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特開2023-112261樹脂組成物、接着シート、プリプレグ、及び、積層板
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  • 特開-樹脂組成物、接着シート、プリプレグ、及び、積層板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112261
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】樹脂組成物、接着シート、プリプレグ、及び、積層板
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/08 20060101AFI20230804BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230804BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20230804BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20230804BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20230804BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20230804BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20230804BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20230804BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230804BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230804BHJP
   C09J 171/12 20060101ALI20230804BHJP
   C09J 179/08 20060101ALI20230804BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20230804BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230804BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20230804BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230804BHJP
   B32B 27/04 20060101ALI20230804BHJP
   B32B 5/10 20060101ALI20230804BHJP
   B32B 15/088 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
C08L71/08
C08K3/013
C08K3/22
C08K3/28
C08K3/38
C08K5/14
C08F2/44 Z
C09J7/35
C09J11/06
C09J11/04
C09J171/12
C09J179/08
C08J5/24
B32B27/00 M
B32B27/00 D
B32B27/34
B32B27/20 Z
B32B27/04
B32B5/10
B32B15/088
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013928
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】591045703
【氏名又は名称】利昌工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】窪山 典人
(72)【発明者】
【氏名】今井 翔太
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4J002
4J004
4J011
4J040
【Fターム(参考)】
4F072AB09
4F072AB27
4F072AD03
4F072AD42
4F072AE02
4F072AE06
4F072AF03
4F072AG03
4F072AG17
4F072AG19
4F072AH02
4F072AJ22
4F072AL12
4F100AA13A
4F100AA14A
4F100AA19A
4F100AA19H
4F100AA20A
4F100AA20H
4F100AB01C
4F100AB17B
4F100AB17C
4F100AB33B
4F100AB33C
4F100AD11A
4F100AG00A
4F100AH02A
4F100AH02H
4F100AK25A
4F100AK41A
4F100AK42B
4F100AK46A
4F100AK47A
