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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112446
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】貨物船
(51)【国際特許分類】
   B63B 11/04 20060101AFI20230804BHJP
   B63B 13/00 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
B63B11/04 B
B63B13/00 A
B63B11/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014242
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000205535
【氏名又は名称】株式会社 商船三井
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 正規
(72)【発明者】
【氏名】土澤 基直
(72)【発明者】
【氏名】梅村 仁美
(57)【要約】
【課題】 エタノール等を燃料とする貨物船を提供することにある。
【解決手段】 貨物船1は、貨物を積載するための複数の貨物艙11と、船体2の船首部分の甲板上に設けられ、居住区を備えるブリッジ3と、船体2の船尾部分に設けられ、ポッド推進器で構成される推進装置4と、船体2の幅方向の外側に配置され、推進装置4の燃料としてエタノール又はメタノールを蓄え、シングルハルに構成される燃料タンク12と、船外から水を取り込むポンプ7とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物を積載するための複数の貨物艙と、
船体の船首部分の甲板上に設けられ、居住区を備える構造物と、
前記船体の船尾部分に設けられ、ポッド推進器で構成される推進装置と、
前記船体の幅方向の外側に配置され、前記推進装置の燃料としてエタノール又はメタノールを蓄え、シングルハルに構成される燃料タンクと、
船外から水を取り込むポンプと
を備えることを特徴とする貨物船。
【請求項2】
前記ポンプは、全体的に垂直方向に延びる棒形状で、吸い上げた水が流れる垂直方向に延びる配管の機能を備えること
を特徴とする請求項1に記載の貨物船。
【請求項3】
前記ポンプは、前記貨物艙に隣接するポンプスペースに設けられること
を特徴とする請求項2に記載の貨物船。
【請求項4】
前記ポンプは、前記貨物艙が設けられる区画に隣接するポンプスペースに設けられること
を特徴とする請求項2に記載の貨物船。
【請求項5】
前記ポンプは、前記貨物艙が設けられる区画に設けられるポンプスペースに設けられること
を特徴とする請求項2に記載の貨物船。
【請求項6】
前記ポンプは、互いに隣接する2つの前記貨物艙の間に設けられるポンプスペースに設けられること
を特徴とする請求項2に記載の貨物船。
【請求項7】
前記ポンプは、前記貨物艙の下に位置するポンプ室に設けられ、床置き型であること
を特徴とする請求項1に記載の貨物船。
【請求項8】
前記推進装置は、2つのポッド推進器で構成されること
を特徴とする請求項1に記載の貨物船。
【請求項9】
前記燃料タンクに蓄えられるエタノール又はメタノールを燃料として発電し、前記推進装置に電力を供給する発電機
を備えることを特徴とする請求項1に記載の貨物船。
【請求項10】
前記発電機は、前記船体の前記船尾部分の甲板上に設けられたこと
を特徴とする請求項9に記載の貨物船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物を運搬する貨物船に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、貨物を運搬する貨物船が知られている。例えば、荷役効率を高めることで、二酸化炭素の排出量を少なくするばら積み貨物船が開示されている(特許文献1参照)。また、多くの貨物船は、燃料として、化石燃料が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-180692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、地球環境への影響が懸念される二酸化炭素の排出を削減する観点から、化石燃料ではない燃料を使用する貨物船が求められる。
