IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 帝人株式会社の特許一覧

特開2023-112242半芳香族ポリアミド樹脂組成物およびそれを用いた成形品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112242
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】半芳香族ポリアミド樹脂組成物およびそれを用いた成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20230804BHJP
   C08L 23/30 20060101ALI20230804BHJP
   C08L 77/02 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
C08L77/06
C08L23/30
C08L77/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013886
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】森 勇気
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB212
4J002CL013
4J002CL031
4J002CL033
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】低摩耗性および押出加工性に優れる半芳香族ポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分およびデカンジアミンを主成分とする脂肪族ジアミン成分からなる半芳香族ポリアミド(A成分)100重量部に対して、(B)脂肪族ポリアミド(B成分)を0.1重量部以上3重量部未満および(C)ポリエチレン系摺動性付与材(C成分)を1~20重量部含むことを特徴とする半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分およびデカンジアミンを主成分とする脂肪族ジアミン成分からなる半芳香族ポリアミド(A成分)100重量部に対して、(B)脂肪族ポリアミド(B成分)を0.1重量部以上3重量部未満および(C)ポリエチレン系摺動性付与材(C成分)を1~20重量部含むことを特徴とする半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
B成分がナイロン6および/またはナイロン66であることを特徴とする請求項1に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
C成分が、粘度平均分子量が100,000~1,000,000である無水マレイン酸で変性された変性ポリエチレン樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物からなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低摩耗性および押出加工性に優れる半芳香族ポリアミド樹脂組成物およびそれを用いた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や電気・電子機器におけるギヤ・軸受等の摺動部材として半芳香族ポリアミドが使用されている。その中でも各種ギヤや軸受けのような摺動部材用途では、継続的または断続的な摩擦力に曝されることから、相手材と摺動した際の低摩耗性が必要となる。近年では高温、高荷重といった過酷な環境下でも高寿命化を実現する部材が求められており、従来よりも高度な低摩耗性が必要となってきている。
【0003】
摺動性を有する半芳香族ポリアミド樹脂組成物としては、例えば、特許文献1にはポリアミド10T(テレフタル酸および1,10-デカンジアミンからなるポリアミド)に摺動性付与材を含有させた樹脂組成物が開示されているが、高荷重といった過酷な環境下の低摩耗性が不十分である。特許文献2にはMXD6(アジピン酸およびメタキシレンジアミンからなるポリアミド)に摺動性付与材および脂肪族ポリアミドを含有させた樹脂組成物が開示されているが、低摩耗性が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5837377号公報
【特許文献2】特許第6827815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、低摩耗性および押出加工性に優れる半芳香族ポリアミド樹脂組成物およびそれを用いた成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上述の課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分およびデカンジアミンを主成分とする脂肪族ジアミン成分からなる半芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミドおよびポリエチレン系摺動性付与材を特定の割合で配合することにより、上記目的を達成することを見出し本発明に至った。
【0007】
すなわち、上記課題は、(A)テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分およびデカンジアミンを主成分とする脂肪族ジアミン成分からなる半芳香族ポリアミド(A成分)100重量部に対して、(B)脂肪族ポリアミド(B成分)を0.1重量部以上3重量部未満および(C)ポリエチレン系摺動性付与材(C成分)を1~20重量部含むことを特徴とする半芳香族ポリアミド樹脂組成物により達成される。
【0008】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0009】
(A成分:半芳香族ポリアミド)
