(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112517
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】調光モジュールおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
H04N 23/75 20230101AFI20230804BHJP
G03B 11/00 20210101ALI20230804BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20230804BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20230804BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
H04N5/238
G03B11/00
G03B17/02
H04N5/225 400
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014356
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】森田 周司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正也
【テーマコード(参考)】
2H083
2H088
2H100
5C122
【Fターム(参考)】
2H083AA05
2H083AA15
2H083AA26
2H083AA32
2H088EA33
2H088HA01
2H088HA02
2H088HA06
2H088HA14
2H088HA23
2H088HA28
2H088MA16
2H100BB05
2H100EE00
5C122EA04
5C122FF08
5C122FF22
5C122FF23
5C122HB01
5C122HB06
(57)【要約】
【課題】温度センサを用いずに温度特性による変化を補正して液晶透過率を算出する。
【解決手段】本開示の調光モジュールは、光の透過率を調整する液晶パネルと、検出光を照射する発光素子と、検出光のうち液晶パネルを透過する第1検出光を受光し、第1検出光の光量に関連する第1出力値を出力する第1受光素子と、検出光のうち液晶パネルを透過しない第2検出光を受光し、第2検出光の光量に関連する第2出力値を出力する第2受光素子と、温度変化による第2出力値の変化に基づいて第1出力値を補正し、補正した第1出力値に基づいて液晶パネルの液晶透過率を算出する透過率算出部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の透過率を調整する液晶パネルと、
検出光を照射する発光素子と、
前記検出光のうち前記液晶パネルを透過する第1検出光を受光し、前記第1検出光の光量に関連する第1出力値を出力する第1受光素子と、
前記検出光のうち前記液晶パネルを透過しない第2検出光を受光し、前記第2検出光の光量に関連する第2出力値を出力する第2受光素子と、
温度変化による前記第2出力値の変化に基づいて前記第1出力値を補正し、補正した前記第1出力値に基づいて前記液晶パネルの液晶透過率を算出する透過率算出部と、
を備える、
調光モジュール。
【請求項2】
前記液晶パネルに設けられたクリアパネルを更に備え、
前記第2検出光は、前記検出光のうち前記クリアパネルを透過した光である、
請求項1に記載の調光モジュール。
【請求項3】
前記第1受光素子及び前記第2受光素子は、それぞれ、任意の温度において前記第1検出光及び前記第2検出光を受光し、
前記透過率算出部は、
基準温度における受光素子の出力値と透過率との関係を示す基準特性データを取得し、
前記任意の温度における前記第2出力値と、前記基準特性データと、に基づいて、前記任意の温度における受光素子の出力値と透過率との関係を示す推定特性データを算出し、
前記任意の温度における前記第1出力値と前記推定特性データとに基づいて、前記液晶透過率を算出する、
請求項1又は2に記載の調光モジュール。
【請求項4】
前記透過率算出部は、
前記基準特性データにおいて透過率100%を示す基準出力値を算出し、
前記任意の温度における前記第2出力値と前記基準出力値との比率を算出し、
前記比率を用いて前記基準特性データを前記推定特性データに換算する、
請求項3に記載の調光モジュール。
【請求項5】
前記第1受光素子及び前記第2受光素子は、それぞれ、任意の温度において前記第1検出光及び前記第2検出光を受光し、
前記透過率算出部は、
基準温度における受光素子の出力値と透過率との関係を示す基準特性データを取得し、
前記基準特性データにおいて透過率100%を示す基準出力値を算出し、
前記任意の温度における前記第1出力値、前記任意の温度における前記第2出力値及び前記基準出力値に基づいて、前記基準温度における前記第1出力値を算出し、
