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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112234
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】衛生洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/08 20060101AFI20230804BHJP
【FI】
E03D9/08 B
E03D9/08 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013870
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 直樹
(72)【発明者】
【氏名】安田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】里井 喬行
(72)【発明者】
【氏名】大西 宏尚
【テーマコード(参考)】
2D038
【Fターム(参考)】
2D038JB04
2D038JF03
2D038JH12
2D038KA22
(57)【要約】
【課題】逃し弁を備えることなく水回路でのホース抜けを防止できる衛生洗浄装置の提供。
【解決手段】本開示の衛生洗浄装置は、減圧弁184を通ってノズル500に向けて流れる水の流量を測定する流量センサ188、柔軟性を有する一端がノズル500に接続され、かつその内部に流量センサ188からノズル500に向けて水が流れるホース302、および制御装置190を具備し、制御装置190は、流量センサ188を用いて流量を取得する第1工程、および開閉弁183が開状態であり、かつ流量センサ188を用いて取得された流量が200mL/分の流量閾値と等しいかまたはそれ未満である異常状態が3秒以上の所定期間の間、続いた場合には、開閉弁183を開状態から閉状態に切り替える第2工程を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生洗浄装置であって、
前記衛生洗浄装置は、
着座した人体の局部に向けて水を吐出するノズル、
水道管に接続されるように構成された給水接続口、
前記給水接続口を介して前記水道管から供給される水が前記ノズルに向けて流れる開状態および前記水の流れを止める閉状態の間で切り替え可能な開閉弁、
前記開状態の開閉弁を通って流れた水の圧力を低下させる減圧弁、
前記減圧弁を通って前記ノズルに向けて流れる水の流量を測定する流量センサ、
柔軟性を有する一端が前記ノズルに接続され、かつその内部に前記流量センサから前記ノズルに向けて水が流れるホース、および
制御装置
を具備し、
前記衛生洗浄装置は、前記流量センサを通って前記ノズルに向けて流れる水のための逃し弁を具備せず、
前記制御装置は、
前記流量センサを用いて前記流量を取得する第1工程、および
前記開閉弁が前記開状態であり、かつ前記流量センサを用いて取得された前記流量が200mL/分の流量閾値と等しいかまたはそれ未満である異常状態が3秒以上の所定期間の間、続いた場合には、前記開閉弁を前記開状態から前記閉状態に切り替える第2工程、
を実行する、
衛生洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の衛生洗浄装置であって、さらに
熱交換器
を具備し、
前記熱交換器では、前記流量センサを通って前記ノズルに向けて流れる水が加熱される、
衛生洗浄装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の衛生洗浄装置であって、
前記第2工程において、前記所定期間が10秒以下である、
衛生洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから噴射される水により人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一次水道圧を減圧して利用する衛生洗浄装置において、ノズルの閉塞や流調弁閉止時の通水により水回路内の圧力が上がり、水回路を構成するホース抜けが発生することがある。このようなホース抜けを回避するために、特許文献1には、安全装置としてノズルの上流側に所定の圧力で水回路を開放する逃し弁が備えられる衛生洗浄装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-199931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、水回路は、便鉢の上端縁の一部に取り付けられる衛生洗浄装置の本体内に収容されるため、大きな逃し弁を取り付けることが難しく、小さな逃し弁を取り付けなければならないため衛生洗浄装置の組立が煩雑になる。
