(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112381
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】紙製カップ及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 81/38 20060101AFI20230804BHJP
B65D 3/22 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
B65D81/38 G
B65D3/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014137
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】591007295
【氏名又は名称】株式会社アプリス
(71)【出願人】
【識別番号】509071677
【氏名又は名称】株式会社ACT
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】田邉 敦士
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 星児
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AB01
3E067AB26
3E067BA07A
3E067BB02A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB17A
3E067BB25A
3E067BB26A
3E067CA07
3E067CA18
3E067GA01
3E067GA06
3E067GA14
(57)【要約】
【課題】紙の坪量を増すことなく、断熱性を高めた紙製カップとその製造方法を提供する。
【解決手段】紙製カップ1は、有底筒状のインナーカップ2と、インナーカップ2の外周を囲うアウタースリーブ3とを備えるようにした。そして、インナーカップ2の外周面26には、アウタースリーブ3の内周面31に向けて突出し、この内周面31に接着される段部24を有し、インナーカップ2の外周面26とアウタースリーブ3の内周面31との間には空隙部11が形成されている。更に、空隙部11内には発泡樹脂層4が充填されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状のインナーカップと、
前記インナーカップの外周を囲うアウタースリーブと、
前記インナーカップの外周面と前記アウタースリーブの内周面との間の空隙部と、
前記インナーカップの外周から突出し、前記アウタースリーブの内周面に接着される段部と、
前記空隙部内に充填されている発泡樹脂層と、
を備えること、
を特徴とする紙製カップ。
【請求項2】
前記発泡樹脂層は、前記アウタースリーブの内周面にコーティングされ、前記アウタースリーブの内周面から前記インナーカップの外周面に向けて膨出していること、
を特徴とする請求項1記載の紙製カップ。
【請求項3】
外周から突出する段部を有して有底筒状のインナーカップと、前記インナーカップの外周を囲うアウタースリーブと、を備える紙製カップの製造方法であって、
前記インナーカップの外周面と前記アウタースリーブの内周面との間に空隙を空けて、前記インナーカップに前記アウタースリーブを取り付ける取り付け工程と、
前記インナーカップの前記段部を前記アウタースリーブの内周面に接着する接着工程と、
前記空隙内で樹脂を発泡させる発泡工程と、
を含むこと、
を特徴とする紙製カップの製造方法。
【請求項4】
前記アウタースリーブの内周面に前記樹脂をコーティングするコーティング工程を含み、
前記発泡工程は、前記樹脂を前記アウタースリーブの内周面から前記インナーカップの外周面に向けて発泡させること、
を特徴とする請求項3記載の紙製カップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーカップとアウタースリーブを有する紙製カップとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットコーヒー等の熱い液体が容器に注がれて提供されることがある。即席麺やスープ等の即席食品を収容したカップに熱湯を注ぐことで食べられるようにすることがある。電子レンジによってカップと共に内容物を加熱する場合もある。カップ内の飲食物が熱せられている場合、飲食物の熱がカップを介して飲食者の手に伝達するため、カップの把持は容易でない。
【0003】