前記基準温度における前記第1出力値と前記基準特性データとに基づいて前記液晶透過率を算出する、
請求項1又は2に記載の調光モジュール。
【請求項6】
前記第1受光素子の温度特性と前記第2受光素子の温度特性とは、略同じである、
請求項1~5のいずれか一項に記載の調光モジュール。
【請求項7】
前記透過率算出部で算出された前記液晶透過率に基づいて、前記液晶パネルの透過率を制御する調光制御部を更に備える、
請求項6に記載の調光モジュール。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の調光モジュールと、
撮像光を撮像する撮像素子と、
を備える、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、調光モジュールおよび撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、一対の電極の間に設けられた液晶層と、液晶層の光透過率を検出する透過率センサとを備えた調光モジュール及びそれを備える撮像装置が開示されている。また、特許文献1の調光モジュールでは、透過率センサの近傍に温度センサを設けることにより、透過率センサの温度変化に起因した信号の変動を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の調光モジュールおよび撮像装置では、温度センサを用いずに温度特性による変化を補正して液晶透過率を算出することができないという課題がある。
【0005】
そこで、本開示は、温度センサを用いずに温度特性による変化を補正して液晶透過率を算出する調光モジュールおよび撮像装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本開示の一態様の調光モジュールは、
光の透過率を調整する液晶パネルと、
検出光を照射する発光素子と、
前記検出光のうち前記液晶パネルを透過する第1検出光を受光し、前記第1検出光の光量に関連する第1出力値を出力する第1受光素子と、
前記検出光のうち前記液晶パネルを透過しない第2検出光を受光し、前記第2検出光の光量に関連する第2出力値を出力する第2受光素子と、
温度変化による前記第2出力値の変化に基づいて前記第1出力値を補正し、補正した前記第1出力値に基づいて前記液晶パネルの液晶透過率を算出する透過率算出部と、
を備える。
【0007】
本開示の一態様の撮像装置は、
上記態様の調光モジュールと、
撮像光を撮像する撮像素子と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、温度センサを用いずに温度特性による変化を補正して液晶透過率を算出する調光モジュールおよび撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る調光モジュールの概略斜視図
【
図2】
図1に示す調光モジュールのZ1部分の概略断面図
【
図4】本開示の実施の形態1に係る調光モジュールを備えた撮像装置の概略構成を示すブロック図
【
図6】本開示の実施の形態1における液晶透過率算出のフローチャート
【
図7】基準特性データの一例を説明するための概略図
【
図8】受光素子の温度特性の一例を説明するための概略図
【
図9】推定特性データを用いて液晶透過率算出の一例を説明するための概略図
【
図10】本開示の実施の形態2における液晶透過率算出のフローチャート
【
図11】本開示の実施の形態2における液晶透過率算出の一例を説明するための概略図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示に至った経緯)
特許文献1に記載の調光モジュールでは、透過率センサが同じ光透過率を検出した場合であっても、透過率センサから出力される信号は温度によって変動する。例えば、透過率センサの温度が高くなると、透過率センサから出力される電流値が大きくなる。このため、特許文献1に記載の調光モジュールでは、透過率センサの近傍に温度センサを設けることにより、透過率センサの温度変化に起因した信号の変動を補正している。
【0011】
しかしながら、調光モジュールに温度センサを設ける場合、部品点数が増え、調光モジュールの小型化が難しいという問題がある。また、温度センサの位置によっては、透過率センサの温度が精度よく測定することができず、正確な液晶透過率を算出できない場合がる。
【0012】
そこで、本発明者(ら)は、温度センサを用いずに温度特性による変化を補正して液晶透過率を算出する構成を見出し、以下の開示に至った。
【0013】
以下、本開示の実施の形態に係る調光モジュールおよび撮像装置について図面を参照しながら説明する。
【0014】
(実施の形態1)
本開示の実施の形態1に係る調光モジュールについて
図1~
図3を用いて説明する。
図1は、本開示の実施の形態1に係る調光モジュールの概略斜視図である。
図2は、
図1に示す調光モジュールのZ1部分の概略断面図である。
