(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112573
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】車両用サイレンサー、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 13/08 20060101AFI20230804BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
B60R13/08
B29C45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014453
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100124958
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 建志
(72)【発明者】
【氏名】間瀬木 拓
(72)【発明者】
【氏名】中塚 賢一
(72)【発明者】
【氏名】堀内 聖士
【テーマコード(参考)】
3D023
4F206
【Fターム(参考)】
3D023BA02
3D023BA03
3D023BB16
3D023BB17
3D023BB21
3D023BD01
3D023BD02
3D023BD04
3D023BD12
3D023BE04
3D023BE06
3D023BE31
3D023BE35
4F206AA45
4F206AE06
4F206AG21
4F206AH25
4F206JA07
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】発揮する機能を高めることが可能な車両用サイレンサーを提供する。
【解決手段】車両用サイレンサー1は、第一の面11、及び、該第一の面11とは反対側の第二の面12を有し弾性を示す材料70で成形された遮音材層10と、空隙V1を有する材料80で形成され第二の面12に接合された吸音材層20と、を含む。遮音材層10は、第一の面11において吸音材層20とは反対側へ突出した突出部40と、第二の面12において突出部40に対応する位置に存在する形状変更部50と、を含む機能部30と、該機能部30の周囲にある一般部60と、を備える。形状変更部50は、凸状と凹状の少なくとも一方の形状である。機能部30の少なくとも一部の厚さは、一般部60の厚さT1とは異なる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の面、及び、該第一の面とは反対側の第二の面を有し、弾性を示す材料で成形された遮音材層と、
空隙を有する材料で形成され、前記第二の面に接合された吸音材層と、を含み、
前記遮音材層は、
前記第一の面において前記吸音材層とは反対側へ突出した突出部と、前記第二の面において前記突出部に対応する位置に存在する形状変更部と、を含む機能部と、
前記機能部の周囲にある一般部と、を備え、
前記形状変更部は、凸状と凹状の少なくとも一方の形状であり、
前記機能部の少なくとも一部の厚さが前記一般部の厚さとは異なる、車両用サイレンサー。
【請求項2】
前記機能部は、前記遮音材層において他部材を保持する部分であり、
前記突出部は、前記吸音材層に最も近い基端を有し該基端から前記吸音材層とは反対側の第一の突出方向へ突出した基部と、該基部の突出端から前記第一の突出方向とは異なる第二の突出方向へ突出した折曲部と、を含み、
前記機能部は、前記突出部に対向する対向部を含み、該対向部と前記突出部とで前記他部材を囲む形状を有する、請求項1に記載の車両用サイレンサー。
【請求項3】
前記機能部は、前記基部から離れた位置において前記対向部から前記折曲部の方へ突出した爪部を含み、該爪部と前記対向部と前記突出部とで前記他部材を囲む形状を有し、
前記形状変更部は、前記第二の面において前記基部に対応する位置から前記爪部に対応する位置に繋がる凸条を含む、請求項2に記載の車両用サイレンサー。
【請求項4】
前記折曲部は、前記基部の前記突出端から最も遠い先端を有するフック部を含み、
前記形状変更部は、前記第二の面において凹んだ凹状部を含み、
前記凹状部は、前記対向部と前記突出部とで前記他部材を囲んでいる状態で前記折曲部の前記フック部の通過を許容する貫通穴を有し、
