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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112555
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】小型シングルフェイサーの段ロール
(51)【国際特許分類】
   B31F 1/28 20060101AFI20230804BHJP
   B31F 1/36 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
B31F1/28
B31F1/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014422
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】508132470
【氏名又は名称】株式会社サム技研
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(74)【代理人】
【識別番号】100126170
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 義之
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健策
【テーマコード(参考)】
3E078
【Fターム(参考)】
3E078AA05
3E078BB02
3E078BB44
3E078BC01
3E078CC12
3E078CC32
3E078CC45
3E078CC57
3E078CE07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】小口小ロッドでA段からG段等多品種を切換えながら稼働することが前提とされることが多い小型シングルフェイサーは、段ロールを交換して運用させることが要求されており、自在に組み換え可能な構成で成る安価なものを提供する。また所定の吸引区間で良好に吸引吸着出来るメカバルブが組み込まれた段ロールを提供する。
【解決手段】外周面が段繰り形状に形成され、吸引連通孔50、ヒーター孔、等の孔を有する所定幅の段ロールユニット40、前記段ロールユニットと同様な孔を有するとともに外周面で開口する吸引ポケットを有する吸引ユニット41、42、これらを交互に配置して軸固定し、位置決めパイロット孔にピンを通して連結固定して構成したロールを備える。また、吸引区間に於いて、いずれの吸引連通孔とも連通しない状態を経てから、上流から下流に向けて、区間内にある吸引連通孔と順次、連通して吸引可能にするメカバルブを備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心位置に芯穴を有し、外周面が段繰り形状に形成され、外周面より中心に向って、吸引連通孔,ヒーター孔,断熱孔の順に、それぞれの孔を円周方向に適当数ずつ等配列に形成し、更に1個以上の位置決めパイロット孔を形成した所定幅の段ロールユニット、
前記段ロールユニットと同じ外周面形状を有し、対応する同じ位置に芯穴,吸引連通孔,ヒーター孔,位置決めパイロット孔を有し、更に前記吸引連通孔から発して前記外周面で開口する吸引ポケットを有し、その幅が2乃至8mm幅で成る吸引ユニット、
前記段ロールユニットと前記吸引ユニットとを交互に配置して、それらの芯穴に軸を挿通して軸固定するとともに、前記位置決めパイロット孔に位置決めピンを通して連結固定して構成したことを特徴とする小型シングルフェイサーの段ロール。
【請求項2】
中心位置に芯穴を有し、外周面が段繰り形状に形成され、外周面より中心に向って、吸引連通孔,ヒーター孔,断熱孔の順に、それぞれの孔を円周方向に適当数ずつ等配列に形成し、更に1個以上の位置決めパイロット孔を形成した所定幅の段ロールユニット、
前記段ロールユニットと同じ外周面形状を有し、対応する同じ位置に芯穴,吸引連通孔,ヒーター孔,位置決めパイロット孔を有し、更に前記吸引連通孔から発して前記外周面で開口する吸引ポケットを有し、その幅が2乃至8mm幅で成る吸引ユニット、
前記段ロールユニットと前記吸引ユニットとを交互に配置し、更に一方端に前記吸引連通孔を塞ぐエンドプレートを、他方端に前記吸引連通孔のそれぞれに連通して所定の吸引区間だけ吸引可能にするメカバルブを備えると共に、それらの芯穴に軸を挿通して軸固定するとともに、前記位置決めパイロット孔に位置決めピンを通して連結固定して構成したことを特徴とする小型シングルフェイサーの段ロール。