4F100AK49A
4F100AK54A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA23A
4F100CA30A
4F100CB02A
4F100DG11A
4F100DH01A
4F100DH02A
4F100EJ172
4F100EJ422
4F100EJ82A
4F100EJ91B
4F100GB41
4F100GB43
4F100JA07A
4F100JB13A
4F100JG04A
4F100JG05
4F100JJ01C
4F100JK06
4F100JK07
4F100JL11
4J002CH071
4J002DE148
4J002DF019
4J002DK009
4J002EK007
4J002EU026
4J002FD146
4J002FD157
4J002GF00
4J002GK00
4J002GK02
4J004AA11
4J004AB05
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004FA08
4J011PA07
4J011PA08
4J011PA14
4J011PA90
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4J011PB40
4J011PC02
4J011PC08
4J040EE061
4J040EH031
4J040HA136
4J040JA09
4J040JB02
4J040KA34
4J040MA02
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】従来の高周波用基板材料と同様の硬化条件でありながら、低伝送損失と放熱性能とを両立させることができる、熱硬化性樹脂組成物、接着シート、プリプレグ、及び、積層板を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂組成物は、1分子中に少なくとも2個のマレイミド基を有するマレイミド化合物、1分子中に少なくとも2個の反応性の有機基を有するポリフェニレンエーテル化合物、硬化促進剤、及び、無機充填材を含有し、前記無機充填材は、低ナトリウムタイプの酸化アルミニウムであり、低ナトリウムタイプの酸化アルミニウムは、Naイオンの含有量が10ppm以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に少なくとも2個のマレイミド基を有するマレイミド化合物、1分子中に少なくとも2個の反応性の有機基を有するポリフェニレンエーテル化合物、硬化促進剤、及び、無機充填材を含有し、
前記無機充填材は、低ナトリウムタイプの酸化アルミニウムであり、低ナトリウムタイプの酸化アルミニウムは、Naイオンの含有量が10ppm以下であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機充填材として、低ナトリウムタイプの酸化アルミニウムに、窒化ホウ素、又は、窒化アルミニウムを加えることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂。
【請求項3】
前記硬化促進剤は、ペルオキシ基を有する有機過酸化物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記マレイミド化合物100重量部に対して、ペルオキシ基を有する有機過酸化物を1~30重量部含有することを特徴とする請求項3に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記マレイミド化合物100重量部に対して、前記ポリフェニレンエーテル化合物を10~100重量部、前記酸化アルミニウムを400~700重量部含有することを特徴とする1~4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記マレイミド化合物は、脂肪族骨格マレイミド樹脂、多官能型マレイミド樹脂、又は、ビスフェノールA型マレイミド樹脂であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記マレイミド化合物は、溶剤が添加された液状であることを特徴とする請求項6に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリフェニレンエーテル化合物は、重量平均分子量Mwが、1000~10000であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物、及び、キャリアフィルムからなる接着シートであって、
前記キャリアフィルムの一方の表面に塗工された前記熱硬化性樹脂組成物が半硬化状態であることを特徴とする接着シート。
【請求項10】
前記キャリアフィルムは、銅箔又はPETフィルムであることを特徴とする請求項9に記載の接着シート。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物、及び、繊維基材からなるプリプレグであって、
前記繊維基材に含浸された前記熱硬化性樹脂組成物が半硬化状態であることを特徴とするプリプレグ。