本発明の実施形態の目的は、エタノール等を燃料とする貨物船を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の観点に従った貨物船は、貨物を積載するための複数の貨物艙と、船体の船首部分の甲板上に設けられ、居住区を備える構造物と、前記船体の船尾部分に設けられ、ポッド推進器で構成される推進装置と、前記船体の幅方向の外側に配置され、前記推進装置の燃料としてエタノール又はメタノールを蓄え、シングルハルに構成される燃料タンクと、船外から水を取り込むポンプとを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、エタノール等を燃料とする貨物船を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1の実施形態に係る貨物船の構成を示す側面図。
図2】第1の実施形態に係る船体の内部の構成を示す上面図。
図3】第1の実施形態に係る貨物船の貨物艙の部分を示す構成図。
図4】第1の実施形態に係る電動油圧型のポンプの構成を示す簡易図。
図5】第1の実施形態に係る電動型のポンプの構成を示す簡易図。
図6】第1の実施形態に係るポンプスペースの内部の構成を示す構成図。
図7】本発明の第2の実施形態に係る貨物船の構成を示す側面図。
図8】第2の実施形態に係る船体の内部の構成を示す上面図。
図9】本発明の第3の実施形態に係る貨物船の構成を示す側面図。
図10】第3の実施形態に係る船体の内部の構成を示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る貨物船1の構成を示す側面図である。図2は、本実施形態に係る船体2の内部の構成を示す上面図である。図2中の点線は、船底の形状を表している。図3は、本実施形態に係る貨物船1の貨物艙11の部分を示す構成図である。なお、図面における同一部分には同一符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0009】
貨物船1は、貨物を運搬する船舶である。貨物船1は、ばら積み貨物船又はタンカー等であるが、どのような貨物を運搬する船舶でもよい。例えば、貨物船1は、自動車運搬船又はコンテナ船でもよい。ここでは、貨物船1は、主に、ばら積み貨物船又はタンカーの配置を採用した船型で説明する。
【0010】
貨物船1は、エタノールを燃料とする船舶である。燃料は、純度の高いエタノールに限らず、植物から生成されるバイオエタノールでもよい。さらに、燃料として、エタノールの代わりに、メタノールを用いてもよい。以降では、燃料をエタノールとして説明する。また、貨物船1は、化石燃料を使用しないことが望ましいが、一部に化石燃料を用いてもよい。例えば、推進力を得るための主機以外の機器(補機等)に化石燃料を用いてもよい。ここでは、貨物船1は、海洋を航行する船舶として説明するが、河川又は湖を航行する船舶でもよい。
【0011】
貨物船1は、船体2、ブリッジ3、推進装置4、発電機5、2つの液化装置6、及び、複数のポンプ7を備える。船体2は、複数の貨物艙11、2つの燃料タンク12、機関室13、複数のバラストタンク14、及び、2つのポンプスペース15を含む。
【0012】
ブリッジ3は、貨物船1の船首部分の甲板上に設けられる。ブリッジ3は、船員が居住する居住区を備える構造物である。ブリッジ3は、貨物艙11の真上に位置しないように設けられる。ブリッジ3は、船首部分に設けるために、船舶の船尾部分に設けられた一般的なブリッジよりも小型化されていてもよい。ブリッジ3を船首部分に設けることで、前方の見通しが向上し、船尾部分の甲板上に機器類を実装するスペースを増やすことができ、さらに貨物スペースをかさ上げすることができる。
【0013】
ここで、船首部分は、貨物艙11が設けられる区画よりも船首側、又は、貨物船1の長手方向を3等分した最も船首側に位置する部分でもよいし、その他に、当業者にとって、船首部分と認められる部分であればよい。同様に、船尾部分は、貨物艙11が設けられる区画よりも船尾側、貨物船1の長手方向を3等分した最も船尾側に位置する部分、又は、当業者にとって、船尾部分と認められる部分のいずれでもよい。