【請求項3】
前記吸引区間に於いて、いずれの吸引連通孔とも連通しない状態を経てから、上流から下流に向けて、区間内にある吸引連通孔と順次と連通して前記吸引区間だけ吸引可能にするメカバルブを備えて構成したことを特徴とする請求項2に記載した小型シングルフェイサーの段ロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中芯紙とライナー紙から片面ダンボールを製造するためのシングルフェイサーの段ロールに関する。特に、加熱手段を電熱ヒーターとするタイプのもので、主流を成す大型シングルフェイサー用ではなく、用紙幅が150乃至600mm程度、ならびにロール直径が100乃至250ミリ程度で成る小型シングルフェイサーの段ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
包装資材や緩衝資材としてプラスチックから紙への切り替わりが急速に進みつつあり、紙製ダンボールの需要が日々増大している。しかも、A段からG段等多品種小ロッドに及び、小口小ロッド対応に迅速さを求めるユーザーが増えつつある。即ち、大工場での大量生産より、消費する現場で紙材料から製造できる安価で小型の装置が望まれている。ユーザーサイドからすれば、かさ張るダンボールに比べ、材料原紙の物流コストは低く、在庫のためのスペースも著しく効率的になる。従って、本願に係る小型シングルフェイサーは、その段ロールを交換して自主運用できることが要求されており、係る本発明は組み換え自在に構成できる安価な段ロールを提供する。また、機能的にも所定の吸引区間で良好に中芯用紙を吸引吸着することが出来る優れたメカバルブが組み込まれた段ロールを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-169657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシングルフェイサーは前記特許文献からも明らかなように、極めて大型のものが主流である。製品幅寸で言うなら2400mm~1800mmが主流であり専用の大型工場で、大量生産体制で稼働して世の需要に応えている。また、具体的にはロール直径が600mm、熱源が高圧蒸気による加熱方式であり、付帯する設備も大がかりなものになっている。しかし、本願に係る小型シングルフェイサーに供される段ロールは、ロール直径が250mm以下であり、ロール幅も概して600mm以下であり、小口小ロッドに随時コスト安に対応できるよう、組み換え自在に構成されることが要求されている。
【0005】
従って、蒸気熱源をヒーター熱源に換えるとともに、ロール外周面への熱伝導を良好に確保する一方で、ロール軸芯への熱移動を阻害する必要があり、さらに段繰り後の中芯紙を外周面で吸着保持するための吸引ポケットをその外周面に多数具備する必要があり、加えて小径化すると生じしやすくなる段ロール外周面からの浮き上がりに対処できる機能も具備することが求められる。例えば、直径600mmのものと150mmのものとでは、段成形された直後の中芯紙をして外周面に吸着保持することの困難性が顕著に増すことが明らかになったもので、例え斯様な状態に至っても、上手く元に戻すべく機能するメカバルブを備えた段ロールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本願小型シングルフェイサーの段ロールは、中心位置に芯穴を有し、外周面が段繰り形状に形成され、外周面より中心に向って、吸引連通孔,ヒーター孔,断熱孔の順に、それぞれの孔を円周方向に適当数ずつ等配列に形成し、更に1個以上の位置決めパイロット孔を形成した所定幅の段ロールユニット、ならびに、前記段ロールユニットと同じ外周面形状を有し、対応する同じ位置に芯穴,吸引連通孔,ヒーター孔,位置決めパイロット孔を有し、更に前記吸引連通孔から発して前記外周面で開口する吸引ポケットを有し、その幅が2乃至8mm幅で成る吸引ユニット、とから構成され、前記段ロールユニットと前記吸引ユニットとを交互に配置して、それらの芯穴に軸を挿通して軸固定するとともに、前記位置決めパイロット孔に位置決めピンを通して連結固定して構成したことを特徴とする。
【0007】
