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特開2023-112476測定装置、測定ユニット、センサ及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112476
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】測定装置、測定ユニット、センサ及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01D 3/00 20060101AFI20230804BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
G01D3/00 B
G01R35/00 E
G01R35/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014288
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中沢 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 広樹
(72)【発明者】
【氏名】多羅澤 公一
(72)【発明者】
【氏名】池田 健太
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】夏 沛宇
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 志弥
【テーマコード(参考)】
2F075
【Fターム(参考)】
2F075AA06
2F075AA10
2F075EE15
(57)【要約】
【課題】測定量の正確性に関する情報を利用者自ら設定することなく用いることができる。
【解決手段】センサと通信を行う測定装置1は、センサから、センサにかかる測定量の正確性に関する情報及びセンサで検出された検出量を取得し、取得した検出量に基づいて測定対象についての測定量を演算する。そして測定装置1は、センサにかかる測定量の正確性に関する情報に基づく情報を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサと通信を行う測定装置であって、
前記センサから、前記センサにかかる測定量の正確性に関する情報及び前記センサで検出された検出量を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記検出量に基づいて測定対象についての測定量を演算する演算手段と、
前記センサにかかる測定量の正確性に関する情報に基づく情報を出力する出力手段と、
を含む測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記出力手段は、前記センサにかかる測定量の正確性に関する情報を報知する、
測定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の測定装置であって、
前記センサにかかる測定量の正確性に関する情報は、前記センサの校正期限を示す情報を含む、
測定装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の測定装置であって、
前記センサにかかる測定量の正確性に関する情報は、前記センサの製品保証期限を示す情報を含む、
測定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の測定装置であって、
前記出力手段は、前記測定量とともに前記センサにかかる測定量の正確性に関する情報を記録する、
測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の測定装置であって、
前記センサにかかる測定量の正確性に関する情報は、前記センサの校正期限を示す情報を含む、
測定装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の測定装置であって、
前記出力手段は、前記測定量とともに前記センサにかかる測定量の正確性に関する情報を送信する、
測定装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の測定装置であって、
前記測定装置は、複数の前記センサと通信を行い、
前記取得手段は、前記センサごとに、前記センサにかかる測定量の正確性に関する情報及び前記センサで検出された前記検出量を取得し、
前記出力手段は、前記センサごとに、前記センサにかかる測定量の正確性に関する情報に基づく情報を出力する、
測定装置。
【請求項9】
センサと通信を行うコンピュータに、
前記センサから、前記センサにかかる測定量の正確性に関する情報及び前記センサで検出された検出量を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得された前記検出量に基づいて測定対象についての測定量を演算する演算ステップと、
前記センサにかかる測定量の正確性に関する情報に基づく情報を出力する出力ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項10】
センサにかかる測定量の正確性に関する情報に基づく情報を出力する測定装置と通信を行う前記センサであって、
測定対象にかかる検出量を検出する検出手段と、
前記センサにかかる測定量の正確性に関する情報を保持する保持手段と、
前記検出量及び前記センサにかかる測定量の正確性に関する情報を前記測定装置に送信する通信手段と、
を含むセンサ。
【請求項11】
センサにかかる測定量の正確性に関する情報に基づく情報を出力する測定装置に脱着可能であり、前記測定装置と通信を行う前記センサを有する測定ユニットであって、
測定対象にかかる検出量を検出する検出手段と、
前記センサにかかる測定量の正確性に関する情報を保持する保持手段と、
前記検出量及び前記センサにかかる測定量の正確性に関する情報を前記測定装置に送信する通信手段と、
を含む測定ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置、測定ユニット、センサ及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、試験装置に貼付された校正ラベルに記載の校正期日を時間計に設定しておくことで、モニター部が自動的に校正指示を発する試験装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59-155566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の試験装置のように、試験装置の校正期限、品質保証期間、定格などの測定量の正確性に関する情報に関しては、利用者が自ら校正ラベル又は校正証明書などを参照して、その情報をあらかじめ装置に設定して用いるしかなかった。
