(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112287
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】係船機及び船舶
(51)【国際特許分類】
B63B 21/16 20060101AFI20230804BHJP
B66D 1/72 20060101ALI20230804BHJP
B63B 15/02 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
B63B21/16
B66D1/72 A
B63B15/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013967
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】518144045
【氏名又は名称】三井E&S造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】中田 崇
(57)【要約】
【課題】係船金物を増やさずに従来よりも係船機を設置する甲板上のスペースを減らすことができる係船機の提供。
【解決手段】船舶100の係船甲板107に設置されたドラム3であり、軸方向が上方を向いた回転軸5を中心に回転することで、船舶100の係留時に係船柱103に結束される係留用のロープ105を巻き取り/繰り出すドラム3を備える係船機1であって、ドラム3は、ドラム3の軸方向の中途に設けられたスプリットフランジ19と、スプリットフランジ19の上方の部分であり、ロープ105の一端が結束されロープ105を多層に巻き取り格納するストレージパート25と、ストレージパート25にドラム3の軸方向に直列配置され、ストレージパート25から繰り出されたロープ105を1層分、巻き取って岸壁101の係船柱103にロープ105を繰り出して、係留の際にロープ105から加えられる荷重を受け止めるテンションパート27を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の係船甲板に設置されたドラムであって、軸方向が上方を向いた回転軸を中心に回転することで、船舶の係留時に係留施設に結束される係留用のロープを巻き取り/繰り出すドラムと、前記ドラムを回転させる駆動装置と、前記駆動装置が生成した動力の前記ドラムへの伝達の断接を行うクラッチ機構を備える係船機であって、
前記ドラムは、
前記ドラムの軸方向の中途の外筒部分に設けられたリング状のフランジであって、前記ドラムの径方向に形成された切り欠きを有するスプリットフランジと、
前記スプリットフランジの上方、又は下方の外筒部分であり、前記ロープの一端が結束され、前記ロープを多層に巻き取り格納するストレージパートと、
前記ストレージパートに前記スプリットフランジを介して前記ドラムの軸方向に直列配置される外筒部分であり、前記切り欠きを介して前記ストレージパートから繰り出された前記ロープを1層分、巻き取って前記係留施設に前記ロープを繰り出して、係留の際に前記ロープから加えられる荷重を受け止めるテンションパートと、
を備えることを特徴とする係船機。
【請求項2】
前記回転軸の軸方向が鉛直方向を向く、請求項1に記載の係船機。
【請求項3】
前記ストレージパートは前記テンションパートよりも上方に設けられる、請求項1又は2に記載の係船機。
【請求項4】
前記ストレージパートは前記テンションパートよりも下方に設けられ、
前記ドラムは、前記ストレージパートの外筒部分の径が下方に行くほど大きい円錐形状である、請求項1又は2に記載の係船機。
【請求項5】
前記スプリットフランジは複数設けられ、
前記ストレージパートは複数が前記スプリットフランジを介して隣接して直列配置され、複数の前記ストレージパートの最下端よりも下方、又は最上端よりも上方に前記スプリットフランジを介して前記テンションパートが設けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の係船機。
【請求項6】
前記回転軸は筒状であり、筒の中空部分を挿通する支柱が前記係船甲板に固定され、前記支柱が前記係船甲板に固定されることで前記回転軸を支持し、
前記支柱は、前記係船甲板上のマスト、又は前記係船甲板上に設置される上部構造物や甲板を支持する柱である、請求項1~5のいずれか一項に記載の係船機。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の係船機を備える船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は係船機及び当該係船機を備える船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶は港湾や沖合に停泊する際に、船舶側からロープを繰り出し、港湾や沖合に設置された係留施設にロープを結束することで係留施設に固定される。そのため、船舶の係船甲板上にはロープの巻き取り、繰り出しを行うドラムを備えた係船機が設置される。
係船機のドラムは回転軸が水平方向を向く横置きが一般的である。一方で横置きのドラムは水平方向において、回転軸に垂直な1方向にしかロープを繰り出せないため、他の向きにロープを繰り出す場合、ロープをガイドして繰り出す向きを曲げる係船金物を甲板上に設置する。ただし係船金物はロープと摺動して摩耗させることでロープを破断させる恐れがあるため、使用頻度をなるべく減らす必要がある。そのため、係船金物を増やさない場合は、ロープを繰り出す向きが増えるほど、繰り出す向きに対応して係船機の数を増やす必要があった。一方で、近年では環境保護の観点から船舶の内燃機関の燃焼で生じた排ガス中のSOxやNOx等の環境汚染物質の排出規制が厳しくなっており、排ガスから環境汚染物質を除去する浄化装置を船舶が搭載する場合がある。浄化装置は、機関室等の船内区画に収納スペースが不足する場合、係船甲板に設置する場合があり、この場合は係船甲板上に係船機を設置するスペースが不足するので、係船機の数を増やし難くなる。そのため、係船金物の使用頻度を減らしつつ、係船機の設置スペースを確保するためには、船体を大きくするしかなかった。
【0003】
一方で、係船機には回転軸が鉛直方向を向く縦置きのドラムを備えたムアリングキャプスタン(ロープ牽引装置)もある(特許文献1)。ムアリングキャプスタンは水平方向のいずれの向きにもロープを繰り出せるので、回転軸が水平方向を向く横置きのドラムを備えた係船機と比べて係船金物の使用頻度を減らせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に使用されている係船機はロープから加えられる荷重を受け止めつつロープを巻き取り/繰り出す機能と、巻き取ったロープを格納する機能を備えている。しかしながら特許文献1に記載のムアリングキャプスタンはロープの巻き取り/繰り出しの機能しか有しておらず、ロープを格納する機能はない。よって、ムアリングキャプスタンが巻き取ったロープを格納するためには別途、甲板上に設置したロープ格納用のドラムが必要である。そのため、ムアリングキャプスタンを用いる場合はロープ格納用のドラムを設置するスペースが甲板上に必要となり、結局は係船機を設置する甲板上のスペースを減らすことができなかった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、係船金物を増やさずに従来よりも係船機を設置する甲板上のスペースを減らすことができる係船機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するため、本発明の係船機は、船舶の係船甲板に設置されたドラムであって、軸方向が上方を向いた回転軸を中心に回転することで、船舶の係留時に係留施設に結束される係留用のロープを巻き取り/繰り出すドラムと、前記ドラムを回転させる駆動装置と、前記駆動装置が生成した動力の前記ドラムへの伝達の断接を行うクラッチ機構を備える係船機であって、前記ドラムは、前記ドラムの軸方向の中途の外筒部分に設けられたリング状のフランジであって、前記ドラムの径方向に形成された切り欠きを有するスプリットフランジと、前記スプリットフランジの上方、又は下方の外筒部分であり、前記ロープの一端が結束され、前記ロープを多層に巻き取り格納するストレージパートと、前記ストレージパートに前記スプリットフランジを介して前記ドラムの軸方向に直列配置される外筒部分であり、前記切り欠きを介して前記ストレージパートから繰り出された前記ロープを1層分、巻き取って前記係留施設に前記ロープを繰り出して、係留の際に前記ロープから加えられる荷重を受け止めるテンションパートと、を備えることを特徴とする。
