IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 仁科工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-方向切換弁 図1
  • 特開-方向切換弁 図2
  • 特開-方向切換弁 図3
  • 特開-方向切換弁 図4
  • 特開-方向切換弁 図5
  • 特開-方向切換弁 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112301
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】方向切換弁
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/00 20060101AFI20230804BHJP
   F16K 27/04 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
F15B11/00 D
F16K27/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013999
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】390017352
【氏名又は名称】仁科工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢沢 亮
(72)【発明者】
【氏名】神田 慶英
(72)【発明者】
【氏名】中島 滋人
【テーマコード(参考)】
3H051
3H089
【Fターム(参考)】
3H051AA10
3H051BB10
3H051CC11
3H051CC14
3H051DD02
3H051EE03
3H051FF07
3H089AA02
3H089AA60
3H089AA72
3H089BB27
3H089CC01
3H089CC08
3H089DA02
3H089DB02
3H089DB08
3H089DB33
3H089DB43
3H089DB55
3H089DB75
3H089DB79
3H089GG02
3H089HH04
3H089HH10
3H089HH17
3H089HH25
3H089JJ01
(57)【要約】
【課題】ハウジング鋳造金型の共通化が可能で、ハウジングの小型化・薄型化および多連積層配置が可能な方向切換弁を提供する。
【解決手段】本発明に係る方向切換弁1は、第1セクション3において、第1ポート17A・第2ポート17Bと、スプール孔20A内を移動して第1ポート17A・第2ポート17Bからの出力切換や停止を行うスプール21Aとを有する第1ハウジング11を備え、インレット2は第1ポート17A・第2ポート17Bが設けられていない第1ハウジング11の第1面11aに積層されており、第1ハウジング11はインレット2のサブポンプポート16に連通する流出口25と接続されると共に、第2ポート17Bに連通する流入口26が第1面11aに形成されており、スプール21Aは流入口26に連通する流路23Bと、第2ポート17Bに連通する流路27Bとに連通可能な供給流路22が内部に穿設されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業用車両に配設される方向切換弁であって、
第1作動装置用の第1アクチュエータの作動を制御する第1セクションと、
前記第1セクションに連結され、メインポンプポートおよびサブポンプポートが設けられたインレットと、を備え、
前記第1セクションは、前記第1アクチュエータの一方側に連通して前記メインポンプポートから供給される流体を供給・排出する第1ポートおよび前記第1アクチュエータの他方側に連通して前記サブポンプポートから供給される流体を供給・排出する第2ポートが設けられると共に、内部のスプール孔内に軸方向移動可能に収容されて前記第1ポートからの供給と前記第2ポートからの供給との択一的な切換および通流停止を行うスプールが設けられた第1ハウジングを有し、
前記インレットは、前記第1ハウジングにおける前記第1ポートおよび前記第2ポートが設けられていない第1面に積層されており、
前記第1ハウジングは、前記インレットの前記サブポンプポートに連通する流出口と接続されると共に、前記スプール孔を介して前記第2ポートに連通する流入口が前記第1面に形成されており、
