(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112425
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】紙幣処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/14 20190101AFI20230804BHJP
【FI】
G07D11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014215
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】中岡 陽一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊貴
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141BA07
3E141FA03
3E141FA04
3E141FA05
3E141FA06
3E141FA10
3E141FF03
(57)【要約】
【課題】利用者による紙幣の投入及び取出に適した空間を形成しながら異物を良好に排出し得る状態と、当該紙幣の分離や集積に適した状態とを、簡素な構成により容易に遷移させ得るようにする。
【解決手段】紙幣処理装置1の紙幣入出金部10は、ビルプレス案内部42が移動する案内溝32に案内窪み33を設け、シャッタ14の開閉と連動して補助案内体36を溝露出状態又は溝埋没状態に遷移させ、ビルプレス本体41を傾斜姿勢又は垂直姿勢に遷移させる。このため紙幣入出金部10は、シャッタ14を開放した場合、ビルプレス本体41を傾斜姿勢として異物落下孔22の開口部分を拡大できるため、異物を該異物落下孔22から落下させて排出することができる。その一方で紙幣入出金部10は、シャッタ14を閉塞した場合、ビルプレス本体41を垂直姿勢に戻し、プールガイド15との間で紙幣を適切に挟持することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
整列方向に沿った底面を有し、該整列方向に沿って整列された紙幣を収容する収容部と、
前記収容部における前記底面と対向する箇所に設けられた開口部を開放又は閉塞するシャッタと、
前記収容部における前記底面の一部を形成し、前記紙幣を支持すると共に、前記開口部から投入された異物を通過させる異物通過孔が形成された底支持部と、
前記収容部内において紙幣支持面を前記紙幣の紙面と対向させて当該紙幣を支持すると共に、前記底面に対し前記紙幣支持面を略垂直とした垂直姿勢、及び当該垂直姿勢から傾斜させた傾斜姿勢をとり得る紙幣支持板と、
前記シャッタが閉塞された場合に前記紙幣支持板を前記垂直姿勢とし、前記シャッタが開放された場合に前記紙幣支持板を前記傾斜姿勢とするよう、前記シャッタ及び前記紙幣支持板を連動させる連動部と
を具えることを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項2】
前記収容部において前記垂直姿勢の前記紙幣支持板と対向する位置に設けられた対向支持板
をさらに具え、
前記紙幣支持板は、前記傾斜姿勢において、前記紙幣支持面のうち前記底面から最も遠い箇所と比較して、前記紙幣支持面のうち当該底面に最も近い箇所の方が、当該紙幣支持面から前記対向支持板までの間隔が大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項3】
前記紙幣支持板は、前記対向支持板との間に、前記紙幣を集積する紙幣集積空間を形成すると共に、前記垂直姿勢の場合よりも前記傾斜姿勢の場合の方が、前記底支持部の前記異物通過孔のうち当該紙幣集積空間に接する部分を広く形成する
ことを特徴とする請求項2に記載の紙幣処理装置。
【請求項4】
前記収容部に設けられ、前記整列方向に沿って形成された案内部と、
前記紙幣支持板に設けられ、前記案内部により案内される支持板案内体と
をさらに具え、
前記連動部は、前記整列方向に対する前記支持板案内体の姿勢を変化させることにより、前記紙幣支持板を前記垂直姿勢又は前記傾斜姿勢に遷移させる
ことを特徴とする請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項5】
前記案内部に対する位置及び姿勢の少なくとも一方を変更可能に構成され、前記支持板案内体を支持可能な補助案内部
をさらに具え、
前記案内部は、前記底面から前記支持板案内体までの距離を所定の定距離とする定距離部と、当該定距離部から前記底面に近接又は離隔した箇所に位置する異距離部とを有し、
前記連動部は、前記シャッタが閉塞された場合に、前記補助案内部の支持によって前記底面から前記支持板案内体までの距離を前記定距離とすることにより前記紙幣支持板を前記垂直姿勢とし、前記シャッタが開放された場合に、前記支持板案内体の少なくとも一部を前記異距離部に当接させることにより前記紙幣支持板を前記傾斜姿勢とする
ことを特徴とする請求項4に記載の紙幣処理装置。
【請求項6】
前記紙幣支持板及び前記支持板案内体を前記整列方向に沿って移動させる支持板移動部と、
前記紙幣支持板を前記垂直姿勢から前記傾斜姿勢に遷移させるよう付勢する付勢部と
をさらに具え、
前記支持板移動部は、
利用者により前記紙幣を前記収容部に収容させる紙幣受入時に、前記支持板案内体の案内当接部を前記異距離部に対応する位置に移動させることにより、前記連動部により前記シャッタの開放と連動して前記支持板案内体の姿勢を変化させた際に、前記付勢部の作用により、前記案内当接部を前記異距離部に当接させて前記紙幣支持板を前記傾斜姿勢とし、
前記収容部に収容された前記紙幣を前記利用者に取り出させる紙幣返却時に、前記案内当接部を前記異距離部と異なる位置に移動させることにより、前記連動部により前記シャッタの開放と連動して前記支持板案内体の姿勢を変化させた際に、前記付勢部の作用により、前記案内当接部を前記定距離部に当接させたまま、前記紙幣支持板を前記垂直姿勢に維持する