【請求項12】
前記繊維基材が、ガラス繊維、液晶ポリマー繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、又は、ビニロン繊維からなることを特徴とする請求項11に記載のプリプレグ。
【請求項13】
請求項9又は請求項10に記載の接着シートからキャリアフィルムを除去したものを、1枚で、又は、複数枚積層された状態で加熱加圧成型されてなることを特徴とする積層板。
【請求項14】
請求項11又は請求項12に記載のプリプレグが1枚で、又は、複数枚積層された状態で加熱加圧成型されてなることを特徴とする積層板。
【請求項15】
少なくとも一方の表面に金属箔が配置されていることを特徴とする請求項13又は14に記載の積層板。
【請求項16】
一方の表面に金属箔が配置され、他方の表面に放熱用金属板が配置されていることを特徴とする請求項13又は14に記載の積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、前記樹脂組成物を用いた接着シート及びプリプレグ、及び、前記接着シート又は前記プリプレグを用いた積層板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
次世代通信システムではデータ通信において、さらなる大容量・高速伝送化が進むと予測される。第5世代移動通信システム(5G)では小型基地局の需要が大幅に増加し、基地局で用いられる基板にも小型化、省スペース化に加えて、両面板から高多層化への需要が高まっており、高周波領域で高速通信ができる低伝送損失と放熱性に優れた材料が求められている。
【0003】
従来の高周波用基板材料として、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、液晶ポリマー、ベンゾオキサジン樹脂等の主剤に、無機充填剤の球状シリカや中空シリカを加えた複合材料が一般的に用いられている(特許文献1~3)。しかしながら、無機充填剤の球状シリカや中空シリカは熱伝導率が低く、放熱性を高めることは困難である。
【0004】
そのため、放熱性能を付与する為に、樹脂に液晶ポリマー、無機充填剤に酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウムが用いられているが、液晶ポリマーは成型温度が非常に高いことから、接着シート、プリプレグとして扱うことは難しいという問題がある。また、無機充填剤の酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウムは誘電特性が低下してしまうことから、従来の高周波用基板材料では、低伝送損失と放熱性の両立は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-141314号公報
【特許文献2】特開2012-149237号公報
【特許文献3】特開2017- 75223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は従来の問題点を鑑み、従来の高周波用基板材料と同様の硬化条件でありながら、低伝送損失と放熱性能とを両立させることができる、熱硬化性樹脂組成物、接着シート、プリプレグ、及び、積層板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、1分子中に少なくとも2個のマレイミド基を有するマレイミド化合物、1分子中に少なくとも2個の反応性の有機基を有するポリフェニレンエーテル化合物、硬化促進剤、及び、無機充填材を含有し、前記無機充填材は、低ナトリウムタイプの酸化アルミニウムであり、低ナトリウムタイプの酸化アルミニウムは、Naイオンの含有量が10ppm以下であることを特徴とする。
【0008】
前記無機充填材として、低ナトリウムタイプの酸化アルミニウムに、窒化ホウ素、又は、窒化アルミニウムを加えることができる。
【0009】
前記硬化促進剤は、ペルオキシ基を有する有機過酸化物であることが好ましく、さらに、前記マレイミド化合物100重量部に対して、ペルオキシ基を有する有機過酸化物を1~30重量部含有することが好ましい。
【0010】
前記マレイミド化合物100重量部に対して、前記ポリフェニレンエーテル化合物を10~100重量部、前記酸化アルミニウムを400~700重量部含有することが好ましい。
【0011】
前記マレイミド化合物は、脂肪族骨格マレイミド樹脂、多官能型マレイミド樹脂、又は、ビスフェノールA型マレイミド樹脂であり、さらに、前記マレイミド化合物は、溶剤が添加された液状であることが好ましい。
【0012】
前記ポリフェニレンエーテル化合物は、重量平均分子量Mwが、1000~10000であることが好ましい。
【0013】
本発明の接着シートは、前記熱硬化性樹脂組成物、及び、キャリアフィルムからなる接着シートであって、前記キャリアフィルムの一方の表面に塗工された前記熱硬化性樹脂組成物が半硬化状態であることを特徴とする。
【0014】
前記キャリアフィルムは、銅箔又はPETフィルムを用いることができる。
【0015】