前記スプールは、前記スプール孔と前記流入口とを連通する流路と、前記スプール孔と前記第2ポートとを連通する流路とに連通可能な供給流路が内部に穿設されていること
を特徴とする方向切換弁。
【請求項2】
前記第1セクションに連結され、第2作動装置用の第2アクチュエータの作動を制御する第2セクションをさらに備え、
前記第2セクションは、前記第2アクチュエータの一方側に連通して前記メインポンプポートから供給される流体を供給・排出する第3ポートおよび前記第2アクチュエータの他方側に連通して前記メインポンプポートから供給される流体を供給・排出する第4ポートが設けられた第2ハウジングを有し、
前記第2ハウジングは、前記第1ハウジングにおける前記第1面と平行且つ逆向きの第2面に積層されていること
を特徴とする請求項1記載の方向切換弁。
【請求項3】
前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングは、同一の金型で鋳造された鋳物素材から構成されていること
を特徴とする請求項2記載の方向切換弁。
【請求項4】
前記第1ハウジングは、側面となる第5面および第6面の両方もしくは一方において、リリーフポート設置エリアを有すること
を特徴とする請求項2または請求項3記載の方向切換弁。
【請求項5】
前記第2ハウジングは、側面となる第5面および第6面の両方もしくは一方において、リリーフポート設置エリアを有すること
を特徴とする請求項2または請求項3記載の方向切換弁。
【請求項6】
前記第1作動装置はクイックヒッチ機構であり、前記第1アクチュエータは油圧シリンダであること
を特徴とする請求項1~5のいずれか一項記載の方向切換弁。
【請求項7】
前記インレットの前記サブポンプポートの内奥部にフィルタが配設されていること
を特徴とする請求項1~6のいずれか一項記載の方向切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用車両に設けられる方向切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
所定圧力の流体(以下、単に「流体」と称する場合がある)によって駆動される作業用車両の例として、左右一対のクローラ等を有する走行装置と、走行装置上に旋回可能に設けられた車体と、車体前部のアームにアタッチメント(一例として、バケット、ブレーカ等)が着脱可能に設けられた作業装置とを備えるエクスカベータ等が知られている。
【0003】
上記作業用車両の駆動制御機構の例として、流体(具体的には、圧油)を供給する油圧ポンプ、車体の旋回機構を作動させる油圧モータ、アームやアタッチメントを作動させる油圧シリンダ等が設けられている。さらに、油圧ポンプから油圧モータや油圧シリンダに供給する圧油の給排制御を行う方向切換弁が設けられている(特許文献1:特開2003-278706号公報参照)。
【0004】
ここで、上記作業用車両において、作業内容に応じたアタッチメントに交換する場合、一般的なアタッチメントは重量物であることから、人力で着脱作業を行うとすると多大な労力が必要になる。そのため、アームの先端部にアタッチメントを着脱させるクイックヒッチ機構を設け、この機構を作動させる油圧シリンダに供給する圧油の給排制御を方向切換弁によって行い、アタッチメントを係止状態(交換不可状態)と解除状態(交換可能状態)とで切換を行う技術が開発されている(特許文献2:特開2004-036635号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-278706号公報
【特許文献2】特開2004-036635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、作業用車両の駆動制御を行う機構には、方向切換弁が多用されている。したがって、それらの方向切換弁を制御対象の装置毎に個別に設計・製造する構成とした場合、鋳造工程における金型数の増加や、機械加工工程における工程の複雑化・工数の増加を招き、製造コストが上昇する原因となる。また、複数の方向切換弁をそれぞれ独立して設置する構成とした場合、設置スペースの増加を招き、車両自体が大型化する原因となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、ハウジングの共通化による鋳造金型の共通化を図ることによって製造コストの低減が可能であると共に、ハウジングの小型化・薄型化および多連積層配置が可能な方向切換弁を提供することを目的とする。
