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  • 特開-地中熱交換器の設置方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112331
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】地中熱交換器の設置方法
(51)【国際特許分類】
   F24T 10/17 20180101AFI20230804BHJP
   E21B 43/00 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
F24T10/17
E21B43/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014059
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100088708
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 祐司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悠都
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英次
(57)【要約】
【課題】例えば、大規模の地中熱交換器設置工事において、効率的かつ安価に地中熱交換器を精度よく設置できるようにする。
【解決手段】流体を地表側より先端側である下向きに流すと共に、再び地表側である上向きに流す連続した通路を有している地中熱交換器5の設置方法において、昇降手段3により地中に貫入したり引き抜かれる筒状のケーシング4を使用して、地表にてケーシング内に地中熱交換器5を引き入れる熱交換器吊込工程と、ケーシング内にあってケーシング内周と地中熱交換器との間の隙間に充填材6を投入する充填材投入工程と、地中熱交換器5の地中設置深さまでケーシング4を地中に貫入する貫入工程と、ケーシング4を引き抜きながら該ケーシング内の地中熱交換器5及び充填材6を該ケーシングの下端開口から排出して地中に残置する引抜工程とを経る。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を地表側より先端側である下向きに流すと共に、再び地表側である上向きに流す連続した通路を有している地中熱交換器の設置方法において、
昇降手段により地中に貫入したり引き抜かれる筒状のケーシングを使用して、
地表にて前記ケーシング内に前記地中熱交換器を引き入れる熱交換器吊込工程と、
前記ケーシング内にあってケーシング内周と前記地中熱交換器との間に形成される隙間に充填材を投入する充填材投入工程と、
前記地中熱交換器の地中設置深さまで前記ケーシングを地中に貫入する貫入工程と、
前記ケーシングを引き抜きながら該ケーシング内の前記地中熱交換器及び前記充填材を該ケーシングの下端開口から排出して地中に残置する引抜工程と
を経ることを特徴とする地中熱交換器の設置方法。
【請求項2】
前記地中熱交換器は可撓性であり、前記熱交換器吊込工程では前記ケーシングを地表上に保持してケーシング下端と地表との間に間隙を設け、該間隙より前記地中熱交換器を前記ケーシングの下端開口より該ケーシング内に引き入れることを特徴とする請求項1に記載の地中熱交換器の設置方法。
【請求項3】
前記地中熱交換器は非可撓性ないしは剛体であり、前記熱交換器吊込工程では前記ケーシング周囲に形成される開閉可能な開口部から前記地中熱交換器をケーシング内に引き入れることを特徴とする請求項1に記載の地中熱交換器の設置方法。
【請求項4】
前記地中熱交換器吊込工程では、前記ケーシングの上部に設けられてワイヤを引き出し自在に巻き付けている巻取ドラムを用いて、前記地中熱交換器を前記巻取ドラムのワイヤを介して前記ケーシング内に引き入れることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の地中熱交換器の設置方法。
【請求項5】
前記充填材投入工程では、前記引抜工程を開始する前に前記充填材を前記ケーシング内に投入することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の地中熱交換器の設置方法。