本発明のA成分は、芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジアミン成分とを構成成分として含有し、芳香族ジカルボン酸成分はテレフタル酸を主成分とし、脂肪族ジアミン成分はデカンジアミンを主成分とするものである。テレフタル酸の含有量は、耐熱性の観点から、芳香族ジカルボン酸成分中、80モル%以上であることが好ましく、100モル%であることがより好ましい。デカンジアミンの含有量は、機械的特性の向上の観点から、脂肪族ジアミン成分中、80モル%以上であることが好ましく、100モル%であることがより好ましい。A成分の具体例としては、PA10Tが挙げられる。
【0010】
芳香族ジカルボン酸成分は、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸を含有してもよい。テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸は、原料モノマーの総モル数に対し、20モル%以下とすることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
【0011】
脂肪族ジアミン成分は、デカンジアミン以外の他の脂肪族ジアミンを含有してもよい。他の脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,2-エタンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,13-トリデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,15-ペンタデカンジアミン等が挙げられる。デカンジアミン成分以外の脂肪族ジアミンは、原料モノマーの総モル数に対し、20モル%以下とすることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
【0012】
本発明におけるA成分は、300℃より高い融点を有することが好ましく、それにより耐熱性をより向上させることができる場合がある。融点を複数有する場合や、2種以上の半芳香族ポリアミドを用いる場合には、300℃以下の融点を有してもよい。
【0013】
ここで、本発明におけるA成分の融点とは、半芳香族ポリアミドのペレットを約10mg採取して、示差走査熱量計を用いて、窒素雰囲気下で、溶融状態から20℃/分の降温速度で20℃まで降温して5分間保持した後、20℃/分の昇温速度で昇温した際に現れる吸熱ピークの温度を指す。但し、吸熱ピークが2つ以上検出される場合には、最も温度の高いピークを融点とする。
【0014】
A成分は、従来から知られている加熱重合法や溶液重合法の方法を用いて製造することができる。工業的に有利である点から、加熱重合法が好ましく用いられる。加熱重合法としては、芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジアミン成分とから反応生成物を得る工程(i)と、得られた反応生成物を重合する工程(ii)とからなる方法が挙げられる。
【0015】
工程(i)としては、例えば、芳香族ジカルボン酸粉末とモノカルボン酸とを混合し、予め脂肪族ジアミンの融点以上、かつ芳香族ジカルボン酸の融点以下の温度に加熱し、この温度の芳香族ジカルボン酸粉末とモノカルボン酸とに、芳香族ジカルボン酸の粉末の状態を保つように、実質的に水を含有させずに、脂肪族ジアミンを添加する方法が挙げられる。あるいは、別の方法としては、溶融状態の脂肪族ジアミンと固体の芳香族ジカルボン酸とからなる懸濁液を攪拌混合し、混合液を得た後、最終的に生成する半芳香族ポリアミドの融点未満の温度で、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとモノカルボン酸の反応による塩の生成反応と、生成した塩の重合による低重合物の生成反応とをおこない、塩および低重合物の混合物を得る方法が挙げられる。この場合、反応をさせながら破砕をおこなってもよいし、反応後に一旦取り出してから破砕をおこなってもよい。工程(i)としては、反応生成物の形状の制御が容易な前者の方が好ましい。
【0016】
工程(ii)としては、例えば、工程(i)で得られた反応生成物を、最終的に生成する半芳香族ポリアミドの融点未満の温度で固相重合し、所定の分子量まで高分子量化させ、半芳香族ポリアミドを得る方法が挙げられる。固相重合は、重合温度180~270℃、反応時間0.5~10時間で、窒素等の不活性ガス気流中でおこなうことが好ましい。
【0017】
工程(i)および工程(ii)の反応装置としては、特に限定されず、公知の装置を用いればよい。工程(i)と工程(ii)を同じ装置で実施してもよいし、異なる装置で実施してもよい。
【0018】
A成分の製造において、重合の効率を高めるため重合触媒を用いてもよい。重合触媒としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの塩が挙げられる。重合触媒の添加量は、通常、半芳香族ポリアミドを構成する全モノマーに対して、2モル%以下で用いることが好ましい。
【0019】
(B成分:脂肪族ポリアミド)
本発明でB成分として用いられる脂肪族ポリアミドとしては、ポリε-カプラミド(PA6)、ポリテトラメチレンアジパミド(PA46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(PA66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(PA610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(PA612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(PA116)、ポリウンデカナミド(PA11)、ポリドデカナミド(PA12)およびこれらのうち少なくとも2種類の異なったポリアミド成分を含むポリアミド共重合体、あるいは、これらの混合物などがあげられる。中でも構成単位の炭素数が6以下であるポリアミドが好ましく、PA6(ナイロン6)、PA66(ナイロン66)が、経済性の観点から好ましい。脂肪族ポリアミドを用いることで、成形品の低摩耗性を向上させることができる。