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、逃し弁を備えることなく水回路でのホース抜けを防止できる衛生洗浄装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の1つである衛生洗浄装置は、着座した人体の局部に向けて水を吐出するノズル、水道管に接続されるように構成された給水接続口、前記給水接続口を介して前記水道管から供給される水が前記ノズルに向けて流れる開状態および前記水の流れを止める閉状態の間で切り替え可能な開閉弁、前記開状態の開閉弁を通って流れた水の圧力を低下させる減圧弁、前記減圧弁を通って前記ノズルに向けて流れる水の流量を測定する流量センサ、柔軟性を有する一端が前記ノズルに接続され、かつその内部に前記流量センサから前記ノズルに向けて水が流れるホース、および制御装置を具備し、前記衛生洗浄装置は、前記流量センサを通って前記ノズルに向けて流れる水のための逃し弁を具備せず、前記制御装置は、前記流量センサを用いて前記流量を取得する第1工程、および前記開閉弁が前記開状態であり、かつ前記流量センサを用いて取得された前記流量が200mL/分の流量閾値と等しいかまたはそれ未満である異常状態が3秒以上の所定期間の間、続いた場合には、前記開閉弁を前記開状態から前記閉状態に切り替える第2工程、を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る衛生洗浄装置は逃し弁を具備せず、かつノズルが詰まるような不具合が発生してもホース抜けが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】便器に取り付けられた衛生洗浄装置を示す斜視図である。
図2】衛生洗浄装置が備える水回路を示す回路図である。
図3】制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】ノズル先端を閉塞した際の水回路の内部の圧力を示すグラフである。
図5】制御装置の動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る衛生洗浄装置の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するために一例を挙示するものであり、本発明を限定する主旨ではない。例えば、以下の実施の形態において示される形状、構造、材料、構成要素、相対的位置関係、接続状態、数値、数式、方法における各段階の内容、各段階の順序などは、一例であり、以下に記載されていない内容を含む場合がある。また、平行、直交などの幾何学的な表現を用いる場合があるが、これらの表現は、数学的な厳密さを示すものではなく、実質的に許容される誤差、ずれなどが含まれる。また、同時、同一などの表現も、実質的に許容される範囲を含んでいる。
【0010】
また、図面は、本発明を説明するために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる。また、図中に示す場合があるX軸、Y軸、Z軸は、図の説明のために任意に設定した直交座標を示している。つまりZ軸は、鉛直方向に沿う軸とは限らず、X軸、Y軸は、水平面内に存在するとは限らない。
【0011】
また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として包括的に説明する場合がある。また、以下に記載する内容の一部は、本発明に関する任意の構成要素として説明している。
【0012】
図1は、便器に取り付けられた衛生洗浄装置100を示す斜視図である。図2は、衛生洗浄装置が備える水回路を示す回路図である。衛生洗浄装置100は、着座した人体の局部に向けて水を吐出するノズル500を具備する。衛生洗浄装置100は、ノズル500を前進または後退させるノズル駆動部(図示せず)を収納する本体101を具備する。言い換えれば、ノズル駆動部(図示せず)により本体101からノズル500は前進し、着座した人体の局部に向けて水を吐出し、その後、ノズル駆動部(図示せず)により本体101からノズル500は後退し、本体101の内部にノズル500は収納される。
