(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112447
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】電磁比例弁の駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20230804BHJP
G05D 16/20 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
F16K31/06 310Z
G05D16/20 Z
F16K31/06 325
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014243
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】丸山 章
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】久保 光生
【テーマコード(参考)】
3H106
5H316
【Fターム(参考)】
3H106DA02
3H106DA23
3H106EE04
3H106EE48
3H106FB04
3H106FB25
3H106FB45
3H106FB46
3H106KK02
3H106KK05
5H316BB02
5H316BB07
5H316DD15
5H316EE02
5H316EE08
5H316FF01
5H316HH04
5H316HH12
(57)【要約】
【課題】目標の圧力や流量を容易に得ることができる電磁比例弁の駆動装置を提供する。
【解決手段】本発明にかかる電磁比例弁の駆動装置100は、目標の圧力である指令圧力が入力される圧力入力部114と、指令圧力を電流値に変換する圧力電流変換部116と、電流値に応じて電磁比例弁104に電流を供給する電流制御部118と、所定の電磁比例弁ごとに指令圧力と電流値が対応づけられた対応データを書き換え可能に記憶する記憶部122と、電磁比例弁の種類が選択されると、電磁比例弁の種類に応じて記憶部から対応データを取得して、対応データを圧力電流変換部に送信する電磁比例弁選択部120と、を備え、圧力電流変換部は、電磁比例弁選択部から送信された対応データを用いて、指令圧力を電流値に変換することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標の圧力である指令圧力が入力される圧力入力部と、
前記指令圧力を電流値に変換する圧力電流変換部と、
前記電流値に応じて電磁比例弁に電流を供給する電流制御部と、
所定の電磁比例弁ごとに指令圧力と電流値が対応づけられた対応データを書き換え可能に記憶する記憶部と、
前記電磁比例弁の種類が選択されると、該電磁比例弁の種類に応じて前記記憶部から対応データを取得して、該対応データを前記圧力電流変換部に送信する電磁比例弁選択部と、を備え、
前記圧力電流変換部は、前記電磁比例弁選択部から送信された対応データを用いて、前記指令圧力を電流値に変換することを特徴とする電磁比例弁の駆動装置。
【請求項2】
前記対応データは、関数のパラメータ、関数全体または変換テーブルであることを特徴とする請求項1に記載の電磁比例弁の駆動装置。
【請求項3】
当該電磁比例弁の駆動装置は、
前記圧力入力部、前記圧力電流変換部および前記電流制御部を備えた組込用コンピュータと、
前記電磁比例弁選択部および前記記憶部を備え、前記組込用コンピュータと別体の設定用コンピュータとから構成されている請求項1または2に記載の電磁比例弁の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧、空圧や水圧などの流体の圧力や流量を駆動源とする油空水圧装置の圧力調整や流量調整に用いられる電磁比例弁の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油空水圧装置は、その内部に封入された流体の圧力や流量を駆動源とする装置であり、例えば電磁比例弁を用いて流体の圧力調整や流量調整を行うことで各種作業を行う。電磁比例弁は、ソレノイドコイルと、ソレノイドコイルに電流を流すことで発生する電磁力によって開閉する弁とを有する。これにより、電磁比例弁は、電気信号に応じて弁の開閉を自動で行い、流体の圧力や流量を調整することができる。したがって油空水圧装置が適切に設計されていれば、電磁比例弁のソレノイドコイルに流す電流に比例した圧力や流量を発生させることができる。
【0003】
