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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112254
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】ソケット
(51)【国際特許分類】
   H01R 33/76 20060101AFI20230804BHJP
【FI】
H01R33/76 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013918
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】506154029
【氏名又は名称】センサータ テクノロジーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀幸
【テーマコード(参考)】
5E024
【Fターム(参考)】
5E024CA01
5E024CA07
5E024CA12
5E024CA18
5E024CB04
(57)【要約】
【課題】 狭ピッチに対応しつつワイピング機能を備えた表面実装可能なソケットを提供する。
【解決手段】 本発明のソケット100は、回路基板210に表面実装可能である。ソケット100は、複数のコンタクト110を含み、各コンタクト110は、半導体装置の端子に接触可能な接点部112と、当該接点部112に接続された係止部116と、当該係止部116から延在し、かつ基板表面に形成された導電性領域に接触可能な基板側接点部118とを含む。ソケット100はさらに、複数のコンタクト110の係止部116を保持するストッパー部材120と、ストッパー部材120に対向するように配置されたガイド部材180とを含み、ガイド部材180には、ストッパー部材120から突出した基板側接点部118を収容する貫通孔186が複数されている。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に表面実装可能なソケットであって、
板状の導電性材料から構成された複数のコンタクトであって、各コンタクトは、半導体装置の端子に接触可能な接点部と、当該接点部に接続された係止部と、当該係止部から延在し、かつ基板上に形成された開口を含む導電領域に接触可能な基板側接点部とを含み、当該基板側接点部は、前記係止部に接続された弾性変形部と、当該弾性変形部に接続されかつ軸方向に幅の狭い部分と幅の広い部分とが形成された先端部とを含む、複数のコンタクトと、
前記複数のコンタクトの係止部を保持する保持部材と、
前記保持部材に接近または離間する方向に移動可能であり、前記保持部材から突出した前記基板側接点部を挿入する貫通孔が複数形成されたガイド部材とを有し、
前記ガイド部材を前記保持部材に接近する方向に移動させたとき、前記先端部を前記開口内に軸方向に進入させる、ソケット。
【請求項2】
前記幅の広い部分は前記開口の直径よりも大きく、前記幅の狭い部分は前記開口の直径よりも小さく、
前記ガイド部材が前記保持部材に接近する方向に移動したとき、前記幅の狭い部分が前記開口内に進入し、前記幅の広い部分と前記幅の狭い部分との間の接続領域で前記開口のエッジ部をワイピングする、請求項1に記載のソケット。
【請求項3】
前記コンタクトは、第1の方向において概ね一定の板厚を有し、前記弾性変形部が軸方向から第1の方向に突出し、前記先端部は、第1の方向と直交する第2の方向において前記幅の狭い部分と前記幅の広い部分とを有する、請求項1または2に記載のソケット。
【請求項4】
前記接続領域は、直線状または曲線状に傾斜する、請求項2に記載のソケット。
【請求項5】
前記先端部は、楔形または逆三角形の形状を有する、請求項1ないし4いずれか1つに記載のソケット。
【請求項6】
前記ガイド部材が前記保持部材から離間した位置にあるとき、前記先端部の一部が前記基板の開口に臨む位置に存在する、請求項1ないし5いずれか1つに記載のソケット。
【請求項7】
前記ガイド部材が前記保持部材に接近する方向に移動したとき、前記先端部が前記開口に接触し、軸方向の力を受けた前記先端部が前記弾性変形部によって一定方向に傾斜する、請求項1ないし6いずれか1つに記載のソケット。
【請求項8】
前記ガイド部材の貫通孔には、前記先端部の傾斜を許容するための傾斜面が形成される、請求項7に記載のソケット。
【請求項9】
前記先端部はさらに、前記幅の狭い部分から軸方向に延在する延在部を含み、前記ガイド部材が前記保持部材から離間した位置にあるとき、前記延在部が前記開口内に進入する、請求項1ないし8いずれか1つに記載のソケット。
