(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112329
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/134 20060101AFI20230804BHJP
【FI】
F16F15/134 D
F16F15/134 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014056
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】上原 宏
(57)【要約】
【課題】ダンパ装置において、車両の仕様に応じて正側及び負側で適切な捩り特性を得る。
【解決手段】この装置は、入力側プレート30と、ハブフランジ40と、弾性連結部50と、を備えている。弾性連結部50は、第1捩り特性T1と、第2捩り特性T2と、第3捩り特性T3と、を有する。第1捩り特性T1は、正側の捩り角度範囲が負側より広い第1作動領域において第1剛性を有する。第2捩り特性T2は、第1作動領域の正側を超えた第2作動領域において第1剛性よりも高剛性の第2剛性を有する。第3捩り特性T3は、第1作動領域の負側を超えた第3作動領域において第1剛性よりも高剛性でかつ第2剛性よりも低剛性の第3剛性を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転体と、
前記第1回転体に対して相対回転可能な第2回転体と、
前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性的に連結する弾性連結部と、
を備え、
前記弾性連結部は、
正側及び負側にわたる捩り角度の第1作動領域において第1剛性を有し、前記第1作動領域は正側と負側とで異なる、第1捩り特性と、
捩り角度の第2作動領域において前記第1剛性よりも高剛性の第2剛性を有し、前記第2作動領域は前記第1作動領域の正側を超えた作動領域である、第2捩り特性と、
捩り角度の第3作動領域において前記第1剛性よりも高剛性でかつ前記第2剛性と異なる第3剛性を有し、前記第3作動領域は前記第1作動領域の負側を超えた作動領域である、第3捩り特性と、
を有する、
ダンパ装置。
【請求項2】
前記第1作動領域は、正側の方が負側よりも広い、請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記弾性連結部の第2捩り特性の第2剛性は、前記第3捩り特性の第3剛性よりも高剛性である、請求項1又は2に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記弾性連結部は、円周方向に並んで配置され並列で作動する第1弾性部と第2弾性部とを有し、
前記第1弾性部は、
正側及び負側にわたる捩り角度の第4作動領域において第4剛性を有し、前記第4作動領域は正側と負側とで異なる、第4捩り特性と、
捩り角度の第5作動領域において、前記第4剛性よりも高剛性の第5剛性を有し、前記第5作動領域は、前記第4作動領域の正側を超えた作動領域と、前記第4作動領域の負側を超えた作動領域である、第5捩り特性と、
を有し、
前記第2弾性部は、
正側及び負側にわたる捩り角度の第6作動領域において第6剛性を有し、前記第4捩り特性に対して、捩り角度方向及び入力トルク方向においてオフセットされた第6捩り特性と、
捩り角度の第7作動領域において、前記第6剛性よりも高剛性でかつ前記第5剛性とは異なる第7剛性を有し、前記第7作動領域は、前記第6作動領域の正側を超えた作動領域と、前記第6作動領域の負側を超えた作動領域である、第7捩り特性と、
を有する、
請求項1から3のいずれかに記載のダンパ装置。
【請求項5】
前記第1回転体は、第1支持部及び第2支持部を有し、
前記第2回転体は、前記第1支持部に対して第1回転方向側にオフセットして設けられた第1収容部と、前記第2支持部に対して第2回転方向側にオフセットして設けられた第2収容部と、を有し、
前記弾性連結部は、
前記第1支持部及び前記第1収容部に予圧縮して配置され、前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性的に連結する第1弾性部材と、