また、本発明の船舶は、上記に記載の係船機を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成では、ドラムにロープを格納する際はテンションパートに巻き付いたロープを、一旦、繰り出す等してテンションパートから外してストレージパートに巻き取る。ストレージパートに巻き付けなかった残りの部分は再度テンションパートに巻き取る。ドラムからロープを繰り出す際は、ストレージパートから一旦、係留施設側に向けてロープを十分な長さだけ繰り出す。ロープを繰り出した後は、余分に繰り出したロープをストレージパートに巻き取り、その後、切り欠きを介して繰り出したロープをテンションパートに移動し、ロープに十分な張力がかかるように1層分巻き上げる。
この構成では、ドラムが巻き取ったロープを格納することも、ロープの巻き取り/繰り出しを行うこともでき、かつロープの巻き取り/繰り出しの向きを水平方向のいずれの向きにも設定できる。そのため、係船金物を増やさずに従来よりも係船機を設置する甲板上のスペースを減らすことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、係船金物を増やさずに従来よりも係船機を設置する甲板上のスペースを減らすことができる係船機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る係船機を係船甲板に備える船舶が、係留施設に係留された状態を示す側面図である。
【
図4】
図1のドラムと下側クラッチ板とクラッチレバーを示す分解図である。
【
図5】クラッチ機構の断接を説明するためのクラッチ機構及びドラムの側面図であって、(a)はクラッチ機構が「接」状態にある場合の図であり、(b)はクラッチ機構が「断」状態にある場合の図であり、(c)は(a)のクラッチ機構近傍の拡大図である。
【
図8】(a)は本発明の第2の実施形態に係る係船機を示す側面図であって、(b)は(a)のストレージパート付近の拡大図、(c)は、(b)でストレージパートが円筒の場合を示す図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態に係る係船機を示す側面図である。
【
図10】本発明の第4の実施形態に係る係船機を示す側面図である。
【
図11】本発明の第5の実施形態に係る係船機を示す側面図である。
【
図12】本発明の第6の実施形態に係る係船機を示す側面図である。
【
図13】本発明の第7の実施形態に係る係船機を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
まず
図1及び
図2を参照して本発明の第1の実施形態に係る係船機1の概略構成を説明する。ここでは係船機1として、船舶100の係船甲板107に設置され、係留用のロープ105を繰り出して係留施設である岸壁101の、係船柱103に結束することで、船舶100を係留施設である岸壁101に係留する係船機1を例示している。
図1に示すように、係船機1はドラム3、回転軸5、モータ7、ギアボックス9、ブレーキ17、及びクラッチ機構15を備える。
【0011】
ドラム3は回転することで、船舶100の係留時に岸壁101に結束されるロープ105を巻き取り/繰り出すとともに、巻き取ったロープ105を格納する円筒状の部品であり、
図1に示すように船舶100の係船甲板107に設置される。ドラム3は筒の外周面にロープ105を巻き取り/繰り出すようになっている。
図1に示すドラム3は軸方向が上方を向いた回転軸5を中心に回転する。そのため、ドラム3は円筒の軸方向が上方を向いた縦置きの状態で係船甲板107に設置される。
このように、ドラム3を縦置きにすることで、係船金物でロープ105の向きを変えることなく、水平方向のいずれの向きにもロープ105を繰り出すことができる。
【0012】
図1及び
図2に示すようにドラム3は外筒部分3a、ドラムフランジ21、23、スプリットフランジ19、ストレージパート25、及びテンションパート27を備える。
【0013】
外筒部分3aはロープ105を巻き取る筒状の部分であり、軸中心には回転軸5が挿入される貫通孔である軸孔3bが設けられる(
図4参照)。ドラムフランジ21、23は外筒部分3aが巻き取ったロープ105が軸方向に移動して外筒部分3aから外れないようにするリング状のフランジである。
【0014】
ドラムフランジ21は外筒部分3aの上端に設けられ、外径が外筒部分3aの外径よりも大きい。そのため、外筒部分3aに巻き付けられたロープ105が仮に上方に移動しようとしても、ドラムフランジ21に接触するとそれ以上の上方への移動を阻止される。
ドラムフランジ23は外筒部分3aの下端に設けられ、外径が外筒部分3aの外径よりも大きい。そのため、外筒部分3aに巻き付けられたロープ105が仮に下方に移動しようとしても、ドラムフランジ23に接触するとそれ以上の下方への移動を阻止される。
【0015】
スプリットフランジ19はドラム3の軸方向の中途の外筒部分3aに設けられたリング状のフランジである。
スプリットフランジ19はドラムフランジ21及びドラムフランジ23と同様に、外径が外筒部分3aの外径よりも大きい。そのため、スプリットフランジ19よりも下方の外筒部分3aに巻き付けられたロープ105がスプリットフランジ19よりも上方に移動するのを阻止する。さらにスプリットフランジ19よりも上方の外筒部分3aに巻き付けられたロープ105がスプリットフランジ19よりも下方に移動するのを阻止する。
【0016】
図2に示すようにスプリットフランジ19はドラム3の外筒部分3aの径方向に形成された切り欠き31を有する。切り欠き31はスプリットフランジ19よりも上方の外筒部分3aと下方の外筒部分3aの間でロープ105に必要な張力を掛ける際にロープ105が通る部分である。よって切り欠き31の径方向及び円周方向の大きさは、少なくともロープ105の外径よりも大きい。
【0017】
ストレージパート25はドラム3が巻き取ったロープ105を格納する格納部であり、スプリットフランジ19の上方、又は下方の外筒部分3aである。
図1及び
図2ではスプリットフランジ19の上方の外筒部分3aがストレージパート25である。ストレージパート25には、外筒部分3aから径方向に突設され、ロープ105の一端が結束される鉤であるフック34が設けられる。よってフック34が設けられた外筒部分3aがストレージパート25であると言える。
【0018】
この構成では、ロープ105の一端の輪になっている部分をフック34に引っ掛けて、さらにロープ105をストレージパート25に多層に巻き取り格納することで、ロープ105を巻き取ってドラム3に格納する。多層に巻き取るとは、既にドラム3に巻き取ったロープ105の外周側にさらにロープ105を巻き取ることを意味する。巻き取ることができるロープ105の層の厚さは、ドラムフランジ21及びスプリットフランジ19の径方向の長さを超えない範囲である。
【0019】
テンションパート27は、ストレージパート25から繰り出されたロープ105を1層分、巻き取って係留施設である岸壁101にロープ105を繰り出して、係留の際にロープ105から加えられる荷重を受け止める荷重部である。
テンションパート27は、ストレージパート25の上方あるいは下方にスプリットフランジ19を介してドラム3の軸方向に直列配置される外筒部分3aである。
図1及び