【請求項10】
前記ガイド部材が前記保持部材に接近する方向に移動したとき、前記先端部が前記開口のエッジ部をワイピングし、前記延在部が前記スルーホールの内壁部をワイピングする、請求項9に記載のソケット。
【請求項11】
前記開口は、スルーホールである、請求項1ないし10いずれか1つに記載のソケット。
【請求項12】
ソケットはさらに、前記ガイド部材を前記保持部材から離間する方向に付勢するバネ手段を含む、請求項1に記載のソケット。
【請求項13】
請求項1ないし12いずれか1つに記載のソケットと、当該ソケットが表面実装された回路基板とを含む実装装置。
【請求項14】
前記実装装置は、テスト用の装置である、請求項13に記載のソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Sized Package)、またはLGA(Land Grid Array)等の半導体装置を実装するソケットに関し、特に、ソケットを回路基板に表面実装するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ソケットは、半導体装置と回路基板等を電気的に接続するためのインターフェースとして広く用いられている。図1(A)に、スルーホールタイプのソケット10を例示する。同図に示すように、ソケット10は、ベース部材20、ベース部材20に対して接近しまたは離れる方向に往復動可能なカバー部材30、ベース部材20に植え込まれる複数のコンタクト40、コンタクト40の基板側接点42の位置を規制するコンタクト規制部材50、コンタクト規制部材50に対して往復動可能なアダプター60、BGA等の半導体装置の表面を押圧するラッチ部材70を有している。コンタクト40の上方に延びる接点部は、半導体装置の底面の端子に接続され、基板側接点部42は、コンタクト規制部材50の貫通孔を介してソケット10の底部から突出する。ベース部材20の各コーナーにはポスト部材22が設けられ、ポスト部材22は、回路基板の位置決め用の穴に挿入され、両者が位置決めされる(例えば、特許文献1)。図1(B)に示すように、回路基板90のスルーホール92内にコンタクト40の基板側接点部42が挿入され、基板側接点部42が半田94によって回路基板90の導電ランドまたは配線パターンに電気的に接続される。
【0003】
スルーホールタイプのソケット10では、コンタクト40の基板側接点部42を回路基板90のスルーホール92に半田付けするため、ソケット10が故障した場合にその交換に手間がかかる。その対策として、コンタクトの基板側接点部を回路基板のスルーホール内に半田付けしない表面実装タイプのソケットが特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3566691号公報
【特許文献2】特許第6991782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図2は、特許文献2のソケットの断面図、図3は、コンタクトの基板側接点部の構造を示す図である。表面実装タイプのソケット10Aは、概ねスルーホールタイプのソケット10と同様の構成を有するが、コンタクト規制部材50の下方にガイド部材50Aが上下方向に移動可能に設けられ、ガイド部材50Aが上方に移動したとき、コンタクト40Aの基板側接点部42Aがガイド部材50Aの貫通孔52から突出する。基板側接点部42Aは、例えば、U字型形状に湾曲されている。
【0006】
ソケット10Aを回路基板90に押し付ける過程で、基板側接点部42Aは、図3(A)に示すように、スルーホール90からオフセットした位置でスルーホール90のエッジ部(スルーホール内はAgまたはAuメッキされている)に接触し、次に、図3(B)に示すように、基板側接点部42Aがエッジ部WPとワイピング動作を行い、最終的に基板側接点部42Aがスルーホール90のエッジ部と多点で電気的に接触する。
【0007】