本発明のプリプレグは、前記熱硬化性樹脂組成物、及び、繊維基材からなるプリプレグであって、前記繊維基材に含浸された前記熱硬化性樹脂組成物が半硬化状態であることを特徴とする。
【0016】
前記繊維基材が、ガラス繊維、液晶ポリマー繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、又は、ビニロン繊維からなることが好ましい。
【0017】
本発明の積層板は、前記接着シートからキャリアフィルムを除去したものを、1枚で、又は、複数枚積層された状態で加熱加圧成型されてなることを特徴とする。
【0018】
本発明の積層板は、前記プリプレグが1枚で、又は、複数枚積層された状態で加熱加圧成型されてなることを特徴とする。
【0019】
前記積層板は、少なくとも一方の表面に金属箔が配置されている。
【0020】
前記積層板は、一方の表面に金属箔が配置され、他方の表面に放熱用金属板が配置されている。
【発明の効果】
【0021】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、1分子中に少なくとも2個のマレイミド基を有するマレイミド化合物、1分子中に少なくとも2個の反応性の有機基を有するポリフェニレンエーテル化合物、硬化促進剤、及び、無機充填材を含有し、前記無機充填材は、低ナトリウムタイプの酸化アルミニウムであり、低ナトリウムタイプの酸化アルミニウムは、Naイオンの含有量が10ppm以下であることにより、低伝送損失と放熱性能とを両立した積層板を形成することができる。
【0022】
本発明の接着シートは、前記熱硬化性樹脂組成物、及び、キャリアフィルムからなる接着シートであって、前記キャリアフィルムの一方の表面に塗工された前記熱硬化性樹脂組成物が半硬化状態であり、前記接着シートを用いて積層板を形成することにより、低伝送損失と放熱性能とを両立した積層板を実現することができる。
【0023】
本発明のプリプレグは、前記熱硬化性樹脂組成物、及び、繊維基材からなるプリプレグであって、前記繊維基材に含浸された前記熱硬化性樹脂組成物が半硬化状態であり、前記プリプレグを用いて積層板を形成することにより、低伝送損失と放熱性能とを両立した積層板を実現することができる。
【0024】
本発明の積層板は、前記接着シートからキャリアフィルムを除去したものを、1枚で、又は、複数枚積層された状態で加熱加圧成型されてなる、又は、前記プリプレグが1枚で、又は、複数枚積層された状態で加熱加圧成型されてなることにより、低伝送損失と放熱性能とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の接着シートの概略断面図である。
図2】接着シートを用いた積層板を金属箔張り積層板とした場合の概略断面図である。
図3】プリプレグを用いた積層板を金属ベース金属箔張り積層板とした場合の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の熱硬化性樹脂組成物、接着シート、プリプレグ、及び、積層板について説明する。まず初めに、本発明の熱硬化性樹脂組成物について説明する。
【0027】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、高周波用基板材料として用いることを目的としており、1分子中に少なくとも2個のマレイミド基を有するマレイミド化合物、1分子中に少なくとも2個の反応性の有機基を有するポリフェニレンエーテル化合物、硬化促進剤、及び、無機充填材を含有する。
【0028】
前記無機充填材としては、低ナトリウムタイプの酸化アルミニウムを用いる。低ナトリウムタイプの酸化アルミニウムとは、Naイオンの含有量が10ppm以下の酸化アルミニウムである。さらに、前記無機充填材は、低ナトリウムタイプの酸化アルミニウムに、窒化ホウ素、又は、窒化アルミニウムを加えることも可能である。
【0029】
前記硬化促進剤として、ペルオキシ基を有する有機過酸化物を用いる。有機過酸化物の含有量が、1重量部未満では反応性が不十分であり、30重量部を超えると特性が低下することから、前記マレイミド化合物100重量部に対して、有機過酸化物を1~30重量部含有する。
【0030】
前記マレイミド化合物としては、脂肪族骨格マレイミド樹脂、多官能型マレイミド樹脂、ビスフェノールA型マレイミド樹脂を用いる。マレイミド樹脂は必要に応じ溶剤を添加して、液状で用いる。そのため、マレイミド樹脂は溶剤溶解性がよい方が好ましい。
【0031】
ポリフェニレンエーテル化合物は、重量平均分子量Mwが、1000~10000とする。ポリフェニレンエーテル化合物の分子量が大きい場合は溶剤溶解性や反応性が低下することから、これらを踏まえて所定の分子量のポリフェニレンエーテル化合物を用いることが必要である。
【0032】
熱硬化性樹脂組成物は、マレイミド化合物100重量部に対して、前記ポリフェニレンエーテル化合物を10~100重量部、前記酸化アルミニウムを400~700重量部含有すし、さらに、ペルオキシ基を有する有機過酸化物を1~30重量部含有する。
