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特開2023-112357マスク形状保持具およびそれを用いたマスク組立体とマスク形状の保持方法
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  • 特開-マスク形状保持具およびそれを用いたマスク組立体とマスク形状の保持方法 図1A
  • 特開-マスク形状保持具およびそれを用いたマスク組立体とマスク形状の保持方法 図1B
  • 特開-マスク形状保持具およびそれを用いたマスク組立体とマスク形状の保持方法 図2A
  • 特開-マスク形状保持具およびそれを用いたマスク組立体とマスク形状の保持方法 図2B
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  • 特開-マスク形状保持具およびそれを用いたマスク組立体とマスク形状の保持方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112357
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】マスク形状保持具およびそれを用いたマスク組立体とマスク形状の保持方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20230804BHJP
   A62B 18/08 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014100
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】522044515
【氏名又は名称】ピーエムユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 克実
(72)【発明者】
【氏名】山田 大樹
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA08
2E185CC36
(57)【要約】
【課題】 簡易に、十分な口前空間の確保と、顔面を覆うマスク面積を小さくするマスク形状保持具が求められている。
【解決手段】板状のベース部と、耳掛け辺よりも長さが短く、両端部を有するように前記ベース部に穿設される耳掛け紐用スリットと、耳掛け紐用スリットと並んで前記両端を挟持可能な挟持部を形成するように前記ベース部に穿設される挟持スリットと、を備えるマスク形状保持具により解決する。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク本体と、前記マスク本体の対向する耳掛け辺に取り付けられる耳掛け紐と、を有するマスクに取り付けられてマスク形状を保持するマスク形状保持具であって、
少なくとも一方に面を有する形状のベース部と、
前記耳掛け辺よりも長さが短く、両端部を有するように前記ベース部に穿設される耳掛け紐用スリットと、
前記耳掛け紐用スリットと並んで、前記耳掛け辺の挟持が可能な挟持部を形成するように前記ベース部に穿設される挟持スリットと、を備え、
前記耳掛け紐用スリットには前記耳掛け紐が挿入され、前記挟持スリットには前記マスク本体の前記耳掛け辺が前記挟持スリットに挿入された状態で、前記耳掛け紐用スリットの前記両端部のそれぞれに前記耳掛け紐が接触するように前記耳掛け紐が引っ張られると、前記耳掛け紐が前記マスク本体の前記耳掛け辺に沿って前記耳掛け辺を短める方向の力を付加するとともに、前記挟持部が前記マスク本体の前記耳掛け辺の挟持を行うマスク形状保持具。
【請求項2】
請求項1に記載のマスク形状保持具であって、
前記挟持スリットは、耳掛け紐用スリットと離間した最遠部から、耳掛け紐用スリットの前記両端部のそれぞれの近傍まで延在するように、ベース部に穿設されるスリットであって、
前記挟持は、前記挟持スリットの内側で画定される部分と前記挟持スリットの外側で画定される部分とによる挟持であるマスク形状保持具。
【請求項3】
請求項1または2に記載のマスク形状保持具であって、
前記マスク本体は素材または形状により伸縮性を有するマスク形状保持具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のマスク形状保持具であって、
