(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112418
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
G01S 5/12 20060101AFI20230804BHJP
G01S 13/74 20060101ALN20230804BHJP
【FI】
G01S5/12
G01S13/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014204
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(72)【発明者】
【氏名】大石 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】古賀 健一
(72)【発明者】
【氏名】古池 竜也
(72)【発明者】
【氏名】森 惠
(72)【発明者】
【氏名】片岡 研人
【テーマコード(参考)】
5J062
5J070
【Fターム(参考)】
5J062AA09
5J070AC02
5J070AC11
5J070AD06
5J070AE09
5J070AF03
5J070AK22
5J070BC16
(57)【要約】
【課題】信号を送受信した装置間の位置関係をより高い精度で推定する。
【解決手段】少なくとも3以上のアンテナを有する通信装置と、少なくとも1以上のアンテナを有する他の通信装置との間で送受信された信号に基づき、前記通信装置と前記他の通信装置との位置関係を推定する制御を行う制御部、を備え、前記制御部は、前記通信装置が前記他の通信装置から受信した前記信号に基づき推定された前記位置関係の暫定結果のうち、矛盾した暫定結果を除外して、前記位置関係を推定する制御を行う、制御装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3以上のアンテナを有する通信装置と、少なくとも1以上のアンテナを有する他の通信装置との間で送受信された信号に基づき、前記通信装置と前記他の通信装置との位置関係を推定する制御を行う制御部、
を備え、
前記制御部は、
前記通信装置が前記他の通信装置から受信した前記信号に基づき推定された前記位置関係の暫定結果のうち、矛盾した暫定結果を除外して、前記位置関係を推定する制御を行う、
制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記通信装置が有する3以上のアンテナの各アンテナペア間の位相差に基づき、前記位置関係の暫定結果を推定する制御を行う、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記各アンテナペア間の位相差に基づき推定された前記信号の到来角に基づき、前記位置関係の暫定結果を推定する制御を行う、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記各アンテナペア間の位相差または前記信号の到来角と、前記信号に基づく前記通信装置と前記他の通信装置の間の距離に基づき、前記位置関係の暫定結果を推定する制御を行う、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記通信装置が有する3以上のアンテナは、各アンテナペアの間隔が1/2波長以下になるように配置される、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記各アンテナペア間の位相差の和に基づき、前記位置関係の暫定結果に矛盾が生じているか否かを判定する制御を行う、
請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記アンテナペア間の位相差の和は、前記3以上のアンテナの各アンテナペアの位相差を一周するように足し合わせた値を含む、
請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記アンテナペア間の位相差の和は、±180の範囲で表した各位相差の和を含む、
請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記他の通信装置が存在する位置を含む直線を示す推定値直線を前記位置関係の暫定結果として推定する制御を行う、
請求項6から請求項8までのうちいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記通信装置が有する3以上のアンテナの各アンテナペア間の位相差の和が0°付近であった際に、前記各アンテナペア間の位相差ごとに推定された前記推定値直線に矛盾が生じていないと判定し、前記各アンテナペア間の位相差ごとに推定された前記推定値直線に基づき、前記位置関係を推定する制御を行う、
請求項9に記載の制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記通信装置が有する3以上のアンテナの各アンテナペア間の位相差の和が±360°付近であった際に、前記各アンテナペア間の位相差ごとの推定された前記推定値直線に矛盾が生じていると判定し、前記判定の結果に基づく矛盾した推定値直線を除外して、前記位置関係を推定する制御を行う、
請求項10に記載の制御装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記各アンテナペア間の位相差のうち±180°に最も近い位相差に基づく推定値直線を、矛盾した推定値直線として除外して、前記位置関係を推定する制御を行う、
請求項11に記載の制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、
前記他の通信装置の二次元位置または三次元位置を前記位置関係として推定する制御を行う、
請求項12に記載の制御装置。
【請求項14】
前記制御部は、
矛盾が生じていないと判定された少なくとも2以上の推定値直線の交点を前記他の通信装置の位置として推定する制御を行う、
請求項13に記載の制御装置。
【請求項15】
前記制御部は、
3以上の前記推定値直線の交点が示す前記他の通信装置の位置に基づき、前記暫定結果に矛盾が生じているか否かを判定する制御を行う、