【0008】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0009】
開示の方向切換弁は、作業用車両に配設される方向切換弁であって、第1作動装置用の第1アクチュエータの作動を制御する第1セクションと、前記第1セクションに連結され、メインポンプポートおよびサブポンプポートが設けられたインレットと、を備え、前記第1セクションは、前記第1アクチュエータの一方側に連通して前記メインポンプポートから供給される流体を供給・排出する第1ポートおよび前記第1アクチュエータの他方側に連通して前記サブポンプポートから供給される流体を供給・排出する第2ポートが設けられると共に、内部のスプール孔内に軸方向移動可能に収容されて前記第1ポートからの供給と前記第2ポートからの供給との択一的な切換および通流停止を行うスプールが設けられた第1ハウジングを有し、前記インレットは、前記第1ハウジングにおける前記第1ポートおよび前記第2ポートが設けられていない第1面に積層されており、前記第1ハウジングは、前記インレットの前記サブポンプポートに連通する流出口と接続されると共に、前記スプール孔を介して前記第2ポートに連通する流入口が前記第1面に形成されており、前記スプールは、前記スプール孔と前記流入口とを連通する流路と、前記スプール孔と前記第2ポートとを連通する流路とに連通可能な供給流路が内部に穿設されていることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記第1セクションに連結され、第2作動装置用の第2アクチュエータの作動を制御する第2セクションをさらに備え、前記第2セクションは、前記第2アクチュエータの一方側に連通して前記メインポンプポートから供給される流体を供給・排出する第3ポートおよび前記第2アクチュエータの他方側に連通して前記メインポンプポートから供給される流体を供給・排出する第4ポートが設けられた第2ハウジングを有し、前記第2ハウジングは、前記第1ハウジングにおける前記第1面と平行且つ逆向きの第2面に積層されていることが好ましい。また、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングは、同一の金型で鋳造された鋳物素材から構成されていることが好ましい。また、第1ハウジングおよび第2ハウジングは、それぞれ、側面となる第5面および第6面の両方もしくは一方において、リリーフポート設置エリアを有することが好ましい。また、前記インレットの前記サブポンプポートの内奥部にフィルタが配設されていることが好ましい。なお、前記第1作動装置はクイックヒッチ機構であり、前記第1アクチュエータは油圧シリンダである構成に好適に適用できる。
【発明の効果】
【0011】
開示の方向切換弁によれば、ハウジングの共通化による鋳造金型の共通化を図ることによって製造コストの低減が可能となる。また、ハウジングの小型化・薄型化および多連積層配置が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る方向切換弁の例を示す平面図である。
図2図1に示す方向切換弁の正面図である。
図3図1におけるIII-III線断面図である。
図4図2におけるIV-IV線断面図である。
図5図2におけるV-V線断面図である。
図6図1に示す方向切換弁を備える作業用車両の部分回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態に係る方向切換弁1の例を示す平面図(概略図)であり、図2は、その正面図(概略図)である。また、図3は、図1におけるIII-III線断面図であり、図4図5は、それぞれ、図2におけるIV-IV線断面図、V-V線断面図である。ここで、図6は、本実施形態に係る方向切換弁1を備える作業用車両の部分回路図であるが、構成の一例であってこれに限定されるものではない。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、便宜上、図2の表示位置によって各部材の「上面」、「下面」、「正面」、「背面」、「左側面」、「右側面」を説明するが、必ずしも作業用車両への配置(搭載の向き)を規定するものではない。
