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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112260
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/155 20060101AFI20230804BHJP
   B23Q 41/00 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
B23Q3/155 F
B23Q3/155 A
B23Q41/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013925
(22)【出願日】2022-02-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】青山 晃久
(72)【発明者】
【氏名】淺田 哲志
【テーマコード(参考)】
3C002
3C042
【Fターム(参考)】
3C002AA03
3C002DD17
3C002FF03
3C002HH01
3C002KK02
3C002KK04
3C042RG02
3C042RJ01
(57)【要約】
【課題】 工具交換に要する時間および工数を最小化する。
【解決手段】 工作機械は、複数の工具を保持可能な複数のホルダを有する刃物台と、加工プログラムにしたがって、刃物台に保持される工具を制御し、ワークを加工する加工制御部と、複数の工具を格納する工具格納部と、工具を搬送可能な工具搬送部と、工具搬送順を示す搬送スケジュールを生成するスケジュール生成部と、搬送スケジュールにしたがって工具搬送部を制御することにより、刃物台における工具の保持位置を変更する工具搬送制御部と、を備える。スケジュール生成部は、刃物台における交換前の工具の配置を示す事前配置情報と、交換後の工具の配置を示す目標配置情報にしたがって、刃物台のホルダ間において工具の保持位置を変更する第3工程と、工具格納部に格納される工具と刃物台に保持される工具を交換する第4工程と、を実行する搬送順として搬送スケジュールを生成する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工具を保持可能な複数のホルダを有する刃物台と、
加工プログラムにしたがって、前記刃物台に保持される工具を制御し、ワークを加工する加工制御部と、
複数の工具を格納する工具格納部と、
工具を搬送可能な工具搬送部と、
工具搬送順を示す搬送スケジュールを生成するスケジュール生成部と、
前記搬送スケジュールにしたがって前記工具搬送部を制御することにより、前記刃物台における工具の保持位置を変更する工具搬送制御部と、を備え、
前記スケジュール生成部は、
前記刃物台における交換前の工具の配置を示す事前配置情報と、搬送後の工具の配置を示す目標配置情報にしたがって、
前記刃物台に配置済みの工具を空きホルダに移動させる第1工程と、
前記工具格納部に格納される工具を前記刃物台の空きホルダに保持させる第2工程と、
前記刃物台のホルダ間において工具の保持位置を変更する第3工程と、
前記工具格納部に格納される工具と前記刃物台に保持される工具を交換する第4工程と、を順番に実行する工具の搬送順として前記搬送スケジュールを生成する、工作機械。
【請求項2】
前記スケジュール生成部は、前記搬送スケジュールを生成した後、更に、前記工具搬送部により前記刃物台と前記工具格納部間における1回あたりの工具の搬送本数を変更することにより、前記搬送スケジュールを調整する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記刃物台は、ワークの内径側を削るために工具を保持する第1のホルダと、ワークの外径側を削るために工具を保持する第2のホルダと、を含み、
前記工具搬送部は、複数の工具を同時に保持可能であり、かつ、旋回または回転により第1ホルダまたは第2のホルダに対して工具の着脱が可能である、請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記刃物台は、工具を旋削加工可能に保持する旋削ホルダと、工具を回転加工可能に保持する回転ホルダと、を含み、
前記工具搬送部は、複数の工具を同時に保持可能であり、かつ、旋回または回転により前記旋削ホルダまたは前記回転ホルダに対して工具の着脱が可能である、請求項1から3のいずれかに記載の工作機械。
【請求項5】
前記スケジュール生成部は、前記第1工程において、工具を保持されている複数のホルダから、同数以上の空いている複数のホルダに工具を搬送させる際、前記工具が保持されている複数のホルダから前記工具搬送部が1本ずつ工具を取り外して前記空いているホルダに搬送する前記搬送スケジュールを生成する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項6】
複数の工具を保持可能な複数のホルダを有する刃物台と、
加工プログラムにしたがって、前記刃物台に保持される工具を制御し、ワークを加工する加工制御部と、
複数の工具を格納する工具格納部と、
工具を搬送可能な工具搬送部と、
工具搬送順を示す搬送スケジュールを生成するスケジュール生成部と、
前記搬送スケジュールにしたがって前記工具搬送部を制御することにより、前記刃物台における工具の保持位置を変更する工具搬送制御部と、を備え、
前記スケジュール生成部は、
前記刃物台における交換前の工具の配置を示す事前配置情報と、交換後の工具の配置を示す目標配置情報にしたがって、
前記刃物台のホルダ間において工具の保持位置を変更する第3工程と、
前記工具格納部に格納される工具と前記刃物台に保持される工具を交換する第4工程と、を実行する搬送順として前記搬送スケジュールを生成する、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械における工具交換技術、に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械は、ワークを所望の形状に切削加工する装置や、金属粉末などを積層してワークを作る装置がある。切削加工する工作機械には、回転するワークに切削用の工具を当てることでワークを加工するターニングセンタと、回転する工具をワークに当てることでワークを加工するマシニングセンタ、これらの機能を複合的に備える複合加工機などがある。
【0003】
刃物台を備える工作機械は、刃物台に複数の工具が装着されることがある。工作機械は、あらかじめ用意された加工プログラムにしたがって、刃物台を三次元的に動かしつつ、刃物台に装着される複数の工具からワークに当てる工具を選びながらワークを加工する。
【0004】
工作機械には、多数の工具を格納する工具格納部を有するものもある。工作機械は、必要な工具が刃物台に装着されていないときには、指定された工具を工具格納部から刃物台に装着した上で、ワークの加工を続行する。以下、刃物台に装着される工具を「作業工具」とよび、工具格納部に格納される工具を「予備工具」とよぶ。特に区別しないときには単に「工具」とよぶ(特許文献1-3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-225738号公報
【特許文献2】特開2000-218459号公報
【特許文献3】特開昭62-236642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
刃物台には複数のステーションとよばれる領域が設けられ、ステーションにホルダが取り付けられ、ホルダに工具が取り付けられる。工作機械は、作業工具を随時交換しながらワークを加工する。以下、刃物台に保持される作業工具の組み合わせを「工具パターン」とよぶ。刃物台上において、ある作業工具と別の作業工具の取り付け位置を交換することを「内部交換」、刃物台上の作業工具と工具格納部に格納される予備工具を交換することを「外部交換」とよぶ。
【0007】
このような工作機械において、工具交換に要する時間を短くし、加工に関連する総時間を短くすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様における工作機械は、複数の工具を保持可能な複数のホルダを有する刃物台と、加工プログラムにしたがって、刃物台に保持される工具を制御し、ワークを加工する加工制御部と、複数の工具を格納する工具格納部と、工具を搬送可能な工具搬送部と、工具搬送順を示す搬送スケジュールを生成するスケジュール生成部と、搬送スケジュールにしたがって工具搬送部を制御することにより、刃物台における工具の保持位置を変更する工具搬送制御部と、を備える。
スケジュール生成部は、刃物台における交換前の工具の配置を示す事前配置情報と、交換後の工具の配置を示す目標配置情報にしたがって、刃物台に配置済みの工具を空きホルダに移動させる第1工程と、工具格納部に格納される工具を刃物台の空きホルダに保持させる第2工程と、刃物台のホルダ間において工具の保持位置を変更する第3工程と、工具格納部に格納される工具と刃物台に保持される工具を交換する第4工程と、を順番に実行する工具の搬送順として搬送スケジュールを生成する。
【0009】
本発明の別の態様における工作機械は、複数の工具を保持可能な複数のホルダを有する刃物台と、加工プログラムにしたがって、刃物台に保持される工具を制御し、ワークを加工する加工制御部と、複数の工具を格納する工具格納部と、工具を搬送可能な工具搬送部と、工具搬送順を示す搬送スケジュールを生成するスケジュール生成部と、搬送スケジュールにしたがって工具搬送部を制御することにより、刃物台における工具の保持位置を変更する工具搬送制御部と、を備える。
スケジュール生成部は、刃物台における交換前の工具の配置を示す事前配置情報と、交換後の工具の配置を示す目標配置情報にしたがって、刃物台のホルダ間において工具の保持位置を変更する第3工程と、工具格納部に格納される工具と刃物台に保持される工具を交換する第4工程と、を実行する工具搬送順として搬送スケジュールを生成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、工具の段取り等を含めた加工に関連する総時間を短くすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態における工作機械の概略構成を示す平面図である。
図2】工作機械の斜視図である。
図3】工具格納部および工具交換部の斜視図である。
図4図3に示すA部の拡大斜視図である。
図5】タレットの外観斜視図である。
図6】工作機械のハードウェア構成図である。
図7】情報処理装置の機能ブロック図である。
図8】工具搬送部の直進動作を説明するための模式図である。
図9】工具搬送部の旋回動作を説明するための模式図である。
図10】工具搬送部の回転動作を説明するための模式図である。
図11】搬送スケジュールの生成過程を示すフローチャートである。
図12】第1工程の処理過程を示すフローチャートである。
図13図12のS32における第1工程の詳細を示すフローチャートである。
図14】第1交換の第1搬送順を示す図である。
図15】第1交換の第2搬送順を示す図である。
図16】第2交換の第1搬送順を示す図である。
図17】第2交換の第2搬送順を示す図である。
図18】第3交換の第1搬送順を示す図である。
図19】第3交換の第2搬送順を示す図である。
図20】第4交換の第1搬送順を示す図である。