請求項9に記載の制御装置。
【請求項16】
前記制御部は、
前記3以上の推定値直線の各交点を繋いだ図形の大きさが所定値以上か否かに基づき、前記暫定結果に矛盾が生じているか否かを判定する制御を行う、
請求項13に記載の制御装置。
【請求項17】
前記制御部は、
複数の推定値直線の各交点を繋いだ図形の大きさと、前記複数の推定値直線のうち、いずれか一つの推定値直線を反転させて各交点を繋いだ図形の大きさとを比較し、比較の結果に基づき、前記暫定結果に矛盾が生じているか否かを判定する制御を行う、
請求項15に記載の制御装置。
【請求項18】
前記制御部は、
前記3以上の推定値直線の交点のうち、前記信号に基づく前記通信装置と前記他の通信装置の間の距離を半径とする円外部にあり、且つ、前記円から規定値以上離れた交点を矛盾した暫定結果として除外して、前記位置関係を推定する制御を行う、
請求項9に記載の制御装置。
【請求項19】
前記制御部は、
前記距離および前記信号の到来角に基づく円錐の底面であり、前記他の通信装置が存在する位置を含む円を示す推定値円を前記位置関係の暫定結果として推定する制御を行う、
請求項6から請求項8までのうちいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項20】
前記3以上のアンテナは、3つのアンテナである、
請求項5から請求項19までのうちのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項21】
前記3つのアンテナは、正三角形状に配置される、
請求項20に記載の制御装置。
【請求項22】
前記通信装置は、移動体に搭載される、
請求項1から請求項21までのうちいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項23】
前記他の通信装置は、前記移動体を利用するユーザにより携帯される、
請求項22に記載の制御装置。
【請求項24】
前記信号は、超広帯域無線通信に準拠した無線信号を含む、
請求項1から請求項23までのうちいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項25】
少なくとも3以上のアンテナを有する通信装置と、少なくとも1以上のアンテナを有する他の通信装置との間で送受信された信号に基づき、前記通信装置と前記他の通信装置との位置関係を推定する制御を行うこと含み、
前記位置関係を推定する制御を行うことは、
前記通信装置が前記他の通信装置から受信した前記信号に基づき推定された前記位置関係の暫定結果のうち、矛盾した暫定結果を除外して、前記位置関係を推定する制御を行うことを含む、
コンピュータにより実行される制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、装置間で無線信号を送受信した結果に従って、装置間の位置関係を推定する技術が開示されている。例えば、特許文献1では、超広帯域(UWB:Ultra Wide Band)の信号を用いて、UWB受信機がUWB送信機からの信号の入射角を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の技術は、アンテナ素子間の位相差から位置推定を行う際に、アンテナ素子の受信位相に誤差が発生することにより、位置の推定結果に対しても誤差が生じる可能性があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、信号を送受信した装置間の位置関係をより高い精度で推定することが可能な、新規かつ改良された制御装置および制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、少なくとも3以上のアンテナを有する通信装置と、少なくとも1以上のアンテナを有する他の通信装置との間で送受信された信号に基づき、前記通信装置と前記他の通信装置との位置関係を推定する制御を行う制御部、を備え、前記制御部は、前記通信装置が前記他の通信装置から受信した前記信号に基づき推定された前記位置関係の暫定結果のうち、矛盾した暫定結果を除外して、前記位置関係を推定する制御を行う、制御装置が提供される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、少なくとも3以上のアンテナを有する通信装置と、少なくとも1以上のアンテナを有する他の通信装置との間で送受信された信号に基づき、前記通信装置と前記他の通信装置との位置関係を推定する制御を行うこと含み、前記位置関係を推定する制御を行うことは、前記通信装置が前記他の通信装置から受信した前記信号に基づき推定された前記位置関係の暫定結果のうち、矛盾した暫定結果を除外して、前記位置関係を推定する制御を行うことを含む、コンピュータにより実行される制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明によれば、信号を送受信した装置間の位置関係をより高い精度で推定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシステムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係るシステムの概要例を説明するための説明図である。
【
図3】本実施形態に係るシステムにおいて実行される装置間の位置関係推定に係る処理の一例を説明するためのシーケンス図である。
【
図4】信号の到来角の推定に係る処理の具体例を説明するための説明図である。
【
図5】位相誤差が含まれていない際における携帯機と車載器の位置関係の推定に係る一例を説明するための説明図である。
【
図6】位相誤差が含まれた際における携帯機と車載器の位置関係の推定に係る一例を説明するための説明図である。
【
図7】本実施形態に係るシステムの位置関係の推定に係る動作処理の一例を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットや数字を付して区別する場合もある。例えば、実質的に同一の機能構成を有する複数の要素を、必要に応じてアンテナ221A、221Bおよび221Cのように区別する。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。例えば、アンテナ221A、221Bおよび221Cを特に区別する必要が無い場合には、単にアンテナ221と称する。