【0014】
本実施形態に係る方向切換弁1は、一例として、作業用車両(不図示)におけるクイックヒッチ機構等を作動させる油圧シリンダや、車体の旋回機構を作動させる油圧モータ等に対する作動制御を行うものであり、より具体的には、当該油圧シリンダや油圧モータの作動に用いられる流体の給排制御、すなわち通流方向の切換や停止等の制御を行うものである。
【0015】
より具体的には、図2図6に示すように、方向切換弁1は、外部供給源(後述の油圧ポンプ)Pm、Psから供給される所定圧力の流体(圧油)を流入させ、タンクTへ流体を流出させるインレット2と、第1作動装置を作動させる第1アクチュエータの作動制御(すなわち、流体の給排制御)を行う第1セクション3と、第2作動装置を作動させる第2アクチュエータの作動制御(すなわち、流体の給排制御)を行う第2セクション4と、最下層となるセクション(本実施形態においては、第2セクション4)の下面に露出する使用しない流路の開口部を封止するカバー5とが連結されて構成されている。
【0016】
なお、本実施形態においては、第1作動装置としてクイックヒッチ機構(不図示)、第2作動装置として車体の旋回機構(不図示)を例に挙げて説明する。この場合、第1アクチュエータには油圧シリンダCが用いられ、第2アクチュエータには油圧モータSMが用いられる。ただし、これらの構成に限定されるものではない。例えば、第2作動装置はアームやアタッチメント(一例として、バケット、ブレーカ)等であってもよく、その場合、第2アクチュエータには油圧シリンダが用いられる(いずれも不図示)。
【0017】
先ず、インレット2について説明する。本実施形態に係るインレット2は、外部供給源であるサブ油圧ポンプPsから送出される所定圧力(一例として、3.5MPa程度)の流体を流入させるサブポンプポート16が第1面(上面)2aに設けられている。また、外部供給源であるメイン油圧ポンプPmから送出される所定圧力(一例として、25MPa程度)の流体を流入させるメインポンプポート15が第3面(正面)2cに設けられている。さらに、油圧シリンダC等の作動に用いられた流体をタンクTへ送出させるタンクポート19が第3面(正面)2cに設けられている。なお、インレット2の第2面(下面)2bには、第1サブポンプ流路23Aを介してサブポンプポート16に連通する流出口25が設けられている。
【0018】
また、インレット2のサブポンプポート16は、その内奥部にフィルタ(具体的には、オイルフィルタ)50が配設されている。仮に、フィルタを配設するための機構を後述の第1セクション3の第1ハウジング11に設けようとすると、当該第1ハウジング11の体格が例えば左右方向に大きくなってしまう。一方、第1ハウジング11に設けずに、サブポンプポート16に接続されるコネクタに内蔵する構成も考えられるが、フィルタ内臓型のコネクタは部品コストが高くなってしまう。これに対して、上記構成によれば、第1ハウジング11の体格の大型化を防ぐことができ、また、部品コストの上昇を抑制することができる。
【0019】
続いて、第1セクション3について説明する。本実施形態に係る第1セクション3は、ハウジング(第1ハウジング)11と、第1ハウジング11の側面(一例として、第5面(左側面)11e)に設けられる駆動部30とを備えて構成されている。当該第1ハウジング11には、メイン油圧ポンプPmから供給される流体をスプール孔20A(後述)を経由して油圧シリンダCの一方側(一例として、ロッド室側)に流入・流出させる第1ポート17A、および、サブ油圧ポンプPsから供給される流体をスプール孔20Aを経由して油圧シリンダCの他方側(一例として、反ロッド室側)に流入・流出させる第2ポート17Bが設けられている。また、メイン油圧ポンプPmから供給される流体を通流させるメイン流路13が設けられている。ここで、第1ハウジング11の第1面(上面)11aには、第2サブポンプ流路23Bを介してスプール孔20Aと連通する流入口26(すなわち、第2サブポンプ流路23Bの端部である)、および、メイン流路13の上面側開口13aが設けられている。一例として、第1ポート17A、第2ポート17Bは、第3面(正面)11cに設けられる構成としているが、第4面(背面)11dに設けられる構成としてもよい(不図示)。