図2ではストレージパート25の下方に直列配置されている。
【0020】
テンションパート27は係留の際に、ストレージパート25から切り欠き31を介して繰り出されたロープ105を1層分、巻き取る。巻き取ったロープ105は係留施設である岸壁101に繰り出され、係船柱103に係留される。1層分、巻き取るとは、既に巻き取ったロープ105の外周側にさらにロープ105を巻き付けずに、ロープ105の内周側をドラム3の外筒部分3aにのみ接触させて巻き取ることを意味する。
この構成では、岸壁101に係留された船舶100が波で揺動する等して動く際にロープ105を引っ張ることでロープ105からドラム3に加えられる荷重をテンションパート27が受け止めることで、船舶100が係留された状態を維持する。
【0021】
なお、係留の際にテンションパート27がロープ105を多層に巻き取ると、ロープ105に荷重が加えられた場合に上層のロープ105が下層のロープ105同士の隙間に入り込む等して移動する。この状態ではロープ105の位置が固定されないのでテンションパート27がロープ105からドラム3に加えられる荷重を十分に受け止められない。そのため、テンションパート27はロープ105を1層分しか巻き取らない。
【0022】
このように、船舶100の係船機1の縦置きされたドラム3は、ストレージパート25とテンションパート27がスプリットフランジ19で仕切られてドラム3の外筒部分3aの軸方向に直列に配置されている。
【0023】
この構成では、ドラム3にロープ105を格納する際はテンションパート27に巻き付いたロープ105を、一旦、繰り出す等してテンションパート27から外してストレージパート25に巻き取る。ストレージパート25に巻き付けなかった残りの部分は再度テンションパート27に巻き取る。ドラム3からロープ105を繰り出す際は、ストレージパート25から一旦岸壁101側に向けてロープ105を十分な長さだけ繰り出す。ロープ105を繰り出した後は、余分に繰り出したロープ105をストレージパート25に巻き取り、その後、切り欠き31を介して繰り出したロープ105をテンションパート27に移動し、ロープ105に十分な張力がかかるように1層分巻き上げる。
【0024】
そのため、係船機1はドラム3が巻き取ったロープ105を格納することも、ロープ105の巻き取り/繰り出しを行うこともでき、かつロープ105の巻き取り/繰り出しの向きを水平方向のいずれの向きにも設定できる。よって、係船金物を増やさずに従来よりも係船機1を設置する甲板上のスペースを減らすことができる。
【0025】
図1及び
図3に示す回転軸5は、回転することでドラム3に動力を伝達する軸であり、
図4に示すドラム3の軸孔3bに挿入される。ただし、回転軸5はドラム3に動力を直接伝達せずに互いに独立して回転可能にドラム3を軸方向に挿通して両端がドラム3から突設する。
具体的には、
図4に示すドラム3の軸孔3b内には図示しない軸受が設けられ、回転軸5を回転可能に支持している。また軸孔3bの内径は回転軸5の外径より大きい。
また、
図1及び
図3に示すように回転軸5は、軸方向の中途の外周回りに、ドラム3が搭載されるリング状のフランジである支持フランジ43を備えている。
ドラム3は回転軸5が軸孔3bを挿通した状態で、支持フランジ43上に搭載されることで回転軸5に支持される。ドラム3は支持フランジ43上に搭載されているため、支持フランジ43よりも下方に落下することはない。ただし支持フランジ43とドラム3の接触面にも図示しない軸受が支持フランジ43とドラム3を互いに回転可能に支持している。
そのため、回転軸5を回転させただけではドラム3は回転軸5から動力が伝達されず、回転しない。
【0026】
回転軸5は軸方向が上方を向いている。
図1では軸方向が鉛直方向を向いている。回転軸5の軸方向は、上を向いており、かつドラム3を縦置きしてロープ105を繰り出す水平方向の向きを360°にできるのであれば完全に鉛直方向を向く必要はなく、鉛直方向に対して傾斜してもよい。
ただし、回転軸5の軸方向が鉛直方向を向くと、回転軸5が自重やドラム3の重量による曲げ応力を受けないので、強度面で有利になり、好ましい。
【0027】
図1に示す回転軸5は係船甲板107上に配置されている。
具体的には、
図1に示す回転軸5は、係船甲板107に設置された甲板筒状部11に下端が収納されることで、係船甲板107上に配置されている。よって
図1に示す係船機1は甲板筒状部11を備える。
甲板筒状部11は回転軸5の下端を回転可能に収納する、上端が開放された筒状の軸受であり、係船甲板107に設けられ、他の係船甲板107の部分よりも上方若しくはロープ105がドラム3を引っ張る方向からの荷重に強い構造に補強された床面である補強部11b上に設置される。甲板筒状部11はさらに、直角三角形状の補強板11aで補強されている。具体的には補強板11aの直角三角形の直角を挟む2辺の内の一辺が甲板筒状部11の外周に辺が上方を向いて溶接等で固定され、直角を挟む他の1辺が補強部11bの上面に溶接等で固定される。
このように、
図1に示す係船機1は甲板筒状部11を介して係船甲板107上に支持されて係船甲板107上に配置される。この構成では、係船機1を設置するための係船甲板107上の加工が、甲板筒状部11の設置スペースと固定用の補強部11bの設置だけでよいので、係船機1の取付の際の作業性やコストに優れる。
【0028】
図1に示すモータ7はドラム3を回転させる動力を生成する油圧モータであり、係船甲板107上に設けられた支持部である台座13上に出力軸が上方を向くように設置されている。モータ7は船舶100の船内の図示しない油圧系統に接続されており、係船作業員の操作等に応じて油圧源から作動油の供給を受けて回転する。モータ7はドラム3を回転させるのに必要な動力を生成できるのであれば、油圧モータではなく、公知の電動モータを用いてもよい。
【0029】
ギアボックス9はモータ7で生成された動力を回転軸5に伝達する機構であり、モータ7とギアボックス9で駆動装置を構成している。
図1に示すギアボックス9は、モータ側ギア9a、回転軸側ギア9b、及びボックスカバー9cを備える。
モータ側ギア9aはモータ7の出力軸に固定される歯車であり、
図1では出力軸が鉛直方向を向く平歯車を例示している。
回転軸側ギア9bは回転軸5に固定される歯車であり、
図1及び
図3では回転軸5の外周回りに固定された平歯車を例示している。モータ側ギア9aと回転軸側ギア9bは互いに噛み合うギアであり、噛み合うことで、モータ7が生成した動力をモータ7の出力軸、モータ側ギア9a、及び回転軸側ギア9bを介して回転軸5に伝達して回転軸5を回転させる。
なお、
図1ではモータ側ギア9aと回転軸側ギア9bは各々1個しか例示していない。しかしながら径の異なるモータ側ギア9aと回転軸側ギア9bの組み合わせを複数組設けて、互いに噛み合うモータ側ギア9aと回転軸側ギア9bの組み合わせでギア比を調整できるようにしてもよい。
ボックスカバー9cはモータ側ギア9aと回転軸側ギア9bにゴミが付着するのを防いだり、潤滑材を保持したりする外装であり、モータ側ギア9aと回転軸側ギア9bを囲むように設けられる。
【0030】
ブレーキ17はドラム3の回転を止める制動装置である。
図1ではブレーキ17としてバンドブレーキを例示しており、ドラムフランジ23の下面に設けられたリング状のブレーキドラムにブレーキバンドを巻き付け、ブレーキバンドがブレーキドラムを締め付ける強さで制動力を調整する。
【0031】
クラッチ機構15は駆動装置を構成するモータ7が生成した動力のドラム3への伝達の断接を行う機構である。
図1に示すクラッチ機構15は、回転軸5とドラム3との間の動力の伝達の断接を行う機構である。よって、
図1に示すようにモータ7が生成した動力はギアボックス9を介して回転軸5までは切断されずに伝達される。
図3~
図5に示すように、クラッチ機構15は上側クラッチ板51、下側クラッチ板53、及びクラッチレバー61を備える。
【0032】
上側クラッチ板51はドラム3よりも上方の回転軸5の外周回りに固定されて回転軸5と一体となって回転するクラッチ板であり、