【0012】
<<1.構成例>>
図1は、本発明の一実施形態に係るシステム1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係るシステム1は、携帯機100と、車載器200と、制御装置300と、動作装置400と、を備える。
【0013】
本実施形態に係る車載器200、制御装置300および動作装置400は、例えば、車両20に搭載される。車両20は、移動体の一例であり、例えば、ユーザが乗車を許諾された車両(例えば、ユーザが所有する車両や、ユーザに一時的に貸与された車両)である。なお、本実施形態に係る移動体は、車両20だけでなく、航空機または船舶等も含まれる。
【0014】
(携帯機100)
携帯機100は、他の通信装置の一例であり、車両20を利用するユーザにより携帯される装置である。携帯機100は、電子キー、スマートフォン、タブレット端末およびウェアラブル端末等であってもよい。
図1に示すように、携帯機100は、制御部110と、通信部120とを備える。
【0015】
制御部110は、携帯機100の動作全般を制御する。制御部110は、例えば、後述するPoll(Polling)信号を通信部120に送信させる。また、制御部110は、後述するFinal信号を通信部120に送信させる。
【0016】
制御部110は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びマイクロプロセッサ等の電子回路によって構成される。
【0017】
通信部120は、車載器200が備える通信部220との間で、無線による通信を行う。例えば、通信部120は、制御部110の制御に従い、Poll信号を送信する。また、通信部120は、送信したPoll信号の応答として車載器200が備える通信部220から送信されたResp(Response)信号を受信する。また、通信部120は、制御部110の制御に従い、受信したResp信号の応答としてFianl信号を送信する。
【0018】
通信部120と、車載器200が備える通信部220との間の無線による通信は、例えば、超広帯域無線通信に準拠した信号(以下、UWB信号と表現する。)により実現される。UWB信号による無線通信において、インパルス方式を利用すれば、ナノ秒以下の非常に短いパルス幅の電波を使用することで電波の空中伝搬時間を高精度に測定することができ、伝搬時間に基づく測位及び測距を高精度に行うことができる。通信部120は、例えば、UWB信号での通信が可能な通信インタフェースとして構成される。
【0019】
なお、UWB信号は、測距用信号、及びデータ信号として送受信され得る。測距用信号とは、後述する測距処理において送受信されるPoll信号、Resp信号およびFinal信号である。測距用信号は、データを格納するペイロード部分を有さないフレームフォーマットで構成されていてもよいし、ペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成されていてもよい。一方で、データ信号は、データを格納するペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成されることが好ましい。
【0020】
また、通信部120と、車載器200が備える通信部220との間の無線による通信は、UWB信号に限定されない。例えば、通信部120と、通信部220との間の無線による通信は、BT(Blue Tooth)通信なども適用可能である。
【0021】
また、通信部120は、少なくとも1つのアンテナ121を有する。そして、通信部120は、少なくとも1つのアンテナ121を介して無線信号を送受信する。
【0022】
(車載器200)
車載器200は、通信装置の一例であり、車両20に搭載される装置である。
図1に示すように、車載器200は、制御部210と、通信部220と、を備える。
【0023】
制御部210は、車載器200の動作全般を制御する。制御部210は、例えば、後述するResp信号を通信部220に送信させる。
【0024】
制御部210は、例えばCPU及びマイクロプロセッサ等の電子回路によって構成される。
【0025】
通信部220は、携帯機100が備える通信部120との間で、無線による通信を行う。通信部220は、携帯機100が備える通信部120から送信されたPoll信号を受信する。また、通信部220は、制御部210の制御に従い、受信したPoll信号の応答としてResp信号を送信する。また、通信部220は、送信したResp信号の応答として携帯機100が備える通信部120から送信されたFianl信号を受信する。
【0026】
また、通信部220は、少なくとも3以上のアンテナ221を有する。そして、通信部220は、3以上のアンテナ221を介して無線信号を送受信する。以下の説明では、通信部220が有するアンテナ221の本数が3本である例を主に説明する。
【0027】
(制御装置300)
制御装置300は、携帯機100と車載器200との位置関係を推定する制御を行う。
図1に示すように、制御装置300は、通信部310と、制御部320と、を備える。
【0028】
なお、本明細書に係る説明では、本実施形態に係る車両20が車載器200と制御装置300を分離して構成する一例を説明するが、携帯機100または車載器200により制御装置300の機能が実現されてもよい。
【0029】
通信部310は、任意の通信方式を用いて、車載器200との各種通信を行う。例えば、通信部310は、携帯機100と、車載器200との間で送受信された信号の情報を車載器200が備える通信部220から受信する。なお、任意の通信方式とは有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。また、通信部310は、無線通信方式を用いて、携帯機100が備える通信部120と各種通信を行ってもよい。
【0030】
制御部320は、制御装置300の動作全般を制御する。制御部320は、例えば、携帯機100と車載器200との間で送受信された信号に基づき、携帯機100と車載器200との位置関係を推定する制御を行う。