特許文献1には、比例電磁弁の制御装置が記載されている。この制御装置は、比例電磁弁のソレノイドコイルに駆動電流を印加し、ソレノイドコイルに流れる電流値に比例した電磁気力で可動鉄片を吸引し、所定の開度で弁を開閉して流体の流量又は圧力を制御する。
【0004】
具体的には、特許文献1の制御装置では、入力された開度指令値を比例電磁弁の開口量に補正し、開口量に応じた弁開閉時に現れるヒステリシスを取り除くための可動鉄片に作用する静止摩擦力を阻止する力のディザ波形を生成している。さらに制御装置では、開口量にディザ波形を重畳させて比例電磁弁の指示電流値を出力し、指示電流値に相当する供給電流をソレノイドコイルへ印加し、指示電流波形に供給電流波形を一致させた駆動電流でソレノイドコイルを定電流駆動している。
【0005】
特許文献1では、上記のような駆動電流でソレノイドコイルを定電流駆動することにより、比例電磁弁が有するヒステリシス特性、ソレノイドコイルの温度変化、並びに配線の抵抗値変動による影響を低減することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで電磁比例弁を利用するユーザは、弁の開度を調整して目標とする圧力や流量を得るために、例えば電磁比例弁ごとの特性として事前に測定された電流-圧力特性のグラフを読み取り、その上で、ソレノイドコイルに印加する目標の電流値を指令する必要がある。
【0008】
このため、ユーザは、ソレノイドコイルに印加する電流値を本来意識する必要がないにもかかわらず、電流-圧力特性のグラフを読み取るなど、手間がかかり作業性が損なわれてしまう。なお特許文献1の技術では、ユーザがやはり本来意識する必要のない開度指令値を入力する必要があるため、作業性を向上させる点で改善の余地がある。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、目標の圧力や流量を容易に得ることができる電磁比例弁の駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかる電磁比例弁の駆動装置の代表的な構成は、目標の圧力である指令圧力が入力される圧力入力部と、指令圧力を電流値に変換する圧力電流変換部と、電流値に応じて電磁比例弁に電流を供給する電流制御部と、所定の電磁比例弁ごとに指令圧力と電流値が対応づけられた対応データを書き換え可能に記憶する記憶部と、電磁比例弁の種類が選択されると、電磁比例弁の種類に応じて記憶部から対応データを取得して、対応データを圧力電流変換部に送信する電磁比例弁選択部と、を備え、圧力電流変換部は、電磁比例弁選択部から送信された対応データを用いて、指令圧力を電流値に変換することを特徴とする。
【0011】
上記構成では、ユーザが目標の圧力である指令圧力を入力し、利用する電磁比例弁の種類を選択すると、自動的に、電磁比例弁選択部が電磁比例弁の種類に応じて記憶部から取得した対応データを圧力電流変換部に送信する。そして送信された対応データを用いて、圧力電流変換部が指令圧力を電流値に変換し、電流制御部が電流値に応じて電磁比例弁に電流を供給する。なお対応データは、所定の電磁比例弁ごとに指令圧力と電流値が対応づけられたデータであり、さらに書き換え可能に記憶部に記憶されている。
【0012】
これにより、ユーザが指令圧力を直接指令し、利用する電磁比例弁の種類を選択するだけで、電磁比例弁に供給される電流すなわちソレノイドコイルの駆動電流が自動的に制御され、指令圧力を発生させることができる。つまり上記構成によれば、ユーザが指令圧力を直接指令できるため、電磁比例弁のソレノイドコイルの駆動電流をユーザが意識することなく、電磁比例弁を制御して指令圧力を容易に得ることができる。
【0013】
上記の対応データは、関数のパラメータ、関数全体または変換テーブルであるとよい。
【0014】
これにより、電流-圧力特性を示す関数の係数や定数などのパラメータや、関数全体(多項式の変数の次数や項数とそれらの係数および定数)、または電流-圧力の対応表である変換テーブル(内挿補間や外挿補間を含む)を、対応データとして記憶部に記憶することができる。そして、ユーザが指令圧力を直接指令し、利用する電磁比例弁の種類を選択するだけで、圧力電流変換部は、電磁比例弁選択部が記憶部から取得した対応データを用いて指令圧力を電流値に変換することができる。
【0015】
上記の電磁比例弁の駆動装置は、圧力入力部、圧力電流変換部および電流制御部を備えた組込用コンピュータと、電磁比例弁選択部および記憶部を備え、組込用コンピュータと別体の設定用コンピュータとから構成されているとよい。
【0016】
