(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112246
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】波形屋根の補修部材および補修方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/03 20060101AFI20230804BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
E04G23/03
E04G23/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013896
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】592058234
【氏名又は名称】株式会社エム・アンド・エフ
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】230105751
【弁護士】
【氏名又は名称】松江 協子
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100195224
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 宏憲
(72)【発明者】
【氏名】藤田 真澄美
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA09
2E176AA23
2E176BB28
(57)【要約】
【課題】波形屋根の下側から波形屋根を下地に再固定することができる波形屋根の補修部材および補修方法を提供する。
【解決手段】波形屋根(波形スレート81)を下地(アングル91)に固定する補修部材1は、波形屋根に形成された固定孔81Hを上下に貫通する縦部分11、および、波形屋根の上側で横方向に延びる横部分12であって、縦部分11の上端11Aと接続された横部分12を有する主金具10と、主金具10の縦部分11を下地に固定する固定金具20とを備える。横部分12は、縦部分11の上端11Aから横方向の一方向に延びる第1部分12Aと、縦部分11の上端11Aから前記一方向と反対方向に延びる第2部分12Bであって、第1部分12Aよりも短い第2部分12Bとを有し、固定孔81Hに波形屋根の下側から通される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形屋根を下地に固定する補修部材であって、
前記波形屋根に形成された固定孔を上下に貫通する縦部分と、前記波形屋根の上側で横方向に延びる横部分であって、前記縦部分の上端と接続された横部分とを有する主金具と、
前記主金具の前記縦部分を前記下地に固定する固定金具と、を備え、
前記横部分は、前記縦部分の上端から前記横方向の一方向に延びる第1部分と、前記縦部分の上端から前記一方向と反対方向に延びる第2部分であって、前記第1部分よりも短い第2部分とを有し、前記固定孔に前記波形屋根の下側から通されることを特徴とする波形屋根の補修部材。
【請求項2】
前記縦部分の上端は、前記縦部分が延びる方向および前記横部分が延びる方向の両方と直交する方向から見て、少なくとも前記一方向側の側面が凹む形状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の波形屋根の補修部材。
【請求項3】
前記縦部分の前記固定孔内に配置される部分のうち前記一方向側の側面と、前記固定孔の前記一方向側の内面との間に差し込まれる差込部を有する寄せ部材をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の波形屋根の補修部材。
【請求項4】
前記横部分の前記波形屋根の上面と接触する面は、前記波形屋根の上面に沿うような形状の平坦な面であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の波形屋根の補修部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の補修部材を用いた波形屋根の補修方法であって、
前記主金具の前記横部分を前記波形屋根の前記固定孔に下から通し、前記横部分を前記波形屋根の上側に位置させる工程と、
前記固定孔に対し前記縦部分を前記反対方向側に寄せて、前記縦部分を前記固定孔から下に吊り下げた状態にする工程と、