前記フック部は、前記貫通穴の周囲において前記凹状部に引っ掛かる形状を有する、請求項2に記載の車両用サイレンサー。
【請求項5】
前記機能部は、前記遮音材層において他部材に保持される部分であり、
前記形状変更部は、前記第二の面において凹んだ凹状部を含み、
前記機能部は、前記一般部よりも薄い薄肉部を前記第一の面にある前記突出部と前記第二の面にある前記凹状部との間に有する、請求項1に記載の車両用サイレンサー。
【請求項6】
第一の面、及び、該第一の面とは反対側の第二の面を有する遮音材層と、空隙を有する材料で形成された吸音材層と、を含む車両用サイレンサーの製造方法であって、
前記遮音材層が、前記第一の面において前記吸音材層とは反対側へ突出した突出部、及び、前記第二の面において前記突出部に対応する位置に存在する形状変更部を含む機能部、並びに、前記機能部の周囲にある一般部を備え、前記形状変更部が凸状と凹状の少なくとも一方の形状であり、且つ、前記機能部の少なくとも一部の厚さが前記一般部の厚さとは異なるように、弾性を示す材料で前記遮音材層を射出成形により形成する射出成形工程と、
前記第二の面に接合された前記吸音材層を形成する吸音材層形成工程と、
を含む、車両用サイレンサーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮音材層と吸音材層とを含む車両用サイレンサー、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に設置されるサイレンサーとして、例えば、ダッシュパネルに取り付けられるダッシュサイレンサーが知られている。ダッシュサイレンサーは、ダッシュパネルに固定されたスタッドボルトを通すための複数の貫通穴を有している。ダッシュサイレンサーの各貫通穴にスタッドボルトを通し、該スタッドボルトにクリップを固定することにより、ダッシュサイレンサーがダッシュパネルに取り付けられる。
【0003】
特許文献1に開示されたインシュレーターダッシュ本体は、表皮材と吸音材とが積層された構造を有している。該インシュレーターダッシュ本体は、自動車においてエンジンルームと車室とを区画するダッシュパネルの車室側に設置される。インシュレーターダッシュ本体は、ダッシュパネルに固着されたスタッドボルトを通すための複数のスリット形状の開口部を有している。各開口部を通り抜けたスタッドボルトにハーネスクリップを固着することにより、インシュレーターダッシュ本体がダッシュパネルに取り付けられる。
インシュレーターダッシュ本体における表皮材の厚さは、各開口部の周囲を含めて一定である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した表皮材が発揮する機能が高められると、利便性が向上する可能性がある。
尚、同様の可能性は、インシュレーターダッシュに限らず、ドア用の車両用サイレンサー、天井用の車両用サイレンサー、等、種々の車両用サイレンサーにも存在する。
【0006】
本発明は、発揮する機能を高めることが可能な車両用サイレンサー、及び、その製造方法を開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用サイレンサーは、
第一の面、及び、該第一の面とは反対側の第二の面を有し、弾性を示す材料で成形された遮音材層と、
空隙を有する材料で形成され、前記第二の面に接合された吸音材層と、を含み、
前記遮音材層は、
前記第一の面において前記吸音材層とは反対側へ突出した突出部と、前記第二の面において前記突出部に対応する位置に存在する形状変更部と、を含む機能部と、
前記機能部の周囲にある一般部と、を備え、
前記形状変更部は、凸状と凹状の少なくとも一方の形状であり、
前記機能部の少なくとも一部の厚さが前記一般部の厚さとは異なる、態様を有する。
【0008】
また、本発明の車両用サイレンサーの製造方法は、第一の面、及び、該第一の面とは反対側の第二の面を有する遮音材層と、空隙を有する材料で形成された吸音材層と、を含む車両用サイレンサーの製造方法であって、
前記遮音材層が、前記第一の面において前記吸音材層とは反対側へ突出した突出部、及び、前記第二の面において前記突出部に対応する位置に存在する形状変更部を含む機能部、並びに、前記機能部の周囲にある一般部を備え、前記形状変更部が凸状と凹状の少なくとも一方の形状であり、且つ、前記機能部の少なくとも一部の厚さが前記一般部の厚さとは異なるように、弾性を示す材料で前記遮音材層を射出成形により形成する射出成形工程と、