前記第2支持部及び前記第2収容部に予圧縮して配置され、前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性的に連結する第2弾性部材と、
を有する、
請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項6】
前記第1支持部と前記第1収容部とのオフセット角度と、前記第2支持部と前記第2収容部とのオフセット角度と、は同じであり、
前記第1弾性部材及び前記第2弾性部材は、同じ剛性を有する、
請求項5に記載のダンパ装置
【請求項7】
前記第1弾性部材は、第1コイルスプリングと、前記第1コイルスプリングの内部に配置され前記第1コイルスプリングよりも長さが短い第1弾性体と、を有し、
前記第2弾性部材は、第2コイルスプリングと、前記第2コイルスプリングの内部に配置され、前記第2コイルスプリングよりも長さが短くかつ前記第1弾性体と長さが異なる第2弾性体と、を有する、
請求項5又は6に記載のダンパ装置。
【請求項8】
前記第1弾性体及び前記第2弾性体は樹脂部材である、請求項7に記載のダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエンジン及び電動機を備えたハイブリッド車両では、エンジン始動時等において出力側から過大なトルクがエンジン側に伝達するのを防止するために、特許文献1に示されるようなトルクリミッタ機能を有するダンパ装置が用いられている。
【0003】
特許文献1のダンパ装置は、1対のプレート及び複数のトーションスプリングを有するダンパ部を有しており、このダンパ部の外周側にトルクリミッタが設けられている。トルクリミッタとダンパ部とは、リベットによって連結されている。そして、トルクリミッタのプレートが、ボルトによってフライホイールに固定されている。
【0004】
ここでは、ダンパ部とフライホイールとの間で伝達されるトルクがトルクリミッタによって制限され、両者の間で過大なトルクが伝達されるのが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ハイブリッド車両におけるダンパ装置は、走行時等のエンジン稼働時には、捩り特性において主に正側捩り角度領域(以下、単に「正側」と記載する場合がある)で作動し、エンジン始動時には主に負側捩り角度領域(以下、単に「負側」と記載する場合がある)で作動する。したがって、正側と負側では、求められる捩り特性が異なる場合がある。
【0007】
例えば、正側では、捩り角度が小さい領域において、低剛性で広角度の捩り特性が求められる。また、例えばタイヤ側から大きなトルクが入力されたときのために、捩り角度が大きい領域では、高剛性の捩り特性が求められる。一方、負側では、エンジン始動時の振動を効率よく吸収するために、1段目の捩り特性の剛性と、それに続く2段目の捩り特性の剛性と、の差を小さくする必要がある。したがって、負側の捩り角度が大きい領域では、正側の捩り角度が大きい領域での剛性よりも小さい剛性の捩り特性が求められる。
【0008】
本発明の課題は、ダンパ装置において、車両の仕様に応じて正側及び負側で適切な捩り特性を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るダンパ装置は、第1回転体と、第2回転体と、弾性連結部と、を備えている。第2回転体は第1回転体に対して相対回転可能である。弾性連結部は、第1回転体と第2回転体とを回転方向に弾性的に連結する。また、弾性連結部は、第1捩り特性と、第2捩り特性と、第3捩り特性と、を有する。第1捩り特性は、正側及び負側にわたる捩り角度の第1作動領域において第1剛性を有し、第1作動領域は捩り角度範囲が正側と負側とで異なる。第2捩り特性は、捩り角度の第2作動領域において第1剛性よりも高剛性の第2剛性を有し、第2作動領域は第1作動領域の正側を超えた作動領域である。第3捩り特性は、捩り角度の第3作動領域において第1剛性よりも高剛性でかつ第2剛性と異なる第3剛性を有し、第3作動領域は第1作動領域の負側を超えた作動領域である。