そこで、カップ全体が発泡ポリスチレン製等の断熱効果の高いプラスチック製で作製されてきた。しかし、近年、化学的に安定な物質であるために自然分解し難いプラスチックの使用が環境問題となっており、カップ本体に使用されるプラスチックの減量が要望される。
【0004】
プラスチック量の減量のため、紙製のアウタースリーブを紙製のインナーカップに外嵌した紙製カップが知られている(例えば特許文献1)。アウタースリーブはインナーカップ側に突出するカール部や段部を有する。アウタースリーブをインナーカップに外嵌したとき、アウタースリーブのカール部や段部のみがインナーカップの外周面に接触することで、アウタースリーブとインナーカップとの間に断熱空隙が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インナーカップ内に湯等を注いだり、インナーカップ内の内容物を熱したりすると、インナーカップ内に内圧が発生し、インナーカップは径方向外側に膨張する。そのため、インナーカップとアウタースリーブとの間の断熱空隙は狭くなり、最悪の場合にはインナーカップの外周面とアウタースリーブの内周面は接触する。そのため、インナーカップ内の熱が紙製カップを把持する飲食者の指や手に伝わり易くなる。
【0007】
また、飲食者がアウタースリーブを把持すると、その把持の圧力によってアウタースリーブがインナーカップへ向けて凹む。そのため、この場合も、インナーカップとアウタースリーブとの間の断熱空隙は狭くなり、最悪の場合にはインナーカップの外周面とアウタースリーブの内周面は接触する。そのため、インナーカップ内の熱が紙製カップを把持する飲食者の指や手に伝わり易くなる。
【0008】
このようなインナーカップの膨張やアウタースリーブの凹みを抑制するためには、インナーカップを構成する紙及びアウタースリーブを構成する紙の坪量を増す必要があり、環境問題の観点からもコスト高の観点からも好ましくない。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、紙の坪量を増すことなく、断熱性を高めた紙製カップとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の実施形態に係る紙製カップは、有底筒状のインナーカップと、前記インナーカップの外周を囲うアウタースリーブと、前記インナーカップの外周面と前記アウタースリーブの内周面との間の空隙部と、前記インナーカップの外周から突出し、前記アウタースリーブの内周面に接着される段部と、前記空隙部内に充填されている発泡樹脂層と、を備える。
【0011】
これにより、スープ等の内容物によってインナーカップの内側からカップが膨出する方向へ圧力がかかっても、またアウタースリーブに飲食者の指や手などによってインナーカップ側に圧力がかかっても、発泡樹脂層により空隙部が潰されて、インナーカップとアウタースリーブとが接触することを抑制できる。そのため、インナーカップやアウタースリーブの坪量を増加させることなく、飲食者への内容物の熱の伝わりを抑制できる。
【0012】
前記発泡樹脂層は、前記アウタースリーブの内周面にコーティングされ、前記アウタースリーブの内周面から前記インナーカップの外周面に向けて膨出しているようにしてもよい。
【0013】
これにより、スープ等の内容物によってインナーカップの内側からカップが膨出する方向へ圧力がかかっても、アウタースリーブの内周面から膨出する発泡樹脂層によって、インナーカップの膨出変形を抑えることができる。そのため、インナーカップの外周から突出し、アウタースリーブの内周面に接着される段部が外れ難く、インナーカップの坪量を増加させることなく、アウタースリーブの弛みや脱落を抑制できる。
【0014】
ここで、発泡樹脂層をインナーカップの外周面にコーティングすると、スープ等の内容物によってインナーカップの内側からカップが膨出する方向へ圧力がかかり、発泡樹脂層ごとインナーカップは膨張し、段部がいっそう外れ易くなる。そのため、発泡樹脂層は、アウタースリーブの内周面から膨出させる必要がある。
【0015】
また、上記の目的を達成するため、本発明の実施形態に係る紙製カップの製造方法は、外周から突出する段部を有して有底筒状のインナーカップと、前記インナーカップの外周を囲うアウタースリーブと、を備える紙製カップの製造方法であって、前記インナーカップの外周面と前記アウタースリーブの内周面との間に空隙を空けて、前記インナーカップに前記アウタースリーブを取り付ける取り付け工程と、前記インナーカップの前記段部を前記アウタースリーブの内周面に接着する接着工程と、前記空隙内で樹脂を発泡させる発泡工程と、を含む。
【0016】