【0031】
例えば、制御部320は、携帯機100と車載器200との間で送受信された信号に基づき、携帯機100と車載器200との間の距離である測距値を推定する。
【0032】
また、制御部320は、車載器200が携帯機100から受信した信号に基づき、信号の到来角を推定する。より具体的には、制御部320は、車載器200が有する3以上のアンテナのアンテナペア間の位相差に基づき、信号の到来角を推定する。
【0033】
また、制御部320は、推定された測距値および信号の到来角に基づき、携帯機100の二次元位置または三次元位置を携帯機100と車載器200の位置関係として推定してもよい。
【0034】
例えば、制御部320は、車載器200が有する3以上のアンテナの各アンテナペア間の位相差に基づき、携帯機100と、車載器200の位置関係の暫定結果をアンテナペア毎に推定する。
【0035】
また、制御部320は、携帯機100と車載器200の位置関係の暫定結果のうち、矛盾した暫定結果を除外して、位置関係を推定する制御を行う。携帯機100と車載器200の位置関係の暫定結果や、当該暫定結果の矛盾に係る具体例については後述する。
【0036】
制御部320は、例えばCPUおよびマイクロプロセッサ等の電子回路によって構成される。
【0037】
(動作装置400)
動作装置400は、制御装置300の制御に従い、動作する装置である。動作装置400は、例えば、車両20が有するドアの鍵であってもよいし、車両20が有するエンジンであってもよい。
【0038】
以上、本実施形態に係るシステム1の構成例を説明した。続いて、
図2~
図6を参照し、本実施形態に係るシステム1の技術的特徴を説明する。
【0039】
<<2.技術的特徴>>
<2.1.概要>
図2は、本実施形態に係るシステム1の概要例を説明するための説明図である。携帯機100が備える通信部120は、
図2に示すように、アンテナ121を有する。また、車載器200が備える通信部220は、例えば、3素子アレーアンテナとしてアンテナ221A、アンテナ221Bおよびアンテナ221Cを有する。
【0040】
ただし、携帯機100が備える通信部120および車載器200が備える通信部220が有するアンテナ本数は係る例に限定されない。例えば、通信部120が有するアンテナ121の本数は、複数であってもよいし、通信部220が有するアンテナ221は、4本以上であってもよい。
【0041】
また、通信部220および通信部220が有する複数のアンテナ221のスケール比においても図示しているスケール比に限定されない。
【0042】
また、3本のアンテナの配置形状は、例えば、
図2に示すような、正三角形状に配置されることが望ましい。但し、3本のアンテナの配置形状は係る例に限定されない。
【0043】
例えば、アンテナ221A、アンテナ221Bおよびアンテナ221Cは、それぞれ1/2波長以下の間隔で配置されていれば任意の配置形状で配置されてもよい。ただし、複数のアンテナ221は、同一直線上ではなく、平面上に配置されることが望ましい。
【0044】
また、
図2において、携帯機100が有するアンテナ121は、携帯機100の上側の左端に配置されているが、携帯機100が有するアンテナ121が配置される位置は係る例に限定されない。例えば、アンテナ121は、携帯機100の任意の位置に配置されてもよい。
【0045】
図2に示すように、例えば、アンテナ121は、通信部220が有する複数のアンテナ221のうち少なくとも1以上のアンテナとの間で信号Sを送受信してもよい。
【0046】
そして、制御装置300が備える通信部310は、携帯機100と車載器200との間で送受信された信号Sに関する情報を通信部120または通信部220のいずれか一方から受信する。
【0047】
続いて、制御装置300が備える制御部320は、送受信された信号Sに基づき、携帯機100と車載器200との位置関係を推定してもよい。
【0048】
続いて、本実施形態に係る携帯機100と車載器200との位置関係の推定に係る処理の具体例を説明する。
【0049】
<2.2.位置関係の推定>
(1)距離推定
制御部320は、測距処理を行う。測距処理とは、携帯機100と車載器200との間の距離を推定する処理である。測距処理は、測距用信号を送受信し、測距用信号の送受信にかかる時間に基づいて携帯機100と車載器200との間の距離、すなわち測距値を推定することを含む。
【0050】
測距処理において、携帯機100と車載器200との間で複数の測距用信号が送受信され得る。複数の測距用信号のうち、一方の装置から他方の装置へ送信される測距用信号をPoll信号と表現する。
【0051】
そして、Poll信号を受信した装置から、Poll信号を送信した装置へ、Poll信号の応答として送信される測距用信号を、Resp信号と表現する。
【0052】
また、Resp信号を受信した装置から、Resp信号を送信した装置へ、Resp信号の応答として送信される測距用信号をFinal信号と表現する。携帯機100および車載器200は、測距用信号のいずれにおいても送受信可能だが、本明細書では、携帯機100がPoll信号を送信する例を説明する。
【0053】
(2)到来角推定
制御部320は、装置間で送受信された信号の到来角を推定する。本明細書において、測距用信号に含まれるFinal信号を到来角推定用の信号として説明する。
【0054】
以下、
図3を参照し、距離推定、到来角推定、暫定位置関係推定に係る処理の一例を説明する。
【0055】
図3は、本実施形態に係るシステム1において実行される装置間の位置関係推定に係る処理の一例を説明するためのシーケンス図である。
【0056】
まず、携帯機100が有するアンテナ121は、車載器200が有するアンテナ221Aに対して、Poll信号を送信する(S101)。
【0057】
次に、車載器200が有するアンテナ221Aは、Poll信号に対する応答として、Resp信号を携帯機100が有するアンテナ121に送信する(S103)。
【0058】
そして、携帯機100が有するアンテナ121は、Resp信号に対する応答として、Final信号を車載器200が有するアンテナ221A、アンテナ221Bおよびアンテナ221Cに送信する(S105)。