しかしながら、このソケット10Aは、基板側接点部42Aが湾曲部を持つ形状となっているために、隣接する接点部と接触しないためのマージンを取ったスペースを設ける必要があり、コンタクトの狭ピッチ化を図ることが難しくなるという課題がある。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決し、狭ピッチに対応しつつワイピング機能を備えた表面実装タイプのソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るソケットは、基板に表面実装可能なものであって、板状の導電性材料から構成された複数のコンタクトであって、各コンタクトは、半導体装置の端子に接触可能な接点部と、当該接点部に接続された係止部と、当該係止部から延在し、かつ基板上に形成された開口を含む導電領域に接触可能な基板側接点部とを含み、当該基板側接点部は、前記係止部に接続された弾性変形部と、当該弾性変形部に接続されかつ軸方向に幅の狭い部分から幅の広い部分が形成された先端部とを含む、複数のコンタクトと、前記複数のコンタクトの係止部を保持する保持部材と、前記保持部材に接近または離間する方向に移動可能であり、前記保持部材から突出した前記基板側接点部を挿入する貫通孔が複数形成されたガイド部材とを有し、前記ガイド部材を前記保持部材に接近する方向に移動させたとき、前記先端部を前記開口内に軸方向に進入させる。
【0010】
ある態様では、前記幅の広い部分は前記開口の直径よりも大きく、前記幅の狭い部分は前記開口の直径よりも小さく、前記ガイド部材が前記保持部材に接近する方向に移動したとき、前記幅の狭い部分が前記開口内に進入し、前記幅の広い部分と前記幅の狭い部分との間の接続領域で前記開口のエッジ部をワイピングする。ある態様では、前記コンタクトは、第1の方向において概ね一定の板厚を有し、前記弾性変形部が軸方向から第1の方向に突出し、前記先端部は、第1の方向と直交する第2の方向において前記幅の狭い部分と前記幅の広い部分とを有する。ある態様では、前記接続領域は、直線状または曲線状に傾斜する。ある態様では、前記先端部は、楔形または逆三角形の形状を有する。ある態様では、前記ガイド部材が前記保持部材から離間した位置にあるとき、前記先端部の一部が前記基板の開口に臨む位置に存在する。ある態様では、前記ガイド部材が前記保持部材に接近する方向に移動したとき、前記先端部が前記開口に接触し、軸方向の力を受けた前記先端部が前記弾性変形部によって一定方向に傾斜する。ある態様では、前記ガイド部材の貫通孔には、前記先端部の傾斜を許容するための傾斜面が形成される。ある態様では、前記先端部はさらに、前記幅の狭い部分から軸方向に延在する延在部118を含み、前記ガイド部材が前記保持部材から離間した位置にあるとき、前記延在部が前記開口内に進入する。ある態様では、前記ガイド部材が前記保持部材に接近する方向に移動したとき、前記先端部が前記開口のエッジ部をワイピングし、前記延在部が前記スルーホールの内壁部をワイピングする。ある態様では、前記開口は、スルーホールである。ある態様では、ソケットはさらに、前記ガイド部材を前記保持部材から離間する方向に付勢するバネ手段を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガイド部材を保持部材に接近する方向に移動させたとき、軸方向に幅の狭い部分と幅の広い部分とが形成された先端部を回路基板の開口内に軸方向に進入させるようにしたので、先端部で開口のエッジ部をワイピングすることが可能になり、ソケットと回路基板間の良好な電気的接続を得ることができる。さらに先端部を開口内に軸方向に進入させるため、従来のソケットと比較してコンタクトを狭ピッチで配列させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(A)は、従来のスルーホールタイプのソケットの断面図、図1(B)は、コンタクトとスルーホールとの接続を示す断面図である。
図2図2は、従来の表面実装用ソケットの断面図である。
図3】従来の表面実装用ソケットのコンタクトの基板側接点部とスルーホールとの接続を示す図である。
図4】本発明の実施例に係る表面実装タイプのソケットの上方から見た斜視図である。
図5】本発明の実施例に係る表面実装タイプのソケットの分解斜視図である。
図6】本発明の実施例に係る表面実装タイプのソケットの下方から見た斜視図である。
図7】本発明の実施例に係る表面実装タイプのソケットの分解斜視図である。
図8】本発明の実施例に係る表面実装タイプのソケットと回路基板との接続を説明する図である。
図9図9(A)は、本発明の実施例に係る表面実装タイプのソケットの概略構成を示す断面図、図9(B)は、ガイド部材のX方向の拡大断面図、図9(C)は、ガイド部材のY方向の拡大断面図である。
図10図10(A)は、ベース部材の平面図、図10(B)は、ベース部材の一部断面を含む側面図である。
図11】本発明の実施例に係るコンタクトの例示であり、図11(A)は、コンタクトの正面図、図11(B)は、コンタクトの側面図、図11(C)は、基板側接点部の拡大図である。
図12】基板側接点部と回路基板のスルーホールとの関係を説明する図である。
図13A】本発明の実施例に係るホルダーの平面図である。