【0005】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、測定量の正確性に関する情報を利用者自ら設定することなく用いることができる測定装置、測定ユニット、センサ及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、センサと通信を行う測定装置は、前記センサから、前記センサにかかる測定量の正確性に関する情報及び前記センサで検出された検出量を取得する取得手段を含む。さらに測定装置は、前記取得手段により取得された前記検出量に基づいて測定対象についての測定量を演算する演算手段と、前記測定量の正確性に関する情報に基づく情報を出力する出力手段とを含む。
【発明の効果】
【0007】
この態様によれば、測定装置は、個々のセンサにあらかじめ格納された校正期限などのセンサにかかる測定量の正確性に関する情報を通信によって取得することができる。このため、測定装置は、利用者自ら設定することなく、センサにかかる測定量の正確性に関する情報を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態における測定装置の構成を示す図である。
図2図2は、電流センサに格納されたセンサ情報の形式の一例を示す観念図である。
図3図3は、電圧センサに格納されたセンサ情報の形式の一例を示す観念図である。
図4図4は、本実施形態における測定装置の機能構成を示すブロック図である。
図5図5は、センサ情報に含まれる位相特性データの一例を示す観念図である。
図6図6は、測定結果とともにセンサ情報に基づく情報を表示する画面例を示す図である。
図7図7は、測定装置によって実行される測定方法の処理手順例を示すフローチャートである。
図8図8は、測定方法に含まれるセンサ情報出力処理の処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態における複数のセンサに接続された測定装置の構成を示すブロック図である。
【0011】
測定装置1は、一又は複数のセンサを用いて測定対象9についての測定量を測定する装置である。測定装置1は、一又は複数のセンサにかかる測定量の正確性に関する情報を出力する。測定装置1は、例えば、電力解析器、電圧測定器、電流測定器、磁界測定器、又は光測定器により実現される。
【0012】
測定対象9としては、電力を伝送する電線路、電気抵抗を有する物体、光、及び磁束密度などが挙げられる。本実施形態における測定対象9は、交流電力を伝送する電線路である。以下では、電線路を流れる交流電流の周波数のことを「測定周波数」と称する。
【0013】
本実施形態において、測定装置1の第一のチャンネルCH1には、電流センサ2から延びるケーブルの出力端子が接続され、測定装置1の第二のチャンネルCH2には、電圧センサ3から延びるケーブルの出力端子が接続されている。
【0014】
測定装置1は、電流センサ2及び電圧センサ3の出力信号に基づいて測定対象9の交流電力を測定する。測定装置1は、プロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース、及びこれらを相互に接続するバスなどによって構成されるコンピュータである。
【0015】
電流センサ2及び電圧センサ3の各センサは、測定対象9にかかる検出量を検出する検出手段として機能する。各センサは、自己のセンサにかかる測定量の正確性に関する情報を保持する保持手段と、上記の検出量及びセンサにかかる測定量の正確性に関する情報を測定装置1に送信する通信手段と、を備える。
【0016】
本実施形態において、各センサは、内部のROM又はRAMに自己のセンサ固有の情報を格納(保持)する。この各センサは、センサ自身と測定装置1との間で通信を行い、有線又は無線を介して測定装置1に接続される。
【0017】
以下では、センサ固有の情報のことを「センサ情報」と称する。ここにいうセンサ情報には、センサの種類ごとに定められた固有の情報と、同一種類における個々のセンサごとに定められた固有の情報と、の少なくとも一つの情報が含まれる。
【0018】
電流センサ2は、測定対象9に流れる電流Iにかかる検出量を検出する。例えば、電流センサ2は、測定対象9の電流Iによって作られる磁束を検出する磁気センサを備え、この磁気センサによって磁束を検出することで得られた電圧を、電流Iにかかる検出量として検出する。
【0019】
電流センサ2は、センサ自身と測定装置1との間で通信を行い、電流Iの大きさにかかる時系列の検出量を検出信号に変換し、有線又は無線を介して測定装置1に出力する。
【0020】
電流センサ2は、例えば、鉄心などの磁気コアに巻線を巻き付けたコイルによって構成される。電流センサ2の構造は、貫通型でも、開閉可能なクランプ型であってもよい。
【0021】
電流センサ2は、メモリ21を有する。メモリ21は、不揮発性メモリであり、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)により実現される。メモリ21には、電流センサ2自身のセンサ情報が格納されている。
【0022】
電流センサ2のセンサ情報としては、例えば、電流センサ2を識別するためのセンサ識別データ、電流センサ2の位相及び振幅の周波数特性を示す検出特性データ、及び電流センサ2によって測定される測定量の期限に関する期限データなどが含まれる。
【0023】
電圧センサ3は、測定対象9に生じる電圧Vの大きさにかかる検出量を検出する。例えば、電圧センサ3は、測定対象9の電圧Vを非接触で検出するための電極と、その電極に電圧を印加する回路とを備え、その電極と測定対象9との間に電流が流れないように電極に電圧を発生することで得られた電圧を、電圧にかかる検出量として検出する。電圧センサ3は、センサ自身と測定装置1との間で通信を行い、検出した時系列の検出量を検出信号に変換し、有線又は無線を介して測定装置1に出力する。
【0024】
電圧センサ3は、電流センサ2の構成と同様、メモリ31を有する。メモリ31は、不揮発性メモリであり、例えばEEPROMにより実現される。メモリ31には、電圧センサ3自身のセンサ情報が格納されている。センサ情報としては、センサ識別データ、検出特性データ及び期限データなどが含まれる。
【0025】
続いて、電流センサ2及び電圧センサ3の各センサに格納されるセンサ情報について図2及び図3を参照して説明する。
【0026】
図2は、電流センサ2のメモリ21に格納されるセンサ情報の一例を示す観念図である。
【0027】
図2に示すように、センサ情報22は、センサ情報書込み日220と、センサ形名221と、シリアル番号222と、位相特性データ223と、振幅特性データ224と、定格電流225と、校正期限226と、製品保証期限227と、を含む。