【0010】
この装置では、第1捩り特性を有する第1作動領域の正側と負側とが異なっている。例えば、正側の作動領域を広くすると、仕様によってはエンジン稼働時の振動吸収性能が向上する。第1作動領域を超えた正側及び負側では、第1捩り特性の剛性よりも高剛性の第2捩り特性及び第3捩り特性を有している。そして、第2捩り特性の剛性と第3捩り特性の剛性とは異なっている。このため、例えば、正側の第2捩り特性の剛性をより高剛性にすれば、タイヤからのトルクを効果的に吸収することができる。また負側の第3捩り特性の剛性を、第1捩り特性の剛性に近い高剛性にすれば、ハイブリッド車両においてエンジン始動時の振動吸収性能が向上する。
【0011】
(2)好ましくは、第1作動領域は、正側の方が負側よりも広い。ここでは、エンジンでの走行時における振動吸収性能が向上する。
【0012】
(3)好ましくは、弾性連結部の第2捩り特性の第2剛性は、第3捩り特性の第3剛性よりも高剛性である。ここでは、タイヤからのトルクを十分に吸収できる。しかもこのダンパ置をハイブリッド車両に搭載した場合、エンジン始動時の振動を効果的に吸収できる。
【0013】
(4)好ましくは、弾性連結部は、円周方向に並んで配置され並列で作動する第1弾性部と第2弾性部とを有している。第1弾性部は第4捩り特性と第5捩り特性とを有する。第2弾性部は第6捩り特性と第7捩り特性とを有する。
【0014】
第4捩り特性は、正側及び負側にわたる捩り角度の第4作動領域において第4剛性を有している。第4作動領域は正側と負側とで異なる。第5捩り特性は、捩り角度の第5作動領域において、第4剛性よりも高剛性の第5剛性を有している。第5作動領域は、第4作動領域の正側を超えた作動領域と、第4作動領域の負側を超えた作動領域である。第6捩り特性は、正側及び負側にわたる捩り角度の第6作動領域において第6剛性を有し、第4捩り特性に対して、捩り角度方向及び入力トルク方向においてオフセットされている。第7捩り特性は、捩り角度の第7作動領域において、第6剛性よりも高剛性でかつ第5剛性とは異なる第7剛性を有し、第7作動領域は、第6作動領域の正側を超えた作動領域と、第6作動領域の負側を超えた作動領域である。
【0015】
(5)好ましくは、第1回転体は第1支持部及び第2支持部を有している。第2回転体は第1収容部と第2収容部とを有している。第1収容部は、第1支持部に対して第1回転方向側にオフセットして設けられている。第2収容部は、第2支持部に対して第2回転方向側にオフセットして設けられている。弾性連結部は第1弾性部材と第2弾性部材とを有している。第1弾性部材は、第1支持部及び第1収容部に予圧縮して配置され、第1回転体と第2回転体とを回転方向に弾性的に連結する。第2弾性部材は、第2支持部及び第2収容部に予圧縮して配置され、第1回転体と第2回転体とを回転方向に弾性的に連結する。
【0016】
(6)好ましくは、第1支持部と第1収容部とのオフセット角度と、第2支持部と第2収容部とのオフセット角度と、は同じである。また、第1弾性部材及び第2弾性部材は、同じ剛性を有する。
【0017】
(7)好ましくは、第1弾性部材は第1コイルスプリングと第1弾性体とを有している。第1弾性体は、第1コイルスプリングの内部に配置され第1コイルスプリングよりも長さが短い。また、第2弾性部材は第2コイルスプリングと第2弾性体とを有している。第2弾性体は、第2コイルスプリングの内部に配置され、第2コイルスプリングよりも長さが短くかつ第1弾性体と長さが異なる。
【0018】
(8)好ましくは、第1弾性体及び第2弾性体は樹脂部材である。
【発明の効果】
【0019】
以上のような本発明では、ダンパ装置の正側と負側の両作動領域において、車両の仕様に応じて適切な捩り特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態によるダンパ装置の断面図。
【
図3】入力側プレートとハブフランジとの位置関係を示す図。
【
図4B】第1樹脂部材の圧縮が開始される状態を示す図。
【
図4C】第2樹脂部材の圧縮が開始される状態を示す図。
【