【0013】
衛生洗浄装置100は、便器200に取り付けられる。水回路180によって調整された水が、便座108に着座した人の局部に向けてノズル先端110から吐出される。図1において、便蓋の図示は省略されている。実施の形態に係る衛生洗浄装置100は、本体101に対して回動可能に取り付けられる便座108および本体101に対して開閉可能に取り付けられる便蓋(図示せず)を備えていることが望ましい。本体101の内部には水回路180が収容されている。本明細書および特許請求の範囲において用いられる用語「水」は、温水を含む。ノズル先端110は、ノズル500の先端に設けられている。
【0014】
水回路180は、上流から順に給水接続口181、ストレーナ182、開閉弁183、減圧弁184、バキュームブレーカ185、流量センサ188、熱交換器140、およびノズル500を備えている。さらに、衛生洗浄装置100は、制御装置190を備えている。制御装置190は、流量センサ188からの信号に基づき開閉弁183の開閉を制御する。
【0015】
給水接続口181は、水道管(図示せず)に接続されるように構成されている。水道管(図示せず)を流れる水は、ストレーナ182を通り、開閉弁183に流入する。ストレーナ182は、水道水に含まれるごみの流入を防止する。
【0016】
開閉弁183は、減圧弁184の上流側にあって水道管(図示せず)からの水の流れを開閉することができる。衛生洗浄装置100の使用者の操作パネル109への操作に基づいて、制御装置190は開閉弁183を制御する。開閉弁183を開放することにより水回路180に水が供給される。このようにしてノズル先端110から水が吐出される。この状態は「開状態」と呼ばれる。一方、開閉弁183を閉ざすことにより水回路180への水の供給が停止される。このようにして、ノズル先端110からの水の吐出が停止される。この状態は「閉状態」と呼ばれる。
【0017】
上述されたように、開閉弁183は、開状態および閉状態の間で切り替え可能に構成されている。用語「開状態」とは、給水接続口181を介して水道管(図示せず)から供給された水がノズル500に向けて流れる状態を意味する。一方、用語「閉状態」とは、給水接続口181を介して水道管(図示せず)から供給された水の流れが開閉弁183によって止められた状態を意味する。
【0018】
開閉弁183は、第1管201を介して給水接続口181に接続されている。給水接続口181を介して水道管(図示せず)から供給される水の水圧により、水が第1管201の内部を通って流れる。開閉弁183の一例は、止水電磁弁である。第1管201の例は、水直アダプタである。
【0019】
減圧弁184は、流量センサ188の上流側に配置されている。減圧弁184は、水道管(図示せず)から給水接続口181を介して減圧弁184に供給された水の圧力を低下させ、減圧弁184からノズル500に向けて流れ出る水の圧力を一定に保つ。このように、減圧弁184は、開状態の開閉弁183を通って流れた水の圧力を低下させる。
【0020】
減圧弁184は、第2管202を介して開閉弁183に接続されている。給水接続口181を介して水道管(図示せず)から供給される水の水圧により、水が第2管202の内部を通って流れる。なお、給水接続口181から開閉弁183に流れる水の圧力は、水道水の圧力と実質的に同じである。実際には、第2管202は存在せず、開閉弁183と減圧弁194は一体的に形成されていてもよい。
【0021】
バキュームブレーカ185は、断水により給水接続口181に接続される水道管(図示せず)が負圧になった時に、水回路180の内部に外気を導入して水回路180の内部の水が水道管(図示せず)に逆流することを防止する。
【0022】
バキュームブレーカ185は、第3管203を介して減圧弁184に接続されている。減圧弁184により低下した圧力を有する水が第3管203の内部を通って流れる。
【0023】
流量センサ188は、ノズル先端110の上流側にあって、減圧弁184からノズル先端110に向けて流される(すなわち、供給される)水の流量を測定する。流量センサ188の種類の一例として、流量センサ188は、水回路180内に配置される水車の回転に基づき流量を測定する。このように、流量センサ188は、減圧弁184を通ってノズル500に向けて流れる水の流量を測定する。