図3に示すように回転軸5の外周回りに固定された環状の部材である。
【0033】
下側クラッチ板53はドラム3に動力を伝達しつつドラム3と共に回転して動力を伝達しながらドラム3に対して上下動可能な部材である。下側クラッチ板53は上側クラッチ板51と係合することで、モータ7が生成した動力をギアボックス9、回転軸5、及び上側クラッチ板51を介してドラム3に伝達するクラッチ板である。下側クラッチ板53は、
図5に示すように上側クラッチ板51の下方でドラム3の上部に連結される。
【0034】
図4に示すように下側クラッチ板53は板状部55、クラッチ側筒状部57、及びキー59を備える。
また、
図4に示すようにドラム3の上端面には、下側クラッチ板53を保持する機構としてドラム側筒状部35と長孔37が設けられる。
【0035】
板状部55は、上面が上側クラッチ板51の下面と当接することで、クラッチ機構15を「接」状態にする環状の部材であり、上側クラッチ板51の直下で回転軸5の外周回りに配置される。板状部55は上側クラッチ板51と当接した際に滑らない程度の摩擦力を確保できる寸法、形状であればよく、具体的には上側クラッチ板51と同じ平面寸法であればよい。ただし、板状部55は回転軸5が挿通し、かつクラッチ機構15の断接の際には回転軸5の軸方向に上下動するため、回転軸5の外径よりも径方向の寸法が大きい必要がある。また、回転軸5の外径よりも大きい内径の円形の貫通孔が板状部55の軸中心に設けられる。
【0036】
クラッチ側筒状部57は下側クラッチ板53がドラム3と共に回転して動力を伝達しながらドラム3に対して上下動するための筒状部材であり、板状部55の下面に設けられる。
クラッチ側筒状部57は上下動の際に回転軸5の軸方向に上下動する。そのため、回転軸5の外径よりもクラッチ側筒状部57の内径が大きい必要がある。
【0037】
キー59は下側クラッチ板53が回転する際に回転力をドラム3に伝達する部材である。より具体的にはキー59は下側クラッチ板53が回転する際に回転力をドラム3に設けられたドラム側筒状部35に伝達する部材であり、クラッチ側筒状部57の外周から径方向に突設された棒状の部材である。
キー59は下側クラッチ板53が回転する際に回転力をドラム側筒状部35に伝達する際に反力で変形しない程度の強度を備えていれば、寸法や形状は適宜選択できる。一般には縦長の直方体である。
【0038】
ドラム側筒状部35は下側クラッチ板53が回転する際に回転力を下側クラッチ板53からドラム3に伝達するとともに、下側クラッチ板53が上下動する際のガイドとなる筒状の部材である。ドラム側筒状部35はドラム3の上端面に固定され、かつクラッチ側筒状部57の外周回りに設けられる。
ドラム側筒状部35は下側クラッチ板53のクラッチ側筒状部57が径方向に移動するのを規制しつつ、上下動するのを許容する寸法である必要があるため、内径がクラッチ側筒状部57の外径よりも大きい。また回転軸5が筒の中空部分を挿通するため、内径が回転軸5の外径より大きい。さらにドラム側筒状部35は回転軸5と同軸に配置されるのが好ましい。
【0039】
長孔37は下側クラッチ板53のキー59が挿通される孔であり、ドラム側筒状部35にドラム3の軸方向、ここでは鉛直方向に延在して設けられる孔である。
図5(a)に示すようにドラム側筒状部35は中空部分にクラッチ側筒状部57が挿入され、長孔37にはキー59が挿入される。
この状態で下側クラッチ板53が回転すると、下側クラッチ板53のキー59がドラム側筒状部35の長孔37の内周を、回転する向きに押圧するため、ドラム側筒状部35は下側クラッチ板53と共に同じ向きに回転する。ドラム側筒状部35はドラム3に固定されているため、ドラム3も下側クラッチ板53と共に同じ向きに回転する。
また、ドラム3と下側クラッチ板53が共に回転している時に下側クラッチ板53に対して上方又は下方に力を加えると、下側クラッチ板53は長孔37の内周にガイドされ、ドラム3と共に回転しつつ、上方又は下方に移動できる。
【0040】
クラッチレバー61は下側クラッチ板53を上下動させるレバーであり、下側クラッチ板53と連結されている。より具体的にはクラッチレバー61は、
図5(a)に示すように支持棒61a及び接触棒61bを備える
支持棒61aは接触棒61bを支持する棒であり、ドラムフランジ21の上面の、下側クラッチ板53よりも径方向外側に、鉛直方向上方に突設される。
接触棒61bは下側クラッチ板53を上下動させる棒であり、棒の両端の間が水平方向を向く軸中心に
図5(a)(b)のC1、C2の向きに回転可能に支持棒61aに支持される。接触棒61bの一端は下側クラッチ板53の板状部55の下面に当接またはC1、C2の向きに回転可能に接続されることで下側クラッチ板53に連結される。よって、下側クラッチ板53の板状部55の下面はクラッチレバー61に当接している。接触棒61bの他端はクラッチを係船作業員が遠隔操作するための図示しないアクチュエータが連結される操作部62となる。
【0041】
この構成では、クラッチレバー61の操作部62が下方であるZ2の向きに押し下げられると、
図5(a)に示すように接触棒61bがC1の向きに回転する。これにより、接触棒61bの板状部55の下面に当接する端部が板状部55ごと下側クラッチ板53を上方であるZ1の向きに押し上げる。押し上げられた下側クラッチ板53は上方に移動して板状部55が上側クラッチ板51に接触することでクラッチ機構15が「接」状態になる。「接」状態では、モータ7が生成した動力はギアボックス9を介して回転軸5まで伝達され、さらに上側クラッチ板51と下側クラッチ板53に伝達される。これにより下側クラッチ板53は回転軸5及び上側クラッチ板51と共に回転するが、この際、下側クラッチ板53のキー59がドラム側筒状部35の長孔37の内周を回転する向きに押圧する。そのため、ドラム側筒状部35とドラム3も下側クラッチ板53と共に同じ向きに回転する。よってモータ7が生成した動力がドラム3に伝達され、ドラム3が回転する。
【0042】
一方で、
図5(a)に示す状態からクラッチレバー61の操作部62が上方であるZ1の向きに引き上げられると、
図5(b)に示すように接触棒61bがC2の向きに回転する。これにより、接触棒61bの板状部55の下面に当接する端部がZ2の向きに下降する。接触棒61bの板状部55の下面に当接する端部が下降すると、板状部55を含む下側クラッチ板53は自重又は接触棒61bに引っ張られてZ2の向きに下降する。上側クラッチ板51が板状部55から離れるまで下降するとクラッチ機構15が「断」状態になる。「断」状態では、モータ7が生成した動力はギアボックス9を介して回転軸5まで伝達されるが、ドラム3には伝達されず、モータ7の動力でドラム3は回転しない。
【0043】
このようにクラッチ機構15は、クラッチレバー61が下側クラッチ板53を上方に移動させて上側クラッチ板51と当接させるとモータ7で生成された動力を回転軸5、上側クラッチ板51、下側クラッチ板53を介してドラム3に伝達して回転させる。またクラッチ機構15は、クラッチレバー61が下側クラッチ板53を下方に移動させて上側クラッチ板51から離間させることでドラム3への動力の伝達を遮断する。
【0044】
なお、長孔37はキー59が挿通される孔なので、径方向の幅はキー59の径方向の幅よりも大きい。また、キー59が長孔37から外れると下側クラッチ板53からドラム側筒状部35及びドラム3に動力が伝達できなくなる。そのため、長孔37の位置及び鉛直方向長さは、クラッチ機構15が
図5(a)に示す「接」状態と、
図5(b)に示す「断」状態の両方で長孔37にキー59が挿通された状態となる位置及び長さである。
【0045】
図5ではクラッチ機構15が、回転軸5とドラム3との間の動力の伝達を断接する構造としているが、クラッチ機構15はモータ7からドラム3への動力の伝達経路の中途に設けられていればよい。例えば
図6に示すように、モータ7の出力軸と、モータ側ギア9aの間にクラッチ機構15を設けても良い。この場合、回転軸5はドラム3に固定する。