図3は、調光モジュールの概略構成を示すブロック図である。
【0015】
なお、図に示すX-Y-Z座標系は、本開示の理解を容易にするためのものであって、本開示を限定するものではない。X軸方向は調光モジュール1の左右方向を示し、Y軸は前後方向を示し、Z軸方向は上下方向を示している。また、本明細書においては、調光モジュール1に光が入射する側を「前側」とし、調光モジュール1に光が入射する側と反対側を「後側」としている。
【0016】
調光モジュール1は、液晶パネル10を電気的に制御することによって、液晶パネル10に入射される光の光量を調整するモジュールである。例えば、調光モジュール1は、カメラなどの撮像装置のNDフィルタとして用いられる。調光モジュール1がNDフィルタとして用いられる場合、調光モジュール1は、撮像装置において、レンズと撮像素子との間に配置される。この場合、調光モジュールの前側は、レンズが存在する側に相当し、調光モジュールの後側は撮像素子が存在する側に相当する。
【0017】
[調光モジュールの構成について]
図1~3に示すように、本実施の形態1に係る調光モジュール1は、液晶パネル10、発光ユニット20、受光ユニット30および遮光部材40を備える。また、調光モジュール1は、機能的構成として、透過率算出部50および調光制御部51を備える。調光モジュール1を構成するこれらの要素は、筐体2に収納されている。なお、発光ユニット20、受光ユニット30および遮光部材40は、
図1に示すZ1部分に配置されている。
【0018】
<液晶パネル>
液晶パネル10は、入射される光の透過率を調整するパネルである。具体的には、液晶パネル10は、第1面PS1、および第1面PS1に対向する第2面PS2を有する板形状を有する。第1面PS1は、調光モジュール1の前側に位置する面であり、液晶パネル10において光が入射する側の面である。第2面PS2は、調光モジュール1の後側に位置する面であり、液晶パネル10において光が透過する側の面である。
【0019】
液晶パネル10は、複数のガラス基板と1つ又は複数の液晶層とが積層された積層構造を有している。ガラス基板は、透明なガラスで形成された基板であり、フラットな板形状を有している。液晶層は、液晶分子を含有している。液晶分子は、例えば、長軸方向と短軸方向を有する棒状の形状を有しており、電圧が印加されると向きが変わる分子である。液晶分子は、その向きによって光学的な性質が変化する。
【0020】
液晶パネル10では、複数のガラス基板の間に液晶層が挟まれており、最外層の2つのガラス基板にはそれぞれ透明電極が設けられており、透明電極に電圧が印加されることによって液晶層の液晶分子の向きが変更される。これにより、液晶パネル10に入射される光の透過率を調整することができる。本実施の形態では、液晶パネル10は、透明電極に電圧を印加することによって、液晶分子の長軸方向がガラス基板と平行になる方向に変化する。このため、透明電極に印加する電圧が大きくなるほど液晶パネル10の透過率が小さくなり、透明電極に印加する電圧が小さくなるほど液晶パネル10の透過率が大きくなる。
【0021】
液晶パネル10には、クリアパネル11が設けられている。クリアパネル11は、例えば、液晶パネル10を構成するガラス基板の一部で形成されている。クリアパネル11は、液晶パネル10の外周に設けられている。
【0022】
液晶パネル10は枠状の筐体2に収納されており、液晶パネル10の外周部分、即ちクリアパネル11は筐体2によって支持されている。このため、液晶パネル10の第1面PS1は調光モジュール1の前側で筐体2から露出し、液晶パネル10の第2面PS2は調光モジュール1の後側で筐体2から露出している。
【0023】
<発光ユニット>
発光ユニット20は、検出光を照射するユニットである。発光ユニット20は、発光素子21を有する。発光素子21は、例えば、LED(Light Emitting Dioede)等を用いることができる。検出光は、液晶パネル10の透過率を検出するために用いられる光である。発光素子21は、検出光として、例えば、可視光を照射する。可視光は、例えば、350nm以上600nm以下の波長を有する光である。
【0024】
発光ユニット20は、第1検出光L1と第2検出光L2を照射する発光素子21を有する。
【0025】
発光ユニット20は、液晶パネル10の第1面PS1側に配置されている。発光素子21は、液晶パネル10の第1面PS1に向けて第1検出光L1を照射する。第1検出光L1は、液晶パネル10の第1面PS1から第2面PS2に向かって液晶パネル10を透過し、後述する受光ユニット30の第1受光素子31に入射する。また、発光素子21は、液晶パネル10の外周に設けられたクリアパネル11に向かって第2検出光L2を照射する。第2検出光L2は、クリアパネル11を透過し、後述する受光ユニット30の第2受光素子32に入射する。本実施形態では、第1検出光L1及び第2検出光L2は、後述する遮光部材40に設けられた開口41,42を通って受光ユニット30に入射される。