また、本願小型シングルフェイサーの段ロールは、中心位置に芯穴を有し、外周面が段繰り形状に形成され、外周面より中心に向って、吸引連通孔,ヒーター孔,断熱孔の順に、それぞれの孔を円周方向に適当数ずつ等配列に形成し、更に1個以上の位置決めパイロット孔を形成した所定幅の段ロールユニット、ならびに、前記段ロールユニットと同じ外周面形状を有し、対応する同じ位置に芯穴,吸引連通孔,ヒーター孔,位置決めパイロット孔を有し、更に前記吸引連通孔から発して前記外周面で開口する吸引ポケットを有し、その幅が2乃至8mm幅で成る吸引ユニット、とから構成され、前記段ロールユニットと前記吸引ユニットとを交互に配置し、更に一方端に前記吸引連通孔を塞ぐエンドプレートを、他方端に前記吸引連通孔のそれぞれに連通して所定の吸引区間だけ吸引可能にするメカバルブを備えると共に、それらの芯穴に軸を挿通して軸固定するとともに、前記位置決めパイロット孔に位置決めピンを通して連結固定して構成したことを特徴とする。
【0008】
更に、本願小型シングルフェイサーの段ロールは、前記した吸引区間に於いて、いずれの吸引連通孔とも連通しない状態を経てから、上流から下流に向けて、区間内にある吸引連通孔と順次と連通して前記吸引区間だけ吸引可能にするメカバルブを備えて構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は前記した通りに構成することによって、Aフルート乃至Gフルート、あるいは規格外の段形状から成る各ユニットをして、任意に組み替えることで容易にしてコスト安に所望する段ロールを構成することが可能になる。とりわけ、ヒーターから軸芯への熱移動が断熱孔によって阻害されるため外周面への熱移動効率を高めることができる。また、位置決めパイロット孔を具備した構成であるので、組み上げたロール表面の段形状が整然と揃うことが保証される。
さらに、請求項2に記載した本願段ロールにあっては、斯様なメカバルブを具備したことで、所定の吸着区間に於いて、段繰り済み中芯紙を吸引ポケットの作用で良好に吸着保持することが出来き、段頂部への接着剤塗工を良好に行うことを可能にする。
【0010】
また、請求項3に記載した本願段ロールにあっては、ロール直径を小さくすることに伴う現象であるが、段成形された直後の段ぐり済みの中芯紙がロール外周面から浮き上がってしまうトラブル、原因は中芯紙のスプリングバックによるものと思われるが、斯様なトラブル状態から良好に吸着保持した状態に、簡単にして容易に、移行させることを可能にする。
従って、緩衝材や包装資材として片面ダンボールを消費する現場で、オンデマンド的に日々、必要量だけ生産稼働するという新しい工法を開拓した小型シングルフェイサーに適すること確実で、以って、かさばるダンボール輸送での運賃削減、入荷して消費するまでの倉庫保管費に関して、合理的なコスト削減を具現化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】は本願段ロールの主要部品である段ロールユニットの平面図。
図2】は同様に主要部品である吸引Aユニットの平面図。
図3】は段ロールユニットの上に吸引Aユニットとを重ねた状態の平面図。
図4】は本願段ロールの主要部品である吸引Bユニットの平面図。
図5】は段ロールユニットの上に吸引Bユニットとを重ねた状態の平面図。
図6】は別の実施例である段ロールユニットの平面図。
図7】は主要部品を組み合わせて組立てた状態を斜視図で図示した説明図。
図8】は組立た状態の段ロール外観を図示した説明図。
図9】は組立た状態の段ロール断面を図示した説明図。
図10】はメカバルブの構造を説明するための説明図。
図11】はメカバルブの構造を説明するための説明図。
図12】はメカバルブの構造を説明するための説明図。
図13】は別のメカバルブの構造を説明するための説明図。
図14】は稼働中の不具合について説明するための説明図。
図15】乃至
図16】はメカバルブの動作を時系列的に説明をするための説明図。
図17】は電磁バルブを組込んだメカバルブについて説明するための説明図。
図18】ならびに
図19】は本願段ロールで構成されるシングルフェイサーについて説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0012】
先ず、本願段ロールが組み込まれるに適した小型シングルフェイサーの全体構造について、図18並びに図19に基づいて説明する。