【0020】
脂肪族ポリアミドの相対粘度は、特に限定されず、目的に応じて適宜設定すればよい。例えば、成形加工が容易な樹脂組成物を得るには、脂肪族ポリアミドは、相対粘度が1.9~4.0であることが好ましく、2.0~3.5であることがより好ましい。脂肪族ポリアミドの相対粘度が1.9未満であると、成形品によっては靱性が不足し、機械的特性の低下を招く場合がある。また、脂肪族ポリアミドの相対粘度が4.0を超えると、樹脂組成物は、成形加工が困難となり、得られる成形品は、外観が劣る場合がある。
【0021】
B成分の含有量は、A成分100重量部に対して、0.1重量部以上3重量部未満であり、好ましくは0.3~2.5重量部、より好ましくは0.5~2重量部である。含有量が0.1重量部未満の場合および3重量部以上の場合、摺動時の摩耗量が増加する。
【0022】
(C成分:ポリエチレン系摺動性付与材)
本発明でC成分として用いられるポリエチレン系摺動性付与材としては、それ自体公知のものを用いることができる。ポリエチレン系摺動性付与材を用いることで、成形品の低摩耗性を向上させることができる。ポリエチレン系摺動性付与材を製造する際の出発物質として使用されるポリエチレンとしては、例えば粘度平均分子量が数万以上の高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンや粘度平均分子量が数万以下のポリエチレンワックスおよびこれらの1種もしくは2種以上の混合物が例示される。ポリエチレンを変性する方法としては、従来公知の種々の方法が採用でき、例えば上記ポリエチレンを140~180℃の溶融状態で空気を導入することで酸化反応による官能基導入を行う方法や、上記ポリエチレンを溶媒に懸濁させ、あるいは溶解させて、通常、80~200℃の温度で、変性用単量体とラジカル重合開始剤等を添加混合してグラフト共重合させる方法、あるいは融点以上、例えば、180~300℃の温度で溶融混練下に変性用単量体とラジカル重合開始剤とを接触させる方法などが挙げられる。変性用単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、ナジック酸(エンドシス-ビシクロ〔2,2〕ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸)等が挙げられ、またその誘導体としては、酸ハライド、エステル、アミド、イミド、無水物等が挙げられ、例えば、塩化マレニル、マレイミド、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、グリシジルメタクリレート、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート等が挙げられる。この中でもマレイン酸、無水マレイン酸またはこれらの混合物で変性された変性ポリエチレン樹脂が好ましく、無水マレイン酸で変性された変性ポリエチレン樹脂が特に好ましい。これらの好ましい変性ポリエチレン樹脂を用いることで、成形品の低摩耗性をより向上できる場合がある。
【0023】
C成分の粘度平均分子量(Mv)の好ましい範囲としては100,000~1,000,000であり、さらに好ましくは200,000~900,000であり、特に好ましくは300,000~800,000である。この範囲のポリエチレン樹脂を用いることで、成形品の低摩耗性をより向上できる場合がある。C成分の粘度平均分子量は、135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度[η]を用いて下記一般式(1)より求められる。
Mv=5.37×10[η]1.37 ・・・(1)
C成分の含有量は、A成分100重量部に対して、1~20重量部であり、好ましくは3~18重量部、より好ましくは5~15重量部である。含有量が1重量部未満の場合、摺動時の摩耗量が増加する。20重量部を超える場合、押出加工性が低下する。
【0024】
(その他の添加剤について)
また、本発明の樹脂組成物には、本発明の趣旨に反しない範囲で、他の熱可塑性樹脂を配合し、必要に応じて酸化防止剤、衝撃改質剤、可塑剤、有機、無機充填剤、難燃剤、色材、光安定剤、熱安定剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、C成分を除く滑材、分散剤、流動改質剤、結晶核剤等の各添加材を含むことが出来る。
【0025】
(樹脂組成物の製造)
本発明の樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば各成分、並びに任意に他の成分を予備混合し、その後溶融混練し、ペレット化する方法を挙げることができる。予備混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などを挙げることができる。予備混合においては場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行うこともできる。予備混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する。溶融混練機としては他にバンバリーミキサー、混練ロール、恒熱撹拌容器などを挙げることができるが、ベント式ニ軸押出機が好ましい。他に、各成分、並びに任意に他の成分を予備混合することなく、それぞれ独立に二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法も取ることもできる。
【0026】
(成形品について)