【0033】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、1分子中に少なくとも2個のマレイミド基を有するマレイミド化合物、1分子中に少なくとも2個の反応性の有機基を有するポリフェニレンエーテル化合物、及び、硬化促進剤からなる熱硬化性樹脂に、無機充填材として、低ナトリウムタイプの酸化アルミニウム及び窒化ホウ素、又は、低ナトリウムタイプの酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムを配合し、攪拌又は混錬等によって分散させることにより形成される。この時、必要に応じて、高級脂肪酸エステル、官能基を有する共重合体等の界面活性剤を用いることができ、さらに、溶剤等を用いることも可能である。
【0034】
このようにして得られた熱硬化性樹脂組成物を用いて、本発明の接着シート及びプリプレグを作成し、さらに、接着シート及びプリプレグを用いて積層板を作成する。次に、本発明の接着シート及びプリプレグについて説明する。
【0035】
本発明の接着シートは、前記熱硬化性樹脂組成物及びキャリアフィルムからなり、前記キャリアフィルムの一方の表面に塗工された前記熱硬化性樹脂組成物は半硬化状態となっている。本発明の接着シートは、熱硬化性樹脂組成物をキャリアフィルムの一方の表面に塗工し、加熱乾燥等の手段によって半硬化させることで得られる。前記キャリアフィルムとしては、銅箔又はPETフィルムを用いることができる。本発明の接着シートを使用する際には、キャリアフィルムを除去し、半硬化状態の熱硬化性樹脂組成物のシートの状態とする。そのため、熱硬化性樹脂を塗工する際に、キャリアフィルムの塗工面に、離型剤を転写しておくことで、キャリアフィルムを除去しやすくすることができる。
【0036】
本発明のプリプレグは、前記熱硬化性樹脂組成物及び繊維基材からなり、前記繊維基材に含浸された前記熱硬化性樹脂組成物は半硬化状態となっている。前記プリプレグは、織布、不織布等の繊維基材に前記熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、その後、加熱乾燥等の手段によって半硬化させることで得られる。
【0037】
前記繊維基材としては、ガラス織布等が挙げられる。前記繊維基材の繊維としては、ガラス繊維、液晶ポリマー繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、又は、ビニロン繊維等が用いられる。
【0038】
次に、本発明の積層板について説明する。本発明の積層板は、前記接着シート又は前記プリプレグからなる積層板である。接着シートからなる本発明の積層板は、前記接着シートからキャリアフィルムを除去し、半硬化状態の熱硬化性樹脂組成物のシート状のものを、1枚で又は複数枚積層した状態で、加熱及び加圧手段によって挟み込み、所定の温度及び圧力で加熱加圧成型することにより得られる。
【0039】
プリプレグからなる本発明の積層板は、前記プリプレグを1枚又は複数枚積層した状態で、加熱及び加圧手段である金属板によって挟み込み、所定の温度及び圧力で加熱加圧成型することにより得られる。
【0040】
本発明の積層板は、さらに、少なくとも一方の面に、金属箔を有する金属箔張り積層板とすることができる。前記金属箔張り積層板は、前記接着シートを1枚又は複数枚積層したものの少なくとも一表面に、又は、前記プリプレグを1枚又は複数枚積層したものの少なくとも一表面に金属箔を配し、その後、加熱加圧成型することで得られるものである。金属箔は、電気絶縁材料として用いることのできる材質であればよく、特に限定するものではないが、銅箔、アルミ箔を用いることが好ましい。
【0041】
また、本発明の積層板は、一方の表面に金属箔を有し、他方の表面に放熱用金属板を有する、金属ベース金属箔張り積層板とすることもできる。前記金属ベース金属箔張り積層板は、前記接着シートを1枚又は複数枚積層したものの一表面に、又は、前記プリプレグを1枚又は複数枚積層したものの一表面に金属箔を配し、他方の表面に放熱用金属ベース板を配して、その後、加熱加圧成型することにより得られるものである。放熱用金属板としては、アルミ板、銅板等を用いることができる。
【0042】
本発明の積層板は、従来の高周波用基板材料と同様の硬化条件でありながら、低伝送損失と放熱性能とを両立させることができるようになり、高周波用基板材料として求められる性能を満たすことができる。
【0043】
本発明の積層板の1つの形態である、金属箔張り積層板1について図を用いて説明する。前記金属箔張り積層板1の一例として、2枚の接着シート2を積層し、両面に金属箔3を配した形態を図2に示す。初めに、接着シート2について説明する。熱硬化性樹脂組成物22をバーコーター等を用いて所定の厚さになるようにキャリアフィルム21の一方の表面に塗工し、前記熱硬化性樹脂組成物を加熱乾燥等することにより、図1に示すような、熱硬化性樹脂組成物22が半硬化状態となった接着シート2を得ることができる。この際に、キャリアフィルム21の塗工面に、離型剤を転写しておくことで、キャリアフィルム21を除去しやすくすることができる。
【0044】