【0028】
センサ情報22のうち電流センサ2にかかる測定量の正確性に関する情報としては、センサ形名221、シリアル番号222、位相特性データ223、振幅特性データ224、定格電流225、校正期限226、及び製品保証期限227などが挙げられる。
【0029】
例えば、センサ形名221及びシリアル番号222は、その形名や番号が正確性の情報に紐付けられるため、測定量の正確性に関する情報であり、定格電流225は、その定格電流の範囲内で正確性が保証されるものであるため、正確性に関する情報である。
【0030】
そして、製品保証期限227は、その製品が壊れる可能性が高くなっていることを示すものであるため、測定量の正確性に関する情報であり、位相特性データ223、振幅特性データ224及び校正期限226は、正確性に関する情報であるのは明らかである。しかしながら、この測定量の正確性に関する情報には、センサ情報書込み日220は含まれない。
【0031】
センサ情報書込み日220は、電流センサ2のメモリ21にセンサ情報22が書き込まれた日にちを示す情報である。
【0032】
センサ形名221及びシリアル番号222は、電流センサ2を識別するためのセンサ識別データである。このセンサ識別データは、測定量を演算する際に使用された電流センサを特定するために用いることができる。このセンサ識別データにより、例えば、電流センサ2がこれまでの使用実績から正確性の高い電流センサであるのか否かを推察することが可能となる。
【0033】
センサ形名221は、電流センサ2の仕様及び構造を特定するための識別子であり、シリアル番号222は、電流センサ2固有の識別番号である。
【0034】
位相特性データ223、振幅特性データ224及び定格電流225は、電流センサ2における電流の検出特性を示す検出特性データである。
【0035】
位相特性データ223は、電流センサ2で検出される検出量にかかる位相の周波数特性を示す特性情報である。例えば、位相特性データ223は、電流センサ2に起因する検出量の交流電圧に対する位相遅れを特定の周波数ごとに示す対応テーブルによって形成される。
【0036】
同様に、振幅特性データ224は、電流センサ2で検出される検出量にかかる振幅の周波数特性を示す特性情報である。例えば、振幅特性データ224は、電圧センサ3に起因する検出量の交流電圧に対する位相遅れを特定の周波数ごとに示す対応テーブルによって形成される。
【0037】
本実施形態における位相特性データ223及び振幅特性データ224は、電流センサ2固有の検出特性を示す対応テーブルである。なお、位相特性データ223及び振幅特性データ224は、電流センサ2の標準的な検出特性を示す対応テーブルであってもよく、または、検出特性を規定する関数を示す関数データであってもよい。
【0038】
定格電流225は、電流センサ2の定格電流の値を示す情報であり、その定格電流の範囲内において正確性が保証されることを意味する。
【0039】
校正期限226は、電流センサ2の校正期限を示す情報であり、電流センサ2の仕様で規定された確度が保証される期限を示す。
【0040】
校正期限226は、校正周期によって規定することも可能であるため、校正期限226としては校正周期が用いられてもよい。校正期限226には、例えば、次回の校正期限、推奨校正周期、又は確度保証期間などが格納される。
【0041】
製品保証期限227は、電流センサ2の製品保証期限を示す情報であり、製造者の責任による故障が発生した場合に、無償修理又は新品交換が可能な期限を示す。製品保証期限227は、製品保証期間によって規定することが可能であるため、製品保証期限227として製品保証期間が用いられてもよい。
【0042】
このように、電流センサ2のメモリ21には、電流センサ2のセンサ識別データ、検出特性データ、及び期限データが格納される。これにより、電流センサ2を使用して得られた測定結果に対する妥当性、信憑性及び信頼性などを評価することが可能となる。
【0043】
図3は、電圧センサ3のメモリ31に格納されるセンサ情報32の一例を示す観念図である。
【0044】
図3に示すように、センサ情報32は、センサ情報書込み日320と、センサ形名321と、シリアル番号322と、定格電圧323と、校正期限324と、製品保証期限325と、を含む。センサ情報32のうち電圧センサ3にかかる測定量の正確性に関する情報としては、センサ形名321、シリアル番号322、定格電圧323、校正期限324、及び製品保証期限325などが挙げられる。
【0045】
センサ情報書込み日320、センサ形名321、シリアル番号322、定格電圧323、校正期限324、及び製品保証期限325は、それぞれ、図2に示したセンサ情報書込み日220、センサ形名221、シリアル番号222、定格電流225、校正期限226、及び製品保証期限227に対応している。
【0046】
図4は、本実施形態における測定装置1の機能構成を示すブロック図である。
【0047】
測定装置1は、操作部10と、第一の取得手段に相当するセンサ情報取得部20と、第二の取得手段に相当する検出信号取得部30と、測定量演算部40と、記憶部50と、通信部60と、報知部70と、処理部100とを備える。
【0048】
操作部10は、表示画面の周囲に設けられる複数の押しボタン、表示画面内に配置されるタッチセンサ、又は、キーボード及びマウスなどによって構成される。操作部10は、測定装置1を利用する者である利用者の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作の内容を示す操作信号を生成する。
【0049】
入力操作としては、例えば、電源ボタンを押下する操作、測定条件を設定する操作、測定対象9の交流電力を測定するための測定処理の実行を指示する操作、及び測定処理の終了を指示する操作などが挙げられる。
【0050】
操作部10は、利用者による測定条件を設定する入力操作を受け付けると、測定条件を示す操作信号を記憶部50に記録するために、その操作信号を処理部100に出力する。また、操作部10は、利用者による測定処理の実行を指示する入力操作を受け付けると、その入力操作の内容を示す操作信号を処理部100に出力する。
【0051】
センサ情報取得部20は、測定装置1に接続されるセンサから、そのセンサ自身のセンサ情報を取得する取得手段として機能する。
【0052】
本実施形態におけるセンサ情報取得部20は、電流センサ2及び電圧センサ3の各センサと通信を行うことにより、各センサからそれぞれセンサ情報22及びセンサ情報32を取得する。例えば、センサ情報取得部20は、電流センサ2からセンサ情報22に含まれる検出特性データを取得する。センサ情報取得部20は、取得したセンサ情報22及びセンサ情報32を処理部100に出力する。
【0053】