ここで、電磁比例弁選択部は、電磁比例弁の設定時のみに利用するため、電磁比例弁の通常の運用では不要な部分である。そこで、電磁比例弁の実際の運用では組込用コンピュータを用いて、設定時に必要なときのみ、組込用コンピュータとは別体の設定用コンピュータを接続して、設定用コンピュータに備えられた電磁比例弁選択部を利用することができ、利便性を高めることができる。なお別体の設定用コンピュータは、組込用コンピュータに一対一で直接接続するものであってもよいが、ネットワークを介して遠隔かつ多対一で接続するものであってもよい。
【0017】
また記憶部は、多くの種類の電磁比例弁のパラメータや、変換テーブルなどのデータベースや、関数実行ファイルをそれぞれ記憶する必要がある。一方、電磁比例弁を駆動するためのコンピュータは組込用コンピュータであるため、サイズやコストの制約により多くのデータを記憶するための十分なメモリ容量を確保することが困難である。一方、設定用コンピュータは汎用コンピュータ(組込用ではない)を用いることができるため、大容量の記憶部を備えることが容易であるから、組込用コンピュータのメモリ容量の制約を受けずに、多くの種類の電磁比例弁ごとの対応データを記憶することができる。
【0018】
さらに記憶部は、新たな種類の電磁比例弁が利用される場合、データベースの更新や、新たな関数ブロックを追加する必要がある。仮に、電磁比例弁を駆動する組込用コンピュータのファームウェアをその都度更新すると、作業が大変となるだけでなく、メモリ容量の制限により、追加すること自体が困難となる場合もある。そこで組込用コンピュータとは別体の設定用コンピュータが記憶部を備えることにより、このような事態を回避することができ、作業性や利便性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、目標の圧力や流量を容易に得ることができる電磁比例弁の駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態における駆動装置が適用されるシステムを説明する図である。
【
図2】
図1の駆動装置の機能を示すブロック図である。
【
図3】
図1の電磁比例弁の電流-圧力特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態における駆動装置100が適用されるシステム102を説明する図である。システム102は、駆動装置100に加え、電磁比例弁104と、圧力センサ106と、上位指令コンピュータ108とを備える。
【0023】
電磁比例弁104は、油圧、空圧や水圧などの流体の圧力や流量を駆動源とする油空水圧装置の圧力調整や流量調整に用いられる。電磁比例弁104は、ソレノイドコイルと、ソレノイドコイルに電流を流すことで発生する電磁力によって開閉する弁とを有し、電気信号に応じて弁の開閉を自動で行い、流体の圧力や流量を調整する。なお以下では電磁比例弁104は、一例として油圧装置に封入された油の圧力を調整するものとするが、これに限られず、油の流量を調整するものであってもよい。
【0024】
駆動装置100は、電磁比例弁104に対して電流すなわちソレノイドコイルの駆動電流を供給することによって電磁比例弁104を駆動する装置であって、組込用コンピュータ110と設定用コンピュータ112とを備える。設定用コンピュータ112は、組込用コンピュータ110とは別体の汎用コンピュータであり、組込用コンピュータ110と比べてサイズやコストの制約が少なく、十分なメモリ容量を確保することができる。
【0025】
上位指令コンピュータ108は、産業用コンピュータやプログラマブルロジックコントローラ(PLC)などであり、ユーザによって所望の目標の圧力である指令圧力が入力される圧力指令装置である。なお指令圧力の入力は、アナログ信号やデジタル通信など各種方法で行われてよい。また上位指令コンピュータ108は、組込用コンピュータ110に指令圧力に応じた指令圧力信号を出力する。
【0026】
圧力センサ106は、電磁比例弁104の実圧力を測定し、駆動装置100の組込用コンピュータ110に実圧力に応じた実圧力信号を出力する。ただしシステム102では、圧力センサ106を必ずしも利用する必要はなく、圧力センサ106を利用しない場合は、組込用コンピュータ110に指令圧力信号のみが入力される。
【0027】
図2は、
図1の駆動装置100の機能を示すブロック図である。駆動装置100の組込用コンピュータ110は、圧力入力部114、圧力電流変換部116および電流制御部118を備える。設定用コンピュータ112は、電磁比例弁選択部120、記憶部122および電磁比例弁選択用ユーザインタフェース(以下、UI124)を備える。
