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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112453
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】ガスセンサ素子
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20230804BHJP
   G01N 27/409 20060101ALI20230804BHJP
   G01N 27/41 20060101ALI20230804BHJP
   G01N 27/419 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
G01N27/416 331
G01N27/409 100
G01N27/41 325H
G01N27/419 327H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014250
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 悠介
(72)【発明者】
【氏名】新妻 匠太郎
(72)【発明者】
【氏名】平川 敏弘
【テーマコード(参考)】
2G004
【Fターム(参考)】
2G004BB04
2G004BF05
2G004BF08
2G004BF09
2G004BJ03
2G004BM07
(57)【要約】
【課題】保護層によってガス導入口を覆いつつ、応答性の低下を防ぐことの可能なガスセンサ素子を提供する。
【解決手段】本発明の一側面に係るガスセンサ素子は、表面にガス導入口が開口した素子基体と、保護層と、緩衝層と、前記素子基体と前記緩衝層との間に配置されるガス導入層とを備え、前記ガス導入層は、前記ガス導入口を覆い、前記保護層に接し、かつ、気孔率が、30%以上であって、前記緩衝層の気孔率よりも5%以上高い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に開口したガス導入口から被測定ガスが内部空間へと導入される素子基体と、
少なくとも、前記素子基体の前記ガス導入口が開口している面を覆う保護層と、
前記素子基体と前記保護層との間に配置される緩衝層であって、
前記素子基体の前記ガス導入口が開口している面において、一部が、前記素子基体と前記保護層との両方に接し、
前記保護層よりも気孔率が低い、
緩衝層と、
前記素子基体と前記緩衝層との間に配置されるガス導入層であって、
前記ガス導入口の少なくとも一部を覆い、
前記保護層に接し、かつ、
気孔率が、30%以上であって、前記緩衝層の気孔率よりも5%以上高い、
ガス導入層と、
を備える、
ガスセンサ素子。
【請求項2】
前記ガス導入層の面積は、前記素子基体の前記ガス導入口が開口している面の面積の0.2倍以上、0.8倍以下である、
請求項1に記載のガスセンサ素子。
【請求項3】
前記ガス導入層の気孔率は、45%以上、60%以下である、
請求項1または2に記載のガスセンサ素子。
【請求項4】
前記ガス導入層は、少なくとも、前記素子基体の前記ガス導入口が開口している面を囲む辺のうち、前記ガス導入口までの距離が最も短い辺において、前記保護層に接している、
請求項1から3のいずれか1項に記載のガスセンサ素子。
【請求項5】
前記ガス導入層は、前記素子基体の前記ガス導入口が開口している面において、前記ガス導入口の全体を覆い、さらに、前記ガス導入口よりも、前記素子基体の前記ガス導入口が開口している面を囲む辺のうち、前記ガス導入口までの距離が最も短い辺に対向する辺の側に、延びている、
請求項1から4のいずれか1項に記載のガスセンサ素子。
【請求項6】
前記ガス導入層は、前記ガス導入口から前記内部空間へと入り込んでいる、
請求項1から5のいずれか1項に記載のガスセンサ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体電解質を有する素子基体と保護層とを備えるガスセンサ素子において、前記保護層が前記素子基体から剥離するのを防ぐために、前記素子基体と前記保護層との間に、前記保護層よりも気孔率が低い緩衝層を配置したガスセンサ素子が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-156729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本件発明者は、上述のような構造を有する従来のガスセンサ素子には、次のような問題点があることを見出した。すなわち、一般に、前記素子基体の内部には、被測定ガスを導入して流通させる被測定ガス流通部が設けられ、また、前記素子本体の表面(例えば、先端面および側面の少なくとも一方)には、前記被測定ガス流通部の入口であるガス導入口が開口している。本件発明者は、前記ガス導入口を前記緩衝層で塞ぐと、前記緩衝層の気孔率は前記保護層よりも低いため、前記被測定ガス流通部内に被測定ガスが十分に導入されなかったり、前記被測定ガス流通部に被測定ガスを十分に導入するのに時間を要したりしてガスセンサ素子の応答性が悪化するとの問題点があることを見出した。
【0005】
また、前記ガス導入口を覆わないように前記保護層を設けることは困難である上、前記ガス導入口を覆わないように前記保護層を設けた場合には、前記保護層の効果が十分には発揮されないとの問題点があることを、本件発明者は見出した。
【0006】
本発明は、一側面では、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、保護層によってガス導入口を覆いつつ、応答性の低下を防ぐことの可能なガスセンサ素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0008】
本発明の一側面に係るガスセンサ素子は、表面に開口したガス導入口から被測定ガスが内部空間へと導入される素子基体と、少なくとも、前記素子基体の前記ガス導入口が開口している面を覆う保護層と、前記素子基体と前記保護層との間に配置される緩衝層と、前記素子基体と前記緩衝層との間に配置されるガス導入層とを備える。前記緩衝層は、前記素子基体の前記ガス導入口が開口している面において、一部が、前記素子基体と前記保護層との両方に接し、前記保護層よりも気孔率が低い。また、前記ガス導入層は、前記ガス導入口の少なくとも一部を覆い、前記保護層に接し、かつ、気孔率が、30%以上であって、前記緩衝層の気孔率よりも5%以上高い。
【0009】
当該構成では、前記緩衝層によって前記保護層が前記素子基体から剥離するのを防ぎつつ、前記ガス導入層によって、前記被測定ガスを前記保護層から前記ガス導入口へと導く流路を確保する。したがって、本発明の一側面に係るガスセンサ素子は、保護層によってガス導入口を覆いつつ、前記被測定ガスを前記保護層から前記ガス導入口へと導く流路を確保する前記ガス導入層によって、応答性の低下を防ぐことができる。
【0010】
上記一側面に係るガスセンサ素子において、前記ガス導入層の面積は、前記素子基体の前記ガス導入口が開口している面の面積の0.2倍以上、0.8倍以下であってもよい。当該構成では、前記素子基体の前記ガス導入口が開口している面の面積の0.2倍以上、0.8倍以下の面積を有する前記ガス導入層によって、前記被測定ガスを前記保護層から前記ガス導入口へと導く流路を必要かつ十分に確保することができる。
【0011】
上記一側面に係るガスセンサ素子において、前記ガス導入層の気孔率は、45%以上、60%以下であってもよい。当該構成では、気孔率が45%以上、60%以下である前記ガス導入層によって、前記被測定ガスを前記保護層から前記ガス導入口へと導く流路を必要かつ十分に確保することができる。
【0012】
上記一側面に係るガスセンサ素子において、前記ガス導入層は、少なくとも、前記素子基体の前記ガス導入口が開口している面を囲む辺のうち、前記ガス導入口までの距離が最も短い辺において(短い辺の側で)、前記保護層に接していてもよい。当該構成では、前記被測定ガスを前記保護層から前記ガス導入口へと導く前記ガス導入層は、少なくとも、前記素子基体の前記ガス導入口が開口している面を囲む辺のうち、前記ガス導入口までの距離が最も短い辺において、前記保護層に接している。つまり、前記被測定ガスを前記保護層から前記ガス導入口へと導く流路として、前記ガス導入層は、少なくとも、前記ガス導入口と前記保護層との間を、最短の経路で、結んでいる。そのため、前記ガス導入層は、必要かつ十分な量の前記被測定ガスを、前記保護層から前記ガス導入口へと導くことができる。
【0013】
上記一側面に係るガスセンサ素子において、前記ガス導入層は、前記素子基体の前記ガス導入口が開口している面において、前記ガス導入口の全体を覆い、さらに、前記ガス導入口よりも、前記素子基体の前記ガス導入口が開口している面を囲む辺のうち、前記ガス導入口までの距離が最も短い辺に対向する辺の側に、延びていてもよい。
【0014】
当該構成では、前記ガス導入層は、前記ガス導入口の全体を覆って、さらに、前記ガス導入口よりも、前記素子基体の前記ガス導入口が開口している面を囲む辺のうち、前記ガス導入口までの距離が最も短い辺に対向する辺の側に、延びている。そのため、異物、被毒物質などが前記ガス導入口から前記内部空間へと入り込むのを、前記ガス導入層によって防ぐことができる。また、前記ガス導入層の、前記ガス導入口よりも、前記ガス導入口までの距離が最も短い辺に対向する辺の側に延びている部分に、異物、被毒物質などを蓄積させやすく、異物、被毒物質などが及ぼす悪影響から、前記ガスセンサを保護することができる。
【0015】
上記一側面に係るガスセンサ素子において、前記ガス導入層は、前記ガス導入口から前記内部空間へと入り込んでいてもよい。当該構成では、前記ガス導入層は、前記ガス導入口から前記内部空間へと入り込んでいる。そのため、異物、被毒物質などが前記ガス導入口から前記内部空間へと入り込むのを、前記ガス導入層によって防ぐことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、保護層によってガス導入口を覆いつつ、応答性の低下を防ぐことの可能なガスセンサ素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施の形態に係るセンサ素子の構成の一例を概略的に示す断面模式図である。