前記第二の面に接合された前記吸音材層を形成する吸音材層形成工程と、
を含む、態様を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発揮する機能を高めることが可能な車両用サイレンサー、及び、その製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】サイレンサーを備える自動車の要部を模式的に例示する断面図。
【
図2】突出部と凸条と凹状部を含む機能部を遮音材層に備える車両用サイレンサーの例を模式的に示す断面図。
【
図3】突出部と凸条と凹状部を含む機能部を備える遮音材層の例を模式的に示す断面図。
【
図4】一対の突出部と凸条を含む機能部を遮音材層に備える車両用サイレンサーの例を模式的に示す断面図。
【
図5】突出部と凹状部を含む機能部を遮音材層に備える車両用サイレンサーの例を模式的に示す断面図。
【
図6】突出部と凹状部を含む機能部を備える遮音材層の例を模式的に示す断面図。
【
図7】突出部と凹状部との間に薄肉部を有する機能部を遮音材層に備える車両用サイレンサーの例を模式的に示す断面図。
【
図8】車両用サイレンサーの製造方法の例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0012】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、
図1~8に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
また、本願において、数値範囲「Min~Max」は、最小値Min以上、且つ、最大値Max以下を意味する。
【0013】
[態様1]
本技術の一態様に係る成形された車両用サイレンサー1は、
図1等に例示するように、遮音材層10と吸音材層20を含んでいる。前記遮音材層10は、第一の面11、及び、該第一の面11とは反対側の第二の面12を有し、弾性を示す材料70で成形されている。前記吸音材層20は、空隙V1を有する材料80で形成され、前記第二の面12に接合されている。
図2~7に例示するように、前記遮音材層10は、突出部40と形状変更部50を含む機能部30、及び、該機能部30の周囲にある一般部60を備えている。前記突出部40は、前記第一の面11において前記吸音材層20とは反対側へ突出している。前記形状変更部50は、前記第二の面12において前記突出部40に対応する位置に存在する。前記形状変更部50は、凸状と凹状の少なくとも一方の形状である。前記機能部30の少なくとも一部の厚さ(例えば
図3,7に示す厚さT2,T3)は、前記一般部60の厚さT1とは異なる。
【0014】
第一の面11にある突出部40と第二の面12にある形状変更部50を含む機能部30の少なくとも一部の厚さ(T2,T3)が一般部60の厚さT1とは異なるので、上記態様1の機能部30は、一般部60の厚さT1では発揮することができない機能を発揮することができる。従って、上記態様1は、発揮する機能を高めることが可能な車両用サイレンサーを提供することができる。
【0015】
ここで、本技術の車両用サイレンサーを設置可能な場所には、ダッシュボード部、車室側壁部、車室天井部、車室フロア部、等が含まれる。
弾性を示す材料には、軟質の樹脂を含有する樹脂材料、熱可塑性エラストマーやゴムといったエラストマーを含有するエラストマー材料、等が含まれる。
空隙を有する材料には、ポリウレタンフォーム(発泡ポリウレタン樹脂)といった発泡樹脂、フェルトといった繊維集合物、等が含まれる。
本願における「第一」、「第二」、…は、類似点を有する複数の構成要素に含まれる各構成要素を識別するための用語であり、順番を意味しない。複数の構成要素のうちどの構成要素が「第一」、「第二」、…に当てはまるのかは、相対的に決まる。
形状変更部50が第二の面12において突出部40に対応する位置に存在することは、突出部40と形状変更部50を第二の面12に投影したときに形状変更部50の投影面の少なくとも一部が突出部40の投影面の少なくとも一部に重なることを意味する。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0016】
[態様2]
