる摩擦抵抗部10aが形成されている。
【0030】
図4(a)(b)に示すように、第2下層プレキャスト部材12の上面には、第2鉄筋40(
図9(a)(b)参照)が接続される継手41が配設されている。
本実施形態の第2下層プレキャスト部材12には、継手41が2つ配設されている。
具体的には、継手41の下部には略L字状の先行鉄筋41aが接続されており、継手41は上部開口を第2下層プレキャスト部材12の上面に露出させるように埋設されている。なお、第2下層プレキャスト部材12には他の鉄筋や帯筋が配筋されているが、それらの図示は省略する。
また、第2下層プレキャスト部材12の下面には、地盤面との摩擦抵抗を増大させるための凹凸加工が施されてなる摩擦抵抗部10aが形成されている。
【0031】
図5(a)(b)(c)に示すように、第1上層プレキャスト部材21には、第1下層プレキャスト部材11の第1鉄筋30に対応する位置に、第1鉄筋30を挿通可能な第1貫通孔50が上下方向に設けられている。
本実施形態の第1上層プレキャスト部材21には、第1貫通孔50が4つ設けられている。この第1貫通孔50はシース管を用いて形成されている。
第1貫通孔50の内径は第1鉄筋30の直径よりも大きな寸法を有している。つまり、第1貫通孔50と第1鉄筋30の間には所定のクリアランスがあり、第1貫通孔50には、第1鉄筋30が第1貫通孔50の延在方向に対し斜め向きに挿通可能となっている。
【0032】
また、第1上層プレキャスト部材21における第2上層プレキャスト部材22と対向する側面には、後述する第3鉄筋80に対応する位置にその第3鉄筋80が接続される継手孔70が設けられている。
本実施形態の第1上層プレキャスト部材21には、継手孔70が4つ設けられている。
継手孔70の内径は第2上層プレキャスト部材22の第3鉄筋80の直径よりも大きな寸法を有している。つまり、継手孔70と第3鉄筋80の間には所定のクリアランスがあり、継手孔70には、第3鉄筋80が継手孔70の延在方向に対し斜め向きに挿通可能となっている。
このような継手孔70は、例えば、モルタル充填式のスリーブ状の継手を、その一方の開口を第1上層プレキャスト部材21の側面に露出させるように埋設するようにして形成することができる
なお、第1上層プレキャスト部材21の前面と後面にはそれぞれ、継手孔70に達する長さの連通孔(図示省略)が形成されている。この連通孔は継手孔70内に固化材料を充填するために設けられている。
【0033】
また、第1上層プレキャスト部材21には、その上面から上方に延在する基礎鉄筋100aが配設されている。
本実施形態の第1上層プレキャスト部材21には、基礎鉄筋100aが4本配設されている。
具体的には、第1上層プレキャスト部材21には、略J字状の基礎鉄筋100aがその一端を上面から上方に延在させるように配筋されている。なお、第1上層プレキャスト部材21には他の鉄筋や帯筋が配筋されているが、それらの図示は省略する。
この基礎鉄筋100aに、例えば、基礎構造体100上に建築される建築物の柱などが繋がれるようになっている。
【0034】
図6(a)(b)(c)に示すように、第2上層プレキャスト部材22には、第2下層プレキャスト部材12の継手41に対応する位置に、継手41に接続させる第2鉄筋40を挿通可能な第2貫通孔60が上下方向に設けられている。
本実施形態の第2上層プレキャスト部材22には、第2貫通孔60が4つ設けられている。この第2貫通孔60はシース管を用いて形成されている。
第2貫通孔60の内径は第2鉄筋40の直径よりも大きな寸法を有している。つまり、第2貫通孔60と第2鉄筋40の間には所定のクリアランスがあり、第2貫通孔60には、第2鉄筋40が第2貫通孔60の延在方向に対し斜め向きに挿通可能となっている。
【0035】
また、第2上層プレキャスト部材22における第1上層プレキャスト部材21と対向する側面には、側方に延在する第3鉄筋80が配設されている。
本実施形態の第2上層プレキャスト部材22には、第3鉄筋80が4本配設されている。
具体的には、4本の第3鉄筋80のうち上側の2本は直線状の第3鉄筋80がその一端を側面から側方に延在させるように配筋されたものであり、4本の第3鉄筋80のうち下側の2本は略L字状の第3鉄筋80がその一端を側面から側方に延在させるように配筋されたものである。なお、第2上層プレキャスト部材22には他の鉄筋や帯筋が配筋されているが、それらの図示は省略する。