【0020】
ここで、本実施形態においては、インレット2が、第1ハウジング11における第1ポート17Aおよび第2ポート17Bが設けられていない面(一例として、第1面(上面)11a)に積層されて連結されている。すなわち、インレット2の第2面(下面)2bと、第1ハウジング11の第1面(上面)11aとが当接した状態で連結されている。このとき、インレット2の流出口25と第1ハウジング11の流入口26とが接続されて、流体の通流が可能となるように構成されている。
【0021】
また、第1ハウジング11には、第1ポート17A、第2ポート17B、および連結されるインレット2の各ポート(メインポンプポート15、サブポンプポート16、タンクポート19)に連通する筒状の空間部であるスプール孔20Aが設けられている。さらに、スプール孔20Aと第1ポート17Aとを連通する第1流路27A、および、スプール孔20Aと第2ポート17Bとを連通する第2流路27Bが設けられている。
【0022】
また、スプール孔20A内において、軸方向に移動可能に(より詳しくは、所定の嵌めあい公差で摺動可能に)収容されて流体の給排制御を行うスプール21Aが設けられている。一例として、スプール孔20Aおよびスプール21Aは、断面円形状に形成されており、スプール孔20Aは、第1ハウジング11の一側面から他側面まで貫通形成されている。また、図示はしないが、スプール21Aの外周面には、所定の位置(制御位置)に駆動(移動)されたときに、所定の流路同士を連通させるノッチが設けられている。
【0023】
また、本実施形態に係るスプール21Aにおいては、スプール孔20A内の所定の位置(制御位置)に駆動(移動)されたときに、スプール孔20Aと流入口26とを連通する流路である第2サブポンプ流路23Bと、スプール孔20Aと第2ポート17Bとを連通する流路である第2流路27Bとが連通状態となって流体の通流が可能となる供給流路22が内部に穿設されている。
【0024】
上記の構成によれば、駆動部30によって、スプール21Aをスプール孔20A内において軸方向に駆動(移動)させることにより、第1ポート17Aからの流体の供給と第2ポート17Bからの流体の供給との択一的な切換および通流停止を行うことができる。なお、図6の回路図からも明らかなように、第1ポート17Aおよび第2ポート17Bは、いずれか一方が供給状態(流出状態)の場合、他方が排出状態(流入状態)となる。
【0025】
前述の通り、駆動部30は、第1ハウジング11の第5面(左側面)11eに配設されている。具体的な構成例として、サブ油圧ポンプ(前述のサブ油圧ポンプPsと共通、非共通いずれの構成でもよい)に連通し、スプール21Aの端部(ここでは、左端部21a)に対してオペレータの操作に応じた流体の圧力を作用させる圧力室32を備えている。また、圧力室32の内部には、スプール21Aが所定位置から移動した際にその移動方向と逆向きの付勢力をスプール21Aに作用させる付勢部材(一例として、コイルバネ)38が設けられたバネ室36を備えている。ここで、図中の符号37は、付勢部材38の付勢力をスプール21Aに伝達する伝達部材である。
【0026】
上記の構成による作動として、圧力室32に印加される圧力が上昇して、スプール21Aの左端部21aに作用する圧力が上記付勢力を上回ったときに、スプール21Aが右方向に駆動(移動)される。一方、圧力室32に印加される圧力が低下して、スプール21Aの左端部21aに作用する圧力が上記付勢力を下回ったときに、スプール21Aが左方向に駆動(移動)される。
【0027】
ここで、圧力室32に上記圧力が印加されて、スプール21Aが右方向に駆動(移動)された状態となると、メイン流路13と第1流路27Aとが連通した状態となる。したがって、メインポンプポート15から供給される所定圧力(一例として、25MPa程度)の流体が、第1ポート17Aから油圧シリンダCの一方側(一例として、ロッド室側)に供給されてロッドが縮む方向に作動(移動)される。これによって、第1作動装置であるクイックヒッチ機構におけるフックが解除状態となり、アタッチメントの交換が可能な状態となる。なお、本実施形態においては、上記の状態となったときに、第1ハウジング11から下層の第2ハウジング12への流体の通流が遮断されるように構成されており、第2セクション4における誤作動の防止が図られている。そのため、本実施形態に係る各セクションの積層順が好適となる。