図2図2は、図1のセンサ素子が備える素子基体の構成の一例を示す断面模式図である。
図3図3は、図1に示すセンサ素子のII-II線矢視断面の一例を示す図である。
図4図4は、変形例に係るセンサ素子について、図3と同様の矢視断面の一例を示す図であり、ガス導入層の面積が先端面の面積の0.2倍の例を示す。
図5図5は、変形例に係るセンサ素子について、図4と同様の矢視断面の一例を示す図であり、ガス導入層の面積が先端面の面積の0.8倍の例を示す。
図6図6は、変形例に係るセンサ素子の構成の一例を概略的に示す断面模式図であり、図1に示すガス導入層が被測定ガス流通部の内部へと入り込んでいる例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0019】
本実施形態に係るガスセンサ素子において、素子基体の、ガス導入口が開口している面は、耐被水性の向上等の目的から、保護層によって覆われている(例えば、素子基体の、ガス導入口が開口している面の最も外側に、保護層が設けられている)。前記保護層は、前記保護層が前記素子基体から剥離するのを防ぐための緩衝層と、被測定ガスを前記保護層から前記ガス導入口へと導く流路としてのガス導入層とに接している。前記ガス導入層によって必要十分な被測定ガスを前記保護層から前記ガス導入口へと導くことができるよう、前記ガス導入層の気孔率は、30%以上である。また、被測定ガスが前記緩衝層ではなく、前記ガス導入層を流れるよう、前記ガス導入層の気孔率は、前記緩衝層の気孔率よりも5%以上高い。以下、これらの構成を有するガスセンサ素子の一例を説明する。
【0020】
[構成例]
図1は、本実施形態に係るガスセンサ素子101の構成の一例を概略的に示す断面模式図である。図1に例示するように、ガスセンサ素子101は、素子基体100と、保護層400と、緩衝層300と、ガス導入層200とを備える。素子基体100は、表面にガス導入口10が開口しており、ガス導入口10から被測定ガスが素子基体の内部空間である被測定ガス流通部7へと導入される。図1に示す例では、素子基体100の前側(先端側)の表面にガス導入口10が開口している。以下の説明においては、素子基体100の前側(先端側)の表面を、素子基体100の「先端面」と称することがある。保護層400は、少なくとも、素子基体100のガス導入口10が開口している面(図1の例では、素子基体100の先端面)を覆う。緩衝層300は、素子基体100のガス導入口10が開口している面において、一部が、素子基体100と保護層400との両方に接し、保護層400よりも気孔率が低い。ガス導入層200は、素子基体100と緩衝層300との間に配置され、ガス導入口10の少なくとも一部を覆い、また、保護層400に接する。ガス導入層200の気孔率は30%以上であり、また、ガス導入層200の気孔率は緩衝層300の気孔率よりも5%以上高い。以下、素子基体100、保護層400、緩衝層300、および、ガス導入層200について、各々の詳細を説明する。
【0021】
<素子基体>
図2は、ガスセンサ素子101の備える素子基体100の構成の一例を概略的に示す断面模式図である。素子基体100は、例えば、長手方向(軸方向)に沿って延びる細長な長尺の板状体形状を呈し、また、例えば、直方体状に形成される。図2に例示する素子基体100は、長手方向それぞれの端部として先端部及び後端部を有しており、以下の説明においては、先端部を図2の左側の端部(つまり、前側の端部)とし、後端部を図2の右側の端部(つまり、後側の端部)とする。しかしながら、素子基体100の形状は、このような例に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。なお、以下の説明においては、図2の紙面奥側を素子基体100の右側とし、紙面手前側を素子基体100の左側とする。
【0022】
図2に例示するように、素子基体100は、第1基板層1、第2基板層2、第3基板層3、第1固体電解質層4、スペーサ層5、及び第2固体電解質層6を下側から順に積層することで構成される積層体を備える。各層1-6は、ジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性を有する固体電解質層により構成される。各層1-6を形成する固体電解質は、緻密質なものであってよい。緻密質は、気孔率が5%以下であることを指す。
【0023】
素子基体100は、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに、所定の加工、配線パターンの印刷等の工程を実行した後にそれらを積層し、更に、焼成して一体化させることで製造される。一例として、素子基体100は、複数のセラミックス層の積層体である。本実施形態では、第2固体電解質層6の上面が、素子基体100の上面を構成し、第1基板層1の下面が、素子基体100の下面を構成し、各層1~6の各側面が、素子基体100の各側面を構成する。
【0024】
本実施形態では、素子基体100の一先端部であって、第2固体電解質層6の下面及び第1固体電解質層4の上面の間には、被測定ガスを外部の空間から受け入れるように構成される内部空間が設けられる。本実施形態に係る内部空間は、ガス導入口10、第1拡散律速部11、緩衝空間12、第2拡散律速部13、第1内部空所15、第3拡散律速部16、第2内部空所17、第4拡散律速部18、及び第3内部空所19が、この順に連通する態様にて隣接形成されるように構成される。すなわち、本実施形態に係る内部空間は、3室構造(第1内部空所15、第2内部空所17及び第3内部空所19)を有する。
【0025】
一例では、この内部空間は、スペーサ層5をくり抜いた態様にて設けられる。内部空間の上部は、第2固体電解質層6の下面で区画される。内部空間の下部は、第1固体電解質層4の上面で区画される。内部空間の側部は、スペーサ層5の側面で区画される。
【0026】
第1拡散律速部11は、2本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長辺方向を有する)スリットとして設けられる。また、第2拡散律速部13、第3拡散律速部16、及び第4拡散律速部18のそれぞれは、図面に垂直な方向に延びる長さが、第1内部空所20、第2内部空所40、及び3内部空所61のそれぞれよりも短い孔として設けられる。
【0027】
図2に例示するように、第2拡散律速部13および第3拡散律速部16は、いずれも、第1拡散律速部11と同様に、2本の横長(図面に垂直な方向に開口が長辺方向を有する)のスリットとして設けられてもよい。これに対して、第4拡散律速部18は、第2固体電解質層6の下面との隙間として形成された1本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられてもよい。すなわち、第4拡散律速部18は、第1固体電解質層4の上面に接していてもよい。第2拡散律速部13、第3拡散律速部16、及び第4拡散律速部18のそれぞれについては、後ほど詳細に説明する。ガス導入口10から第3内部空所19に至る部位(内部空間)を被測定ガス流通部7と称する。
【0028】
被測定ガス流通部7よりも先端側(素子基体100の前側)から遠い位置には、第3基板層3の上面及びスペーサ層5の下面の間であって、第1固体電解質層4の側面で側部を区画される位置に基準ガス導入空間43が設けられる。基準ガス導入空間43には、例えば、大気等の基準ガスが導入される。ただし、素子基体100の構成は、このような例に限定されなくてよい。他の一例として、第1固体電解質層4は、素子基体100の後端まで延びるように構成されてよく、基準ガス導入空間43は省略されてよい。この場合、大気導入層48が、素子基体100の後端まで延びるように構成されてよい。
【0029】
基準ガス導入空間43に隣接する第3基板層3の上面の一部には、大気導入層48が設けられる。大気導入層48は、多孔質アルミナから成り、基準ガス導入空間43を介して基準ガスが導入されるように構成される。加えて、大気導入層48は、基準電極42を被覆するように形成されている。
【0030】
基準電極42は、第3基板層3の上面及び第1固体電解質層4の間に挟まれるように形成され、その周囲には、上記基準ガス導入空間43に接続する大気導入層48が設けられている。基準電極42は、第1内部空所15内及び第2内部空所17内の酸素濃度(酸素分圧)の測定に使用される。詳細は後述する。
【0031】
ガス導入口10は、被測定ガス流通部7において、外部空間に対して開口してなる部位である。素子基体100は、当該ガス導入口10を通じて外部空間から内部に被測定ガスを取り込むように構成される。本実施形態では、図2に例示されるとおり、ガス導入口10は、素子基体100の先端面(前面)に配置される。つまり、被測定ガス流通部7は、素子基体100の先端面において開口を有するように構成される。ただし、被測定ガス流通部7が、素子基体100の先端面において開口を有するように構成されること、つまり、ガス導入口10を素子基体100の先端面に配置することは、必須ではない。素子基体100は、外部空間から被測定ガス流通部7の内部に被測定ガスを取り込むことができればよく、ガス導入口10を、例えば、素子基体100の右面に配置したり、左面に配置したりしてもよい。
【0032】
第1拡散律速部11は、ガス導入口10から取り込まれた被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
【0033】
緩衝空間12は、第1拡散律速部11より導入された被測定ガスを第2拡散律速部13へと導くために設けられた空間である。
【0034】
第2拡散律速部13は、緩衝空間12から第1内部空所15に導入される被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