【0046】
ただし、
図5に示すようにクラッチ機構15が、回転軸5とドラム3との間の動力の伝達を断接する構造とするのが好ましい。理由は主に以下の2つである。
まず、第1の理由について説明する。
図1に示す係船機1は、係留中はロープ105が繰り出されないようにドラム3の回転をブレーキ17による制動のみで阻止する構造である。これは、モータ7から伝達される動力を、ドラム3が逆回転することを防ぐための制動装置としても用いる場合、動力源であるモータ7を係留中に長時間稼働させ続ける必要があるためである。ドラム3の回転をブレーキ17による制動のみで阻止する構造の場合、ドラム3を回転軸5から切り離す方が、ブレーキ17の制動対象がドラム3のみとなり、回転軸5を制動する必要がないので好ましい。そのためクラッチ機構15が、回転軸5とドラム3との間の動力の伝達を断接する構造とするのが好ましい。
【0047】
次に、第2の理由について説明する。
係船機1は、回転軸5と甲板筒状部11と補強部11bの耐荷重の範囲内で、かつロープ105がドラムフランジ21、23と干渉しない範囲であれば、
図7に示すように1つの回転軸5に複数のドラム3を直列に設けることも可能である。一方で1つの回転軸5に複数のドラム3を直列に設けた構造で、
図6に示すように、モータ7の出力軸と、モータ側ギア9aの間にクラッチ機構15を設けた場合、クラッチを「断」にすると回転軸5に動力が伝達されなくなる。そのため、回転軸5に固定された複数のドラム3が同時に「断」になる。逆にクラッチを「接」にすると複数のドラム3が同時に「接」になる。そのため、個々のドラム3へのクラッチの断接操作を独立して行えない。
【0048】
一方で、クラッチ機構15が、回転軸5とドラム3との間の動力の伝達を断接する構造とすると、
図7に示すように、個々のドラム3のクラッチ機構15が「断」状態でも「接」状態でも、モータ7が回転していれば回転軸5は回転している。そのため、個々のドラム3のクラッチの断接操作を独立して行うことができる。
このように、クラッチ機構15が、回転軸5とドラム3との間の動力の伝達を断接する構造では、ドラム単位でクラッチの断接ができる点で有利である。
以上が、クラッチ機構15が、回転軸5とドラム3との間の動力の伝達を断接する構造とするのが好ましい理由である。
【0049】
上側クラッチ板51及び下側クラッチ板53の当接面、具体的には上側クラッチ板51の下面と、下側クラッチ板53の板状部55の上面は、クラッチ機構15が「接」状態になった場合に互いに滑らない構造であればよい。具体的には平坦面でもよい。
ただし、互いに当接する面に円周方向に沿って設けられ、互いに噛み合う歯車を各々備えるのが好ましい。このような構造は噛み合いクラッチとも呼ばれる。
例えば
図3では上側クラッチ板51の下側クラッチ板53との当接面である下面には、円周方向に沿って設けられ軸方向に凹凸形状を有する上側歯車51aが設けられている。一方で
図4に示すように下側クラッチ板53の上側クラッチ板51との当接面である上面には、円周方向に沿って設けられ軸方向に凹凸形状を有する下側歯車55aが設けられている。
【0050】
さらに、上側歯車51aと下側歯車55aは、相手側の歯車と噛み合う際に相手側の歯車と接触する側面が回転軸5の軸方向に対して下方から上方に向けて、回転する向きと逆向きに傾斜している。例えば上側歯車51aにおいて、相手側の歯車である下側歯車55aと噛み合う際に下側歯車55aに接触する側面は
図3に示す側面51bである。また、下側歯車55aにおいて、相手側の歯車である上側歯車51aと噛み合う際に上側歯車51aと接触する側面は
図4に示す側面55bである。
ここで、
図5(c)に示すように、側面51bと側面55bは、回転軸5の軸方向であるZ方向に対して下方から上方に向けて、回転する向きであるAの向きと逆向きであるBの向きに傾斜している。
【0051】
この構成では下側クラッチ板53を上昇させて下側歯車55aを上側クラッチ板51の上側歯車51aに接触させると、下側クラッチ板53をクラッチレバー61で押し上げなくても下側歯車55aが上側歯車51aの接触面にガイドされて上方に移動する。これにより下側クラッチ板53が上側クラッチ板51と噛み合い、クラッチが「接」状態になる。
そのため、クラッチ機構15のクラッチ係合時に上側クラッチ板51と下側クラッチ板53が互いに滑りにくくなる。また、下側歯車55aと上側歯車51aの噛み合いが解除されないとクラッチ機構15が「断」にならないため、「接」状態から下側クラッチ板53が自重で多少下がってもクラッチ機構15が「断」にならず、意図しないクラッチの切断を防止できる。
【0052】
図1ではストレージパート25がテンションパート27よりも上に設けられている。理由は、以下の通りである。テンションパート27はロープ105からドラム3に加えられる荷重を受け止める荷重部である。そのため、テンションパート27がストレージパート25よりも上にあると、下にある場合と比べてロープ105からドラム3に荷重が加えられる力点の鉛直位置が回転軸5の支持部である甲板筒状部11から遠くなる。そのため、回転軸5の曲げモーメントが大きくなり、回転軸5が曲がりやすくなる。
また、テンションパート27がストレージパート25よりも上にあると、下にある場合と比べてテンションパート27の位置がロープ105を船外へ繰り出す際のガイドとなる船舶100側の係船金物の位置より高い位置になる。そのため、係留の際にテンションパート27から斜め下方に向けてロープ105を繰り出す必要がある場合が生じ、この場合、ドラムフランジ23等の部材とロープ105が干渉する可能性がある。よって、
図1ではストレージパート25がテンションパート27よりも上に設けられている。
【0053】
一方で、回転軸5の曲げの問題やドラムフランジ23等の部材とロープ105が干渉する問題がない場合はストレージパート25をテンションパート27よりも下に設けてもよい。この構成では、ロープ105を格納するためにテンションパート27からストレージパート25に移動させる際に、テンションパート27から外したロープ105を自重で下方のストレージパート25に移動させられる。そのため、ロープ105を格納する際の係船作業員の作業負担を軽減できる点で有利である。
以上が第1の実施形態に係る係船機1の概略構成の説明である。
【0054】
このように第1の実施形態の船舶100の係船機1の縦置きされたドラム3は、ストレージパート25とテンションパート27がスプリットフランジ19で仕切られてドラム3の軸方向に直列に配置されている。
【0055】
この構成では、ドラム3にロープ105を格納する際はテンションパート27に巻き付いたロープ105を、一旦、繰り出す等してテンションパート27から外してストレージパート25に巻き取って格納する。巻き付けなかった残りの部分は再度テンションパート27に巻き取る。ドラム3からロープ105を繰り出す際は、ストレージパート25から係留施設側に向けてロープ105を繰り出した後、余分に繰り出したロープ105をストレージパート25に巻き取り、ロープ105を巻き取る場所をテンションパート27に移して1層分ほどテンションパート27でロープ105を巻き取ることでロープ105に十分な張力がかかるようにする。
【0056】
そのため、係船機1はドラム3が巻き取ったロープ105を格納することも、ロープ105の巻き取り/繰り出しを行うこともでき、かつロープ105の巻き取り/繰り出しの向きを水平方向のいずれの向きにも設定できる。よって、係船金物を増やさずに従来よりも係船機1を設置する甲板上のスペースを減らすことができる。
【0057】
次に第2の実施形態について、
図8を参照して説明する。
第2の実施形態は第1の実施形態においてストレージパート25をテンションパート27よりも下方に設け、ドラム3のストレージパート25を円筒ではなく、外筒部分3aの径が下方に行くほど大きい円錐形状にしたものである。
なお、第2の実施形態について、第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の符号を付し、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