図2~6に例示するように、前記機能部30は、前記遮音材層10において他部材M1を保持する部分でもよい。前記突出部40は、前記吸音材層20に最も近い基端41bを有していてもよく、該基端41bから前記吸音材層20とは反対側の第一の突出方向PD1へ突出した基部41を含んでいてもよい。当該突出部40は、前記基部41の突出端41aから前記第一の突出方向PD1とは異なる第二の突出方向PD2へ突出した折曲部42を含んでいてもよい。前記機能部30は、前記突出部40に対向する対向部45を含んでいてもよく、該対向部45と前記突出部40とで前記他部材M1を囲む形状を有していてもよい。
基部41と折曲部42を含む突出部40と対向部45とがワイヤハーネス(wiring harness)等といった他部材M1を囲むことにより他部材M1が機能部30に保持されるので、上記態様2は、他部材を保持する機能を高めることが可能な車両用サイレンサーを提供することができる。
【0017】
[態様3]
図2,3に例示するように、前記機能部30は、前記基部41から離れた位置において前記対向部45から前記折曲部42の方へ突出した爪部46を含んでいてもよく、該爪部46と前記対向部45と前記突出部40とで前記他部材M1を囲む形状を有していてもよい。前記形状変更部50は、前記第二の面12において前記基部41に対応する位置から前記爪部46に対応する位置に繋がる凸条51を含んでいてもよい。
対向部45と突出部40に加えて爪部46が他部材M1を保持するので、上記態様3の車両用サイレンサーは、他部材を保持する機能をさらに高めることができる。また、第二の面12において凸条51が基部41に対応する位置から爪部46に対応する位置に繋がっているので、上記態様3の車両用サイレンサーは、他部材を保持する機能をさらに高めることができる。
【0018】
[態様4]
図5,6に例示するように、前記折曲部42は、前記基部41の前記突出端41aから最も遠い先端42aを有するフック部44を含んでいてもよい。前記形状変更部50は、前記第二の面12において凹んだ凹状部52を含んでいてもよい。前記凹状部52は、前記対向部45と前記突出部40とで前記他部材M1を囲んでいる状態で前記折曲部42の前記フック部44の通過を許容する貫通穴53を有していてもよい。前記フック部44は、前記貫通穴53の周囲において前記凹状部52に引っ掛かる形状44aを有していてもよい。
以上より、作業者は、対向部45と突出部40とが他部材M1を囲んでいる状態でフック部44を貫通穴53に通して凹状部52に引っ掛けることができる。従って、上記態様4の車両用サイレンサーは、他部材を保持する機能をさらに高めることができる。
【0019】
[態様5]
図7に例示するように、前記機能部30は、前記遮音材層10において他部材M1に保持される部分でもよい。前記形状変更部50は、前記第二の面12において凹んだ凹状部52を含んでいてもよい。前記機能部30は、前記一般部60よりも薄い薄肉部38を前記第一の面11にある前記突出部40と前記第二の面12にある前記凹状部52との間に有していてもよい。
スタッドボルト等といった他部材M1で薄肉部38を突き破ることにより機能部30が他部材M1に保持されるので、クリップ等といった別部材が不要である。従って、上記態様5は、他部材に保持される機能を高めることが可能な車両用サイレンサーを提供することができる。
【0020】
[態様6]
また、
図8に例示するように、本技術の一態様に係る車両用サイレンサー1の製造方法は、第一の面11、及び、該第一の面11とは反対側の第二の面12を有する遮音材層10と、空隙V1を有する材料80で形成された吸音材層20と、を含む車両用サイレンサー1の製造方法であって、以下の工程(A1),(A2)を含む。
(A1)前記遮音材層10が、前記第一の面11において前記吸音材層20とは反対側へ突出した突出部40、及び、前記第二の面12において前記突出部40に対応する位置に存在する形状変更部50を含む機能部30、並びに、前記機能部30の周囲にある一般部60を備え、前記形状変更部50が凸状と凹状の少なくとも一方の形状であり、且つ、前記機能部30の少なくとも一部の厚さ(T2,T3)が前記一般部60の厚さT1とは異なるように、弾性を示す材料70で前記遮音材層10を射出成形により形成する射出成形工程ST1。
(A2)前記第二の面12に接合された前記吸音材層20を形成する吸音材層形成工程ST2。
【0021】