【0035】
被測定ガスは、素子基体100の外部空間から第1内部空所15内まで導入されるにあたり、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によって、ガス導入口10から素子基体100内部に急激に取り込まれる場合がある。この場合であっても、当該構成では、取り込まれる被測定ガスは、直接第1内部空所15へ導入されるのではなく、第1拡散律速部11、緩衝空間12、第2拡散律速部13を通じて被測定ガスの濃度変動が打ち消された後、第1内部空所15へ導入される。これにより、第1内部空所15へ導入される被測定ガスの濃度変動はほとんど無視できる程度のものとなる。
【0036】
第1内部空所15は、第2拡散律速部13を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、主ポンプセル21が作動することによって調整される。
【0037】
主ポンプセル21は、内側ポンプ電極22、外側ポンプ電極23、及びこれらの電極に挟まれた第2固体電解質層6によって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。内側ポンプ電極22は、第1内部空所15に隣接する(面する)第2固体電解質層6の下面のほぼ全面に設けられる天井電極部22aを有する。外側ポンプ電極23は、第2固体電解質層6の上面の天井電極部22aに対応する領域に外部空間に隣接する態様にて設けられる。
【0038】
内側ポンプ電極22は、第1内部空所15を区画する上下の固体電解質層(第2固体電解質層6及び第1固体電解質層4)、及び側壁を与えるスペーサ層5にまたがって形成されている。具体的には、第1内部空所15の天井面を与える第2固体電解質層6の下面には天井電極部22aが形成され、また、底面を与える第1固体電解質層4の上面には底部電極部22bが形成される。そして、それら天井電極部22a及び底部電極部22bに接続するように、側部電極部(図示省略)が、第1内部空所15の両側壁部を構成するスペーサ層5の側壁面(内面)に形成されている。つまり、内側ポンプ電極22は、該側部電極部の配設部位においてトンネル形態の構造で配設されている。
【0039】
内側ポンプ電極22及び外側ポンプ電極23は、多孔質サーメット電極(例えば、Auを1%含むPt及びZrO2により構成されるサーメット電極)として形成される。なお、被測定ガスに接触する内側ポンプ電極22は、被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
【0040】
素子基体100は、主ポンプセル21において、内側ポンプ電極22及び外側ポンプ電極23の間に所望のポンプ電圧Vp0を印加して、内側ポンプ電極22及び外側ポンプ電極23の間に正方向又は負方向にポンプ電流Ip0を流すことにより、第1内部空所15内の酸素を外部空間に汲み出し、又は外部空間の酸素を第1内部空所15に汲み入れ可能に構成される。
【0041】
また、第1内部空所15における雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出するために、内側ポンプ電極22、第2固体電解質層6、スペーサ層5、第1固体電解質層4、第3基板層3、及び基準電極42により、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80(すなわち、電気化学的なセンサセル)が構成されている。
【0042】
素子基体100は、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80における起電力V0を測定することで第1内部空所15内の酸素濃度(酸素分圧)を特定可能に構成される。更に、起電力V0が一定となるようにVp0をフィードバック制御することでポンプ電流Ip0が制御されている。これにより、第1内部空所15内の酸素濃度は所定の一定値に保つことができる。
【0043】
第3拡散律速部16は、第1内部空所15で主ポンプセル21の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第2内部空所17に導く部位である。
【0044】
第2内部空所17は、第3拡散律速部16を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を更に調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、補助ポンプセル50が作動することによって調整される。
【0045】
補助ポンプセル50は、補助ポンプ電極51、外側ポンプ電極23(外側ポンプ電極23に限られるものではなく、素子基体100の外側の適当な電極であれば足りる)、及び第2固体電解質層6により構成される補助的な電気化学的ポンプセルである。補助ポンプ電極51は、第2内部空所17に面する第2固体電解質層6の下面の略全体に設けられた天井電極部51aを有する。
【0046】
係る補助ポンプ電極51は、先の第1内部空所15内に設けられた内側ポンプ電極22と同様なトンネル形態の構造で、第2内部空所17内に配設されている。つまり、第2内部空所17の天井面を与える第2固体電解質層6の下面に対して天井電極部51aが形成され、また、第2内部空所17の底面を与える第1固体電解質層4の上面には、底部電極部51bが形成される。そして、それらの天井電極部51aと底部電極部51bとを連結する側部電極部(図示省略)が、第2内部空所17の側壁を与えるスペーサ層5の両壁面にそれぞれ形成される。これにより、補助ポンプ電極51は、トンネル形態の構造を有している。
【0047】
なお、補助ポンプ電極51も、内側ポンプ電極22と同様に、被測定ガス中の窒素酸化物成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
【0048】
素子基体100は、補助ポンプセル50において、補助ポンプ電極51及び外側ポンプ電極23の間に所望の電圧Vp1を印加することにより、第2内部空所17内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、又は外部空間から第2内部空所17内に汲み入れ可能に構成される。
【0049】
また、第2内部空所17内における雰囲気中の酸素分圧を制御するために、補助ポンプ電極51、基準電極42、第2固体電解質層6、スペーサ層5、第1固体電解質層4、及び第3基板層3により、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81(すなわち、電気化学的なセンサセル)が構成されている。
【0050】
なお、この補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81にて検出される起電力V1に基づいて電圧制御される可変電源52にて、補助ポンプセル50がポンピングを行う。これにより、第2内部空所17内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御されるようになっている。
【0051】
また、これと共に、そのポンプ電流Ip1が、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80の起電力の制御に用いられるようになっている。具体的には、ポンプ電流Ip1は、制御信号として主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80に入力され、その起電力V0が制御されることにより、第3拡散律速部16から第2内部空所17内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。NOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル21と補助ポンプセル50との働きによって、第2内部空所17内での酸素濃度は約0.001ppm程度の一定の値に保たれる。
【0052】
第4拡散律速部18は、第2内部空所17で補助ポンプセル50の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第3内部空所19に導く部位である。
【0053】
第3内部空所19は、第4拡散律速部18を通じて導入された被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度の測定に係る処理を行うための空間として設けられている。NOx濃度は、測定用ポンプセル41の動作により測定される。本実施形態では、第1内部空所15において酸素濃度(酸素分圧)が予め調整された後、第2内部空所17において、第3拡散律速部を通じて導入された被測定ガスに対して、補助ポンプセル50による酸素分圧の調整が更に行われる。これにより、第2内部空所17から第3内部空所19に導入される被測定ガスの酸素濃度を高精度に一定に保つことができる。そのため、本実施形態に係る素子基体100は、精度の高いNOx濃度の測定が可能となる。
【0054】
測定用ポンプセル41は、第3内部空所19内において、被測定ガス中の窒素酸化物濃度の測定を行う。測定用ポンプセル41は、測定電極44、外側ポンプ電極23、第2固体電解質層6、スペーサ層5、及び第1固体電解質層4により構成される電気化学的ポンプセルである。図2の一例では、測定電極44は、第3内部空所19に隣接する(面する)第1固体電解質層4の上面に設けられる。
【0055】
測定電極44は、多孔質サーメット電極である。測定電極44は、第3内部空所19内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。図2の一例では、測定電極44は、第3内部空所19内で露出している。他の一例では、測定電極44は、拡散律速部により被覆されていてよい。該拡散律速部は、アルミナ(Al23)を主成分とする多孔体の膜により構成されてよい。該拡散律速部は、測定電極44に流入するNOxの量を制限する役割を担うと共に、測定電極44の保護膜としても作用する。