検出信号取得部30は、測定装置1に接続されるセンサから、そのセンサで検出された検出量を取得する取得手段として機能する。
【0054】
検出信号取得部30は、電流センサ2及び電圧センサ3の各センサから、各センサで検出された検出量を変換した検出信号を取得する。検出信号取得部30は、取得した各センサの検出信号から取り出した検出量を処理部100に出力する。
【0055】
測定量演算部40は、処理部100により取得される検出量に基づいて測定対象9についての測定量を演算する演算手段として機能する。演算される測定量としては、例えば、電流、電位、電力及び磁界などの量を指す物理量、並びに、化学物質などの量を指す化学量が挙げられる。
【0056】
本実施形態において、測定量演算部40は、処理部100から出力される電流センサ2の検出量に基づいて測定対象9に流れる電流Iの実効値を演算する。また、測定量演算部40は、電圧センサ3から出力される検出信号から取り出した検出量に基づいて測定対象9に生じる電圧Vの実効値を演算する。さらに測定量演算部40は、測定対象9に生じる交流の電圧Vに対する電流Iの位相差を演算する。
【0057】
そして、測定量演算部40は、次式(1)のように、演算された電流Iの実効値Irms、電圧Vの実効値Vrms及び電圧Vに対する電流Iの位相差θを用いて、測定対象9における電力Pの平均値を演算する。
【0058】
P = Irms・Vrms×cosθ ・・・(1)
【0059】
このように、測定量演算部40は、各センサにより得られる検出量に基づいて、測定対象9に伝送される電力Pの大きさを示す測定量を演算する。測定量演算部40は、演算した測定量を測定結果として処理部100に出力する。
【0060】
記憶部50は、測定量演算部40で演算された測定量とともに、センサ情報22及びセンサ情報32に基づく情報を記憶する出力手段として機能する。本実施形態における記憶部50は、電流センサ2及び電圧センサ3のセンサ情報、測定条件及び測定結果を記憶する。
【0061】
例えば、記憶部50には、測定結果として、測定量演算部40で演算される電流I及び電圧Vの各値を時系列に示す時系列データと電力Pの平均値とが記憶される。記憶部50の一部は、例えば、測定装置1に接続可能なUSBメモリなどの外部メモリによって構成されてもよい。
【0062】
また、記憶部50には、処理部100が本実施形態にかかる測定処理を実行するためのプログラムが記憶されている。すなわち、記憶部50は、測定装置1の各部を制御するためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。
【0063】
通信部60は、測定量演算部40で演算された測定量とともにセンサ情報22及びセンサ情報32に基づく情報を送信する出力手段として機能する。本実施形態における通信部60は、測定装置1と外部装置との間で通信を行う。例えば、通信部60は、インターネット網又は電話網などのネットワークを通じて、外部装置に測定条件又は測定結果を送信又は受信する。通信部60は、例えば通信回路により実現される。
【0064】
報知部70は、センサ情報22及びセンサ情報32に基づく情報を報知する出力手段として機能する。本実施形態における報知部70は、測定条件を報知する。さらに報知部70は、電流センサ2及び電圧センサ3の各センサから取得したセンサ情報22及びセンサ情報32を、測定量又はその測定量にかかる検出量を取得した測定装置1のチャンネル番号(CH1及びCH2)とともに報知する。ここにいう報知には、画像表示及び音声通知などが含まれる。
【0065】
本実施形態において、報知部70は、画像を表示するためのLEDパネル、液晶パネル、有機ELパネル又はタッチパネルなどにより実現される。報知部70は、測定条件、測定結果、センサ情報22及びセンサ情報32に基づく情報を示す画像データを生成し、生成した画像データを表示画面に表示する。
【0066】
具体例として、報知部70は、電流センサ2のセンサ情報22とともに、電流Iの測定量を示す電流波形を表示する。また、報知部70は、電圧センサ3のセンサ情報32とともに、電圧Vの測定量を示す電圧波形を表示する。さらに、報知部70は、電力Pの瞬時値を示す電力波形を表示する。
【0067】
処理部100は、センサ情報取得部20により取得されるセンサ情報22及びセンサ情報32のうち各センサにかかる測定量の正確性に関する情報に基づく情報を出力する出力手段として機能する。
【0068】
処理部100は、測定装置1の各部を制御するプロセッサであり、プロセッサとしては、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processor Unit)などが挙げられる。
【0069】
本実施形態において、処理部100は、センサ情報取得部20から電流センサ2のセンサ情報22及び電圧センサ3のセンサ情報32を取得し、これらのセンサ情報22及びセンサ情報32をそれぞれ記憶部50に記録する。
【0070】
そして、処理部100は、センサ情報22のうち電流センサ2にかかる測定量の正確性に関する情報を抽出し、抽出した情報に基づいて利用者に通知するための出力情報を生成する。生成される出力情報は、電流センサ2にかかる測定量の正確性に関する情報に基づく情報であり、例えば、センサ形名221、シリアル番号222、位相特性データ223、振幅特性データ224、定格電流225、校正期限226、及び製品保証期限227の少なくとも一つを含む。
【0071】
同様に、処理部100は、センサ情報32のうち電圧センサ3にかかる測定量の正確性に関する情報を抽出し、抽出した情報に基づいて利用者に通知するための出力情報を生成する。生成される出力情報は、センサ形名321、シリアル番号322、定格電圧323、校正期限324、及び製品保証期限325の少なくとも一つを含む。
【0072】
なお、上述した出力情報は、センサ情報22及びセンサ情報32から抽出した情報自体に限らず、抽出した情報を利用又は加工した情報であってもよい。
【0073】
また、検出信号取得部30から電流センサ2の検出量を取得すると、電流センサ2のセンサ情報22に示された位相特性データ223に基づいて、取得した電流センサ2の検出量を補正する。さらに処理部100は、センサ情報22に示された振幅特性データ224に基づいて、取得した電流センサ2の検出量を補正するものであってもよい。
【0074】
電圧センサ3が位相及び振幅の周波数変動が大きい検出特性を有する場合は、電流センサ2と同様、メモリ31に電圧センサ3の位相特性データ及び振幅特性データが格納され、処理部100がこれらの取得したデータに基づき電圧センサ3の検出量を補正してもよい。
【0075】
その後、処理部100は、補正した電流センサ2の検出量を測定量演算部40に出力する。そして測定量演算部40は、電流センサ2の補正後の検出量を用いて、上述のように、電流Iの交流波形、電流Iの実効値、及び電力Pの平均値などの測定量を演算する。これにより、測定量演算部40によって演算される測定量の正確性が向上する。