図21】第4交換の第2搬送順を示す図である。
図22】第2工程の処理過程を示すフローチャートである。
図23図22のS62における第2工程の詳細を示すフローチャートである。
図24】第2工程の2本搬送時における第1搬送順を示す図である。
図25】第2工程の2本搬送時における第2搬送順を示す図である。
図26】第3工程の処理過程を示すフローチャートである。
図27】第3工程の第1搬送順を示す図である。
図28】第3工程の第2搬送順を示す図である。
図29】第4工程の処理過程を示すフローチャートである。
図30】第4工程の第1搬送順を示す図である。
図31】第4工程の第2搬送順を示す図である。
図32】第1例における第5工程実行前の搬送スケジュールを示す図である。
図33】第1例における第5工程実行後の搬送スケジュールを示す図である。
図34】第2例における第5工程実行前の搬送スケジュールを示す図である。
図35】第2例における第5工程実行後の搬送スケジュールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態における工作機械は、ターニングセンタまたは複合加工機である。まず、図1から図5に関連して工作機械の構造を中心として説明する。図6以降に関連して、本実施形態における工具交換制御の詳細を説明する。
本実施形態における「交換」は工具Taのついている第1の場所と別の工具Tbがついている第2の場所の間で工具Taと工具Tbを交換する場合だけでなく、工具Taのついている第1の場所から工具がついていない第3の場所に工具Taを移す場合も含む。
【0013】
図1は、本実施形態における工作機械100の概略構成を示す平面図である。
工作機械100は、制御装置160、加工装置112、工具搬送部114および工具格納部106を備える。工具格納部106は、一般的には「マガジン」ともよばれる。制御装置160は、図6に関連して後述する情報処理装置118および加工制御部116に対応する。タレットベース102やタレット164は、X、Y、Z軸方向に移動可能である。タレットベース102とタレット164とを含めて刃物台230という場合と、タレット164のみを刃物台230という場合がある。図1は、X-Z方向平面に見た場合の平面図である。タレット164はZ軸を中心として回転可能にタレットベース102に設置される。工具格納部106(マガジン)は、タレットベース102のZ軸正方向側に設けられる。工具搬送部114は、工具Tを移送する。
【0014】
図2は、工作機械100の斜視図である。
角柱体型のタレット164には、その外周平面に、工具Tを保持可能に構成される複数のホルダ168を有する。ホルダ168はタレット本体から着脱可能に装着される。着脱位置PTのホルダ168に装着される工具Tが着脱対象となる。タレット164を矢示B-C方向(Z軸が回転軸)に回転させることにより、各ホルダ168を着脱位置PTに割り出すことができる。
【0015】
工具格納部106は、矢示D-E方向(X軸が回転軸)に回転可能に設けられた保持板170と、保持板170の周縁に等間隔に配設された保持ポット174と、保持板170を回転させる駆動モータ176(図3参照)を備える。保持ポット174は工具Tを保持することができる。保持ポット174は、X軸の負方向に突出する。着脱位置PMの保持ポット174にある工具Tが着脱対象となる。駆動モータ176が保持板170を回転させることにより、各保持ポット174を着脱位置PMに割り出すことができる。
【0016】
図3は、工具格納部106および工具搬送部114の斜視図である。
工具搬送部114は、タレットベース102および工具格納部106よりも、X軸の負方向側に設けられる(図1参照)。工具搬送部114は、Z軸に沿って設けられた送り機構178と、送り機構178によりZ軸に沿って移動される移動台180と、移動台180に取り付けられた第1ハンド182および第2ハンド194などを含む。以下においては、工具搬送部114は、移動台180と、移動台180に取り付けられる第1ハンド182および第2ハンド194を含み、工具Tを搬送するための機構である。
【0017】
送り機構178は、Z軸に平行に配設されるレール保持台184と、レール保持台184の下面に、Z軸に平行に取り付けられる2本のガイドレール186と、各ガイドレール186に係合するようにそれぞれ2個ずつ設けられたスライダ188と、レール保持台184に沿って配設されたボールねじ190と、ボールねじ190に螺合するボールナット192と、ボールねじ190の端部に連結して、ボールねじ190を軸線中心に回転させるサーボモータ196を備える。スライダ188は移動台180の上面に固設される。
【0018】
移動台180の下面には、矢示F-G方向(Y軸が回転軸)に回転可能、かつ、X軸方向に移動可能に保持部材198が配設される。保持部材198は、移動シリンダ200によりX軸方向に駆動される。保持部材198は、ラック&ピニオン機構などの機構を介し、駆動シリンダ202により駆動されて、矢示F-G方向に90度の角度範囲で旋回する。すなわち、保持部材198はX-Z方向に平面移動可能であり、かつ、F-G方向に回転可能に構成されている。図3は、保持部材198がF方向に回転したときの状態を示している。
【0019】
保持部材198には回転軸204が貫通して取り付けられる。回転軸204は、ラック&ピニオン機構などの機構を介し、駆動シリンダ206により駆動されて、矢示J-K方向に180度の角度範囲で回転する。
【0020】
図4は、図3に示すA部の拡大斜視図である。
回転軸204の端部には、回転軸204の軸心を中心とした点対称、かつ、上下平行となるように、第1ハンド182および第2ハンド194が取り付けられる。第1ハンド182および第2ハンド194は同一構成である。第1ハンド182は、工具Tを把持するための一対の把持爪208を有し、把持爪208により工具Tを把持可能である。同様にして、第2ハンド194も一対の把持爪210を有し、把持爪210により工具Tを把持可能である。
【0021】
保持部材198が矢示F方向側に回転したとき(図3図4に示す回転状態)、第1ハンド182と第2ハンド194それぞれの把持爪208および把持爪210はZ軸方向(把持爪208等により把持される工具Tの軸線方向と直交する直交方向)に沿った姿勢となる。保持部材198が矢示G方向側に回転したとき、第1ハンド182と第2ハンド194それぞれの把持爪208および把持爪210はX軸方向に沿った姿勢となる。
【0022】
保持部材198がX軸正方向側の移動端(この位置を「第1X位置」という)にあり、かつ、F方向の回転端にあるとき、着脱位置PMに割り出された保持ポット174に保持されている工具Tは、第1ハンド182または第2ハンド194により把持できる。
【0023】
また、第1ハンド182が上側において工具Tを把持し、着脱位置PMの保持ポット174に工具Tが保持されていないときには、第1ハンド182が把持する工具Tを着脱位置PMの保持ポット174(空の保持ポット)に収容できる。
【0024】
工具搬送部114がタレット164と工具格納部106の中間位置にあるとする。ここで、保持部材198をX軸負方向の移動端(この位置を「第2X位置」という)に移動させ、かつ、矢示F方向の回転端に回転させる。次に、工具搬送部114をZ軸正方向に移動させ、第1ハンド182に把持される工具Tの軸心(X方向)と保持ポット174の軸心を一致させる(このときのZ座標を「第1Z位置」という)。続いて、保持部材198をX軸正方向に「第1X位置」まで移動させて、第1ハンド182の工具Tを着脱位置PMの空の保持ポット174に装着する。このあと、工具搬送部114をZ軸負方向に移動させることにより(この位置を「第2Z位置」という)、第1ハンド182による工具Tの把持が解除される。
【0025】
一方、上側に第1ハンド182が位置し、第1ハンド182の把持爪208には工具Tが把持されておらず、着脱位置PMに工具Tが保持されているときには、着脱位置PMの工具Tを第1ハンド182により取り出すことができる。
【0026】
工具搬送部114がタレット164と工具格納部106と中間位置にあるとする。ここで、保持部材198を矢示F方向の回転端に回転させ(図3図4に示す回転状態)、工具搬送部114を「第2Z位置」に移動させた後、工具搬送部114を「第1X位置」に移動させ、次いで、工具搬送部114を前記「第1Z位置」に移動させる。これにより、着脱位置PMに装着された工具Tは、一対の把持爪208の開口部分に侵入し、把持爪208により把持される。次に、保持部材198を「第2X位置」に移動させる。これにより、保持ポット174に装着された工具Tは、一対の把持爪208により把持された状態で、保持ポット174から取り出される。
【0027】
タレット164では、着脱位置PTに割り出されたタレット164が半径方向に沿って工具Tを保持するタイプの場合には、工具搬送部114の保持部材198が「第1X位置」にあり、かつ、矢示F方向の回転端にある時、ホルダ168に保持された工具Tを、下側に位置する第1ハンド182または第2ハンド194によって把持できる。
【0028】
上側に第1ハンド182が位置し、下側に第2ハンド194が位置し、第1ハンド182が工具Tを把持し、第2ハンド194が工具Tを把持していない状態にあり、かつ、着脱位置PTに工具Tが保持されているときには、第1ハンド182に把持した工具Tと、着脱位置PTのホルダ168に保持される工具Tを交換できる。
【0029】
工具搬送部114がタレット164と工具格納部106との中間位置にあるとする。ここで、保持部材198を矢示F方向の回転端に回転させるとともに、「第2X位置」に移動させた状態で、工具搬送部114をZ軸負方向に設定された所定位置(この位置を「第3Z位置」という)まで移動させる。「第3Z位置」は、保持部材198を「第1X位置」に移動させたときに、下側に位置する第2ハンド194がホルダ168に保持された工具Tに対してZ軸正方向側の位置、言い換えれば、第2ハンド194が工具Tと干渉しない手前の位置にある。
【0030】
保持部材198を「第1X位置」に移動させた後、工具搬送部114をZ軸負方向に設定された所定位置(この位置を「第4Z位置」という)まで移動させる。これにより、着脱位置PTの工具Tが、一対の把持爪210の開口部分に侵入して、把持爪210によって把持される。次に、保持部材198を「第2X位置」まで移動させると、ホルダ168に装着された工具Tが、一対の把持爪210によりホルダ168から取り出される。
【0031】
次に、駆動シリンダ206は第1ハンド182と第2ハンド194とを上下反転させて、上側に第2ハンド194を位置させ、下側に第1ハンド182を位置させ、保持部材198を「第1X位置」に移動させる。これにより、第1ハンド182に把持された工具Tが着脱位置PTに設置される。次いで、工具搬送部114を「第3Z位置」に移動させると、第1ハンド182による工具Tの把持が解除される。以上の第1交換動作によって、第1ハンド182に把持された工具Tと、着脱位置PTの工具Tが交換される。なお、第2ハンド194に把持された工具Tは、上述した収納動作によって、工具格納部106に収納できる。
【0032】
タレット164の着脱位置PTに割り出されたホルダ168が、工具TをZ軸に沿って保持するタイプの場合には、保持部材198が矢示G方向の回転端にあり、かつ、「第1X位置」にある時に、このホルダ168に保持された工具Tを、下側に位置する第1ハンド182または第2ハンド194によって把持できる。