図中、5は第1段ロール、6は第2段ロールであり、それらロールの外周面は、波型に形成され、凸凹形状を相互に噛合させて回転する。また、図中、1は中芯紙、2はライナー紙、3は片面ダンボールであり、前記第1段ロール5と第2段ロール6とで中芯紙1が段成形されつつ搬送され、段繰り済み中芯紙1の段頂部に接着剤塗工装置4で接着剤が塗工される。前記接着剤塗工装置4は接着剤を塗工ロール12の周面で汲み上げ、所定厚さにして塗工するロールコーターやブレードコーターが利用される。尚、図19に於ける第1段ロール5は上ロール、第2段ロール6は下ロールと称されることもあり、本願発明は主として前記第1段ロール5で実施され、必要に応じて、プレヒーターロール11等も付加されて中芯紙1やライナー紙2の搬送経路は決められる。
【0013】
また、中芯紙1が段成形される個所の搬送方向下手位置には、前記第1段ロール5とともに挟持して、ライナー紙2を中芯紙3に押圧接着する接着装置8が配備されている。例示したしたものはプーリー7に張架されたベルトをして押圧接着するタイプのものであるが、ロール式のものや、それらを複合化されたものに替えることもできる。
また、本願では、中芯紙1が段成形される個所、乃至、ライナー紙2が中芯紙3に押圧接着され始める区間をして、吸着区間80と称するが、この区間は接着剤塗工装置4で段頂部に整然と接着剤を塗工しなければならない関係で、中芯紙1を第1段ロール5の外周面に吸着保持したまま継続的に搬送できることが重要である。
【0014】
例えば、図14で図示した通り、吸着区間80で段形成済みの中芯紙1が浮き上がってしまうようなことが起こらないように構成される。従って、第1段ロール5の外周面に後述する吸引ポケット51を多数形成して吸着搬送できる構成にする。あるいはそれに替えて公知のフィンガープレート(図示せず)を配備する。更にあるいは、第2段ロール6に円周溝20を形成し、その溝内に薄い板状で成るフィンガープレート21を配備して前記吸引ポケットによる吸引と併せて浮上がらないように構成する。
【0015】
次に、図1乃至図9に基いて、本願に係る小型シングルフェイサーの段ロールについて説明する。
即ち、本願に係る段ロールは前記した第1段ロール5で具現化されている。
詳記すれば、中心位置に芯穴45を有し、外周面が段繰り形状に形成され、吸引連通孔50,ヒーター孔49,断熱孔46,位置決めパイロット孔55ならびに連結ボルト締め孔48を有する所定幅の段ロールユニット40と、前記段ロールユニット40と同じ外周面形状を有し、対応する同じ位置に芯穴45,吸引連通孔50,ヒーター孔49,断熱孔46,位置決めパイロット孔55ならびに連結ボルト締め孔48を有し、更に前記吸引連通孔50から発して前記外周面で開口する吸引ポケット51を有し、その幅が2乃至8mm幅で成る吸引ユニット41,42とから成り、前記段ロールユニット40と前記吸引ユニット41,42とを図7乃至図9で図示した通り、交互に配置して、それらの芯穴45に軸43を挿通して軸固定するとともに、前記ボルト締め孔48に挿通した連結ボルト60によって連結固定して、構成したことを特徴とするものである。
【0016】
従って、図8で図示した通り、段ロールユニット40と吸引ユニット41,42とを一体化した第1段ロール5の外周面には、多数の吸引ポケット51が開口した状態で構成され、前記した吸着区間80をして、段繰り済み中芯紙1を第1段ロール5の外周面に安定的に吸着保持することが出来る。尚、斯様な構成で吸引ポケット51を形成する本願特有の構成は、ロール表面からドリル穿孔する従来ロールに比べて、孔形状を長方形に出来るので吸引面積を拡大でき、少ない空気量で高効率な吸着力を得ることができる。
【0017】
尚、図9は、図1で指示したA-A断面を図示しているが、吸引連通孔50はそれぞれの吸引ユニット41,42の吸引ポケット51に通じるとともに、その左端に於いてはエンドプレート61をして孔が塞さがれ、右端に於いては、前記吸引連通孔50に通じる吸引孔66を有する吸引プレート62を具備して吸引経路が形成される。そして、回転する吸引プレート62に対して、回転せずに密着したまま摺動する摺動板63ならびに軸43にベアリング65を介して備えられるサクションチャンバー64とともに好ましい吸引メカバルブが構成される。
【0018】
即ち、図9に於いてAで指す断面の側面を図10図に図示した通り、吸引プレート62には段ロールユニット40の吸引連通孔50と概ね同じ大きさ、同じ位置に多数の吸引孔66が形成され、図11で図示した摺動板63には前記吸着区間80の全域に亙る円弧状の吸引孔67が形成され、両者は密着状態で摺動する。即ち、図9に於いてBで指す断面の側面を図示した図12図の説明図から明らかな通り、停止している摺動板63に形成された吸引孔67に対して、回転移動する吸引プレート62の吸引孔66が次々と到来して、結果的に前記した吸着区間80に存在する吸引孔66にだけ連通することになり、他の吸引孔66は摺動板63のその余の部分で塞がれた状態で推移する。