【0014】
推進装置4は、船体2の船尾部分の下部に設けられる。推進装置4は、ポッド推進器である。ポッド推進器は、ポッド(繭)形状をしており、プロペラが取り付けられている。ポッド推進器に内蔵されたモータによりプロペラが回転する。これにより、貨物船1の推進力が得られる。ポッド推進器は、船体2に対して水平方向に回転することで、貨物船1の進行方向を任意の方向に変更する。したがって、ポッド推進器は、舵の役割を持つため、舵を設ける必要がない。また、推進装置4としてポッド推進器を採用することで、推進力を得るための重油炊きエンジンを採用する船舶と比較して、機関室13を小さくできる。
【0015】
推進装置4は、1つのポッド推進器による1軸ポッド推進を採用した1軸船でもよいし、2つのポッド推進器による2軸ポッド推進を採用した2軸船でもよい。2軸ポッド推進を採用することで、主機の2重化をすることができるため、貨物船1の安全航行を確保することができる。また、貨物船1を2軸船とすることで、貨物船1の船尾部分が1軸船よりも広くなるため、船尾部分の機器類の実装スペースを増やすことができる。
【0016】
発電機5は、船体2の船尾部分の甲板上に設けられる。発電機5は、エタノールを燃料とする発電機である。発電機5は、発電した電力を推進装置4に供給する。即ち、発電機5は、推進装置4の電源である。発電機5は、推進装置4以外に電力供給してもよい。例えば、発電機5は、ディーゼル発電機であるが、エタノールを燃料とする発電機であれば、どのような発電機でもよい。
【0017】
液化装置6は、燃料タンク12又は貨物艙11の上部に設けられる。液化装置6は、燃料タンク12に貯蔵されているエタノールが気化したガスを清水又は海水により冷却して再液化する。燃料タンク12の内部でガス化したエタノールを再液化することで、燃料タンク12の内部圧力が過剰に上昇するのを防止し、大気中にエタノールガスが放散するのを防止する。なお、液化装置6に限らず、燃料タンク12の内部圧力が過剰状態になるのを防止できれば、どのような機器を設けてもよい。例えば、液化装置6の代わりに、燃料タンク12の内部で気化したエタノールを外部に放出するベントの役割を果たす安全弁が設けられてもよい。
【0018】
ポンプ7は、貨物艙11に隣接する船首側及び船尾側のポンプスペース15に設けられる。なお、ポンプ7は、燃料タンク12に設けられてもよい。船首側又は船尾側のいずれか一方のポンプスペース15に、全てのポンプ7が設けられてもよい。ポンプ7は、船内で利用するために海水(自然界の水)を船外から取り込むための機器である。ポンプ7は、全体的に垂直方向に延びる棒形状で、船底から水を垂直方向に吸い上げる。ポンプ7は、吸い上げた水が流れる垂直方向に延びる配管の機能を備える。したがって、ポンプ7は、船底から甲板までの垂直方向に延びるスペースがあれば、水平方向(例えば、貨物船1の長手方向又は長手方向と垂直である幅方向)が狭いスペースでも実装できる。例えば、ポンプ7は、駆動部分(インペラ等)が没水する没水型(ディープウェル型又はサブマージド型等)ポンプである。ポンプ7は、ポンプスペース15のような限定されたスペースに実装できれば、どのようなポンプでもよい。したがって、没水型ポンプと共に床置き型ポンプが設けられてもよい。
【0019】
例えば、ポンプ7で取水された水(海水)は、次のように利用される。1つ目は、発電機5などの各種機器を冷却するための冷却水として使用される。2つ目は、船内全域を網羅的に敷設された配管を常時循環させ、火災の消化用の水として使用される。3つ目は、バラストタンク14に溜める水として使用される。なお、各ポンプ7は、上記3つのうちいずれか1つ以上の目的に使用されてもよいし、上記3つの目的以外の目的で使用されてもよい。
【0020】
図4及び図5を参照して、ポンプ7の2つの構成例を説明する。なお、ここで説明する構成は、説明の便宜上、簡略化しているため、実際のポンプの構成とは厳密に一致しないことがある。
【0021】
図4は、本実施形態に係る電動油圧型ポンプ7aの構成を示す簡易図である。