【0059】
ここで、携帯機100が、Poll信号を送信してからResp信号を受信するまでの時間長を時間長T1とし、Resp信号を受信してからFinal信号を送信するまでの時間長を時間長T2とする。そして、車載器200が、Poll信号を受信してからResp信号を送信するまでの時間長を時間長T3とし、Resp信号を送信してからFinal信号を受信するまでの時間長を時間長T4とする。
【0060】
携帯機100と車載器200との間の距離は、上述した各時間長を用いて算出されてもよい。例えば、車載器200は、携帯機100から時間長T1および時間長T2に関する情報を含む信号を受信してもよい。
【0061】
続いて、制御装置300は、車載器200から時間長T1、時間長T2、時間長T3および時間長T4に関する情報を含む信号を受信してもよい。
【0062】
そして、制御部320は、時間長T1、時間長T2、時間長T3、および時間長T4を用いて、信号の伝搬時間τを算出する。より具体的には、制御部320は、以下の数式1を用いて信号の伝搬時間τを算出してもよい。
【0063】
τ=(T1×T4―T2×T3)/(T1+T2+T3+T4)
(数式1)
【0064】
そして、制御部320は、算出した信号の伝搬時間τに既知である信号の速度を乗算して、携帯機100と車載器200との間の距離を推定してもよい。
【0065】
なお、制御部320は、携帯機100が有するアンテナ121と、車載器200が有するアンテナ221Aとの間で送受信された信号に基づき、携帯機100と車載器200との間の距離を推定する一例を説明したが、車載器200はアンテナ221Aと異なるアンテナを用いて信号を送受信してもよいし、複数のアンテナ221を用いて信号を送受信してもよい。
【0066】
また、信号の伝搬時間τは、数式1による算出方法に限定されない。例えば、信号の伝搬時間τは、時間長T1から時間長T3を差し引き、当該時間を2で割ることによっても算出し得る。
【0067】
次に、信号の到来角は、車載器200が有する複数のアンテナ221が受信したFinal信号の各アンテナペア間の位相差から算出されてもよい。
【0068】
図4は、信号の到来角の推定に係る処理の具体例を説明するための説明図である。例えば、アンテナ221Aが受信したFinal信号の位相を位相P
Aとし、アンテナ221Bが受信したFinal信号の位相を位相P
Bとし、アンテナ221Cが受信したFinal信号の位相を位相P
Cとする。
【0069】
例えば、アンテナ221Aおよびアンテナ221Bを繋ぐ直線を軸Aとし、アンテナ221Bおよびアンテナ221Cを繋ぐ直線を軸Bとし、アンテナ221Aおよびアンテナ221Cを繋ぐ直線を軸Cとする。
【0070】
また、軸Bと平行である方向をY軸とし、Y軸と直交する方向をX軸とする座標系を定義する。
【0071】
このような座標系の場合、アンテナペアの位相差PdAB、PdCBおよびPdCAは、それぞれ以下の数式2を用いて表される。
PdAB=(PA―PB)
PdCB=(PC―PB)
PdCA=(PC―PA)
(数式2)
【0072】
ここで、軸A、軸Bおよび軸Cと信号のなす角をなす角θと称する。ここで、なす角θは、信号の到来角であり、それぞれ数式3で表される。なお、λは電波の波長であり、dはアンテナ間の距離である。
θ=arccos(λ×Pd/(2πd))
(数式3)
【0073】
従って、制御部320は、数式2および数式3に基づき、信号の到来角をそれぞれ数式4で算出する。なお、θaは軸Aに対する信号の到来角であり、θbは軸Bに対する信号の到来角であり、θcは軸Cに対する信号の到来角である。
θa=θAB=arccos(λ×(PA―PB)/(2πd))
θb=θCB=arccos(λ×(PC―PB)/(2πd))
θc=θCA=arccos(λ×(PC―PA)/(2πd))
(数式4)
【0074】
なお、d<(λ/2)であった場合に位相に誤差が生じると、数式3における(λ×Pd/(2πd))が±1の範囲から外れる可能性があり、計算ができなくなり得る。
【0075】
そこで、(λ×Pd/(2πd))>1の場合、(λ×Pd/(2πd))=1とし、(λ×Pd/(2πd))<―1の場合、λ×Pd/(2πd))=―1として、制御部320は、信号の到来角を推定してもよい。
【0076】
また、制御部320は、推定された測距値およびなす角θを用いて、携帯機100と車載器200の暫定的な位置関係を推定してもよい。
【0077】
(3)暫定位置推定
例えば、上述した座標系において、制御部320は、携帯機100と車載器200の暫定的な位置関係を推定してもよい。
【0078】
例えば、制御部320は、測距値Rと、軸A、軸Bまたは軸Cの各軸に対する、信号の到来角θを用いて、携帯機100と車載器200の暫定的な位置関係を推定する。例えば、制御部320は、携帯機100が存在する位置を含む直線を示す推定値直線を、携帯機100と車載器200の暫定的な位置関係として推定してもよい。
【0079】
より具体的には、制御部320は、数式5を用いて、アンテナ221Aおよびアンテナ221Bのアンテナペア間の位相差に基づく推定値直線を推定する。
y=√3x―2Rcosθa―(d/4)
(数式5)
【0080】
また、制御部320は、数式6を用いて、アンテナ221Bおよびアンテナ221Cのアンテナペア間の位相差に基づく推定値直線を推定する。
y=R×cosθb
(数式6)
【0081】
また、制御部320は、数式7を用いて、アンテナ221Aおよびアンテナ221Cのアンテナペア間の位相差に基づく推定値直線を推定する。
y=―√3x―2Rcosθc+(d/4)
(数式7)
【0082】
なお、数式5および数式7に含まれる(d/4)の項は、複数のアンテナ221が1/2波長以下で配置された場合、測距誤差等と比較して軽微なため省略されてもよい。
【0083】
そして、制御部320は、数式5、数式6および数式7の推定値直線の暫定結果のうち、矛盾した暫定結果を除外して、携帯機100と車載器200の位置関係を推定する。
【0084】
<2.3.最終判定>
車載器200が有するアンテナ221の位相は、外乱等の様々な影響に起因して誤差が生じる可能性がある。このような誤差が生じた場合、制御部210により推定される携帯機100と車載器200の暫定的な位置関係の推定結果にも誤差が生じる可能性がある。