前記固定金具により、前記縦部分を下地に固定する工程と、を有することを特徴とする波形屋根の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波形屋根を母屋、桁、垂木などの下地に固定するための補修部材および補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場や駅舎の屋根においては、波形スレートなどの波形屋根が使われている。波形屋根は、通常、下端にフックが形成されたボルトを用いて、水平に延びる母屋などに固定される(特許文献1)。例えば、ボルトの下端のフックをC形鋼からなる母屋に引っ掛け、ボルトの上端を波形屋根に下から貫通させ、波形屋根の上に突出したボルトの上端部に波形屋根の上からナットを螺合させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、長年使用されたこれらの屋根においては、波形屋根を固定する金具が腐食や振動により外れることがある。しかしながら、駅舎のように、夜間しか補修工事ができない場所においては、短時間で工事を完了できることが望まれる。しかも、経年劣化した波形屋根は、上に乗ると破損するおそれもあるため、夜間に屋根の上に乗って補修工事を行うことは困難である。
【0005】
そこで、本発明は、波形屋根の下側から波形屋根を下地に再固定することができる波形屋根の補修部材および補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するための波形屋根の補修部材は、波形屋根を下地に固定する補修部材であって、前記波形屋根に形成された固定孔を上下に貫通する縦部分と、前記波形屋根の上側で横方向に延びる横部分であって、前記縦部分の上端と接続された横部分とを有する主金具と、前記主金具の前記縦部分を前記下地に固定する固定金具と、を備え、前記横部分は、前記縦部分の上端から前記横方向の一方向に延びる第1部分と、前記縦部分の上端から前記一方向と反対方向に延びる第2部分であって、前記第1部分よりも短い第2部分とを有し、前記固定孔に前記波形屋根の下側から通されることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、横部分を、波形屋根の下側から上側へ通し、縦部分を固定金具により下地に固定することで、波形屋根を下地に固定することができる。すなわち、敷設済みの波形屋根の上に乗らなくても、波形屋根の下側から波形屋根を下地に再固定することができる。また、第1部分と第2部分の両方を波形屋根に引っ掛けることができるので、主金具を固定孔から抜けにくくすることができる。
【0008】
前記縦部分の上端は、前記縦部分が延びる方向および前記横部分が延びる方向の両方と直交する方向から見て、少なくとも前記一方向側の側面が凹む形状をなしていてもよい。
【0009】
これによれば、第2部分を有する横部分を波形屋根に形成された固定孔に通しやすくすることができる。
【0010】
補修部材は、前記縦部分の前記固定孔内に配置される部分のうち前記一方向側の側面と、前記固定孔の前記一方向側の内面との間に差し込まれる差込部を有する寄せ部材をさらに備えていてもよい。
【0011】
これによれば、寄せ部材により主金具を反対方向側に寄せることができるので、第2部分を波形屋根に確実に引っ掛けることができ、主金具を固定孔からより抜けにくくすることができる。
【0012】
前記横部分の前記波形屋根の上面と接触する面は、前記波形屋根の上面に沿うような形状の平坦な面であってもよい。
【0013】
これによれば、横部分が広い面積で波形屋根に接触するので、波形屋根にかかる圧力を分散させることができる。
【0014】
また、前記した目的を達成するための波形屋根の補修方法は、前記した補修部材を用いた波形屋根の補修方法であって、前記主金具の前記横部分を前記波形屋根の前記固定孔に下から通し、前記横部分を前記波形屋根の上側に位置させる工程と、前記固定孔に対し前記縦部分を前記反対方向側に寄せて、前記縦部分を前記固定孔から下に吊り下げた状態にする工程と、前記固定金具により、前記縦部分を下地に固定する工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
このような方法によれば、波形屋根の下側から波形屋根を下地に再固定することができる。また、第1部分と第2部分の両方を波形屋根に引っ掛けることができるので、主金具を固定孔から抜けにくくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、波形屋根の下側から波形屋根を下地に再固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る補修部材で波形屋根を下地に固定した状態を示す断面斜視図である。
【
図2】実施形態に係る補修部材で波形屋根を下地に固定した状態を示す断面図(a)と、(a)のX-X断面図(b)である。
【
図3】実施形態に係る補修部材の分解斜視図である。
【
図4】主金具を波形屋根に固定する場合の説明図(a),(b)である。
【
図5】主金具を波形屋根に固定する場合の
図4に続く説明図(a),(b)である。
