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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112395
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20230804BHJP
【FI】
H02N11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014157
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 仁
(57)【要約】      (修正有)
【課題】雨天時でも発電できる発電装置を提供する。
【解決手段】発電装置10は、吸着により発熱する吸着熱発生部11と、吸着熱発生部11を保持しかつ吸着熱発生部11に熱を集め乾燥させる集熱部12a、12bを有する乾燥モジュール12と、外部に伝熱する第1伝熱部13b及び第1伝熱部13bの反対側で吸着熱発生部11に熱的に接触する第2伝熱部13aの間の温度差により熱電発電する熱電発電ユニット13と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着により発熱する吸着熱発生部と、
前記吸着熱発生部を保持しかつ前記吸着熱発生部に熱を集め乾燥させる集熱部を有する乾燥モジュールと、
外部に伝熱する第1伝熱部及び前記第1伝熱部の反対側で前記吸着熱発生部に熱的に接触する第2伝熱部を有し、前記第1伝熱部及び前記第2伝熱部の間の温度差により熱電発電する熱電発電ユニットと、
を有することを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記吸着熱発生部は前記吸着熱発生部に雨水を透過させる水透過装置を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記吸着熱発生部は前記第2伝熱部に熱的に接触するゼオライト粒子を収納している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記第1伝熱部に熱的に接触するヒートシンクが設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項5】
前記吸着熱発生部の上に雨水を集める水誘導装置を有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項6】
前記乾燥モジュールは前記集熱部として集光ミラーを有する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項7】
前記乾燥モジュールは前記集熱部として集光レンズを有する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発電装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に屋外に設置される環境発電(Energy Harvesting)装置等の発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発電装置には例えば特許文献1の図7に開示されるものがあり、風・雨・雪等を利用することで、プロペラを回転させて発電させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-054676号公報(図7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の発電装置では、プロペラを回転させる動力として不十分な、例えば霧雨のような状況下では発電できないという問題点があった。
【0005】
本発明は、以上の従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、雨天時でも発電できる発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発電装置は、吸着により発熱する吸着熱発生部と、前記吸着熱発生部を保持しかつ前記吸着熱発生部に熱を集め乾燥させる集熱部を有する乾燥モジュールと、外部に伝熱する第1伝熱部及び前記第1伝熱部の反対側で前記吸着熱発生部に熱的に接触する第2伝熱部を有し、前記第1伝熱部及び前記第2伝熱部の間の温度差により熱電発電する熱電発電ユニットと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発電装置によれば、雨天時でも発電できる発電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施例の発電装置を概念的に示す斜視図である。