図8】他の実施形態におけるダンパユニットの捩り特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[全体構成]
図1は、本発明の一実施形態によるトルクリミッタ付きダンパ装置1(以下、単に「ダンパ装置」と記載する)の断面図である。また、
図2はダンパ装置1の正面図であり、その一部は構成する部材を取り外して示している。
図1においては、ダンパ装置1の左側にエンジン(図示せず)が配置され、右側に電動機や変速装置等を含む駆動ユニット(図示せず)が配置されている。
【0022】
なお、以下の説明において、軸方向とは、ダンパ装置1の回転軸Oが延びる方向である。また、円周方向とは、回転軸Oを中心とした円の円周方向であり、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。なお、円周方向とは、回転軸Oを中心とした円の円周方向に完全に一致している必要はない。また、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の直径方向に完全に一致している必要はない。
【0023】
このダンパ装置1は、フライホイール(図示せず)と駆動ユニットの入力軸との間に設けられ、エンジンと駆動ユニットとの間で伝達されるトルクを制限するとともに、回転変動を減衰するための装置である。ダンパ装置1は、トルクリミッタユニット10と、ダンパユニット20と、を有している。
【0024】
[トルクリミッタユニット10]
トルクリミッタユニット10は、ダンパユニット20の外周側に配置されている。トルクリミッタユニット10は、フライホイールとダンパユニット20との間で伝達されるトルクを制限する。トルクリミッタユニット10は、カバープレート11と、支持プレート12と、摩擦ディスク13と、プレッシャプレート14と、コーンスプリング15と、を有している。
【0025】
[ダンパユニット20]
ダンパユニット20は、入力側プレート30(第1回転体の一例)と、ハブフランジ40(第2回転体の一例)と、弾性連結部50と、ヒス発生機構60と、を有している。
【0026】
<入力側プレート30>
入力側プレート30は、第1プレート31及び第2プレート32を有している。第1プレート31及び第2プレート32は、中心部に孔を有する円板状に形成され、互いに軸方向に間隔をあけて配置されている。第1プレート31は、外周部にそれぞれ4個のストッパ部31a及び固定部31bを有している。また、第1プレート31及び第2プレート32は、それぞれ1対の第1支持部301及び1対の第2支持部302を有している。第1プレート31及び第2プレート32において、第1支持部301及び第2支持部302は同じ位置に形成されている。また、第1プレート31には、リベット17用の孔31cが形成され、第2プレート32には、この孔31cに対応する位置に組付用の孔32aが形成されている。この組付用の孔32aを通過するリベット17によって、トルクリミッタユニット10の摩擦ディスク13の内周部が第1プレート31に固定されている。
【0027】
ストッパ部31aは、第1プレート31の外周部を第2プレート32側に折り曲げて形成され、軸方向に延びている。固定部31bは、ストッパ部31aの先端を径方向外方に折り曲げて形成されている。この固定部31bが、第2プレート32の外周端部に複数のリベット33によって固定されている。このため、第1プレート31と第2プレート32とは、互いに相対回転不能であり、互いに軸方向に移動不能である。
【0028】
図2及び第1プレート31を抽出した
図3に示すように、1対の第1支持部301は回転軸Oを挟んで対向して配置されている。また、1対の第2支持部302は、第1支持部と90°の間隔をあけて、回転軸Oを挟んで対向して配置されている。各支持部301,302は、同形状であり、軸方向に貫通する孔と、この孔の内周縁及び外周縁に切り起こされた縁部と、を有している。
【0029】
<ハブフランジ40>
図1及び