【
図6】主金具を下地に固定する場合の説明図である。
【
図7】第1の変形例に係る補修部材で波形屋根を下地に固定した状態を示す断面図(a)と、固定板の斜視図(b)である。
【
図8】第2の変形例に係る補修部材で波形屋根を下地に固定した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、実施形態に係る波形屋根の補修部材1は、波形屋根の一例としての波形スレート81を下地の一例としてのアングル91に固定するための補修部材である。
【0019】
本実施形態で示す波形スレート81は、湾曲形状を繰り返してなり、山部81Aと谷部81Bとを交互に繰り返し有する。波形スレート81には、山部81Aの頂部に、上下に貫通する固定孔81Hが形成されている。補修部材1は、通常、波形スレート81をそれまでアングル91に固定していた古い固定金具の代わりに用いられるので、この固定孔81Hは、古い固定金具が入っていた孔である。
【0020】
アングル91は、L字形の断面を有し、横方向に延びる上壁91Aと、縦方向に延びる縦壁91Bとを有する。本実施形態では、アングル91は、水平方向に延びる母屋として設置されている。
【0021】
補修部材1は、主金具10と、固定金具20とを主に備えている。
図2(a)に示すように、主金具10は、波形スレート81の固定孔81Hを上下に貫通する縦部分11と、波形スレート81の上側で横方向に延びる横部分12とを有する。
【0022】
縦部分11は、固定孔81Hを貫通する上端11Aと、波形スレート81から下に延びるように配置される雄ねじ部11Bとを有している。縦部分11の上端11Aは、
図2(a)に示すような、縦部分11が延びる方向および横部分12が延びる方向の両方と直交する方向から見て、
図2(a)の左右の側面が凹む形状をなしている。本実施形態では、縦部分11の上端11Aは、雄ねじ部11Bよりも細くなっている。縦部分11の上端11Aは、雄ねじ部11Bの有効径よりも細くなっていてもよい。雄ねじ部11Bの外周面には、ねじ山が形成されている。
【0023】
横部分12は、固定孔81Hに波形スレート81の下側から通される部分であり、縦部分11の上端11Aと接続されている。横部分12の波形スレート81の上面と接触する接触面12Cは、波形スレート81の上面に沿うような形状の平坦な面となっている。本実施形態では、接触面12Cは、波形スレート81の山部81Aの稜線の形状に沿うような平らな面となっている。
【0024】
横部分12は、縦部分11の上端11Aから横方向の一方向(
図2(a)の右)に延びる第1部分12Aと、縦部分11の上端11Aから前記一方向と反対方向(
図2(a)の左)に延びる第2部分12Bとを有している。横部分12が延びる方向における第2部分12Bの長さL2は、第1部分12Aの長さL1よりも短い。一例として、波形スレート81の固定孔81Hの径が8.5mmである場合、主金具10は、縦部分11(雄ねじ部11B)の径を6mmとし、第1部分12Aの長さL1を40~60mmとし、第2部分12Bの長さL2を2.5~5mmとすることができる。
【0025】
このような主金具10は、例えば、縦部分11となる全ねじの棒と、横部分12となるフラットバーとを溶接などにより接合することで形成することができる。本実施形態では、縦部分11となる全ねじの棒は、上端11Aとなる部分が、雄ねじ部11Bとなる部分よりも細い。主金具10(全ねじの棒およびフラットバー)は、耐候性を持たせるために、例えば、ステンレス鋼からなることが望ましい。
【0026】
図3に示すように、補修部材1は、寄せ部材30と、ワッシャ40と、ナット50とをさらに備えている。
寄せ部材30は、貼付部31と、差込部32とを有する。
【0027】
図2(b)に示すように、貼付部31は、波形スレート81の下側の面の固定孔81Hの周囲に貼り付けられる部分である。貼付部31の上面は、波形スレート81の下面のカーブに沿うような形状の湾曲面となっている。
図3に示すように、貼付部31には、主金具10の縦部分11を通すための貫通孔31Hが形成されている。貫通孔31Hは、略円形の外形を有する。
【0028】
差込部32は、貼付部31の上面の貫通孔31Hの周囲から上に突出する部分であり、貫通孔31Hの形状に沿うような円弧形の壁状に形成されている。
図2(a)に示すように、差込部32は、縦部分11の上端11Aの固定孔81H内に配置される部分のうち一方向側である第1部分12A側(
図2(a)の右側)の側面と、固定孔81Hの第1部分12A側の内面との間に差し込まれる。
寄せ部材30は、耐候性を持たせるために、例えば、ポリ塩化ビニルからなることが望ましい。
【0029】
ワッシャ40は、角ワッシャであり、寄せ部材30の貼付部31の下側の面に貼り付けられている。ワッシャ40には、主金具10の縦部分11を通すための貫通孔41(