前記耳掛け紐は前記耳掛け辺と前記耳掛け紐とにより、輪が形成されている、または輪を形成可能な紐体であるマスク形状保持具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のマスク形状保持具であって、
前記挟持スリットの前記両端部には、前記挟持スリットの幅よりも大きい切り欠きまたは突起である係止部を有するマスク形状保持具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のマスク形状保持具であって、
前記耳掛け紐用スリットの前記両端部の距離は、前記マスク本体の前記耳掛け辺の1/2以下であるマスク形状保持具。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のマスク形状保持具であって、
前記挟持スリットの形状は、曲線のスリットと直線のスリットとの少なくともいずれかを含むマスク形状保持具。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のマスク形状保持具と、
前記マスクと、
を備えるマスク組立体。
【請求項9】
マスク本体と、前記マスク本体の対向する耳掛け辺に取り付けられる耳掛け紐と、を有するマスクに装着されてマスク形状を保持する保持具によりマスクの形状を保持するためのマスク形状の保持方法であって、
前記保持具は、
少なくとも一方に面を有する形状のベース部と、
前記耳掛け辺よりも長さが短く、両端部を有するように前記ベース部に穿設される耳掛け紐用スリットと、
前記耳掛け紐用スリットと並んで、前記耳掛け辺の挟持が可能な挟持部を形成するように前記ベース部に穿設される挟持スリットと、を備え、
前記保持方法は、
前記耳掛け紐用スリットに前記耳掛け紐を挿入し、前記挟持スリットには前記マスク本体の前記耳掛け辺を前記挟持スリットに挿入する工程と、
前記耳掛け紐用スリットの前記両端部のそれぞれに前記耳掛け紐が接触するように前記耳掛け紐が引っ張って、前記耳掛け紐により前記マスク本体の前記耳掛け辺に沿って前記耳掛け辺を短める方向の力を付加するとともに、前記挟持部により前記マスク本体の前記耳掛け辺の挟持を行わせる工程と、を備えるマスク形状の保持方法。
【請求項10】
請求項9に記載のマスク形状の保持方法であって、
前記挟持スリットは、耳掛け紐用スリットと離間した最遠部から、耳掛け紐用スリットの前記両端部のそれぞれの近傍まで延在するように、ベース部に穿設されるスリットであって、
前記挟持は、前記挟持スリットの内側で画定される部分と前記挟持スリットの外側で画定される部分とによる挟持であるマスク形状の保持方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載のマスク形状の保持方法であって、
前記マスク本体は素材または形状により伸縮性を有するマスク形状の保持方法。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか一項に記載のマスク形状の保持方法であって、
前記耳掛け紐は前記耳掛け辺と前記耳掛け紐とにより、輪が形成されている、または輪を形成可能な紐体であるマスク形状の保持方法。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか一項に記載のマスク形状の保持方法であって、
前記挟持スリットの前記両端部には、前記挟持スリットの幅よりも大きい切り欠きまたは突起である係止部を有するマスク形状の保持方法。
【請求項14】
請求項9から13のいずれか一項に記載のマスク形状の保持方法であって、
前記耳掛け紐用スリットの前記両端部の距離は、前記マスク本体の前記耳掛け辺の1/2以下であるマスク形状の保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はマスク形状保持具およびそれを用いたマスク組立体とマスク形状の保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、図4に示すように、不織布に代表される一般的なマスク50は、マスク本体52と、マスク本体の短辺の両側に取り付けられる耳掛け紐51とを有している。マスク50は、耳掛け紐51を耳にかけて、マスク本体52が顔面の鼻および口を覆うように装着される。マスク本体52は、マスク素材(伸縮性のある素材)または形状(プリーツ53等)により、装着時に顔面の上方向(鼻の側)と下方向(口または顎側)との間で少なからず伸縮性を有している。