図2図1の線xxに沿って切断した発電装置を示す断面図である。
図3】第1の実施例の発電装置の動作を概念的に示す断面図である。
図4】第1の実施例の発電装置の動作を概念的に示す断面図である。
図5】第2の実施例の発電装置を概念的に示す断面図である。
図6】第2の実施例の発電装置の動作を概念的に示す断面図である。
図7】第2の実施例の発電装置の動作を概念的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明による実施例の発電装置について説明する。なお、実施例において、実質的に同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0010】
(第1の実施例)
(構成の説明)
図1は第1の実施例の発電装置10を示す斜視図である。図2図1の線xxに沿って切断した発電装置10を示す断面図である。
【0011】
本実施例による発電装置10は、吸着熱発生部11と、吸着熱発生部11を保持する乾燥モジュール12と、乾燥モジュール12に取り付けられた熱電発電ユニット13と、を有する。
【0012】
[吸着熱発生部11]
吸着熱発生部11は、雨水等の水を吸着することにより発熱するゼオライト粒子ZLPと、ゼオライト粒子ZLPを挟んで保持、収容して全体に雨水を透過させる水透過装置である上部網NTU及び下部網NTLと、を有する。本実施例は、ゼオライト粒子ZLPが水分と反応して発熱する現象を利用する発電である。
【0013】
ゼオライト粒子ZLPは、主にシリコン(Si)とアルミニウム(Al)と酸素(O)等からなる、分子レベルの微細な孔を持った結晶性化合物であり、その構造固有の細孔、通常0.2~1.0nm径の分子径に相当するマイクロ孔径を持った多孔体である。
【0014】
ゼオライト粒子ZLPとしては、天然(沸石)でも、人工的に合成(原料のケイ酸ナトリウムやアルミン酸ナトリウムを水と共に耐圧容器に密閉し加熱する水熱合成や、天然の酸化物を改変する方法や、合成の際に有機物鋳型を使い後で有機物鋳型を消失させる鋳型法)したものでもよい。ゼオライト粒子ZLPの形態には、ペレット、破砕体、粒(球等)、粉、中空糸、タイル等がある。
【0015】
水分子等の吸着に際して生じるエンタルピー変化である吸着熱は、吸着分子1mol当たりの量として表される。吸着熱は、一般に発熱であり、吸着量あるいは表面被覆率(固体表面の吸着点が吸着分子で覆われる割合)につれて変化する。吸着結合の性質によって吸着熱の大きさは異なり、物理吸着では10kJ/mol程度の発熱であるが、化学吸着では50~500kJ/molに達する。ゼオライト粒子ZLPは、吸着水分子での表面被覆率が高く、吸着熱が起こる。
【0016】
[乾燥モジュール12]
発電装置10は、吸着熱発生部11を保持しかつ吸着熱発生部11に熱を集め乾燥させる集熱部を有する乾燥モジュール12を備える。
【0017】
乾燥モジュール12は集光ミラー12aと、集光ミラー12aに所定位置に固定されている照射ミラー12bを有する。集光ミラー12aは骨材(図示せず)により地面等の固定物に固定されている。集光ミラー12aの外形は上から見ると、中心の吸着熱発生部11が露出するように、くり抜かれた円形である。照射ミラー12bは上から見ると円形である。吸着熱発生部11の上部網NTUと下部網NTLは集光ミラー12aに固定されている。
【0018】
集光ミラー12aはパラボラアンテナの形状をしており、太陽光を照射ミラー12bに向かって反射させて集める。照射ミラー12bは、集められた太陽光をゼオライト粒子ZLP全体(吸着熱発生部11)に照射させる集熱構造をしている。パラボラアンテナの形状によって集められた太陽光が照射ミラー12bによって照射されることにより、ゼオライト粒子ZLPは効率的に加熱させられて乾燥する。
【0019】
集光ミラー12aはパラボラアンテナ形状の他、球面体、多面体、角柱形又は円柱形等でもよい。照射ミラー12bも吸着熱発生部11に熱を集める集熱部であれば形状は問わない。
【0020】
[熱電発電ユニット13]