図2に示すように、ハブフランジ40は、ハブ41と、フランジ42と、を有している。ハブフランジ40は、入力側プレート30に対して所定の角度範囲で相対回転可能である。ハブ41は、筒状に形成され、中心部にはスプライン孔41aが形成されている。また、ハブ41は第1プレート31及び第2プレート32の中心部の孔を貫通している。フランジ42は、円板状に形成され、ハブ41の外周面から径方向外方に延びて形成されている。フランジ42は、第1プレート31と第2プレート32との軸方向間に配置されている。
【0030】
フランジ42は、4つのストッパ用突起42bと、それぞれ1対の第1収容部401及び第2収容部402と、4つの切欠403と、を有している。
【0031】
4つのストッパ用突起42bは、フランジ42の外周面から径方向外方に突出して形成されている。各ストッパ用突起42bが形成された位置は、各収容部401,402の円周方向の中央部の径方向外方である。そして、入力側プレート30とハブフランジ40とが互いに相対回転した際に、ストッパ用突起42bが第1プレート31のストッパ部31aに当接することにより、入力側プレート30とハブフランジ40との相対回転が禁止される。
【0032】
図2及びハブフランジ40を抽出して示す
図3に示すように、1対の第1収容部401は回転軸Oを挟んで対向して配置されている。また、1対の第2収容部402は、第1収容部401の円周方向間に、回転軸Oを挟んで対向して配置されている。各収容部401,402は、同形状であり、外周部が円弧状のほぼ矩形の孔である。
【0033】
4つの切欠403は、隣接する収容部401,402の円周方向間において、フランジ42の外周面から径方向内方に所定の深さで形成されている。各切欠403が形成された位置は、トルクリミッタユニット10の摩擦ディスク13と第1プレート31とを連結するリベット17の位置に対応している。したがって、それぞれ別工程で組み立てられたトルクリミッタユニット10及びダンパユニット20を、第2プレート32の組付用孔32a及びフランジ42の切欠403を利用して、リベット17により固定することが可能である。
【0034】
<支持部と収容部の配置>
図3に、中立状態における入力側プレート30(ここでは第1プレート31)に対するハブフランジ40の位置関係を示している。
図3において、直線C1は、1対の第1支持部301の中心及び回転軸Oを通過する線である。また、直線C2は、1対の第2支持部302の中心及び回転軸Oを通過する線である。組立状態では、この
図3に示した位置関係のまま、入力側プレート30及びハブフランジ40が互いに重なり合うように組み付けられている。ここで、「中立状態」とは、入力側プレート30とハブフランジ40との間の相対回転角度が0°(両者が捩じれていない捩り角度0°)の状態である。
【0035】
1対の第1収容部401は、1対の第1支持部301に対応する位置に配置されている。また、1対の第2収容部402は、1対の第2支持部302に対応する位置に配置されている。より詳細には、1対の第1収容部401は、第1支持部301に対して軸方向視で一部が重なるようにかつ第1回転方向側(以下、単に「R1側」と記載する)に角度θ0だけオフセットして配置されている。すなわち、第1収容部401は、直線C1に対してR1側に角度θ0だけオフセットして配置されている。また、第2収容部402は、第2支持部302に対して軸方向視で一部が重なるようにかつ第2回転方向側(以下、単に「R2側」と記載する)に角度θ0だけオフセットして配置されている。すなわち、第2収容部402は、直線C2に対してR2側に角度θ0だけオフセットして配置されている。
【0036】
<スプリングシート34>
第1支持部301及び第1収容部401(以下、これらを合わせて「第1窓部w1」と記載する場合がある)と、第2支持部302及び第2収容部402(以下、これらを合わせて「第2窓部w2」と記載する場合がある)とには、それぞれ対向するように1対のスプリングシート34が装着されている(
図2参照)。
【0037】
ここで、各窓部w1,w2にスプリングシート34が配置され、かつ入力側プレート30の第1支持部301の全部と、ハブフランジ40の第1収容部401の全部と、が軸方向視で重なり合った状態(すなわちオフセット角度が「0」)において、対向するスプリングシート34(正確には、対向するスプリングシート34においてコイルスプリングの端面と当接する当接面)の間の距離はLに設定されている。また、同様に、第2支持部302の全部と、第2収容部402の全部と、が軸方向視で重なり合った状態において、対向するスプリングシート34の間の距離はLに設定されている。