【0003】
たとえば、プリーツ53を有するマスク50を装着する際に、耳掛け紐51を耳にかけると、耳掛け紐51の位置の端部51aと他の端部51bとが、マスク本体52に対して、マスク本体52にはプリーツ53を広げる方向の力Poを付加する。これにより、マスク本体52の短辺側のプリーツ53aは大きく広がり、これに伴ってマスク本体52の中心部のプリーツ53bも同様に広がる。
【0004】
マスク本体52の中心部のプリーツ53bも同様に広がることで、マスク本体52の形状が維持されずに陥没し、顔面の鼻および口を覆っているマスク本体52が顔面の鼻および口に接触してマスク内部の空間が確保されない問題がある。また、マスク本体52が広がることにより、顔面を覆っているマスクの面積が大きくなり、マスク装着時の外見の印象も低下する。プリーツ53がなく、素材等により伸縮性を持たせたマスクでも同様である。
【0005】
特許文献1には、マスク装着時に呼吸や会話をスムーズに行えるために口前空間を確保するように前方に張り出す形状を形成した湾曲空間保持部を有してマスクの内部前方に係止されるマスク補助具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】登録実用新案第3229283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来は、特許文献1のように、マスクと口との間に空間形成のための補助具を装着することで、マスク装着時の口前空間を確保していた。しかし、マスクのほかに、口前空間にマスクとは別のマスク補助具を装着することは使用上面倒であり、また、顔面を覆っているマスクの面積が大きくなる欠点は解消されない。口前空間にマスクと口との間に空間形成のための補助具を装着しないで、マスク装着時の口前空間を確保するとともに、顔面を覆っているマスクの面積が大きくならないようなマスク補助具が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
マスク本体と、前記マスク本体の対向する耳掛け辺に取り付けられる耳掛け紐と、を有するマスクに取り付けられてマスク形状を保持するマスク形状保持具であって、少なくとも一方に面を有する形状のベース部と、前記耳掛け辺よりも長さが短く、両端部を有するように前記ベース部に穿設される耳掛け紐用スリットと、前記耳掛け紐用スリットと並んで、前記耳掛け辺の挟持が可能な挟持部を形成するように前記ベース部に穿設される挟持スリットと、を備え、前記耳掛け紐用スリットには前記耳掛け紐が挿入され、前記挟持スリットには前記マスク本体の前記耳掛け辺が前記挟持スリットに挿入された状態で、前記耳掛け紐用スリットの前記両端部のそれぞれに前記耳掛け紐が接触するように前記耳掛け紐が引っ張られると、前記耳掛け紐が前記マスク本体の前記耳掛け辺に沿って前記耳掛け辺を短める方向の力を付加するとともに、前記挟持部が前記耳掛け辺の挟持を行うマスク形状保持具により解決する。
【0009】
マスク本体と、前記マスク本体の対向する耳掛け辺に取り付けられる耳掛け紐と、を有するマスクに取り付けられてマスク形状を保持するマスク形状保持具であって、少なくとも一方に面を有する形状のベース部と、前記耳掛け辺よりも長さが短く、両端部を有するように前記ベース部に穿設される耳掛け紐用スリットと、前記耳掛け紐用スリットと並んで、前記耳掛け辺の挟持が可能な挟持部を形成するように前記ベース部に穿設される挟持スリットと、を備え、前記耳掛け紐用スリットには前記耳掛け紐が挿入され、前記挟持スリットには前記マスク本体の前記耳掛け辺が前記挟持スリットに挿入された状態で、前記耳掛け紐用スリットの前記両端部のそれぞれに前記耳掛け紐が接触するように前記耳掛け紐が引っ張られると、前記耳掛け紐が前記マスク本体の前記耳掛け辺に沿って前記耳掛け辺を短める方向の力を付加するとともに、前記挟持部が前記耳掛け辺の挟持を行うマスク形状保持具と、前記マスクと、を備えるマスク組立体により解決する。
【0010】