【請求項6】
前記貫入工程では前記ケーシングを回転しながら又は/及び圧入や起振力を利用して貫入し、前記引抜工程では前記ケーシング内の上側に圧縮空気又は/及び液体を噴射して前記地中熱交換器及び充填材の排出を補助することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の地中熱交換器の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱を利用する場合に好適な地中熱交換器の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象の地中熱交換器は、地中熱を間接的に利用するクローズドループのうち、地中に垂直に設置される垂直型に好適なものである。ここで、地中熱とは、地表から地下約200mの深さまでの地中にある熱のことで、深さ10m以深の地中温度は季節に関わらずほぼ安定していて、夏は外気温より冷たく冬は外気温より暖かい性質を持っている。次の表1は非特許文献1に開示された主な垂直型地中熱交換器に関し設置方式、名称、断面形状、配管、充填剤(以下、充填材と称する)等を一覧している。垂直型では、地下数十から百数メートルをボーリングするボアホール方式が代表的であるが、基礎杭等構造物を利用した方法も知られている。
【0003】
(表1)
【0004】
ところが、ボアホール方式では、ボーリングマシンやパーカッションドリル等で形成した比較的径の小さなボアホールに地中熱交換器を挿入し、更に地中熱交換器の周囲の隙間を珪砂等の充填材により埋め戻さなければならない。基礎杭等構造物利用方式では、熱交換器と共に杭材や連壁を必須としているため地盤強度から杭材や連壁を必要としない場合は採用し難いものとなっている。
【0005】
また、図5図6は上記以外の地中熱交換器の設置方法を示している。図5は特許文献1の設置方法である。この要部は、ケーシング1の先端に、掘削刃を有する短管製の先端シュー5をシュー側の回転受動金具3とケーシング側の回転伝達金具4との結合を介して着脱可能に取り付ける。この状態で、(a)~(c)のごとくケーシング1を所望深度まで回転貫入させるケーシング貫入工程と、(d)のごとくケーシング1の内側を通して先端シュー5に採/放熱管11を連結する採/放熱管連結工程と、(e)のごとく先端シュー5及び採/放熱管11を地盤19中に残置させた状態でケーシング1を引き抜くケーシング引抜工程を経る構成である。
【0006】
図6は特許文献2の設置方法である。この要部は、(6A)のごとく地盤表層部に掘削孔23よりも大きい径の表層孔23aを形成する表層孔形成工程と、表層孔形成工程で形成された表層孔23aに筒形状の孔壁保護部材である養生管28を設置する孔壁保護材設置工程と、(6B)のごとく表層孔23aに貫入される掘削管24によって所定深度の掘削孔23を形成する掘削孔形成工程と、(6C)のごとく掘削孔23に地中熱交換器として管部材であるU字管30を建て込む管部材建て込み工程と、(6D)のごとく掘削管24を掘削孔23から引き抜く掘削管引き抜き工程と、養生管28を表層孔23aに残した状態で養生管の少なくとも一部が埋まるまで、掘削孔23に充填材40を充填する充填材充填工程とを経る構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-133194号公報
【特許文献2】特開2015-98966号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】(株)オーム社発行の『地中熱ヒートポンプシステム』北海道大学工学研究室編、2020年10月20日(改訂2版)52~79頁、特に53頁の表
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図5の地中熱交換器の設置方法では、地盤中に残置される先端シューを用いるため経費増となり、ケーシングに対する先端シューの着脱操作、先端シューに対する採/放熱管の連結操作が必要となるため作業が複雑となる。また、ケーシングを引き抜いた状態で採/放熱管の周囲に形成される空隙は時間経過と共に狭まると説明されているが、充填材を投入し処理することが好ましい。