以上の製造方法により、第一の面11にある突出部40と第二の面12にある形状変更部50を含む機能部30の少なくとも一部の厚さが一般部60の厚さT1とは異なるように遮音材層10が射出成形により形成される。形成される機能部30は、一般部60の厚さT1では発揮することができない機能を発揮することができる。従って、上記態様6は、発揮する機能を高めることが可能な車両用サイレンサーの製造方法を提供することができる。
ここで、吸音材層は、遮音材層の第二の面に吸音材を貼り付けることにより形成されてもよいし、遮音材層の第二の面に液状材料(溶融材料を含む。)を発泡させて成形することにより形成されてもよい。
【0022】
以下の説明において、「直交」は、厳密な90°に限定されず、誤差により厳密な90°からずれることを含む。方向や位置等の同一は、厳密な一致に限定されず、誤差により厳密な一致からずれることを含む。また、各部の位置関係の説明は、例示に過ぎない。従って、左右方向を上下方向又は前後方向に変更すること、上下方向を左右方向又は前後方向に変更すること、前後方向を左右方向又は上下方向に変更すること、回転方向を逆方向に変更すること、等も、本技術に含まれる。
【0023】
(2)車両用サイレンサーの具体例:
図1は、車両用サイレンサー1を備える自動車100の要部を模式的に例示している。
自動車100の車体は、例えば、鋼板製といった金属製の車体パネルであって車室を囲む車体パネルで形成されている。
図1に示す自動車100は、エンジンルーム側S1と車室側S2とを仕切るパネル110を車体パネルの一部として備えている。
図1に示すパネル110は、ダッシュパネルとも呼ばれ、スタッドボルトといったボルト120(他部材M1の例)を介してサイレンサー1を保持している。
図1に示すサイレンサー1は、ダッシュサイレンサーとも呼ばれ、パネル110の車室側S2に配置されている。
【0024】
図1に示すサイレンサー1は、弾性を示す材料70で成形された遮音材層10、及び、空隙V1を有する材料80で形成された吸音材層20を含み、吸音材層20がパネル110に接触する状態でボルト120によりパネル110に取り付けられる。従って、サイレンサー1がパネル110に取り付けられている状態において、遮音材層10が車室側S2に向き、サイレンサー1の厚さ方向TD1において吸音材層20がパネル110と遮音材層10との間に存在する。
【0025】
遮音材層10は、車室側S2に向いている第一の面11、及び、該第一の面11とは反対側の第二の面12を有している。吸音材層20は、遮音材層10における第二の面12に接合されている。吸音材層20を形成するための「空隙V1を有する材料80」には、樹脂22の内部に多数の微細な気泡を空隙V1として有する発泡樹脂、多数の繊維23が微細な空隙V1を残してバインダー24によりまとめられた繊維集合物、発泡樹脂と繊維集合物の組合せ、等を用いることができる。空隙V1に空気が存在することから、空隙V1を有する材料80は、空気を含む材料ともいえる。尚、吸音材層20は、製造されたサイレンサー1において微細な空隙V1を有していればよく、空隙V1の無い液状樹脂から得られる「空隙V1を有する材料80」で形成されてもよい。
【0026】
発泡樹脂は、樹脂22を含有する樹脂材料を発泡させて微細な気泡(空隙V1)を含むように成形することにより得ることができる。樹脂材料は、樹脂22そのものでもよい。樹脂22には、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂といった合成樹脂を用いることができ、ポリウレタン樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂やポリエチレン(PE)樹脂といったポリオレフィン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)樹脂、等を用いることができる。樹脂22を含む樹脂材料には、エラストマー、繊維材料、充てん材、着色剤、等といった添加剤が含まれてもよい。発泡樹脂の具体例には、ポリウレタンフォーム(発泡ポリウレタン樹脂)が挙げられる。
【0027】