マスク本体と、前記マスク本体の対向する耳掛け辺に取り付けられる耳掛け紐と、を有するマスクに装着されてマスク形状を保持する保持具によりマスクの形状を保持するためのマスク形状の保持方法であって、前記保持具は、少なくとも一方に面を有する形状のベース部と、前記耳掛け辺よりも長さが短く、両端部を有するように前記ベース部に穿設される耳掛け紐用スリットと、前記耳掛け紐用スリットと並んで、前記耳掛け辺の挟持が可能な挟持部を形成するように前記ベース部に穿設される挟持スリットと、を備え、前記保持方法は、前記耳掛け紐用スリットに前記耳掛け紐を挿入し、前記挟持スリットには前記マスク本体の前記耳掛け辺を前記挟持スリットに挿入する工程と、前記耳掛け紐用スリットの前記両端部のそれぞれに前記耳掛け紐が接触するように前記耳掛け紐が引っ張って、前記耳掛け紐により前記マスク本体の前記耳掛け辺に沿って前記耳掛け辺を短める方向の力を付加するとともに、前記挟持部によりマスク本体の前記耳掛け辺の挟持を行わせる工程と、を備えるマスク形状の保持方法により解決する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、簡易に、十分な口前空間の確保と、顔面を覆うマスク面積を小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明の実施の形態であるマスク形状保持具の代表的な一例を示している。
図1B】本発明の実施の形態であるマスク形状保持具の代表的な他の例を示している。
図2A】本発明の実施の形態であるマスク形状保持具を用いたマスクが装着されている状態を示している。
図2B】本発明の実施の形態であるマスク形状保持具を用いたマスクが装着されている状態のマスク形状保持具の拡大図である。
図2C】本発明の実施の形態であるマスク形状保持具を、プリーツを有するマスクに適用した例を示している。
図3】本発明の実施の形態であるマスク形状保持具の他の実施の形態の例を示している。
図4】従来のマスクを装着している状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態1]
図1から図2Cを参照して、本発明の代表的な実施の形態である実施の形態1としてのマスク形状保持具1について説明する。図1Aは、本発明の実施の形態1であるマスク形状保持具1を示している。図1Bは、マスク形状保持具1の挟持スリットの代表的な他の例を示している。図2Aは、本発明の実施の形態であるマスク形状保持具を用いたマスクが装着されている状態を示している。図2Bは、本発明の実施の形態であるマスク形状保持具を用いたマスクが装着されている状態のマスク形状保持具の拡大図である。図2Cは、本発明の実施の形態であるマスク形状保持具を、プリーツを有するマスクに適用した例を示している。
【0014】
図1Aに示すように、マスク形状保持具1は、クリップたる挟持部2と、耳掛け紐用スリット3と、ベース部4と、を備えている。挟持部2と耳掛け紐用スリット3とは、板状のベース部4に穿設されている。マスク形状保持具1の適用対象となるマスク50は、マスク本体52と、耳掛け紐51と、からなる。また、マスク形状保持具1とマスク50とを構成するものをマスク組立体と定義する。すなわち、マスク形状保持具1が取り付けられている状態のマスク50はマスク組立体であり、またマスク形状保持具1が取り付けられる前にマスク形状保持具1とマスク50とがセット品となっているものもマスク組立体である。ベース部4は少なくとも一方に面を有する形状を有している。この面は平面であっても、曲面であってもよい。面が平面の場合は代表的にはベース部は平板形状である。ベース部の面の部分はマスク形状保持具1をマスク50に取り付けた際に、マスク50の装着者の顔面と相補する面となる。
【0015】
耳掛け紐51は、マスク本体52の対向する両辺のそれぞれに取り付けられる。マスク本体52の対向する両辺とは、一般に、マスク本体52の短辺に対応し、マスク50が装着された際に、耳に近い側の辺に対応する。以下、本願では、マスク本体52の対向する両辺のそれぞれを「耳掛け辺」52aと呼ぶこととする。耳掛け辺52aの一方の端に耳掛け紐51の一端である端部51aが取り付けられ、耳掛け辺52aの他方の端に耳掛け紐51の他端である端部51bが取り付けられている。耳掛け紐51は、代表的には、マスク本体52の耳掛け辺52aと耳掛け紐51とで輪を形成するように取り付けられている。また、さらには、耳掛け紐51は、端部51aを有する紐と、端部51bを有する紐とが、別々の紐である2つの紐から構成され、マスク50の装着時にこれらの紐を結ぶことで輪を形成するように取り付けられている場合も含まれる。