ことを特徴とする請求項5に記載の紙幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙幣処理装置に関し、例えば利用者との間で現金に関する種々の取引処理を行う現金取引装置のうち、紙幣に関する種々の処理を行う紙幣処理装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来の紙幣処理装置として、例えば利用者との間で紙幣の授受を行う入出金部、紙幣を搬送する搬送部、紙幣を認識する認識部、紙幣を一時的に保留する一時保留部、紙幣を収納する複数の紙幣収納庫等を有するものが広く普及している。
【0003】
このうち入出金部は、例えば集積された紙幣を収容するための内部空間を形成しており、該内部空間を外部から閉塞し又は開放するシャッタ、該内部空間内の紙幣を1枚ずつに分離して装置内部へ取り込むと共に装置内部から順次搬送されてきた紙幣を内部空間内で集積させる分離集積機構等を有している。この分離集積機構は、例えば紙幣の搬送路を挟んで互いに対向する位置にそれぞれローラ等を配置してゲートを形成しており、各ローラ等を適宜回転させて紙幣に駆動力を伝達している。
【0004】
さらに入出金部としては、内部空間内で移動可能な板状の部材であるビルプレスを有し、該内部空間内において紙幣を収容する収容範囲を制限するものがある。入出金部は、例えばシャッタを開放して利用者に紙幣を投入させ、又は紙幣を取り出させる場合、収容範囲をやや広げることにより、紙幣が倒れないよう支えながら、当該紙幣を容易に把持させる。また入出金部は、紙幣を1枚ずつに分離する場合、収容範囲を狭めることにより分離集積機構のローラに当該紙幣を押し当て、駆動力を伝達して取り込むことができる。
【0005】
また入出金部では、シャッタの開放時に誤って硬貨やクリップ等の異物が投入された場合を想定し、内部空間の底部に該異物を通過させる異物落下口を設け、該異物を内部空間の外へ排出させることが考えられる。この場合、入出金部では、異常の発生や各部の損傷を防止する観点から、異物をゲートに入り込ませること無く、異物落下口から排出させることが望ましい。その一方で入出金部では、シャッタの開放時に、ビルプレスにより紙幣が倒れない程度に収容範囲が狭められるため、異物落下口を十分な大きさで開口させることが難しい。
【0006】
そこで入出金部として、ゲートを閉塞又は開放する異物除去ガイドを設け、該異物除去ガイドにより該ゲートを閉塞した場合に、異物を積極的に異物落下口へ導くように構成されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-188080号公報(
図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、かかる構成の入出金部では、異物除去ガイドを構成する各種部品や、該異物除去ガイドを移動させるための各種機構、及びモータ等の駆動力源が必要となるため、部品点数の増加や構成の複雑化に繋がり、コストの上昇を招く、という問題があった。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、利用者による紙幣の投入及び取出に適した空間を形成しながら異物を良好に排出し得る状態と、当該紙幣の分離や集積に適した状態とを、簡素な構成により容易に遷移させ得る紙幣処理装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明の紙幣処理装置においては、整列方向に沿った底面を有し、該整列方向に沿って整列された紙幣を収容する収容部と、収容部における底面と対向する箇所に設けられた開口部を開放又は閉塞するシャッタと、収容部における底面の一部を形成し、紙幣を支持すると共に、開口部から投入された異物を通過させる異物通過孔が形成された底支持部と、収容部内において紙幣支持面を紙幣の紙面と対向させて当該紙幣を支持すると共に、底面に対し紙幣支持面を略垂直とした垂直姿勢、及び当該垂直姿勢から傾斜させた傾斜姿勢をとり得る紙幣支持板と、シャッタが閉塞された場合に紙幣支持板を垂直姿勢とし、シャッタが開放された場合に紙幣支持板を傾斜姿勢とするよう、シャッタ及び紙幣支持板を連動させる連動部とを設けるようにした。
【0011】
本発明は、紙幣支持板を傾斜姿勢とした場合、紙幣を適切に支持しながら、底支持部の異物通過孔を十分な大きさで開口できる。その一方で本発明は、紙幣支持板を垂直姿勢とした場合、紙幣の分離処理や集積処理を適切に実行できる。さらに本発明は、専用の駆動力源を設けること無く、シャッタの開閉と連動して紙幣支持板の姿勢を遷移させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、利用者による紙幣の投入及び取出に適した空間を形成しながら異物を良好に排出し得る状態と、当該紙幣の分離や集積に適した状態とを、簡素な構成により容易に遷移させ得る紙幣処理装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】紙幣処理装置の全体構成を示す略線的斜視図である。
【
図2】シャッタを開放した状態における紙幣入出金部の構成を示す略線的斜視図である。
【
図3】シャッタを開放した状態における紙幣入出金部の構成を示す略線的平面図である。
【
図4】シャッタを開放した状態における紙幣入出金部の構成を示す略線的断面図である。
【
図5】シャッタを閉塞した状態における紙幣入出金部の構成を示す略線的断面図である。
【
図6】シャッタを開放した状態における紙幣入出金部の構成を示す略線的断面図である。
【
図7】シャッタを閉塞した状態における紙幣入出金部の構成を示す略線的斜視図である。
【
図8】ビルプレス本体の姿勢と異物落下孔の開口範囲との関係を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0015】
[1.紙幣処理装置の構成]
図1に模式的な外観図を示すように、本実施の形態による紙幣処理装置1は、全体として直方体状に構成されており、紙幣に関する種々の処理を行うようになっている。また紙幣処理装置1は、利用者との間で貨幣(硬貨及び紙幣)に関する取引処理を行う現金処理装置(図示せず)に組み込まれるようになっている。この現金処理装置は、いわゆるATM(Automatic Teller Machine)であり、全体を統括的に制御する制御装置や、硬貨に関する処理を行う硬貨処理装置(図示せず)等も組み込まれている。このため現金処理装置は、利用者との間で入金取引や出金取引等、貨幣に関する種々の取引処理を行い得るようになっている。
