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特開2023-112278防振治具及びこれを用いた切削加工装置並びに切削加工方法
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  • 特開-防振治具及びこれを用いた切削加工装置並びに切削加工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112278
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】防振治具及びこれを用いた切削加工装置並びに切削加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/00 20060101AFI20230804BHJP
   B23B 5/06 20060101ALN20230804BHJP
【FI】
B23B27/00 C
B23B5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013951
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】井川 龍馬
【テーマコード(参考)】
3C045
3C046
【Fターム(参考)】
3C045BA33
3C045CA11
3C046BB02
(57)【要約】
【課題】偏心バーが長尺となっても所望の加工面粗度を得ることができる防振治具を提供する。
【解決手段】回転軸線回りに回転する面盤と、面盤に対して回転軸線から偏心して固定されたホルダと、ホルダに対して固定されて回転軸線と平行に延在する長手軸線を有する偏心バーと、偏心バーの先端に刃物を着脱可能に収容する取付片と、を備えた切削加工装置に用いられる防振治具6である。第1ボルト用通し穴14に締付ボルトを挿通することによって偏心バーの外周を把持して固定する。第2ボルト用通し穴18に固定ボルトを挿通することによって、ホルダの端部に対して延長接続されるように固定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線回りに回転する面盤と、
前記面盤に対して前記回転軸線から偏心して固定されたホルダと、
前記ホルダに対して固定されて前記回転軸線と平行に延在する長手軸線を有する偏心バーと、
前記偏心バーの先端に刃物を着脱可能に収容する取付片と、
を備えた切削加工装置に用いられる防振治具であって、
前記偏心バーの外周を把持して固定する把持部と、前記ホルダの端部に対して延長接続されるように固定するホルダ固定部とを備えている防振治具。
【請求項2】
前記把持部は、前記偏心バーの外周に接触するとともに、円周方向の一部に隙間が形成されることによって横断面が円弧形状とされた内周面と、
前記隙間を狭めるように荷重を加えることによって前記内周面を前記偏心バーに対して締め付ける締付部と、
を備えている請求項1に記載の防振治具。
【請求項3】
前記ホルダ固定部は、前記ホルダの前記端部に対して当接される端面を貫通するとともに、前記ホルダに形成された雌ネジ穴に螺合される固定ボルトを備えている請求項1又は2に記載の防振治具。
【請求項4】
横断面が矩形状とされるとともに、前記ホルダ側から前記偏心バーの先端側に向かって横断面面積が減少する先細形状とされている請求項1から3のいずれかに記載の防振治具。
【請求項5】
アルミ合金とされている請求項1から4のいずれかに記載の防振治具。
【請求項6】
回転軸線回りに回転する面盤と、
前記面盤に対して前記回転軸線から偏心して固定されたホルダと、
前記ホルダに対して固定されて前記回転軸線と平行に延在する長手軸線を有する偏心バーと、
前記偏心バーの先端に刃物を着脱可能に収容する取付片と、
請求項1から5のいずれかの防振治具と、
を備えている切削加工装置。
【請求項7】
回転軸線回りに回転する面盤と、
前記面盤に対して前記回転軸線から偏心して固定されたホルダと、
前記ホルダに対して固定されて前記回転軸線と平行に延在する長手軸線を有する偏心バーと、
前記偏心バーの先端に刃物を着脱可能に収容する取付片と、
を備えた切削加工装置を用いた切削加工方法であって、
前記偏心バーの外周を把持し、かつ、前記ホルダの端部に対して延長接続されるように防振治具を固定し、