図13B】本発明の実施例に係るストッパー部材の平面図である。
図14図14(A)は、本発明の実施例に係るガイド部材の平面図、図14(B)は、貫通孔のX-X断面図、図14(C)は、貫通孔のY-Y線断面図である。
図15】本実施例のソケットを回路基板上に取り付けたときの状態を示す概略断面図である。
図16】本実施例のソケットを回路基板に押し付けたときの状態を示す概略断面図である。
図17図17(A1)、(A2)は、図15に示す状態の基板側接点部と回路基板のスルーホールとの関係を示す図、図17(B1)、(B2)は、図16に示す状態の基板側接点部と回路基板のスルーホールとの関係を示す図である。
図18】本発明の他の実施例に係るソケットのコンタクトの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の最良の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図4ないし図8は、本発明の実施例に係る表面実装可能なソケットの概略構成を示す斜視図である。本実施例に係るソケットは、BGA等の半導体装置(半導体パッケージまたはICベアチップ)と基板との間の電気的な接続を提供する複数のコンタクト110と、コンタクト110の基板側接点部を整列、保持するストッパー部材120と、ストッパー部材120を位置決め固定し、かつコンタクト110のIC側の端部を整列、保持するベース部材130と、ベース部材130に対して接近または離間する方向に移動可能であり、かつコイルバネによりベース部材130から離間する方向に付勢されたカバー部材140と、半導体装置の上面を押圧し、半導体装置の端子をコンタクトに接触させるラッチ部材150と、カバー部材140の動きに連動してラッチ部材150を回転駆動させるリンク部材160と、半導体装置を載置し、かつ半導体装置の端子にコンタクト110の端部が接触するようにコンタクト110の端部をガイドするフローティング/アダプター部材170と、コンタクト110の基板側接点部を整列するガイド部材180と、ソケットと基板をネジ止めする際に雌ネジとなるインサートナット190とを含んで構成される。
【0014】
ソケットのカバー部材140、ラッチ部材150、リンク部材160およびフローティング/アダプター部材170の構成および動作は、特許文献1、2等に開示されたものと同様であり、これらの詳細な説明は省略する。また、本実施例のソケットは、BGA等の半導体装置を装着できる構成であればよく、必ずしもカバー部材140、ラッチ部材150、リンク部材160およびフローティング/アダプター部材170を備えることは要しない。また、ここには図示しないが、本実施例のソケットは、フローティング/アダプター部材170またはベース部材130上に載置された半導体装置をコンタクトに110に対して正確に位置決めするために、半導体装置を一定方向に押圧するバイアスクリップを備えることができる。例えば、バイアスクリップは、半導体装置を対角線の方向から押圧し、半導体装置をフローティング/アダプター部材170またはベース部材130のコーナーに接触させる。
【0015】
図9(A)は、本実施例のソケットの概略構成を示す断面図である。本実施例のソケット100は、回路基板に表面実装可能なインターフェース構造を備え、これにより、既存のスルーホールタイプの回路基板への実装も可能になる。スルーホールタイプの基板は、図1(B)に示すように、ソケットのコンタクトをスルーホールに半田付けするが、本実施例のソケット100は、スルーホールに半田付けすることなく、コンタクトをスルーホールまたは導電性領域(導電性パッドや配線を含む)への電気的接続を可能にする。
【0016】
ソケット100は、複数のコンタクト110と、ベース部材130の中央の開口内に取り付けられたストッパー部材120と、ストッパー部材120の下方に取り付けられたガイド部材180とを包含する。本実施例ではさらに、ストッパー部材120とベース部材130との間にホルダー122を含み、ホルダー122がコンタクト110の係止部116の幅広部116A(図11を参照)の上部を支持し、ストッパー部材120が係止部116の幅広部116Aの下部を支持する。但し、ホルダー122は、必ずしも必須ではなく、例えば、ベース部材130と一体に構成されてもよいし、あるいはストッパー部材120と一体に構成されてもよい。
【0017】