【0019】
従って、吸引孔69にサクション源が接続されることでサクション室68が負圧化され、該サクションチャンバー64に固定された摺動板63の吸引孔67を介して前記したような吸引経路が形成され、常に吸着区間80範囲だけサクション室68と吸引孔66が通じて開状態が維持される。
【0020】
次に、より優れたメカバルブを組込んだ段ロールについて図13乃至図16に基づいて説明する。即ち、吸引プレート62,摺動板63,バルブ板71,固定板75ならびにサクションチャンバー64から構成されるメカバルブであって、摺動板63は吸引プレート62に取付られて段ロールユニット40とともに回転し、固定板75はサクションチャンバー64とともにフレーム(図示せず)に取付られて固定され、また、前記バルブ板71は、板面に円弧状の吸引孔72が形成され、駆動プーリー74によって駆動ベルト73を介して必要な時だけ回転可能に構成されている。即ち、バルブ板71は摺動板63と固定板75との両方に密着して、両者の間に介在し、必要に応じて、図15ならびに図16に図示したように、それらと摺動しながら回転することができる。
【0021】
図13に於いて、Aで指す断面の側面要部を図示した図15、ならびにBで指す断面の側面要部を図示した図16に従って説明するなら、バルブ板71は、図15(a)の状態から図15(b)の状態、図16で言うなら(a)乃至(c)に至るまで回転することができる。従って、サクションチャンバー64に固定された固定板75に形成された円弧状の吸引孔76と、バルブ板71に形成された吸引孔72との相互作用で、(a)の状態ではサクションチャンバー64のサクション室68と摺動板63の吸引孔67とは閉ざされた状態にされるも、バルブ板71が左回りに回転駆動されると、図16(b)で図示した状態を経由して、(c)の状態にされる。即ち、ハッチングで図示した連通個所を徐々に拡大しつつ前記した吸引孔76の全域に及ぶ範囲に亘って、サクションチャンバー64のサクション室68と吸引孔67とが通じることになる。
【0022】
即ち、前記した吸着区間80に関連して説明するなら、図9に基づいて説明したメカバルブは、常に吸着区間80の全域に亙って、サクションチャンバー64のサクション室68と連通孔50とを、常時、開の状態に維持するものであったのに対して、図13に基づいて説明したメカバルブは、バルブ板71を回動することで、全閉の状態から全開の状態へ遷移させることが出来、しかも吸着区間80の上流側から下流側に向けて徐々に開放していくことが出来る。
【0023】
従って、図14で例示したように吸着区間80で吸着維持すべきものが、何らの原因で浮き上がってしまった時、多くの吸引ポケットが大気開放状態になっているので、そのまま元の状態に復帰することは不可能であるが、本例メカバルブを備えた段ロールであれば、次のような手順で元のような状態に戻すことができる。
【0024】
先ず、バルブ板71を回転させて前記した全閉状態にする。この時、例示した図面に基づいて述べるなら、右回りあるいは左回りに回転する。次に、全閉乃至それに近い状態から、左回りに回転して吸着区間80の上流側から徐々に開状態にしていく。そうすれば、段ロール外周面にある吸引ポケット51から何処もリークしていない状態から、徐々に、しかも段成形された直後の個所から集中的な吸引が始まる。そして、この状態が吸着区間80の下手に向かって継続される。尚、斯様な吸引個所の移動は、中芯紙1の移動とともに行うと、極めて効果的に新たな吸着を開始することが出来る。例えば、バルブ板71の回転をロール周面の移動に同期させるのである。
【0025】
このように、一旦、ロール周面から浮き上がった個所をして、元に戻せる訳ではないが、そのような事態になれば自動停止された状態であるので、その停止中に前記した全閉位置に回転移動させて、再稼働の初期段階でバルブ板71と段ロールとを連動させ、新たなスタート個所からの浮き上がりを払拭し、吸着区間80のほぼ全域が開状態になった段階で、段ロールは運転を継続するもバルブ板71は回転を停止する。また、この初期段階が過ぎれば吸着保持状態が安定するので、必要に応じて運転速度を高速に切り替える。尚、前記した浮き上がった個所は、だぶついた状態のまま流れていくので、品質不良個所として切除される。
【0026】