ポンプ7aは、制御部71a、モータ72a、インペラ73a、及び、配管74aを備える。制御部71aは、ポンプ7aの上部に設けられる。モータ72a及びインペラ73aは、ポンプ7aの下部に設けられ、使用状態では水没する。
【0022】
モータ72aは、油圧モータである。制御部71aは、油圧により、モータ72aを制御する。モータ72aが駆動することで、モータ72aの回転軸に接続されたインペラ73aが回転する。インペラ73aの回転により、吸い上げられた水は、配管74aを通って、ポンプ7aの上部(例えば、甲板の上)から排出される。
【0023】
図5は、本実施形態に係る電動型ポンプ7bの構成を示す簡易図である。
ポンプ7bは、制御部71b、モータ72b、インペラ73b、及び、配管74bを備える。なお、制御部71bは、ポンプ7bの一部ではなく、ポンプ7bとは別の機器でもよい。モータ72bは、ポンプ7bの上部に設けられる。インペラ73bは、ポンプ7bの下部に設けられ、使用状態では水没する。
【0024】
モータ72bは、電動モータである。制御部71bは、モータ72bを制御する。モータ72bが駆動することで、モータ72bの回転軸に接続されたインペラ73bが回転する。インペラ73bの回転により、吸い上げられた水は、配管74bを通って、ポンプ7bの上部(例えば、甲板の上)から排出される。
【0025】
図4及び図5に示すように、垂直方向に延びる長軸のポンプを採用することで、船体2内でのポンプ7のための配管スペースを無くし、ポンプスペース15の広さを抑制することができる。
【0026】
貨物艙11は、貨物船1で運搬する貨物を積載する容器の役割を果たす。なお、貨物艙11は、タンクでもよい。貨物艙11が設けられる区画は、貨物船1の長手方向の中央部分を中心として、貨物船1の大部分を占める。貨物艙11に収容する貨物は、気体、液体又は固体のいずれでもよい。貨物船1は、全ての貨物艙11の合計容量を多くすることで、貨物の積載量を増やすことができる。
【0027】
燃料タンク12は、貨物船1の船体2の幅方向の最も外側に位置し、貨物艙11が設けられる区画の両舷にそれぞれ設けられる。具体的には、燃料タンク12は、最も船尾側に位置する2つの貨物艙11のそれぞれの外側に設けられる。燃料タンク12は、一重船殻(シングルハル)構造である。燃料タンク12は、貨物船1の燃料であるエタノールが蓄えられるタンクである。ここで、燃料タンク12に蓄えられる燃料は、エタノールである。エタノールは、海洋に流出しても、環境への影響が少ない。したがって、燃料タンク12は、シングルハル構造にすることができる。なお、航続距離を確保する等の理由により、燃料タンク12の積載容量を増やすために、貨物艙11が設けられる区画の一部又はバラストタンク14に燃料タンク12が設けられる区画を増設してもよい。
【0028】
機関室13は、貨物船1の航行に関連する機器類が設置される部屋である。例えば、機関室13には、推進装置4を操作又は制御するための機器類が設置される。
【0029】
バラストタンク14は、図3に示すように、貨物艙11を取り囲むように、両舷及び船底に設けられる。したがって、貨物艙11は、外側にバラストタンク14が設けられた二重船殻(ダブルハル)構造である。バラストタンク14は、内部に水(バラスト水)を蓄えることで、貨物船1の姿勢を制御するタンクである。
【0030】
ポンプスペース15は、貨物艙11が設けられる区画に隣接して、船首側と船尾側にそれぞれ設けられる。具体的には、船首側のポンプスペース15は、最も船首側に位置する貨物艙11の船首側に隣接して設けられる。船尾側のポンプスペース15は、最も船尾側に位置する貨物艙11の船尾側に隣接して設けられる。例えば、ポンプスペース15は、タンカーで貨物艙11が設けられる区画と他の区画の間に設けられるコッファダムでもよい。したがって、ポンプスペース15は、貨物艙11が設けられる区画に隣接して設けられれば、何処に設けられてもよい。
【0031】
なお、ポンプスペース15は、船底から甲板までの垂直方向に延びるスペースがあれば、水平方向が狭いスペースでもよい。即ち、ポンプスペース15は、垂直方向に延びるポンプ7を設置できれば、何処に設けてもよい。したがって、船体2において、利用価値の少ないデッドスペースをポンプスペース15にすることで、船体2の限られたスペースを有効利用できる。例えば、貨物船1を2軸船にすることで、1軸船よりも船体2の船尾側のスペースが広くなる。これにより、ポンプスペース15は、船体2の船尾側に確保し易くなる。