【0028】
圧力入力部114は、圧力センサ106を利用しない場合、上位指令コンピュータ108から目標の圧力である指令圧力Prefのみが入力される。このような場合、圧力入力部114は、指令圧力Prefを圧力電流変換部116に出力する。
【0029】
一方、圧力センサ106を利用する場合、圧力入力部114には、指令圧力Prefに加え、圧力センサ106から実圧力Pactが入力される。そして圧力入力部114は、指令圧力Pref、実圧力Pactに基づいて、以下の式(1)を用いて、実圧力Pactを指令圧力Prefに合わせるように補正した指令圧力Prefcを算出し、圧力電流変換部116に出力する。
【数1】
【0030】
ここで上記の式(1)の右辺の第1項は、指令圧力Prefのフィードフォワード制御部である。また右辺の第2項から第4項は、PID制御を構成するフィードバック制御部となる。さらに第2項から第4項のKp、Ki、Kdはそれぞれ、比例、積分、微分のゲインとなり、0以上の値で適切に調整される。Kp=Ki=Kd=0とすれば、フィードバック項が無効となり、オープンでの指令圧力Prefをそのままスルーする。なお、これらのゲインの決定方法や制御アルゴリズムは、多くの従来技術があり、ここでは一例として、一般的な方式を採用しているが、他の方式を適宜採用してもよい。
【0031】
圧力電流変換部116は、圧力入力部114から入力された指令圧力Prefまたは補正された指令圧力Prefcを、電流値に変換する。ここで電磁比例弁104は、その種類や個体差によって異なるパラメータを有していて、電流-圧力特性も異なっている(
図3参照)。
【0032】
図3は、
図1の電磁比例弁104の電流-圧力特性を示すグラフである。なお横軸は入力電流、縦軸は圧力である。ここでは一例として、3つの個別の電磁比例弁104の電流-圧力特性を示している。
図3に示すように、3つの個別の電磁比例弁104では、ソレノイドコイルに印加される駆動電流に対して得られる圧力が異なっていて、個別の電流-圧力特性を有している。
【0033】
そこで圧力電流変換部116は、
図3の電流-圧力特性を示すグラフを近似したコンピュータプログラムで計算可能な関数を用いて、電流値を計算する。具体的には、圧力電流変換部116は、以下の式(2)を用いて、電流-圧力特性の逆変換を行い、圧力を駆動電流に変換する。
【数2】
【0034】
図4は、式(2)を示すグラフである。
図4のグラフに示すように、ここでは、電流-圧力特性として、ある一定電流iaまでは圧力が発生せず、そのiaより大きな電流となると、比例係数α>0で比例して圧力が上昇する。また流せる電流には限界値があり、それをibとしている。また、これらの電流ia、ibと比例係数αは、個別の電磁比例弁104ごとに異なるパラメータ(パラメータ群ともいう)となる。
【0035】
これらの個別の電磁比例弁104ごとのパラメータは、設定用コンピュータ112の電磁比例弁選択部120から組込用コンピュータ110の圧力電流変換部116に送信される。具体的には、記憶部122は、所定の電磁比例弁104ごとに指令圧力と電流値が対応づけられた対応データを書き換え可能に記憶している。対応データは、電流-圧力特性を示す関数の係数や定数などのパラメータや、関数全体(多項式の変数の次数や項数とそれらの係数および定数)、または電流-圧力の対応表である変換テーブル(内挿補間や外挿補間を含む)である。またUI124は、ユーザが利用する電磁比例弁104の種類を選択するためのインタフェースである。
【0036】
電磁比例弁選択部120は、ユーザがUI124を用いて利用する電磁比例弁104の種類を選択すると、選択された電磁比例弁104に対応するパラメータを記憶部122から読み出して取得する。さらに電磁比例弁選択部120は、取得したパラメータを圧力電流変換部116にデジタル通信などを利用して送信する。
【0037】
そして圧力電流変換部116は、電磁比例弁選択部120から送信された対応データを用いて、上記の式(2)に基づいて指令圧力を電流値に変換し、この電流値を電流制御部118に出力する。電流制御部118は、電流値に応じて電磁比例弁104に駆動電流を供給する。
【0038】
このように駆動装置100では、ユーザが目標の圧力である指令圧力を入力し、利用する電磁比例弁104の種類を選択すると、自動的に、電磁比例弁選択部120が電磁比例弁104の種類に応じて記憶部122から取得した対応データを圧力電流変換部116に送信する。そして、送信された対応データを用いて、圧力電流変換部116が指令圧力を電流値に変換し、電流制御部118が電流値に応じて電磁比例弁104に電流を供給する。