【0056】
素子基体100は、測定用ポンプセル41において、測定電極44の周囲の雰囲気中における窒素酸化物の分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量をポンプ電流Ip2として検出可能に構成される。
【0057】
また、測定電極44の周囲の酸素分圧を検出するために、第2固体電解質層6、スペーサ層5、第1固体電解質層4、第3基板層3、測定電極44、及び基準電極42により、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82(すなわち、電気化学的なセンサセル)が構成されている。測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出される電圧(起電力)V2に基づいて可変電源46が制御される。
【0058】
第3内部空所19内に導かれた被測定ガスは、酸素分圧が制御された状況下で測定電極44に到達することとなる。測定電極44の周囲の被測定ガス中の窒素酸化物は還元されて(2NO→N2+O2)酸素を発生する。そして、この発生した酸素は測定用ポンプセル41によってポンピングされることとなるが、その際、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出される制御電圧V2が一定となるように可変電源の電圧Vp2が制御される。測定電極44の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に比例するものであるから、測定用ポンプセル41におけるポンプ電流Ip2を用いて被測定ガス中の窒素酸化物濃度が算出されることとなる。
【0059】
また、測定電極44、第1固体電解質層4、第3基板層3、及び基準電極42を組み合わせて、電気化学的センサセルとして酸素分圧検出手段を構成するようにすることで、測定電極44の周りの雰囲気中のNOx成分の還元によって発生した酸素の量と基準大気に含まれる酸素の量との差に応じた起電力を検出することができる。これにより、被測定ガス中の窒素酸化物成分の濃度を求めることも可能である。
【0060】
また、第2固体電解質層6、スペーサ層5、第1固体電解質層4、第3基板層3、外側ポンプ電極23、及び基準電極42から電気化学的なセンサセル83が構成されている。素子基体100は、このセンサセル83によって得られる起電力Vrefによりセンサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出可能に構成されている。
【0061】
以上の構成を有する素子基体100において、主ポンプセル21及び補助ポンプセル50を作動させることにより、酸素分圧が常に一定の低い値(NOxの測定に実質的に影響がない値)に保たれた被測定ガスを測定用ポンプセル41に与えることができる。したがって、素子基体100は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に略比例して、NOxの還元によって発生する酸素が測定用ポンプセル41より汲み出されることで流れるポンプ電流Ip2に基づいて、被測定ガス中の窒素酸化物濃度を特定可能に構成されている。
【0062】
更に、素子基体100は、固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、素子基体100を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ70を備えている。図2の一例では、ヒータ70は、ヒータ電極71、発熱部72、リード部73、ヒータ絶縁層74、及び圧力放散孔75を備えている。リード部73は、スルーホールにより構成されてよい。
【0063】
本実施形態では、ヒータ70は、素子基体100の厚み方向(鉛直方向/積層方向)において、素子基体100の上面よりも素子基体100の下面に近い位置に配置されている。ただし、ヒータ70の配置は、このような例に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0064】
ヒータ電極71は、第1基板層1の下面(素子基体100の下面)に接する態様にて形成されてなる電極である。ヒータ電極71を外部電源と接続することにより、外部からヒータ70へ給電することができるようになっている。
【0065】
発熱部72は、第2基板層2及び第3基板層3に上下から挟まれた態様にて形成される電気抵抗体である。発熱部72は、リード部73を介してヒータ電極71と接続されており、該ヒータ電極71を通して外部より給電されることにより発熱し、素子基体100を形成する固体電解質の加熱と保温を行う。
【0066】
また、発熱部72は、第1内部空所15から第2内部空所17の全域に渡って埋設されており、素子基体100全体を上記固体電解質が活性化する温度に調整することが可能となっている。
【0067】
ヒータ絶縁層74は、発熱部72の上下面に、アルミナ等の絶縁体によって形成されてなる絶縁層である。ヒータ絶縁層74は、第2基板層2及び発熱部72の間の電気的絶縁性、並びに第3基板層3及び発熱部72の間の電気的絶縁性を得る目的で形成されている。
【0068】
圧力放散孔75は、第3基板層3を貫通し、基準ガス導入空間43に連通するように設けられてなる部位であり、ヒータ絶縁層74内の温度上昇に伴う内圧上昇を緩和する目的で形成されてなる。
【0069】
<保護層>
ガスセンサ素子101において、保護層400は、少なくとも、素子基体100のガス導入口10が開口している面を覆う。図1に例示する保護層400は、素子基体100の、被測定ガスを導入するガス導入口10が備わる側の端部を覆っている。具体的には、素子基体100の前側(先端側)の所定範囲において、素子基体100のガス導入口10が開口している面(先端面)と4つの側面とを被覆している。
【0070】
保護層400は、素子基体100のいわゆる被水割れの防止を主たる目的として、耐被水性を有するように設けられてなる。被水割れは、使用中の素子基体100に水滴が付着したときに(例えば、排ガス中の水蒸気が凝縮し、水滴となる)、割れが生じることをいう。素子基体100は、ヒータ70にて高温に加熱されているため、水滴の付着によって熱衝撃が発生する。この結果、ガスセンサ素子101、特に素子基体100にクラックが生じる(素子基体100が割れる)可能性がある。
【0071】
そのため、保護層400は、素子基体100の全体ではなく、水滴が付着する可能性のある、端部(例えば先端部)から所定範囲に設ければ足りる。保護層400は、例えば、先端から素子長手方向に12mm~14mm程度の範囲に形成されてもよい。図1に例示するガスセンサ素子101において、保護層400は、素子基体100の先端部の全体、および、素子基体100の側面の一部(素子長手方向の所定範囲)を被覆している。つまり、図1に例示するガスセンサ素子101において、素子基体100の先端部から所定範囲の最外周部に、保護層400が設けられている。
【0072】
保護層400は、多孔質体からなり、例えば、気孔率が30%から60%の高気孔率多孔質体からなっていてもよい。特に、保護層400の気孔率は、15%~60%程度が好適である。作製の容易さおよび均一性、さらにはガス導入口10から素子基体100内部への被測定ガスの取り込みに影響を与えないためである。しかし、被水割れが好適に抑制され、ガスセンサ素子101の応答性に影響を及ぼさないなら、当該範囲外でもよい。
【0073】
図1には、単層構造の保護層400を例示したが、保護層400は、複数の層からなっていてもよく、例えば、二層構造としてもよい。保護層400を単層構造とする場合、保護層400は、例えば、純度99.0%以上のアルミナからなる多孔質層としてもよい。
【0074】
保護層400は、例えば、200μm以上、1800μm以下の厚みを有する。厚みが200μmよりも小さいと、保護層400自体の強度が十分には確保されず、また、保護層400中の気孔が繋がって、保護層400を貫通し、被測定ガス中の水蒸気が素子基体100に到達するおそれもある。
【0075】
一方、保護層400の厚みが1800μmより大きいと、被測定ガスが保護層400を通過してガス導入口10に到達しづらくなり、ガスセンサ素子101の応答性が悪くなり、また、コスト面からも不利となる。
【0076】
<緩衝層>
ガスセンサ素子101において、緩衝層300は、素子基体100と保護層400との間に配置され、素子基体100のガス導入口10が開口している面において、一部が、素子基体100と保護層400との両方に接する。図1に例示するガスセンサ素子101において、素子基体100の端部(先端部)から所定範囲の最外周部に保護層400が設けられ、素子基体100と保護層400との間に、緩衝層300が介在している。具体的には、図1に例示する緩衝層300は、先端緩衝層300aと、側面緩衝層300bとを含んでいる。先端緩衝層300aは、素子基体100の先端部(先端面)の全体を被覆する保護層400と素子基体100の先端部(先端面)との間に介在している。側面緩衝層300bは、素子基体100の側面の一部(素子長手方向の所定範囲)を被覆している保護層400と素子基体100の側面の一部との間に介在している。
【0077】
緩衝層300の気孔率は保護層400の気孔率よりも低く、特に、緩衝層300の気孔率は、30%未満とすることが望ましい。本件発明者は、緩衝層300の気孔率を30%以上とすると、緩衝層300の役割を果たさない(破損しやすい)ことを、後述する応答性および耐被水性に係る試験により確認した。例えば、緩衝層300の気孔率は10%~20%である。
【0078】
緩衝層300は、保護層400が素子基体100から剥離するのを防止することを主たる目的として設けられる。緩衝層300は、例えば、保護層400を構成するアルミナと素子基体100を構成するジルコニアとの熱膨張率の差に起因して、ガスセンサ素子101の使用時に保護層400に剥離、破壊等が生じることを防ぐ目的で、設けられてなる。緩衝層300は、その上に形成される保護層400との接着性(密着性)を確保する。