【0033】
上側に第1ハンド182が位置し、下側に第2ハンド194が位置し、ボールナット192が工具Tを把持し、第2ハンド194が工具Tを把持していない状態にあり、かつ、着脱位置PTに工具Tが保持されているときには、第1ハンド182に把持された工具Tと、着脱位置PTの工具Tを交換できる。
【0034】
工具搬送部114がタレット164と工具格納部106との中間位置にあるとする。ここで、保持部材198を矢示G方向の回転端に回転させるとともに、「第2X位置」に移動させ、工具搬送部114をZ軸負方向に設定された「第3Z位置」に移動させる。このとき、第2ハンド194はホルダ168に保持された工具Tを把持可能な位置にある。
【0035】
次に、保持部材198を「第1X位置」に移動させる。これにより、着脱位置PTの工具Tが、一対の把持爪210の開口部分に侵入し、把持爪210によって把持される。この後、保持部材198をZ軸負方向に設定された「第4Z位置」まで移動させると、ホルダ168に装着された工具Tは、把持爪210によりホルダ168から取り出される。
【0036】
次に、駆動シリンダ206により、第1ハンド182と第2ハンド194とを上下反転させて、上側に第2ハンド194を位置させ、下側に第1ハンド182を位置させ、工具搬送部114を「第3Z位置」に移動させる。これにより、第1ハンド182が把持する工具Tは着脱位置PTに装着される。次いで、保持部材198を「第2X位置」に移動させると、第1ハンド182による工具Tの把持が解除される。以上の第2交換動作によって、ボールナット192に把持された工具Tと、着脱位置PTの工具Tを交換される。第2ハンド194に把持された工具Tは、上述した収納動作によって、工具格納部106に収納できる。
【0037】
上述したように、工具搬送部114は「直進」「旋回」「回転」の3種類の動作が可能である。1つ目の「直進」は、工具搬送部114がレール保持台184(Z軸)に沿って直線移動する動作である。工具搬送部114を直線移動させることにより、タレット164と工具格納部106の間での工具搬送を行うことができる。
【0038】
2つ目の「旋回」は、工具搬送部114を矢印G-Fに示す方向に旋回させる動作である。つまり、本実施形態においては、工具搬送部114の一部である移動台180に回転軸があり、この回転軸を中心として回転することを「旋回」という。旋回は回転の1種であり、この旋回を第1回転と称してもよい。旋回動作により、タレット164における第1方向の第1ホルダ168Aと第2方向の第2ホルダ168Bのいずれかが操作対象として選ばれる(詳細後述)。3つ目の「回転」は、保持部材198に回転軸204があり、この回転軸204を中心とした回転より、第1ハンド182と第2ハンド194を上下反転させる動作である。この回転動作も回転の1種であるため、第2回転と称してもよい。回転動作により、第1ハンド182および第2ハンド194のいずれかが操作対象として選ばれる(詳細後述)。
本実施形態においては、第1回転の回転軸と第2回転の回転軸とは、交差する位置関係にある。第1回転の回転軸と第2回転の回転軸は立体交差する構成であってもよい。
【0039】
直進動作、旋回動作、回転動作にはそれぞれある程度の時間がかかるが、直進動作に要する時間がもっとも長い。本実施形態においては、旋回動作に要する時間は、回転動作に要する時間よりも長いものとする。
【0040】
各動作に要する時間の長さを指標化した数値としてあらかじめ「時間ポイント」を設定しておく。本実施形態においては、直進動作、旋回動作および回転動作それぞれの時間ポイントは、「5」「2」「1」であるとして説明する。たとえば、直進動作に要する実測時間が約5秒であるとき、直進動作の時間ポイントを5ポイントとして設定してもよい。時間ポイントは、直進動作、旋回動作および回転動作それぞれに要する時間の比を示す数値であればよい。時間ポイントの使い方については後述する。
【0041】
図5は、タレット164の外観斜視図である。
タレット164は、上述したように、Z軸を中心として回転可能にタレットベース102に接続される。タレット164は、12角柱形状を有し、その側面には差し込み穴を有する12個のステーション222(端面)が形成される。ステーション222にはホルダ168をそのまま差し込むこともできるし、カートリッジ220を差し込むこともできる。そして、カートリッジ220にホルダ168を差し込むこともできる。ホルダ168は、エンドミル、ドリルなどの工具Tを保持可能に構成される。ホルダ168に、工具Tのシャンク部を差し込むことで、タレット164には12本の工具Tが保持される。
【0042】
ステーション222に工具Tを直接固定するときには、工具Tの長手方向はタレット164の径方向である「第2方向」と一致する。以下、ステーション222に直接差し込まれたホルダ168のことを「第2ホルダ168B」とよぶ。一方、カートリッジ220に工具Tを固定するときには、工具Tの長手方向はタレット164の軸方向である「第1方向」と一致する。第1方向は、図5においてはZ軸負方向とも一致する。以下、カートリッジ220に差し込まれたホルダ168のことを「第1ホルダ168A」とよぶ。第1ホルダ168Aおよび第2ホルダ168Bは、同一部品であるが、カートリッジ220を介してステーション222に固定されるか否かによって工具の保持方向が変化する。
【0043】
第1ホルダ168Aに保持される工具Tは、中実のワークの内径側を削る。第2ホルダ168Bに保持される第2方向の工具は、中実のワークの外径側を削る。本実施形態においては、6本の第1ホルダ168Aと6本の第2ホルダ168Bがタレット164に設置されるため、6本の工具Tが内径加工に使用され、6本の工具Tが外径加工に使用される。
【0044】
なお、工具Tを装着されていないホルダ168のことを「空きホルダ」とよぶ。ホルダ168に工具Tを取り付けない場合、工具Tのシャンクを挿入する穴を塞ぐためのキャップ部材をホルダ168に取り付けてもよい。このように、「空きホルダ」は、工具Tを取り付けない状態またはホルダの穴にキャップ部材を取り付ける場合も含む。
【0045】
図6は、工作機械100のハードウェア構成図である。
工作機械100は、情報処理装置118、加工制御部116、加工装置112、工具搬送部114および工具格納部106を含む。数値制御装置として機能する加工制御部116は、加工プログラムにしたがって加工装置112に制御信号を送信する。加工装置112は、加工制御部116からの指示にしたがってタレットベース102を動かしてワークを加工する。また、加工制御部116は、工具管理部130(後述)からタレット164に保持させるべき工具Tの組み合わせを示す「工具パターン」を取得する。加工制御部116は、情報処理装置118から指示された工具パターンにしたがって、工具搬送部114に工具交換を実行させる。
【0046】
情報処理装置118は、加工制御部116を制御する。本実施形態においては、情報処理装置118は作業者にユーザインタフェース機能を提供するとともに工具パターンを管理する。工具格納部106は予備工具を格納する。工具搬送部114は移動台180を含む機構であり、いわゆるATC(Automatic Tool Changer)に対応する。工具搬送部114は、加工制御部116からの交換指示にしたがって、工具格納部106から予備工具を取り出し、タレット164の交換位置にある作業工具と予備工具を交換する。
【0047】
図7は、情報処理装置118の機能ブロック図である。
情報処理装置118の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コプロセッサ(co-processor)などの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0048】
なお、加工制御部116の各構成要素も、プロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され演算器に処理命令を供給するソフトウェアにより実現されてもよい。加工制御部116は、情報処理装置118とは別個の装置として構成されてもよい。
【0049】
情報処理装置118は、ユーザインタフェース処理部120、データ処理部122およびデータ格納部124を含む。
ユーザインタフェース処理部120は、ユーザからの操作を受け付けるほか、画像表示や音声出力など、ユーザインタフェースに関する処理を担当する。データ処理部122は、ユーザインタフェース処理部120により取得されたデータおよびデータ格納部124に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部122は、ユーザインタフェース処理部120およびデータ格納部124のインタフェースとしても機能する。データ格納部124は、各種プログラムと設定データを格納する。
【0050】
ユーザインタフェース処理部120は、入力部126および出力部128を含む。
入力部126は、タッチパネルあるいはハンドル等のハードデバイスを介してユーザからの入力を受け付ける。出力部128は、画像表示あるいは音声出力を介して、ユーザに各種情報を提供する。
【0051】
データ処理部122は、工具管理部130、スケジュール生成部132および工具搬送制御部134を含む。工具管理部130は、タレット164が保持すべき作業工具の組み合わせを示す工具パターンを管理する。スケジュール生成部132は、工具パターンの変更に際して、工具搬送部114の「直進」「旋回」「回転」の3動作を組み合わせて工具交換の手順を示す「搬送スケジュール」を生成する(後述)。工具搬送制御部134は、搬送スケジュールにしたがって、加工制御部116に工具搬送部114の制御を指示し、工具搬送部114(移動台180)に工具交換を実行させる。
【0052】
データ格納部124は、加工プログラムごとの工具パターンを保存する。加工制御部116は、加工プログラムの実行時において、工具搬送制御部134からの指示にしたがって工具交換を適宜実行する。このほか、データ格納部124は、工具格納部106に格納される予備工具の種類および状態(使用可否)に関する予備工具情報も保存する。
【0053】
図8は、工具搬送部114の直進動作を説明するための模式図である。
工具格納部106(マガジン)とタレット164は離隔しているので、工具搬送部114は工具格納部106とタレット164の間を往復することにより(直進)、工具を搬送する。図8においては、第2ハンド194は工具格納部106側(以下、「予備側」とよぶ)、第1ハンド182はタレット164側(以下、「作業側」とよぶ)に把持爪を有している。以下、予備側に向いているハンドを「予備ハンド」、作業側に向いているハンドを「作業ハンド」ともよぶ。
【0054】
本実施形態における「搬送」とは、工具搬送部114が実際に工具Tを持ち運ぶ場合だけでなく、工具搬送部114が工具Tを保持しない状態で工具格納部106とタレット164の間を移動する場合も含む。
【0055】
工具格納部106の着脱位置PMに工具が割り出され、かつ、第2ハンド194(予備ハンド)が工具を保持していないとする(以下、「空状態」とよぶ)。工具搬送部114を工具格納部106(予備側)に向けて直進移動させると、工具格納部106の着脱位置PMにある予備工具は第2ハンド194(予備ハンド)の把持爪に挟まれる。第2ハンド194に工具を挟ませたあと、工具搬送部114がタレット164(作業側)に向けて移動すると、第2ハンド194は工具を保持したまま移動する。このような制御方法により、工具格納部106に格納される工具は、工具搬送部114の予備ハンド(図8では第2ハンド194)により取り出される。