【0039】
これにより駆動装置100では、ユーザが指令圧力を直接指令し、利用する電磁比例弁104の種類を選択するだけで、電磁比例弁104のソレノイドコイルに供給される駆動電流が自動的に制御され、指令圧力を発生させることができる。つまり駆動装置100によれば、ユーザが指令圧力を直接指令できるため、電磁比例弁104のソレノイドコイルの駆動電流をユーザが意識することなく、電磁比例弁104を制御して指令圧力を容易に得ることができる。
【0040】
ここでシステム102において、電磁比例弁選択部120は、電磁比例弁104の設定時のみに利用するため、電磁比例弁104の通常の運用では不要な部分である。そこで駆動装置100では、電磁比例弁104の実際の運用では低性能な組込用コンピュータ110を用いて、設定時に必要なときのみ、組込用コンピュータ110とは別体の高性能な設定用コンピュータ112を接続することにより、設定用コンピュータ112の電磁比例弁選択部120を利用することができ、利便性を高めることができる。なお別体の設定用コンピュータ112は、組込用コンピュータ110に一対一で直接接続するものであってもよいが、ネットワークを介して遠隔かつ多対一で接続するサーバ-クライアント形式のものであってもよい。
【0041】
また記憶部122は、多くの種類の電磁比例弁104のパラメータや、変換テーブルなどのデータベースや、関数実行ファイルをそれぞれ記憶する必要がある。一方、電磁比例弁104を駆動するためのコンピュータは組込用コンピュータ110であるため、サイズやコストの制約により多くのデータを記憶するための十分なメモリ容量を確保することが困難である。これに対して駆動装置100では、設定用コンピュータ112は汎用コンピュータ(組込用ではないもの:例えばパーソナルコンピュータやタブレット端末など)を用いることができるため、大容量の記憶部122を備えることが容易である。このため、設定用コンピュータ112は、組込用コンピュータ110のメモリ容量の制約を受けずに、多くの種類の電磁比例弁104ごとの対応データを記憶することができる。
【0042】
さらに記憶部122は、新たな種類の電磁比例弁104が利用される場合、データベースの更新や、新たな関数ブロックを追加する必要がある。仮に、電磁比例弁104を駆動する組込用コンピュータ110のファームウェアをその都度更新すると、作業が大変となるだけでなく、メモリ容量の制限により、追加すること自体が困難となる場合もある。これに対して駆動装置100では、組込用コンピュータ110とは別体の設定用コンピュータ112が記憶部122を備えることにより、このような事態を回避することができ、作業性や利便性を高めることができる。
【0043】
また電磁比例弁選択部120は、ユーザが選択した電磁比例弁104の特性に合わせた対応データである関数全体を記憶部122から読み出して、この関数全体を圧力電流変換部116に送信してもよい。この場合、選択された電磁比例弁104の特性を示す関数を別のライブラリソフトウエアとして記憶部122が記憶していて、電磁比例弁選択部120は、そのライブラリソフトウエアを選択して、組込用コンピュータ110にライブラリソフトウエアを転送する。このため、圧力電流変換部116は、転送されたライブラリソフトウエアを用いて指令圧力を電流値に変換することができる。なお電磁比例弁選択部120は、関数全体を用いて計算するとき必要なパラメータも圧力電流変換部116に送信してよい。
【0044】
さらに電磁比例弁選択部120は、ユーザが選択した電磁比例弁104の特性に合わせた対応データである変換テーブルを記憶部122から読み出して、この変換テーブルを圧力電流変換部116に送信してもよい。この場合、圧力電流変換部116は、送信された変換テーブルを用いて指令圧力を電流値に変換することができる。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、油圧、空圧や水圧などの流体の圧力や流量を駆動源とする油空水圧装置の圧力調整や流量調整に用いられる電磁比例弁の駆動装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
100…駆動装置、102…システム、104…電磁比例弁、106…圧力センサ、108…上位指令コンピュータ、110…組込用コンピュータ、112…設定用コンピュータ、114…圧力入力部、116…圧力電流変換部、118…電流制御部、120…電磁比例弁選択部、122…記憶部、124…電磁比例弁選択用ユーザインタフェース