【0024】
流量センサ188は、第4管204を介してバキュームブレーカ185に接続されている。減圧弁184により低下した圧力を有し、かつバキュームブレーカ185を通った水が第4管204の内部を通って流れる。
【0025】
熱交換器140は、水道管(図示せず)から供給される水を加熱して温水を生成する。熱交換器140の一例として熱交換器140は、水道管(図示せず)から供給される水を瞬時に加熱する加熱装置である。熱交換器140は、熱交換器140で加熱された水を貯留するバッファータンク141を備えている。バッファータンク141の内部で貯留される水の温度は、均一に維持される。
【0026】
ノズル500の先端に設けられているノズル先端110は、水回路180にて調整された水を人体の局部に向けて噴射する噴水口を備えている。
【0027】
ノズル500には、ホース302の一端が接続されている。言い換えれば、ノズル500には、ホース302の一端が取り付けられている。ホース302の一端は柔軟性を有する。本発明では、ホース302の一端の柔軟性により生じる問題(過圧によるホース抜け)が解決される。これについては、後に詳細に説明される。一般的に、ホース302の全体は樹脂で形成されているため、ホース302の全体が柔軟性を有する。
【0028】
ノズル500は、ホース302を介して流量センサ188に接続されている。流量センサ188を通った水がホース302の内部を通ってノズル500に向けて流れる。熱交換器140が設けられる場合、図2に示されるように、ノズル500は、ホース302を介して熱交換器140に接続されており、かつ熱交換器140は、第5管205を介して流量センサ188に接続されている。
【0029】
図3は、制御装置190の機能構成を示すブロック図である。制御装置190は、開閉弁183が開状態であり、かつ流量センサ188を用いて取得された流量が200mL/分の流量閾値と同じか、あるいは当該流量閾値未満(すなわち、当該流量が200mL/分以下)である異常状態が3秒以上の所定期間の間、続いた場合には、開閉弁183を開状態から閉状態に切り替えるように動作する。一例として、流量閾値の値は、150mL/分である。
【0030】
制御装置190は、半導体により形成されるプロセッサを備えている。プロセッサにプログラムを実行させることにより実現される処理部として、制御装置190は、流量取得部191、計時部192、異常停止部193、および開閉部194を備えている。
【0031】
流量取得部191は、流量センサ188からの信号に基づきノズル先端110に向けて流れる水の流量を取得する。
【0032】
制御装置190は、操作パネル109において指定された流量の水がノズル先端110から噴射するように流量調整弁(図示せず)を制御する。流量調整弁は、ノズル500の内部に設けられている。
【0033】
異常停止部193は、開閉部194が開閉弁183を制御している状態を取得し、流量取得部191が流量センサ188から取得した水の流量を監視し、開閉弁183が開状態であり、流量が流量閾値以下である異常状態が所定期間続いた場合、開閉部194を介して開閉弁183を閉状態に切り替える。
【0034】
一例として、異常停止部193は、開閉部194が開閉弁183を開状態に維持している状態において、流量取得部191が取得した水の流量が流量閾値以下となった時点の時刻を計時部192から取得し、流量閾値以下の流量が維持されている時間を計時部192からの時刻情報に基づき取得する。そして流量閾値以下の流量が維持されている時間が所定期間を超えると、異常状態が発生したと判断して、開閉部194が開閉弁183を閉状態に切り替える停止指示を開閉弁183に出力する。
【0035】
開閉部194は、開閉弁183を制御する処理部である。開閉部194は、通常は操作パネル109からの指示により開閉弁183を開放して水回路180に水を供給してノズル先端110から水を噴射させ、操作パネル109からの指示により開閉弁183を閉じて水の供給を停止する。
【0036】
衛生洗浄装置100では、柔軟性を有するホース302がノズル500に接続され、かつノズル500および流量センサ188の間(またはノズル500および熱交換器140の間)に逃し弁が設けられることがある。一般的な衛生洗浄装置100では、給水接続口181を通る水道水の水圧はおよそ500kPaである。減圧弁184は、水圧をおよそ500kPaからおよそ100kPaに低下させる。