【0026】
<受光ユニット>
受光ユニット30は、発光ユニット20から照射された光を受光するユニットである。受光ユニット30は、第1受光素子31および第2受光素子32を有する。第1受光素子31および第2受光素子32は、例えば、フォトダイオード又はフォトトランジスタ等を用いることができる。
【0027】
第1受光素子31は、発光ユニット20から照射された検出光のうち液晶パネル10を透過する第1検出光L1を受光する。第1受光素子31は、第1検出光L1の光量に関連する第1出力値を出力する。第2受光素子32は、発光ユニット20から照射された検出光のうち液晶パネル10を透過しない第2検出光L2を受光する。つまり、第2受光素子32は、クリアパネル11を透過した第2検出光L2を受光する。第2受光素子32は、第2検出光L2の光量に関連する第2出力値を出力する。
また、第1出力値及び第2出力値は、電圧値である。なお、第1出力値及び第2出力値は、電流値であってもよい。
【0028】
第1受光素子31と第2受光素子32は、略同じ温度特性を有する。本明細書で「略」とは5%以内の誤差を意味してもよい。好ましくは、「略」は2%以内の誤差を意味してもよい。より好ましくは、「略」は1%以内の誤差を意味してもよい。
【0029】
受光ユニット30は、液晶パネル10の第2面PS2側に配置されている。第1検出光L1は、液晶パネル10の第1面PS1から第2面PS2に向かって液晶パネル10を透過し、第1受光素子31に入射する。
【0030】
<遮光部材>
遮光部材40は、発光ユニット20から照射された漏光を遮光する部材である。光が入射する液晶パネル10の主面側から見て、遮光部材40には、第1受光素子31および第2受光素子32と重なる部分に開口41,42が設けられている。光が入射する液晶パネル10の主面側とは、液晶パネル10の第1面PS1から第2面PS2に向かう方向(Y方向)を意味する。本実施形態では、遮光部材40は、例えば、板状の部材で形成されている。また、遮光部材40は、液晶パネル10の第1面PS1側に配置されている。
【0031】
発光ユニット20から照射される第1検出光L1は、遮光部材40の開口41を通り、第1受光素子31に入射する。また、発光ユニット20から照射される第2検出光L2は、遮光部材40の開口42を通り、第2受光素子32に入射する。一方、発光ユニット20から生じる漏光は、遮光部材40によって遮光される。
【0032】
次に、調光モジュール1の機能的構成として、透過率算出部50及び調光制御部51について説明する。
【0033】
<透過率算出部>
透過率算出部50は、第1受光素子31から出力される第1出力値、第2受光素子32から出力される第2出力値と、に基づいて、液晶パネル10の液晶透過率Qを算出する。第1出力値は液晶パネル10を透過した第1検出光L1の光量に関連し、第2出力値は液晶パネル10を透過せずクリアパネル11を透過した第2検出光L2の光量に関連する。液晶透過率Qは、第1出力値と第2出力値とに基づいて算出される液晶パネル10の透過率である。例えば、透過率算出部50は、第2出力値に基づいて第1出力値を補正し、補正した第1出力値に基づいて液晶透過率Qを算出する。
【0034】
第1受光素子31及び第2受光素子32においては、温度変化に起因して出力値が変動する。このため、実際には液晶パネル10の透過率が変化していない場合であっても温度が変化すると、第1出力値及び第2出力値が変化する。
【0035】
透過率算出部50は、温度変化による第2出力値の変化に基づいて第1出力値を補正し、補正した第1出力値に基づいて液晶パネル10の液晶透過率Qを算出する。これにより、透過率算出部50は、温度センサを用いずに受光素子の温度特性の変化による出力値の変化を補正して液晶透過率Qを算出することができる。
【0036】
<調光制御部>
調光制御部51は、透過率算出部50で算出された液晶透過率Qに基づいて、液晶パネル10の透過率を制御する。例えば、調光制御部51は、設定された目標透過率と液晶透過率Qに基づいて液晶パネル10の透過率を制御する。目標透過率とは、予め設定された複数の設定値の中から選択される値であってもよいし、所定の数値範囲内から選択される値であってもよい。例えば、液晶パネル10の透過率が1%以上25%以下の範囲で設定変更可能な場合、目標透過率は、1%以上25%以下の範囲内から選択される値であってもよい。目標透過率は、ユーザによって設定されてもよいし、所定の条件に応じて自動的に設定されてもよい。
【0037】
調光制御部51は、目標透過率と液晶透過率Qとを比較し、液晶透過率Qが目標透過率と等しくなるように、液晶パネル10の透過率を制御する。本実施形態では、調光制御部51は、液晶パネル10に印加する電圧を制御することによって、液晶パネル10の透過率を制御する。例えば、調光制御部51は、透過率を大きくしたい場合、液晶パネル10に印加する電圧を小さくし、透過率を小さくしたい場合、液晶パネル10に印加する電圧を大きくする。