【0028】
一方、圧力室32に上記圧力が印加されていない状態では、スプール21Aが所定位置(左方向に移動された位置)で停止した状態にある。このとき、第2サブポンプ流路23Bと第2流路27Bとが連通した状態にある。したがって、サブポンプポート16から供給される所定圧力(一例として、3.5MPa程度)の流体が、第2ポート17Bから油圧シリンダCの他方側(一例として、反ロッド室側)に供給されてロッドが伸びた状態で維持される。これによって、クイックヒッチ機構におけるフックが係止状態で維持され、アタッチメントの交換が不可能な状態で維持される。
【0029】
続いて、第2セクション4について説明する。本実施形態に係る第2セクション4は、ハウジング(第2ハウジング)12と、第2ハウジング12の一側面(一例として、第5面(左側面)12e)に設けられる駆動部40Aと、第2ハウジング12の他側面(一例として、第6面(右側面)12f)に設けられる駆動部40Bとを備えて構成されている。当該第2ハウジング12には、メイン油圧ポンプPmから供給される流体をスプール孔20B(後述)を経由して油圧モータSMの一方側(一例として、左旋回用入力部側)に流入・流出させる第3ポート18A、および、メイン油圧ポンプPmから供給される流体をスプール孔20Bを経由して油圧モータSMの他方側(一例として、右旋回用入力部側)に流入・流出させる第4ポート18Bが設けられている。また、メイン油圧ポンプPmから供給される流体を通流させるメイン流路14が設けられている。ここで、第2ハウジング12の第1面(上面)12aには、メイン流路14の上面側開口14aが設けられている。一例として、第3ポート18A、第4ポート18Bは、第3面(正面)12cに設けられる構成としているが、第4面(背面)12dに設けられる構成としてもよい(不図示)。
【0030】
ここで、本実施形態においては、第2セクション4が、第1セクション3の第1ハウジング11における第2面(下面)11b(換言すれば、第1面11aに対して平行且つ逆向きの面)に積層されて連結されている。すなわち、第1ハウジング11の第2面(下面)11bと、第2ハウジング12の第1面(上面)12aとが当接した状態で連結されている。このとき、第1ハウジング11のメイン流路13(具体的には、下面側開口13b)と第2ハウジング12のメイン流路14(具体的には、上面側開口14a)とが接続されて、メイン油圧ポンプPmから供給される流体の通流が可能となるように構成されている。なお、第2セクション4が最下層となる場合には、メイン流路14の下面側開口14bは使用されず、カバー5により封止される。
【0031】
また、第2ハウジング12には、第3ポート18A、第4ポート18B、および連結される第1ハウジング11内の所定流路に連通する筒状の空間部であるスプール孔20Bが設けられている。さらに、第3ポート18Aとスプール孔20Bとを連通する第3流路28A、および、第4ポート18Bとスプール孔20Bとを連通する第4流路28Bが設けられている。
【0032】
また、スプール孔20B内において、軸方向に移動可能に(より詳しくは、所定の嵌めあい公差で摺動可能に)収容されて流体の給排制御を行うスプール21Bが設けられている。一例として、スプール孔20Bおよびスプール21Bは、断面円形状に形成されており、スプール孔20Bは、第2ハウジング12の一側面から他側面まで貫通形成されている。また、図示はしないが、スプール21Bの外周面には、所定の位置(制御位置)に駆動(移動)されたときに、所定の流路同士を連通させるノッチが設けられている。ただし、スプール21Aと相違して、内部に供給流路は穿設されていない。
【0033】
上記の構成によれば、駆動部40A、40Bによって、スプール21Bをスプール孔20B内において軸方向に駆動(移動)させることにより、第3ポート18Aからの流体の供給と第4ポート18Bからの流体の供給との択一的な切換、流出量の増減、および通流停止を行うことができる。なお、図6の回路図からも明らかなように、第3ポート18Aおよび第4ポート18Bは、いずれか一方が供給状態(流出状態)の場合、他方が排出状態(流入状態)となる。
【0034】