【0058】
図8(a)に示すように第2の実施形態に係る係船機1aはドラム3のストレージパート25をテンションパート27よりも下方に設けている。
また、係船機1aはドラム3のストレージパート25が、外筒部分3aの径が下方に行くほど大きい円錐形状になっている。
【0059】
このような構成とする理由について説明する。
係船機1aがロープ105をストレージパート25に格納する際には、まずロープ105を繰り出す向きにドラム3を若干回転させる等して、テンションパート27に巻き付いたロープ105を緩めて繰り出す。すると、繰り出されたロープ105は自重で下方に落下しようとする。そこで、落下しようとするロープ105を、ロープ105の自重を利用して係船作業員がストレージパート25に移動させて巻き取る。
この際、係船機1aはドラム3のストレージパート25が、外筒部分3aの径が下方に行くほど大きくなるように外周が傾斜した円錐形状である。そのため、
図8(b)に示すように外筒部分3aの傾斜面に沿ってロープ105を巻き付けていけば、下側のロープ105の外周端105aよりも内側にロープ105を巻き付けてストレージパート25に格納できる。
【0060】
この際、上側のロープ105を巻く位置では、
図8(b)に示すようにドラム3のストレージパート25の外筒部分3aが円錐形状の場合、
図8(c)に示すようにストレージパート25の外筒部分3aが円筒状の場合と比べて、下側のロープ105の外周端105aとドラム3の外周の間の水平距離Lが長くなる。よって格納の際に上側のロープ105が既に巻き付けた下側のロープ105よりも下方に落ち難くなり、ロープ105を均等に巻き付けやすくなる。
また、この構成では下側のロープ105の上に上側のロープ105を載せやすいので、ストレージパート25にロープ105を巻き取る際に重力に逆らって上側に向けてロープ105を巻き付けやすい。そのため、ストレージパート25から上方のテンションパート27にロープ105を繰り出しやすくなる。
以上が係船機1aのストレージパート25をテンションパート27よりも下方に設け、ドラム3のストレージパート25の外筒部分3aを円錐形状とする理由である。
【0061】
このように第2の実施形態によれば係船機1aの縦置きされたドラム3は、ストレージパート25とテンションパート27がスプリットフランジ19で仕切られてドラム3の軸方向に直列に配置されている。そのため、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0062】
また第2の実施形態によれば、係船機1aはストレージパート25がテンションパート27よりも下方に設けられ、かつ、ドラム3のストレージパート25が、外筒部分3aの径が下方に行くほど大きい円錐形状である。
この構成では、ロープ105を格納する際に外筒部分3aの傾斜面に沿ってストレージパート25にロープ105を巻き付けていけば、下側のロープ105の外周端105aよりも内側にロープ105が巻き付けられる。
【0063】
そのため、格納の際に既に巻き付けた下側のロープ105よりも下方に上側のロープ105が落ち難くなり、ロープ105をストレージパート25に均等に巻き付けやすくなる。
また、この構成では下側のロープ105の上に上側のロープ105を載せやすいので、ストレージパート25にロープ105を巻き取る際に重力に逆らって上側に向けてロープ105を巻き付けやすい。そのため、ストレージパート25から上方のテンションパート27にロープ105を繰り出しやすくなる。
【0064】
次に、第3の実施形態について
図9を参照して説明する。
第3の実施形態は第1の実施形態において、1つのドラム3に複数のストレージパート25を設けたものである。
なお、第3の実施形態において、第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の符号を付し、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
【0065】
図9に示すように、第3の実施形態に係る係船機1bはスプリットフランジ19a、19bを備える。スプリットフランジ19a、19bは第1の実施形態に係るスプリットフランジ19と同じ構造であり、切り欠き31も備える。なおスプリットフランジ19aはスプリットフランジ19bよりも下方に設けられている。
【0066】
この構成では、ドラムフランジ21とスプリットフランジ19bの間の外筒部分3aがストレージパート25の1つである上部ストレージパート25aを構成する。またスプリットフランジ19bとスプリットフランジ19aの間の外筒部分3aがストレージパート25の1つである下部ストレージパート25bを構成する。スプリットフランジ19aとドラムフランジ23の間の外筒部分3aはテンションパート27を構成する。
このように、係船機1bではスプリットフランジ19aがドラム3をストレージパート25とテンションパート27に区分している。さらに、スプリットフランジ19bが、ストレージパート25を上部ストレージパート25aと下部ストレージパート25bの2つに区分している。つまり、係船機1bのストレージパート25は、複数に分割され、スプリットフランジ19bを介して隣接して直列配置されている。
【0067】
この構成ではロープ105は、まず上部ストレージパート25aのフック34に結束され、上部ストレージパート25aに巻き取られて格納され、巻き取りきれない部分が切り欠き31を介して下部ストレージパート25bに巻き取られて格納される。最後に下部ストレージパート25bから残りのロープ105が切り欠き31を介してテンションパート27に繰り出されて巻き取られる。
このように、スプリットフランジ19a、19bでストレージパート25を複数、ここでは2つに分割する理由は以下の通りである。
【0068】
ストレージパート25はロープ105を格納する部分であるため、外筒部分3aに多層にロープ105を巻き取る。
このように多層にロープ105を巻き取る際に、一般にロープ105は断面が円形であるため、上層側のロープ105が下層側のロープ105同士の隙間に食い込む等して、途中でドラム3の径方向のロープ105の位置がずれる場合がある。また、ロープ105がドラム3の周方向に対して斜めに巻かれる等してロープ105の、ドラム3の軸方向への巻き取り位置がずれる場合もある。このように、ロープ105がドラム3の径方向及び軸方向にずれた巻き方を繰り返すと、ストレージパート25の一部のみにロープ105が塊状に多層に巻き付けられる「団子巻き」と呼ばれる状態になる。この状態では巻き取れるロープ105の長さが減ったり、ロープ105が絡まったりして巻き取りや繰り出しがし難くなったりする場合がある。
【0069】
一方で、係船機1bのようにストレージパート25を2つに分割すると、上部ストレージパート25aと下部ストレージパート25bのドラム3の軸方向の長さは、ストレージパート25が1つの場合と比べて短くなる。よってドラムフランジ21とスプリットフランジ19bの間の距離、及びスプリットフランジ19bとスプリットフランジ19aの間の距離も、ストレージパート25が1つの場合のフランジ間の距離と比べて短くなる。そのため、上部ストレージパート25aと下部ストレージパート25b内において、ロープ105がドラム3の径方向及び軸方向へ移動しようとしても、フランジや他のロープ105に移動を拘束され易くなる。
【0070】
よって、ロープ105を巻き取る際にドラム3の径方向及び軸方向にずれ難くなり、巻き取れるロープ105の長さが減ったり、ロープ105が絡まったりして巻き取りや繰り出しがし難くなったりするのを防止できる。以上がストレージパート25を複数に分割する理由である。
【0071】
なお、
図9ではストレージパート25を2つに分割した場合を例示したが、ロープ105の巻き取り/繰り出しの妨げにならないのであれば3つ以上に分割してもよい。また、複数のストレージパート25の、ドラム3の軸方向の距離は同じでも異なっていても良い。