図10(A)は、ベース部材130の平面図、図10(B)は、ベース部材130の一部断面を含む側面図である。ベース部材130の中央部には、複数の開口部134が行列方向に形成される。開口部134は、相対的に幅が広い幅広部分134Aと、当該幅広部分134から直交する方向に延在する延在部分134Bとを含み、延在部分134Bの幅は、幅広部分134よりも小さい。開口部134は、ベース部材を貫通し、複数のコンタクト110を整列、保持するための複数の隔壁によって仕切られた内部空間を形成する。コンタクト110は、先端部が開口部134の幅広部分134Aから突出するようにベース部材130内に保持される。また、ベース部材130の底面のコーナーには、円柱状のロケーションピン200が設けられる。
【0018】
図11(A)は、コンタクトの正面図、図11(B)は、コンタクトの側面図、図11(C)は、基板側接点部の拡大図である。ここで、便宜上、図11(A)に示すコンタクトの向きをX方向、図11(B)に示すコンタクトの向きをY方向と称する。
【0019】
コンタクト110は、例えば、ベリリム銅、銅合金等の導電性金属材料からなる板材をスタンピングしもしくはエッチング等することによって形成される。X方向のコンタクト100は、概ね一定の板厚tを有する。コンタクト110は、概ね軸方向に延在し、かつその一方の端部が半導体装置の端子に接続する接点部112を構成する。接点部112は、例えば、BGAパッケージやベアチップの底面に形成された端子に接触する先端部112Aと、軸方向から側方に突出する突出部112Bとを含む。先端部112Aは、ベース部材130の開口部134の幅広部分134Aを通過し、通過した後に延在部分134Bの方向に倒すことで、突出部112Bが延在部分134Bの溝で上方向を固定し、コンタクト110にプリロードが与えられる。
【0020】
ベース部材130上にはフローティング/アダプター部材170が配置され、フローティング/アダプター部材170に形成された貫通孔がベース部材130の開口部134の位置に整合される。ベース部材130の表面から突出した接点部112は、フローティング/アダプター部材170の貫通孔内に収容される。フローティング/アダプター部材170が半導体装置を介してラッチ部材150によって下方に押圧されると、接点部112が貫通孔内をガイドされ、フローティング/アダプター部材170の表面から突出する。カバー部材140は、スプリングコイル142(図9を参照)によってベース部材130から離間する方向に付勢され、フローティング/アダプター部材170は、リンク部材160を介してカバー部材140およびラッチ部材150と連動する。カバー部材140が降下されるとき、ラッチ部材150が開き、フローティング/アダプター部材170が上昇し、カバー部材140が上昇するとき、ラッチ部材150が閉じ、フローティング/アダプター部材170が下降する。
【0021】
コンタクト110はさらに、X方向において接点部112に接続された概ねU字側に曲げられた弾性変形部114を含む。弾性変形部114が撓むことにより接点部112と半導体装置の端子間に一定の接圧が与えられる。コンタクト110はさらに、弾性変形部114から軸方向に延在する係止部116を含む。係止部116は、後述するストッパー部材120よって固定される。1つの例では、係止部116は、幅を広くした幅広部116Aを含み、幅広部116Aがストッパー部材120に係止する。
【0022】
係止部116にはさらに、回路基板のスルーホールを含む導電領域に接触するための基板側接点部118が接続される。基板側接点部118は、X方向において軸方向から突出した概ねUもしくはV字型に折り曲げられた弾性変形部118Aと、弾性変形部118Aに接続され、軸方向に延在する先端部118Bとを含む。先端部118Bは、Y方向において、根元の部分の幅がW1、先端の幅がW2を有する楔形または逆三角形の形状を有する(W1>W2)。幅W1と幅W2を結ぶ側面は、直線状のテーパ面であってもよいし、曲線状のテーパ面であってもよい。
【0023】
図12は、基板側接点部と回路基板のスルーホールとの位置関係を説明する図である。基板側接点部118は、後述するように、ソケット100を回路基板上に表面実装したとき、弾性変形部118Aの弾性変形により先端部118Bが回路基板210のスルーホール214を押圧する。基板側接点部118の先端部118Bの幅W1は、スルーホール214の直径Dよりも大きく、幅W2は、直径Dよりも小さい(W1>D、W2<D)。それ故、ソケット100が回路基板210に表面実装されたとき、先端部118Bの一部がスルーホール214内に進入し、選択部118Bの側面がスルーホール214のエッジに接触する。回路基板210の表面および/またはスルーホール214の内壁にメッキ212が形成されている場合には、先端部118Bは、メッキ212に接触する。
【0024】