【0056】
別例として、工具格納部106の着脱位置PMが空状態であり、かつ、第2ハンド194(予備ハンド)が工具を保持しているとする。このとき工具搬送部114を工具格納部106(予備側)に向けて移動させると、第2ハンド194(予備ハンド)に保持されている工具は工具格納部106の着脱位置PM(空状態)に挿入される。工具の挿入後、工具搬送部114をタレット164(作業側)に向けて移動させると、工具は着脱位置PMの保持ポット174に取り残される。このような制御方法により、工具搬送部114の予備ハンドが保持する工具は工具格納部106に格納される。
【0057】
タレット164に工具を装着またはタレット164から工具を取り出すときも同様である。タレット164の着脱位置PTにおいて第2ホルダ168B(第2方向)が工具を保持しており、かつ、第1ハンド182(作業ハンド)が空状態にあるとする。ここで工具搬送部114をタレット164に向けて移動させると、タレット164の着脱位置PTにある工具は第1ハンド182(作業ハンド)に挿入される。工具の挿入後、加工制御部116が工具搬送部114を工具格納部106に向けて直進させると、第1ハンド182により工具は運搬される。
【0058】
別例としてタレット164の着脱位置PTにおいて第2ホルダ168Bが空状態にあり、かつ、工具搬送部114の第1ハンド182(作業ハンド)が工具を保持しているとする。工具搬送部114をタレット164に向けて移動させることにより、第1ハンド182(作業ハンド)に保持されている工具は着脱位置PTの第2ホルダ168Bに取り付けられる。工具を第2ホルダ168Bに取り付けたあと、加工制御部116が工具搬送部114を工具格納部106に向けて直進させると、工具はタレット164(第2ホルダ168B)に残存する。
【0059】
図9は、工具搬送部114の旋回動作を説明するための模式図である。
加工制御部116は、図4に関連して説明したように、工具搬送部114を矢印G-F方向に軸回転(Y軸を中心とした回転)させることができる(旋回動作)。加工制御部116は、工具搬送部114を旋回させることにより、第1ホルダ168A(第1方向)に保持される第1方向の工具と、第2ホルダ168B(第2方向)に保持される第2方向の工具のいずれかを操作対象として選ぶことができる。
【0060】
タレット164から第2方向の工具(第2ホルダ168B)を取り出す場合には、上述したように、加工制御部116はまずタレット164を回転させ、着脱位置PTに工具Tを割り出す。続いて、第1ハンド182(作業ハンド)に工具を挿入し、工具搬送部114を工具格納部106側に移動させることで、第2方向の工具をタレット164から取り外すことができる。空状態の第2ホルダ168Bに工具を取り付ける場合には、タレット164を回転させて着脱位置PTに空状態の第2ホルダ168Bを割り出し、第1ハンド182(作業ハンド)から工具を第2ホルダ168Bに挿入し、工具搬送部114を工具格納部106側に移動させれば、工具を第2ホルダ168Bに取り付けることができる。
【0061】
タレット164から第1方向の工具T(第1ホルダ168A)を取り出す場合には、加工制御部116は工具搬送部114を旋回させ、工具搬送部114の回転軸204をZ軸方向に一致させる。続いて、着脱位置PTに割り出された工具T(第1ホルダ168A)を第1ハンド182(作業ハンド)に挿入させ、タレット164を工具格納部106側(Z軸方向)に移動させることで、第1方向に取り付けられていた工具はタレット164から抜き取られる。
【0062】
タレット164の第1ホルダ168Aに工具を取り付ける場合には、第1ハンド182(作業ハンド)が保持する工具を第1ホルダ168Aに挿入したあと、タレット164を工具格納部106側に移動させることで、第1ハンド182から工具を抜き取って第1方向にてタレット164に工具を取り付けることができる。
【0063】
以下、工具搬送部114の旋回位置のうち、工具搬送部114の回転軸204がタレット164の軸方向(Z軸)と一致し、第1ホルダ168A(第1方向)の工具を操作可能な状態にあるときを「内径旋回状態」、工具搬送部114の回転軸204がタレット164の軸方向と直交し、第2ホルダ168B(第2方向)の工具を操作可能な状態にあるときを「外径旋回状態」と表記する。図8には外径旋回状態の工具搬送部114が示されており、図9には内径旋回状態に近い状態の工具搬送部114が示されている。
【0064】
図10は、工具搬送部114の回転動作を説明するための模式図である。
加工制御部116は、回転軸204を駆動することで第1ハンド182と第2ハンド194を上下反転させる。上述したように第1ハンド182と第2ハンド194の一方は予備側、他方は作業側となる。たとえば、第1ハンド182が工具TAを保持し、第2ハンド194が空状態にあるとする。この場合、第1ハンド182を作業ハンドに設定して工具TAをタレット164に嵌めたあと、回転動作によって、空状態の第2ハンド194を作業ハンドにすれば、タレット164に取り付けられている別の工具TBを第2ハンド194により取り外すことができる。
【0065】
図11は、搬送スケジュールの生成過程を示すフローチャートである。
タレット164において、ある工具パターンP1から別の工具パターンP2に変更するとき、工具交換が発生する。工具交換は、直進、旋回、回転の3動作を組み合わせにより実現される。本実施形態においては、タレット164における変更前の工具パターン(以下、「現在パターン」とよぶ)から変更後の工具パターン(以下、「目標パターン」とよぶ)に工具配置を変更するときの工具交換時間を最小化するために、実際の工具交換をするまえにスケジュール生成部132はあらかじめ搬送スケジュールを生成しておく。現在パターンは工具交換実行前の工具の配置を示す「事前配置情報」であり、目標パターンは工具交換実行後の工具の配置を示す「目標配置情報」である。
【0066】
事前配置情報としての現在パターンは、刃物台230における各ステーション222、114の第1ハンド182と第2ハンド194および工具格納部106における工具Tの取付位置であるポットそれぞれにおける工具Tの配置状態を示す。これら複数の取付位置において工具Tが取り付けられているか否か、どの工具が取り付けられているかも事前配置情報の一種として取り扱われる。上述したように工具Tの代わりにキャップ部材が配置されるか否かも事前配置情報の一部として取り扱われる。目標配置情報としての目標パターンについても同様であるが、詳細は図14以降に関連して後述する。
【0067】
より具体的には、工具管理部130は、ワークの加工工程のうち、加工工程1では工具パターンP1を設定し、次の加工工程2では工具パターンP2を設定することをあらかじめ工具管理情報としてデータ格納部124に登録しておく。すなわち、実際にワークを加工する前に、工具管理部130は加工工程ごとの工具パターンP1、P2、P3・・・を定義しておく。
【0068】
スケジュール生成部132は、ある工具パターンP1(現在パターン)から別の工具パターンP2(目標パターン)に変化させるときの工具交換時間(作業工数および作業時間)を最小化するための工具搬送順を後述の方法により定めておき、これを搬送スケジュールとしてデータ格納部124に登録しておく。たとえば、工具パターンP1から工具パターンP2に変更するときの搬送スケジュールQ(P1,P2)、工具パターンP2から工具パターンP3に変更するときの搬送スケジュールQ(P2,P3)・・・をスケジュール生成部132はあらかじめ作成しておく。
【0069】
工具パターンP1から工具パターンP2へ変更するときには、工具搬送制御部134は搬送スケジュールQ(P1,P2)にしたがって工具搬送部114の制御を加工制御部116に指示することにより、工具交換が実行される。
【0070】
スケジュール生成部132は、以下に示す第1工程から第5工程のシミュレーションを行った上で、工具交換時間のなるべく短い搬送スケジュールを確定させる。スケジュール生成部132は、まず、あるステーション222(ホルダ168)に取り付けられる工具を、工具が取り付けられていない別のステーション222(以下、「空ST」と表記する)に移動させる第1工程について工具搬送順を決定する(S10)。第1工程の詳細は、図12から図21に関連して後述する。なお、ここでいう空STは空きホルダと同義である。
【0071】
次に、スケジュール生成部132は、工具格納部106に格納される予備工具を、タレット164の空ST、すなわち、工具Tが保持されていない空きホルダに移動させる第2工程について工具搬送順を決定する(S12)。第2工程の詳細は、図22から図25に関連して後述する。
【0072】
続いて、スケジュール生成部132は、タレット164に取り付けられる工具同士を内部交換する第3工程について工具搬送順を決定する(S14)。第3工程の詳細は、図26から図28に関連して後述する。
【0073】
更に、スケジュール生成部132は、タレット164上の作業工具と工具格納部106の予備工具を外部交換する第4工程について工具搬送順を決定する(S16)。第4工程の詳細は、図29から図31に関連して後述する。
【0074】
最後に、スケジュール生成部132は、第1工程から第4工程を経て作成した搬送スケジュールを最適化するための第5工程を実行する(S18)。第5工程の詳細は、図32から図35に関連して後述する。なお、事前配置情報としての現在パターンおよび目標配置情報としての目標パターンによっては、第1工程から第4工程の一部はスキップされる場合もある(後述)。
【0075】
第5工程の終了後、搬送スケジュールが確定する。スケジュール生成部132は、確定した搬送スケジュールをデータ格納部124に保存する。
【0076】
図12は、第1工程の処理過程を示すフローチャートである。
ここでは、事前配置情報を示す工具パターンである現在パターンから目標配置情報を示す別の工具パターンである目標パターンへの変更を想定して説明する。まず、現在パターンにおいて空STが存在するとき(S30のY)、第1工程が実行される(S32)。空STが存在しないときには(S30のN)、第1工程はスキップされる。
【0077】
図13は、図12のS32における第1工程の詳細を示すフローチャートである。
スケジュール生成部132は、現在パターンと目標パターンの間に第1条件が成立するとき(S34のY)、第1交換(後述)のための工具搬送順を生成する(S36)。第1交換の手順を決めたあと、スケジュール生成部132は第1交換実行後の工具パターンとして現在パターンを更新する。第1条件とは、工具搬送部114の現在の旋回位置において操作可能な作業工具を、現在の旋回位置において操作可能な空STに移動可能であることを意味する。たとえば、工具搬送部114が内径旋回位置にあるときであって、第1ホルダ168A(内径)に保持される作業工具を別の第1ホルダ168A(空ST)(内径)に移動させる必要があるとき、第1条件が成立する。第1交換の手順を決めた後、処理はS34に戻る。
【0078】