図3参照)が形成されている。ナット50は、主金具10を波形スレート81に固定するための部材である。ワッシャ40およびナット50は、耐候性を持たせるために、例えば、ステンレス鋼からなることが望ましい。
【0030】
固定金具20は、主金具10の縦部分11を下地としてのアングル91に固定するための金具である。本実施形態では、固定金具20は、フック金具21と、長ナット22(
図3も参照)とからなる。
【0031】
フック金具21は、全ねじの棒を屈曲させて形成されており、上下に延びるねじ部21Aと、フック部21Bとを有している。フック部21Bは、アングル91などの下地に引っ掛けられる部分であり、フック金具21の下端部に形成されている。
長ナット22は、主金具10とフック金具21を連結する部材である。
固定金具20(フック金具21および長ナット22)は、耐候性を持たせるために、例えば、ステンレス鋼からなることが望ましい。
【0032】
このような補修部材1を用いた波形屋根の補修方法は、主金具10の横部分12を波形スレート81の固定孔81Hに下から通し、横部分12を波形スレート81の上側に位置させる工程と、固定孔81Hに対し縦部分11を第2部分12B側に寄せて、縦部分11を固定孔81Hから下に吊り下げた状態にする工程と、固定金具20により、縦部分11をアングル91に固定する工程とを有する。
【0033】
詳しくは、
図4(a)に示すように、まず、主金具10の横部分12の接触面12Cに接着剤ADを塗布し、横部分12を波形スレート81の固定孔81Hに下側から上側に向けて通す。そして、必要に応じて、縦部分11を回して横部分12の向きを変えることで横部分12の接触面12Cを波形スレート81の上面に沿わせ、横部分12を波形スレート81の上側に位置させる。接着剤ADとしては、耐候性のシール剤などを用いることができる。
【0034】
その後、
図4(b)に示すように、必要に応じて、波形スレート81の固定孔81Hに下側から接着剤ADを注入して、主金具10の縦部分11の上端11Aと、固定孔81Hの内面との間の隙間を埋める。
【0035】
次に、
図5(a)に示すように、寄せ部材30の貼付部31の上面に接着剤ADを塗布する。なお、予め、寄せ部材30(貼付部31)の下面に接着剤ADによりワッシャ40を貼り付けておく。次に、寄せ部材30とワッシャ40を主金具10の縦部分11に下側から上側に向けて通していく。
【0036】
そして、寄せ部材30の差込部32を、縦部分11の上端11Aの固定孔81H内に配置される部分のうち
図5の右側の側面と、固定孔81Hの右側の内面との間に差し込み、寄せ部材30の貼付部31を、波形スレート81の下側の面の固定孔81Hの周囲に貼り付ける。これにより、主金具10の縦部分11を固定孔81Hに対し
図5の左側に寄せて、上下方向から見た、横部分12の第2部分12Bと、波形スレート81の固定孔81Hの周囲の部分とのオーバーラップ量を大きくすることができる。
【0037】
次に、
図5(b)に示すように、主金具10の縦部分11の雄ねじ部11Bにナット50を締結して、主金具10を波形スレート81に固定する。これにより、主金具10の縦部分11を固定孔81Hから下に吊り下げた状態にすることができる。
【0038】
最後に、
図6に示すように、固定金具20により、主金具10の縦部分11をアングル91に固定する。具体的には、フック金具21の上端部に長ナット22を螺合させておき、フック金具21のフック部21Bをアングル91の縦壁91Bに下から引っ掛け、長ナット22を回転させて主金具10の縦部分11の雄ねじ部11Bに締結させる。これにより、主金具10の縦部分11と固定金具20のフック金具21とが連結され、波形スレート81をアングル91に固定することができる。
【0039】
なお、長ナット22が緩むのを防止するため、縦部分11の雄ねじ部11Bと長ナット22との間や、フック金具21のねじ部21Aと長ナット22との間に緩み防止用の接着剤を塗布してもよい。
【0040】
以上の補修部材1およびこれを用いた補修方法によれば、波形スレート81をアングル91に固定することができる。すなわち、敷設済みの波形スレート81の上に乗らなくても、波形スレート81の下側から波形スレート81を下地としてのアングル91に再固定することができる。
【0041】
また、横部分12の第1部分12Aと第2部分12Bの両方を波形スレート81に引っ掛けることができるので、主金具10を固定孔81Hから抜けにくくすることができる。これにより、波形スレート81をアングル91に固定する際の施工性を向上させることができる。
【0042】
また、縦部分11の上端11Aの側面が凹む形状をなしているので、第2部分12Bを有する横部分12を波形スレート81に形成された固定孔81Hに通しやすくすることができる。
【0043】