【0079】
素子基体100と保護層400との熱膨張差の緩和のためには、保護層400に対応させて、緩衝層300を形成すればよい。図1に例示するガスセンサ素子101において、先端緩衝層300aは、素子基体100の先端部の全体を被覆する保護層400に対応させて、素子基体100の先端部(先端面)の少なくとも一部を被覆するように形成されている。また、側面緩衝層300bは、素子基体100の側面の一部を被覆している保護層400に対応させて、素子基体100の側面の一部を被覆するように形成されている。ただし、例えば、緩衝層300は、素子基体100の表面に、保護層400の存在する範囲よりもわずかに広い範囲に形成されてもよい。
【0080】
<ガス導入層200>
ガスセンサ素子101において、ガス導入層200は、素子基体100と緩衝層300との間に配置され、ガス導入口10の少なくとも一部を覆い、保護層400に接している。ガス導入層200は、被測定ガスを保護層400から素子基体100のガス導入口10へと導く流路であり、言い換えれば、被測定ガスを保護層400から素子基体100の内部(具体的には、被測定ガス流通部7)へと導く流路である。
【0081】
ガス導入層200は保護層400に接しており、図1に例示するガスセンサ素子101において、ガス導入層200は、素子基体100の先端面の上辺において(上辺の側で)、保護層400に接している。
【0082】
図1に示す例では、ガスセンサ素子101において、ガス導入口10は、素子基体100のガス導入口10が開口している面(図1の例では先端面)の上方に設けられている。そのため、素子基体100のガス導入口10が開口している面(先端面)を囲む辺の内、ガス導入口10までの距離が最も短い辺は、先端面の上辺となっている。それ故、図1に例示するガス導入層200は、素子基体100のガス導入口10が開口している面を囲む辺のうち、ガス導入口10までの距離が最も短い辺において、保護層400に接していることになる。
【0083】
ガス導入層200が、素子基体100のガス導入口10が開口している面を囲む辺のうち、ガス導入口10までの距離が最も短い辺において、保護層400に接するとの構成を備えることで、ガスセンサ素子101は、以下の効果を奏する。すなわち、上述の構成を備えるガスセンサ素子101において、被測定ガスを保護層400からガス導入口10へと導く流路として、ガス導入層200は、少なくとも、保護層400とガス導入口10との間を、最短の経路で、結んでいる。そのため、ガス導入層200は、必要かつ十分な量の被測定ガスを、保護層400からガス導入口10へと導くことができる。
【0084】
ただし、ガス導入層200が、素子基体100のガス導入口10が開口している面を囲む辺のうち、ガス導入口10までの距離が最も短い辺において、保護層400に接していることは必須ではない。前述の通り、ガスセンサ素子101は、ガス導入層200によって、被測定ガスを保護層400からガス導入口10へと導く流路を確保できればよく、ガス導入層200は、ガス導入口10の少なくとも一部を覆って、保護層400に接していればよい。ガス導入層200が保護層400に接する位置は、特に限定されるものではない。
【0085】
図1に例示するガス導入層200は、素子基体100のガス導入口10が開口している面(図1の例では先端面)において、ガス導入口10の全体を覆って、さらに、ガス導入口10よりも下側に延びている。すなわち、ガス導入層200は、ガス導入口10よりも、素子基体100の、ガス導入口10が開口している面(先端面)を囲む辺のうち、ガス導入口10までの距離が最も短い辺(図1の例では上辺)に対向する辺(図1の例では下辺)の側に、延びている。
【0086】
ガス導入層200が、素子基体100のガス導入口10が開口している面において、ガス導入口10の全体を覆って、さらに、ガス導入口10よりも下側に延びているとの構成を備えることで、ガスセンサ素子101は、以下の効果を奏する。すなわち、上述の構成を備えるガスセンサ素子101は、異物、被毒物質などがガス導入口10から素子基体100の内部(具体的には、被測定ガス流通部7)へと入り込むのを、ガス導入層200によって防ぐことができる。
【0087】
また、上述の構成を備えるガスセンサ素子101は、ガス導入層200の、ガス導入口10よりも下側に延びている部分に、異物、被毒物質などを蓄積させやすい。言い換えれば、ガスセンサ素子101は、ガス導入層200の「素子基体100の、ガス導入口10が開口している面を囲む辺のうち、ガス導入口10までの距離が最も短い辺に対向する辺の側に、延びている」部分に、異物、被毒物質などを蓄積させやすい。そのため、異物、被毒物質などが及ぼす悪影響から、ガスセンサ素子101(特に、素子基体100)を保護することができる。
【0088】
ただし、ガス導入層200が、素子基体100のガス導入口10が開口している面において、ガス導入口10の全体を覆っていることは必須ではないし、ガス導入口10よりも下側に延びていることも必須ではない。ガスセンサ素子101は、ガス導入層200によって、被測定ガスを保護層400からガス導入口10へと導く流路を確保できればよく、ガス導入層200は、保護層400に接してガス導入口10の少なくとも一部を覆っていればよい。
【0089】
ガス導入層200の気孔率は、30%以上であり、かつ、緩衝層300の気孔率よりも5%以上高い。ガス導入層200の気孔率を30%以上とすることにより、ガス導入層200によって必要十分な被測定ガスを保護層400からガス導入口10へと導くことができる。また、被測定ガスが、緩衝層300ではなく、ガス導入層200を選択的に流れるように、ガス導入層200の気孔率は、緩衝層300の気孔率よりも5%以上高くした。
【0090】
ここで、特に、ガス導入層200の気孔率は、45%以上、60%以下とするのが望ましいことを、本件発明者は試験により確認した。具体的には、ガス導入層200の面積(特に、ガス導入層200の、素子基体100のガス導入口10が開口している面に接する面の面積)が同様であっても、ガス導入層200の気孔率が高い方が、ガスセンサ素子の応答性が良好となることを試験により確認した。ガスセンサ素子101は、気孔率が45%以上、60%以下であるガス導入層200によって、被測定ガスを保護層400から素子基体100のガス導入口10へと導く流路を必要かつ十分に確保することができる。
【0091】
図3は、図1に示すガスセンサ素子101のII-II線矢視断面の一例を示す図である。図3に示す例では、ガス導入層200の面積、特に、ガス導入層200の、素子基体100のガス導入口10が開口している面(例えば、素子基体100の先端面)に接する面の面積は、素子基体100の先端面の半分程度となっている。すなわち、図3に示すように、ガスセンサ素子101において、素子基体100のガス導入口10が開口している面は、その約半分がガス導入層200に接し、残りの約半分は、緩衝層300(特に、先端緩衝層300a)に接している。
【0092】
素子基体100のガス導入口10が開口している面の約半分と接する緩衝層300(特に、先端緩衝層300a)は、保護層400が、素子基体100のガス導入口10が開口している面から剥離するのを防止している。
【0093】
また、素子基体100のガス導入口10が開口している面の約半分と接するガス導入層200は、さらに、素子基体100のガス導入口10が開口している面(先端面)の上辺、右辺の一部、および、左辺の一部に対応する位置において、保護層400に接している。そのため、図3に例示するように、ガスセンサ素子101においてガス導入層200は、保護層400と接する上方向、右方向、および、左方向の各々から、ガス導入口10へと、被測定ガスを流す(導く)ことができる。このようにして、ガスセンサ素子101は、ガス導入層200によって、必要かつ十分な被測定ガスを、保護層400からガス導入口10へと導くことができる。
【0094】
本件発明者は、試験により、ガス導入層200の面積について、具体的には、ガス導入層200の、素子基体100のガス導入口10が開口している面(先端面)に接する面の面積について、以下の知見を得た。すなわち、本件発明者は、試験により、素子基体100において、ガス導入層200の面積は、素子基体100のガス導入口10が開口している面の面積の0.2倍以上、0.8倍以下とするのが望ましいとの知見を得た。
【0095】
ガスセンサ素子101は、素子基体100のガス導入口10が開口している面の面積の0.2倍以上、0.8倍以下の面積を有するガス導入層200によって、被測定ガスを保護層400から素子基体100のガス導入口10へと導く流路を必要かつ十分に確保することができる。
【0096】
[特徴]
以上のとおり、本実施形態に係るガスセンサ素子101は、表面に開口したガス導入口10から被測定ガスが被測定ガス流通部7(内部空間)へと導入される素子基体100と、保護層400と、緩衝層300と、ガス導入層200とを備える。保護層400は、少なくとも、素子基体100のガス導入口10が開口している面を覆うように構成され、1層または複数の層から成る。緩衝層300は、素子基体100と保護層400との間に配置され、素子基体100のガス導入口10が開口している面において、一部が、素子基体100と保護層400との両方に接し、保護層400よりも気孔率が低い。ガス導入層200は、素子基体100と緩衝層300との間に配置され、ガス導入口10の少なくとも一部を覆い、保護層400に接し、かつ、気孔率が、30%以上であって、緩衝層300の気孔率よりも5%以上高い。
【0097】
当該構成では、緩衝層300によって保護層400が素子基体100から剥離するのを防ぎつつ、ガス導入層200によって、被測定ガスを保護層400からガス導入口10へと導く流路を確保する。特に、ガス導入層200の気孔率を30%以上とすることにより、ガス導入層200によって必要十分な被測定ガスを保護層400からガス導入口10へと導くことができる。また、ガス導入層200の気孔率を、緩衝層300の気孔率よりも5%以上高くすることにより、被測定ガスは、緩衝層300ではなく、ガス導入層200を選択的に流れるようになる。したがって、ガスセンサ素子101は、保護層400によってガス導入口10を覆いつつ、被測定ガスを保護層400からガス導入口10へと導く流路を確保するガス導入層200によって、応答性の低下を防ぐことができる。