その後、前記接着シート2から、キャリアフィルム21を取り除き、半硬化状態の熱硬化性樹脂組成物22だけの状態としたものを2枚積層し、2枚積層した状態の接着シート2の両面に2枚の金属箔3を別々に重ねる。その後、加熱及び加圧手段である金属板によって挟み込んで所定の温度及び圧力で加熱加圧成型すると、図2に示すような断面構造の金属箔張り積層板1が完成する。
【0045】
さらに、本発明の積層板の別の形態である、金属ベース金属箔張り積層板10について説明する。前記金属ベース金属箔張り積層板10の一例として、2枚のプリプレグ20を積層し、一方の表面に金属箔3を配し、他方の表面に放熱用金属ベース板4を配した形態を図3に示す。前記金属箔張り積層板10は、まず初めに、繊維基材であるガラス織布に前記熱硬化性樹脂組成物を含浸させる。その後、前記ガラス織布に含浸させた前記熱硬化性樹脂組成物を加熱乾燥することにより、熱硬化性樹脂組成物が半硬化状態となったプリプレグ20を得る。
【0046】
その後、前記プリプレグ20を2枚積層し、2枚積層した状態のプリプレグ20の一方の表面に金属箔3を配し、他方の表面に放熱用金属ベース板4を配する。その後、加熱及び加圧手段である金属板によって挟み込んで所定の温度及び圧力で加熱加圧成型すると、図3に示すような断面構造の金属ベース金属箔張り積層板10が完成する。
【0047】
実施例を用いて、本発明の積層板について説明する。実施例1~3は接着シートを用いた積層板であり、実施例4はプリプレグを用いた積層板である。比較例1~3は接着シートを用いた積層板である。以下に、実施例1~4と比較例1~3について順に説明する。
【実施例0048】
脂肪族骨格マレイミド樹脂100重量部に対し、ポリフェニレンエーテル樹脂(重量平均分子量:1000~10000)を20重量部、及び、硬化促進剤としてペルオキシ基を有する有機過酸化物10重量部を含有する熱硬化性樹脂に対して、無機充填材として低ナトリウムタイプの酸化アルミニウム600重量部を均一に分散した熱硬化性樹脂組成物である第1樹脂ワニスを準備する。
【0049】
第1樹脂ワニスを成形後の厚さが0.1mmになるように、キャリアフィルムであるPETフィルムの一方の表面にバーコーターで塗工し、その後、加熱乾燥させて第1接着シートを得る。第1樹脂ワニスが塗工される前記キャリアフィルムの一方の表面には離型剤が転写されている。そして、前記第1接着シートからキャリアフィルムを取り除く。キャリアフィルムが除去された前記第1接着シートの両面に厚さ0.035mmの銅箔を配して積層し、その後、温度:200℃、圧力:2MPaの条件下で加熱加圧成型することで厚さ0.1mmの実施例1の金属箔張り積層板を得る。
【実施例0050】
脂肪族骨格マレイミド樹脂100重量部に対し、ポリフェニレンエーテル樹脂(重量平均分子量:1000~10000)を20重量部、及び、硬化促進剤としてペルオキシ基を有する有機過酸化物10重量部を含有する熱硬化性樹脂に対して、無機充填材として低ナトリウムタイプの酸化アルミニウム400重量部、及び、窒化ホウ素200重量部を均一に分散した熱硬化性樹脂組成物である第2樹脂ワニスを準備する。
【0051】
第2樹脂ワニスを、実施例1と同様に、成形後の厚さが0.1mmになるように、キャリアフィルムであるPETフィルムの一方の表面にバーコーターで塗工し、その後、加熱乾燥させて第2接着シートを得る。第2樹脂ワニスが塗工される前記キャリアフィルムの一方の表面には離型剤が転写されている。そして、前記第2接着シートからキャリアフィルムを取り除く。キャリアフィルムが除去された前記第2接着シートの両面に厚さ0.035mmの銅箔を配して積層し、その後、温度:200℃、圧力:2MPaの条件下で加熱加圧成型することで厚さ0.1mmの実施例2の金属箔張り積層板を得る。
【実施例0052】
脂肪族骨格マレイミド樹脂100重量部に対し、ポリフェニレンエーテル樹脂(重量平均分子量:1000~10000)を20重量部、及び、硬化促進剤としてペルオキシ基を有する有機過酸化物10重量部を含有する熱硬化性樹脂に対して、無機充填材として低ナトリウムタイプの酸化アルミニウム300重量部、及び、窒化アルミニウム300重量部を均一に分散した熱硬化性樹脂組成物である第3樹脂ワニスを準備する。
【0053】
第3樹脂ワニスを、実施例1と同様に、成形後の厚さが0.1mmになるように、キャリアフィルムであるPETフィルムの一方の表面にバーコーターで塗工し、その後、加熱乾燥させて第3接着シートを得る。第3樹脂ワニスが塗工される前記キャリアフィルムの一方の表面には離型剤が転写されている。そして、前記第3接着シートからキャリアフィルムを取り除く。キャリアフィルムが除去された前記第3接着シートの両面に厚さ0.035mmの銅箔を配して積層し、その後、温度:200℃、圧力:2MPaの条件下で加熱加圧成型することで厚さ0.1mmの実施例3の金属箔張り積層板を得る。
【実施例0054】
実施例1の樹脂組成物である第1樹脂ワニスを準備し、繊維基材としてガラス繊維を準備し、前記ガラス繊維に、成形後の厚さが0.1mmとなるように第1樹脂ワニスを含浸させ、加熱乾燥させて半硬化させてプリプレグを得る。そして、前記プリプレグの両面に厚さ0.035mmの銅箔を配して積層し、その後、温度:200℃、圧力:2MPaの条件下で加熱加圧成型することで厚さ0.1mmの実施例4の金属箔張り積層板を得る。