熱電発電ユニット13は、乾燥モジュール12から外部に露出、伝熱する冷却用の第1伝熱部の低温側伝熱部13b及びその反対側で吸着熱発生部11に熱的に接触する受熱用の第2伝熱部の高温側伝熱部13aを有し、高温側伝熱部13a及び低温側伝熱部13bの間の温度差により熱電発電する。
【0021】
熱電発電ユニット13は、高温側伝熱部13a及び低温側伝熱部13bに熱的に接触して挟まれる熱電発電素子13cと、その低温側伝熱部13bに熱的に接触するヒートシンク13dとを有する。低温側伝熱部13bの反対側(日陰側)に凹凸を形成したヒートシンク13dにより、熱電発電素子13cの両面(高温側伝熱部13aと低温側伝熱部13b)の温度差が得られなくなることを防止する。
【0022】
例えば、図1に示すように、下部網NTLの熱電発電素子13c(高温側伝熱部13a)の部分だけくり抜かれていることで、ゼオライト粒子ZLPと熱電発電素子13cの高温面は直接接している。熱電発電素子13cの低温面はヒートシンク13dに固定されており、ヒートシンク13dは保護網NTPに固定されている。熱電発電素子13c及びヒートシンク13dは通気及び排水可能に保護網NTPにより保持されている。
【0023】
熱電発電素子13cの各々は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換し得る任意のものが使用可能である。熱電発電素子13cの各々は2種類の異なる金属又は半導体を接合して、両端に温度差を生じさせると起電力が生じるゼーベック効果を利用する。熱電発電素子には、大きな電位差を得るためにp型半導体、n型半導体を複数組み合わせて使用されるペルチェ素子が好ましい。
【0024】
ヒートシンク13dにより、吸着熱発生部11が晴天の日射によって高温側伝熱部13aが空気温度より高温になったときでも、集光ミラー12aの日陰側の空気によって低温側伝熱部13bが冷却されて、熱電発電ユニット13を起電させることができる。
【0025】
[電子装置等]
各々の熱電発電ユニット13の熱電発電素子13cは、リード線LW(正電極及び負電極の配線)によってIoT(Internet of Things)機器等の所定の電子装置14に接続される。熱電発電素子13cは電子装置14の電源回路14aに接続され、電源回路14aは必要に応じて蓄電回路14bに給電したり、装置回路14cに給電したりする。
【0026】
電子装置14、リード線LW及び熱電発電素子13cの各々は、内部が外部から防水処理され、完全に防水対策が施されている。
【0027】
(動作の説明)
図3に雨天時の発電装置10の発電動作を示す。雨水が集光ミラー12aの中心部に向かって吸着熱発生部11に敷き詰められたゼオライト粒子ZLPに到達し、上部網NTUを透過し、吸着熱発生部11に至る。するとゼオライト粒子ZLPが昇温し、温度が上がる。すなわち、直接降る雨(水分)が接触することで、ゼオライト粒子ZLPが発熱する。発熱は熱電発電素子13cの高温面(高温側伝熱部13a)に伝熱する。
【0028】
熱電発電素子13cは、その高温側伝熱部13aが発熱温度、低温側伝熱部13bがヒートシンク13dによって雰囲気温度に保持され、高温面と低温面に温度差が生じることで、熱電発電素子13cが発電する。発電された電力はリード線LWによって電子装置14に送電される。熱電発電素子13cは電子装置14に接続されて動力源となる。
【0029】
また、きわめて大量のゼオライト粒子ZLPを用いた場合、これに多くの雨を集めて反応を促進させるため、中心部から逸れた雨をゼオライト粒子ZLPに向かわせるように、集光ミラー12aの内側面は中心部に向かって傾斜しており、雨は内側面に沿って流れゼオライト粒子ZLPと接触することでさらに発熱反応する。集光ミラー12aにより、広範囲に振る雨を一箇所に集める形状で、より多くの水分を集めることができる。
【0030】
発熱反応において、該反応が飽和したとき、余分な水分は下部網NTLと保護網NTPをすり抜けて外部に排出される。
【0031】
図4に晴天時の発電装置10の動作、すなわち、発電装置10を繰返し発電させるため、晴天時に吸着熱発生部11のゼオライト粒子ZLPの状態を、発熱反応前の状態に戻す乾燥動作を示す。集光ミラー12aと照射ミラー12bは、集められた太陽光をゼオライト粒子ZLP全体に照射する。これにより集熱されて、ゼオライト粒子ZLPは効率的に加熱させられて乾燥し、発熱反応前の状態に戻る。これにより、繰返し発電することができるようになる。