【0076】
また、処理部100は、電流センサ2の検出量に基づき演算された電流Iの交流波形及び実効値などの測定量又はその測定量にかかる検出量を取得した測定装置1のチャンネル番号(CH1及びCH2)と、センサ情報22に含まれる出力情報と、を互いに関連付けて記憶部50に記録する。
【0077】
同様に、処理部100は、電圧センサ3の検出量に基づき演算された電圧Vの測定量又はその測定量にかかる検出量を取得した測定装置1のチャンネル番号(CH1及びCH2)と、電圧センサ3のセンサ情報32に含まれる出力情報と、を互いに関連付けて記憶部50に記録する。
【0078】
さらに、処理部100は、電流センサ2及び電圧センサ3の検出量に基づき演算された電力Pの平均値又はその平均値にかかる検出量を取得した測定装置1のチャンネル番号(CH1及びCH2)と、センサ情報22及びセンサ情報32に含まれる出力情報と、を互いに関連付けて記憶部50に記録する。
【0079】
このように、記憶部50には、処理部100で取得された測定量とともに、センサ情報22及びセンサ情報32に基づく出力情報が記憶されているため、記憶部50に記憶された測定量が、どのようなセンサを使用して得られたものなのかを特定することが可能となる。それゆえ、利用者は、測定結果に対する妥当性又は信頼性などを評価することが可能となる。
【0080】
また、本実施形態において、処理部100は、記憶部50に記憶された測定量、その測定量にかかる検出量を取得した測定装置1のチャンネル番号(CH1及びCH2)及びセンサ情報22及びセンサ情報32に基づく出力情報を報知部70に出力する。これにより、報知部70は、記憶部50に記憶された測定量又はチャンネル番号(CH1及びCH2)とともに、測定量の演算に使用されたセンサのセンサ情報22及びセンサ情報32を報知することができる。
【0081】
例えば、処理部100は、記憶部50に記憶された電流Iの測定量と、電流センサ2のセンサ情報22に含まれる校正期限226及び製品保証期限227を示す期限データと、を関連付けて報知部70に出力する。そして報知部70は、取得した電流Iの測定量又はその測定量にかかる測定装置1のチャンネル番号(CH1及びC2)とともに、電流センサ2の期限データに示された校正期限226又は製品保証期限227を表示画面に表示する。
【0082】
同様に処理部100は、電圧Vの測定量を報知する場合に、電圧Vの測定量とともに電圧センサ3の期限データを報知部70に出力する。また、電力Pの測定量を報知する場合には、処理部100は、電力Pの測定量又はその測定量にかかる測定装置1のチャンネル番号(CH1及びCH2)とともに電流センサ2及び電圧センサ3の期限データを報知部70に出力する。
【0083】
これにより、利用者は、記憶部50に記憶されている測定量又はその測定量にかかる検出量を取得した測定装置1のチャンネル番号(CH1及びCH2)が、製品保証期限又は校正期限を過ぎているセンサを使用して得られた結果なのかどうかを把握することが可能となる。処理部100は、センサ情報として製品保証期限又は校正期限に代えて又は加えて定格電流225及び定格電圧323を報知部70に出力してもよい。
【0084】
図4に示す例では処理部100が位相特性データ223を用いて電流センサ2の検出量に対し線形補正又は非線形補正を施したが、同様に処理部100は、振幅特性データ224を用いて近似直線又は近似曲線を求めて電流センサ2の検出量を補正する。
【0085】
また、図4に示す例では各センサのセンサ情報及び検出量は、それぞれ異なるセンサ情報取得部20及び検出信号取得部30によって取得されたが、同一の取得部によって取得されてもよい。
【0086】
次に、電流センサ2のセンサ情報22に示された位相特性データに基づき電流センサ2の検出量を補正する手法について図5を参照して説明する。
【0087】
図5は、電流センサ2に関するセンサ情報22に含まれる位相特性データ223の一例を示す模式図である。ここでは、縦軸が、測定対象9に印加された交流電圧に対する電流センサ2の検出量の位相を示し、横軸が、電流センサ2の検出量の周波数を示す。
【0088】
図5の実線で示される位相特性データ223は、周波数ごとに規定された位相遅れを示す複数の周波数点によって形成されている。位相特性データ223の高周波帯域においては、交流電流の周波数が高くなるにつれて、測定対象9に印加された交流電圧に対する位相遅れが、高周波帯域よりも低い周波数帯域での位相遅れに比べて大きくなっている。
【0089】
これに対し、電流センサ2による検出可能周波数範囲内の代表する一点の周波数の位相遅れを示す位相特性データを用いて電流センサ2の検出量を線形補正することも可能である。この場合、処理部100は、一点の周波数の位相遅れに基づいて交流電流の周波数及び位相遅れの関係を示す近似直線を求め、その近似直線において測定周波数に対応する位相遅れを算出する。そして処理部100は、算出した位相遅れを検出量の遅れ時間に換算し、その時間だけ電流センサ2から得られた時系列の検出量をシフトさせる。このようにして処理部100は、図5の破線に示すように、電流センサ2の検出量を補正する。
【0090】
しかしながら、近似直線を求めて測定周波数の位相遅れを算出する手法では、図5の破線に示すように高周波帯域において検出量を十分に補正することができない場合がある。この対策として、複数の周波数点で位相遅れを規定した位相特性データ223を用いて電流センサ2の検出量に対して非線形補正が施される。
【0091】
具体的には、処理部100は、電流センサ2の位相特性を精度よく近似するために、複数の周波数点の位相遅れを示す位相特性データ223を用いることにより、高次方程式で表される近似曲線を求める。そして処理部100は、その近似曲線において測定周波数に対応する位相遅れを算出し、算出した位相遅れを電流センサ2の検出量に適用することによって、図5の一点鎖線のように電流センサ2の検出量を補正する。
【0092】
これにより、電流センサ2を用いて測定対象9に流れる高周波帯域の電流Iを検出する場合においても精度よく電流センサ2の検出量を補正することが可能となり、電流センサ2の位相特性に起因する高周波帯域での測定精度の低下を抑制することができる。
【0093】
続いて、本実施形態における報知部70の動作について図6を参照して説明する。
【0094】
図6は、センサ情報22及びセンサ情報32を表示した表示画面71の一例を示す図である。
【0095】
表示画面71には、測定結果として、電流Iの実効値、電圧Vの実効値及び電力Pの平均値が表示されている。
【0096】