【0085】
例えば、あるアンテナ221の位相に誤差が生じた場合、当該アンテナ221を含むアンテナペア間の位相差が反転する場合がある。このように反転したアンテナペア間の位相差に基づき推定された推定値直線は、他の推定値直線と矛盾する場合がある。
【0086】
そこで、本実施形態に係る制御部320は、各アンテナペアの位相差から推定された各々の位置関係の暫定結果のうち、矛盾した暫定結果を除外して、携帯機100と車載器200の位置関係を推定する。
【0087】
まずは、
図5を参照し、アンテナ221の位相に誤差が生じていない場合の位置関係の推定に係る一例を説明する。
【0088】
図5は、位相誤差が含まれていない際における携帯機100と車載器200の位置関係の推定に係る一例を説明するための説明図である。
【0089】
図5に示す例では、アンテナ221Aの位相P
Aは-171°であり、アンテナ221Bの位相P
Bは+63°であり、アンテナ221Cの位相P
Cは+38°である。
【0090】
また、
図5に示す例では、アンテナ221Aの位相P
Aの誤差EP
Aと、アンテナ221Bの位相P
Bの誤差EP
Bと、アンテナ221Cの位相P
Cの誤差EP
Cは、それぞれ0°(即ち、誤差が生じていない)である。
【0091】
このように、アンテナ221A、アンテナ221Bおよびアンテナ221Cのいずれにおいても、位相に誤差が含まれていなかった場合、各アンテナペアの位相差に基づく位置関係の暫定結果にも矛盾が生じ得ない。
【0092】
このような暫定結果の矛盾の判定方法の一例として、各アンテナペアの位相差の和に基づく方法が挙げられる。例えば、制御部320は、アンテナペア間の位相差の和に基づき、携帯機100と車載器200の位置関係の暫定結果に矛盾が生じているか否かを判定する。
【0093】
そして、制御部320は、当該判定の結果に基づき、携帯機100と車載器200の位置関係を推定する制御を行ってもよい。
【0094】
例えば、制御部320は、アンテナ221A、アンテナ221Bおよびアンテナ221Cの各アンテナペアの位相差を一周するように足し合わせた値が「0°」付近である場合、携帯機100と車載器200の位置関係の暫定結果に矛盾が生じていないと判定してもよい。
【0095】
以下の説明では、位相差PdAB、PdBCおよびPdCA(―PdAC)のようにアンテナ221A、アンテナ221Bおよびアンテナ221Cの各アンテナぺアの位相差を一周するように足し合わせた値を位相差の和Pdsumと表現する。但し、一周の起点となるアンテナや方向は限定されない。
【0096】
また、位相差の和Pdsumは、各アンテナペア間の位相差を±180°の範囲で表した場合の各位相差の和を表す。これにより、制御部320は、位相差の正負が反転しているか否かを判定することが可能になる。
【0097】
例えば、アンテナ221Aおよびアンテナ221Bのアンテナペアの位相差PdABと、アンテナ221Bおよびアンテナ221Cのアンテナペアの位相差PdBCと、アンテナ221Cおよびアンテナ221Aのアンテナペアの位相差PdCAの位相差の和Pdsumが「0°」付近である場合、制御部320は、いずれのアンテナペアの位相差も反転していないと判定する。この場合、3組のアンテナペアの位相差により推定された3つの暫定結果に矛盾は生じない。
【0098】
一方、アンテナ221Aおよびアンテナ221Bのアンテナペアの位相差PdABと、アンテナ221Bおよびアンテナ221Cのアンテナペアの位相差PdBCと、アンテナ221Cおよびアンテナ221Aのアンテナペアの位相差PdCAの位相差の和Pdsumが「360°」または「―360°」付近である場合、制御部320は、いずれかのアンテナペアの位相差が反転していると判定する。この場合、3組のアンテナペアの位相差により推定された3つの暫定結果に矛盾が生じ得る。暫定結果に矛盾が生じた場合については後述する。
【0099】
例えば、
図5に示す例では、位相差Pd
ABは、―234°であり、±180°の範囲で表した場合は「+126°」である。また、位相差Pd
BCは「+25°」である。また、Pd
CAは、+209°であり、±180°の範囲で表した場合は「-151°」である。この場合、各アンテナペアの位相差の和Pd
sumが「0°」であるため、制御部320は、いずれのアンテナペアの位相差も反転していないと判定してもよい。
【0100】
そして、制御部320は、3つの暫定的な位置関係に矛盾が生じていないと判定し、当該3つの暫定的な位置関係に基づき、携帯機100と車載器200の位置関係を推定してもよい。
【0101】
例えば、制御部320は、位相差PdABに基づく推定値直線F1と、位相差PdBCに基づく推定値直線F2と、位相差PdCAに基づく推定値直線F3の交点を携帯機100の位置として推定してもよい。
【0102】
このように、制御部320は、位相差に反転が生じていない3つのアンテナペア間の位相差に基づく推定値直線F1~F3を用いることで、携帯機100の位置をより高い精度で推定し得る。
【0103】
続いて、
図6を参照し、アンテナ221の位相に誤差が生じていた場合の位置関係の推定に係る一例を説明する。
【0104】
図6は、位相誤差が含まれた際における携帯機100と車載器200の位置関係の推定に係る一例を説明するための説明図である。
【0105】
図6に示す例では、アンテナ221Aの位相P
Aは-171°であり、アンテナ221Bの位相P
Bは63°であり、アンテナ221Cの位相P
Cは8°である。
【0106】
また、
図6に示す例では、アンテナ221Aの位相P
Aの誤差EP
Aと、アンテナ221Bの位相P
Bの誤差EP
Bはそれぞれ0°(即ち、誤差が生じていない)であり、アンテナ221Cの位相P
Cの誤差EP
Cは30°である。
【0107】
アンテナ221Cの位相P
Cに誤差が生じた場合、例えば、
図6に示すように、各アンテナペアの位相差の和Pd
sumが「360°」または「-360°」付近の値を示す場合がある。この場合、制御部320は、いずれかのアンテナペアの位相差が反転していると判定してもよい。
【0108】
例えば、
図6に示す例では、位相差Pd
ABは、―234°であり、±180°の範囲で表した場合は「+126°」である。また、位相差Pd