繊維集合物は、繊維23間の微細な隙間を空隙V1として内部に有する。例えば、繊維集合物は、多数の繊維23とバインダー24とを混ぜた材料を微細な空隙V1が残るようにプレス成形することにより得ることができる。バインダー24は、繊維状であるバインダー繊維でもよく、また、芯鞘構造やサイドバイサイド構造等といったコンジュゲート構造の繊維に含まれていてもよい。繊維23には、熱可塑性樹脂繊維といった樹脂繊維、植物繊維といったセルロース系繊維、動物繊維といった天然繊維、ガラス繊維といった無機繊維、衣料反毛繊維といった反毛繊維、等を用いることができる。樹脂繊維には、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂といったポリエステル樹脂、PP樹脂やPE樹脂といったポリオレフィン樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、アクリル(PMMA)樹脂、等の合成樹脂の繊維を用いることができる。樹脂繊維には、着色剤等といった添加剤が含まれてもよい。バインダー24には、熱可塑性バインダーや熱硬化性バインダー、等を用いることができる。熱可塑性バインダーには、PP樹脂やPE樹脂といったポリオレフィン樹脂、低融点のPET樹脂といったポリエステル樹脂、等を用いることができる。バインダー24には、エラストマーや着色剤等といった添加剤が含まれてもよい。繊維集合物におけるバインダー24の含有比率は、例えば、1~40重量%とすることができる。繊維集合物の具体例には、フェルトが挙げられる。
【0028】
パネル110を介してエンジンルーム側S1から吸音材層20に入射した騒音は、微細な空隙V1により減衰する。このようにして、吸音材層20は、吸音効果を発揮する。吸音材層20を通り抜けた騒音は遮音材層10で反射するので、エンジンルーム側S1から車室側S2に向かう騒音は、吸音材層20に吸収され、遮音材層10に遮られる。
【0029】
図2は、突出部40と凸条51と凹状部52を含む機能部31を遮音材層10に備える車両用サイレンサー1を模式的に例示する断面図である。
図2の上部には、第一の面11を見る向きの機能部31が示されている。
図2の下部には、第二の面12を見る向きの形状変更部50が示されている。
図3は、機能部31を備える遮音材層10を模式的に例示する断面図であり、
図2に示す遮音材層10に相当する図である。
図4は、一対の突出部40と凸条51を含む機能部32を遮音材層10に備える車両用サイレンサー1を模式的に例示する断面図である。
図4の上部には、第一の面11を見る向きの機能部32が示されている。
図4の下部には、第二の面12を見る向きの形状変更部50が示されている。
図5は、突出部40と凹状部52を含む機能部33を遮音材層10に備える車両用サイレンサー1を模式的に例示する断面図である。
図5の上部には、第一の面11を見る向きの機能部33が示されている。
図5の下部には、第二の面12を見る向きの形状変更部50が示されている。
図6は、機能部33を備える遮音材層10を模式的に例示する断面図であり、
図5に示す遮音材層10に相当する図である。
図5,6には、フック部44が凹状部52に引っ掛かっている状態における突出部40の位置が二点鎖線で示されている。
図7は、突出部40と凹状部52との間に薄肉部38を有する機能部34を遮音材層10に備える車両用サイレンサー1を模式的に例示する断面図である。
図7の上部には、第一の面11を見る向きの機能部34が示されている。
図7の下部には、第二の面12を見る向きの形状変更部50が示されている。分かり易く示すため、
図2~7に示すサイレンサー1の向きは、
図1に示すサイレンサー1の向きとは90°異なる。
尚、機能部30は、機能部31,32,33,34を総称している。
図1には機能部31,34が示されているが、
図1に示す遮音材層10は、機能部32,33の少なくとも一方を備えていてもよい。
【0030】
遮音材層10は、機能部30、及び、機能部30の周囲にある一般部60を備えている。
機能部30は、
図2,4,5,7に示すように、第一の面11において吸音材層20とは反対側へ突出した突出部40、及び、第二の面12において突出部40に対応する位置に存在する形状変更部50を含んでいる。形状変更部50は、
図2,4に示す凸条51のように凸状でもよいし、
図5,7に示す凹状部52のように凹状でもよいし、凸状と凹状を含む形状でもよい。機能部30は、
図2,4,5に示す機能部31,32,33のように他部材M1(例えばワイヤハーネス130)を保持する部分でもよいし、