【0010】
図6の地中熱交換器の設置方法では、表層部の崩落を防止する孔壁保護部材である養生管及びその設置作業が必要となる。また、掘削管つまりケーシングの引き抜きにより形成される掘削孔ないしは竪孔に充填材を充填する厄介な作業も必要となる。
【0011】
以上の背景から、本発明の目的は、例えば、大規模の地中熱交換器設置工事において、効率的かつ安価に地中熱交換器を精度よく設置できるようにする地中熱交換器の設置方法を提供することにある。他の目的は以下の内容説明の中で明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、図1図4を参照し特定すると、流体を地表側より先端側である下向きに流すと共に、再び地表側である上向きに流す連続した通路を有している地中熱交換器の設置方法において、昇降手段(3)により地中に貫入したり引き抜かれる筒状のケーシング(4又は8)を使用して、地表にて前記ケーシング内に前記地中熱交換器(5又は7)を引き入れる熱交換器吊込工程と、前記ケーシング内にあってケーシング内周と前記地中熱交換器との間の隙間に充填材(6)を投入する充填材投入工程と、前記地中熱交換器(5又は7)の地中設置深さまで前記ケーシング(4又は8)を地中に貫入する貫入工程と、前記ケーシングを引き抜きながら該ケーシング内の前記地中熱交換器(5又は7)及び前記充填材(6)を該ケーシングの下端開口から排出して地中に残置する引抜工程とを経ることを特徴としている。
【0013】
以上の本発明は、請求項2~6に特定されるように具体化されることがより好ましい。
(ア)前記地中熱交換器が可撓性である場合、前記熱交換器吊込工程では前記ケーシングを地表上に保持してケーシング下端と地表との間に間隙を設け、該間隙より前記地中熱交換器を前記ケーシング内に引き入れる構成である(請求項2)。
(イ)前記地中熱交換器が非可撓性ないしは剛体である場合、前記熱交換器吊込工程では前記ケーシング周囲に形成される開閉可能な開口部から前記地中熱交換器をケーシング内に引き入れる構成である(請求項3)。
【0014】
(ウ)前記地中熱交換器吊込工程では、前記ケーシングの上部に設けられてワイヤを引き出し自在に巻き付けている巻取ドラムを用いて、前記地中熱交換器を前記巻取ドラムのワイヤを介して前記ケーシング内に引き入れる構成である(請求項4)。
(エ)前記充填材投入工程は、前記引抜工程を開始する前に(具体的には前記貫入工程を開始する前、貫入工程を開始した後に前記貫入工程を終えるまでの間)前記充填材を前記ケーシング内に投入する構成である(請求項5)。
【0015】
(オ)前記貫入工程では前記ケーシングを回転しながら又は/及び圧入や起振力を利用して貫入し、前記引抜工程では前記ケーシング内の上側に圧縮空気又は/及び液体を噴射して前記地中熱交換器及び充填材の排出を補助する構成である(請求項6)。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明では、地中熱交換器の設置方法として、必須部材が地中熱交換器と充填材のみであることから特許文献1や2に比べて経費を低減でき、設置状態で地中熱交換器が充填材で良好に覆われているため品質的にも優れている。加えて、本設置方法に用いられる施工機は、一般的な杭打機や地盤改良機を流用可能なため、地盤改良と共に実施すれば間接費用を省略したり軽減できる。
【0017】
請求項2の発明では、地中熱交換器が可撓性であると、熱交換器吊込工程ではケーシングを地表上に保持してケーシング下端と地表との間に間隙を設け、間隙より地中熱交換器を可撓性を利用してケーシング内に簡単に吊り上げることができる。これに対し、請求項3の発明では、地中熱交換器が非可撓性ないしは剛体であると、熱交換器吊込工程ではケーシング周囲に設けられた開閉可能な開口部から地中熱交換器をケーシング内に引き入れることも可能である。
【0018】
請求項4の発明では、地中熱交換器吊込工程において、ケーシングの上部に設けられた巻取ドラムを用いて、地中熱交換器を巻取ドラムのワイヤを介してケーシング内に効率よく引き入れることができる。
【0019】
請求項5の発明では、充填材投入工程において、貫入工程を開始する前又は前記貫入工程を行いながら充填材をケーシング内に投入するため充填材の充填不足を生じたり充填状態の偏りが生じ難くなる。