【0098】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、前述までの実施形態の説明は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。上記実施形態には、種々の改良及び変形が行われてよい。上記実施形態の各構成要素に関して、適宜、構成要素の省略、置換及び追加が行われてもよい。また、上記実施形態の各構成要素の形状及び寸法は、実施の形態に応じて適宜変更されてよい。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0099】
(I)ガス導入層の面積
これまで、ガス導入層200の面積、特に、ガス導入層200の、素子基体100のガス導入口10が開口している面(先端面)に接する面の面積が、素子基体100の先端面の面積の半分程度である例を、図3を用いて説明した。しかしながら、ガス導入層200の面積が、素子基体100のガス導入口10が開口している面の面積の半分程度であることは必須ではない。
【0100】
図4は、変形例に係るガスセンサ素子102について、図3と同様の矢視断面の一例を示す図である。ガスセンサ素子102において、ガス導入層200の面積、特に、ガス導入層200の、素子基体100のガス導入口10が開口している面(先端面)に接する面の面積は、素子基体100の先端面の面積の0.2倍となっている。すなわち、図4に示すように、ガスセンサ素子102において、素子基体100のガス導入口10が開口している面は、その全面積の2割に当たる部分がガス導入層200に接し、残りの8割の部分は、緩衝層300(特に、先端緩衝層300a)に接している。
【0101】
素子基体100のガス導入口10が開口している面の全面積の8割に当たる部分と接する緩衝層300(特に、先端緩衝層300a)は、保護層400が、素子基体100のガス導入口10が開口している面から剥離するのを防止している。
【0102】
特に、図4に例示するガスセンサ素子102において、素子基体100のガス導入口10が開口している面と保護層400との両方に接する緩衝層300(特に、先端緩衝層300a)の面積は、図3に例示したガスセンサ素子101の緩衝層300の面積より広い。そのため、ガスセンサ素子102の緩衝層300(特に、先端緩衝層300a)は、ガスセンサ素子101の先端緩衝層300aに比べて、保護層400が、素子基体100のガス導入口10が開口している面から剥離するのを防止する効果がより高い。
【0103】
また、素子基体100のガス導入口10が開口している面の全面積の2割に当たる部分と接するガス導入層200は、さらに、素子基体100のガス導入口10が開口している面の上辺に対応する位置において、保護層400に接している。そのため、図4に例示するように、ガスセンサ素子102においてガス導入層200は、保護層400と接する上方向から、ガス導入口10へと、被測定ガスを流す(導く)ことができる。
【0104】
ここで、図4に例示するガス導入層200が保護層400からガス導入口10へと流す(導く)ことのできる被測定ガスの量は、図3に例示するガス導入層200が保護層400からガス導入口10へと導くことのできる被測定ガスの量に比べれば、少ない。
【0105】
本件発明者は、NOx濃度の計測に必要な量の被測定ガスを保護層400からガス導入口10へと導くのには、素子基体100のガス導入口10が開口している面に接するガス導入層200の面積をどの程度確保すべきかについて、検討を重ねた。具体的には、試験を行なって、濃度計測に必要な量の被測定ガスを保護層400からガス導入口10へと導くために確保すべき「ガス導入層200の面積」について、検討を重ねた。その結果、濃度計測に必要な量の被測定ガスを保護層400からガス導入口10へと導くためには、素子基体100のガス導入口10が開口している面に接するガス導入層200の面積を、素子基体100のガス導入口10が開口している面の面積の0.2倍以上とすべきであることを確認した。ガス導入層200の、素子基体100のガス導入口10が開口している面に接する面の面積を、素子基体100のガス導入口10が開口している面の面積の0.2倍以上とすることで、必要な被測定ガスを、保護層400からガス導入口10へと導くことができる。
【0106】
上述の通り、ガスセンサ素子102において、ガス導入層200の面積は、素子基体100のガス導入口10が開口している面(素子基体100の先端面)の面積の0.2倍である。そのため、図4に例示するガス導入層200によっても、必要な被測定ガスを、保護層400からガス導入口10へと導くことができる。
【0107】
図5は、変形例に係るガスセンサ素子103について、図4と同様の矢視断面の一例を示す図である。ガス導入層の面積が先端面の面積の0.8倍の例を示す。ガスセンサ素子103において、ガス導入層200の面積、特に、ガス導入層200の、素子基体100のガス導入口10が開口している面(先端面)に接する面の面積は、素子基体100の先端面の面積の0.8倍となっている。すなわち、図5に示すように、ガスセンサ素子103において、素子基体100のガス導入口10が開口している面は、その全面積の8割に当たる部分がガス導入層200に接し、残りの2割の部分は、緩衝層300(特に、先端緩衝層300a)に接している。
【0108】
素子基体100のガス導入口10が開口している面の全面積の2割に当たる部分と接する緩衝層300(特に、先端緩衝層300a)は、保護層400が、素子基体100のガス導入口10が開口している面から剥離するのを防止している。
【0109】
ここで、図5に例示するガスセンサ素子103において、素子基体100のガス導入口10が開口している面と保護層400との両方に接する緩衝層300(特に、先端緩衝層300a)の面積は、図3に例示したガスセンサ素子101の緩衝層300の面積より狭い。そのため、ガスセンサ素子103の緩衝層300(特に、先端緩衝層300a)は、ガスセンサ素子101の先端緩衝層300aに比べて、保護層400が、素子基体100のガス導入口10が開口している面から剥離するのを防止する効果がより低い。
【0110】
本件発明者は、保護層400が、素子基体100のガス導入口10が開口している面から剥離するのを防止するには、素子基体100のガス導入口10が開口している面に接する先端緩衝層300aの面積をどの程度確保すべきかについて、検討を重ねた。言い換えれば、保護層400が、素子基体100のガス導入口10が開口している面から剥離するのを防止するには、素子基体100のガス導入口10が開口している面に接するガス導入層200の面積をどの程度に抑えるべきかについて、検討を重ねた。
【0111】
その結果、保護層400が、素子基体100のガス導入口10が開口している面から剥離するのを防止するには、素子基体100のガス導入口10が開口している面に接する先端緩衝層300aの面積を、素子基体100のガス導入口10が開口している面の面積の0.2倍以上とすべきであることを確認した。つまり、保護層400が、素子基体100のガス導入口10が開口している面から剥離するのを防止するには、素子基体100のガス導入口10が開口している面に接するガス導入層200の面積を、素子基体100のガス導入口10が開口している面の面積の0.8倍以下とすべきであることを確認した。ガス導入層200の、素子基体100のガス導入口10が開口している面に接する面の面積を、素子基体100のガス導入口10が開口している面の面積の0.8倍以下とすることで、先端緩衝層300aによって、保護層400が、素子基体100のガス導入口10が開口している面から剥離するのを防止することができる。
【0112】
また、素子基体100のガス導入口10が開口している面の全面積の8割に当たる部分と接するガス導入層200は、さらに、素子基体100のガス導入口10が開口している面の上辺、右辺の一部、および、左辺の一部に対応する位置において、保護層400に接している。そのため、図5に例示するように、ガスセンサ素子103においてガス導入層200は、保護層400と接する上方向、右方向、および、左方向の各々から、ガス導入口10へと、被測定ガスを流す(導く)ことができる。
【0113】
特に、図5に例示するガス導入層200が保護層400からガス導入口10へと流す(導く)ことのできる被測定ガスの量は、図3に例示するガス導入層200が保護層400からガス導入口10へと導くことのできる被測定ガスの量に比べて多い。そのため、図5に例示するガスセンサ素子103は、図3に例示するガスセンサ素子101と比較して、応答性をさらに向上させることができていると予想される。本件発明者は、後述する応答性および耐被水性に係る試験により、この傾向を確認することができた。
【0114】
これまでに説明してきた通り、ガスセンサ素子103において、ガス導入層200の面積は、素子基体100のガス導入口10が開口している面(素子基体100の先端面)の面積の0.8倍である。そのため、図5に例示するガス導入層200は、緩衝層300(先端緩衝層300a)によって、保護層400が、素子基体100のガス導入口10が開口している面から剥離するのを防止しつつ、十分な量の被測定ガスを、保護層400からガス導入口10へと導くことができる。
【0115】
図4および図5を用いて説明してきたように、ガス導入層200の(素子基体100のガス導入口10が開口している面に接する面の)面積は、素子基体100のガス導入口10が開口している面の面積の0.2倍以上、0.8倍以下とするのが望ましい。
【0116】
当該構成により、緩衝層300(先端緩衝層300a)によって、保護層400が、素子基体100のガス導入口10が開口している面から剥離するのを防止しつつ、被測定ガスを保護層400から素子基体100のガス導入口10へと導く流路を必要かつ十分に確保することができる。
【0117】