スケジュール生成部132は、現在パターンと目標パターンの間に第2条件が成立するとき(S34のN、S38のY)、第2交換(後述)のための工具搬送順を生成する(S40)。第2交換の手順を決めたあと、スケジュール生成部132は現在パターンを更新する。第2条件は、工具搬送部114の現在の旋回位置において操作可能な作業工具を、現在の旋回位置とは異なる旋回位置において操作可能な空STに移動可能であることを意味する。たとえば、工具搬送部114の旋回位置が内径旋回位置にあるときであって、第1ホルダ168A(内径)に保持される作業工具を別の第2ホルダ168B(空ST)(外径)に移動させるとき、第2条件が成立する。第2交換の手順を決めた後、処理はS34に戻る。
【0079】
スケジュール生成部132は、現在パターンと目標パターンの間に第3条件が成立するとき(S38のN、S42のY)、第3交換(後述)のための工具搬送順を生成する(S44)。第3交換の手順を決めたあと、スケジュール生成部132は現在パターンを更新する。第3条件は、工具搬送部114の現在の旋回位置とは異なる旋回位置において操作可能な作業工具を、現在の旋回位置とは異なる旋回位置において操作可能な空STに移動可能であることを意味する。たとえば、工具搬送部114の旋回位置が内径旋回位置にあるときであって、第2ホルダ168B(外径)に保持される作業工具を別の第2ホルダ168B(空ST)(外径)に移動させるとき、第3条件が成立する。第3交換の手順を決めた後、処理はS34に戻る。
【0080】
スケジュール生成部132は、現在パターンと目標パターンの間に第4条件が成立するとき(S42のN、S46のY)、第4交換(後述)のための工具搬送順を生成する(S48)。第4交換の手順を決めたあと、スケジュール生成部132は現在パターンを更新する。第4条件は、工具搬送部114の現在の旋回位置とは異なる旋回位置において操作可能な作業工具を、現在の旋回位置において操作可能な空STに移動可能であることを意味する。たとえば、工具搬送部114の旋回位置が内径旋回位置にあるときであって、第2ホルダ168B(外径)に保持される作業工具を別の第1ホルダ168A(空ST)(内径)に移動させるとき、第4条件が成立する。第4交換の手順を決めた後、処理はS34に戻る。
【0081】
以上の処理過程を経て、更新後の現在パターンにおいて作業工具のいずれかを空STに移動させる必要がなくなれば(S46のN、S50のY)、第1処理は終了する。移動先となるべき空STが残っていれば(S50のN)、処理はS34に戻る。
【0082】
図14は、第1交換の第1搬送順を示す図である。
図14に示す事前配置情報としての現在パターンにおいては、ステーションST1(外径)に工具T5、ステーションST2(外径)に工具T6が取り付けられている。目標配置情報としての目標パターンにおいては、ステーションST5(外径)に工具T5、ステーションST6(外径)に工具T6が取り付けられる。すなわち、図14は、外径加工用として取り付けられている2つの工具を別の外形加工用のホルダ168Bに移動させる状況を示している。
【0083】
工具交換開始時において、工具搬送部114の旋回位置は外径旋回状態にあり、第1ハンド182は予備ハンド、第2ハンド194は作業ハンドである。工具搬送部114自体はタレット164側(作業側)に位置している。スケジュール生成部132は、現在パターンおよび目標パターンにおいて第1条件が成立するか判断し、第1条件が成立するときには現在パターンから目標パターンに工具パターンを変化させるための工具搬送順を事前に作成する。ここでは、スケジュール生成部132は、図14に示す第1搬送順と次の図15に示す第2搬送順の2種類の工具搬送順を作成し、どちらか優れている方を採用する。
【0084】
図14の現在パターンおよび目標パターンによれば、工具搬送部114が外径旋回状態にあり、現在パターンにおいて工具T5、T6は外径側にあり、かつ、移動先となるステーションST5、ST6も外径側であるため、第1条件が成立している。第1搬送順として、スケジュール生成部132は、工具搬送部114に工具T5、T6を2本同時に把持させることなく、1本ずつ工具を運ぶ場合を想定する。
【0085】
スケジュール生成部132が搬送スケジュールを作成したあと、加工制御部116は搬送スケジュールにしたがって工具交換を実行する。
【0086】
ステップ1においては、第2ハンド194(作業ハンド)により、ステーションST1(外径)から工具T5(外径)が取り外される。より正確に言えば、スケジュール生成部132は、ステップ1として第2ハンド194によりステーションST1(外径)から工具T5(外径)を取り出すと想定して、工具搬送順のシミュレーションを行う。
【0087】
ステップ2では、第2ハンド194(作業ハンド)が保持する工具T5(外径)をステーションST5(外径)に取り付ける。ステップ3では、第2ハンド194(作業ハンド)により、ステーションST2(外径)にある工具T6(外径)を取り外す。ステップ4では、第2ハンド194(作業ハンド)により工具T6(外径)をステーションST6(外径)に取り付ける。
【0088】
このように、スケジュール生成部132は、現在パターンおよび目標パターンと、工具搬送部114の初期状態に基づいて、1本ずつ作業工具の位置を変更する第1搬送順をシミュレーションする。シミュレーションの結果、第1搬送順に要する作業工数(ステップ数)は合計4ステップであることが判明する。
【0089】
図15は、第1交換の第2搬送順を示す図である。
図15に示す第2搬送順では、スケジュール生成部132は、工具搬送部114が工具T5、T6を2本まとめて操作する場合を想定する。
【0090】
ステップ1は第1搬送順と同じである。ステップ2では、回転動作により、第1ハンド182を作業ハンドに設定変更する。回転動作の結果、第2ハンド194が予備ハンド、第1ハンド182が作業ハンドとなる。第2ハンド194(予備ハンド)は工具T5を保持しており、第1ハンド182(作業ハンド)は空状態である。ステップ3では、ステーションST2(外径)にある工具T6(外径)を第1ハンド182(作業ハンド)により取り外す。この段階で、第1ハンド182(作業ハンド)には工具T6、第2ハンド194(予備ハンド)には工具T5が保持されている。
【0091】
ステップ4では、第1ハンド182(作業ハンド)によりステーションST6(外径)に工具T6が取り付けられる。ステップ5では、回転動作により、工具T5を保持する第2ハンド194を作業ハンドに変更する。最後のステップ6では、第2ハンド194(作業ハンド)によりステーションST5(外径)に工具T5が取り付けられる。
【0092】
スケジュール生成部132は、現在パターンおよび目標パターンと、工具搬送部114の状態に基づいて、2本の工具をまとめて移動させる第2搬送順もシミュレーションする。第1搬送順の作業工数は合計4ステップだったが、第2搬送順の作業工数は合計6ステップである。したがって、第2搬送順よりも第1搬送順の方が、工具交換時間が短くなる。これは、第2搬送順においては、ステップ2,5において回転動作が入るためである。
【0093】
スケジュール生成部132は、現在パターンおよび目標パターンにおいて第1条件が成立するときには、1本ずつ工具を移動させる第1搬送順と、2本まとめて工具を移動させる第2搬送順それぞれについて工具搬送部114の動作をシミュレーションし、作業工数(ステップ数)の少ない方の工具搬送順を採用する。図14図15に示した現在パターンと目標パターンの場合には、第1搬送順が採用される。搬送順の決定後は、交換後の工具パターンが次回の現在パターンとなり、以降の処理が実行される。
【0094】
図16は、第2交換の第1搬送順を示す図である。
図16に示す現在パターンにおいては、ステーションST1(外径)に工具T7、ステーションST2(外径)に工具T8が取り付けられている。目標パターンにおいては、ステーションST7(内径)に工具T7、ステーションST8(内径)に工具T8が取り付けられる。
工具交換開始時において、工具搬送部114は外径旋回状態にあり、第1ハンド182は予備ハンド、第2ハンド194は作業ハンドである。工具搬送部114自体はタレット164側に位置している。
【0095】
工具搬送部114が外径旋回状態にあり、現在パターンにおいて工具T5、T6は外径側にあり、かつ、移動先となるステーションST7、ST8は内径側であるため、第2条件が成立する。図16に示す第1搬送順においては、工具搬送部114が工具T7、T8を1本ずつ運ぶ場合が想定されている。
【0096】
ステップ1においては、第2ハンド194(作業ハンド)により、ステーションST1(外径)にある工具T7(外径)が取り出される。ステップ2では、工具搬送部114は旋回動作により内径旋回状態に設定される。ステップ3では、第2ハンド194(作業ハンド)によりステーションST7(内径)に工具T7が取り付けられる。ステップ4では、工具搬送部114は再旋回し、外径旋回状態に設定される。ステップ5で第2ハンド194(作業ハンド)によりステーションST2(外径)から工具T8を取り外し、ステップ6で工具搬送部114を内径旋回状態に設定し、ステップ7でステーションST8(内径)に工具T8が取り付けられる。
【0097】
このように、スケジュール生成部132は、現在パターンおよび目標パターンと、工具搬送部114の状態に基づいて、工具搬送部114により1本ずつ工具の位置を変更する第1搬送順をシミュレーションする。図16に示した第1搬送順の作業工数は合計7ステップである。
【0098】
図17は、第2交換の第2搬送順を示す図である。
図17に示す第2搬送順では、スケジュール生成部132は、工具搬送部114が工具T7、T8を2本同時に運ぶ場合を想定する。
【0099】
ステップ1は第1搬送順と同じである。ステップ2では、回転動作により、工具T7を保持する第2ハンド194が予備ハンドとなり、空状態の第1ハンド182が作業ハンドとなる。ステップ3では、ステーションST2(外径)にある工具T8(外径)が第1ハンド182(作業ハンド)により取り出される。
【0100】
ステップ4で工具搬送部114は内径旋回状態に設定され、ステップ5では第1ハンド182(作業ハンド)からステーションST8(内径)に工具T8が取り付けられる。ステップ6では回転動作により、工具T7を保持する第2ハンド194が作業ハンドとなる。ステップ7では、第2ハンド194(作業ハンド)からステーションST7(内径側)に工具T7が取り付けられる。
【0101】
第2交換においては、図16に示した第1搬送順の作業工数と図17に示した第2搬送順の作業工数はどちらも合計7ステップである。この場合、スケジュール生成部132は、第1搬送順および第2搬送順の時間ポイントの合計値を計算する。第1搬送順では3回の旋回動作(2ポイント)が発生しているため、時間ポイントは合計6ポイントとなる。一方、第2搬送順では1回の旋回動作(2ポイント)と2回の回転動作(1ポイント)が発生するため、時間ポイントは合計4ポイントとなる。時間ポイントで比較した場合、第2搬送順の方が優れているので、スケジュール生成部132は第2交換については第2搬送順を採用する。搬送順の決定後は、交換後の工具パターンが次の処理のための現在パターンとなる。
【0102】
なお、旋回動作よりも回転動作の方に時間がかかる場合には、スケジュール生成部132は第1例として示した第1搬送順を採用する。
【0103】
図18は、第3交換の第1搬送順を示す図である。
図16に示す現在パターンにおいては、ステーションST7(内径)に工具T10、ステーションST8(内径)に工具T11が取り付けられている。目標パターンにおいては、ステーションST10(内径)に工具T10、ステーションST11(内径)に工具T11が取り付けられる。