【0020】
請求項6の発明では、貫入工程において、ケーシングを回転しながら又は/及び圧入や起振力を利用して貫入する。引抜工程において、ケーシング内の上側に圧縮空気又は/及び液体を噴射して地中熱交換器と充填材の排出を補助する。これらは、通常の杭打機や地盤改良機を流用して容易に行うことができ、貫入及び排出作業を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】上記地中熱交換器の設置方法に用いられる地盤改良機を示す模式図であり、(a)は全体構成を示し、(b)はケーシングの細部構成を示している。
図2】本発明形態の地中熱交換器の設置方法を示す模式図であり、(a)は熱交換器吊込工程を示し、(b)は充填材投入工程を示し、(c)は貫入工程を示し、(d)は地中残置工程を示している。
図3】(a)と(b)は上記施工装置のケーシングに地中熱交換器を引き入れる前及び引き入れ完了状態を示す模式図である。
図4】(a)と(b)は図3のケーシングの変形例を示す模式図である。
図5】特許文献1の特開2011-133194号公報に開示の図9を示している。
図6】特許文献2の特開2015-98966号公報に開示の図6を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を適用した形態及びその変形例を図面を参照して説明する。この説明では、ケーシングを昇降する地盤改良機の構成例、地中熱交換器の設置方法、ケーシングの変形例の順に述べる。なお、図面は細部を省略したり模式化され、地中熱交換器の長さは作図上、実寸より短くなっている。
【0023】
(地盤改良機)図1(a)の地盤改良機1は、中空管である筒状のケーシング4を昇降可能かつ回動可能に支持するための一例である。この地盤改良機1は、ベースマシン10と、ベースマシン10を介して移動可能に立設されたリーダ2と、ケーシング4をアタッチメント26の下側に支持した状態でリーダ2に沿って上下動する昇降手段3と、アタッチメント26の下側に結合された筐体27と、筐体27上に設けられてケーシング4を回動する電動モータ28と、アタッチメント26の上側に設けられてケーシング4に砂等の充填材6を投入するホッパ25と、筐体27の下側に設けられて巻取ドラム38を支持している支持板37とを備え、ケーシング4が昇降手段3により地盤に貫入されたり引き抜かれると共に、電動モータ28等により正転又は逆転される。
【0024】
ここで、ベースマシン10は、上本体がキャタピラ11側に対し旋回可能に支持された操縦室12であり、この前方に設けられてリーダ2を受け止める受部材16と、後方荷台13に搭載された発動機14や電気架台15等を有している。リーダ2は、受部材16に枢支されると共に、3点支持用ステー17等により垂直に支持されている。リーダ2には、リーダ前側(図の右側)に設けられて両側上下方向に延設されたガイドロッド20と、両ガイドロッド20の間に設けられて上下方向に延びているラック21と、下側に設けられたケーシング振れ止め用の振止具29等を有している。
【0025】
昇降手段3は、ガイドロッド20に嵌合された状態で上下動されるボックス22内に組み込まれてラック21と噛み合うピニオン24及びピニオン24を駆動する不図示の油圧モータ等を備え、ラック21に対するピニオン24の回動を伴ってアタッチメント26及びアタッチメント26に連結支持されたケーシング4等を一体物として昇降する。ケーシング4は、上端4a側がアタッチメント26の下内側に支持された状態で、筐体27に内蔵されたギア機構と作動連結されており、筐体27上に保持された電動モータ28が駆動されると前記ギア機構を介して正転又は逆転される。筐体27の下側には下継手部30が設けられ、また、下継手部30と下フランジ部35との間に支持板37が設けられている。
【0026】
ケーシング4は、下端4bの外周に装着された掘削刃40を有している。地中熱交換器5は、図3から推察されるごとく液体等の流体を上から下向きに流す第1配管5aと、流体を下から上向きに流す第2配管5bとを下端同士を連結する継手5cにより一体化した構成である。つまり、地中熱交換器5は、上記表1にも挙げられているポリエチレン製のダブルUチューブの例である。