ベース部材130には、上記したように複数のコンタクト110をそれぞれ整列、保持するための複数の隔壁によって仕切られた複数の空間が形成され、この空間が閉じられるようにストッパー部材120がベース部材130の底部側から取り付けられる(図7を参照)。
【0025】
図13Aは、ホルダー122の平面図、図13Bは、ストッパー部材120の平面図である。ホルダー122は、ベース部材130の開口内に収容される概ね矩形状を有し、ホルダー122には複数の溝123が形成される。ストッパー部材120は、ホルダー122と同様に概ね矩形状の本体部121を有し、本体部121には、ホルダー122の溝123対応する位置に複数の溝126が形成される。また、本体部121の側部には複数の脚部124が形成される。脚部124は、ベース部材130の取り付け穴に挿入され、ストッパー部材120をベース部材130に固定する。
【0026】
溝123と溝126とは、同形状であり、ベース部材130の開口部134と対応する位置に配置される。溝126/123は、図13(B)に示すように、横方向に延在するスロット状の延在部128Aと、延在部128Aに一定の間隔で形成された複数の拡張部128Bと、コンタクト110の幅広部116Aを支持する支持部128Cとを含む。
【0027】
ソケットの組み立てを行うとき、ベース部材130の開口にホルダー122が取り付けられ、次いで、コンタクト110は、接点部112(先端部112Aおよび突出部112B)がホルダー122の溝123の拡張部128Bを通過するように、かつコンタクトのX方向が延在部128Aの延在する方向と一致するように、ホルダー122の溝123内に挿入される。コンタクト110の幅広部116Aの上部が支持部128C内に挿入され、コンタクト110がホルダー122によって支持され、弾性変形部114が延在部128A内に収容される。
【0028】
次に、ホルダー122と整合するようにストッパー部材120がベース部材130に取り付けられる。コンタクト110の基板側接点部118の先端部118Bがストッパー部材120の溝128の拡張部128Bを通過し、幅広部116Aの下部が支持部128C内に挿入され、コンタクト110がストッパー部材120によって支持され、基板側接点部118の弾性変形部118Aが延在部128A内に収容される。
【0029】
こうして、1つの延在部128AにはX方向の複数のコンタクト110が配列される。延在部128Aの短手方向の幅は、コンタクト110の板厚tよりも幾分だけ大きく、コンタクト110は、延在部128A内でX方向に移動または変形することが可能である。
【0030】
ホルダー122およびストッパー部材120のそれぞれの厚さは、基板側接点部118の弾性変形部118Aの軸方向の長さに概ね等しい。それ故、ストッパー部材120の底面からは、基板側接点部118の先端部118Bが突出する。
【0031】
ストッパー部材120と対向するようにガイド部材180がベース部材130に取り付けられる。図14(A)は、ガイド部材180の平面図である。同図に示すように、ガイド部材180は、矩形状の面を提供する本体部182と、本体部182の側部に形成された複数の脚部184とを含む。複数の脚部184の各々の先端にはフックが形成され、フックは、ベース部材130の側壁に形成されたフック132と係合する(図9を参照)。好ましい例では、ガイド部材180は、スプリングコイル136(図15には、スプリングコイル136を示すため別の断面が一部示されている)によってベース部材130から離間する方向に付勢されており、ガイド部材180は、ベース部材130に対して接近または離間する方向に移動することができる。脚部184がベース部材130のフック132に係止される状態にあるとき、ガイド部材180がストッパー部材120から最も離れた位置にあり、両者の間には一定の間隔が形成される。
【0032】
ガイド部材180の本体部182には、ストッパー部材120の溝126と整合する位置に複数の貫通孔186が形成される。貫通孔186は、ガイド部材180の表面から底面に向けて径が狭くなる矩形状の溝であるが、貫通孔186は、長手方向と短手方向において形状を異にする。
【0033】
図14(B)は、貫通孔186のX-X線断面図、図14(C)は、貫通孔186のY-Y線断面図である。図14(B)に示すように、貫通孔186のX方向の形状は左右非対称であり、一方の傾斜面S1の傾斜角(水平方向との間で成す角)は、対向する他方の傾斜面S2の傾斜角よりも大きく、傾斜面S1、S2は、幅d1の垂直な面S3、S4に接続される。他方、貫通孔186のY方向の形状は左右対称であり、一方の傾斜面S5の傾斜角は、対向する他方の傾斜面S6と等しく、傾斜面S5、S6は、幅d2の垂直な面S7、S8に接続される(d1<d2)。