【0016】
マスク本体52は、素材または構造により、少なくとも顔面の上方向(鼻の側)と下方向(口および顎側)との間で、伸縮性を有している。素材による伸縮性は、マスク本体52の生地材料によりマスク本体52が伸縮性を有する場合であり、構造による伸縮性はプリーツ53などの構造を施すことによりマスク本体52が伸縮性を有する場合である。特に、マスク形状保持具1は、マスク本体52の対向する両辺において、耳掛け紐51の端部51a、51bの間でのマスク本体52の素材または構造による伸縮性がある場合に大きな効果を奏する。そして、さらには、マスク形状保持具1が、マスク50を装着した際に、マスク本体52の鼻側からマスク本体52の口側にかけての方向にマスク本体52の素材または構造による伸縮性がある場合に大きな効果を有する。
【0017】
マスク形状保持具1は、マスク50に装着されて、マスク50の装着者の口前空間を保つようにマスク本体52の形状の保持が可能である。これらの構成を有するマスク50である限り、マスク50の材質、マスク50の使用場所・用途(たとえば医療用等など)に関係なく、マスク形状保持具1を適用することが可能である。
【0018】
耳掛け紐用スリット3は両端部3a,3bを有する形状である。耳掛け紐用スリット3は、代表的には、図1Aに示すように線分形状のスリットである。しかし、耳掛け紐用スリット3は両端部3a,3bを有する形状である限り直線形状でなく、曲線形状であってもよい。耳掛け紐用スリット3の端部間で画定される耳掛け紐用スリット3の長さDは、マスク本体52の耳掛け辺よりも長さが短い。耳掛け紐用スリット3の長さDは、マスク本体52の耳掛け辺52aよりも長さが短い限り効果を奏するが、より好ましくは、耳掛け紐用スリット3の長さDは、マスク本体52の耳掛け辺52aよりも長さの1/2の長さ以下とすることにより、特に大きな効果を奏する。
【0019】
耳掛け紐用スリット3には、マスク50の耳掛け紐51が、ベース部4の一方の面から他方の面へと挿入可能である。マスク50の耳掛け紐51は輪が形成されている状態で耳掛け紐用スリット3に挿入されていてもよく、または耳掛け紐用スリット3に挿入された後に輪が形成されてもよい。耳掛け紐51が耳掛け紐用スリット3に挿入されて、耳掛け紐51を引き抜き、耳掛け紐51にテンションTを付与すると、耳掛け紐用スリット3の両端部のそれぞれに耳掛け紐51の端部51a、51bが接触する。
【0020】
図2Aおよび図2Bに示すように、マスク形状保持具1が装着されたマスク50(マスク組立体)を装着する際には、耳掛け紐用スリット3に挿入されて、輪が形成されている耳掛け紐51の輪の部分を耳に懸掛する。この状態では、耳掛け紐用スリット3の両端部3a,3bのそれぞれに耳掛け紐の端部51a、51bが接触して、耳掛け紐51にテンションTが付加された状態となる。このとき、耳掛け紐用スリット3の長さDがマスク本体52の耳掛け辺52aよりも長さが短いため、耳掛け紐51は直接耳に向かって引っ張られることなく、耳掛け紐51は一旦耳掛け紐用スリット3の両端部3a,3bに向かってテンションTが付加され、耳掛け紐51の端部51a、51bの端部間距離が耳掛け紐用スリット3の長さDとなっている状態で、耳掛け紐51が耳に向かって延びる状態となる。そのため、マスク本体52の耳掛け辺52aには、マスク本体52の耳掛け辺52aの耳掛け紐51が取り付けられている箇所には、マスク本体52の耳掛け辺52aを縮める(短める)方向の力Pが付加された状態、言い換えれば耳掛け辺52aの両端が近づく方向の力Pが付加された状態となる。これは図4に示すマスク本体52において、耳掛け辺52aを広げる方向の力Poと逆の方向の力である。
【0021】