これに加え、測定装置1の第一のチャンネルCH1における測定結果である電流Iの実効値とともに、電流センサ2のセンサ情報22に含まれるセンサ形名221、定格電流225及び校正期限226が出力情報としてセンサ情報欄72に表示されている。
【0097】
また、測定装置1の第二のチャンネルCH2における測定結果である電圧Vの実効値とともに、電圧センサ3のセンサ情報32に含まれるセンサ形名321、定格電圧323及び校正期限324が出力情報としてセンサ情報欄73に表示されている。
【0098】
このように、センサ情報22及びセンサ情報32の一部又は全部を表示することにより、測定結果に対しての妥当性、信頼性又は信憑性をチェックすることができる。
【0099】
次に、本実施形態における測定装置1の動作について図7及び図8を参照して説明する。
【0100】
図7は、測定対象9についての測定方法の処理手順例を示すフローチャートである。
【0101】
ステップS1において測定装置1は、電流センサ2から、自己の電流センサ2固有のセンサ情報22を取得する。また、測定装置1は、電圧センサ3から、自己の電圧センサ3固有のセンサ情報32を取得する。
【0102】
ステップS2において測定装置1は、電流センサ2から、測定対象9に流れる電流Iの大きさにかかる検出量を取得する。また、測定装置1は、電圧センサ3から、測定対象9に生じる電圧Vの大きさにかかる検出量を取得する。
【0103】
ステップS3において測定装置1は、電流センサ2及び電圧センサ3の各検出量に基づいて、測定対象9についての測定量を演算する。測定量としては、電流I及び電圧Vの瞬時値、最大値、実効値及び平均値、並びに電力Pの瞬時値及び平均値などが挙げられる。
【0104】
本実施形態において、測定装置1は、電流センサ2の検出量及び電圧センサ3の検出量に基づいて測定対象9に伝送される電力Pの測定量を演算する。
【0105】
具体例として、測定装置1は、図5で述べた通り、センサ情報22に含まれる位相特性データ223に基づいて検出量の位相遅れと周波数との関係を示す近似関数を求め、その近似関数に測定周波数の値を代入して位相遅れを算出する。測定装置1は、算出した位相遅れに基づいて電流センサ2に起因する時系列の検出量の遅延を補正する。
【0106】
このように、測定装置1は、電流センサ2からのセンサ情報22に基づいて、電流センサ2で検出される電流Iの大きさにかかる検出量を補正する。
【0107】
続いて、測定装置1は、補正した電流センサ2の検出量に基づいて、測定対象9に流れる電流Iの実効値Irmsを演算するとともに、電圧センサ3の検出量に基づいて電圧Vの実効値Vrmsを演算する。さらに測定装置1は、電流センサ2の補正後の時系列の検出量と電圧センサ3の時系列の検出量との位相差θを求める。
【0108】
そして、測定装置1は、上式(1)のように、電流Iの実効値Irms、電圧Vの実効値Vrms、及び、電圧Vに対する電流Iの位相差θを用いて、測定対象9に伝送される電力Pの平均値を測定量として算出する。
【0109】
このように、測定装置1は、補正された検出量に基づいて測定対象9についての測定量を演算する。
【0110】
ステップS4において測定装置1は、電流センサ2及び電圧センサ3の少なくとも一方から取得したセンサ情報のうち測定量の正確性に関する情報に基づく出力情報を出力するためのセンサ情報出力処理を実行する。ここにいう出力情報を出力するとは、出力情報を報知すること、出力情報を記録すること、及び出力情報を送信することを含む。このセンサ情報出力処理については図8を参照して後述する。
【0111】
そしてステップS4の処理が完了すると、本実施形態における測定方法についての一連の処理が終了する。
【0112】
図8は、ステップS4で実行されるセンサ情報出力処理の処理手順例を示すフローチャートである。
【0113】
ステップS41において測定装置1は、電流Iの測定量とともに電流センサ2から取得したセンサ情報22に含まれる測定量の正確性に関する出力情報を記録する。
【0114】
具体例として、測定装置1は、電流センサ2の補正後の検出量に基づいて電流波形を演算し、演算した電流波形を示す測定データにセンサ情報22を関連付けて記憶部50に記録する。
【0115】
ステップS42において測定装置1は、ステップS3で演算された電力Pの測定量とともに、センサ情報22及びセンサ情報32のうち電力Pの演算に用いられた検出量にかかる測定量の正確性に関する出力情報を記録する。なお、測定装置1は、ステップS3で演算された電力Pの測定量に代えて又は加えて、その測定量にかかる検出量を取得した測定装置1のチャンネル番号(CH1及びCH2)を出力情報とともに記録してもよい。
【0116】
具体例として、測定装置1は、電力Pの測定量に対してセンサ情報22及びセンサ情報32に基づく出力情報を関連付けて記憶部50に記録する。
【0117】
ステップS43において測定装置1は、測定対象9についての測定量の正確性に関する情報として、電流センサ2及び電圧センサ3の少なくとも一方から取得したセンサ情報に基づく出力情報を表示する。
【0118】
具体例として、測定装置1は、記憶部50に記憶された測定データと、測定データに関連付けられたセンサ情報22に基づく出力情報と、を報知部70の表示画面に表示する。あるいは、測定装置1は、記憶部50に記憶された電力Pの平均値と、電力Pの平均値に関連付けられたセンサ情報22及びセンサ情報32に基づく出力情報と、を報知部70の表示画面に表示する。なお、測定装置1は、記憶部50に記憶された測定データに代えて又は加えて、その測定データにかかる検出量を取得した測定装置1のチャンネル番号を用いてもよい。
【0119】
ステップS44において測定装置1は、ステップS3で演算された電力Pの測定量とともに、センサ情報22及びセンサ情報32のうち電力Pの演算に用いられた検出量にかかる測定量の正確性に関する情報に基づく出力情報を送信する。
【0120】
具体例として、測定装置1は、通信部60を通じて、記憶部50に記憶された測定データと、測定データに関連付けられたセンサ情報22に基づく出力情報と、を外部装置宛に送信する。あるいは、測定装置1は、通信部60を通じて、記憶部50に記憶された電力Pの平均値と、電力Pの平均値に関連付けられたセンサ情報22及びセンサ情報32に基づく出力情報と、を外部装置宛に送信する。
【0121】
そしてステップS44の処理が完了すると、測定装置1は、ステップS4のセンサ情報出力処理が終了して図7に示した測定方法の処理手順に戻る。
【0122】
以下に、本実施形態の作用効果について詳しく説明する。
【0123】
本実施形態における測定装置1は、電流センサ2にかかる測定量の正確性に関する情報を含むセンサ情報22を自ら保持する電流センサ2と通信を行う。測定装置1は、電流センサ2からセンサ情報22及び電流センサ2で検出された電流Iにかかる検出量を取得する取得手段として機能するセンサ情報取得部20及び検出信号取得部30を備える。