【0016】
以下では、紙幣処理装置1において利用者と対峙する方向を前方向、その反対方向を後方向と定義し、該利用者から見た上方向、下方向、左方向及び右方向をそれぞれ定義して説明する。
【0017】
紙幣処理装置1には、利用者から紙幣を受け取ると共に該利用者に紙幣を引き渡す紙幣入出金部10が前側部分に設けられる他、該紙幣を搬送する搬送部や該紙幣の金種や真偽等を認識する認識部、該紙幣を一時的に保留する一時保留部等が適宜配置されている。また紙幣処理装置1の前側部分は、前側パネル2により覆われている。
【0018】
[2.紙幣入出金部の構成]
図2は、前側パネル2(
図1)を省略した状態における、紙幣入出金部10の模式的な斜視図である。
図3は、紙幣入出金部10の模式的な平面図である。
図4(A)及び(B)は、
図3から前側パネル2を省略した状態における、A1-A2断面及びB1-B2断面をそれぞれ表す、模式的な断面図である。
図5(A)及び(B)並びに
図6(A)及び(B)は、
図4(A)及び(B)とそれぞれ対応する模式的な断面図であり、該
図4(A)及び(B)に示した状態から一部の部品の位置や姿勢をそれぞれ変更させた様子を示している。
【0019】
[2-1.紙幣入出金部の基本構成]
紙幣入出金部10は、所定形状に構成されたフレーム11(
図4(A))に種々の部品が取り付けられており、その内部に紙幣を収容するための内部空間12(
図4(B))を形成している。換言すれば、紙幣入出金部10は、内部空間12の周囲に種々の部品が配置された構成となっている。
【0020】
内部空間12は、前下側と後上側とを結ぶ方向(以下これを整列方向と呼ぶ)に沿った辺と、該整列方向に対し略垂直な方向(以下これを垂直方向と呼ぶ)に沿った辺と、左右方向に沿った辺とを有する直方体状に形成されている。換言すれば、内部空間12は、前後方向、上下方向及び左右方向に沿った各辺を有する直方体を、左右方向に沿った仮想的な軸を中心として、前側を下降させると共に後側を上昇させるように傾斜させた(回動させた)ような形状となっている。
【0021】
以下では、整列方向のうち前下側に向かう方向を整列前方向とも呼び、後上側に向かう方向を整列後方向とも呼ぶ。また以下では、垂直方向のうち前上側に向かう方向を垂直上方向とも呼び、後下側に向かう方向を垂直下方向とも呼ぶ。
【0022】
この内部空間12には、複数の紙幣がそれぞれの短辺及び長辺を揃えて整列するように集積された状態で、当該紙幣の紙面を整列前方向及び整列後方向に向け、長辺を左右方向に沿わせると共に短辺を概ね垂直方向に沿わせた姿勢で収容される。すなわち内部空間12内には、整列方向に沿って整列された複数の紙幣が収容される。このため内部空間12における左右方向及び垂直方向に沿った長さは、それぞれ紙幣の長辺及び短辺の長さよりもやや長くなっている。また内部空間12における整列方向に沿った長さは、該内部空間12に収容される最大枚数(例えば200枚)の紙幣を重ねた場合の厚さよりも十分に大きく(長く)なっている。
【0023】
内部空間12の上側は、前側の約半分が閉塞されると共に、後側の約半分が開口され開口部13となっている。この開口部13は、内部空間12の内部と外部とを連通させており、整列方向に沿って移動するシャッタ14(詳しくは後述する)により、開放又は閉塞し得るようになっている。紙幣入出金部10では、開口部13が開放されている場合、利用者により該開口部13を介して紙幣が内部空間12内へ投入され、また利用者により該開口部13を介して内部空間12内から紙幣が取り出される。
【0024】
内部空間12の後側には、プールガイド15が固定されている。対向支持板としてのプールガイド15の前面15Fは、概ね垂直方向に沿った平面状に形成されている。またプールガイド15における中央付近には、所定の孔部が形成されており、ピッカローラ16が埋め込まれるように配置され、その一部を前面15Fよりも前側へ突出させている。
【0025】
プールガイド15の下側には、分離ゲート17が設けられている。この分離ゲート17は、搬送路Wに沿って紙幣を案内する紙幣ガイド18、該搬送路Wを挟んで対向する位置にそれぞれ設けられた分離ローラ19及び対向ローラ20等により構成されている。対向ローラ20は、搬送路Wの前側に位置しており、内部空間12における底面12Bの下側に位置している。
【0026】
図3に示したように、内部空間12の底面12Bにおける分離ゲート17の前側には、選別部21が形成されている。この選別部21は、複数の異物落下孔22が左右方向に並ぶように形成されると共に、各異物落下孔22同士の間にそれぞれリブ23が形成されている(
図3)。
【0027】
異物通過孔としての異物落下孔22における各辺の長さは、想定される異物(例えば硬貨やクリップ等)の大きさよりも十分に大きく(長く)なっており、且つ、紙幣の長辺よりも十分に小さく(短く)なっている。このため選別部21は、異物を異物落下孔22から下方へ落下させて該内部空間12の外部へ排除し得ると共に、リブ23により紙幣を落下させること無く支持して内部空間12内にとどめ得る。
【0028】
選別部21の下側には、概ね整列方向に沿った傾斜面を有する異物スロープ24が設けられており、その前下端が異物排出口25(
図1)と接続されている。このため異物スロープ24は、選別部21の異物落下孔22を通過した異物が落下してきた場合、この異物を前斜め下方へ滑降させた後、異物排出口25を介して紙幣処理装置1の前下方へ落下させる。
【0029】
因みに異物排出口25の前下方には、図示しない硬貨処理装置に設けられた硬貨排出トレイが配置されており、該異物排出口25から排出された異物は、やや落下した後、この硬貨排出トレイ内に収容される。
【0030】
[2-2.横案内部の構成]
内部空間12の左側及び右側には、横案内部30がそれぞれ設けられている。左右の横案内部30は、互いにほぼ左右対称に構成されている。この横案内部30は、横側板31を中心に構成されている。横側板31は、左右方向に薄い板状の部材であり、中央よりもやや下側に案内溝32が形成されている。案内部としての案内溝32は、概ね整列方向に沿った長孔であり、横側板31を左右方向に貫通している。また案内溝32の下辺である案内溝下辺32Bにおける所定箇所には、垂直下方向に向けて局所的に拡幅された案内窪み33が形成されている。