【0037】
一般的に、逃し弁は、流量センサからノズルに向かう水の水圧がおよそ220kPa(またはそれ以上)になるような異常事態が発生した際に作動する(すなわち、逃し弁が開く)。逃し弁が開いた後には、当該水はノズルから噴出されることなく便鉢内に排水される。万一、逃し弁が開かないと、当該水圧が著しく高くなり、その結果、柔軟性を有するホースがノズルから抜けるという問題、すなわち、ホース抜け、の問題が生じる。後述されるように、本発明による衛生洗浄装置では、柔軟性を有するホースが具備されているが、このような逃し弁は具備されずとも、ホース抜けの問題が解決される。
【0038】
発明者らは、以下の知見を得ている。図4は、ノズル先端110を閉塞した際の水回路180の内部の圧力を示すグラフである。図4において、縦軸は水回路180の内部の圧力を示す。上述されたように、一例として、水道管(図示せず)からは、およそ500kPaの圧力で水が給水接続口181を流れる。図4の横軸は、操作パネル109に対して人が操作を開始してからの時間(すなわち、操作パネル109の表面に設けられたボタンが押されてから経過した時間)を示す。0~3秒の期間では、着座した人体の局部に向けてノズル500が本体101から前進する。0~3秒の期間では、開閉弁183は閉状態に維持されている。したがって、流量センサ188により測定される流量は0mL/分であり、水圧も0kPaである。
【0039】
次いで、開閉弁183が閉状態から開状態に切り替えられ、水が開閉弁183からノズル500に向けて流れる。上述されたように、水の圧力は減圧弁184によりおよそ100kPaに低下される。本実施の形態では、バキュームブレーカ185、流量センサ188、および熱交換器140において水の圧力はさらに低下するので、ノズル先端110からは、およそ75kPaの圧力を有する水が噴出される。図4における約11秒~約14秒の期間、75kPaの圧力を有する水がノズル先端110から吐出される。この水の流量は、およそ450mL/分である。言い換えれば、ノズル先端110からは、450mL/分の流量で水が噴出される。
【0040】
図4では、15秒の時間が経過した後、ノズル先端110が閉塞されるような不具合が発生したことが仮定される。図4に示されるように、そのような不具合が発生すると、水回路180の内部の圧力は上昇する。しかし、およそ10秒以内(図4ではおよそ5秒以内)の時間(すなわち、上記所定期間)が経過するまでに開閉弁183が開状態から閉状態に切り替えられると、水回路180の内部の圧力は上記所定期間の間に220kPaを超えない。
【0041】
本発明者らは、本来は図4の垂直線Pに示されるように水回路180の内部の圧力(すなわち、内圧)は変化するであろうと考えていたため、逃し弁(すなわち、リリーフ弁)が必要とされると考えていた。しかし、減圧弁の逆止性能および流量異常判定を互いに組み合わせることで、リリーフ弁の動作圧(220kPa、図14における「リリーフ動作圧」も参照)と同等の内圧で開閉弁を閉じることができることが分かった。
【0042】
本発明者らは上記知見に基づき、流量センサ188を用いて取得された流量が200mL/分以下である異常状態が3秒以上の所定期間の間、続いた場合には、開閉弁183を開状態から閉状態に切り替えることにより、逃し弁を具備せずとも、ホース抜けの問題が解決されることを見出した。上記知見では、上記所定期間が10秒を超えるとホース抜けの問題が生じるため、上記所定時間は10秒以下であることが望ましい。一例として、制御装置190において、上記所定時間は4秒に設定される。
【0043】
図5は、制御装置190の動作のフローチャートを示す。操作パネル109に対して人が操作を開始した際(すなわち、操作パネル109の表面に設けられたボタンが押された際)に、図5に示されるフローチャートに記載されたプログラムの制御装置190による実行が開始される。図5では、1秒に1回、流量センサ188により水の流量が測定されると仮定する。操作パネル109に対して人が操作を開始した際(すなわち、操作パネル109の表面に設けられたボタンが押された際)に、カウンタは0に初期化される。
【0044】
まず、ステップ101において、流量センサ188を用いて、減圧弁184を通ってノズル500に向けて流れる水の流量が測定される。
【0045】