上記の如く得られた本発明の樹脂組成物は通常前記の如く製造されたペレットを射出成形、押出成形して各種製品を製造することができる。更にペレットを経由することなく、押出機で溶融混練された樹脂を直接シート、フィルム、異型押出成形品および射出成形品にすることも可能である。射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。また本発明の樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シートを成形することも可能である。押出成形においては、丸棒を押出成形しその後円盤状に切削加工することにより成形品を得る方法や、厚肉シートを押出成形しその後所定の形状に打ち抜き加工することにより成形品を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、低摩耗性および押出加工性に優れる半芳香族ポリアミド樹脂組成物およびそれを用いた成形品を提供することができ、本発明の樹脂組成物より得られる成形品は、例えば電気電子、半導体、自動車、産業機械、OA機器および建築分野で用いられる摺動部材に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を実施するための形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
【実施例0029】
以下、実施例により本発明を実施する形態を説明する。なお、諸物性の評価は以下の方法により実施した。
【0030】
[樹脂組成物の評価]
押出加工性の評価として押出時の安定性を、低摩耗性の評価として比摩耗量をそれぞれ下記の方法で測定した。
(1)押出加工性
押出時の安定性に関して、以下の基準で評価を実施した。
押出時のストランドが安定している。:〇
押出時のストランドが不安定であり、ペレット化が困難である。:×
(2)比摩耗量
下記の方法で得られたペレットを130℃で6時間乾燥した後に射出成形機(東芝機械(株)製 EC130SXII―4Y)によりシリンダー温度330℃、金型温度130℃にてJIS K7218A法に準拠し、外径25.6mm、内径20mm、高さ15mmの中空円筒試験片を得た。該試験片をJIS K7218A法に準拠し、炭素鋼材(S45C)でできた同様の形状の試験片と面圧0.75MPa、滑り速度500mm/s、滑り距離3000mの条件で摩擦摩耗試験機(EFM-3-G、(株)オリエンテック製)を用いて摺動させた。摺動後の試験片の重量減少を電子天秤を用いて0.1mg単位まで秤量し、JIS K7218A法に記載の計算式を用いて比摩耗量を算出した。試験は3回行い、それらの平均値をその組成物の比摩耗量とした。比摩耗量は2.0×10-6mm/N・m以下であることが必要である。
【0031】
[実施例1-8、比較例1-4]
表1で示した添加量に従って、A成分、B成分およびC成分を第1供給口より別々に二軸押出機に供給した。ここで第1供給口とは根元の供給口のことである。押出は、径30mmΦのベント式二軸押出機((株)日本製鋼所製:TEX30α-31.5BW-3V)を使用し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/h、ベントの真空度3kPaにて溶融混錬しペレットを得た。なお、押出温度は330℃にて行った。
【0032】
(A成分)
A-1:半芳香族ポリアミド:PA10T(ユニチカ(株)製:ゼコットXP500)
(B成分)
B-1:脂肪族ポリアミド:PA6(宇部興産(株)製:UBEナイロン1011FB)
B-2:脂肪族ポリアミド:PA66(宇部興産(株)製:UBEナイロン2015B)
【0033】
(C成分)
C-1:製造例1で得られた無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂
<製造例1>
135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度が31dl/gである超高分子量ポリエチレン(三井化学(株)製 ハイゼックスミリオン630M)15重量%および135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度が2dl/gであるポリエチレン((株)プライムポリマー製ハイゼックス2200J)85重量%からなるポリエチレン樹脂混合物100重量部、無水マレイン酸1重量部および有機過酸化物(日本油脂(株)製パーヘキシン―25B)0.07重量部をナウターミキサーにて混合し、得られた混合物を250℃に設定した一軸押出機(いすず化工機(株)製EXT40m/m押出機)で溶融混練を行いC-1成分を得た。得られた変性ポリエチレン樹脂の135℃のデカリン酸中で測定される極限粘度[η]は5.5dl/gであり、粘度平均分子量Mvは550,000であった。
【0034】
C-2:製造例2で得られたポリエチレン樹脂
<製造例2>
135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度が31dl/gである超高分子量ポリエチレン(三井化学(株)製 ハイゼックスミリオン630M)15重量%および135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度が2dl/gであるポリエチレン((株)プライムポリマー製ハイゼックス2200J)85重量%からなるポリエチレン樹脂混合物100重量部をナウターミキサーにて混合し、得られた混合物を250℃に設定した一軸押出機(いすず化工機(株)製EXT40m/m押出機)で溶融混練を行いC-2成分を得た。得られたポリエチレン樹脂の135℃のデカリン酸中で測定される極限粘度[η]は5.5dl/gであり、粘度平均分子量Mvは550,000であった。
C-3:酸化ポリエチレンワックス:ハイワックス310MP(製品名)(三井化学(株)製、粘度平均分子量約3,000)
【0035】
【表1】
【0036】
<実施例1~8>
本請求の範囲内にある樹脂組成物であるため、低摩耗性および押出加工性に優れる結果であった。
【0037】
<比較例1>
B成分の含有量が下限未満であるため、比摩耗量が大きい結果であった。
<比較例2>
B成分の含有量が上限を上回るため、比摩耗量が大きい結果であった。
<比較例3>
C成分の含有量が下限未満であるため、比摩耗量が大きい結果であった。
<比較例4>
C成分の含有量が上限を上回るため、ペレット化ができなかった。