(II)ガス導入層が内部空所にまで入り込んでいる
これまで、ガス導入層200によって、被測定ガスを保護層400からガス導入口10へと導く流路を確保できるよう、ガス導入層200が、保護層400に接してガス導入口10の少なくとも一部を覆っている例を説明してきた。しかしながら、ガス導入層200は、保護層400に接してガス導入口10の少なくとも一部を覆うだけでなく、さらに、ガス導入口10から素子基体100の内部(具体的には、被測定ガス流通部7)にまで入り込んでいてもよい。
【0118】
図6は、変形例に係るガスセンサ素子104の構成の一例を概略的に示す断面模式図である。図6に例示するように、ガスセンサ素子104においてガス導入層200は、被測定ガス流通部7の内部へと入り込んでいる。ガスセンサ素子104においてガス導入層200は、ガス導入口10から被測定ガス流通部7にまで入り込んでおり、例えば、第1拡散律速部11の手前まで入り込んでいる。
【0119】
<特徴>
本変形例によれば、ガス導入層200は、ガス導入口10から被測定ガス流通部7(素子基体100の内部空間)へと入り込んでいる。当該構成によって、ガス導入層200は、異物、被毒物質などがガス導入口10から被測定ガス流通部7へと入り込むのを防ぐことができる。
【0120】
ただし、ガスセンサ素子の応答性の低下を防ぐとの観点から言えば、ガス導入層200が、被測定ガス流通部7(素子基体100の内部空間)にまで入り込んでいることは必須ではない。前述の通り、ガスセンサ素子の応答性の低下を防ぐとの観点から言えば、ガス導入層200は、ガス導入口10の少なくとも一部を覆っていればよい。
【0121】
(III)その他
上記実施形態では、ガスセンサ素子101の積層体は、6層の固体電解質層により構成されている。しかしながら、積層体を構成する固体電解質層の数は、このような例に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0122】
また、上記実施形態では、被測定ガスを導入する内部空間(すなわち、被測定ガス流通部7)は、第1固体電解質層4、スペーサ層5、及び第2固体電解質層6により区画される位置に設けられる。しかしながら、被測定ガス流通部7の配置は、このような例に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。第1面、第2面、第1ポンプ電極、第2ポンプ電極、第1リード、及び第2リードの配置は、積層体及び内部空間の構成に応じて適宜選択されてよい。また、ガス導入口10を、素子基体100のガス導入口10が開口している面の上方に設けることも必須ではなく、素子基体100のガス導入口10が開口している面において、ガス導入口10を設ける位置は、適宜選択されてよい。そもそも、ガス導入口10を、素子基体100のガス導入口10が開口している面に設けることも必須ではなく、ガス導入口10は、素子基体100の表面の適当な位置に、1つ以上設ければよい。
【0123】
また、上記実施形態では、被測定ガス流通部7は、3室構造を有するように構成されている。しかしながら、被測定ガス流通部7の構成は、このような例に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。他の一例では、第4拡散律速部18及び第3内部空所19が省略されてよく、これにより、被測定ガス流通部7は、2室構造を有するように構成されてよい。この場合、測定電極44は、第2内部空所17に隣接する第1固体電解質層4の上面における、第3拡散律速部16から離れた位置に設けられてよい。すなわち、被測定ガス流通部7は、酸素の汲み出しまたは汲み入れが行なわれる空室を2つ含んでもよいし、1つだけ含んでいてもよい。また、ガスセンサ素子101にとって、1つ以上の拡散律速部を備えることも必須ではない。
【0124】
また、図2では、内側ポンプ電極22及び外側ポンプ電極23は共に空間に対して露出している。しかしながら、空間に隣接することは、このような形態に限定されなくてよく、被覆等を介して間接的に隣接してもよい。他の一例として、外側ポンプ電極23は、保護部材等によって被覆されていてよい。
【0125】
また、上記実施形態では、基準ガス導入空間43が設けられている。しかしながら、ガスセンサ素子101の構成は、このような例に限定されなくてよい。他の一例では、第1固体電解質層4は、ガスセンサ素子101の後端まで延びるように構成されてよく、基準ガス導入空間43は省略されてよい。この場合、大気導入層48が、ガスセンサ素子101の後端まで延びるように構成されてよい。
【0126】
また、上記実施形態では、ガスセンサ素子101は、窒素酸化物(NOx)の濃度を測定するように構成されている。しかしながら、本発明のガスセンサ素子は、このようなNOxの濃度を測定するように構成されるガスセンサ素子に限られなくてよい。他の一例では、本発明のガスセンサ素子は、例えば、酸素の濃度を測定するように構成されたガスセンサ素子等の他のガスセンサ素子であってよい。例えば、上記実施形態に係るガスセンサ素子101について、補助ポンプセル、測定ポンプセルを省略し、基準電極を主ポンプ電極の下に配置することで、酸素濃度を測定するためのガスセンサ素子を構成することができる。この場合、ガスセンサ素子は、主ポンプセルにより酸素を汲み出すことで、被測定ガス中の酸素濃度を測定することができる。
【0127】
[実施例(応答性および耐被水性に係る試験)]
本発明の効果(特に、応答性および耐被水性)を検証するため、以下の実施例及び比較例に係るガスセンサ素子を作製した。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0128】
ガスセンサ素子の構成に上記図1に示される構成を採用し、実施例1~実施例6、比較例4~6に係るガスセンサ素子を作製した。また、比較例1~3は、ガス導入層200を備えない従来のガスセンサ素子である。特に、比較例3は、ガス導入層200も緩衝層300も備えないガスセンサ素子である。ガス導入層200を備えない点を除いて、比較例1および比較例2は、これまでに説明してきたガスセンサ素子101(例えば、図1のガスセンサ素子101)と同様の構造を備える。すなわち、実施例1~実施例6、および、比較例4~6と、比較例1および比較例2との違いは、ガス導入層200を備えるか否かである。また、ガス導入層200も緩衝層300も備えない点を除いて、比較例1および比較例2は、これまでに説明してきたガスセンサ素子101と同様の構造を備える。
【0129】
なお、ガス導入層200、緩衝層300、および保護層400の気孔率は、ガス導入層200、緩衝層300、および保護層400の各々を、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察して得たSEM画像を解析して測定した値である。
【0130】
図1に示される構成を備える実施例1~実施例6、比較例4~6に係るガスセンサ素子のうち、実施例1~実施例6、および、比較例5~6については、ガスセンサ素子が備えるガス導入層200の気孔率を、30%以上とした。これに対して、比較例4については、ガスセンサ素子が備えるガス導入層200の気孔率を、30%よりも小さな値とした。
【0131】
具体的には、ガスセンサ素子が備えるガス導入層200の気孔率は、実施例1においては31%であり、実施例2においては33%であり、実施例3においては42%であり、実施例4においては43%であり、実施例5においては48%であり、実施例6においては55%である。また、比較例5、比較例6において、ガスセンサ素子が備えるガス導入層200の気孔率は、それぞれ、31%、50%である。これに対して、比較例4において、ガスセンサ素子が備えるガス導入層200の気孔率は、28%である。
【0132】
また、図1に示される構成を備える実施例1~実施例6、比較例4~6に係るガスセンサ素子のうち、実施例1~実施例6、比較例4、および、比較例6については、ガス導入層200の気孔率を、緩衝層300の気孔率よりも5%以上大きな値とした。これに対して、比較例5については、ガス導入層200の気孔率と緩衝層300の気孔率との差を5%未満とした。
【0133】
具体的には、ガスセンサ素子が備えるガス導入層200の気孔率は、緩衝層300の気孔率と比べて、実施例1においては8%大きく、実施例2においては11%大きく、実施例3においては19%大きく、実施例4においては21%大きく、実施例5においては26%大きく、実施例6においては33%大きい。また、比較例4および比較例6において、ガスセンサ素子が備えるガス導入層200の気孔率は、緩衝層300の気孔率と比べて、5%大きい。これに対して、比較例5において、ガスセンサ素子が備えるガス導入層200の気孔率は、緩衝層300の気孔率と比べて2%しか大きくなく、ガス導入層200の気孔率と緩衝層300の気孔率との差は5%未満となっている。
【0134】
ここで、比較例6については、実施例1~実施例6と同様に、ガスセンサ素子が備えるガス導入層200の気孔率は30%以上であり、また、ガス導入層200の気孔率は、緩衝層300の気孔率よりも5%以上大きな値である。ただし、比較例6においては、ガスセンサ素子が備える緩衝層300の気孔率を、30%以上とした。具体的には、ガスセンサ素子が備える緩衝層300の気孔率は、実施例1においては23%、実施例2、実施例4、実施例5、および、実施例6においては22%、実施例3においては23%であり、いずれも30%未満である。これに対して、比較例6においては、ガスセンサ素子が備える緩衝層300の気孔率は45%であり、30%以上となっている。なお、ガスセンサ素子が備える緩衝層300の気孔率は、比較例1においては21%、比較例2においては28%、比較例4においては23%、比較例5においては29%とした。
【0135】
上述の各実施例及び各比較例に係るガスセンサ素子について、以下の応答性試験および耐被水性試験を行なって、応答性および耐被水性について評価した。
【0136】