【0032】
図6を参照しては、船尾側のポンプスペース15の内部の構成を説明する。なお、船首側のポンプスペース15は、両舷に燃料タンク12が位置していない点以外は、船尾側のポンプスペース15と同様の構成である。
【0033】
船尾側のポンプスペース15の両舷には、燃料タンク12が位置する。燃料タンク12の代わりに、単なる空洞が設けられてもよい。ポンプスペース15の左舷(又は右舷)の下部には、燃料タンク12を貫通して外部(例えば、海)から水(例えば、海水)を取り入れるための高位の海水箱(取水口)31が設けられる。また、ポンプスペース15の船底には、もう1つの低位の海水箱31が設けられる。
【0034】
船内に水を取り入れる場合、高位の海水箱31又は低位の海水箱31のうち一方を開口する。通常は、船底に設けられた低位の海水箱31を開口する。貨物船1が浅瀬にいる場合、船底にある海水箱31を開口すると、水と共に泥等を一緒に船内に取り込む恐れがある。このような場合は、船体2の側面に設けられた高位の海水箱31を開口する。
【0035】
海水箱31からポンプスペース15に取り込まれた水は、ストレーナ33により濾過される。これにより、取り込まれた水からゴミ等が取り除かれる。濾過された水は、ポンプ7の設置された船底部分に送り込まれる。ポンプ7は、濾過された水をポンプスペース15の上に位置する甲板32の上まで吸い上げる。ポンプ7で吸い上げられた水は、甲板上に設けられた配管網を通り、各種用途に応じて、船内の各箇所(バラストタンク14等)に供給される。
【0036】
本実施形態によれば、重油を燃料とする同規模の貨物船と同等の出力で同等の貨物の最大積載量を有し、エタノールを燃料とする貨物船1を提供することができる。
【0037】
ここで、エタノールを燃料とする貨物船1は、重油を燃料とする貨物船と同等の出力を得るためには、燃料の量が約2倍必要になる。このため、燃料タンク12は、重油を燃料とする燃料タンクの約2倍の容量が必要となる。
【0038】
ブリッジ3を船首部分に設けることで、船尾部分の甲板上に新たなスペースを確保する。これにより、発電機5等を甲板上に設けることができる。貨物船1の推進装置4としてポッド推進器を採用することで、船尾部分に設けられる機関室の大きさを小さくする。燃料タンク12をシングルハル構造とすることで、ダブルハル構造よりも設置スペースが小さくなる。これにより、燃料タンク12を貨物艙11の両舷に配置することができる。このようにして、貨物艙11が設けられる区画を確保しながら、燃料タンク12の容量を大きくすることができる。
【0039】
また、取水するためのポンプ7として、全体的に垂直方向に延びる棒形状で、吸い上げた水が流れる垂直方向に延びる配管の機能を備えるポンプ(例えば、没水型ポンプ)を採用することで、床置き型ポンプを設置するポンプ室と比較して、ポンプ7を設置するポンプスペース15を小さくすることができる。
【0040】
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態に係る貨物船1Aの構成を示す側面図である。図8は、本実施形態に係る船体2Aの内部の構成を示す上面図である。図8中の点線は、船底の形状を表している。
【0041】
貨物船1Aは、第1の実施形態に係る貨物船1において、船体2の代わりに、ポンプスペース15を1つにして位置を変更した船体2Aを設けた点以外は、第1の実施形態と同様である。
【0042】
ポンプスペース15は、貨物艙11が設けられる区画に設けられる。具体的には、ポンプスペース15は、最も船尾側に位置する貨物艙11と、この貨物艙11と船首側で隣接する貨物艙11との間に設けられる。なお、ポンプスペース15は、貨物艙11が設けられる区画であれば、何処に設けてもよい。例えば、互いに隣接する2つの貨物艙11の間に、ポンプスペース15を設けることで、2つの貨物艙11を仕切る仕切り板の役割を兼ねてもよい。
【0043】
コッファダム16は、貨物艙11が設けられる区画と他の区画の間に設けられるスペースである。なお、コッファダム16は、貨物艙11の種類に応じて、設けられるが、無くてもよい。また、コッファダム16には、任意の機器類が設置されてもよい。