【0031】
ここで、案内溝下辺32Bのうち案内窪み33以外の部分は、内部空間の底面12Bからの距離が略一定となっている。以下、この部分を定距離部32B0と呼び、この距離を定距離D0と呼ぶ。一方、案内溝下辺32Bのうち案内窪み33が形成された部分では、内部空間の底面12Bからの距離が定距離D0よりも短くなっている。以下、この部分を異距離部32B1と呼び、この距離を異距離D1と呼ぶ。
【0032】
横案内部30における横側板31の外側、すなわち内部空間12と反対側には、補助案内軸35及び補助案内体36がそれぞれ設けられている。補助案内軸35は、左右方向に沿った細長い円柱状に構成されており、フレーム11における案内溝32よりも下側となる箇所から、左右方向の外方へ向けて立設されている。
【0033】
補助案内体36は、概ね整列方向に沿った細長い棒状に構成されており、その上面である補助案内部36Gが平面状に形成されている。また補助案内体36における整列前側の端部近傍には、左右方向に貫通する軸孔36Hが穿設されている。さらに、補助案内体36の後端下部には、当接部37が設けられている。この当接部37は、左右方向から見て円弧状に形成されている。
【0034】
補助案内体36は、軸孔36Hが補助案内軸35に挿通されている。このため補助案内体36は、補助案内軸35を中心として回動することができる。また補助案内体36は、左右方向に関して、案内溝32の外側(すなわち内部空間12と反対側)に補助案内部36Gを隣接させ、若しくは十分に近接させるように配置されている。
【0035】
補助案内体36は、
図5に示したように、その長手方向を整列方向に沿わせた場合に、内部空間12の底面12Bから補助案内部36Gまでの距離をほぼ定距離D0に揃え、該補助案内部36Gを案内溝下辺32Bの定距離部32B0とほぼ連続した平面とすることができる。
【0036】
これを他の観点から見ると、このとき紙幣入出金部10では、左右方向から見て、案内溝32の案内窪み33が補助案内体36により覆われた、若しくは埋没されたような状態となる。以下、このような補助案内体36の状態を溝埋没状態と呼ぶ。
【0037】
また補助案内体36は、溝埋没状態から反時計回りに回動した場合、
図4に示したように、案内窪み33の近傍において、補助案内部36Gを異距離部32B1よりも底面12B側(すなわち下側)に位置させることができる。これを他の観点から見ると、このとき紙幣入出金部10では、左右方向から見て、案内溝32の案内窪み33を露出させたような状態となる。以下、このような補助案内体36の状態を溝露出状態と呼ぶ。
【0038】
[2-3.ビルプレス部の構成]
また紙幣入出金部10には、ビルプレス部40が設けられている。このビルプレス部40は、大きく分けて、ビルプレス本体41、ビルプレス案内部42、ビルプレス駆動アーム43及びビルプレス付勢部44により構成されている。
【0039】
紙幣支持板としてのビルプレス本体41は、内部空間12内に設けられており、全体として概ね垂直方向に沿った板状の部品であり、整列後方向側の面である後面41E(以下これを紙幣支持面とも呼ぶ)が概ね平坦に形成されている。紙幣入出金部10では、内部空間12のうちプールガイド15及びビルプレス本体41に挟まれた空間に紙幣を集積した状態で収容することが想定されている。このため以下では、内部空間12のうちプールガイド15及びビルプレス本体41に挟まれた空間を集積空間12C又は紙幣集積空間と呼ぶ。またビルプレス本体41の上端近傍における左右方向の中央付近には、利用者の指先よりも大きい窪みが形成されている。このためビルプレス本体41は、集積空間12Cに集積された紙幣を、利用者の指先により容易に把持させることができる。
【0040】
支持板案内体としてのビルプレス案内部42は、ビルプレス本体41の左右両側にそれぞれ設けられており、案内基体51、案内ローラ52及び53により構成されている。案内基体51は、概ね整列方向に沿った柱状に構成されており、ビルプレス本体41の左右両側面における、垂直方向に関する中央からやや下寄りとなる箇所から、概ね整列後方向に向けて立設されている。
【0041】
案内ローラ52及び53は、何れも左右方向に沿った中心軸を中心として回転可能なローラであり、案内基体51の前端近傍及び後端近傍にそれぞれ設けられている。この案内ローラ52及び53の直径は、案内溝32における溝幅(すなわち垂直方向に関する大きさ)よりもやや小さくなっている。説明の都合上、以下では案内ローラ53を案内当接部とも呼ぶ。
【0042】
また案内ローラ52及び53は、左右方向の長さ(すなわち横幅)が横側板31における左右方向の長さ(すなわち厚さ)の2倍程度に大きく(長く)なっている。そのうえで案内ローラ52及び53は、左右方向に関し、中央側(すなわち内部空間12側)の部分を案内溝32内に位置させると共に、左右方向に関する外側の部分を補助案内体36における補助案内部36Gの垂直上側に位置させている。
【0043】
かかる構成によりビルプレス部40では、ビルプレス案内部42における案内ローラ52及び53の相対的な位置に応じて、ビルプレス本体41における後面41Eの姿勢が定まることになる。すなわちビルプレス案内部42は、例えば
図5に示したように補助案内体36が溝埋没状態である場合、案内ローラ53が案内ローラ52の整列後側に位置する。このときビルプレス本体41は、後面41Eを垂直方向に向けた姿勢(以下これを垂直姿勢と呼ぶ)とすることになる。
【0044】
またビルプレス本体41は、例えば
図4に示したように補助案内体36が溝露出状態であり、且つ案内ローラ53が案内窪み33内に位置している場合、案内ローラ53が案内ローラ52の整列後側よりも垂直下側に位置する。このときビルプレス本体41は、後面41Eを垂直方向から反時計回りにやや傾斜させた姿勢(以下これを傾斜姿勢と呼ぶ)とすることになる。またこのときビルプレス本体41は、後面41Eのうち底面12Bから最も遠い箇所である後面最上箇所41EUよりも、該底面12Bから最も近い箇所である後面最下箇所41ELの方が、プールガイド15の前面15Fまでの間隔を大きくしている。