前記アウタースリーブの内周面に前記樹脂をコーティングするコーティング工程を含み、前記発泡工程は、前記樹脂を前記アウタースリーブの内周面から前記インナーカップの外周面に向けて発泡させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、インナーカップやアウタースリーブの坪量を増すことなく、飲食者への内容物の熱の伝わりを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】アウタースリーブの発泡前状態を示す模式図である。
【
図3】アウタースリーブの発泡後状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(構成)
本発明の実施形態に係る紙製カップについて図面を参照しつつ詳細に説明する。各図面においては、理解容易のため、厚み、寸法、位置関係、比率又は形状等を強調して示している場合があり、本発明は、それら強調に限定されるものではない。以下、紙製カップの底側を下方又は下側といい、開口側を上方又は上側といい、上下方向と直交してカップが拡がる方向を径方向という。
【0020】
図1は、紙製カップ1の断面図である。紙製カップ1は、コーヒーやお茶等の飲料物、味噌汁等のスープ及びインスタントラーメン等の熱せられた液体を含む内容物を収容する。この紙製カップ1は、二重筒形状を有し、インナーカップ2とアウタースリーブ3とを備えている。インナーカップ2とアウタースリーブ3は共に筒形状を有する。インナーカップ2は内殻に位置し、アウタースリーブ3は外殻に位置し、インナーカップ2にアウタースリーブ3が外嵌されて成る。
【0021】
インナーカップ2及びアウタースリーブ3は、共に紙製であり、例えば、波形シートの両面にライナーシートを貼り合わせた両面段ボール、又は波形シートの片面にライナーシートを貼り合わせた片面段ボールである。
【0022】
インナーカップ2とアウタースリーブ3の筒の環形状には、例えば、真円、楕円、角丸長方形、卵形、その他のオーバル状を含む各種円形状、及び多角形状が含まれる。インナーカップ2にアウタースリーブ3を外嵌できれば、アウタースリーブ3の形状はインナーカップ2と同形に限らない。
【0023】
インナーカップ2は、底部22と胴部23を有する。底部22はインナーカップ2の底を塞ぐ平坦面である。胴部23は、底部22の周縁全周に沿って無端状に延在し、底部22の周縁から上方へ立ち上がっている。胴部23は、全体的には上方に向けて漸次拡径している。インナーカップ2は上端に開口21を有し、胴部23と底部22が囲む容器内部6内の内容物を取り出すことが可能となっている。インナーカップ2の開口21を画成する口縁は、胴部23は径方向外方に巻回されてカール25となっている。
【0024】
尚、これに限らないが、底部22は、上面の周縁に沿って延びる環状の脚部が付いた上面閉蓋及び下面開口の筒形状である。また、胴部23は、下端が内側に折り込まれて断面コの字の脚部が作出されている。胴部23に底部22を嵌め込み、底部22の脚部を胴部23の断面コの字の脚部で巻き込むように包むことで、インナーカップ2は形成されている。
【0025】
胴部23は、上方側に段部24を有する。段部24は、底部22から段部24直前までの拡径度合いよりも一段大きく径方向外方に拡径した大径部である。この段部24は、胴部23から1周に亘って膨出している。また、この段部24は、胴部23の同一高さを維持して延在している。即ち、胴部23は、底部22から段部24の下端で水平又は急激な傾倒率で拡径するように拡がり、段部24の上端で傾倒率を緩やかに戻して上端まで垂直又は拡径していく。
【0026】
アウタースリーブ3は、上方へ向けて漸次拡径する逆錐台状の円筒であり、上下端部が開口している。このアウタースリーブ3は、インナーカップ2の段部24以下の高さ範囲より径方向外側へ高い傾倒率を有して拡径している。アウタースリーブ3がインナーカップ2に外嵌されると、アウタースリーブ3とインナーカップ2とは、アウタースリーブ3の下端縁33で接触し、またインナーカップ2の段部24で接触する。
【0027】
段部24には段部接着部51を有し、段部24とアウタースリーブ3の内周面31とは接着剤により接着されている。また、下端縁33には下部接着部52を有し、アウタースリーブ3の下端縁33とインナーカップ2の外周面26とは接着剤により接着されている。アウタースリーブ3の上端縁32は、インナーカップ2のカール25に巻き込まれている。
【0028】
尚、アウタースリーブ3の下端縁33にも径方向内側方向に巻回されたカールを形成し、このカールとインナーカップ2の外周面26とを接触させ、下部接着部52を形成してもよい。