【0034】
コンタクト110は、図9に示すように、X方向の向きが左右反転するようにベース部材130に配列される。これに応じて、ガイド部材180の貫通孔186は、ソケットの左側半分の貫通孔186Aが傾斜面S1を左側に配置し、右側半分の貫通孔186Bが傾斜面S1を右側に配置する。
【0035】
ストッパー部材120の底面から突出した先端部118Bは、ガイド部材180の貫通孔186内に挿入される。ガイド部材180がベース部材130から最も離れた位置にあるとき、先端部118Bがガイド部材180の底面とほぼ等しい位置にあるか、あるいは底面よりも僅かに突出する。この突出量は、ガイド部材180がベース部材130から最も離れたときの位置によって調整可能である。
【0036】
図9(B)は、X方向の先端部118Bが貫通孔186内に進入したときの様子を示し、図9(C)は、Y方向の先端部118Bが貫通孔186内に進入したときの様子を示している。貫通孔186の上面側の傾斜面S1、S2、S5、S6は、先端部118Bを貫通孔186内に導くためのガイドとして機能する。貫通孔186の底面側のX方向の幅d1は、コンタクト110の板厚tよりも幾分大きく、貫通孔186の底面側のY方向の幅d2は、先端部118Bの幅W1よりも幾分大きい。
【0037】
次に、本実施例のソケットを基板へ取り付けるときの動作について説明する。始めに、ベース部材130の底面のコーナーから突出するロケーションピン200が回路基板210の位置決め用の穴216内に挿入され、ソケット100が回路基板210上に位置決めされる。図15は、この状態を示している。また、図17(A1)、(A2)は、先端部118Bと回路基板210のスルーホール214との位置関係を示している。先端部118Bは、ガイド部材180の底面よりも僅かに突出し、この突出した部分がスルーホール214に臨むように位置決めされる。すなわち、基板側接点部118の軸方向は、回路基板210のスルーホール214の軸中心と概ね一致する。
【0038】
次に、ソケット100を回路基板210に押し付けつつ、回路基板の裏面側よりソケットをネジ220で固定する(図8を参照)。この押圧によってガイド部材180は、スプリング部材136に抗してストッパー部材120に向けて移動し、最終的にガイド部材180はストッパー部材120に当接する。ガイド部材180が上方に移動することで、ガイド部材180の底面からコンタクト110の先端部118Bがさらに突出する。図16は、この状態を示している。
【0039】
ソケット100を回路基板210へ押し付ける過程で、先端部118BのY方向の側部がスルーホール214のエッジ部分に接触し、基板側接点部118が基板表面から軸方向の反力を受け、これにより弾性変形部118Aが弾性変形し、X方向の先端部118Bが、図17(B1)に示すように傾斜する。ガイド部材180の貫通孔186の傾斜面S1の傾斜角が大きいため、先端部118Bは、傾斜面S1に干渉することなく傾斜する。ある態様では、傾斜面S1の傾斜角を適宜選択することで、先端部118Bを傾斜面S1に接触させることで先端部118Bが傾斜する角度を規制し、これにより、先端部118Bがエッジ部分WPでワイピングすることを確実にする。
【0040】
Y方向の先端部118Bは、スルーホール214内を軸方向に進入するとき、その側部がスルーホール214のエッジ部分WPに接触し、エッジ部分WPをワイピングする。同時に、X方向の先端部118Bが傾斜することで、先端部118Bの側部がエッジ部分をさらにワイピングする。こうして、先端部118Bは、スルーホール214のエッジ部分に付着した異物等を除去することで、スルーホール214と良好な電気的接続を得る。
【0041】
その後、上記したように、ネジ220によってソケット100と基板210とが固定される。ソケット100を表面実装した後、通常のソケットと同じ取り扱い方により、バーンインテスト等が行われる。
【0042】
このように本実施例によれば、コンタクト110の軸方向をスルーホール214の軸中心に整合させ、その後、楔形の先端部118Bをスルーホール214内に進入させるようにしたので、従来のソケットのようにコンタクトの基板側接点部が軸方向から側方に突出する湾曲部を持たないため、コンタクトを狭ピッチで配列することができる。さらに先端部118Bをスルーホール内に軸方向に進入させ、スルーホールのエッジ部分をワイピングすることでスルーホールと多重接点による電気的な接続を得ることができる。
【0043】