挟持部2は、挟持スリット21と、タブ22と、押さえ23と、からなる。挟持スリット21の形状は、耳掛け紐用スリット3と並んで、耳掛け辺52aの挟持が可能な挟持部2を形成するようにベース部4に穿設されるスリットである。代表的には、挟持スリット21の形状は、たとえば、耳掛け紐用スリット3と離間した最遠部21aから、耳掛け紐用スリット3の両端部3a,3bのそれぞれの近傍である最近部たる挟持スリット21の両端部21bのそれぞれまで延在するように、ベース部4に穿設されるスリットである。挟持スリット21の形状は、耳掛け紐用スリット3の両端部3a,3bのそれぞれにおける挟持スリット21との距離は必ずしも同じである必要はない。耳掛け紐用スリット3の両端部3a,3bの一方から挟持スリット21の最遠部21aまで耳掛け紐用スリット3から徐々に離間し、挟持スリット21の最遠部21aから耳掛け紐用スリット3の両端部3a,3bの他方まで徐々に耳掛け紐用スリット3に接近するような形状であればよい。すなわち、挟持スリット21は、耳掛け紐用スリット3と離間した最遠部21aから、耳掛け紐用スリット3の両端部3a,3bのそれぞれの近傍まで延在するような形状であればよい。
【0022】
タブ22は挟持スリット21の内側で画定されるベース部4の領域であり、押さえ23は、挟持スリット21の外側で画定されるベース部4の領域である。挟持スリット21には、マスク本体52の耳掛け辺52aが挿入可能であって、挟持スリット21にマスク本体52の耳掛け辺52aが挿入されると、タブ22と押さえ23とによって、マスク本体52が挟持される。特に、挟持スリット21にマスク本体52の耳掛け辺52aが挿入された状態で、耳掛け紐51を耳にかけてマスク50を装着すると、耳掛け紐用スリット3の両端部3a,3bのそれぞれに耳掛け紐51の端部51a、51bが接触するように耳掛け紐51が引っ張られる。その結果、耳掛け紐51がマスク本体52の耳掛け辺52aに沿って耳掛け辺52aを短める方向の力を付加するとともに、マスク本体52の耳掛け辺52aは挟持スリット21内に強く引き込まれタブ22と押さえ23とによって挟持される。耳掛け紐用スリット3によりマスク本体52の耳掛け辺52aが縮め(短め)られると、通常マスク本体52の耳掛け辺52a部はマスク50の装着者の顔面から離れるような隙間を形成する。しかし、本願発明のマスク形状保持具1では、マスク本体52の耳掛け辺52aがタブ22と押さえ23とによって挟持されて、マスク本体52の耳掛け辺52aがベース部4の面によって矯正されるので、耳掛け紐用スリット3によりマスク本体52の耳掛け辺52aが縮め(短め)られても、マスク本体52の耳掛け辺52a部はマスク50の装着者の顔面に密着し隙間ができることはない。
【0023】
タブ22の大きさ、すなわち挟持スリット21の内側で画定されるベース部4の領域は、代表的には、マスク本体52の耳掛け辺52aの長さよりも小さいことが好ましい。タブ22の大きさは、あまり小さすぎると、マスク本体52の耳掛け辺52aを挟持することができなくなる。一方、タブ22が大きすぎると、マスク本体52の通気面積を覆ってしまうことになってマスク50の機能を果たさないため、マスク本体52の耳掛け辺52aを挟持するに足りる適切な大きさである必要がある。したがって、タブ22の大きさはマスク本体52の面積の1/30から1/8の程度の範囲にあることが好ましい。
【0024】
これにより、マスク本体52の耳掛け辺52aが挟持スリット21に挟持されている状態で、耳掛け紐51の端部51a、51bの端部間距離が耳掛け紐用スリット3の長さDとなるようにマスク本体52の耳掛け辺52aの長さが短められる。これによって、マスク50が装着される際には、マスク本体52の伸縮性により、鼻、口、顎によりマスク本体52の中央部52bは自然に広がる一方で、マスク本体52の耳掛け辺52aは相対的に短くなり、マスク本体52内に膨らみが形成され、十分な口前空間が形成される。さらに、マスク本体52の広がりが制限されることにより、従来よりも顔面を覆っているマスクの面積が小さくなり、マスク装着時の外見の印象の低下が改善される。
【0025】