【0038】
<弾性連結部50>
弾性連結部50は、円周方向に並んで配置された第1弾性部501と第2弾性部502とを有している。第1弾性部501と第2弾性部502とは並列で作動する。第1弾性部501は、2個のコイルスプリング51と、2個の第1樹脂部材521(第1弾性体の一例)と、を有している。第2弾性部502は、2個のコイルスプリング51と、2個の第2樹脂部材522(第2弾性体の一例)と、を有している。
【0039】
各コイルスプリング51は、すべて同じ剛性k0を有しており、外スプリングと、外スプリングの内部に配置された内スプリングと、を有している。4個のコイルスプリング51は、フランジ42の各収容部401,402に収容され、入力側プレート30の各支持部301,302によって径方向及び軸方向に支持されている。これらのコイルスプリング51は並列で作動する。また、4個のコイルスプリング51の自由長Sfはすべて同じである。このコイルスプリング51の自由長Sfは、オフセット角度「0」の場合の、各窓部w1,w2に装着された対向するスプリングシート34の間(正確には、スプリングシート34のコイルスプリング51の端面が当接する当接面の間)の距離Lと同じである。
【0040】
図4Aに示すように、第1樹脂部材521は、第1窓部w1においてコイルスプリング51の内部に配置されている。また、第2樹脂部材522は、第2窓部w2においてコイルスプリング51の内部に配置されている。第1樹脂部材521は、円柱形状であって、長さはd1に、剛性はk1に設定されている。第2樹脂部材522は、両端部の大径部と、中央部の小径部と、を有する概略円柱形状であって、長さはd2に、剛性はk2に設定されている。ここで、コイルスプリング51と両樹脂部材521,522の長さ及び剛性の関係は、
d1<d2<Sf
k1>k2>k0
に設定されている。
【0041】
<コイルスプリング51の収容状態>
ここで、中立状態での、各窓部w1,w2のコイルスプリング51の収容状態について、以下に詳細に説明する。
【0042】
前述のように、中立状態では、1対の第1収容部401は、対応する第1支持部301に対してR1側に角度θ0だけオフセットされている。一方、1対の第2収容部402は第2支持部302に対してR2側に角度θ0だけオフセットされている。そして、各支持部301,302と対応する各収容部401,402の軸方向において重なった部分の開口(軸方向に貫通する孔)に、コイルスプリング51が圧縮された状態で装着されている。
【0043】
[捩り特性]
図5は捩り特性線図(ヒステリシストルクは省略)であり、横軸は捩り角度、縦軸はトルクを示している。
図5において、破線は第1窓部w1の捩り特性、一点鎖線は第2窓部w2の捩り特性、実線は第1窓部w1の捩り特性と第2窓部w2の捩り特性を合成したダンパユニット20の捩り特性である。
【0044】
図5の実線で示す捩り特性から明らかなように、この実施形態のダンパユニット20は、低剛性の第1捩り特性T1と、正側の高剛性の第2捩り特性T2と、負側の高剛性の第3捩り特性T3を有している。第1捩り特性T1は、正側及び負側にわたる捩り角度の第1作動領域において第1剛性KLを有している。そして、第1作動領域は正側領域Apの方が負側領域Anよりも広くなっている。第2捩り特性T2は、第1作動領域の正側を超えた第2作動領域において、第1剛性KLよりも高剛性の第2剛性KHpを有している。第3捩り特性T3は、第1作動領域の負側を超えた第3作動領域において、第1剛性KLよりも高剛性でかつ第2剛性KHpよりも低剛性の第3剛性KHnを有している。以下、作動領域と剛性の関係を示す。
【0045】
Ap>An
KL<KHn<KHp
【0046】
[動作]
各窓部w1,w2の動作について詳細に説明するが、ヒステリシストルクについては省略している。
図6は第1窓部w1の動作を説明するための模式図であり、
図7は第2窓部w2の動作を説明するための模式図である。