前記取付片に取り付けた前記刃物を用いてワークの切削を行う切削加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、面盤を用いた切削加工装置に用いられて好適な防振治具及びこれを用いた切削加工装置並びに切削加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転軸線回りに回転する面盤に偏心バーを取り付け、偏心バーの先端に取り付けた刃物を用いて切削加工することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-97068号公報(図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された切削加工装置は、例えば蒸気タービンの蒸気弁本体のように加工対象物(ワーク)が大型になると、面盤から刃物までの距離が長くなり、例えば1200mm程度となる。このように面盤から刃物までの距離が長くなると偏心バーも長尺となり、刃物に振動(ビビリ)が生じ易くなり、所望の加工面粗度を確保できなくなるという問題がある。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、偏心バーが長尺となっても所望の加工面粗度を得ることができる防振治具及びこれを用いた切削加工装置並びに切削加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る防振治具は、回転軸線回りに回転する面盤と、前記面盤に対して前記回転軸線から偏心して固定されたホルダと、前記ホルダに対して固定されて前記回転軸線と平行に延在する長手軸線を有する偏心バーと、前記偏心バーの先端に刃物を着脱可能に収容する取付片と、を備えた切削加工装置に用いられる防振治具であって、前記偏心バーの外周を把持して固定する把持部と、前記ホルダの端部に対して延長接続されるように固定するホルダ固定部と、を備えている。
【0007】
本開示の一態様に係る切削加工装置は、回転軸線回りに回転する面盤と、前記面盤に対して前記回転軸線から偏心して固定されたホルダと、前記ホルダに対して固定されて前記回転軸線と平行に延在する長手軸線を有する偏心バーと、前記偏心バーの先端に刃物を着脱可能に収容する取付片と、上記の防振治具と、を備えている。
【0008】
本開示の一態様に係る切削加工方法は、回転軸線回りに回転する面盤と、前記面盤に対して前記回転軸線から偏心して固定されたホルダと、前記ホルダに対して固定されて前記回転軸線と平行に延在する長手軸線を有する偏心バーと、前記偏心バーの先端に刃物を着脱可能に収容する取付片と、を備えた切削加工装置を用いた切削加工方法であって、前記偏心バーの外周を把持し、かつ、前記ホルダの端部に対して延長接続されるように防振治具を固定し、前記取付片に取り付けた前記刃物を用いてワークの切削を行う。
【発明の効果】
【0009】
偏心バーが長尺となっても所望の加工面粗度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る横中ぐり機を示した斜視図である。
図2図1に示した防振治具の斜視図である。
図3図2に示した防振治具の右側面図である。
図4図2に示した防振治具の平面図である。
図5図2に示した防振治具の正面図である。
図6図2に示した防振治具の背面図である。
図7図1に示した横中ぐり機を用いて蒸気弁本体の内径加工を行う状態を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、横中ぐり機(切削加工装置)1の要部が示されている。
横中ぐり機1の主軸2は、略円筒形状とされ、Z軸方向に延在する回転軸線CL1回りに回転する。主軸2は、図示しない電動モータによって回転駆動する。主軸2の回転数は、図示しない制御部によって制御される。また、主軸2は、図示しない制御部によって、矢印A1で示すように、Z軸方向(具体的には水平方向)に移動できるようになっている。
【0012】
主軸2の先端には、面盤3が取付けられ固定されている。面盤3は、偏平の円柱形状とされた外形を有している。面盤3の中心は、主軸2の中心と一致するように取り付けられている。これにより、面盤3は、矢印A2方向に回転軸線CL1回りに回転する。面盤3には、ホルダ5及び防振治具6を介して偏心バー7が取り付けられている。偏心バー7の先端には溝部が形成されており、超硬チップ(刃物)8を取り付けた板状の取付片9が嵌め込まれて固定されている。
【0013】
ホルダ5は、面盤3の中心(回転軸線CL1が通る位置)から偏心して面盤3に対して固定されている。防振治具6は、ホルダ5に対して延長接続されるように、ホルダ5の先端の端面に対して固定されている。偏心バー7は、丸棒とされており、その一端部(基端部)側がホルダ5及び防振治具6に対して挿通された状態で固定されている。これにより、偏心バー7の長手軸線CL2は、回転軸線CL1に対してオフセットされた状態で平行に延在している。偏心バー7の直径は、50mm以上150mm以下とされている。
【0014】
超硬チップ8は、偏心バー7の先端から長手軸線CL2に直交する方向に突出するように取り付けられている。超硬チップ8は、取付片9に対して交換可能に固定されている。
【0015】