この第3鉄筋80は、第1上層プレキャスト部材21に設けられている継手孔70に挿通される。
【0036】
次に、本実施形態の基礎構造体100を、第1下層プレキャスト部材11、第2下層プレキャスト部材12、第1上層プレキャスト部材21、第2上層プレキャスト部材22を用いて構築する手順について説明する。
【0037】
まず、地盤G上に2本の第1下層プレキャスト部材11を並設して設置する。
そして、
図7(a)に示すように、その2本の第1下層プレキャスト部材11を挟む配置の地盤G上に、それぞれ2本の第2下層プレキャスト部材12を並設して設置する。
このとき、第1下層プレキャスト部材11と第2下層プレキャスト部材12は隙間をあけて設置する。また、第1下層プレキャスト部材11と第1下層プレキャスト部材11、第2下層プレキャスト部材12と第2下層プレキャスト部材12も隙間をあけて設置する。なお、各プレキャスト部材間には15mm程度の隙間をあければよい。
【0038】
ここでの第1下層プレキャスト部材11と第2下層プレキャスト部材12の下面には、摩擦抵抗部10aが形成されているので、地盤G上に設置した第1下層プレキャスト部材11と第2下層プレキャスト部材12は地盤面Gからずれ難くなっており、第1下層プレキャスト部材11と第2下層プレキャスト部材12を安定した状態で地盤G上の所定位置に据え付けることができる。
なお、予め地盤Gは地均しされており、地盤面Gに極端な不陸はないものとする。
また、後述するように、本実施形態の基礎構造体100では、下層プレキャスト部材(11,12)上に設置した上層プレキャスト部材(21,22)の姿勢を調整して、その水平垂直出しなどを行うようになっているので、下層プレキャスト部材(11,12)を地盤G上に設置する際の水平精度は厳密でなくてもよい。
【0039】
次いで、
図7(b)(c)に示すように、第1下層プレキャスト部材11上に第1上層プレキャスト部材21を設置する。
このとき、第1下層プレキャスト部材11の第1鉄筋30を第1上層プレキャスト部材21の第1貫通孔50に挿通させる。
例えば、第1貫通孔50の内径は40mm、第1鉄筋30の直径は16mmであり、第1貫通孔50の内径は第1鉄筋30の直径よりも大きな寸法を有しているので、第1貫通孔50内に第1鉄筋30を挿し入れ易くなっており、比較的スムーズに第1下層プレキャスト部材11上に第1上層プレキャスト部材21を設置することができる。
【0040】
次いで、
図8(a)に示すように、第2下層プレキャスト部材12上であって、第1上層プレキャスト部材21から離間した位置に第2上層プレキャスト部材22を一旦仮置きする。
そして、
図8(b)に示すように、第2上層プレキャスト部材22を第1上層プレキャスト部材21に並設させるように移動させ、第1上層プレキャスト部材21を挟む配置に第2上層プレキャスト部材22を設置する。
このとき、第2上層プレキャスト部材22の第3鉄筋80を第1上層プレキャスト部材21の継手孔70に挿入する。
例えば、継手孔70の内径は30mm、第3鉄筋80の直径は16mmであり、継手孔70の内径は第3鉄筋80の直径よりも大きな寸法を有しているので、継手孔70に第3鉄筋80を挿入し易くなっており、比較的スムーズに第1上層プレキャスト部材21に対し第2上層プレキャスト部材22を並設することができる。
なお、このとき、第1上層プレキャスト部材21と第2上層プレキャスト部材22は隙間をあけて並設する。プレキャスト部材間には15mm程度の隙間をあければよい。
【0041】
次いで、
図9(a)(b)に示すように、第2上層プレキャスト部材22の第2貫通孔60に第2鉄筋40を挿通させ、その第2鉄筋40を第2下層プレキャスト部材12の継手41に接続する。
例えば、第2貫通孔60の内径は40mm、第2鉄筋40の直径は16mmであり、第2貫通孔60の内径は第2鉄筋40の直径よりも大きな寸法を有しているので、第2貫通孔60内に第2鉄筋40を挿し入れ易くなっており、比較的スムーズに第2鉄筋40を継手41に接続することができる。
なお、継手41に接続された状態の第2鉄筋40における、第2上層プレキャスト部材22の第2貫通孔60から突き出ている上端部分は適宜切断する。
【0042】