【0045】
支持板移動部としてのビルプレス駆動アーム43は、後下側と前上側とを結ぶ斜め方向に長く、左右方向に短い(薄い)板状若しくは棒状に構成されている。このビルプレス駆動アーム43は、その下端近傍において、ビルプレス駆動軸45に取り付けられている。
【0046】
ビルプレス駆動軸45は、内部空間12における底面12Bの垂直下側に配置されており、左右方向に沿った回転軸を中心として回動可能に構成されている。このビルプレス駆動軸45は、図示しないビルプレス駆動モータから所定のギア等を介して駆動力が伝達されるようになっており、この駆動力が伝達されると、ビルプレス駆動アーム43と一体に回動することができる。
【0047】
またビルプレス駆動アーム43の上端近傍には、左右方向に貫通する挿通孔46が形成されている。この挿通孔46は、ビルプレス駆動アーム43の長手方向に沿った長孔となっており、ビルプレス本体41に設けられた連動軸47が挿通されている。このためビルプレス駆動アーム43は、挿通孔46内において、連動軸47を長手方向に沿って自在に移動させ得るようになっている。
【0048】
付勢部としてのビルプレス付勢部44は、トーションスプリングであり、巻回された部分が連動軸47に挿通されると共に、一方の直線状部分がビルプレス本体41に当接し、且つ他方の直線状部分がビルプレス駆動アーム43に当接している。このビルプレス付勢部44は、弾性変形された状態で組み込まれており、復元力を作用させることにより、連動軸47を中心として、ビルプレス本体41をビルプレス駆動アーム43に対し反時計回りに回動させる方向に付勢する。
【0049】
このような構成により、ビルプレス部40は、ビルプレス案内部42の案内ローラ52及び53を案内溝32及び補助案内部36Gにより案内させながら、ビルプレス駆動アーム43の回動に応じて、ビルプレス本体41を整列方向に変位させることができる。またビルプレス部40は、案内ローラ53が案内窪み33に位置している場合、補助案内体36が溝埋没状態又は溝露出状態の何れであるかに応じて、ビルプレス本体41を垂直姿勢又は傾斜姿勢とすることができる。
【0050】
ところでビルプレス案内部42は、例えば
図6に示したように、案内ローラ53が案内窪み33よりも整列後側に位置すると共に案内ローラ52が該案内窪み33に位置している場合、ビルプレス付勢部44によりビルプレス本体41に対して反時計回りに向かう力が作用する。このためビルプレス案内部42は、溝露出状態であったとしても、案内ローラ52を案内窪み33に入り込ませること無く、その上側を案内溝32の上辺に当接させる。これによりビルプレス本体41は、垂直姿勢となる。このとき紙幣入出金部10では、シャッタ14が開放されていれば、該ビルプレス本体41の後面41Eが、該シャッタ14の後端よりもやや整列後側に位置している。
【0051】
[2-4.シャッタ駆動部の構成]
さらに紙幣入出金部10における内部空間12の左右両側には、シャッタ駆動部60がそれぞれ設けられている(
図2、
図4(A)及び
図5(A))。左右のシャッタ駆動部60は、互いにほぼ左右対称に構成されている。シャッタ駆動部60は、大きく分けて内側板61、外側板62、スライダ63、シャッタ連動体64及びシャッタ駆動列65により構成されている。また
図7は、
図2と対応する模式的な斜視図であり、
図5(A)及び(B)と同様、シャッタ14により開口部13を閉塞した様子を表している。
【0052】
内側板61は、左右方向に薄い板状の部材であり、横側板31の外側に隣接する箇所における上寄りの部分、詳細には案内溝32よりも垂直上側に設けられている。この横側板31には、シャッタ案内溝61H1(
図4(A)及び
図5(A))のような整列方向に沿った複数の溝が形成されている。このシャッタ案内溝61H1には、シャッタ14の横側面に設けられたシャッタローラ14P1及び14P2が挿通されている。シャッタ14は、シャッタローラ14P1及び14P2をシャッタ案内溝61H1内で摺動させることにより、整列方向に沿って移動することができる。
【0053】
外側板62は、内側板61と同様に左右方向に薄い板状の部材であり、内側板61の外側(内部空間12と反対側)において、該内側板61との間に所定の間隔を隔てて取り付けられている。この外側板62は、内側板61と同様に、概ね整列方向に沿った案内溝62H1及び62H2が設けられている。
【0054】
スライダ63は、左右方向に薄い板状の部材であり、内側板61及び外側板62の間に配置されている。スライダ63の外側、すなわち外側板62側には、案内突起63P1及び63P2が設けられている。案内突起63P1及び63P2は、何れも外側板62の案内溝62H2に挿通されている。このためスライダ63は、案内突起63P1及び63P2を案内溝62H2内で摺動させることにより、整列方向に沿って移動することができる。またスライダ63の下端には、ラック63Rが形成されている。
【0055】
シャッタ連動体64は、スライダ63及びシャッタ14に対してそれぞれ回動可能に設けられた部品であり、案内突起64P1を外側板62の案内溝62H1に挿通させている。このためシャッタ連動体64は、スライダ63が整列方向に沿って移動されると、該スライダ63と連動し、案内突起64P1を案内溝62H1内で移動させながら、概ね整列方向に沿って移動し、さらにシャッタ14を整列方向に移動させる。
【0056】
シャッタ駆動列65は、複数のギアやベルト、及び各ギアを回転可能に支持する軸等により構成されている。具体的にシャッタ駆動列65は、シャッタ駆動軸71、回転軸72、73及び74、シャッタ駆動ギア75、伝達ギア76、77及び78、並びに伝達ベルト79等により構成されている。
【0057】
シャッタ駆動軸71は、内部空間12の後側に配置されたシャッタ駆動モータ(図示せず)の出力軸であり、
図2における時計回り又は反時計回りに回転する。回転軸72、73及び74は、何れも中心軸を左右方向に沿わせた細長い円柱状に構成されており、伝達ギア76、77及び78をそれぞれ回転可能に支持している。
【0058】