【0032】
更に、ゼオライト粒子ZLPの乾燥中と後にも、吸着熱発生部11が日射によって空気温度より高温になったときに、集光ミラー12aの日陰側のヒートシンク13dにより低温側伝熱部13bが高温側伝熱部13aより冷却され、熱電発電素子13cはその高温面と低温面に温度差が生じ、起電することができる。
【0033】
(効果の説明)
以上のように、第1の実施例によれば、熱電発電ユニット13が、雨天時に吸着熱起電でき、晴天時に太陽光を含む熱エネルギーで効率的に熱電発電可能という効果が得られる。
【0034】
(第2の実施例)
図5は、第2の実施例の発電装置10を概念的に示す断面図である。本実施例は、第1の実施例の縦型の乾燥モジュール12に代えて、横型の乾燥モジュール22として雨水取入れ口(雨水ホッパーHP)と太陽光取入れ口(集光レンズ22a)とを分けたこと以外、第1の実施例と同一である。
【0035】
吸着熱発生部11において、ゼオライト粒子ZLPは、それぞれ筐体に固定されている、図5における上部網NTU及び下部網NTLにより上下が、拡散レンズ22c及び熱電発電ユニット13の第2伝熱部の高温側伝熱部13aにより左右が、筐体自体により前後が、保持されている。熱電発電素子13cの冷却用の第1伝熱部の低温側伝熱部13bにはヒートシンク13dが接触、固定されている。
【0036】
吸着熱発生部11の上部網NTUの周りには雨水ホッパー(集水装置)HPが設けられる。雨水ホッパーHPは、ヒートシンク13dの上にかかるように拡がる庇となり、ヒートシンク13dの日よけとなる。これにより、吸着熱発生部11が晴天の日射によって乾燥されると共に空気温度より高温になったときに、雨水ホッパーHPの日陰側の空気によってヒートシンク13dが冷却され熱電発電ユニット13を起電させることができる。
【0037】
拡散レンズ22cは、晴天時等に集められた太陽光をゼオライト粒子ZLP全体(吸着熱発生部11)に照射させる凹レンズ形状をしている。これにより、集められたより多くの太陽光が、照射ミラー12b及び拡散レンズ22cによって側面から照射されることで、ゼオライト粒子ZLPは効率的に加熱させられて乾燥する。
【0038】
図6に雨天時の発電装置10の発電動作を示す。雨水が雨水ホッパーHPにより集められ、上部網NTUを透過した水分によりゼオライト粒子ZLPが昇温する。すなわち、発電装置10のゼオライト粒子ZLPが発熱すると、熱電発電素子13cの高温側伝熱部13aが高温となる。
【0039】
熱電発電素子13cは、その高温側伝熱部13aが発熱温度、低温側伝熱部13bがヒートシンク13dによって雰囲気温度に保持され、高温面と低温面に温度差が生じることで、熱電発電素子13cが発電する。発電された電力はリード線LWによって電子装置14に送電される。熱電発電素子13cは電子装置14に接続されて動力源となる。
【0040】
ゼオライト粒子ZLPの発熱反応が飽和したとき、余分な水分は下部網NTLをすり抜けて外部に排出される。
【0041】
図7に晴天時の発電装置10の発電動作を示す。発電装置10を繰返し発電させるため、晴天時に吸着熱発生部11のゼオライト粒子ZLPの状態を、発熱反応前の状態に戻す乾燥動作を示す。集光レンズ22aと照射ミラー22bと拡散レンズ22cは、集められた太陽光をゼオライト粒子ZLP全体に照射する。これにより集熱されて、ゼオライト粒子ZLPは効率的に加熱させられて乾燥し、発熱反応前の状態に戻る。これにより、繰返し発電することができるようになる。
【0042】
更に、晴天時のゼオライト粒子ZLPの乾燥中と後にも、日射によって吸着熱発生部11側の高温側伝熱部13aが空気温度より高温になり、雨水ホッパーHPの日陰にあるヒートシンク13dにより低温側伝熱部13bが冷却されて、熱電発電素子13cはその高温面と低温面に温度差が生じ、起電することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 発電装置
11 吸着熱発生部
12、22 乾燥モジュール
12a 集光ミラー
12b 照射ミラー
13 熱電発電ユニット
13a 高温側伝熱部
13b 低温側伝熱部
13c 熱電発電素子
13d ヒートシンク
14 電子装置
22a 集光レンズ
22b 照射ミラー
22c 拡散レンズ
LW リード線
NTU 上部網
NTL 下部網
ZLP ゼオライト粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7