ただし、複数のストレージパート25がテンションパート27を挟み込むような構造だと、一方のストレージパート25にしかロープ105を格納できない。そのため、複数のストレージパート25は隣接配置される必要がある。よって、複数のストレージパート25の最下端よりも下方、又は最上端よりも上方にスプリットフランジ19を介してテンションパート27が設けられる。
図9では、複数のストレージパート25の最下端よりも下方にテンションパート27が設けられる。
【0072】
このように第3の実施形態によれば係船機1bの縦置きされたドラム3は、ストレージパート25とテンションパート27がスプリットフランジ19aで仕切られてドラム3の軸方向に直列に配置されている。そのため、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0073】
また、第3の実施形態によれば、ストレージパート25が2つに分割されており、格納されるロープ105が複数のストレージパート25に分割して格納される。
よって、ロープ105を巻き取る際にドラム3の径方向及び軸方向にロープ105がずれ難くなり、巻き取れるロープ105の長さが減ったり、ロープ105が絡まったりして巻き取りや繰り出しがし難くなったりするのを防止できる。
【0074】
次に、第4の実施形態について
図10を参照して説明する。
第4の実施形態は、第1の実施形態において、甲板筒状部11を駆動装置と一体化させたものである。
なお、第4の実施形態において第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の符号を付し、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
【0075】
図10に示すように第4の実施形態に係る係船機1cは、第1の実施形態よりも甲板筒状部11の軸方向の長さが長く、甲板筒状部11の上端が駆動装置としてのギアボックス9の下端に達してギアボックス9と一体化されている。
このように、駆動装置を甲板筒状部11と一体化させてもよい。
【0076】
この構成では駆動装置が甲板筒状部11と一体化されているため、甲板筒状部11の上端がギアボックス9で塞がれる。そのため、甲板筒状部11と回転軸5の隙間から異物が侵入し難くなる。
また、甲板筒状部11に加えられる荷重を駆動装置にも分散させられる。
【0077】
なお、
図10ではギアボックス9を甲板筒状部11と一体化させているが、モータ7と甲板筒状部11をケーシング等の外装で囲むことで、モータ7と甲板筒状部11を一体化させてもよい。
【0078】
このように第4の実施形態によれば係船機1cの縦置きされたドラム3は、ストレージパート25とテンションパート27がスプリットフランジ19で仕切られてドラム3の軸方向に直列に配置されている。そのため、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0079】
また、第4の実施形態では係船機1cの甲板筒状部11を駆動装置と一体化させている。そのため、甲板筒状部11と回転軸5の隙間から異物が侵入し難くなる。また、甲板筒状部11に加えられる荷重を駆動装置にも分散させられる。
【0080】
次に第5の実施形態について、
図11を参照して説明する。
第5の実施形態は第1の実施形態において、回転軸5が係船甲板107を貫通する構成としたものである。また第5の実施形態は、モータ7とギアボックス9を係船甲板107の下方の船内甲板109上に設けたものである。
なお、第5の実施形態において第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の符号を付し、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
【0081】
図11に示すように第5の実施形態に係る係船機1dは回転軸5の下端が係船甲板107を貫通して係船甲板107の下方に設けられた船内区画111に達している。また、甲板筒状部11も係船甲板107を貫通して係船甲板107の下方に設けられた船内区画111に達している。
【0082】
この構造では回転軸5が受け止めるドラム3の荷重は、甲板筒状部11の下端11dが受け止める。甲板筒状部11は係船甲板107の貫通部の内周に支持されるため、最終的には回転軸5が受け止めるドラム3の荷重は、係船甲板107が受け止める。
このように、回転軸5は係船甲板107を貫通してもよい。
【0083】
この構成では回転軸5、ドラム3、クラッチ機構15等の係船甲板107上の構造物が係船甲板107の貫通部の内周に支持される。そのため、第1の実施形態のように甲板筒状部11を係船甲板107上に置く場合と比べて、特に係船機1dに水平方向に加えられる荷重に対して係船機1dの強度を高めやすい。
【0084】
さらに、
図11に示すように係船機1dは駆動装置を構成するモータ7とギアボックス9が係船甲板107の下方の船内区画111に配置されている。具体的にはモータ7は係船甲板107の下方の船内区画111の床面である船内甲板109上に設けられた台座13上に設けられている。ギアボックス9は、回転軸5のうち、係船甲板107を貫通して船内区画111内に配置された下端部分に回転軸側ギア9bが連結され、モータ側ギア9aも船内区画111内に配置されてモータ7の出力軸に連結され、回転軸側ギア9bと噛み合う。ボックスカバー9cも船内区画111内に配置される。
このように、駆動装置は係船甲板107の下方の船内区画111内に配置されてもよい。
【0085】
この構成では駆動装置が係船甲板107の下方の船内区画111内に配置されるため、係船甲板107上に駆動装置、及び駆動装置を支持する台座等の構造を設ける必要はない。
そのため、係船甲板107に打ち込まれる波浪である海水に含まれる塩分で駆動装置が腐食するのを防止できる。また、係船甲板107に駆動装置を設置する必要が無いため、第1の実施形態と比べて係船甲板107上における係船機1dの設置スペースを削減できる。
【0086】
このように第5の実施形態によれば係船機1dの縦置きされたドラム3は、ストレージパート25とテンションパート27がスプリットフランジ19で仕切られてドラム3の軸方向に直列に配置されている。そのため、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0087】
また、第5の実施形態では係船機1dの回転軸5の下端が係船甲板107を貫通して係船甲板107の下方に設けられた船内区画111に達している。そのため、係船機1dに水平方向に加えられる荷重に対して係船機1dの強度を高めやすい。
さらに、第5の実施形態によれば、係船機1dはモータ7とギアボックス9が係船甲板107の下方の船内区画111に配置されている。そのため、係船甲板107に打ち込まれる海水で駆動装置が腐食するのを防止できる。また、第1の実施形態と比べて係船甲板107上における係船機1dの設置スペースを削減できる。
【0088】
次に、第6の実施形態について、
図12を参照して説明する。
第6の実施形態は第1の実施形態において、甲板筒状部11で回転軸5を支持するのではなく、回転軸5を中空にして、中空部分を挿通する支柱81で回転軸5を支持する構造としたものである。
なお、第6の実施形態において、第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の符号を付し、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
【0089】
図12に示すように、第6の実施形態に係る係船機1eは回転軸5が中空の筒状になっている。
また
図12に示すように回転軸5の中空部分には丸棒状の支柱81が挿通しており、支柱81の下端は係船甲板107上に設けられた支持台である台座83に固定され、支柱81は軸方向が鉛直方向を向いて直立している。回転軸5は中空部分の内周及び台座83の上面に設けられた図示しない軸受を介して回転可能に支柱81及び台座83に支持されている。一方で、支柱81は台座83を介して係船甲板107に固定されており、回転しない。