また、寄せ部材30により主金具10を第2部分12B側に寄せることができるので、第2部分12Bを波形スレート81に確実に引っ掛けることができる。これにより、主金具10を固定孔81Hからより抜けにくくすることができる。
【0044】
また、寄せ部材30の貼付部31を波形スレート81の下側の面の固定孔81Hの周囲に貼り付けることで、波形スレート81の固定孔81Hの周囲を補強することができる。これにより、波形スレート81が劣化していてもその寿命を延長させることができる。
【0045】
また、横部分12の接触面12Cが波形スレート81の上面に沿うような形状の平坦な面であることで、横部分12が広い面積で波形スレート81に接触するので、波形スレート81にかかる圧力を分散させることができる。これにより、波形スレート81が劣化していても波形スレート81が破損するのを抑制することができる。
【0046】
以上、発明の一実施形態について説明したが、本発明は適宜変形して実施することができる。
例えば、前記実施形態の主金具10や固定金具20の形状は一例であり、主金具や固定金具は、波形屋根が敷設された現場に合わせて形状を変更してもよい。なお、以下では、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0047】
図7(a),(b)に示すように、第1の変形例に係る補修部材1Aは、主金具10と、固定金具120と、寄せ部材30と、ワッシャ40と、ナット50とを備えている。
固定金具120は、全ねじ棒121と、主金具10の縦部分11と全ねじ棒121を連結する長ナット122と、固定板123と、ナット124とを有している。
【0048】
固定板123は、金属板を屈曲させて形成されており、横方向に延びる横壁123Aと、横壁123Aの一端から下方に延びる縦壁123Bと、縦壁123Bの下端から斜め上方に延びるフック部123Cとを有している。フック部123Cは、アングル91などの下地に引っ掛けられる部分である。横壁123Aには、全ねじ棒121を通すための貫通孔123Hが形成されている。
【0049】
このような補修部材1Aを用いて波形スレート81をアングル91に固定する場合、まず、第1実施形態と同様に、主金具10を波形スレート81に固定する(
図4から
図5参照)。次に、長ナット122により、縦部分11と全ねじ棒121を連結する。この際、長ナット122が緩むのを防止するため、縦部分11と長ナット122との間や、全ねじ棒121と長ナット122との間に緩み防止用の接着剤を塗布してもよい。
【0050】
次に、固定板123のフック部123Cをアングル91の縦壁91Bに下から引っ掛け、貫通孔123Hを全ねじ棒121の下端部に通す。最後に、全ねじ棒121の下端からナット124を螺合し、ナット124を適度な強さで締結することで、固定金具220により、縦部分11を波形スレート81に固定する。これにより、波形スレート81をアングル91に固定することができる。
【0051】
このような第1の変形例によっても、波形スレート81をアングル91に固定することができる。すなわち、敷設済みの波形スレート81の上に乗らなくても、波形スレート81の下側から波形スレート81をアングル91に再固定することができる。
【0052】
なお、第1の変形例では、固定金具120が全ねじ棒121と長ナット122を有していたが、例えば、主金具の縦部分の雄ねじ部を長くして、全ねじ棒と長ナットを省略してもよい。この場合、固定金具は、固定板123と、ナット124とを有する。この固定金具を用いて波形スレート81をアングル91に固定する場合、固定板123のフック部123Cをアングル91の縦壁91Bに下から引っ掛け、貫通孔123Hを縦部分の雄ねじ部の下端部に通す。そして、雄ねじ部の下端からナット124を螺合し、ナット124を締結する。
【0053】
また、第1の変形例では、固定板123がフック部123Cを有していたが、例えば、固定板は、フック部を備えず、固定板の縦壁とアングルとに形成された貫通孔にボルトを通し、ナットに締結することでアングルに固定される構成であってもよい。この場合、例えば、ナットは、固定板に溶接されていてもよい。
【0054】
図8に示すように、第2の変形例に係る補修部材1Bは、主金具210と、固定金具220とを備えている。補修部材1Bは、下地92に、ねじ軸を通すことができる孔92Hがある場合に使用できる。下地92は、水平方向に延びる母屋として設置されている。下地92は、アングルであってもよいし、C形鋼であってもよいし、その他の部材であっても構わない。
【0055】
主金具210は、固定孔81Hを上下に貫通する縦部分211と、波形スレート81の上側で横方向に延びる横部分212とを有する。
縦部分211は、固定孔81Hを貫通する上端11Aと、波形スレート81から下に延びるように配置される雄ねじ部211Bとを有している。
【0056】