次に、ステップ102において、開閉弁183が開いているかどうかが制御装置190により判定される。開閉弁183が閉状態である場合には、ステップ101に戻る。開閉弁183が開状態である場合には、ステップ103に進む。
【0046】
ステップ103では、流量センサ188を用いて測定された水の流量が200mL/分以下であるかどうかが判定される。水の流量が200mL/分を超える(すなわち、正常状態)のならば、ステップ101に戻る。水の流量が200mL/分以下であるならば、ステップ104に進む。
【0047】
ステップ104では、カウンタtに1を加え、ステップ105に進む。
【0048】
ステップ105では、カウンタtが3以上であるかが判定される。図5では、1秒に1回、流量センサ188により水の流量が測定されるので、カウンタtが3以上、すなわち、水の流量が200mL/分以下である状態が3秒以上続いた場合(すなわち、異常状態が3秒以上続いた場合)には、制御装置190は、ステップ106にて開閉弁183を開状態から閉状態に切り替える。カウンタ2が2以下、すなわち、水の流量が200mL/分以下である状態が続いた時間が2秒以下である場合(すなわち、異常状態が3秒以上続いていない場合)には、ステップ101に戻る。
【0049】
本明細書においては、流量センサ188からの信号に基づいて制御装置190が水の流量を算出する場合もまた、流量センサ188を用いて水の流量を測定することに含まれる。
【0050】
以上のように、本実施の形態に係る衛生洗浄装置では、流量センサ188を用いて取得された流量が200mL/分以下である異常状態が3秒以上の所定期間の間、続いた場合には、開閉弁183を開状態から閉状態に切り替えることにより、逃し弁を具備せずとも、ホース抜けの問題が解決される。
【0051】
上記の説明では、プロセッサにプログラムを実行させることにより各処理部が実現される制御装置190を例示したが、制御装置190は、アナログ回路またはデジタル回路により実現されてもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
上記のように、本発明は、衛生洗浄装置を提供する。
【0053】
上記の内容から導出される発明が、以下、列挙される。
【0054】
1.衛生洗浄装置100であって、
前記衛生洗浄装置100は、
着座した人体の局部に向けて水を吐出するノズル500、
水道管に接続されるように構成された給水接続口181、
前記給水接続口181を介して前記水道管から供給される水が前記ノズル500に向けて流れる開状態および前記水の流れを止める閉状態の間で切り替え可能な開閉弁183、
前記開状態の開閉弁183を通って流れた水の圧力を低下させる減圧弁184、
前記減圧弁184を通って前記ノズル500に向けて流れる水の流量を測定する流量センサ188、
柔軟性を有する一端が前記ノズル500に接続され、かつその内部に前記流量センサ188から前記ノズル500に向けて水が流れるホース302、および
制御装置190
を具備し、
前記衛生洗浄装置190は、前記流量センサ188を通って前記ノズル500に向けて流れる水のための逃し弁を具備せず、
前記制御装置190は、
前記流量センサ188を用いて前記流量を取得する第1工程、および
前記開閉弁183が前記開状態であり、かつ前記流量センサ188を用いて取得された前記流量が200mL/分の流量閾値と等しいかまたはそれ未満である異常状態が3秒以上の所定期間の間、続いた場合には、前記開閉弁183を前記開状態から前記閉状態に切り替える第2工程、
を実行する、
衛生洗浄装置。
【0055】
2.上記項目1に記載の衛生洗浄装置であって、さらに
熱交換器
を具備し、
前記熱交換器では、前記流量センサ188を通って前記ノズル500に向けて流れる水が加熱される、
衛生洗浄装置。
【0056】
3.上記項目1または2のいずれかに記載の衛生洗浄装置であって、
前記第2工程において、前記所定期間が10秒以下である、
衛生洗浄装置。
【符号の説明】
【0057】
100 衛生洗浄装置
101 本体
108 便座
109 操作パネル
110 ノズル先端
140 熱交換器
141 バッファータンク
180 水回路
181 給水接続口
182 ストレーナ
183 開閉弁
184 減圧弁
185 バキュームブレーカ
188 流量センサ
190 制御装置
191 流量取得部
192 計時部
193 異常停止部
194 開閉部
200 便器
500 ノズル
図1
図2
図3
図4
図5