尚、本実施例では斯様に摺動するバルブ板71との摺動性を良好に確保するべく、吸引プレート62の吸引孔66と同様の位置、大きさの吸引孔67を多数形成した、摺動板63を組み入れているが、吸引プレート62そのものをしてバルブ板71と摺動する構成、即ち、摺動板63を除いて上述したメカバルブを構成すること可能である。同様に、設計次第では最端位置にある段ロールユニット40の側面とバルブ板71とをダイレクトに摺動させるようなメカバルブを構成することも可能である。また、斯様な摺動性に言及するなら、前記した固定板75をテフロン(登録商標)樹脂板等の耐熱摺動材料で構成するのが望ましい。更に、必要ならバルブ板71そのものを耐熱摺動材料で構成することもできる。
【0027】
次に、図9のBで指す断面の側面説明図である図17に基づいて、バルブ(VL)を用いて構成した本願実施例を説明する。
図中、ハッチング図示した箇所は吸着区間80を7分割して形成したポートを指し、それらポートに電磁バルブ等の開閉弁を介してサクション源78に接続して構成したものである。例えば、前記した摺動板63に相当するものに斯様なポートを形成してサクション源78(図示せず)に接続する。そして、通常はすべてのバルブVLをして開状態にして稼働させるも、図14で例示したトラブルの発生から再起動する時には、全バルブをして一旦、閉状態にし、然る後、段ロールの進行に合わせて、上流に位置するバルブVLから下手にかけて順次と開状態にしていく。そうすることで、図13に係るメカバルブに類似した優れた段ロールを提供することができる。尚、吸着区間80をより細かく、逆により粗く分割して同様に構成するも出来、それ相当の効果を得ることができる。
【0028】
尚、吸着区間80を複数に分割して構成する実施例からも明らかなように、前記した実施例に於ける吸引孔66,67,72,76は、必要に応じて、丸孔の集合や円弧状孔の集合で成る分割形状で構成することもある。また、吸着区間80についてであるが、その上流側の始点は、前記したフィンガープレートとの併用にあっては、フィンガープレートが担当する範囲内の適当位置とすれば足りる。また、吸着区間80の終点については、接着装置8をして中芯紙1が挟持され始めた辺りが妥当な個所であるが、必ずしも厳密である必要はなく、より下手位置、例えば、30乃至100mm下手の位置に設定して、詳述したメカバルブを設計することもできる。
【0029】
次に、段ロールユニット40ならびに吸引ユニット41,42の詳細について詳しく説明する。
先ず、吸引ユニット41,42は、いずれも第1段ロール5の外周面に多数の吸引ポケット51を形成するためのものであることは前記した通りであるが、幅寸法(図2または図4に於ける紙面の法線方向寸法)として具体的には2乃至8mm程度とする。そして、吸引連通孔50から外周面に向かって図のように切り欠かれて吸引ポケット51が形成されるが、段ロールユニット40に吸引ユニット41を位置合わせして重ね合わせたものを図3に、段ロールユニット40に吸引ユニット42を位置合わせして重ね合わせたものを図5に図示しているが、いずれも吸引連通孔50から吸引ポケット51を介して外周面に通じる吸引のための経路が形成されるのは前記した通りである。
【0030】
また、吸引ユニット41と吸引ユニット42の相違点は、吸引ポケット51を形成するための切り欠きが、吸引連通孔50から外周面に向かって、前者は幾分右回りの方向に、後者は左回り方向にずれて形成されている点にある。こうすることで図8の外観図から明らかなように吸引ユニット41と吸引ユニット42とを交互に反復しながら組み合わせると、吸引ポケット51をロール軸芯方向に千鳥に配置することができる。尚、配置を千鳥にすることで、より均等な吸引環境が構築できる効果があるが、必要なら両者とも同形状で構成しても良いし、あるいは右回り方向や左回り方向にずらせることなく単純に外周面に対して法線方向に切り欠きを形成して吸引ポケット51を構成すること可能である。
【0031】
また、段ロールユニット40についてであるが、図7乃至図9で例示した通り、ロールの中央部に位置する段ロールユニット40の幅を幅広にするのが好ましく、概ね60乃至120mmとし、ロール端部側の段ロールユニット40は15乃至40mm程度が望ましい。尚、幅狭な段ロールユニット40を複数個、連接させて所望の幅寸になるようにして、軸43を挿通し、連結ボルト60で一体化する構造を採用すると、共通部品で多品種対応することが出来て、製造コスト、メンテナンスコストを低く抑えることができる。
【0032】
また、段ロールユニット40に形成されるはヒーター孔49は、吸引連通孔50の次に、ロール外周面に近い位置で等分配置(図示した例では8等分配置)され、適当な棒ヒーター70が挿入設置される。