BCは「+25°」である。また、Pd
CAは、「+179°」である。この場合、各アンテナペアの位相差の和Pd
sumが「360°」であるため、制御部320は、いずれかのアンテナペアの位相差が反転していると判定してもよい。
【0109】
例えば、制御部320は、アンテナペアの位相差が±180°に最も近いアンテナペア間の位相差が反転していると判定してもよい。
図6に示す例では、制御部320は、位相差が±180°に最も近い位相差Pd
CAの位相差が反転していると判定してもよい。
【0110】
そして、制御部320は、位相差が反転していると判定された位相差PdCAの基づく推定値直線F3が矛盾している暫定結果として除外して、携帯機100と車載器200との位置関係を推定してもよい。
【0111】
より具体的には、制御部320は、位相差が反転していないと判定された位相差PdCAに基づく推定値直線F1と、位相差PdCAに基づく推定値直線F2の交点を携帯機100の位置として推定してもよい。
【0112】
また、制御部320は、数式8を用いて、上述した方法により推定した携帯機100の二次元位置(xy座標位置)および測距値Rに基づく携帯機100のz座標を推定してもよい。
z=±√(R2―x2―y2)
(数式8)
【0113】
このように、携帯機100と車載器200の位置関係の暫定結果のうち、矛盾した暫定結果を除外することで、制御部320は、携帯機100と車載器200の位置関係をより高い精度で推定し得る。
【0114】
なお、アンテナペア間の位相差の和が「0°」付近であるか、「±360°」付近であるかによって、暫定結果の矛盾が生じているか否かを判定する方法を説明した。ここでの付近とは、例えば「0±5°」や「±360±10°」等の所定の範囲を表すものである。
【0115】
また、位置関係の暫定結果に矛盾が生じているか否かの判定方法は係る例に限定されない。例えば、制御部320は、3つの推定値直線F1~F3の各交点に基づき、位置関係の暫定結果に矛盾が生じているか否かを判定してもよい。
【0116】
例えば、
図6に示す例では、推定値直線F1および推定値直線F2の交点と、推定値直線F2および推定値直線F3の交点と、推定値直線F1および推定値直線F3の交点は、それぞれ異なる位置を表している。そこで、制御部320は、各交点が示す位置が所定値以上離れた際に、位置関係の暫定結果に矛盾が生じていると判定してもよい。
【0117】
例えば、
図5に示す例では、推定値直線F1および推定値直線F2の交点と、推定値直線F2および推定値直線F3の交点と、推定値直線F1および推定値直線F3の交点は、それぞれ同一または類似する位置を表している。この場合、制御部320は、位置関係の暫定結果に矛盾が生じていないと判定してもよい。
【0118】
また、制御部320は、3つの推定値直線F1~F3の各交点を繋いだ図形の大きさが所定値以上の際に、位置関係の暫定結果に矛盾が生じていると判定してもよい。ここで、図形の大きさを示す指標は、例えば、当該図形に対応する外接円の大きさや、各交点を繋ぐ直線の辺の長さの和や、図形の面積などの各種パラメータが示す値であってもよいし、各種パラメータを組み合わせてて算出された値であってもよい。
【0119】
また、制御部320は、N個の推定値直線の各交点を繋いだ図形の大きさと、N個の推定値直線のうち、1つを反転させた際の各交点を繋いだ反転図形の大きさとを比較し、反転図形の方が小さかった際に、暫定的な位置関係に矛盾が生じていると判定してもよい。なお、N個の推定値直線のうち、反転させる推定値直線は、位相差が±180°に最も近いアンテナペア間の位相差に基づく推定値直線であってもよい。
【0120】
例えば、制御部320は、推定値直線F1~F3の各交点を繋いだ図形の大きさと、推定値直線F1およびF2と、推定値直線F3を反転させた推定値直線F3´の各交点を繋いだ反転図形の大きさを比較する。
【0121】
そして、制御部320は、推定値直線F1~F3の各交点を繋いだ図形の大きさよりも、反転図形の大きさの方が小さかった際に、暫定的な位置関係に矛盾が生じていると判定してもよい。
【0122】
ここで、推定値直線F3は、アンテナ221A及びアンテナ221Cのアンテナペア間の位相差PdCAを用いて推定された信号の到来角θC(数式4参照)に基づく直線である。また、推定値直線F3´は、アンテナ221Aおよびアンテナ221Cのアンテナペア間の位相差PdCAを反転させた位相差を用いて推定された信号の到来角θc´に基づく直線である。
【0123】
ここで、例えば、位相PCが位相PAより大きい(PC―PA>0)場合、信号の到来角θc´は、数式9により算出される。
θc´=θAC´=arccos(λ×(―π)/(2πd))
(数式9)
【0124】
また、位相PCが位相PAより小さい(PC―PA<0)場合、信号の到来角θc´は、数式10により算出される。
θc´=θAC´=arccos(λ×(π)/(2πd))
(数式10)
【0125】
また、制御部320は、推定値直線F1および推定値直線F2の交点と、推定値直線F2および推定値直線F3の交点と、推定値直線F1および推定値直線F3の交点のうち、測距値Rを半径とする円外部にあり、且つ、測距値Rから規定値以上離れた交点(x2+y2>>R2)がある場合、矛盾が生じていると判定し、当該交点を除外して、携帯機100の二次元位置または三次元位置を推定してもよい。
【0126】
また、制御部320は、位置関係の暫定結果に矛盾が生じていると判定した場合、位置関係の推定は行わず、再度、携帯機100と車載器200との間で測距用の信号を送受信させてもよい。この場合、制御部320は、位置関係の暫定結果に矛盾が生じていないとは判定されるまで携帯機100と車載器200との間で繰り返し測距用の信号を送受信させてもよい。
【0127】
また、制御部320は、複数回に亘って送受信された測距用の信号の各々から、暫定的な位置関係を推定してもよい。そして、制御部320は、推定された位置関係の暫定結果のうち、矛盾が生じていると判定された暫定結果を除外して、携帯機100と車載器200の位置関係の最終判定を行ってもよい。
【0128】