工具交換開始時において、工具搬送部114は外径旋回状態にあり、第1ハンド182は予備ハンド、第2ハンド194は作業ハンドである。工具搬送部114自体はタレット164側(作業側)に位置している。
【0104】
工具搬送部114が外径旋回状態にあり、現在パターンにおいて工具T10、T11は内径側にあり、かつ、移動先となるステーションST10、ST11も内径側であるため、第3条件が成立する。図18に示す第1搬送順では、工具搬送部114が工具T10、T11を1本ずつ運ぶ場合を想定している。
【0105】
ステップ1において、旋回動作により、工具搬送部114を内径旋回状態に設定する。ステップ2において第2ハンド194(作業ハンド)によりステーションST7(内径側)から工具T10を取り外す。ステップ3では、第2ハンド194(作業ハンド)により工具T7をステーションST10(内径側)に取り付ける。ステップ4でステーションST8(内径)の工具T11を第2ハンド194(作業ハンド)により取り外し、ステップ5で工具T11をステーションST11(内径)に取り付ける。
【0106】
このように、スケジュール生成部132は、現在パターンおよび目標パターンと、工具搬送部114の状態に基づいて、工具搬送部114により1本ずつ工具の位置を変更する第1搬送順をシミュレーションする。図18に示した第1搬送順の作業工数は合計5ステップである。
【0107】
図19は、第3交換の第2搬送順を示す図である。
図19に示す第2搬送順では、工具搬送部114が工具T10、T11を2本同時に運ぶ場合を想定する。
【0108】
ステップ1、2は第1搬送順と同じである。ステップ3では、回転動作を行い、工具T10を保持する第2ハンド194を予備ハンド、空状態の第1ハンド182を作業ハンドとする。ステップ4では、ステーションST8(内径)にある工具T11を第1ハンド182(作業ハンド)により取り外す。
【0109】
ステップ5で第1ハンド182(作業ハンド)によりステーションST11に工具T11を取り付ける。ステップ6では回転動作により、工具T10を保持する第2ハンド194を作業ハンドに設定する。ステップ7では、第2ハンド194(作業ハンド)によりステーションST10(内径側)に工具T10を取り付ける。
【0110】
図18に示した第1搬送順の作業工数は合計5ステップ、図19に示した第2搬送順の作業工数は合計7ステップである。したがって、スケジュール生成部132は、第1搬送順を採用する。搬送順の決定後は、交換後の工具パターンが次の現在パターンとなる。
【0111】
図20は、第4交換の第1搬送順を示す図である。
図20に示す現在パターンにおいては、ステーションST7(内径)に工具T1、ステーションST8(内径)に工具T2が取り付けられている。目標パターンにおいては、ステーションST1(外径)に工具T1、ステーションST2(外径)に工具T2が取り付けられる。
工具交換開始時において、工具搬送部114は外径旋回状態にあり、第1ハンド182が予備ハンド、第2ハンド194が作業ハンドとなっている。工具搬送部114自体はタレット164側(作業側)に位置している。
【0112】
工具搬送部114が外径旋回状態にあり、現在パターンにおいて工具T1、T2は内径側にあり、かつ、移動先となるステーションST1、ST2は外径側であるため、第4条件が成立する。図20に示す第1搬送順では、工具搬送部114が工具T1、T2を1本ずつ運ぶ場合を想定する。
【0113】
ステップ1においては、旋回動作により、工具搬送部114を内径旋回状態に設定する。ステップ2で第2ハンド194(作業ハンド)によりステーションST1(内径)から工具T1を取り外し、ステップ3において工具搬送部114は外径旋回状態に再設定される。ステップ4において第2ハンド194(作業ハンド)により工具T1をステーションST1(外径)に取り付ける。
【0114】
ステップ5では工具搬送部114を内径旋回状態に戻し、ステップ6にてステーションST8(内径)の工具T2を第2ハンド194(作業ハンド)により取り外す。ステップ7にて工具搬送部114を外径旋回状態に戻し、ステップ8にて第2ハンド194(作業ハンド)により工具T2はステーションST2(外径)に取り付けられる。
【0115】
このように、スケジュール生成部132は、現在パターンおよび目標パターンと、工具搬送部114の状態に基づいて、工具搬送部114により1本ずつ工具の位置を変更する第1搬送順をシミュレーションする。図20に示した第1搬送順の作業工数は合計8ステップである。
【0116】
図21は、第4交換の第2搬送順を示す図である。
図21に示す第2搬送順では、工具搬送部114が工具T1、T2を2本同時に運ぶ場合を想定する。
【0117】
ステップ1、2は第1搬送順と同じである。ステップ3では、回転動作により工具T1を保持する第2ハンド194が予備ハンド、空状態の第1ハンド182が作業ハンドに設定される。ステップ4では、ステーションST8(内径)にある工具T2を第1ハンド182(作業ハンド)により取り外す。
【0118】
ステップ5では工具搬送部114を外径旋回状態に戻し、ステップ6では第1ハンド182(作業ハンド)によってステーションST2(外径)に工具T2を取り付ける。ステップ7では回転動作により、工具T1を保持する第2ハンド194を作業ハンドに設定する。ステップ8では、第2ハンド194(作業ハンド)によりステーションST1(外径)に工具T1を取り付ける。
【0119】
第4交換においては、図20に示した第1搬送順の作業工数と図21に示した第2搬送順の作業工数はどちらも合計7ステップである。第1搬送順では4回の旋回動作(2ポイント)が発生するため、時間ポイントは合計8ポイントとなる。一方、第2搬送順では2回の旋回動作(2ポイント)と2回の回転動作(1ポイント)があるため、時間ポイントは合計6ポイントとなる。時間ポイントで比較した場合、第2搬送順の方が優れている。搬送順の決定後は、目標パターンが次の現在パターンとなる。
なお、旋回動作よりも回転動作の方に時間がかかる場合には、スケジュール生成部132は第1搬送順を採用する。
【0120】
図22は、第2工程の処理過程を示すフローチャートである。
ここでは、第1工程の実行後、または、第1工程のスキップ後の現在パターンにおいて空STが存在するとき(S60のY)、第2工程が実行される(S62)。空STが存在しないときには(S60のN)、第2工程はスキップされる。
【0121】
図23は、図22のS62における第2工程の詳細を示すフローチャートである。
スケジュール生成部132は、タレット164において2以上の空STが存在するときには(S70のY)、工具格納部106から2本の工具を取り出して搬送した上で工具をタレット164に取り付ける(S72)。工具装着後、スケジュール生成部132は現在パターンを更新し、処理はS70に戻る。
【0122】
スケジュール生成部132は、タレット164において1本だけ空STが存在するときには(S70のN、S74のY)、工具格納部106から1本の工具を取り出して搬送した上で外部交換を実行する(S76)。工具の装着後、スケジュール生成部132は現在パターンを更新し、処理はS34に戻る。タレット164に空STが残っていないときには(S74のN)、第2工程は終了する。
【0123】
図24は、第2工程の2本搬送時における第1搬送順を示す図である。
図24に示す事前配置情報としての現在パターンにおいては、ステーションST1(外径)、ステーションST2(外径)、ステーションST7(内径)およびステーションST8(内径)は、いずれも空STである。また、工具格納部106の保持ポットMG1、MG2、MG3、MG4には工具T1、T2、T7、T8が保持されている。目標配置情報としての目標パターンにおいては、ステーションST1(外径)に工具T1、ステーションST2(外径)に工具T2、ステーションST7(内径)に工具T7、ステーションST8(内径)に工具T8が取り付けられる。
工具交換開始時において、工具搬送部114は外径旋回状態にあり、第1ハンド182は予備ハンド、第2ハンド194は作業ハンドに設定されている。工具搬送部114自体は工具格納部106側(予備側)に位置している。
【0124】
図24および次の図25では、図23のS72における工具の2本搬送に対応するシミュレーション結果を示す。図24に示す第1搬送順では、ステーションST1(外径)とステーションST2(外径)に工具T1、T2を取り付けたあと、ステーションST7(内径)とステーションST8(内径)に工具T7、T8を取り付ける場合を想定する。
【0125】
ステップ1において第1ハンド182(予備ハンド)により保持ポッドMG1から工具T1を取り出し、ステップ2では回転動作により第2ハンド194を予備ハンドに設定し、ステップ3において第2ハンド194により保持ポッドMG2から工具T2を取り出す。
【0126】
ステップ4において、第1ハンド182(作業ハンド)に工具T2、第2ハンド194(予備ハンド)に工具T1を保持した状態で、工具搬送部114をタレット164側に直進移動させる。ステップ5で第1ハンド182(作業ハンド)により工具T1をステーションST1(外径)に取り付け、ステップ6で回転動作により第2ハンド194を作業ハンドに設定し、ステップ7で第2ハンド194(作業ハンド)により工具T2をステーションST2(外径)に取り付ける。ステップ8において、工具搬送部114は工具格納部106側に戻る。
【0127】
ステップ9で第1ハンド182(予備ハンド)により保持ポッドMG3から工具T7を取り出し、ステップ10で回転動作を実行して第2ハンド194を予備ハンドに設定し、ステップ11で第2ハンド194(予備ハンド)により保持ポッドMG4から工具T8を取り出す。この段階において第1ハンド182(作業ハンド)は工具T7を保持し、第2ハンド194(予備ハンド)は工具T8を保持している。
【0128】
ステップ12で工具搬送部114をタレット164に向けて直進させ、ステップ13で工具搬送部114を内径旋回状態に設定し、ステップ14にて第1ハンド182(作業ハンド)によりステーションST7(内径)に工具T7を取り付ける。ステップ15で工具搬送部114を回転させて第2ハンド194を作業ハンドに設定し、ステップ16にて第2ハンド194(作業ハンド)によりステーションST8(内径)に工具T8を取り付ける。
【0129】
第1搬送順においては、外径側の工具T1、T2を工具格納部106からタレット164に取り付けたあと、内径側の工具T7、T8を取り付けることで、合計16ステップにより現在パターンから目標パターンに変更可能である。
【0130】
図25は、第2工程の2本搬送時における第2搬送順を示す図である。
図25に示す第2搬送順では、ステーションST1(外径)とステーションST7(内径)に工具T1、T7を取り付けたあと、ステーションST2(外径)とステーションST8(内径)に工具T2、T8を取り付ける場合を想定する。
【0131】
ステップ1、2は第1搬送順と同じである。ステップ3では保持ポッドMG3から第2ハンド194(予備ハンド)により工具T7を取り出し、ステップ4で工具搬送部114は工具T1、T7をタレット164側に運搬する。ステップ5では第1ハンド182(作業ハンド)により工具T1をステーションST1(外径)に取り付け、ステップ6で内径旋回状態に設定し、ステップ7で回転動作を実行して第2ハンド194を作業ハンドとして設定し、ステップ8で第2ハンド194(作業ハンド)により工具T7をステーションST7(内径)に取り付ける。
【0132】