ホルダ5の基端部(後端部)は、面盤3のスライド部10に対して固定されている。スライド部10は、面盤3に設けられたスライド機構によって、面盤3の径方向(矢印A3方向)に往復動できるようになっている。スライド部10の動作は、図示しない制御部によって制御される。
【0016】
制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0017】
図2には、防振治具6の斜視図が示されている。防振治具6は、アルミ合金(例えばA5052)製とされ、切削加工によって製作されている。防振治具6の重量は、鉄製などに比べて軽く、例えば約10kgとされている。
【0018】
防振治具6は、長手軸線CL3を有している。防振治具6の長手軸線CL3は、偏心バー7を防振治具6に取り付けた場合(図1参照)に、偏心バー7の長手軸線CL2と一致する。防振治具6の外形状は、四角錐台とされ、後端6bよりも先端6a側の横断面積が小さくなる先細形状とされている。より具体的には、図3及び図4に示すようにテーパ形状とされており、片側の傾き角度αが1°以上3以下°とされている。防振治具6の長手軸線CL3方向の寸法は、300mm以上500mm以下とされている。防振治具6の横断面形状は、図5及び図6に示すように、正方形とされている。後端6bにおける正方形の一辺は、100mm以上150mm以下とされている。ただし、横断面形状は正方形に限定されるものではなく、縦横比が異なる矩形(長方形)とされていても良い。
【0019】
防振治具6には、長手軸線CL3を中心とする略円筒形状の貫通孔11が形成されている。貫通孔11は、防振治具6の先端6aから後端6bにかけて連続して形成されている。貫通孔11の横断面は、円弧形状とされており、円周方向の一部に隙間11aが形成されたC字形状となっている。この隙間11aは、防振治具6の上面6cまで連続して形成されている。これにより、防振治具6の先端6aから後端6bにかけて長手軸線CL3方向に連続して延在するスリット12が形成されている。スリット12は、防振治具6の幅方向Wにおける略中央に位置している。貫通孔11の直径は、偏心バー7の直径に対応し、50mm以上150mm以下とされている。
【0020】
防振治具6の上部には、右側面6dから左側面6eにかけて第1ボルト用通し穴14が設けられている。第1ボルト用通し穴14は、スリット12に直交して貫く位置に設けられている。第1ボルト用通し穴14は、防振治具6の長手軸線CL3方向における中央位置から後端6bにかけて間隔を空けて3ヶ所設けられている。なお、第1ボルト用通し穴14は、3つに限定されるものではなく、2つ以上であれば良く、4つ以上であっても良い。
【0021】
第1ボルト用通し穴14の両端部のそれぞれの位置には、座ぐり部16が形成されている。座ぐり部16は、側面6d,6eと上面6cとに開口するように形成されている。座ぐり部16内に、第1ボルト用通し穴14に挿通した締付ボルト(図示せず)の頭部および締付ボルト先端に螺合されるナットが配置される。これにより、締付ボルト頭部およびナットが側面6d,6e及び上面6cから突出することがない。
【0022】
防振治具6と貫通孔11に挿通させた偏心バー7との固定は次のように行う。
偏心バー7を貫通孔11に挿通させた後に、第1ボルト用通し穴14に締付ボルトを挿通して先端にナットを螺合させて締め上げる。これにより、隙間11aの間隔が狭まり、貫通孔11を形成する内周面が偏心バー7の外周に密着し、締め付けられて固定される。したがって、偏心バー7の外周を把持して固定する把持部は、貫通孔11の内周面と、隙間11aと、第1ボルト用通し穴14と、締付ボルトと、締付ボルトに固定されるナットとから構成される。
【0023】
図2に示すように、右側面6dに位置するとともに、もっとも後端6b側に位置する座ぐり部16には、第2ボルト用通し穴18が形成されている。第2ボルト用通し穴18は、長手軸線CL3方向に貫通するように形成されている。
【0024】
図2では、上面6c側と下面6f側のそれぞれに第2ボルト用通し穴18が形成されている。また、図3乃至図6に示すように、左側面6eの高さ方向における中央位置に、座ぐり部16が設けられている。この座ぐり部16に開口するように第2ボルト用通し穴18が形成されている。したがって、第2ボルト用通し穴18は、合計で3つ設けられている。ただし、第2ボルト用通し穴18は2つ以上であれば良く、4つ以上であっても良い。
【0025】
防振治具6とホルダ5(図1参照)との固定は次のように行う。
まず、防振治具6の後端6bとホルダ5の端部(先端面)とを付き合わせて当接させる。そして、第2ボルト用通し穴18に固定ボルトを通し、ホルダ5の端面に形成した雌ネジ穴(図示せず)に螺合することによって、ホルダ5に対して防振治具6を固定する。したがって、ホルダ5の端部に対して防振治具6を延長接続するように固定するホルダ固定部は、第2ボルト用通し穴18と固定ボルトとから構成される。
【0026】