【0047】
<第1窓部w1>
入力側プレート30とハブフランジ40とが相対回転していない中立状態を
図4A及び
図6(a)に示している。そして、この中立状態から、ハブフランジ40が入力側プレート30に対してR1側に捩れ、第1樹脂部材521の圧縮が開始される状態を
図4B及び
図6(b)に示している。また、逆に、ハブフランジ40が入力側プレート30に対して中立状態からR2側に捩れ、第1樹脂部材521の圧縮が開始される状態を
図6(c)に示している。なお、以下の説明において、入力側プレート30に対するハブフランジ40の捩り角度を、単に「捩り角度」と記載する場合がある。
【0048】
まず、中立状態では、第1窓部w1では、第1支持部301と第1収容部401とはオフセットして配置されているので、各窓部w1,w2において対向するスプリングシート34間の距離はコイルスプリング51の自由長Sfよりも短い。したがって、この中立状態では、
図5の破線で示すように、圧縮されたコイルスプリング51による捩りトルク+tが発生している。
【0049】
そして、R1側の捩り角度が0°から第1樹脂部材521の圧縮が開始される捩り角度θ1の間は、コイルスプリング51は常に圧縮される。したがって、捩り角度が0~θ1の範囲では、2つのコイルスプリング51の剛性k4(第4剛性の一例)による比較的低剛性の捩り特性T4(第4捩り特性の一例)が得られる。
【0050】
次に、第1樹脂部材521の両端面が対向するスプリングシート34の当接面に当接すると(
図6(b)参照)、この捩り角度θ1以降は、第1樹脂部材521の剛性k1(第5剛性の一例)による高剛性の捩り特性T5(第5捩り特性の一例)が得られる。
【0051】
一方、ハブフランジ40が入力側プレート30に対して中立状態からR2側にオフセットの角度θ0だけ捩れた場合は、コイルスプリング51を支持する1対のスプリングシート34の間の距離はLとなり、コイルスプリング51の自由長Sfと同じになる。したがって、
図5の破線で示すように、入力側プレート30とハブフランジ40の捩り角度が-θ0の場合、捩りトルクは「0」となる。
【0052】
また、ハブフランジ40がオフセット角度θ0を超えてR2側に捩れると、コイルスプリング51を支持する1対のスプリングシート34の間の距離は、再びコイルスプリング51の自由長Sfより狭くなる。したがって、捩り角度が-θ0を負側に超えると、コイルスプリング51は自由長Sfから圧縮され、2つのコイルスプリング51による正側と同様の捩り特性が得られる。
【0053】
そして、
図6(c)に示すように、捩り角度が-θ2になると、第1樹脂部材521の両端面が対向するスプリングシート34の当接面に当接し、それ以降は、前記同様に、第1樹脂部材521の剛性k1(第5剛性の一例)による高剛性の捩り特性(第5捩り特性の一例)が得られる。
【0054】
<第2窓部w2>
入力側プレート30とハブフランジ40とが相対回転していない中立状態を
図4A及び
図7(a)に示している。そして、この中立状態から、ハブフランジ40が入力側プレート30に対してR1側に捩れ、第2樹脂部材522の圧縮が開始される状態を
図7(b)に示している。また、逆に、ハブフランジ40が入力側プレート30に対して中立状態からR2側に捩れ、第2樹脂部材522の圧縮が開始される状態を
図4C及び
図7(c)に示している。
【0055】
第1窓部w1と同様に、中立状態では、第2窓部w2では、第2支持部302と第2収容部402とはオフセットして配置されているので、各窓部w1,w2において対向するスプリングシート34の間の距離はコイルスプリング51の自由長Sfよりも短い。したがって、この中立状態では、
図5の一点鎖線で示すように、圧縮されたコイルスプリング51による捩りトルク-tが発生している。
【0056】
ダンパユニット20にトルクが入力され、入力側プレート30に対してハブフランジ40が中立状態からR1側にオフセットの角度θ0だけ捩れると、第1支持部301の全部と第1収容部401の全部とが軸方向視で重なり合い、対向するスプリングシート34の間の距離はLとなり、コイルスプリング51の自由長Sfと同じになる。したがって、この状態では、