シャッタ駆動ギア75は、シャッタ駆動軸71に取り付けられており、該シャッタ駆動軸71と一体に回転する。伝達ギア76は、シャッタ駆動ギア75と噛み合う歯車と、伝達ベルト79を張架するプーリとが組み合わされた構成となっており、回転軸72を中心に回転する。伝達ギア77は、伝達ベルト79を張架するプーリと、ラック63Rと噛み合う歯車とが組み合わされた構成となっており、回転軸73を中心に回転する。伝達ギア78は、伝達ギア76の歯車と噛み合う歯車を有している。
【0059】
かかる構成によりシャッタ駆動列65は、図示しないシャッタ駆動モータが回転すると、シャッタ駆動ギア75、伝達ギア76及び77を適宜回転させることにより、スライダ63に対して整列前方向又は整列後方向に向かう力を作用させる。これによりシャッタ駆動部60は、シャッタ14を整列前方向又は後方向に移動させ、開口部13を開放又は閉塞させることができる。
【0060】
またシャッタ駆動列65は、伝達ギア76を回転させると、これと噛み合った伝達ギア78も回転させる。この伝達ギア78には、カム80が設けられている。カム80は、伝達ギア78における歯車部分の外側に配置されており、左右方向から見た形状が螺旋状となっている。このためカム80は、回転軸74を基準として所定方向(例えば垂直上方向)の外周面までの距離(すなわち半径)に着目すると、伝達ギア78の回転に伴い、当該半径を徐々に増加させること、又は徐々に減少させることができる。
【0061】
またカム80は、横案内部30における補助案内体36の当接部37のほぼ真下に位置している。この補助案内体36は、上述したように補助案内軸35を中心として回動可能に構成されており、また重力の作用により下方向へ付勢されている。このためカム80は、補助案内体36の当接部37と当接しており、且つこの当接した状態を維持している。説明の都合上、以下ではカム80のうち当接部37と当接している箇所をカム当接箇所80Tと呼ぶ。
【0062】
さらにカム80は、シャッタ駆動列65により駆動するシャッタ14の位置と、カム当接箇所80Tにおける半径(外周面と回転軸74との距離、以下これをカム当接半径と呼ぶ)との関係が、補助案内体36の姿勢も踏まえて、適切に調整されている。
【0063】
具体的にカム80は、シャッタ14が開口部13を開放している場合(
図2、
図3及び
図4)、カム当接半径が最も小さくなっている。このときカム80は、補助案内体36を溝露出状態(
図4(A))とし、補助案内部36Gを案内溝下辺32Bの異距離部32B1よりも垂直下側に位置させている。これに伴い、ビルプレス部40のビルプレス本体41は、後面41Eを傾斜姿勢とすることができる。
【0064】
またカム80は、シャッタ14が開口部13を閉塞している場合(
図5及び
図7)、カム当接半径が最も大きくなっている。このときカム80は、補助案内体36を溝埋没状態(
図5(A))とし、垂直方向に関して補助案内部36Gを案内溝下辺32Bの定距離部32B0と同等の高さとなるように位置させている。これに伴い、ビルプレス部40のビルプレス本体41は、後面41Eを垂直姿勢とすることができる。
【0065】
このようにシャッタ駆動部60は、シャッタ14の開閉と連動して補助案内体36を回動させ、これに伴いビルプレス本体41の後面41Eを傾斜姿勢(
図4(B))又は垂直姿勢(
図5(B))に遷移させることができる。説明の都合上、以下では横案内部30及びシャッタ駆動部60をまとめて連動部とも呼ぶ。
【0066】
[2-5.紙幣返却時におけるビルプレス本体の位置及び姿勢]
ところで紙幣入出金部10では、事前の調査により、利用者に紙幣を返却する紙幣返却時において、集積空間12Cに集積された紙幣を利用者に取り出させる際、仮にビルプレス本体41が傾斜姿勢であった場合、当該紙幣を取り出しにくいことが判明している。
【0067】
一方、紙幣入出金部10では、上述したシャッタ駆動部60の構成により、シャッタ14の開閉と連動して補助案内体36を回動させ、溝露出状態又は溝埋没状態に切り替えるようになっている。すなわち紙幣入出金部10では、シャッタ14を開放させた場合、補助案内体36が溝露出状態となるため、必然的に案内ローラ53が案内窪み33に入り込む可能性が高まる。
【0068】
そこで紙幣入出金部10では、紙幣返却時において、
図6に示したように、シャッタ14を開放させて補助案内体36を溝露出状態としながら、ビルプレス駆動アーム43をやや反時計回りに回動させ、ビルプレス本体41及びビルプレス案内部42をやや整列後側に位置させるようにした。これによりビルプレス部40は、ビルプレス案内部42の案内ローラ53が案内窪み33よりも整列後側に位置するため、ビルプレス本体41を垂直姿勢とすることができる。これに伴い、紙幣入出金部10では、集積空間12C内に集積された紙幣の紙面がほぼ垂直方向に沿った姿勢となり、当該紙幣を利用者に容易に取り出させることができる。
【0069】
[3.効果等]
以上の構成において、本実施の形態による紙幣処理装置1の紙幣入出金部10は、横案内部30の案内溝32に案内窪み33を形成すると共に、回動可能な補助案内体36を設けた。また紙幣入出金部10は、ビルプレス部40のビルプレス案内部42を案内溝32内に位置させ、ビルプレス案内部42と一体にビルプレス本体41を整列方向に移動させ、またその姿勢を垂直姿勢又は傾斜姿勢に遷移可能とした(
図4及び
図5)。さらに紙幣入出金部10は、シャッタ駆動部60においてシャッタ14の開閉と連動して回転する伝達ギア78にカム80を設け、該伝達ギア78の回転と連動して補助案内体36を回動させ、溝露出状態又は溝埋没状態に遷移させるようにした(
図2、
図4、
図5及び
図7)。
【0070】
紙幣入出金部10は、紙幣受入時に、ビルプレス本体41を整列方向に関して所定の位置に静止させ、且つシャッタ駆動部60によりシャッタ14を開放することにより、補助案内体36を溝露出状態に遷移させ、ビルプレス本体41の後面41Eを傾斜姿勢とすることができる(
図2、
図3及び
図4)。
【0071】
ここで
図8は、
図4(B)及び
図5(B)におけるビルプレス本体41の下端近傍を拡大した模式図である。この
図8では、傾斜姿勢のビルプレス本体41及びビルプレス案内部42を実線により表すと共に、垂直姿勢のビルプレス本体41を破線により重ねて表している。