【0124】
そして、測定装置1は、検出信号取得部30により取得された検出量に基づいて測定対象9についての電流Iの測定量を演算する演算手段として機能する測定量演算部40と、センサ情報22のうち電流Iの測定量の正確性に関する情報に基づく出力情報を出力する出力手段として機能する記憶部50、通信部60及び報知部70と、を備える。
【0125】
同様に、電圧センサ3についても、測定装置1は、電圧センサ3で検出された電圧Vにかかる検出量に基づいて測定対象9についての電圧Vの測定量を演算し、センサ情報32のうち電圧Vの測定量の正確性に関する情報に基づく出力情報を出力する。
【0126】
また、本実施形態における測定装置1を構成するコンピュータに実行させるためのプログラムは、電流センサ2からセンサ情報22及び電流センサ2で検出された検出量を取得する取得ステップ(S1及びS2)を含む。そしてプログラムは、取得ステップ(S2)で取得された検出量に基づいて測定対象9についての電流Iの測定量を演算する演算ステップ(S3)と、センサ情報22のうち演算ステップ(S3)で演算される測定量の正確性に関する情報に基づく出力情報を出力する出力ステップ(S4)とを含む。
【0127】
同様に、上記プログラムは、電圧センサ3についても、電圧センサ3で検出された電圧Vにかかる検出量に基づいて測定対象9についての電圧Vの測定量を演算し、センサ情報32のうち演算される測定量の正確性に関する情報に基づく出力情報を出力するようにコンピュータに実行される。
【0128】
これらの構成によれば、測定装置1は、電流センサ2及び電圧センサ3の個々のセンサにあらかじめ格納された、校正期限などのセンサにかかる測定量の正確性に関する情報を通信によって取得する。これにより、測定装置1は、利用者自ら設定することなく、センサにかかる測定量の正確性に関する情報を用いることができる。
【0129】
さらに測定装置1は、センサ情報22又はセンサ情報32に含まれる測定量の正確性に関する情報に基づく出力情報を出力することにより、演算される測定量がどのような検出性能を有するセンサによって得られるのか調べることが可能となる。例えば、測定に用いられたセンサが検出精度の高いものなのか、低いものなのかを把握したり、測定量が校正期限又は製品保証期限を過ぎたセンサによって得られた検出量に基づくものなのかを把握したりすることが可能となる。したがって、利用者は、測定量の正確性を把握することが可能となる。
【0130】
また、本実施形態における報知部70は、センサ情報22のうち出力情報として電流Iの測定量の正確性に関する情報を報知する。具体例として、報知部70は、図6のセンサ情報欄72に示すように、電流Iの測定量又はその測定量にかかる検出量を取得した測定装置1のチャンネル番号(CH1及びCH2)とともに、出力情報としてセンサ情報22に含まれるセンサ形名221、定格電流225及び校正期限226を表示する。
【0131】
この構成によれば、センサ情報22に含まれる出力情報が報知されるので、利用者は、電流Iの測定量がどのような検出性能を有する電流センサ2によって得られたのかを認識することができる。このように、測定量の演算に用いられる電流センサ2の検出性能を把握することができるので、測定結果の妥当性、信頼性又は信憑性などを判断することが可能になる。
【0132】
また、本実施形態におけるセンサ情報22は、出力情報として電流センサ2の校正期限226を示す情報を含む。この場合、報知部70は、センサ情報22に含まれる電流センサ2の校正期限226を報知する。
【0133】
この構成によれば、電流センサ2が校正期限226に近付いている、又は、校正期限226を過ぎていることを利用者に認識させることができる。これにより、電流センサ2の校正期限226について注意を喚起することができ、校正期限226後における電流センサ2の使用を抑制することができる。
【0134】
したがって、校正期限226後における電流センサ2の使用に伴う測定精度の低下を抑制できるので、利用者は、測定量の正確性を確保することが可能となる。また、測定量が校正期限226後の電流センサ2によって得られたものである場合には、利用者は、測定量の信頼性が低いことを認識することができる。
【0135】
また、本実施形態におけるセンサ情報22は、出力情報として電流センサ2の製品保証期限227を示す情報を含む。この場合、報知部70は、センサ情報22に含まれる電流センサ2の製品保証期限227を報知する。
【0136】
この構成によれば、電流センサ2が製品保証期限227を過ぎているか否かを利用者に認識させることができる。これにより、電流センサ2の故障が原因で測定量が異常な値を示しているときには、利用者は、製品保証期限227を過ぎないように、電流センサ2の無償修理又は新品交換を製造者に依頼することが可能となる。
【0137】
また、本実施形態における記憶部50は、測定量演算部40によって演算された電流Iの測定量とともに、センサ情報22のうち出力情報として電流センサ2にかかる測定量の正確性に関する情報を記憶する。
【0138】
この構成によれば、記憶部50に記憶された測定量に問題がある場合に、その問題が何に起因しているのか推察することが可能になる。例えば、利用者は、測定量に関連付けられたセンサ情報22を画面に表示させることにより、測定時期が電流センサ2の製品保証期限227又は校正期限226を過ぎていないかどうか、又は、センサ情報22に含まれているデータに誤りがないかどうかを確認することが可能となる。
【0139】
また、本実施形態における記憶部50は、測定量演算部40によって演算された電流Iの測定量とともに、出力情報としてセンサ情報22に含まれる電流センサ2の校正期限226を示す情報を記憶する。
【0140】
この構成によれば、測定量に関連付けられた校正期限226を表示させることが可能となり、測定時期が電流センサ2の校正期限226を過ぎていないかどうかを利用者が確認することができる。
【0141】
また、本実施形態における通信部60は、測定量演算部40によって演算された電流Iの測定量とともに、センサ情報22に含まれる電流センサ2にかかる測定量の正確性に関する情報を送信してもよい。このような場合には、利用者は、送信先の外部装置において測定量に関連付けられたセンサ情報22を表示させることができる。これにより、測定量の信頼性などを判断することができる。
【0142】
また、本実施形態における測定装置1は、複数のセンサとして電流センサ2及び電圧センサ3の各々と通信を行う。そしてセンサ情報取得部20及び検出信号取得部30は、電流センサ2及び電圧センサ3の個々のセンサごとに、センサにかかわる測定量の正確性に関する情報及びセンサで検出された検出量を取得する。
【0143】