次いで、
図9(b)に示した段階において、下層プレキャスト部材(11,12)上に設置されている第1上層プレキャスト部材21と第2上層プレキャスト部材22のレベル調整(水平垂直出し)を行う。
ここでのレベル調整(水平垂直出し)には、ライナープレートと称される厚さ2mmほどの薄板材を用いる。なお、
図9(b)においては薄板材を図示していない。
具体的には、第1下層プレキャスト部材11と第1上層プレキャスト部材21の間に薄板材を挿入して、第1下層プレキャスト部材11に対する第1上層プレキャスト部材21の姿勢を調整する。
同様に、第2下層プレキャスト部材12と第2上層プレキャスト部材22の間に薄板材を挿入して、第2下層プレキャスト部材12に対する第2上層プレキャスト部材22の姿勢を調整する。
薄板材は、第1上層プレキャスト部材21および第2上層プレキャスト部材22の下面側の四隅の少なくとも一箇所に挿入して、第1上層プレキャスト部材21や第2上層プレキャスト部材22のレベル調整を行う。なお、一箇所あたりに挿入する薄板材の枚数は任意である。また、レベル調整が不要な場合は、薄板材を挿入しなくてもよい。
【0043】
特に、本実施形態では上述したように、第1貫通孔50と第1鉄筋30の間には所定のクリアランスがあり、第1鉄筋30が第1貫通孔50の延在方向に対し斜め向きに挿通可能になっているので、薄板材を用いて第1上層プレキャスト部材21のレベル調整を行い、第1上層プレキャスト部材21の姿勢がレベル調整程度変わったとしても、第1下層プレキャスト部材11の第1鉄筋30がそのレベル調整の妨げにはならず、所望するレベル調整を行うことができる。
同様に、第2貫通孔60と第2鉄筋40の間には所定のクリアランスがあり、第2鉄筋40が第2貫通孔60の延在方向に対し斜め向きに挿通可能になっているので、薄板材を用いて第2上層プレキャスト部材22のレベル調整を行い、第2上層プレキャスト部材22の姿勢がレベル調整程度変わったとしても、第2下層プレキャスト部材12の継手41に接続されている第2鉄筋40がそのレベル調整の妨げにはならず、所望するレベル調整を行うことができる。
同様に、継手孔70と第3鉄筋80の間には所定のクリアランスがあり、第3鉄筋80が継手孔70の延在方向に対し斜め向きに挿通可能になっているので、薄板材を用いて第1上層プレキャスト部材21および第2上層プレキャスト部材22のレベル調整を行い、第1上層プレキャスト部材21や第2上層プレキャスト部材22の姿勢がレベル調整程度変わったとしても、第2上層プレキャスト部材22の第3鉄筋80がそのレベル調整の妨げにはならず、所望するレベル調整を行うことができる。
【0044】
また、並設されている第1上層プレキャスト部材21と第2上層プレキャスト部材22の間には15mm程度の隙間がクリアランスとして設けられているので、薄板材を用いて第1上層プレキャスト部材21および第2上層プレキャスト部材22のレベル調整を行い、第1上層プレキャスト部材21や第2上層プレキャスト部材22の姿勢がレベル調整程度変わったとしても、第1上層プレキャスト部材21や第2上層プレキャスト部材22が互いのレベル調整を妨げることはなく、所望するレベル調整を行うことができる。
なお、第1下層プレキャスト部材11上に設置した第1上層プレキャスト部材21については、
図7(c)の段階でレベル調整(水平垂直出し)を行い、
図9(b)の段階で再度レベル調整するようにしてもよい。
【0045】
そして、第1上層プレキャスト部材21および第2上層プレキャスト部材22のレベル調整を終えた後、
図9(c)に示すように、各部材間にグラウトなどの固化材料Mを充填する。
具体的には、第1貫通孔50に固化材料Mを流し込み、第1貫通孔50と第1鉄筋30の間に固化材料Mを充填する。
また、第2貫通孔60に固化材料Mを流し込み、第2貫通孔60と第2鉄筋40の間に固化材料Mを充填する。
また、第1上層プレキャスト部材21の前面と後面に設けられている連通孔(図示省略)を通じて継手孔70内に固化材料Mを流し込み、継手孔70と第3鉄筋80の間に固化材料Mを充填する。
【0046】
また、第1下層プレキャスト部材11と第2下層プレキャスト部材12の隙間や、第1上層プレキャスト部材21と第2上層プレキャスト部材22の隙間に固化材料Mを流し込んで充填する。