【0072】
この
図8からも分かるように、紙幣入出金部10における底面12Bでは、整列後側に対向ローラ20等が配置されており、その整列前側に選別部21が配置されている。また紙幣入出金部10では、シャッタ14を開放する場合、集積空間12Cに収容された紙幣を倒さずに支持する必要があるため、プールガイド15とビルプレス本体41との間隔を十分に広げることができない。
【0073】
このため紙幣入出金部10では、仮にシャッタ14を開放した際にビルプレス本体41を垂直姿勢のままとした場合、異物落下孔22のうち整列前側の一部分を該ビルプレス本体41により閉塞してしまう。すなわちこの場合、異物落下孔22は、集積空間12Cに面した部分の整列方向に関する長さであるL22Vがやや短くなるため、異物を通過させ得ない恐れがある。
【0074】
そこで本実施の形態による紙幣入出金部10では、この点を踏まえて、紙幣受入時に、シャッタ14を開放させる場合に、ビルプレス本体41を傾斜させるようにした。これにより紙幣入出金部10では、ビルプレス本体41の垂直下側部分を整列前側に位置させ、異物落下孔22を極力大きく開口させることができる。すなわちこの場合、異物落下孔22は、集積空間12Cに面した部分の整列方向に関する長さであるL22Nがやや長くなるため、異物を良好に通過させ、異物スロープ24を介して異物排出口25から外部へ排出することができる。
【0075】
またこのとき紙幣入出金部10では、ビルプレス本体41の垂直上側部分とプールガイド15との間隔を、比較的小さく(狭く)抑えることができる。このため紙幣入出金部10では、集積空間12Cに収容された紙幣を倒させること無く、ビルプレス本体41又はプールガイド15に寄りかからせた状態とすることができる。
【0076】
これにより紙幣入出金部10では、紙幣受入時に、ビルプレス本体41及びプールガイド15の間に紙幣を整然と集積した状態のまま挟持でき、該紙幣を1枚ずつに分離しながら取り込むことができる。
【0077】
他の観点から見れば、紙幣入出金部10は、ビルプレス本体41の姿勢を一定とする場合の構成と比較して、案内窪み33を形成し、回動可能な補助案内体36を設け、回転可能でありカム80を有する伝達ギア78を設けるようにした。このため紙幣入出金部10は、モータのような駆動力源を設ける必要が無いため、製造コストを必要最小限に抑えることができ、また各モータの制御を複雑化することも回避できる。
【0078】
さらに別の観点から見れば、紙幣入出金部10は、シャッタ14を開放する場合、入金又は出金される紙幣の最大枚数(例えば200枚)や、当該紙幣を容易に把持させ、且つ当該紙幣を倒さない等の条件に応じて、ビルプレス本体41の位置が必然的に定められる。また紙幣入出金部10では、シャッタ14が閉塞されている場合、ビルプレス本体41を垂直姿勢とするため、傾斜させる必要が無い。このため紙幣入出金部10では、案内溝32内においてシャッタ14の開放時にビルプレス案内部42の案内ローラ53が位置する箇所に合わせて、且つビルプレス本体41の傾斜角度に応じて、案内窪み33の位置や深さを容易に設定することができる。
【0079】
また、紙幣入出金部10は、紙幣返却時にビルプレス案内部42の案内ローラ53を案内窪み53よりも前側に位置させるようにした(
図6)。これにより紙幣入出金部10は、補助案内体36が溝露出状態でありながらもビルプレス本体41を垂直姿勢とすることができ、集積空間12C内の紙幣を利用者に容易に取り出させることができる。
【0080】
以上の構成によれば、紙幣処理装置1の紙幣入出金部10は、ビルプレス案内部42が移動する案内溝32に案内窪み33を設け、シャッタ14の開閉と連動して補助案内体36を溝露出状態又は溝埋没状態に遷移させ、ビルプレス本体41を傾斜姿勢又は垂直姿勢に遷移させる。このため紙幣入出金部10は、シャッタ14を開放した場合、ビルプレス本体41を傾斜姿勢として異物落下孔22の開口部分を拡大できるため、異物を該異物落下孔22から落下させて排出することができる。その一方で紙幣入出金部10は、シャッタ14を閉塞した場合、ビルプレス本体41を垂直姿勢に戻し、プールガイド15との間で紙幣を適切に挟持することができる。
【0081】
[4.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、補助案内軸35を中心として補助案内体36を回動させることにより、該補助案内体36を溝埋没状態又は溝露出状態に遷移させる場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば補助案内体36を垂直方向に沿って平行移動させる等、案内部32に対する補助案内体36の位置及び姿勢の少なくとも一方を変化させ得る種々の構成とすることにより、該補助案内体36を溝埋没状態又は溝露出状態に遷移させるようにしても良い。
【0082】
また上述した実施の形態においては、ビルプレス部40にビルプレス駆動アーム43を設け、ビルプレス駆動モータ(図示せず)からの駆動力を該ビルプレス駆動アーム43によりビルプレス本体41に伝達する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば整列方向に沿ってビルプレス駆動ベルトを張架し、ビルプレス駆動モータの駆動力を該ビルプレス駆動ベルトに伝達し、ビルプレス案内部42を介してビルプレス本体41を整列方向に移動させるようにしても良い。
【0083】
さらに上述した実施の形態においては、ビルプレス本体41とビルプレス連動アーム43とを連動させる連動軸47を中心としてビルプレス本体41及びビルプレス案内部42を回動させることによりその姿勢を変化させる場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば連動軸47と異なる箇所に回動中心を設け、当該回動中心を中心としてビルプレス本体41及びビルプレス案内部42を回動させてその姿勢を変化させるようにしても良い。
【0084】