すなわち、応答性試験では先ず、比較例1に係るガスセンサ素子を備えたガスセンサを自動車の排ガス管の配管に取り付けた。そして、ヒータ70に通電して温度を800℃とし、比較例1に係るガスセンサ素子を加熱した。次に、ベースガスを窒素とし、所定濃度の酸素及び70ppmのNOを混合させたモデルガスを被測定ガスとし、この被測定ガスを配管内に流速9m/sで流した。また、上述した各ポンプセル21、41、50を動作させて、比較例1に係るガスセンサ素子によるNOx濃度の測定を開始した。そして、ポンプ電流Ip2の値(被測定ガス中のNOx濃度に相当する値)が安定した後に、配管内に流す被測定ガスのNOx濃度を70ppmから500ppmに変化させた場合における、ポンプ電流Ip2の値の時間変化を調べた。NOx濃度を変化させる直前のポンプ電流Ip2の値を0%、NOx濃度の変化後にポンプ電流Ip2が変化して安定したときの値を100%として、ポンプ電流Ip2の値が10%を越えたときから90%を越えるまでの経過時間をNOx濃度検出の応答時間(sec)とした。この応答時間が短いほどガスセンサ素子の応答性が高いことを意味する。実施例1~実施例6、および、比較例2~6に係るガスセンサ素子についても、同様に応答時間の測定を行った。応答時間の測定は、実施例1~実施例6、および、比較例1~6の各々に係るガスセンサについて複数回行い、各々の平均値を、実施例1~実施例6、および、比較例1~6の各々に係るガスセンサ素子についての応答時間とした。
【0137】
また、耐被水性試験においては、ガスセンサ素子101の実際の駆動時と同様の加熱条件にて、実施例1~実施例6、および、比較例1~6に係るガスセンサ素子をヒータ70により加熱した状態で、保護層400に対し500msec以内の一定の時間間隔で水滴を滴下した。そして、実施例1~実施例6、および、比較例1~6に係るガスセンサ素子に割れ(被水割れ)が生じたときの合計滴下水量を、限界被水量として求め、限界被水量の大小によって、耐被水性の程度を評価するようにした。すなわち、耐被水性試験においては、限界被水量を、耐被水性を表す指標値とした。限界被水量の値が大きいほど、耐被水性が優れていることになる。
【0138】
以下の表1は、応答性および耐被水性を評価した結果を示す。表1において、「保護層」の「層数」は、実施例1~実施例6、および、比較例1~6の各々に係るガスセンサ素子の備える保護層400を構成する層の数を示し、「保護層」の「気孔率」は、保護層400の気孔率を示している。「緩衝層」の「有無」は、実施例1~実施例6、および、比較例1~6の各々に係るガスセンサ素子が緩衝層300を備えるか否かを示し、「緩衝層」の「気孔率」は、ガスセンサ素子が緩衝層300を備える場合の緩衝層300の気孔率を示している。「ガス導入層」の「有無」は、実施例1~実施例6、および、比較例1~6の各々に係るガスセンサ素子がガス導入層200を備えるか否かを示し、「ガス導入層」の「気孔率」は、ガスセンサ素子がガス導入層200を備える場合のガス導入層200の気孔率を示している。また、「ガス導入層」の「断面積比」は、実施例1~実施例6、および、比較例1~6の各々について、ガスセンサ素子がガス導入層200を備える場合に、ガス導入層200と、素子基体100のガス導入口10が開口している面との面積比を示している。言い換えれば、「断面積比」は、素子基体100のガス導入口10が開口している面の面積に対する、ガス導入層200の、素子基体100のガス導入口10が開口している面に接する面の面積の、割合、比率を示している。
【0139】
表1において、「評価結果」の「応答性」は、実施例1~実施例6、および、比較例1~6の各々に係るガスセンサ素子について、上述の応答性試験の結果を示している。「応答性」は、比較例1に係るガスセンサ素子の、上述の応答性試験の結果(つまり、応答時間)を基準とする相対評価とした。すなわち、実施例1~実施例6、および、比較例2~6の各々に係るガスセンサ素子の、上述の応答性試験の結果(応答時間)と、比較例1に係るガスセンサ素子の応答時間とを比較し、各ガスセンサ素子の「応答性」を評価した。具体的には、比較例1に係るガスセンサ素子の応答時間を基準時間として、実施例1~実施例6、および、比較例2~6の各々に係るガスセンサ素子の応答時間が、基準時間から±10%の範囲にある場合、「応答性」を「×」とした。基準時間の70%以上、90%未満の範囲にある場合、「応答性」を「〇」とした。基準時間の70%未満の範囲にある場合、「応答性」を「◎」とした。
【0140】
表1において、「評価結果」の「耐被水性」は、実施例1~実施例6、および、比較例1~6の各々に係るガスセンサ素子について、上述の耐被水性試験の結果を示している。具体的には、上述の耐被水性試験の結果(限界被水量)が「5μm」以上である場合、「耐被水性」を「〇」とし、「5μm」未満である場合、「耐被水性」を「×」とした。
【0141】
【表1】
【0142】
表1の評価結果に示されるとおり、実施例1~実施例6の各々は、比較例1~5の各々に比べて、「応答性」が良好であった。この結果から、気孔率が、30%以上であって、かつ、緩衝層300の気孔率よりも5%以上高いガス導入層200を設けることによって、ガスセンサ素子の「応答性」を向上させることができることを確認した。
【0143】
すなわち、ガス導入層200を備えない比較例1~3の「応答性」は、いずれも「×」であった。これに対して、実施例1~実施例6の各々の「応答性」は、比較例1~3の「応答性」よりも良好な、「〇」または「◎」であった。そのため、ガスセンサ素子の「応答性」の観点からは、ガス導入層200を備えることが望ましい。
【0144】
また、ガス導入層200の気孔率が緩衝層300の気孔率よりも5%以上高いが、ガス導入層200の気孔率が30%未満(具体的には、28%)である比較例4の「応答性」は「×」であった。これに対して、実施例1~実施例6の各々の「応答性」は、比較例4の「応答性」よりも良好な、「〇」または「◎」であった。そのため、ガスセンサ素子の「応答性」の観点からは、ガス導入層200の気孔率は、30%以上とすることが望ましい。
【0145】
さらに、ガス導入層200の気孔率が30%以上であるが、ガス導入層200の気孔率が緩衝層300の気孔率に比べて5%未満(具体的には、2%)しか高くない比較例5の「応答性」は「×」であった。これに対して、実施例1~実施例6の各々の「応答性」は、比較例5の「応答性」よりも良好な、「〇」または「◎」であった。そのため、ガスセンサ素子の「応答性」の観点からは、ガス導入層200の気孔率は、緩衝層300の気孔率よりも5%以上高くすることが望ましい。
【0146】
ここで、実施例1~実施例6のうち、実施例2、実施例3、実施例5、および、実施例6は、実施例1および実施例4よりも「応答性」が優れている。このような「応答性」の向上には、ガス導入層200の「気孔率」および「断面積比」が寄与しているものと考えられる。
【0147】
すなわち、実施例1、実施例5、および、実施例6の「断面積比」は、いずれも「0.25」であるが、「応答性」が「〇」の実施例1の「気孔率」が31%であるのに対して、「応答性」が「◎」の実施例5および実施例6の「気孔率」は、各々、「48%」、「55%」である。つまり、ガス導入層200の「断面積比」が同様であっても、ガス導入層200の「気孔率」が高い方が、ガスセンサ素子の応答性が良好となる。特に、実施例5および実施例6に示されるように、ガス導入層200の「気孔率」は、45%以上とするのが望ましい。なお、ガス導入層200の「気孔率」を上げ過ぎると、それに合わせて緩衝層300の気孔率も上げざるを得なくなるため、ガス導入層200の「気孔率」は、60%以下とするのが望ましい。すなわち、ガス導入層200の「気孔率」は、45%以上、60%以下とするのが望ましい。
【0148】
また、実施例2、実施例3、および、実施例4のうちで、ガス導入層200の「気孔率」が最も高いのは、実施例4である。ただし、実施例2および実施例3の「断面積比」は、各々、「0.73」、「0.69」であり、0.2倍以上、0.8倍以下の範囲にあるのに対して、実施例4の「断面積比」は、「0.15」であり、0.2倍未満となっている。そして、「応答性」については、実施例4は「〇」であるのに対し、実施例2および実施例3は「◎」である。したがって、ガス導入層200の「断面積比」を0.2倍以上、0.8倍以下の範囲とすることにより、ガスセンサ素子の応答性を向上させることができることが、表1に示されている。
【0149】
なお、比較例6は、「応答性」は「〇」だが、「耐被水性」は「×」となっている。比較例6に係るガスセンサ素子は、実施例1~実施例6の各々に係るガスセンサ素子と同様、気孔率が、30%以上であって、かつ、緩衝層300の気孔率よりも5%以上高いガス導入層200を備えているため、「応答性」が良好であったものと考えられる。ただし、比較例6に係るガスセンサ素子において、実施例1~実施例6とは異なり、緩衝層300の気孔率が30%以上(具体的には、45%)である。そして、比較例6の「耐被水性」は「×」となっている。これは、緩衝層300の気孔率を30%以上とすると、緩衝層300の役割を果たさない(ガスセンサ素子が破損しやすくなる)ためと考えられる。そのため、ガスセンサ素子の「耐被水性」の観点からは、緩衝層300の気孔率は、30%未満とすることが望ましい。
【0150】
これらの結果から、上記実施形態及び変形例によれば、保護層によってガス導入口を覆いつつ、応答性の低下を防ぐことの可能なガスセンサ素子を提供可能であることが検証できた。
【0151】
すなわち、気孔率が、30%以上であって、かつ、緩衝層300の気孔率よりも5%以上高いガス導入層200を設けることによって、ガスセンサ素子の「応答性」を向上させることができることを確認できた。また、「応答性」に加えて「耐被水性」も考慮すると、ガス導入層200の気孔率を、30%以上であって、かつ、緩衝層300の気孔率よりも5%以上高くするのに加えて、緩衝層300の気孔率は、30%未満とすることが望ましいことを確認できた。
【符号の説明】
【0152】
101、102、103、104…センサ素子、100…素子基体、
7…被測定ガス流通部(内部空間)、10…ガス導入口、
200…ガス導入層、300…緩衝層、400…保護層
図1
図2
図3
図4
図5
図6