【0038】
透過率算出部50および調光制御部51は、電子回路で実現可能である。透過率算出部50および調光制御部51は、例えば、マイコン、CPU、MPU、GPU、DSP、FPGA、ASICで構成することができる。透過率算出部50および調光制御部51の機能は、ハードウェアのみで構成してもよいし、ハードウェアとソフトウェアとを組み合わせることにより実現してもよい。透過率算出部50および調光制御部51は、メモリなどの記憶部に格納されたデータやプログラムを読み出して種々の演算処理を行うことで、所定の機能を実現する。
【0039】
[撮像装置]
図4及び
図5を用いて、実施の形態1に係る調光モジュール1を備える撮像装置について説明する。
図4は、本開示の実施の形態1に係る調光モジュールを備えた撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
図5は、撮像装置の概略部分断面図である。なお、
図5は、撮像装置100において調光モジュール1が配置されている部分の断面を示す。
【0040】
図4及び
図5に示すように、撮像装置100は、調光モジュール1、撮像素子60及び制御部61を備えており、簡略化のために画像処理エンジン、表示モニタ、操作部、メモリカードスロットなどの構成を省略している。
【0041】
<撮像素子>
撮像素子60は、撮像光を撮像する素子である。具体的には、撮像素子60は、調光モジュール1を透過して入射してくる撮像光Lsを検出し、撮像信号を取得する素子である。撮像素子60は、例えば、CCD,CMOS等のイメージセンサである。
【0042】
撮像素子60は、調光モジュール1の後側、即ち、調光モジュール1の第2面PS2側に配置される。撮像素子60は、液晶パネル10の第1面PS1から第2面PS2に向かって液晶パネル10を透過した撮像光Lsを検出する。
【0043】
<制御部>
制御部61は、撮像装置100の構成要素を統括的に制御する。具体的には、制御部61は、調光モジュール1および撮像素子60を制御する。制御部61は、電子回路で実現可能である。制御部61は、例えば、マイコン、CPU、MPU、GPU、DSP、FPGA、ASICで構成することができる。制御部61の機能は、ハードウェアのみで構成してもよいし、ハードウェアとソフトウェアとを組み合わせることにより実現してもよい。制御部61は、メモリなどの記憶部に格納されたデータやプログラムを読み出して種々の演算処理を行うことで、所定の機能を実現する。
【0044】
[液晶透過率算出の一例について]
図6を用いて、温度センサを用いずに受光素子の温度特性による変化を補正して液晶透過率を算出する処理の一例について説明する。
図6は、液晶透過率算出のフローチャートである。
【0045】
図6に示すように、ステップS1では、透過率算出部50は基準特性データを取得する。基準特性データは、基準温度T
0における受光素子の出力値と透過率との関係を示す。基準温度T
0は、出力値の補正の基準となる温度を示す。
【0046】
図7は、基準特性データの一例を説明するための概略図である。
図7に示すように、基準特性データは、基準温度T
0において受光素子から出力される電圧値(出力電圧)と透過率との関係を示すグラフである。本実施の形態では、基準特性データは、基準温度T
0における第2受光素子32の第2出力値V
2(T
0)と透過率との関係を示す。なお、基準特性データの受光素子は、第1受光素子31又は第2受光素子32と略同じ特性を有する受光素子であってもよい。
【0047】
例えば、基準特性データは、基準温度T0において出力電圧と透過率とが比例する関係を示す。基準特性データにおいては、基準温度T0において出力電圧が大きくなるほど、透過率が大きくなっている。
【0048】
基準特性データは、例えば、調光モジュール1の記憶部に格納されている。透過率算出部50は、記憶部から基準特性データを読み出している。
【0049】
図6に戻って、ステップS2では、第1受光素子31及び第2受光素子32は、それぞれ、任意の温度T
1において第1検出光L1及び第2検出光L2を受光する。これにより、第1受光素子31は、第1検出光L1の光量に関連する第1出力値として第1電圧値V
1(T
1)を出力し、第2受光素子32は、第2検出光L2の光量に関連する第2出力値として第2電圧値V
2(T
1)を出力する。
【0050】
ステップS3では、透過率算出部50は、任意の温度T1における第2出力値V2(T1)と基準特性データとに基づいて推定特性データを算出する。推定特性データは、任意の温度T1における受光素子の出力値と透過率との関係を示す。本実施の形態では、推定特性データは、任意の温度T1における第2受光素子32の第2出力値V2(T1)と透過率との関係を示す。なお、推定特性データの受光素子は、第2受光素子32に限定されない。例えば、推定特性データの受光素子は、第1受光素子31又は第2受光素子32と略同じ特性を有する受光素子であってもよい。
【0051】