前述の通り、駆動部40Aは、第2ハウジング12の第5面(左側面)12eに配設され、駆動部40Bは、第6面(右側面)12fに配設されている。具体的な構成例として、駆動部40Aは、サブ油圧ポンプ(前述のサブ油圧ポンプPsと共通、非共通いずれの構成でもよい)に連通し、スプール21Bの端部(ここでは、左端部21c)に対してオペレータの操作に応じた流体の圧力を作用させる圧力室42Aを備えている。一方、駆動部40Aは、サブ油圧ポンプ(前述のサブ油圧ポンプPsと共通、非共通いずれの構成でもよい)に連通し、スプール21Bの端部(ここでは、右端部21d)に対してオペレータの操作に応じた流体の圧力を作用させる圧力室42Bを備えている。
【0035】
また、圧力室42Aの内部には、スプール21Bが中立位置から移動した際にその移動方向と逆向きの付勢力をスプール21Bに作用させる付勢部材(一例として、コイルバネ)48が設けられたバネ室46を備えている。ここで、図中の符号47は、付勢部材48の付勢力をスプール21Bに伝達する伝達部材である。なお、本実施形態においては、一つの付勢部材48によって、スプール21Bが左右いずれの方向に移動した場合にも、逆向きの付勢力を発生させる構成としている。ただし、これに限定されるものではなく、変形例として、圧力室42Bの内部にもバネ室を設けて、付勢力の作用方向をそれぞれで分担する構成としてもよい(不図示)。
【0036】
上記の構成による作動として、圧力室42Aに印加される圧力が上昇して、スプール21Bの左端部21cに作用する圧力が上記付勢力を上回ったときに、スプール21Bが右方向に駆動(移動)される。一方、圧力室42Aに印加される圧力が低下して、スプール21Bの左端部21cに作用する圧力が上記付勢力を下回ったときに、スプール21Bが左方向に駆動(移動)される。同様に、圧力室42Bに印加される圧力が上昇して、スプール21Bの右端部21dに作用する圧力が上記付勢力を上回ったときに、スプール21Bが左方向に駆動(移動)される。一方、圧力室42Bに印加される圧力が低下して、スプール21Bの右端部21dに作用する圧力が上記付勢力を下回ったときに、スプール21Bが右方向に駆動(移動)される。なお、本実施形態においては、比例制御が行われる。
【0037】
ここで、圧力室42Aに上記圧力が印加されて、スプール21Bが右方向に駆動(移動)された状態となると、メイン流路13と第3流路28Aとが連通した状態となる。したがって、メインポンプポート15から供給される所定圧力(一例として、25MPa程度)の流体が、第3ポート18Aから油圧モータSMの一方側(一例として、左旋回用入力部側)に供給されて当該油圧モータが回転される。これによって、旋回機構が作動されて、車体が旋回(この場合は、左旋回)される。
【0038】
一方、圧力室42Bに上記圧力が印加されて、スプール21Bが左方向に駆動(移動)された状態となると、メイン流路13と第4流路28Bとが連通した状態となる。したがって、メインポンプポート15から供給される所定圧力(上記と同様に、25MPa程度)の流体が、第4ポート18Bから油圧モータSMの他方側(一例として、右旋回用入力部側)に供給されて当該油圧モータが回転される。これによって、旋回機構が作動されて、車体が旋回(この場合は、右旋回)される。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る方向切換弁1は、複合的に設けられる各構成、特に、スプール21Aの内部に供給流路22が穿設されている構成や、サブ油圧ポンプPsから供給される流体を、インレット2が積層される第1面(上面)11aの流入口26から第1ハウジング11内へ流入させる構成等を備えることによって、以下の顕著な効果が得られる。
【0040】
具体的に、第1セクション3のハウジング(第1ハウジング11)の第1面(上面)11aにインレット2が積層(連結)され、第2面(下面)11bに第2セクション4のハウジング(第2ハウジング12)が積層(連結)される構成において、第1ハウジング11と第2ハウジング12とを同一の金型で鋳造された鋳物素材から形成される構成を実現することができる(すなわち、機械加工によって開口等が形成される箇所が一部、相違するに過ぎない)。したがって、インレット2が積層される第1ハウジング11のみを専用の金型で鋳造された鋳物素材から形成される構成とせずに済むため、大幅なコストダウンが可能となる。なお、「同一の金型」には、例えば量産目的として同一形状に形成される複数の金型が含まれる。
【0041】