また、薄板材が挿入されてなる第1下層プレキャスト部材11と第1上層プレキャスト部材21の隙間や、薄板材が挿入されてなる第2下層プレキャスト部材12と第2上層プレキャスト部材22の隙間に固化材料Mを流し込んで充填する。
【0047】
こうして所定箇所に充填した固化材料Mを固化させることで、
図1に示した基礎構造体100を構築することができる。
【0048】
このように、本実施形態の基礎構造体100であれば、第1下層プレキャスト部材11、第2下層プレキャスト部材12、第1上層プレキャスト部材21、第2上層プレキャスト部材22を所定の配置に設置した後、各部材間に固化材料Mを流し込んで充填し、その固化材料Mを固化させることで構築することができる。
特に、従来技術(上記特許文献1)の底版コンクリート(均しコンクリート)を省略し、第1下層プレキャスト部材11と第2下層プレキャスト部材12を用いるようにしたことで、コンクリートを養生する期間分、施工期間を短縮することができるので、基礎構造体100をより短期間で構築することを可能にした。
【0049】
また、第1下層プレキャスト部材11と第2下層プレキャスト部材12の下面には摩擦抵抗部10aが形成されており、地盤G上に設置した第1下層プレキャスト部材11と第2下層プレキャスト部材12は地盤面Gからずれ難くなっているので、第1下層プレキャスト部材11と第2下層プレキャスト部材12を安定した状態で地盤G上の所定位置に据え付けることができ、その第1下層プレキャスト部材11と第2下層プレキャスト部材12を底版コンクリート(均しコンクリート)として好適に機能させることができる。
【0050】
また、第1貫通孔50と第1鉄筋30の間、第2貫通孔60と第2鉄筋40の間、継手孔70と第3鉄筋80の間に、それぞれ所定のクリアランスを設けたことと、並設されている第1上層プレキャスト部材21と第2上層プレキャスト部材22の間にも所定のクリアランスを設けたことによって、薄板材を用いて第1上層プレキャスト部材21および第2上層プレキャスト部材22のレベル調整を行った際に、第1上層プレキャスト部材21や第2上層プレキャスト部材22の姿勢がレベル調整程度変わったとしても、鉄筋とプレキャスト部材が接触したりプレキャスト部材同士が接触したりすることはなく、レベル調整の妨げにはならないので、所望するレベル調整を行うことができ、基礎構造体100を好適に構築することができる。
【0051】
以上のように、本実施形態の基礎構造体100であれば、比較的短期間で好適に構築することができる。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、
図10に示すように、第2上層プレキャスト部材22において第3鉄筋80が配設されている側面とは反対側の側面に、第3鉄筋80が接続される継手孔70を設けるようにしてもよい。
こうすることで、第2下層プレキャスト部材12および第2上層プレキャスト部材22を増設するようにして、基礎構造体100を拡張することが可能になる。
【0053】
なお、以上の実施の形態においては、第2下層プレキャスト部材12が第1下層プレキャスト部材11を挟む配置に設置され、第2上層プレキャスト部材22が第1上層プレキャスト部材21を挟む配置に設置されている基礎構造体100を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第2下層プレキャスト部材12が、第1下層プレキャスト部材11の少なくとも一方の側面に添わせた配置に設置され、第2上層プレキャスト部材22が、第1上層プレキャスト部材21の少なくとも一方の側面に添わせた配置に設置されている基礎構造体であってもよい。
【0054】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
10a 摩擦抵抗部
11(10) 第1下層プレキャスト部材(下層プレキャスト部材)
12(10) 第2下層プレキャスト部材(下層プレキャスト部材)
21(20) 第1上層プレキャスト部材(上層プレキャスト部材)
22(20) 第2上層プレキャスト部材(上層プレキャスト部材)
30 第1鉄筋
40 第2鉄筋
41 継手
50 第1貫通孔
60 第2貫通孔
70 継手孔
80 第3鉄筋
100 基礎構造体
100a 基礎鉄筋
G 地盤(地盤面)
M 固化材料