制御部320は、例えば5回に亘って送受信された信号の各々から、それぞれ携帯機100の二次元座標位置(xy座標位置)または三次元座標位置(xyz座標位置)を暫定的に推定する。ここで、例えば2回目および3回目の推定値に矛盾があると判定されていた場合、制御部320は、矛盾が生じていないと判定された(即ち、1、4および5回目)推定値の中央値や平均値等の統計値を最終的な携帯機100の位置として推定してもよい。
【0129】
また、本明細書では、暫定的な位置関係として推定値直線を主に説明したが、本実施形態に係る暫定的な位置関係は係る例に限定されない。
図4を例に説明すると、まず、制御部320は、測距値Rおよびアンテナ221Aおよびアンテナ221Bの信号の到来角θaを推定する。ここで、測距値Rは、
図4に示した破線である。
【0130】
続いて、制御部320は、軸Aを中心に、測距値Rを示す破線を回転させることにより、円錐を生成する。そして、制御部320は、生成された円錐の底面の円周上に携帯機100が存在するとして推定してもよい。即ち、制御部320は、生成した円錐の底面の円である推定値円を、携帯機100と車載器200の暫定的な位置関係として推定してもよい。
【0131】
なお、アンテナ221Aおよびアンテナ221Bのアンテナペア間の位相差に基づく推定値円は、
図4に示すXY平面では、上述した(数式5)の直線式になる。
【0132】
そのため、制御部320は、各アンテナペア間の位相差と測距値Rに基づき、3以上の推定値円を推定し、各アンテナペア間の位相差の和に基づき矛盾が生じていないと判定された推定値円の交点を携帯機100の二次元位置または三次元位置として推定してもよい。
【0133】
以上、本実施形態に係る技術的詳細を説明した。続いて、本実施形態に係る制御装置300の動作処理例を説明する。
【0134】
<<3.動作処理例>>
図7は、本実施形態に係るシステム1の位置関係の推定に係る動作処理の一例を説明する。まず、携帯機100が備える通信部120は、Poll信号を送信し、車載器200が備える通信部220はPoll信号を受信する(S201)。
【0135】
続いて、通信部220は、Poll信号に対する応答として、Resp信号を送信し、通信部120は、Resp信号を受信する(S203)。
【0136】
そして、通信部120は、Resp信号に対する応答として、Final信号を送信し、通信部220は、Final信号を受信する(S205)。ここで、通信部220は、通信部120との間で送受信した信号に関する各種情報を制御装置300が備える通信部310に送信する。
【0137】
続いて、制御部320は、携帯機100および車載器200間で送受信された信号に基づき、測距値を算出する(S207)。
【0138】
続いて、制御部320は、アンテナペア間の位相差に基づき、携帯機100から受信した信号の到来角を推定する(S209)。
【0139】
そして、制御部320は、アンテナペア毎に推定された信号の到来角に基づき、推定値直線を推定する(211)。
【0140】
そして、制御部320は、3つの推定値直線に矛盾が生じているか否かを判定する(S213)。矛盾が生じていないと判定された場合(S213/No)、処理はS215に進められ、矛盾が生じていると判定された場合(S213/Yes)、処理はS217に進められる。
【0141】
矛盾が生じていないと判定された場合(S213/No)、制御部320は、3つの推定値直線の交点を携帯機100の位置として推定する(S215)。
【0142】
矛盾が生じていると判定された場合(S213/Yes)、制御部320は、アンテナ間位相差が±180°に最も近いアンテナペアが位相差反転していると判定する(S217)。
【0143】
そして、制御部320は、位相差反転していないアンテナペアの位相差に基づき推定された2つの推定値直線の交点を携帯機100の位置として推定する(S219)。
【0144】
そして、制御部320は、制御部320により算出された携帯機100の位置が所定の基準を満たすか否かを判定する(S221)。所定の基準を満たす場合(S221/Yes)、制御部320は処理をS223に進め、所定の基準を満たさない場合(S221/No)、制御部320は処理を終了する。
【0145】
所定の基準を満たす場合(S221/Yes)、制御部320は、動作装置400の一例であるエンジンの始動または停止に係る動作制御を行い(S223)、制御部320は処理を終了する。
【0146】
以上説明した本実施形態に係る制御部320の制御によれば、アンテナに生じ得る位相の誤差の影響を低減することが可能になり、携帯機100と車載器200との位置関係をより高い精度で推定し得る。
【0147】
<<4.補足>>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0148】
例えば、本発明書において説明した各装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、およびソフトウェアとハードウェアとの組み合わせのいずれかを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部または外部に設けられる記録媒体(非一時的な媒体:non-transitory media)に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、コンピュータによる実行時にRAMに読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。上記記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0149】
また、本実施形態に係るシステム1の動作の処理におけるステップは、必ずしも説明図として記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、システム1の動作の処理における各ステップは、説明図として記載した順序と異なる順序で処理されてもよく、並列的に処理されてもよい。
【符号の説明】
【0150】
1:システム、100:携帯機、110:制御部、120:通信部、121:アンテナ、20:車両、200:車載器、210:制御部、220:通信部、221:アンテナ、300:制御装置、310:通信部、320:制御部、400:動作装置