また、特に、図2Cに示すように、マスク本体52において、プリーツ53等のように形状ないし構造により伸縮性を持たせている場合には、特に顕著に効果が表れる。挟持スリット21にマスク本体52の耳掛け辺52aが挿入された状態で、耳掛け紐51を耳にかけてマスク50を装着すると、耳掛け紐用スリット3の両端部3a,3bのそれぞれに耳掛け紐51の端部51a、51bが接触するように耳掛け紐51が引っ張られる。その結果、耳掛け紐51がマスク本体52の耳掛け辺52aに沿って耳掛け辺52aを短める方向の力を付加するとともに、マスク本体52の耳掛け辺52aは挟持スリット21内に強く引き込まれタブ22と押さえ23とによって挟持される。このとき、タブ22と押さえ23とが、マスク本体52の耳掛け辺52aにおいて、プリーツ53のうちの耳掛け辺52a側のプリーツ53aが広がらないように、耳掛け辺52a側のプリーツ53aと共に耳掛け辺52aを挟持する。すなわち、耳掛け紐51が付加するテンションTにより耳掛け辺52aに負荷される力Pが付加される方向は、耳掛け辺52aにおいて特にプリーツ53、さらにはマスク本体52の短辺側のプリーツ53aが広がらないような方向である。この力の方向も、図4に示すマスク本体52において、耳掛け辺52aを広げる方向の力Poと逆の方向の力である。
【0026】
これによって、マスク50が装着されると、鼻と口と顎とにより、プリーツ53は伸縮性により自然に広がり、マスク本体52に膨らみが形成され、十分な口前空間が確保される。一方で、マスク本体52の中心部のプリーツ53bの広がりは、マスク形状保持具1を取り付けていないマスク50の装着時よりも広がりが制限され、従来よりも顔面を覆っているマスクの面積が小さくなり、マスク装着時の外見の印象の低下が改善される。
【0027】
図1Bの(a)に示すように、挟持スリット21の両端部21bの少なくとも一方に係止部たる切り欠き24を配置することができる。係止部たる切り欠き24は、挟持スリット21の幅よりも大きい形状の孔であって、図1Bの(a)のような半円状の切り欠きであって、タブ22または押さえ23の少なくとも一方に配置させることができる。係止部たる切り欠き24は、マスク本体52の耳掛け辺52aが小さく折りたたまれて収納される機能を有する。そして、マスク本体52の耳掛け辺52aが挟持部2に挟持されているときに、マスク本体52の耳掛け辺52aの部分が折りたたまれて係止部たる切り欠き24内に収納されることで、耳掛け辺52aの端部が挟持スリット21内に移動しにくくなり、マスク本体52の耳掛け辺52aが挟持スリット21の両端部21b間の全域に留まるように維持することを可能とする。そして、マスク本体52の耳掛け辺52aが挟持スリット21から抜け難くする効果を奏する。
【0028】
また、図1Bの(b)に示すように、挟持スリット21の両端部21bの少なくとも一方に、係止部たる突起25を配置することができる。係止部たる突起25は、タブ22または押さえ23の少なくとも一方に配置させることができる。係止部たる突起25は、挟持スリット21の幅よりも狭く挟持スリット21の中に突出する突起またはベース部4の面外方向(タブ22または押さえ23の面外方向)に突出する突起である。係止部たる突起25はたとえば、爪の形状であってマスク本体52の耳掛け辺52aの素材に引っかかることが可能な形状である。マスク本体52の耳掛け辺52aが挟持部2に挟持されているときに、マスク本体52の耳掛け辺52aの部分が係止部たる突起25に引っかかって、マスク本体52の耳掛け辺52aが挟持スリット21の両端部21b間の全域に留まるように維持することが可能であるとともに、マスク本体52の耳掛け辺52aが挟持スリット21から抜け難くする効果を奏する。
【0029】
マスク形状保持具1の材質(ベース部4の材質)は、一定の剛性を有する材料が必要である。マスク形状保持具1の材料としては、代表的には樹脂材料全般が考えられるが、金属材料でも適用ができる。さらに、樹脂材料としては、特に限定しないが、例えばプラスチック樹脂である。特に、ポリプロピレン(PP)、ABS(ABS)、ポリカーボネート(PC)なども適用ができる。割れにくく人の肌への影響が少ない材質である限り、マスク形状保持具1に適用できる。さらに、樹脂材料であれば、容易にタブ22の形状にデザイン性を持たせる事も可能である。
【0030】
また、タブ22には、シールを貼ったり、または印刷などでイラストや注意書きなどを付すことが可能である。注意書きでは、「花粉症」「喘息」など他人へのさりげない気配りなどを表示させることが可能である。
【0031】
[実施の形態2]
続いて、図3を参照して、実施の形態2について説明する。実施例1のマスク形状保持具1では挟持スリット21の形状として曲線形状である例を説明した。しかし、図3の(a)から(f)に示すように、挟持スリット21の形状は曲線形状に限らず、挟持スリット21の形状を自由に選択できる。たとえば、図3に示すように、挟持スリット21の形状として一以上の直線形状や、一以上の曲線形状や、直線形状と曲線形状の組み合わせとすることも可能である。