図8は、受光素子の温度特性の一例を説明するための概略図である。
図8に示すグラフは、第1受光素子31及び第2受光素子32の温度特性を示す。
図8に示すように、第1受光素子31と第2受光素子32とは略同じ温度特性を有している。このため、第1受光素子31及び第2受光素子32の出力値は、温度の変化に伴い、同じように変化する。即ち、第1受光素子31及び第2受光素子32の出力値は、基準特性データに対して略同じ比率で変化する。
【0052】
透過率算出部50は、任意の温度T1における第2出力値V2(T1)と基準温度T0における基準出力値V2(T0)との比率V2(T1)/V2(T0)によって推定特性データを算出する。基準出力値V2(T0)は、基準温度T0において透過率が100%となる受光素子の出力値である。具体的には、透過率算出部50は、比率V2(T1)/V2(T0)で基準特性データを換算することによって推定データを算出する。
【0053】
図9は、推定特性データを用いて液晶透過率算出の一例を説明するための概略図である。
図9に示すように、透過率算出部50は、V
2(T
1)/V
2(T
0)=V
1(T
1)/V
1(T
0)の関係を用いて任意の温度T
1における出力電圧V(T
1)と透過率の関係を示す推定特性データを算出する。
【0054】
図6に戻って、ステップS4では、透過率算出部50は、任意の温度T
1における第1出力値V
1(T
1)と推定特性データとに基づいて液晶透過率Qを算出する。
【0055】
、
図9に示すように、透過率算出部50は、ステップS3で算出した推定特性データから任意の温度T
1における第1出力値V
1(T
1)の透過率Q
1(T
1)を算出する。このようにして、透過率算出部50は、温度変化による第2出力値の変化に基づいて第1出力値を補正し、補正した第1出力値に基づいて液晶パネル10の液晶透過率Qを算出する。
【0056】
[効果]
本開示の実施の形態1に係る調光モジュール1においては、液晶パネル10、発光素子21、第1受光素子31、第2受光素子32及び透過率算出部50を備える。液晶パネル10は、光の透過率を調整する。発光素子21は、検出光を照射する。第1受光素子31は、検出光のうち液晶パネル10を透過する第1検出光L1を受光し、第1検出光L1の光量に関連する第1出力値を出力する。第2受光素子32は、検出光のうち液晶パネル10を透過しない第2検出光L2を受光し、第2検出光L2の光量に関連する第2出力値を出力する。透過率算出部50は、温度変化による第2出力値の変化に基づいて第1出力値を補正し、補正した第1出力値に基づいて液晶パネル10の液晶透過率Qを算出する。
【0057】
このような構成により、温度センサを用いずに温度特性による変化を補正して液晶パネル10の液晶透過率Qを算出できる。即ち、調光モジュール1によれば、温度センサを用いずとも受光素子の出力値の変動を補正し、正確な液晶透過率Qを算出できる。また、温度センサが不要となるため、調光モジュール1の部品点数を減らし、小型化すると共に製造コストを低減できる。
【0058】
また、実施の形態1に係る調光モジュール1は、液晶パネル10に設けられたクリアパネル11を更に備え、第2検出光L2は、発光ユニット20から照射された検出光のうちクリアパネル11を透過した光である。このような構成により、第2検出光L2が減光されにくく、発光素子21からの第2検出光L2を正確に検出することができる。
【0059】
また、第1受光素子31及び第2受光素子32は、それぞれ、任意の温度T1において第1検出光L1及び第2検出光L2を受光する。透過率算出部50は、基準温度T0における受光素子の出力値と透過率との関係を示す基準特性データを取得する。透過率算出部50は、任意の温度T1における第2出力値V2(T1)と、基準特性データと、に基づいて、任意の温度T1における受光素子の出力値と透過率との関係を示す推定特性データを算出する。透過率算出部50は、任意の温度T1における第1出力値V1(T1)と推定特性データとに基づいて、液晶透過率Q1(T1)を算出する。このような構成により、第2受光素子32の第2出力値と基準特性データとに基づいて推定特性データを算出し、推定特性データと任意の温度T1における第1出力値V1(T1)に基づいて液晶パネル10の液晶透過率Q1(T1)を算出できる。これにより、温度センサを用いずとも正確に液晶パネル10の液晶透過率Q1(T1)を算出できる。
【0060】
また、透過率算出部50は、基準特性データにおいて透過率100%を示す基準出力値V2(T0)を算出し、任意の温度T1における第2出力値V2(T1)と基準出力値V2(T0)との比率を算出し、基準特性データと比率とに基づいて推定特性データを算出する。このような構成により、温度センサを用いずともより正確に液晶パネル10の液晶透過率Q1(T1)を算出できる。
【0061】
また、検出光は、可視光である。可視光は、透過率の検出範囲が大きいため、より正確に透過率を検出することができる。
【0062】