具体的には、センサ情報取得部20は、電流センサ2からセンサ情報22を取得するとともに電圧センサ3からセンサ情報32を取得し、検出信号取得部30は、電流センサ2から電流Iにかかる検出量を取得するとともに電圧センサ3から電圧Vにかかる検出量を取得する。
【0144】
続いて、測定量演算部40は、電流センサ2の検出量に基づいて電流Iの測定量を演算するとともに、電圧センサ3の検出量に基づいて電圧Vの測定量を演算する。測定量演算部40は、例えば上式(1)のように、電流Iの実効値Irms、電圧Vの実効値Vrms及び電圧Vに対する電流Iの位相差θに基づいて、測定対象9の伝送電力Pの測定量を演算する。
【0145】
そして、出力手段として機能する記憶部50、通信部60及び報知部70の少なくとも一つは、図6に示したように、出力情報として、センサ情報22及びセンサ情報32に含まれる各センサにかかる測定量の正確性に関する情報に基づく出力情報を出力する。
【0146】
この構成によれば、測定装置1は、電流センサ2及び電圧センサ3などの複数のセンサの各々に格納された校正期限などのセンサにかかる測定量の正確性に関する情報を通信によって取得する。これにより、測定装置1においては、複数のセンサ情報を一つ一つ利用者自らが設定するような煩雑な操作を省略することができる。
【0147】
さらに、センサ情報22及びセンサ情報32に含まれる出力情報を出力することにより、測定量の演算に用いられた複数の検出量を検出した電流センサ2及び電圧センサ3の各検出性能を利用者が把握することが可能となる。したがって、利用者は、測定に用いられた各センサが検出精度の高いものなのか、検出精度が低いものなのかを把握したり、測定結果が各センサの校正期限後又は製品保証期限後の検出量に基づく測定量であるのか否かを把握したりすることが可能となる。それゆえ、測定量の正確性を把握することができる。
【0148】
また、本実施形態における電流センサ2は、測定量の正確性に関する情報を出力する測定装置1と通信を行う。そして電流センサ2は、測定対象にかかる検出量を検出する検出手段と、測定装置1で得られる測定量の正確性に関する情報を含むセンサ情報22を保持する保持手段として機能するメモリ21とを含む。さらに電流センサ2は、上記検出量及び電流センサ2にかかる測定量の正確性に関する情報を測定装置1に送信する通信手段を含む。
【0149】
この構成によれば、電流センサ2は、センサ情報22を保持するメモリ21を備えることにより、測定装置1は、センサ情報22を通信によって取得することが可能となる。それゆえ、測定装置1は、利用者自らセンサ情報22を測定装置1に設定することなく、センサ情報22に含まれる測定量の正確性に関する情報を用いることができる。
【0150】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0151】
例えば、本実施形態では電流センサ2に加えて電圧センサ3にもセンサ情報が格納されていたが、電流センサ2及び電圧センサ3の一方のみにセンサ情報が格納されている構成であってもよい。
【0152】
また、本実施形態では電流センサ2の検出量を補正するために位相特性データ223を用いたが、この代わりに群遅延特性データを用いて位相の補正を行ってもよい。
【0153】
また、本実施形態では測定対象9が一本の電線路であったが、測定対象9は、三相交流電力を伝送する三本の電線路であってもよい。この場合であっても、三つの電流センサ2及び三つの電圧センサ3を測定対象9に設置し、測定装置1は、本実施形態と同様に各センサから取得される三つのセンサ情報22及び三つのセンサ情報32に基づいて三相交流電力を演算してもよい。
【0154】
また、本実施形態では電流センサ2及び電圧センサ3が測定対象9の交流電流及び交流電圧にかかる検出量を検出したが、電流センサ2及び電圧センサ3が測定対象9の直流電流及び直流電圧にかかる検出量を検出してもよい。
【0155】
また、本実施形態では測定装置1に操作部10、通信部60及び報知部70が設けられているが、例えば操作部10、通信部60及び報知部70の少なくとも一方を省略してもよい。
【0156】
また、本実施形態では電流センサ2及び電圧センサ3はいずれも測定対象9に非接触で検出量を検出したが、測定装置1に接続されるセンサは、測定対象9に接触して検出量を検出するものであってもよい。例えば、センサは、測定対象9にプローブを接触し測定対象9の高電圧を測定装置1に入力できる電圧に変換して変換後の電圧を検出量として出力する高圧プローブであってもよい。あるいは、センサは、測定対象9にプローブを接触し大電流を測定装置1に入力できる電圧に変換して変換後の電圧を検出量として出力する分流器であってもよい。
【0157】
また、本実施形態では測定装置1は期限データをそのまま報知又は記録したが、期限データを利用して生成された情報を報知又は記録してもよい。例えば、期限データである校正期限226と測定装置1の内部時計によって取得される現在日時とを比較して校正期限が近づいていることを表示したり、期限データである校正期限226と現在日時とを比較して校正期限が過ぎていることを記録したりしてもよい。
【0158】
また、本実施形態では、電流センサ2及び電圧センサ3を測定装置1に外付けしていたが、これらを測定装置1に内蔵したり、測定装置1に着脱可能な測定ユニットに対して電流センサ2及び電圧センサ3の一方又は双方を内蔵又は外付けしたりしてもよい。ここで、測定ユニットは、測定装置1に着脱可能であって、測定装置1に取り付けて測定装置1の一部をなすものである。
【0159】
このように、上述した測定ユニットは、電流センサ2及び電圧センサ3などのセンサにかかる測定量の正確性に関する情報に基づく情報を出力する測定装置1に脱着可能であり、測定装置1と通信を行う上記センサを有する。そして測定ユニットは、測定対象9にかかる検出量を検出する検出手段と、上記センサにかかる測定量の正確性に関する情報を保持する保持手段と、上記の検出量及び情報を測定装置1に送信する通信手段と、を備える。
【0160】
この構成によれば、測定装置1は、センサ情報22及びセンサ情報32を通信によって取得することが可能となる。それゆえ、測定装置1は、利用者自らセンサ情報22及びセンサ情報32を測定装置1に設定することなく、センサ情報22及びセンサ情報32に含まれる測定量の正確性に関する情報を用いることができる。
【符号の説明】
【0161】
1 測定装置
2 電流センサ(センサ、検出手段、保持手段、通信手段)
3 電圧センサ(センサ、検出手段、保持手段、通信手段)
20 センサ情報取得部(取得手段)
21、31 メモリ(保持手段)
22、32 センサ情報
30 検出信号取得部(取得手段)
31 メモリ(保持手段)
40 測定量演算部(演算手段)
50 記憶部(出力手段)
60 通信部(出力手段)
70 報知部(出力手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8