また、前記センサー孔47は必ずしも必要ではないが、好ましくは、熱電対等適当な感温センサーを収納するために1個乃至数カ所形成されて、前記ヒーターによる温度制御に利用される。尚、ヒーターならびにセンサー用の電線は、軸43の中空孔44を通して配線され、各種のスリップリング(図示せず)で電気的に接続される。
【0033】
また、前記断熱孔46は、前記したヒーター熱が軸43に熱移動して、その余の部分の無益な温度上昇を防ぐのに貢献するもので、いずれの孔よりも軸43に近い位置に所定数個、等分配置された状態で形成される。尚、吸引ユニット41,42の幅は概して広くないので、この断熱孔46は必ずしも形成する必要はない。また、図6で例示した断熱孔46は図1で例示したものより断熱性能は優れている。
更に、少なくとも1個乃至数個形成する前記位置決めパイロット孔55であるが、位置ならびに孔径公差が高精度に加工され、それら位置決め孔55に位置決めピン(図示せず)を挿通することで、段ロールユニット40ならびに吸引ユニット41,42が多数個組み合わされた状態でも外周面形状がずれることなく整然と揃わせるために機能する。
【0034】
尚、一般的にはシングルフェイサーに於ける熱源は蒸気が利用される。しかし、本発明の課題は、用紙幅が150乃至600mm、主たる用途は250乃至350mm、幅広に対応しても900mm程度という小型で小ロッド生産できるシングルフェイサー用段ロールの提供にある。よって、設備コストの高い蒸気の利用は適さないばかりか、第1段ロール5ならびに第2段ロール6の直径も小径化するのが望ましい。具体的には直径100乃至250mm、望ましくは120乃至200mmの第1段ロール5、また必要に応じて第1段ロール5と同径乃至半分程度の直径で成る第2段ロール6についても、上記した第1段ロール5と同様に本願段ロール構成で構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
このように、本願段ロールは軸43に各種の部品を組み合わせて一体化する構成であるので、生産現場の要求に対して素早く対応できる特徴がある。例えば、段高さの異なるフルートで、所定の製品を生産するに、保有する段ロールユニット40、ならびに、吸引ユニット41,42を組み替えて対応することができる。
また、少なくとも段ロールユニット40に形成する断熱孔はヒーターから軸芯への無駄な熱移を阻害して外周面への熱移動効率を高めることができる。また、位置決めパイロット孔を具備しているので組み上げたロール表面の段形状が整然と揃うことが保証される。
さらに、メカバルブを具備したことで、所定の吸着区間に於いて、段繰り済み中芯紙を吸引ポケットの作用で吸着保持することが出来きる。
【0036】
また、トラブル発生時の再起動が円滑に行うことが出来るメカバルブを具備した段ロールにあっては、小型機故に付随してくる問題に対する解決策を提供するもので、緩衝材や包装資材として片面ダンボールをオンデマンド的に日々、必要量だけ生産稼働するという新しい工法を開拓した小型シングルフェイサーに適すること確実であり、以って、かさばるダンボール輸送での運賃削減、入荷して消費するまでの倉庫保管費に関して、合理的なコスト削減を具現化することができる。
【符号の説明】
【0037】
1・・・中芯紙、2・・・ライナー紙、3・・・片面ダンボール、4・・・接着剤塗工装置、5・・・第1段ロール、6・・・第2段ロール、7・・・プーリー、8・・・接着装置、10・・・接着剤塗工装置、10,11・・・プレヒーターロール、12・・・接着剤塗工ロール、40・・・段ロールユニット、41・・・吸引Aユニット、42・・・吸引Bユニット、43・・・軸、44・・・中空孔、45・・・芯穴、46・・・断熱孔、47・・・センサー孔、48・・・連結ボルト締め孔、49・・・ヒーター孔、50・・・吸引連通孔、51・・・吸引ポケット、55・・・位置決め孔、60・・・連結ボルト、61・・・エンドプレート、62・・・吸引プレート、63・・・摺動板、64・・・サクションチャンバー、65・・・ベアリング、66・・・吸引孔、67・・・吸引孔、68・・・サクション室、69・・・吸引孔、70・・・棒ヒーター、71・・・バルブ板、72・・・吸引孔、73・・・駆動ベルト、74・・・駆動プーリー、75・・・固定板、76・・・吸引孔、77・・・バルブ、78・・・サクション源、80・・・吸着区間・・・である。
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