また、第1受光素子31の温度特性と第2受光素子32の温度特性とは、略同じである。このような構成により、温度センサを用いずともより正確に液晶パネル10の液晶透過率Qを算出できる。
【0063】
また、実施の形態1に係る調光モジュール1を備える撮像装置100についても、上述した調光モジュール1の効果と同様の効果を奏することができる。
【0064】
なお、本実施の形態では、遮光部材40及び調光制御部51は必須の構成ではない。調光モジュール1は、遮光部材40及び調光制御部51を備えていなくてもよい。例えば、調光制御部51は、調光モジュール1とは別の制御装置が備えており、調光モジュール1は第1受光素子31及び第2受光素子32の第1出力値及び第2出力値の情報を制御装置に送信してもよい。
【0065】
本実施の形態では、第1受光素子31及び第2受光素子32が液晶パネル10の第1面PS1側に配置され、発光素子21が液晶パネル10の第2面PS2側に配置される例について説明したが、これに限定されない。例えば、第1受光素子31及び第2受光素子32が液晶パネル10の第2面PS2側に配置されてもよく、発光素子21が液晶パネル10の第1面PS1側に配置されてもよい。
【0066】
本実施の形態では、遮光部材40が液晶パネル10の第1面PS1側に配置される例について説明したが、これに限定されない。例えば、遮光部材40は、液晶パネル10の第2面PS2側に配置されてもよい。
【0067】
本実施の形態では、検出光が可視光である例について説明したが、これに限定されない。例えば、検出光は赤外光又は紫外光等であってもよい。
【0068】
本実施の形態では、撮像装置100が制御部61を備える例について説明したが、これに限定されない。制御部61は、必須の構成ではない。この場合、制御部61は、撮像装置100を制御する別の制御装置に含まれていてもよい。
【0069】
本実施の形態では、透過率算出部50、調光制御部51および制御部61が別個の要素である例について説明したが、これに限定されない。例えば、透過率算出部50、調光制御部51および制御部61のうち1つ又は複数の要素は、統合されてもよいし、更に分割されてもよい。
【0070】
(実施の形態2)
本開示の実施の形態2に係る調光モジュールについて説明する。なお、実施の形態2においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明し、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0071】
実施の形態2では、実施の形態1の調光モジュール1において液晶透過率の算出処理の別例を説明する。実施の形態2では、推定特性データを算出せずに液晶透過率を算出する点が実施の形態1と異なる。
【0072】
図10は本開示の実施の形態2における液晶透過率算出のフローチャートである。
図11は本開示の実施の形態2における液晶透過率算出の一例を説明するための概略図である。
【0073】
図10に示すように、ステップS1では、透過率算出部50が基準特性データを取得する。
【0074】
ステップS2では、第1受光素子31及び第2受光素子32は、それぞれ、任意の温度T1において第1検出光L1及び前記第2検出光L2を受光する。これにより、第1受光素子31は、第1検出光L1の光量に関連する第1出力値を出力し、第2受光素子32は、第2検出光L2の光量に関連する第2出力値を出力する。
【0075】
ステップS13では、透過率算出部50が基準特性データにおいて透過率100%を示す基準出力値を算出する。本実施の形態では、基準特性データは、基準温度T0における第2受光素子32の第2出力値V2(T0)と透過率との関係を示すデータである。このため、基準出力値は、基準温度T0において透過率が100%となる第2出力値V2(T0)となる。
【0076】
ステップS14では、透過率算出部50が任意の温度T1における第1出力値V1(T1)、任意の温度T1における第2出力値V2(T1)及び基準出力値V2(T0)に基づいて、基準温度T0における第1出力値V1(T0)を算出する。
【0077】
実施の形態1において説明したように、第1受光素子31及び第2受光素子32は、略同じ温度特性を有する。このため、
図11に示すように、第1受光素子31の第1出力値と第2受光素子32の第2出力値とは、基準特性データに対して同じ比率で変化する。具体的には、以下の関係が成り立つ。
【0078】
V1(T1)/V1(T0)=V2(T1)/V2(T0)
V1(T0):基準温度T0における第1受光素子31の第1出力値
V1(T1):任意の温度T1における第1受光素子31の第1出力値
V2(T0):基準温度T0における第2受光素子32の第2出力値(基準出力値)
V2(T1):任意の温度T1における第2受光素子32の第2出力値
【0079】
上記関係から、基準温度T0における第1受光素子31の第1出力値V1(T0)は以下の数式で算出できる。
【0080】
V1(T0)=V1(T1)×[V2(T0)/V2(T1)]