横部分12の波形スレート81の上面と接触する接触面212Cは、波形スレート81の上面に沿うような形状の平坦な面となっている。第2の変形例では、接触面212Cは、波形スレート81の山部81Aの上面のカーブに沿うような形状の湾曲面となっている。さらに言えば、横部分212は、山部81Aの上面のカーブに沿うように湾曲した形状を有している。
【0057】
横部分212は、縦部分211の上端11Aから
図8の右方向に延びる第1部分212Aと、縦部分211の上端11Aから
図8の左方向に延びる第2部分212Bであって、第1部分212Aよりも短い第2部分212Bとを有している。
固定金具220は、ナット221を有する。
【0058】
このような補修部材1Bを用いて波形スレート81を下地92に固定する場合、まず、主金具210の横部分212の接触面212Cに接着剤ADを塗布し、横部分12を波形スレート81の固定孔81Hに下側から上側に向けて通し、横部分212を波形スレート81の上側に位置させる。
【0059】
次に、雄ねじ部211Bの下端部を下地92の孔92Hに上から通し、横部分212を波形スレート81の上面に接触させて、縦部分211を波形スレート81の固定孔81Hから下に吊り下げた状態にする。その後、必要に応じて、固定孔81Hに下側から接着剤ADを注入して、縦部分211の上端11Aと固定孔81Hの内面との間の隙間を埋める。また、固定孔81Hに対し縦部分211を
図8の左側(第2部分212B側)に寄せておいてもよい。
【0060】
最後に、縦部分211の下端からナット221を螺合し、ナット221を適度な強さで締結することで、ナット221(固定金具220)により、縦部分211を下地92に固定する。これにより、波形スレート81を下地92に固定することができる。
【0061】
なお、波形スレート81が劣化していて、ナット221を強く締結することができない場合、ナット221の下にナット222をさらに締めて、ナット221が緩むのを防止してもよい。すなわち、固定金具220は、ナット222をさらに有していてもよい。また、ナット222を締めるのに代えて、もしくはナット222を締めるのに加えて、縦部分211とナット221,222の間に緩み防止用の接着剤を塗布してもよい。
【0062】
このような第2の変形例によっても、波形スレート81を下地92に固定することができる。すなわち、敷設済みの波形スレート81の上に乗らなくても、波形スレート81の下側から波形スレート81を下地92に再固定することができる。また、第1部分212Aと第2部分212Bの両方を波形スレート81に引っ掛けることができるので、主金具210を固定孔81Hから抜けにくくすることができる。
【0063】
また、前記実施形態の寄せ部材30の形状や材質は一例であり、形状などを変更してもよい。例えば、寄せ部材は、円形や矩形の外形を有するワッシャのような板状の部材に差込部を形成した構成であってもよい。また、例えば、寄せ部材は、ステンレス鋼からなるものであってもよいし、ゴムからなるものであってもよい。
【0064】
前記実施形態では、補修部材1が寄せ部材30を備えていたが、例えば、補修部材は、寄せ部材を備えない構成であってもよい(
図8参照)。この場合でも、波形屋根を下地に固定する際に、主金具の縦部分を固定孔に対し第2部分側に寄せて、縦部分を固定孔から下に吊り下げた状態にすることで、第2部分を波形スレートに確実に引っ掛けることができるので、主金具を固定孔から抜けにくくすることができる。
【0065】
前記実施形態では、補修部材1がナット50を備え、ナット50により主金具10を波形屋根としての波形スレート81に固定したが、例えば、補修部材は、ナット50の代わりに、抜け止めの爪などを有するワッシャを備え、このワッシャにより主金具を波形屋根に仮固定してもよい。また、補修部材は、主金具を波形屋根に仮固定するための部材を備えない構成であってもよい(
図8参照)。
【0066】
前記実施形態では、主金具10の縦部分11の上端11Aは、第2部分12B側の側面と第1部分12A側の側面の両方が凹む形状をなしていたが、例えば、縦部分の上端は、第1部分側の側面のみが凹む形状をなしていてもよい。また、横部分を固定孔に通すことができれば、縦部分の上端は、側面が凹む形状をなしていなくてもよい。
【0067】
前記実施形態では、波形屋根として、湾曲形状を繰り返してなる波形スレート81を例示したが、例えば、上端と下端に平板部を有する波形屋根であってもよい。
【0068】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素は、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 補修部材
10 主金具
11 縦部分
11A 上端
12 横部分
12A 第1部分
12B 第2部分
12C 接触面
20 固定金具
30 寄せ部材
32 差込部
81 波形スレート
81H 固定孔
91 アングル