【0090】
この構成では回転軸5が支柱81の外周回りに回転可能に支持されるので、回転軸5の内周全面が支柱81に接して支持される。
そのため、回転軸5に加えられる荷重が支柱81の特定箇所に集中し難く、強度面で有利である。
【0091】
支柱81は回転軸5を回転可能に支持できるように回転軸5の中空部の内径より小さい外径を有し、回転軸5を支持できる強度を備えるものであればよい。支柱81として、係船機1eを支持する専用の柱を係船甲板107上に設けてもよいが、係船甲板107上に設けられた既設の柱を流用してもよい。具体的には係船甲板107上のマスト、又は係船甲板107上に設置する上部構造物や甲板を支持する柱が挙げられる。
より具体的には、係船機1eを船首近傍に設ける場合は係船甲板107上に設けられ、船首信号灯を固定するマストを既設の柱として例示できる。
また、船橋等の上部構造物を支持する柱を支柱81として用いても良い。
また、船舶100の船尾側の係船甲板107上には、排ガス浄化装置であるスクラバーや、緊急時の脱出用の救命艇を、エンジンケーシングの後方の船尾側の係船甲板107上にさらに設けた甲板上に設ける場合がある。そのため、係船機1を船尾近傍に設ける場合、係船甲板107上に、さらに設けた甲板を支持する柱を、回転軸5を支持する支柱81として用いてもよい。
さらに、船舶100が車両運搬船の場合、車両をなるべく多く搭載するために、係船甲板107よりも上にさらに車両甲板を設置する場合がある。この場合は係船甲板107より上の車両甲板を支持する柱が係船甲板107と車両甲板を連結するように設けられる。そこで、この柱を、回転軸5を支持する支柱81として用いてもよい。
【0092】
このように、係船甲板107に既設の柱を支柱81として利用することで、新たに支柱81を設置する工事が不要になる。そのため、係船機1eを設置するコストを下げることができ、また係船機1eを設置するスペースを削減できる。
【0093】
このように第6の実施形態によれば係船機1eの縦置きされたドラム3は、ストレージパート25とテンションパート27がスプリットフランジ19で仕切られてドラム3の軸方向に直列に配置されている。そのため、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0094】
また、第6の実施形態に係る係船機1eは回転軸5が中空の筒状になっており、回転軸5の中空部分に支柱81が挿通して回転軸5を回転可能に支持する。そのため、回転軸5に加えられる荷重が支柱81の特定箇所に集中し難く、強度面で有利である。さらに、支柱81として係船甲板107に既設の柱を支柱81として利用できる場合、係船機1eを設置するコストを下げることができ、また係船機1eを設置するスペースを削減できる。
【0095】
次に第7の実施形態について、
図13を参照して説明する。
第7の実施形態は、第1の実施形態において、回転軸5を甲板筒状部11だけでなく、回転軸5の上端に連結した上端筒状部71と梁73と支持部材75でさらに支持するものである。
なお、第7の実施形態において第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の符号を付し、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
【0096】
図13に示すように、第7の実施形態に係る係船機1fは、第1の実施形態に係る係船機1の構成に加えて、上端筒状部71及び梁73を備える。
上端筒状部71はドラム3やクラッチ機構15より上方の回転軸5の外周回りに設けられ、回転軸5を回転可能に収納する、下端が開放された筒状の軸受である。
図13では回転軸5の上端を回転可能に収納している。
梁73は上端筒状部71の外周から水平方向に突設された棒状の部材であり、係船甲板107上に設けられた支持部材75に連結される。
支持部材75は係船甲板107上に設けられて係船甲板107に支持される構造物である。
【0097】
この構造では、上端筒状部71及び梁73を介して回転軸5を支持部材75で支持する。支持部材75は係船甲板107に支持されているため、この構造では回転軸5は下端が甲板筒状部11を介して係船甲板107に支持され、上端が上端筒状部71、梁73、及び支持部材75を介して係船甲板107に支持される。よって回転軸5の両端が係船甲板107に支持される。
【0098】
この構造では、回転軸5に加えられる荷重を回転軸5の両端を介して係船甲板107が受け止めるため、甲板筒状部11のみを介して係船甲板107が回転軸5を支持する場合と比べて係船機1fが倒れ難くなり、係船機1fの強度を高められる。
【0099】
支持部材75は、専用の柱を係船甲板107に建てたものを用いても良い。ただし、係船甲板107に設けられ、回転軸5に加えられる荷重を上端筒状部71及び梁73を介して受け止めて係船甲板107に伝達できる構造であれば、既設の構造を利用しても良い。例えば居住区を含む係船甲板107上の甲板室のような上部構造物の壁部、係船甲板107上のマスト、又はブルワークを支持部材75として用いても良い。居住区の壁部を支持部材75とする場合は、居住区の壁部に水平方向に孔を空けて梁73の一端を挿入して外壁に固定すればよい。
このように、既設の構造物を支持部材75として用いることで、支持部材75を新たに設ける工事が不要となり、支持部材75の設置コストを削減できる。
【0100】
このように第7の実施形態によれば係船機1fの縦置きされたドラム3は、ストレージパート25とテンションパート27がスプリットフランジ19で仕切られてドラム3の軸方向に直列に配置されている。そのため、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0101】
また、第7の実施形態に係る係船機1fは、上端筒状部71及び梁73を備え、梁73は、係船甲板107上に設けられた支持部材75に連結される。
そのため、回転軸5に加えられる荷重を回転軸5の両端を介して係船甲板107が受け止めることができ、甲板筒状部11のみを介して係船甲板107が回転軸5を支持する場合と比べて係船機1fが倒れ難くなり、係船機1fの強度を高められる。
さらに、第7の実施形態に係る係船機1fは、既設の構造物を支持部材75として用いることができる場合、支持部材75を新たに設ける工事が不要となり、支持部材75の設置コストを削減できる。
【0102】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の技術思想の範囲内において各種変形例及び改良例に想到するのは当然のことであり、これらも本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f:係船機
3 :ドラム
3a :外筒部分
3b :軸孔
5 :回転軸
7 :モータ
9 :ギアボックス
9a :モータ側ギア
9b :回転軸側ギア
9c :ボックスカバー
11 :甲板筒状部
11a :補強板
11b :補強部
11d :下端
13 :台座
15 :クラッチ機構
17 :ブレーキ
19、19a、19b :スプリットフランジ
21、23 :ドラムフランジ
25 :ストレージパート
25a :上部ストレージパート
25b :下部ストレージパート
27 :テンションパート
31 :切り欠き
34 :フック
35 :ドラム側筒状部
37 :長孔
43 :支持フランジ
51 :上側クラッチ板
51a :上側歯車
51b :側面
53 :下側クラッチ板
55 :板状部
55a :下側歯車
55b :側面
57 :クラッチ側筒状部
59 :キー
61 :クラッチレバー
61a :支持棒
61b :接触棒
62 :操作部
71 :上端筒状部
73 :梁
75 :支持部材
81 :支柱
83 :台座
100 :船舶
101 :岸壁
103 :係船柱
105 :ロープ
105a :外周端
107 :係船甲板
109 :船内甲板
111 :船内区画