図18は、本発明の他の実施例に係るコンタクトの構成を示す図である。先の実施例では、図11(C)に示すように基板側接点部118の先端部118Bが楔型を有しているが、他の実施例では、先端部118Bはさらに、幅W2で一定の長さで延在する延在部118Cを備える。延在部118Cの長さは、基板側接点部118Bが傾斜したときにスルーホール214内の内壁をワイピングすることができるように調整される。
【0044】
ソケット100が回路基板210上に載置されたとき、基板側接点部118の延在部118Cは、図17(A1)、(A2)のときと比べて、回路基板210のスルーホール210内に十分に進入する。次に、ソケット100が回路基板210に押圧され、ガイド部材190がベース部材130に接近すると、図18(B1)、(B2)に示すように、楔形の先端部118Bがエッジ部分WPに接触し、エッジ部分WPをワイピングするとともに、延在部118Cがスルーホール214の内壁部分WP1と接触し、内壁部分WP1をワイピングする。
【0045】
このように他の実施例によれば、基板側接点部118に延在部118Cを設けたことにより、基板側接点部118をスルーホール214のエッジ部分WPと内壁部分WP1でワイピングさせ、かつ多重接点を増加させることができ、ソケットと回路基板間の良好な電気的接続を得ることができる。
【0046】
さらに本実施例によれば次のような効果がある。
・既存のスルーホールタイプの基板に表面実装タイプのソケットが使用可能であり、また、混載も可能である。
・既存のスルーホールタイプソケットとほぼ同等の部品構成であるため、プローブピンタイプの表面実装用ソケットと比較して安価である。
・コンタクトの先端部はスタンピングのみで成形されているため、ICのピッチによらず適用する事が可能である。
・以下により、従来の課題であった異物による接触不良を防ぐことができる。
a.スルーホールのエッジ部に2点で接触しワイピングを伴う。
b.基板側接点部の先端部はスルーホールに挿入されるため、従来のようにパッド上の異物に接触を妨げられない。
c.基板側接点部の先端部は矢じり形状となっており、ガイド部材の貫通孔の傾斜部がスルーホールへの誘い込みとなるため、 先端部が確実にスルーホールに挿入される。
d.先端部の矢じり形状の根元はスルーホールの径より大きく、板厚tはスルーホールの径より小さいことにより、 スルーホールに先端が挿入され、先端部の両側の傾斜部でスルーホールのエッジ部がワイピングされる。
e.IC側と基板側のばね部が独立して可動する。
【0047】
上記実施例では、基板側接点部118の先端部118Bを楔形または逆三角形にしたが、先端部118Bは、このような形状に限定されるものではない。先端部118Bは、少なくともスルーホールの直径Dよりも幅の狭い部分と、直径Dよりも幅の広い部分とを有し、幅の狭い部分と幅の広い部分との間の直線状のテーパ部分あるいは曲線状のテーパ部分でスルーホールのエッジをワイピングすることができればよい。例えば、先端部は、樽型の形状であってもよい。
【0048】
上記実施例では、回路基板のスルーホールに先端部118Bを進入させる例を示したが、先端部118Bはスルーホール以外の導電領域に接触させてもよい。例えば、回路基板上に開口や凹部を含む導電領域を形成し、そのような開口や凹部に先端部118Bを接触させてワイピングを行うようにしてもよい。
【0049】
なお、ソケットが搭載される回路基板は、単層配線構造の基板または多層配線構造の基板いずれであってもよい。また、基板のスルーホールに形成される導電領域の形状や材料は特に限定されるものではなく、要は、基板側接点部118Cが基板のスルーホールに接触したときに、同時に導電領域と電気的に接続できる構成であればよい。
【0050】
また、ソケットに実装される半導体装置は、特に限定されない。上記実施例では、半田ボールが形成されたBGAパッケージを対象としたが、これ以外の表面実装用の半導体パッケージ(半導体装置)であってよい。また、端子の形状は、球状に限らず、半円状、円錐状、矩形状等のバンプであってもよい。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
100:ソケット
110:コンタクト
112:接点部
114:弾性変形部
116:係止部
118:基板側接点部
118A:弾性変形部
118B:先端部
120:ストッパー部材
122:ホルダー部材
130:ベース部材
140:カバー部材
180:ガイド部材
210:基板
214:スルーホール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図13A
図13B
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図18