次に、図7を用いて、上述した防振治具6を備えた横中ぐり機1の切削加工方法について説明する。同図に示した加工対象(ワーク)は、蒸気タービンに用いられる蒸気弁のボディ(弁箱)である蒸気弁本体20である。この蒸気弁は、蒸気止め弁と蒸気加減弁が一体化した弁である。蒸気弁本体20は、固定治具22によって、静止した状態で固定されている。
【0027】
同図では、蒸気弁本体20の蒸気止め弁設置位置P1と蒸気加減弁設置位置P2との間の内径20aの加工を行う状態を示している。面盤3に対するホルダ5の固定位置から超硬チップ8までの距離Lは、例えば1000mm以上1500mm以下とされる。この内径加工には、所定の面粗度が図面上指示されている。例えば、Ra3.2,Ra6.3,Ra12.5などである。
【0028】
偏心バー7は、防振治具6の貫通孔11及びホルダ5の貫通孔(図示せず)に基端部が挿通された状態で固定される。具体的には、偏心バー7の後端がホルダ5内で固定されるとともに、防振治具6の第1ボルト用通し穴14に挿通した締付ボルトによって締め付けられて固定されている。防振治具6は、ホルダ5に対して、第2ボルト用通し穴18に挿通した固定ボルトによって延長接続されるように固定されている。偏心バー7の先端の取付片9には、所定の超硬チップ8が取り付けられる。
【0029】
そして、偏心バー7の先端を、蒸気弁本体20の蒸気止め弁設置位置P1の端部側(図7において左端部側)から蒸気弁本体20の内部に挿入する。超硬チップ8は、内径20aを切削するための所定位置へ、スライド部10によって径方向に移動させられる。そして、制御部の指令によって電動モータにより主軸2を回転軸線CL1回りに所定の回転数で回転させながら長手軸線CL2方向に移動させることによって、偏心バー7の超硬チップ8で内径20aの切削加工を行う。
【0030】
以上説明した本実施形態の作用効果は以下の通りである。
防振治具6は、第1ボルト用通し穴14に締付ボルトを挿通させて締め付けることによって偏心バー7の外周を掴んで締め付けるとともに、第2ボルト用通し穴18に挿通した固定ボルトによってホルダ5の端部に対して延長接続される。このようにホルダ5側に位置する偏心バー7の基端部を、防振治具6によってホルダ5とともに一体的に固定することで、偏心バー7の基端部の剛性を高めることができる。これにより、偏心バー7の先端が加工時に振動することを可及的に防止でき、所望の加工面粗度(例えば、Ra3.2,Ra6.3,Ra12.5など)を得ることができる。また、偏心バー7の先端の振動が抑制されるので、適切な切削条件を探索する時間を短縮することができる。
【0031】
第1ボルト用通し穴14に通した締付ボルトによって前記隙間を狭めるように荷重を加えることで、偏心バー7の外周と貫通孔11の内周面との接触力を増大することができる。これにより、強固に偏心バー7の外周を把持することができる。
【0032】
ホルダ5の端部に当接する防振治具6の後端6bを貫通する第2ボルト用通し穴18を形成し、この第2ボルト用通し穴18に固定ボルトを挿通させ、ホルダ5の雌ネジ穴に螺合させることとした。これにより、防振治具6をホルダ5に対して一体的に強固に固定することができる。
【0033】
防振治具6の横断面が矩形状とされているので、円筒形状とされた場合に比べて加工が容易となる。また、床面に載置した場合に円筒形状のように転がることがないので安全である。
【0034】
防振治具6が先細形状とされているので、防振治具6の全体を同一の横断面面積とした場合に比べて軽量化できる。また、ホルダ5側から偏心バー7の先端側に向かって横断面面積が減少する先細形状とされているので、加工時にワークに防振治具6が干渉することを可及的に防止でき、またホルダ5の面盤3側固定点を中心とするモーメントに対する強度を増大することができる。
【0035】
防振治具6はアルミ合金とされているので、鉄を用いる場合に比べて軽量化できる。これにより、取扱いが容易となり、また切削加工時に回転した場合の慣性力を小さくすることができる。
【0036】
なお、上述した実施形態では、蒸気弁本体20の内径加工を前提として説明したが、切削対象(ワーク)は蒸気弁本体20に限定されるものではない。例えば、面盤3に対するホルダ5の固定位置から超硬チップ8までの距離Lが1000mm以上1500mm以下とされるような大型構造物の切削加工に好適に用いることができる。
【0037】
以上説明した各実施形態に記載の防振治具及びこれを用いた切削加工装置並びに切削加工方法は、例えば以下のように把握される。
【0038】
本開示の一態様に係る防振治具(6)は、回転軸線(CL1)回りに回転する面盤(3)と、前記面盤(3)に対して前記回転軸線(CL1)から偏心して固定されたホルダ(5)と、前記ホルダ(5)に対して固定されて前記回転軸線(CL1)と平行に延在する長手軸線(CL2)を有する偏心バー(7)と、前記偏心バー(7)の先端に刃物(8)を着脱可能に収容する取付片(9)と、を備えた切削加工装置(1)に用いられる防振治具(6)であって、前記偏心バー(7)の外周を把持して固定する把持部と、前記ホルダ(5)の端部に対して延長接続されるように固定するホルダ固定部と、を備えている。