さらに、仕様に応じて、第2セクション4のハウジング(第2ハウジング12)の第2面(下面)12bに、他のセクションのハウジングが積層(連結)される構成を実現することができる。これと同様にして、さらに複数の他のセクションのハウジングが積層(連結)される構成を実現することができる。これらの場合においても、上記と同様に全てのハウジングを同一の金型で鋳造された鋳物素材から形成される構成を実現することができる。したがって、複数のハウジング、すなわち、複数のセクションが多連積層配置された方向切換弁を低コストで実現することができる。
【0042】
特に、サブポンプ流路(第2サブポンプ流路23B)が設けられる第1セクション3の第1ハウジング11に関しては、その厚さ寸法(インレット2と第2ハウジング12とで挟まれる方向の寸法)を小さく(薄く)することができる。したがって、共通の鋳物素材から形成されるハウジング、ひいては当該ハウジングが積層配置される方向切換弁全体の小型化・薄型化を図ることができる。
【0043】
さらに、第1ハウジング11において、第1流路27Aと第5面(左側面)11eとの間に流路の無いスペースを創出でき、また、第2流路27Bと第6面(右側面)11fとの間に流路の無いエリアを創出できる。これにより、作業用車両の仕様に応じて第1流路27Aや第2流路27Bに連通するリリーフポートの設置が必要となる場合には、第1ハウジング11の鋳物素材をそのまま使用し、機械加工工程の追加のみで、当該エリアを利用して第5面(左側面)11e、第6面(右側面)11fの両方にリリーフポートを設置する構成を実現できる(第5面(左側面)11eのみに、もしくは、第6面(右側面)11fのみに設置する構成も可能である)。具体的に、図4に示す位置にリリーフポート設置エリア24(24A)、24(24B)を設けることができる(なお、第5面(左側面)11e側は、リリーフポートを既設状態で図示)。これと同様に、第2ハウジング12において、第3流路28Aと第5面(左側面)12eとの間に流路の無いスペースを創出でき、また、第4流路28Bと第6面(左側面)12fとの間に流路の無いエリアを創出できる。これにより、作業用車両の仕様に応じて第3流路28Aや第4流路28Bに連通するリリーフポートの設置が必要となる場合には、第2ハウジング12の鋳物素材をそのまま使用し、機械加工工程の追加のみで、当該エリアを利用して第5面(左側面)12e、第6面(右側面)12fの両方にリリーフポートを設置する構成を実現できる(第5面(左側面)12eのみに、もしくは、第6面(右側面)12fのみに設置する構成も可能である)。具体的に、図5に示す位置にリリーフポート設置エリア24(24C)、24(24D)を設けることができる。
【0044】
以上説明した通り、開示の方向切換弁によれば、ハウジングの共通化による鋳造金型の共通化を図ることによって製造コストの低減が可能となる。また、ハウジングの小型化・薄型化および多連積層配置が可能となる。
【0045】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。一例として、第2作動装置が車体の旋回機構であって、第2セクションが油圧モータの作動制御を行うセクションとする構成を挙げて説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、第2作動装置がアームやアタッチメント等であって、第2セクションが油圧シリンダの作動制御を行うセクションとする構成も同様に可能である。
【0046】
さらに、第2セクションの下層に一もしくは複数の他のセクションを積層(連結)する構成も可能である。あるいは、第2セクションを省略する構成も可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 方向切換弁
2 インレット
3 第1セクション
4 第2セクション
11 第1ハウジング
12 第2ハウジング
15 メインポンプポート
16 サブポンプポート
17A 第1ポート
17B 第2ポート
18A 第3ポート
18B 第4ポート
20A、20B スプール孔
21A、21B スプール
22 供給流路
24 リリーフポート設置エリア
25 流出口
26 流入口
50 フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6