図7に示す機能部34のように他部材M1(例えばボルト120)に保持される部分でもよい。本具体例のサイレンサー1は、機能部30の少なくとも一部の厚さが一般部60の厚さT1(
図3,6,7参照)とは異なるという特徴を有する。
【0031】
機能部30と一般部60を備える遮音材層10を形成するための「弾性を示す材料70」は、ヤング率の低い樹脂等、柔軟ながら必要な強度のある材料が好ましい。弾性を示す材料70には、軟質の樹脂を含有する樹脂材料、熱可塑性エラストマーやゴムといったエラストマーを含有するエラストマー材料、樹脂材料とエラストマー材料の組合せ、等を用いることができる。機能部30に突出部40と形状変更部50を含む遮音材層10は、弾性を示す材料70となる液状材料を型内に射出する射出成形により形成することができる。すなわち、遮音材層10は、製造されたサイレンサー1において弾性を示せばよく、液状材料から得られる「弾性を示す材料70」で形成されてもよい。
【0032】
軟質の樹脂を含有する樹脂材料は、軟質の樹脂そのものでもよい。軟質の樹脂には、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂といった合成樹脂を用いることができ、PP樹脂やPE樹脂といったポリオレフィン樹脂等を用いることができる。樹脂材料には、充てん材、着色剤、エラストマー、繊維材料、等といった添加剤が含まれてもよい。エラストマー材料は、エラストマーそのものでもよい。エラストマー材料には、充てん材、着色剤、樹脂、繊維材料、等といった添加剤が含まれてもよい。
【0033】
尚、「弾性を示す材料70」で厚さ4mm、狭い部分の幅10mm、つかみ具間距離120mmとなる試験片を作製したときの「弾性を示す材料70」の引張弾性率(ヤング率)は、機能部30に良好な機能を付与する点から、1~500MPaが好ましく、20~200MPaがより好ましい。ここで、引張弾性率(単位:MPa)は、JIS(日本産業規格)K7161-1:2014「プラスチック-引張特性の求め方-第1部:通則 」に準じ、試験速度50mm/minで試験片を引っ張った時に得られる応力/ひずみ曲線において、ε1=0.05%及びε2=0.25%のひずみ2点間に対応する応力/ひずみ曲線の傾きとする。
【0034】
図2,3に示す機能部31は、基部41と折曲部42を含む突出部40、第一の面11において折曲部42の方へ突出した爪部46、及び、凸条51と凹状部52を含む形状変更部50を含んでいる。
【0035】
基部41は、第一の面11において吸音材層20とは反対側へ突出した突出部40において吸音材層20に最も近い基端41bを有し、該基端41bから吸音材層20とは反対側の第一の突出方向PD1へ突出している。
図2に示す第一の突出方向PD1は、概ね、サイレンサー1の厚さ方向TD1に沿った方向である。折曲部42は、基部41の突出端41aから第一の突出方向PD1とは異なる第二の突出方向PD2へ突出している。
図2に示す第二の突出方向PD2は、概ね、第一の面11のうち一般部60の部分に沿った方向である。すなわち、第二の突出方向PD2は、概ね、第一の突出方向PD1に直交する方向である。折曲部42は、基部41の突出端41aから最も遠い先端42aを含む部分から吸音材層20の方へ突出した爪部43を含んでいる。
機能部31は、第一の面11において折曲部42に対向する対向部45を含んでいる。対向部45、基部41、及び、爪部43を含む折曲部42で囲まれる空間SP1には、ワイヤハーネス130を配置することが可能である。従って、機能部31は、対向部45と突出部40とでワイヤハーネス130を囲む形状を有し、対向部45と折曲部42との間においてワイヤハーネス130を保持する。機能部31は基部41と爪部43との間においてワイヤハーネス130を保持するともいえる。
図3に示すように、爪部43は、空間SP1の外側に向いている誘導面43a、及び、空間SP1に面する保持面43bを有している。誘導面43aは、ワイヤハーネス130が空間SP1に入り易いように傾斜し、厚さ方向TD1に沿っていない。保持面43bは、ワイヤハーネス130が空間SP1から出難いように、厚さ方向TD1に沿っている。
【0036】
図2の上部に示すように、突出部40は、3枚の突出片40a、及び、隣り合う突出片40a同士を繋ぐ接続部40bを含んでいる。2箇所の接続部40bは、