図5の一点鎖線で示すように、捩りトルクは「0」となる。
【0057】
また、ハブフランジ40がオフセット角度θ0を超えてR1側に捩れると、コイルスプリング51を支持する1対のスプリングシート34の間の距離は、再びコイルスプリング51の自由長Sfよりも狭くなる。したがって、捩り角度がθ0を超えると、コイルスプリング51は自由長Sfから圧縮され、2つのコイルスプリング51の剛性k4による低剛性(第6剛性の一例)の捩り特性T6(第6捩り特性の一例)が得られる。
【0058】
次に、
図7(b)に示すように、捩り角度がθ3になり、第2樹脂部材522の両端面が対向するスプリングシート34の当接面に当接すると、この捩り角度θ3以降は、第2樹脂部材522の剛性k2(第7剛性の一例)による高剛性の捩り特性T7(第7捩り特性の一例)が得られる。
【0059】
一方、ハブフランジ40が中立状態からR2側に捩れる場合は、コイルスプリング51は、常に圧縮される。したがって、負側の捩り角度が0°から第2樹脂部材522の圧縮が開始される捩り角度-θ4の間は、正側と同様に、2つのコイルスプリング51の剛性k4による比較的低剛性の捩り特性が得られる。
【0060】
次に、
図4C及び
図7(c)に示すように、第2樹脂部材522の両端面が対向するスプリングシート34の当接面に当接すると、この捩り角度θ4以降は、
図7の一点鎖線で示すように、第2樹脂部材522の剛性k2(第7剛性の一例)による高剛性の捩り特性T7(第7捩り特性の一例)が得られる。
【0061】
<合成された捩り特性>
ダンパユニット全体としては、前述のように、第1窓部w1の捩り特性(
図5の破線)と、第2窓部w2の捩り特性(
図5の一点鎖線)と、が合成された捩り特性(
図5の実線)が得られる。すなわち、中立状態では捩りトルクは「0」であり、第1作動領域(-θ4~+θ1)では比較的低い第1剛性KLの第1捩り特性T1が得られ、第2作動領域(+θ1を超えた正側領域)では第2高剛性KHpの第2捩り特性T2が得られ、第3作動領域(-θ4を超えた負側領域)では第3高剛性KHnの第3捩り特性T3が得られる。
【0062】
ここで、仮に第1樹脂部材521と第2樹脂部材522の全長を同じにした場合、
図5の+θ1と-θ4とは絶対値が同じになる。したがって、合成した捩り特性において、低捩り特性の正側作動領域と負側作動領域とは同じになる。
【0063】
しかし、この実施形態では、第1樹脂部材521と第2樹脂部材522の全長が異なるので、
図5に示すように、(0~+θ1)の角度範囲と、(0~-θ4)の角度範囲とは異なる。したがって、合成した捩り特性において、第1作動領域における低捩り特性の正側作動領域と負側作動領域とは異なる。具体的には、第1作動領域では、正側作動領域の方が負側作動領域よりも広くなる。
【0064】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0065】
(a)第1樹脂部材と第2樹脂部材の長さを適宜設定することによって、第1窓部w1の捩り特性と第2窓部w2の捩り特性との捩り角度方向のオフセット量を変えることができる。
【0066】
例えば、
図8に示すように、捩り特性の正側において、第1窓部w1捩り特性(破線参照)と第2窓部w2の捩り特性(一点鎖線参照)の高剛性部の一部をオーバラップさせることによって、正側高剛性部を多段化することができる。
【0067】
(b)前記実施形態では、各弾性部をコイルスプリングと樹脂部材とで構成したが、樹脂部材に変えて高い剛性のコイルスプリングを用いてもよい。
【0068】
(c)収容部、支持部、コイルスプリング、及び樹脂部材の個数は一例であって、前記実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0069】
1 ダンパ装置
30 入力側プレート(第1回転体)
301,302 第1支持部、第2支持部
40 ハブフランジ(第2回転体)
401,402 第1収容部、第2収容部
50 弾性連結部
501,502 第1弾性部、第2弾性部
51 コイルスプリング(第1弾性部材、第2弾性部材)
521,522 第1樹脂部材、第2樹脂部材