さらに上述した実施の形態においては、案内溝32に案内窪み33を設けた上で、補助案内体36を回動させることにより、溝露出状態又は溝埋没状態に遷移させる場合、すなわちビルプレス案内部42を整列方向に沿って移動させるか、或いは該ビルプレス案内部42及びビルプレス本体41の姿勢を変化させるかを切り替える場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば案内溝32の上側に、垂直下方向に向けて突出可能な案内突起を配置し、シャッタ14の開閉と連動して該案内突起を案内溝32内に突出させるか否かを遷移させるようにしてもよい。この場合、ビルプレス付勢部44により、ビルプレス案内部42の案内ローラ52及び53を案内溝32の上辺に当接させるように付勢すれば良い。
【0085】
さらに上述した実施の形態においては、ビルプレス部40のビルプレス付勢部44をトーションスプリングとする場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えばコイルスプリングや板バネ等、種々の付勢部材を用いることができる。この場合、要はビルプレス駆動アーム43に対してビルプレス本体41を
図4における反時計回りに付勢することができれば良い。或いは、例えば重力の一部がビルプレス本体41に対し反時計回りに向かうように作用する場合、ビルプレス付勢部44を省略しても良い。
【0086】
さらに上述した実施の形態においては、ビルプレス部40においてビルプレス本体41に対しビルプレス案内部42を固定し、整列方向に対する該ビルプレス案内部42の姿勢を変化させることによりビルプレス本体41の姿勢を変化させる場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えばビルプレス本体41に対してビルプレス案内部42を回動可能に構成し、該ビルプレス案内部42に対するビルプレス本体41を回動させることにより、該ビルプレス本体41の姿勢を変化させるようにしても良い。
【0087】
さらに上述した実施の形態においては、紙幣返却時にシャッタ14を開放した上でビルプレス案内部42の案内ローラ53を案内窪み53よりも前側に位置させ、ビルプレス本体41を垂直姿勢とする場合について述べた(
図6)。しかし本発明はこれに限らず、例えば紙幣返却時にも紙幣入金時と同様に、ビルプレス案内部42の案内ローラ53を案内窪み53に位置させ、ビルプレス本体41を傾斜姿勢(
図4)としても良い。
【0088】
さらに上述した実施の形態においては、プールガイド15を固定した構成とする場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えばプールガイド15を整列方向に沿って移動可能に構成しても良く、或いはプールガイド15における前面15Fの姿勢(傾き)を変化させ得るように構成しても良い。
【0089】
さらに上述した実施の形態においては、異物落下孔22から落下した異物を異物排出口25(
図1)から外部へ排出する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば異物スロープ24の前側に異物収容空間を形成し、該異物収容空間に異物を収容するようにしても良い。
【0090】
さらに上述した実施の形態においては、利用者から紙幣を受け取ると共に該利用者に紙幣を引き渡す紙幣入出金部10に本発明を適用する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば利用者から紙幣を受け取る紙幣入金部と該利用者に紙幣を引き渡す紙幣出金部とが互いに独立した構成である場合に、本発明を適用しても良い。この場合、紙幣入金部及び紙幣出金部の少なくとも一方に本発明を適用することができる。例えば、紙幣入金部に本発明を適用した場合、入金取引等において利用者から投入された紙幣が正常に認識されず、該紙幣入金部から利用者に返却する場合、実施の形態における紙幣返却時と同様に、ビルプレス本体41を垂直姿勢としても良い。
【0091】
さらに上述した実施の形態においては、紙幣処理装置1を現金処理装置(図示せず)に組み込む場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えばスーパーマーケット等の小売店舗における精算所に設置させるセルフレジやセミセルフレジ等、紙幣を取り扱う種々の装置に紙幣処理装置1を組み込むようにしても良い。
【0092】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0093】
さらに上述した実施の形態においては、収容部としての内部空間12と、シャッタとしてのシャッタ14と、底支持部としての選別部21と、紙幣支持板としてのビルプレス本体41と、連動部としての横案内部30及びシャッタ駆動部60とによって紙幣処理装置としての紙幣入出金部10を構成する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる収容部と、シャッタと、底支持部と、紙幣支持板と、連動部とによって紙幣処理装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、利用者との間で紙幣を授受する種々の紙幣処理装置で利用できる。
【符号の説明】
【0095】
1……紙幣処理装置、10……紙幣入出金部、11……フレーム、12……内部空間、12B……底面、12C……集積空間、13……開口部、14……シャッタ、15……プールガイド、15F……前面、21……選別部、22……異物落下孔、23……リブ、24……異物スロープ、25……異物排出口、30……横案内部、31……横側板、32……案内溝、32B……案内溝下辺、32B0……定距離部、32B1……異距離部、33……案内窪み、36……補助案内体、36G……補助案内部、40……ビルプレス部、41……ビルプレス本体、41E……後面、41EL……後面最下箇所、41EU……後面最上箇所、42……ビルプレス案内部、43……ビルプレス駆動アーム、44……ビルプレス付勢部、47……連動軸、51……案内基体、52……案内ローラ、53……案内ローラ、60……シャッタ駆動部、65……シャッタ駆動列、71……シャッタ駆動軸、72、73,74……回転軸、75……シャッタ駆動ギア、76、77、78……伝達ギア、80……カム、80T……カム当接箇所、D0……定距離、D1……異距離。