【0044】
本実施形態によれば、第1の実施形態による作用効果に加え、第1の実施形態に係るポンプスペース15と比較して、1つのポンプスペース15の広さを大きく確保することができる。
【0045】
貨物船1Aの形状は、船首側及び船尾側が長手方向の中央部分に比べて細い。貨物の積載量を多くするために、貨物艙11が設けられる区画は、貨物艙11の幅方向が広い中央部分に設けられる。このため、ポンプスペース15を船首側及び船尾側に設けた場合、ポンプスペース15の特に幅方向の広さが確保し難く、1つのポンプスペース15に設けられるポンプ7の数が少なくなる。したがって、貨物艙11が設けられる区画にポンプスペース15を設けることで、1つのポンプスペース15に設けられるポンプ7の数を多くすることができる。
【0046】
また、ポンプスペース15は、貨物艙11が設けられる区画の何処に設けてもよい。例えば、ポンプスペース15は、互いに隣接する2つの貨物艙11の間に設けることで、貨物艙11の配置にほとんど影響を与えることなく設けることができる。これにより、ポンプスペース15の位置を考慮せずに、貨物艙11を任意の配置にすることができる。なお、ポンプスペース15は、1つが望ましいが、2つ以上設けられてもよい。
【0047】
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態に係る貨物船1Bの構成を示す側面図である。図10は、本実施形態に係る船体2Bの内部の構成を示す上面図である。図10中の点線は、船底の形状を表している。
【0048】
貨物船1Bは、第1の実施形態に係る貨物船1において、船体2の代わりに、船体2Aを設けたものである。船体2Aは、第1の実施形態に係る船体2において、ポンプ7を設置するポンプスペース15の代わりに、ポンプ7Bを設置するポンプ室17を設けたものである。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0049】
ポンプ室17は、最も船尾側に位置する貨物艙11Bの一部の底面の下に設けられる。ポンプ室17には、ポンプ7Bが設置される。例えば、ポンプ7Bは、床置き型である。なお、ポンプ7Bは、どのようなものでもよい。
【0050】
ポンプ室17の上に位置する貨物艙11Bの底面は、下にポンプ室17が位置する部分と下にポンプ室17が位置しない部分がある。ポンプ室17が位置する底面は、ポンプ室17が位置しない底面よりも高い。ポンプ室17が位置する底面には、ポンプ室17が位置しない底面側が低くなるような傾斜SLが設けられる。
【0051】
傾斜SLを設けることにより、ポンプ室17が位置する底面に積載された貨物は、ポンプ室17が位置しない底面に向かって移動するように重力が働く。これにより、貨物が液体又は粉状のものであれば、貨物艙11B内の貨物の量が少なくなった場合に、ポンプ室17が位置しない底面に全ての貨物が溜まるようになる。これにより、貨物艙11Bに収容される貨物を取り残さず全て搬出することが容易になる。
【0052】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果が得られる。また、第1の実施形態に係るポンプスペース15の代わりに、ポンプ室17を設けることで、床置き型ポンプ7Bを設けることができる。これにより、第1の実施形態に係るポンプ7と異なる種類のポンプ7Bを採用することができる。
【0053】
なお、追加の利点及び修正について当業者により容易に生じることがある。したがって、そのより広い態様における本発明は、本明細書に示して説明される特定の詳細で代表的な実施形態に限定されない。したがって、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物により定義される一般的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことができる。
【符号の説明】
【0054】
1…貨物船、2…船体、3…ブリッジ、4…推進装置、5…発電機、6…液化装置、7…ポンプ、11…貨物艙、12…燃料タンク、13…機関室、14…バラストタンク、15…ポンプスペース。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10