【0032】
たとえば、図3の(a)の場合のマスク形状保持具1aは三角形であって、挟持スリット211の形状は三角形である。すなわち、挟持スリット211の最近部たる両端部211aから挟持スリット211の最遠部211bまでは直線であって、挟持スリット211の最遠部211bは点である。この場合であっても、実施例1と同様の効果を奏する。
【0033】
さらに、図3の(b)の場合のマスク形状保持具1bは台形であって、挟持スリット212の形状は台形である。すなわち、挟持スリット212の最近部たる両端部212aから挟持スリット212の最遠部212bまでは直線であって、挟持スリット212の最遠部212bは直線であって、代表的には、耳掛け紐用スリット3と平行であって耳掛け紐用スリット3の長さよりも短い直線である。
【0034】
さらに、図3の(c)の場合のマスク形状保持具1cは矩形であって、挟持スリット213の形状である。すなわち、挟持スリット213の最近部たる両端部213aから挟持スリット213の最遠部213bまでは直線であって、挟持スリット213の最遠部213bは線であって、代表的には、耳掛け紐用スリット3と平行な直線であって耳掛け紐用スリット3の長さよりも短い直線である。この場合であっても、実施例1と同様の効果を奏する。
【0035】
さらに、図3の(d)の場合のマスク形状保持具1dは台形であって、挟持スリット214の形状は、図3の(b)の場合の挟持スリット212の最遠部212bの直線を、挟持スリット214の最遠部214bを曲線とした例である。
【0036】
さらに、図3の(e)の場合のマスク形状保持具1eは台形であって、挟持スリット215の最近部たる両端部215aから挟持スリット215の最遠部215bまで、複数の曲線を組み合わせた例である。この場合であっても、実施例1と同様の効果を奏する。
【0037】
さらに、図3の(f)の場合のマスク形状保持具1fは台形であって、挟持スリット216の最近部たる両端部216aから挟持スリット216の最遠部216bまで、複数の直線を組み合わせたいわゆるジグザグ形状とした例である。この場合であっても、実施例1と同様の効果を奏する。
【0038】
すなわち、マスク本体52の耳掛け辺52aを、挟持スリット211,212,213,214,215,216の全体にわたって、挟持スリット211,212,213,214,215,216の内側で画定される部分(タブ22)と挟持スリット211,212,213,214,215,216の外側で画定される部分(押さえ23)とにより挟持することが可能である限り、挟持スリット21の形は制限されず、実施例1と同様の効果を奏する。
【0039】
本願発明のマスク形状保持具1をマスク50に装着し、マスク形状保持具1により、耳掛け紐51が耳掛け紐用スリット3を介してマスク本体52の耳掛け辺52aを短くなるように作用することで、マスク本体52の耳掛け辺52aがマスク本体52の中央部52bに対して相対的に縮まって、口前空間を形成するマスク50の立体構造を容易に得ることができ、ひいては呼吸がしやすくなる。
【0040】
また、口前空間を確保できる立体構造を容易に得ることができることにより、マスク本体52と肌との接触を低下させることが可能であって、肌荒れ防止ができ、特に女性の場合には、化粧品などのマスクへの付着が防止できる。
【0041】
また、マスク本体52が大きく広がることが防止でき、いわゆるフェイスラインなどの外見上の印象の向上が見込まれる。
【符号の説明】
【0042】
1 マスク形状保持具
2 挟持部(クリップ)
21,211,212,213,214,215,216 挟持スリット
22 タブ
23,231,232,233,234,235,236 押さえ
24,25 係止部
3 耳掛け紐用スリット
50 マスク
51 耳掛け紐
52 マスク本体
52a (マスク本体の)耳掛け辺
52b (マスク本体の)中心部
53 プリーツ
53a 耳掛け辺側のプリーツ
53b 中心部側のプリーツ
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4