ステップ9で外径旋回状態に設定し、ステップ10で工具搬送部114は工具格納部106側に移動し、ステップ11で第1ハンド182(予備ハンド)により保持ポットMG2から工具T2を取り出し、ステップ12で回転動作を実行する。この回転動作により、第2ハンド194が予備ハンドとなる。ステップ13で第2ハンド194(予備ハンド)により保持ポッドMG4から工具T8を取り出し、ステップ14で工具搬送部114は工具T2、T8をタレット164側に運搬する。
【0133】
ステップ15で工具T2を第1ハンド182(作業ハンド)によりステーションST2(外径)に取り付けたあと、ステップ16で内径旋回状態となり、ステップ17で工具搬送部114を回転させることで第2ハンド194を作業ハンドに設定し、ステップ18で第2ハンド194(作業ハンド)により工具T8をステーションST8に取り付ける。
【0134】
第2搬送順においては、外径側の工具T1と内径側の工具T7を工具格納部106からタレット164に運んで取り付けたあと、外径側の工具T2と内径側の工具T8をタレット164に取り付けることが想定されている。
【0135】
第1搬送順と第2搬送順を比べた場合、第1搬送順の作業工数(ステップ数)の方が少ないため、スケジュール生成部132は第1搬送順を採用する。第2工程の2本搬送(図23のS72)においては、外径と外径、内径と内径のように同一方向にある複数の工具をまとめて運搬することで、旋回動作の回数を減らすことができる。
【0136】
図26は、第3工程の処理過程を示すフローチャートである。
ここでは、第2工程の実行後、または、第2工程のスキップ後における工具パターンにおいて内部交換の必要があるとき(S80のY)、すなわち、あるステーションに取り付けられる工具TAと別のステーションに取り付けられる工具TBを位置交換する必要があるとき、第3工程が実行される(S82)。内部交換の必要性がないときには(S80のN)、第3工程はスキップされる。
【0137】
図27は、第3工程の第1搬送順を示す図である。
図27に示す現在パターンにおいては、ステーションST1(外径)、ステーションST2(外径)、ステーションST3(外径)に工具T3、T1、T2が取り付けられている。目標パターンにおいては、ステーションST1(外径)に工具T1、ステーションST2(外径)に工具T2、ステーションST3(外径)に工具T3が取り付けられる。
工具交換開始時において、工具搬送部114は外径旋回状態にあり、第1ハンド182は予備ハンド、第2ハンド194は作業ハンドとなっている。工具搬送部114自体はタレット164側(作業側)に位置している。
【0138】
図27においては、3つの工具T1、T2、T3の取り付け位置を変更する場合に、工具T3を本来の移動先ではないステーションST2に一時的に取り付ける場合を想定している(以下、「仮設置」とよぶ)。
【0139】
ステップ1では第2ハンド194(作業ハンド)によりステーションST1(外径)から工具T3を取り出し、ステップ2で工具搬送部114を回転させて第1ハンド182を作業ハンドに設定し、ステップ3で第1ハンド182(作業ハンド)によりステーションST2(外径)から工具T1を取り出す。ステップ4で第1ハンド182(作業ハンド)により工具T1を空いたステーションST1(外径)に取り付け、ステップ5で工具搬送部114を回転させて第2ハンド194を作業ハンドに設定し、ステップ6で第2ハンド194(作業ハンド)により空いたステーションST2(外径)に工具T3を仮設置する。
【0140】
ステップ7で再びステーションST2から工具T3を第2ハンド194(作業ハンド)によって取り外し、ステップ8で工具搬送部114を回転させて第1ハンド182を作業ハンドとして設定し、ステップ9で第1ハンド182(作業ハンド)によりステーションST3(外径)から工具T2を取り出し、ステップ10で第1ハンド182(作業ハンド)により工具T2をステーションST2に取り付ける。
【0141】
ステップ11で工具搬送部114を回転させることで第2ハンド194を作業ハンドに設定し、ステップ12で第2ハンド194(作業ハンド)により工具T3をステーションST3に取り付ける。第3工程における第1搬送順の作業工数は12ステップとなる。
【0142】
図28は、第3工程の第2搬送順を示す図である。
図28に示す第2搬送順では、工具T1、T2、T3をステーションST1(外径)、ステーションST2(外径)、ステーションST3(外径)の間で循環させる方式を想定する。
【0143】
ステップ1からステップ4までは第1搬送順と同じである。ステップ5では第1ハンド182(作業ハンド)によりステーションST3(外径)から工具T2を取り出し、ステップ6で第1ハンド182(作業ハンド)によりステーションST2に工具T2が取り付ける。ステップ7で工具搬送部114を回転させて第2ハンド194を作業ハンドとして設定し、ステップ8で第2ハンド194(作業ハンド)により工具T3をステーションST3(外径)に取り付ける。
【0144】
第2搬送順の工数は8ステップである。したがって、スケジュール生成部132は第2搬送順を採用する。
【0145】
図29は、第4工程の処理過程を示すフローチャートである。
ここでは、第3工程の実行後、または、第3工程のスキップ後の工具パターンにおいて外部交換の必要があるとき(S90のY)、すなわち、あるステーションに取り付けられる工具TAと工具格納部106に格納される工具TBの交換が必要であるとき、第4工程が実行される(S92)。外部交換の必要性がないときには(S90のN)、第4工程はスキップされる。
【0146】
図30は、第4工程の第1搬送順を示す図である。
図30に示す現在パターンにおいては、ステーションST1(外径)、ステーションST2(外径)、ステーションST3(外径)には工具T15、T1、T2が取り付けられている。工具格納部106の保持ポッドMG1には工具T3が格納されている。目標パターンにおいては、ステーションST1(外径)に工具T1、ステーションST2(外径)に工具T2、ステーションST3(外径)に工具T3が取り付けられる。
工具交換開始時において、工具搬送部114は外径旋回状態にあり、第1ハンド182は予備ハンド、第2ハンド194は作業ハンドに設定されている。工具搬送部114自体は工具格納部106側(予備側)に位置している。
【0147】
第1搬送順においては、工具T1、T2がステーションST1、ST2にあり、工具T3が工具格納部106にある状態において、工具T1、T2を一時的に工具格納部106に退避させる(以下、「仮退避」とよぶ)。
【0148】
ステップ1で第1ハンド182(予備ハンド)により保持ポッドMG1から工具T3を取り出し、ステップ2で工具搬送部114により工具T3をタレット164側に運搬する。ステップ3でタレット164から第2ハンド194(作業ハンド)により工具T2を取り出し、ステップ4で工具搬送部114を回転させて第1ハンド182を作業ハンドに設定したあと、ステップ5で第1ハンド182(作業ハンド)により工具T3をステーションST3に取り付ける。
【0149】
続いて、ステップ6で工具搬送部114は工具T2を工具格納部106側に運搬し、ステップ7で第2ハンド194(予備ハンド)により工具T2を保持ポッドMG1に仮退避させ、ステップ8で第2ハンド194(予備ハンド)により工具T2を工具格納部106から取り出し、ステップ9で工具T2を再びタレット164側に運搬する。
【0150】
ステップ10で第1ハンド182(作業ハンド)によりステーションST2から工具T1を取り出し、ステップ11で工具搬送部114を回転させて第2ハンド194を作業ハンドに設定し、ステップ12で第2ハンド194(作業ハンド)により工具T2をステーションST2(外径)に取り付ける。ステップ13で工具T1を工具格納部106に運搬し、ステップ14で工具T1を工具格納部106に仮退避させる。
【0151】
ステップ15で第1ハンド182(予備ハンド)により工具T1を工具格納部106から取り出し、ステップ16で工具T1をタレット164側に運搬し、ステップ17で第2ハンド194(作業ハンド)によりタレット164から工具T15を取り外す。ステップ18で工具搬送部114を回転させて第1ハンド182を作業ハンドに設定し、ステップ19で第1ハンド182(作業ハンド)によりステーションST1(外径)に工具T1を取り付けたあと、ステップ20で工具T15を工具格納部106側に運搬し、ステップ21で第2ハンド194(予備ハンド)により工具T15を工具格納部106に格納する。
【0152】
図31は、第4工程の第2搬送順を示す図である。
ステップ1からステップ5までは第1搬送順と同じである。ステップ6で第1ハンド182(作業ハンド)によりステーションST2(外径)から工具T1を取り外す。ステップ7で工具搬送部114を回転させて第2ハンド194を作業ハンドに設定し、ステップ8で第2ハンド194(作業ハンド)によりステーションST2(外径)に工具T2を取り付け、ステップ9で空いた第2ハンド194(作業ハンド)によりステーションST1(外径)から工具T15を取り出す。
【0153】
ステップ10で工具搬送部114を回転させて第1ハンド182を作業ハンドに設定し、ステップ11で第1ハンド182(作業ハンド)によりステーションST1(外径)に工具T1を取り付ける。ステップ12で工具搬送部114は工具T15を工具格納部106に運搬し、ステップ13で第2ハンド194(予備ハンド)により工具T15を工具格納部106に格納する。
【0154】
以上のシミュレーションの結果、第1搬送順に比べて第2搬送順の方が作業工数(ステップ数)は格段に少ないことがわかる。したがって、スケジュール生成部132は第2搬送順を採用する。
【0155】
図32は、第1例における第5工程実行前の搬送スケジュールを示す図である。
第1工程から第4工程について上記アルゴリズムにて搬送スケジュールを生成したあと、スケジュール生成部132は更に搬送スケジュールを最適化可能か判断するための第5工程を実行する。最適化条件は任意に設定可能である。たとえば、直進動作(工具の運搬)に際しては、可能な限り工具を2本まとめて運搬する、タレット164から不要な工具を取り出すことを優先する、などが考えられる。
第5工程については、第1例および第2例に分けて説明する。第1例については図32図33に基づいて説明し、第2例については図34図35に基づいて説明する。
【0156】
第1例(図32図33)の現在パターンにおいては、ステーションST1(外径)、ステーションST2(外径)、ステーションST3(外径)には工具T15、T1、T2が取り付けられている。工具格納部106の保持ポッドMG1、MG2には工具T3、T4が格納されている。目標パターンにおいては、ステーションST1(外径)に工具T1、ステーションST2(外径)に工具T2、ステーションST3(外径)に工具T3、ステーションST4(外径)に工具T4が取り付けられる。
【0157】
工具交換開始時において、工具搬送部114は外径旋回状態にあり、第1ハンド182は予備ハンド、第2ハンド194は作業ハンドとなっている。工具搬送部114自体は工具格納部106側(予備側)に位置している。
【0158】
第1工程から第4工程を経た上で、図32に示す工具搬送順(搬送スケジュール)が生成されたとする。工具交換の合計ステップ数は18となる。スケジュール生成部132は、図32に示す搬送スケジュールが最適解であるか確認するために第5工程(最適化処理)を実行する。
【0159】