【0081】
このように、透過率算出部50は、基準特性データと任意の温度T1における第2受光素子32の第2出力値V2(T1)とに基づいて、任意の温度T1における第1受光素子31の第1出力値V1(T1)を、基準温度T0の第1受光素子31の第1出力値V1(T0)に補正する。
【0082】
図10に戻って、ステップS15では、透過率算出部50は、算出した基準温度T
0における第1出力値V
1(T
0)と基準特性データとに基づいて液晶透過率Q
1(T
0)を算出する。具体的には、
図11に示すように、透過率算出部50は、基準特性データから第1出力値V
1(T
0)に対応する透過率を算出する。
【0083】
[効果]
本開示の実施の形態2に係る調光モジュール1においては、第1受光素子31及び第2受光素子32は、それぞれ、任意の温度T1において第1検出光L1及び第2検出光L2を受光する。透過率算出部50は、基準温度T0における受光素子の出力値と透過率との関係を示す基準特性データを取得し、基準特性データにおいて透過率100%を示す基準出力値V2(T0)を算出する。透過率算出部50は、任意の温度T1における第1出力値V1(T1)、任意の温度T1における第2出力値V2(T1)及び基準出力値V2(T0)に基づいて、基準温度T0における第1出力値V1(T0)を算出する。透過率算出部50は、基準温度T0における第1出力値V1(T0)と基準特性データとに基づいて液晶透過率Q1(T0)を算出する。
【0084】
このような構成により、温度センサを用いずに温度特性による変化を補正して液晶パネル10の液晶透過率Q1(T0)を算出できる。即ち、調光モジュール1によれば、温度センサを用いずとも受光素子の出力値の変動を補正し、正確な液晶透過率Q1(T0)を算出できる。また、温度センサが不要となるため、調光モジュール1の部品点数を減らし、小型化すると共に製造コストを低減できる。さらに、実施の形態1の推定特性データを算出せずとも液晶透過率Q1(T0)を算出できるため、演算効率を向上できる。
【0085】
以下、本開示の実施の形態1及び2の調光モジュール1の変形例について説明する。
【0086】
[変形例1]
図12は、変形例1の調光モジュールの概略断面図である。
図12に示すように、調光モジュール1Aでは、液晶パネル10にクリアパネル11が設けられていなくてもよい。調光モジュール1Aでは、発光ユニット20の発光素子21から照射された第2検出光L2は、そのまま第2受光素子32に照射されてもよい。このような構成においても、第2検出光L2が減光されにくく、発光素子21からの第2検出光L2を正確に検出することができる。
【0087】
なお、変形例1では、液晶パネル10にクリアパネル11が設けられていない例を説明したが、これに限定されない。変形例1では、液晶パネル10にクリアパネル11が設けられていてもよい。この場合、第2検出光L2は、クリアパネル11を透過せずに第2受光素子32に入射される。
【0088】
[変形例2]
図13は、変形例2の調光モジュールの概略断面図である。
図13に示すように、調光モジュール1Bは、発光素子21から照射された検出光を第1検出光L1と第2検出光L2とに分割するプリズム43を備える。プリズム43は、液晶パネル10の第1面PS1側に配置されている。プリズム43は、回折面44,45を有する、回折面44は、発光ユニット20から照射された検出光を第1検出光L1及び第2検出光L2に分割し、第2検出光L2を、クリアパネル11及び第2受光素子32に向けて屈折させる。回折面45は、回折面44で分割された第1検出光L1を、液晶パネル10及び第1受光素子31に向けて屈折させる。このような構成により、発光ユニット20の配置位置の自由度が向上する。例えば、発光ユニット20を液晶パネル10の第1面PS1側に配置することもできる。
【0089】
なお、変形例2では、プリズム43が回折面44,45を有する例を説明したが、これに限定されない。プリズム43の構造は、発光ユニット20の構成や配置によって適宜変更してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本開示の調光モジュールは、デジタルカメラ、ビデオカメラ、スマートフォン、タブレット端末等の撮像機能を有する電子機器の電子NDフィルタに適用可能である。
【符号の説明】
【0091】
1,1A,1B 調光モジュール
2 筐体
10 液晶パネル
10a 液晶層
10b ガラス基板
11 クリアパネル
20 発光ユニット
21 発光素子(第1発光素子)
22 発光素子(第2発光素子)
30 受光ユニット
31 受光素子(第1受光素子)
32 受光素子(第2受光素子)
40 遮光部材
41,42 開口
43 プリズム
44,45 回折面
50 透過率算出部
51 調光制御部
60 撮像素子
61 制御部
L1 検出光(第1検出光)
L2 検出光(第2検出光)
Ls 撮像光
PS1 第1面
PS2 第2面
100 撮像装置