【0029】
このような紙製カップ1では、段部24の存在により、インナーカップ2の外周面26とアウタースリーブ3の内周面31との間に空隙部11が発生している。具体的には、段部24とアウタースリーブ3の下端縁33との間に空隙部11が発生している。空隙部11は、段部24以上の高さ範囲において、インナーカップ2の胴部23とアウタースリーブ3の傾倒率を変えることで、段部24以上の高さ範囲にも併せて発生させることができる。
【0030】
この空隙部11には、発泡樹脂層4が存在している。この発泡樹脂層4は、発泡した樹脂の層であれば、これに限られないが、例えば熱により発泡する熱可塑性樹脂の層である。熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂、線状低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂などを用いることができる。
【0031】
尚、インナーカップ2の内面には、防水等の観点で全領域が樹脂コーティングされている。またアウタースリーブ3の外周面にも樹脂コーティングされている。これらインナーカップ2の内面とアウタースリーブ3の樹脂コーティングは、発泡樹脂層4が発泡のみが発泡するように、アルミニウム箔などの層を設けるか、発泡樹脂層4の熱可塑性樹脂よりも軟化点の高い熱可塑性樹脂を使う。
【0032】
この条件を満たすことができれば、インナーカップ2の内面とアウタースリーブ3の樹脂コーティングは、低密度ポリエチレン樹脂、線状低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂などを用いることができる。
【0033】
例えば、発泡樹脂層4にポリエチレン樹脂を用い、インナーカップ2の内面とアウタースリーブ3の樹脂コーティングにはポリプロピレン樹脂を用いる。樹脂のコーティング方法としては、樹脂を熱溶融して塗布する押し出しコーティング法、又はフィルムになったものを貼り合わせるラミネート法などを用いることができる。
【0034】
図2は、アウタースリーブ3の発泡前状態を示す模式図である。
図3は、アウタースリーブ3の発泡後状態を示す模式図である。
図2に示すように、アウタースリーブ3はコーティング工程を経る。コーティング工程では、発泡して発泡樹脂層4となる樹脂層41が、アウタースリーブ3の内周面31にコーティングされる。
【0035】
次に、インナーカップ2とアウタースリーブ3は取り付け工程と接着工程を経る。取り付け工程では、インナーカップ2の下方からアウタースリーブ3を挿入する。そして、インナーカップ2の段部24にアウタースリーブ3の内周面31を接触させ、アウタースリーブ3の下縁部33にインナーカップ2の外周面26を接触させる。
【0036】
段部24と下端縁33には接着剤を塗布しておき、段部24をアウタースリーブ3の内周面31に接着し、アウタースリーブ3の下縁部33をインナーカップ2の外周面26に接着し、段部接着部51及び下部接着部52を形成する。
【0037】
そして、紙製カップ1をオーブン内で加熱する等することで発泡工程を経る。
図3に示すように、発泡工程では、アウタースリーブ3の内周面31に形成させた樹脂層41を発泡させる。発泡樹脂層4は、アウタースリーブ3の内周面31からインナーカップ2の外周面26に向けて膨出し、空隙部11に充填される。
【0038】
(調理時)
図4は、紙製カップ1にかかる力を示す模式図である。
図4に示すように、喫食の際には、容器内部6にスープ7等の液体が満たされる。このスープ7は、インナーカップ2の胴部23を径方向外側に膨張させようとする。また、飲食者が紙製カップ1を把持すると、アウタースリーブ3が径方向内側へ凹もうとする。
【0039】
しかしながら、インナーカップ2とアウタースリーブ3との間には発泡樹脂層4が存在する。そのため、インナーカップ2とアウタースリーブ3の紙の坪量を減らしても、空隙部11が窄まり難く、また発泡樹脂層4の断熱作用により、飲食者の指や手にスープ7の熱が伝わり難くなる。
【0040】
また、発泡樹脂層4はアウタースリーブ3に形成され、インナーカップ2に向けて膨らんでいる。そのため、発泡樹脂層4がインナーカップ2に与える支持力8bは、スープ7によるインナーカップ2の胴部23の膨張力8aを相殺又は減殺し、インナーカップ2の胴部23の膨張を抑制する。
【0041】