【0055】
比較例1
ポリフェニレンエーテル樹脂(重量平均分子量:1000~10000)を100重量部、硬化促進剤として有機過酸化物10重量部を含有する熱硬化性樹脂に対して、無機充填材として球状シリカ100重量部を均一に分散して、第5樹脂ワニスを準備する。
【0056】
第5樹脂ワニスを、実施例1と同様に、成形後の厚さが0.1mmになるように、キャリアフィルムであるPETフィルムにバーコーターで塗工し、その後、加熱乾燥させて第5接着シートを得る。前記キャリアフィルムの一方の表面には離型剤が転写されている。そして、前記第5接着シートからキャリアフィルムを取り除く。キャリアフィルムが除去された前記第5接着シートの両面に厚さ0.035mmの銅箔を配して積層し、その後、温度:200℃、圧力:2MPaの条件下で加熱加圧成型することで厚さ0.1mmの比較例1の金属箔張り積層板を得る。
【0057】
比較例2
エポキシ樹脂100重量部に対し、硬化促進剤としてイミダゾール0.5重量部を含有する熱硬化性樹脂に対して、無機充填材として酸化アルミニウム600重量部を均一に分散して、第6樹脂ワニスを準備する。
【0058】
第6樹脂ワニスを、実施例1と同様に、成形後の厚さが0.1mmになるように、キャリアフィルムであるPETフィルムの一方の表面にバーコーターで塗工し、その後、加熱乾燥させて第6接着シートを得る。第6樹脂ワニスが塗工される前記キャリアフィルムの一方の表面には離型剤が転写されている。そして、前記第6接着シートからキャリアフィルムを取り除く。キャリアフィルムが除去された前記第6接着シートの両面に厚さ0.035mmの銅箔を配して積層し、その後、温度:200℃、圧力:2MPaの条件下で加熱加圧成型することで厚さ0.1mmの比較例2の金属箔張り積層板を得る。
【0059】
比較例3
多官能型マレイミド樹脂100重量部に対し、ポリフェニレンエーテル樹脂(重量平均分子量:20000~50000)を20重量部、硬化促進剤として有機過酸化物5重量部を含有する熱硬化性樹脂に対して、無機充填材として低ナトリウムタイプの酸化アルミニウム600重量部を均一に分散して、第7樹脂ワニスを準備する。
【0060】
第7樹脂ワニスを、実施例1と同様に、成形後の厚さが0.1mmになるように、キャリアフィルムであるPETフィルムの一方の表面にバーコーターで塗工し、その後、加熱乾燥させたが、接着シートを得ることができなかった。
【0061】
実施例1~4及び比較例1~3によって得られた各金属箔張り積層板を以下の方法で評価し、その結果を表1に示す。
【0062】
・比誘電率、誘電正接の測定
得られた金属箔張り積層板から所定のサイズの試料を作成し、空洞共振器(測定周波数:10GHz、JIS C2565に準拠)によって比誘電率及び誘電正接をそれぞれ測定した。
【0063】
・熱伝導率の測定
得られた金属箔張り積層板から所定のサイズの試料を作成し、定常法による熱伝導率測定装置を用いて熱伝導率の測定を行った(ASTM D5470に準拠)。
【0064】
・貯蔵弾性率の測定
得られた金属箔張り積層板から所定のサイズの試料を作成し、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて熱機械分析を行い、貯蔵弾性率を測定した。
【0065】
・銅箔引きはがし強さ
JIS C6481に準拠した方法にて、得られた金属箔張り積層板から所定の試料を作成し、試料を銅箔の一端を適切な長さにはがしてから支持金具に取り付け、はがした銅箔の先端をつかみ具でつかみ、銅箔面に対して垂直な方向に、毎分約50mmの速さで連続的に約50mm剥がす。この間における荷重の最低値を引きはがし強さとし、kN/mで表す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1を見るとわかるように、実施例1~4では優れた誘電特性と高い熱伝導率の両立と高い銅箔引きはがし強さを有していることがわかる。比較例1では誘電特性は優れるものの熱伝導率は低く、比較例2では熱伝導率は高いものの誘電特性が劣っている。比較例3に至っては接着シートとして扱うことが困難であることから、比較例1~3では、優れた誘電特性と高い熱伝導率の両立が困難であることが明らかである。
【0068】
本発明は樹脂成分として脂肪族マレイミド樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂、ペルオキシ系化合物、無機充填剤として低ナトリウムタイプの酸化アルミニウムを組み合わせることで、低伝送損失と放熱性能の両立と高い接着力を有する絶縁基板材料として使用することができる積層板の実現が可能となり、次世代通信システムで求められるさらなる大容量・高速伝送化に対応することが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1 金属箔張り積層板
2 接着シート
20 プリプレグ
21 キャリアフィルム
22 熱硬化性樹脂組成物
3 金属箔
4 金属板ベース
10 金属ベース金属箔張り積層板
図1
図2
図3