【0027】
充填材6は、バケット等からホッパ25に投入されると、アタッチメント26からケーシング4の筒内へ自重により落下される。下継手部30には、図1(b)に示されるごとく継手部内を開閉する空気弁31と、圧縮空気を供給してケーシング4内を圧気する空気供給ノズル34とが設けられている。空気弁31は、下継手部30の内周に装着された弁本体32と、弁本体32に枢支された弁蓋33とからなる。弁蓋33は、弁本体32に対して、通常、自重により垂れ下がった開放位置にあり、空気供給ノズル34から圧縮空気が噴射されると、その空気圧により押圧されて閉弁される。但し、空気弁31の開閉機構はこれ以外の構造でもよい。なお、空気供給ノズル34は、地表側のコンプレッサに供給管を介し接続されており、必要時に所要圧力の圧縮空気を噴射できるようになっている。つまり、空気供給ノズル34は、噴射する圧縮空気圧により弁蓋33を閉状態に切り換えたり、ケーシング4内に投入される充填材6及び地中熱交換器5をケーシング4の下端4bから排出し易くする。
【0028】
一方、支持板37は、ワイヤ39を引き出し可能に巻き付けている巻取ドラム38を保持している。巻取ドラム38から引き出されたワイヤ39は、下フランジ部35の内側に設けられたガイド部材36を通ってケーシング4の筒内中央に導入され、また、ワイヤ39の引出端に連結されたホルダ45を有している。ホルダ45は、地中熱交換器5の上端部を着脱可能に連結する部材であり、地中熱交換器の形状等に応じて変更される。また、ホルダ45は、地中熱交換器5の2組を着脱可能に支持、つまり2組の各配管5a,5bの上端を着脱可能に連結する穴部等を有している。この各配管5a,5bの着脱は地表側の操作部により行えるようになっている。
【0029】
(設置方法)次に、以上の地盤改良機1を用いて、地中熱交換器5の地中への設置方法について図2図3を参照し説明する。すなわち、この設置方法では、ケーシング4内に地中熱交換器5を引き入れる熱交換器吊込工程、ケーシング4内に充填材6を投入する充填材投入工程、地中熱交換器5の地中設置深さまでケーシング4を地中に貫入するケーシング貫入工程、ケーシング4を引き抜きながら地中熱交換器5及び充填材6をケーシング4から排出して地中に残置する地中残置工程を順に行う構成である。
【0030】
詳述する。熱交換器吊込工程では、地中熱交換器5が変形自在ないしは可撓性の場合だと、ケーシング4を昇降手段3により図3(a)のごとく地表上に吊り上げて地表との間に所定の間隔を保つ。その状態から、地表側の操作によりホルダ45を巻取ドラムのワイヤ39を介してケーシング下端4bより引き出す。そして、地中熱交換器5を構成している第1配管5a及び第2配管5bの各上端部をホルダ45の対応穴部に装着する。そして、この例では、ワイヤ39が巻取ドラム38にて巻き上げられることにより、図2(a)と図3(b)のごとく2組の地中熱交換器が同時にケーシング下端開口よりケーシング内に引き入れられる。
【0031】
充填材投入工程では、充填材6をホッパ5からケーシング4内に投入し、ケーシング4の内周にあって地中熱交換器5との間に形成される空間ないしは隙間に充填材6を満たすようにする。この工程はケーシング4を地盤に貫入する前に行われる。また、この例では、ケーシング4が下端開口を開閉する蓋体を有していないため、図2(b)に示されるごとくケーシング4を地表まで下降して下端開口を地表面で塞ぐようにしてから、充填材6をケーシング4内に投入する。
【0032】
ケーシング貫入工程では、ケーシング4が電動モータ28等を介して正回転されると共に、昇降手段3により目的の深さまで下降される。この場合は、ケーシング4がバイブロハンマ等の起振力により貫入される構成でもよい。
【0033】
地中残置工程では、図2(d)のごとく地中熱交換器5及び充填材6をケーシング4の下端開口から排出しながら昇降手段3により地表の所定高さまで引き抜かれる。この引き抜き過程では、空気噴射ノズル34からケーシング4内の上側に圧縮空気を噴射して(液体を噴射ノズル34から噴射してもよい)地中熱交換器5及び充填材6の排出を補助、つまり地中熱交換器5及び充填材6がケーシング4の下端開口から確実に排出されて地中に残置されるようにすることが好ましい。
【0034】