ここで、発泡樹脂層4がインナーカップ2の外周面26に形成され、発泡樹脂層4がインナーカップ2からアウタースリーブ3の内周面31に向けて膨らんでいる場合、インナーカップ2は発泡樹脂層4ごと膨張しようとする。一方で、スープ7が発生させるインナーカップ2の膨張力8aを相殺又は減殺しようとする支持力8bは存在しない。そのため、インナーカップ2の膨張は、発泡樹脂層4を径方向外側に移動させ、アウタースリーブ3も径方向外側に膨らむ。
【0042】
段部24はリブとして機能しており、段部24の位置におけるインナーカップ2の膨張量は、段部24以外の位置におけるインナーカップ2の膨張量よりも小さい。換言すると、段部24以外の位置におけるインナーカップ2の膨張量は、段部24の位置におけるインナーカップ2の膨張量より大きい。この膨張差によって、段部24に形成された段部接着部51が剥がれ、アウタースリーブ3がインナーカップ2から外れてしまう虞がある。
【0043】
しかしながら、発泡樹脂層4がアウタースリーブ3に形成され、インナーカップ2に向けて膨らんでいる場合、スープ7によるインナーカップ2の胴部23の膨張力8aを相殺又は減殺されているので、段部24の位置におけるインナーカップ2の膨張量と、段部24以外の位置におけるインナーカップ2の膨張量との差は小さい。そのため、段部24に形成された段部接着部51の剥がれは抑制され、アウタースリーブ3がインナーカップ2から外れてしまう虞を低減する。
【0044】
(作用効果)
以上のように、この紙製カップ1は、有底筒状のインナーカップ2と、インナーカップ2の外周を囲うアウタースリーブ3とを備えるようにした。そして、インナーカップ2の外周面26には、アウタースリーブ3の内周面31に向けて突出し、この内周面31に接着される段部24を有し、インナーカップ2の外周面26とアウタースリーブ3の内周面31との間には空隙部11が形成されている。更に、空隙部11内には発泡樹脂層4が充填されている。
【0045】
このような紙製カップ1は、取り付け工程、接着工程及び発泡工程を含んで製造されるようにした。取り付け工程では、インナーカップ2の外周面26とアウタースリーブ3の内周面31との間に空隙部11を空けて、インナーカップ2にアウタースリーブ3を取り付ける。接着工程では、インナーカップ2の段部24をアウタースリーブ3の内周面31に接着する。そして、発泡工程では、空隙部11内で樹脂層41を発泡させる。
【0046】
これにより、スープ7等の内容物によってインナーカップ2の内側からカップが膨出する方向へ圧力がかかっても、またアウタースリーブ3に飲食者の指や手などによってインナーカップ2側に圧力がかかっても、発泡樹脂層4により空隙部11が潰されて、インナーカップ2とアウタースリーブ3とが接触することを抑制できる。そのため、インナーカップ2やアウタースリーブ3の坪量を増加させることなく、飲食者への内容物の熱の伝わりを抑制できる。
【0047】
また、発泡樹脂層4は、アウタースリーブ3の内周面31にコーティングされ、アウタースリーブ3の内周面31からインナーカップ2の外周面26に向けて膨出しているようにした。
【0048】
これにより、スープ7等の内容物によってインナーカップ2の内側からカップが膨出する方向へ圧力がかかっても、アウタースリーブ3の内周面31から膨出する発泡樹脂層4によって、インナーカップ2の膨出変形を抑えることができる。そのため、インナーカップ2の外周面26から突出し、アウタースリーブ3の内周面31に接着される段部24が外れ難く、インナーカップ2の坪量を増加させることなく、アウタースリーブ3の弛みや脱落を抑制できる。
【0049】
以上の本発明の実施形態は例として提示したものであって、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。そして、実施形態やその変形は本発明の範囲に含まれるものである。
【0050】
例えば、アウタースリーブ3の外側面にも発泡樹脂層4と同一又は異種の発泡樹脂層を形成してもよい。これにより、アウタースリーブ3の強度が向上し、アウタースリーブ3及びインナーカップ2の坪量を更に減らすことができる。また、アウタースリーブ3の外側面には、商品名等が印字されるインク層が更に形成されていてもよい。
【0051】
発泡樹脂層4は、複数種類の熱可塑性樹脂の混合により成るものであってもよいし、又は複数種類の熱可塑性樹脂の多層構造であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 紙製カップ
11 空隙部
2 インナーカップ
21 開口
22 底部
23 胴部
24 段部
25 カール
26 外周面
3 アウタースリーブ
31 内周面
32 上端縁
33 下端縁
4 発泡樹脂層
41 樹脂層
51 段部接着部
52 下部接着部
6 容器内部
7 スープ
8a 膨張力
8b 支持力