【0039】
防振治具は、把持部によって偏心バーの外周を掴んで締め付けるとともに、ホルダ固定部によってホルダの端部に対して延長接続される。このようにホルダ側に位置する偏心バーの基端部を、防振治具によってホルダとともに固定することで、偏心バーの基端部の剛性を高めることができる。これにより、偏心バーの先端が加工時に振動することを可及的に防止でき、所望の加工面粗度を得ることができる。また、偏心バーの先端の振動が抑制されるので、適切な切削条件を探索する時間を短縮することができる。
【0040】
本開示の一態様に係る防振治具(6)では、前記把持部は、前記偏心バー(7)の外周に接触するとともに、円周方向の一部に隙間(11a)が形成されることによって横断面が円弧形状とされた内周面と、前記隙間(11a)を狭めるように荷重を加えることによって前記内周面を前記偏心バー(7)に対して締め付ける締付部と、を備えている。
【0041】
締付部によって前記隙間を狭めるように荷重を加えることで、偏心バーの外周と内周面との接触力を増大することができる。これにより、強固に偏心バーの外周を把持することができる。
【0042】
本開示の一態様に係る防振治具(6)では、前記ホルダ固定部は、前記ホルダ(5)の前記端部に対して当接される端面(6b)を貫通するとともに、前記ホルダ(5)に形成された雌ネジ穴に螺合される固定ボルトを備えている。
【0043】
ホルダの端部に当接する端面を貫通するように固定ボルトを挿通させ、ホルダの雌ネジ穴に螺合させることで、防振治具をホルダに固定することができる。固定ボルトは、2個以上とすることが好ましい。
【0044】
本開示の一態様に係る防振治具(6)は、横断面が矩形状とされるとともに、前記ホルダ(5)側から前記偏心バー(7)の先端側に向かって横断面面積が減少する先細形状とされている。
【0045】
横断面が矩形状とされているので、円筒形状とされた場合に比べて加工が容易となる。また、床面に載置した場合に円筒形状のように転がることがないので安全である。
先細形状とされているので、防振治具の全体を同一の横断面面積とした場合に比べて軽量化できる。また、ホルダ側から偏心バーの先端側に向かって横断面面積が減少する先細形状とされているので、加工時にワークに防振治具が干渉することを可及的に防止でき、またホルダの面盤側固定点を中心とするモーメントに対する強度を増大することができる。
【0046】
本開示の一態様に係る防振治具(6)は、アルミ合金とされている。
【0047】
アルミ合金とされているので、鉄を用いる場合に比べて軽量化できる。これにより、取扱いが容易となり、また切削加工時に回転した場合の慣性力を小さくすることができる。
【0048】
本開示の一態様に係る切削加工装置(1)は、回転軸線(CL1)回りに回転する面盤(3)と、前記面盤(3)に対して前記回転軸線(CL1)から偏心して固定されたホルダ(5)と、前記ホルダ(5)に対して固定されて前記回転軸線(CL1)と平行に延在する長手軸線(CL2)を有する偏心バー(7)と、前記偏心バー(7)の先端に刃物(8)を着脱可能に収容する取付片(9)と、上記のいずれかの防振治具(6)と、を備えている。
【0049】
本開示の一態様に係る切削加工方法は、回転軸線(CL1)回りに回転する面盤(3)と、前記面盤(3)に対して前記回転軸線(CL1)から偏心して固定されたホルダ(5)と、前記ホルダ(5)に対して固定されて前記回転軸線(CL1)と平行に延在する長手軸線(CL2)を有する偏心バー(7)と、前記偏心バー(7)の先端に刃物(8)を着脱可能に収容する取付片(9)と、を備えた切削加工装置(1)を用いた切削加工方法であって、前記偏心バー(7)の外周を把持し、かつ、前記ホルダ(5)の端部に対して延長接続されるように防振治具(6)を固定し、前記取付片(9)に取り付けた前記刃物(8)を用いてワーク(20)の切削を行う。
【符号の説明】
【0050】
1 横中ぐり機(切削加工装置)
2 主軸
3 面盤
5 ホルダ
6 防振治具
6a 先端
6b 後端
6c 上面
6d 右側面
6e 左側面
6f 下面
7 偏心バー
8 超硬チップ(刃物)
9 取付片
10 スライド部
11 貫通孔
11a 隙間(把持部)
12 スリット
14 第1ボルト用通し穴(把持部)
16 座ぐり部
18 第2ボルト用通し穴(ホルダ固定部)
20 蒸気弁本体
20a 内径
22 固定治具
CL1 回転軸線
CL2 (偏心バーの)長手軸線
CL3 (防振治具の)長手軸線
P1 蒸気止め弁設置位置
P2 蒸気加減弁設置位置
L 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7