(作動)以上の地中熱交換器の設置方法では、まず、地中熱交換器吊込工程と充填材投入工程により地表に吊り下げられたケーシング4内に地中熱交換器5を配置したりその周囲を充填材6で覆う作業を的確に行うことができる。また、貫入工程でケーシング4を所定深さまで貫入した後、引抜工程でケーシング4の引き抜きに伴ってケーシング4内の地中熱交換器5及び充填材6を地中に排出するため施工容易となり精度よく施工することができる。換言すると、この地中熱交換器の設置方法は、必須部材が地中熱交換器5と充填材6のみであることから特許文献1や2に比べて経費を低減でき、また、設置状態で地中熱交換器5が充填材6で良好に覆われているため品質的にも優れている。しかも、本設置方法に用いられる施工機は、一般的な地盤改良機1を流用可能なため、地盤改良と共に実施すれば間接費用を省略したり軽減できる。
【0035】
加えて、この設置方法では、地中熱交換器5が形態例のごとく可撓性であると、熱交換器吊込工程ではケーシング4を地表上に保持してケーシング下端4bと地表との間に間隙を設け、間隙より地中熱交換器を可撓性を利用してケーシング内に簡単に吊り上げることができる。また、地中熱交換器吊込工程において、ケーシング4の上部に設けられた巻取ドラム38を用いて、地中熱交換器5を巻取ドラムのワイヤ39を介してケーシング4内に効率よく引き入れることができる。更に、充填材投入工程において、ケーシングの貫入工程を開始する前にケーシング内に投入するため充填材の充填不足を生じたり充填状態の偏りが生じ難くなる。但し、充填材投入工程は、引抜工程を開始する前であればよく、貫入工程を開始する前、貫入工程を終えるまでに行うようにしてもよい。
【0036】
(地中熱交換器の変形例)この変形例は、地中熱交換器7が非可撓性ないしは剛体であると、熱交換器吊込工程では地中熱交換器をケーシング下端開口からケーシング内に引き込むことが難しいのでその対策の一例を図4に模式的に示したものである。
【0037】
すなわち、図4において、ケーシング8は、ヒンジ8aで左右方向へ開閉可能に連結された半体8A,8Bで構成されている。熱交換器吊込工程では、半体8A,8Bをヒンジ8aを支点として左右に離間し、間に形成される開口部8bから地中熱交換器7をホルダ46及びワイヤ39で吊り上げながら半体8A,8B同士の内側に引き入れた後、図4(b)のごとく半体8A,8B同士をバンド状の締結具8cで閉状態に保つ。また、地中熱交換器7は、上記表1のスパイラルチューブを想定したものであり、第1配管7aがスパイラル形状、第2配管7bが直線形状となっている。なお、図4ではケーシング下端側の掘削刃等を省略している。
【0038】
この構成では、ワイヤ39の引出端が二股39aに分かれてホルダ46の上面側に連結されている。ホルダ46は、地中熱交換器7を構成している第1配管7a及び第2配管7bの上端部を着脱可能に連結する部材であり、各配管7a,7bの上端を着脱可能に連結する穴部等を有している。この各配管7a,7bの着脱は地表側の操作部により行えるようになっている。
【0039】
なお、以上の形態例や各変形例は本発明を何ら制約するものではない。本発明は、各請求項で特定される技術要素を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更したり変形可能なものである。その一例として、地中熱交換器としてはシングルチューブ、二重管、更にそれらに類似の管構成である。充填材としては珪砂、豆砂利、セメント、ソイルセメント、更にそれらに類似の材料構成である。
【符号の説明】
【0040】
1・・・・・・・・地盤改良機
2・・・・・・・・リーダー
3・・・・・・・・昇降手段
4・・・・・・・・ケーシング(4aは上端、4bは下端)
5・・・・・・・・地中熱交換器(5aは第1配管、5bは第2配管)
5c・・・・・・・継手
6・・・・・・・・充填材
7・・・・・・・・地中熱交換器(7aは第1配管、7bは第2配管)
8・・・・・・・・ケーシング(8A,8Bは半体、8aはヒンジ)
34・・・・・・・空気供給ノズル
38・・・・・・・巻取ドラム
39・・・・・・・ワイヤ
40・・・・・・・掘削刃
45・・・・・・・ホルダ
46・・・・・・・ホルダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6