図33は、第1例における第5工程実行後の搬送スケジュールを示す図である。
第5工程実行前(最適化前)の搬送スケジュールにおいては、ステップ3において、工具搬送部114は第1ハンド182に工具T4を保持させた状態で回転し、ステップ4において第1ハンド182(作業ハンド)により工具T4をステーションST4に取り付ける。一方、第5工程実行後(最適化後)の搬送スケジュールでは、ステップ3において、工具搬送部114は工具T4に加えて工具T3も工具格納部106から取り出している。
【0160】
第5工程実行後の搬送スケジュールでは、工具搬送部114は工具T3、T4を工具格納部106から取り出したあと、2本まとめて運搬することで、合計ステップ数を16回に抑制できている。したがって、スケジュール生成部132は図32に示した第5工程実行前の搬送スケジュールではなく、第5工程実行後の搬送スケジュールを採用する。ただし、工具搬送部114が2本の工具を運搬することが最適とはいえない場合もある。第2例では、そのような場合について説明する。
【0161】
図34は、第2例における第5工程実行前の搬送スケジュールを示す図である。
第2例(図34図35)の現在パターンにおいては、ステーションST1(外径)、ステーションST7(内径)、ステーションST8(内径)には工具T15、T8、T7が取り付けられている。工具格納部106の保持ポッドMG1、MG2には工具T1、T9が格納されている。目標パターンにおいては、ステーションST1(外径)に工具T1、ステーションST7(内径)に工具T7、ステーションST8(内径)に工具T8、ステーションST9(内径)に工具T9が取り付けられる。
工具交換開始時において、工具搬送部114は外径旋回状態にあり、第1ハンド182は予備ハンド、第2ハンド194は作業ハンドに設定されている。工具搬送部114自体は工具格納部106側(予備側)に位置している。
【0162】
第1工程から第4工程を経た上で、図34に示す搬送スケジュールが生成されたとする。このときの合計ステップ数は20である。
【0163】
図35は、第2例における第5工程実行後の搬送スケジュールを示す図である。
第5工程実行前の搬送スケジュールでは4回の直進動作が発生しているが、いずれの場合においても工具搬送部114は1本しか工具を運搬していない。これに対して、第5工程実行後の搬送スケジュールでも4回の直進動作が発生し、そのうち、ステップ14において工具搬送部114は工具T9、T1を運搬している。しかし、第5工程実行後の合計ステップ数は22回であり、第5工程実行前よりもステップ数は多くなっている。このため、スケジュール生成部132は第5工程実行前の搬送スケジュールを採用する。
【0164】
[総括]
以上、実施形態に基づいて、工作機械100の工具交換について説明した。
搬送スケジュールの生成に際しては、スケジュール生成部132は第1工程および第2工程を実行し、第2工程の実行後にタレット164に空STが残らないように工具搬送順をつくる。第3工程は内部交換なので、工具搬送部114をタレット164側に位置させる必要がある。第2工程の終了時点において、工具搬送部114はタレット164側にあるため、第3工程の開始時に工具搬送部114をタレット164側に移動させる必要がない。一方、第4工程は外部交換なので、工具搬送部114を工具格納部106側に位置させる必要がある。以上の理由により、第1工程、第2工程の後は第4工程ではなく第3工程を実行することが望ましい。
【0165】
現在パターンにおいてタレット164に空STが存在しない場合には、スケジュール生成部132は第1工程、第2工程をスキップして、第3工程以降のアルゴリズムに基づいて搬送スケジュールを生成すればよい。この場合には、スケジュール生成部132は第4工程を第3工程より先に実行してもよい。
【0166】
スケジュール生成部132は、現在パターンと目標パターンに基づいて、どの工具から移動させるか、どのステーション222から先に工具を移動させるか、といったさまざまな組み合わせについて総当りで工具搬送順を計算してもよい。たとえば、第1工程においても、現在パターンおよび目標パターンの組み合わせに基づいてさまざまな工具搬送順をつくることが可能である。スケジュール生成部132はこのようにして生成された多数の工具搬送順からもっとも作業効率のよい工具搬送順を採用すればよい。
【0167】
スケジュール生成部132は、特に、工具格納部106への仮退避、タレット164への仮設置が生じないように搬送スケジュールを組むことで、工具交換に要する作業工数を減らすことができる。
【0168】
また、スケジュール生成部132は、複数の工具交換のステップ数が同一となるときは、運搬動作、旋回動作および回転動作それぞれに要する時間を指標化した時間ポイントに基づいて、どの搬送順がもっとも作業効率がよいかを判定できる。
【0169】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0170】
これまでの説明の通り、本発明によれば、工具の段取り等を含めた加工に関連する総時間を短くできる。そのため、省エネ性を高めた工作機械等の提供が可能になる。
【0171】
[変形例]
本実施形態においては、第1ホルダ168Aは「ワークの内径側を削るための工具を保持するホルダ168」、第2ホルダ168Bは「ワークの外径側を削るための工具を保持するホルダ168」であるとして説明した。本発明は、内径側/外径側に限らず、タレット164において複数の工具保持方法が可能である場合に適用可能である。
【0172】
たとえば、第1ホルダ168Aの長軸方向(第1方向)と第2ホルダ168Bの長軸方向(第2方向)において、第1方向と第2方向は任意であり、互いに直交しない場合も考えられる。
【0173】
工具Tによっては旋削加工と回転加工の両方に対応できるものがある。ステーション222に旋削ホルダ168Mを取り付け、旋削ホルダ168Mに工具Tを取り付けたとき、この工具Tは旋削加工に使用される。一方、ステーション222に回転ホルダ168Nを取り付け、回転ホルダ168Nに同一種類の工具Tを取り付けたとき、この工具Tは回転加工に使用される。このように旋削ホルダ168Mおよび回転ホルダ168Nの双方を備えるタレット164を対象とした工具交換においても、スケジュール生成部132は同様にして搬送スケジュールを生成可能である。
【0174】
事前配置情報としての現在パターンおよび目標配置情報としての目標パターンによっては、すべてのステーション222が空STである状態から、工具Tを所定本数、たとえば、1本だけ取り付ける状況もあり得る。たとえば、工具格納部106から所定本数の工具Tを搬送し、12箇所の空STの全部または一部に工具を取り付ける場合も考えられる。
【0175】
あるいは、すべてのステーション222に工具が取り付けられている状態から、所定本数、たとえば、1本の工具を取り外す場合もあり得る。たとえば、刃物台230から12本未満の所定本数の工具Tを搬送し、工具格納部106にこれらの工具を格納する場合も考えられる。
【0176】
このように、ステーション222の一部または全部が空STとなっている状態から工具交換が開始されることも権利範囲として想定可能であることは当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0177】
100 工作機械、102 タレットベース、106 工具格納部、112 加工装置、114 工具搬送部、116 加工制御部、118 情報処理装置、120 ユーザインタフェース処理部、122 データ処理部、124 データ格納部、126 入力部、128 出力部、130 工具管理部、132 スケジュール生成部、134 工具搬送制御部、160 制御装置、164 タレット、168 ホルダ、168A 第1ホルダ、168B 第2ホルダ、168M 旋削ホルダ、168N 回転ホルダ、170 保持板、174 保持ポット、176 駆動モータ、178 送り機構、180 移動台、182 第1ハンド、184 レール保持台、186 ガイドレール、188 スライダ、190 ボールねじ、192 ボールナット、194 第2ハンド、196 サーボモータ、198 保持部材、200 移動シリンダ、202 駆動シリンダ、204 回転軸、206 駆動シリンダ、208 把持爪、210 把持爪、220 カートリッジ、222 ステーション、230 刃物台
図1
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図34
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【手続補正書】
【提出日】2022-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工具を保持可能な複数のホルダを有する刃物台と、
加工プログラムにしたがって、前記刃物台に保持される工具を制御し、ワークを加工する加工制御部と、
複数の工具を格納する工具格納部と、
工具を搬送可能な工具搬送部と、
工具搬送順を示す搬送スケジュールを生成するスケジュール生成部と、
前記搬送スケジュールにしたがって前記工具搬送部を制御することにより、前記刃物台における工具の保持位置を変更する工具搬送制御部と、を備え、
前記スケジュール生成部は、
前記刃物台における交換前の工具の配置を示す事前配置情報と、搬送後の工具の配置を示す目標配置情報にしたがって、
前記刃物台に配置済みの工具を空きホルダに移動させる第1工程と、
前記工具格納部に格納される工具を前記刃物台の空きホルダに保持させる第2工程と、、を順番に実行する工具の搬送順として前記搬送スケジュールを生成する、工作機械。
【請求項2】
前記第1工程および前記第2工程の実行後、更に、
前記刃物台のホルダ間において工具の保持位置を変更する第3工程と、
前記工具格納部に格納される工具と前記刃物台に保持される工具を交換する第4工程と、を順番に実行する工具の搬送順として前記搬送スケジュールを生成する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記スケジュール生成部は、前記搬送スケジュールを生成した後、更に、前記工具搬送部により前記刃物台と前記工具格納部間における1回あたりの工具の搬送本数を変更することにより、前記搬送スケジュールを調整する、請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記刃物台は、ワークの内径側を削るために工具を保持する第1のホルダと、ワークの外径側を削るために工具を保持する第2のホルダと、を含み、
前記工具搬送部は、複数の工具を同時に保持可能であり、かつ、旋回または回転により第1ホルダまたは第2のホルダに対して工具の着脱が可能である、請求項1に記載の工作機械。
【請求項5】
前記刃物台は、工具を旋削加工可能に保持する旋削ホルダと、工具を回転加工可能に保持する回転ホルダと、を含み、
前記工具搬送部は、複数の工具を同時に保持可能であり、かつ、旋回または回転により前記旋削ホルダまたは前記回転ホルダに対して工具の着脱が可能である、請求項1に記載の工作機械。
【請求項6】
前記スケジュール生成部は、前記第1工程において、工具を保持されている複数のホルダから、同数以上の空いている複数のホルダに工具を搬送させる際、前記工具が保持されている複数のホルダから前記工具搬送部が1本ずつ工具を取り外して前記空いているホルダに搬送する前記搬送スケジュールを生成する、請求項1に記載の工作機械。