図2において断面を示す斜線部分に相当する。突出片40aと接続部40bは、いずれも、基部41、及び、爪部43を有する折曲部42を含んでいる。各突出片40aは、接続部40bから空間SP1とは反対側へ延出している。従って、突出片40aは、基部41と折曲部42を含む突出部40の強度を向上させる機能を有する。
【0037】
爪部46は、基部41から離れた位置において対向部45から折曲部42の爪部43の方へ突出している。爪部46の突出方向は、概ね、第一の突出方向PD1である。機能部31は、対向部45と突出部40と爪部46とでワイヤハーネス130を囲む形状を有し、基部41と爪部46との間においてワイヤハーネス130を保持する。
図2の上部に破線で示すように、爪部46は、3箇所の突出片40aと2箇所の接続部40bに跨がるように、折曲部42の爪部43に対応する位置に存在する。
図3に示すように、爪部46は、空間SP1の外側に向いている誘導面46a、及び、空間SP1に面する保持面46bを有している。誘導面46aは、ワイヤハーネス130が空間SP1に入り易いように傾斜し、厚さ方向TD1に沿っていない。保持面46bは、ワイヤハーネス130が空間SP1から出難いように、厚さ方向TD1に沿っている。
【0038】
形状変更部50は、第二の面12において基部41に対応する位置から爪部46に対応する位置に繋がる凸条51、及び、第二の面12において爪部46に対応する位置にある凹状部52を含んでいる。ここで、凸条51は、第二の面12において吸音材層20の方へ出っ張った長手状の部分を意味する。凸条51が第二の面12において基部41に対応する位置から爪部46に対応する位置に繋がっていることは、基部41と爪部46と凸条51を第二の面12に投影したときに、凸条51の投影面の一部が基部41の投影面の少なくとも一部、及び、爪部46の投影面の少なくとも一部に重なることを意味する。凹状部52は、第二の面12において凹んだ部分を意味する。凹状部52が第二の面12において爪部46に対応する位置にあることは、爪部46と凹状部52を第二の面12に投影したときに凹状部52の投影面の少なくとも一部が爪部46の投影面の少なくとも一部に重なることを意味する。
図2の下部に示すように、形状変更部50は、3箇所の凸条51、及び、2箇所の凹状部52を含んでいる。各凸条51は、突出片40aに対応する位置に存在する。2箇所の凹状部52は、一つの爪部46に対応する位置に存在する。
【0039】
図3に示すように、対向部45と折曲部42との間の長さL1は、ワイヤハーネス130の直径R1以上である。基部41と爪部(爪部43又は爪部46)との間の長さL2も、ワイヤハーネス130の直径R1以上である。従って、対向部45と突出部40と爪部46とで囲まれる空間SP1にワイヤハーネス130を収容可能である。また、爪部43と爪部46との間の長さL3は、ワイヤハーネス130の直径R1未満である。ここで、機能部31、特に、突出部40は、弾性を有する。従って、作業者は、誘導面43a,46aに沿ってワイヤハーネス130を空間SP1に向かって押し込むと、爪部43と爪部46との間が広がるように突出部40が弾性変形することにより、ワイヤハーネス130を車室側S2から空間SP1に入れることができる。ワイヤハーネス130が押し込まれる方向は、概ね、厚さ方向TD1に直交する方向である。
【0040】
図3に示すように、折曲部42と凸条51を含む機能部31の最大の厚さT2は、一般部60の厚さT1よりも厚い。従って、機能部31を備えるサイレンサー1は、ワイヤハーネス130といった他部材M1を保持する機能を良好に発揮することができる。また、突出部40が凸条51により補強されるので、他部材M1を保持する機能がさらに高められる。凸条51が基部41に対応する位置から爪部46に対応する位置に繋がっているので、第一の面11において他部材M1を囲む部分(突出部40、対向部45、及び、爪部46)が凸条51により補強され、他部材M1を保持する機能がさらに高められる。
尚、作業者は、突出部40を弾性変形させて爪部43と爪部46との間を広げることにより、機能部31からワイヤハーネス130を外すことができる。
【0041】
図4に示す機能部32は、一対の突出部40、対向部45、及び、凸条51を有する形状変更部50を含んでいる。
各突出部40は、吸音材層20に最も近い基端41bから吸音材層20とは反対側の第一の突出方向PD1へ突出した基部41、及び、該基部41の突出端41aから第二の突出方向PD2へ突出した折曲部42を含んでいる。二つの折曲部42の第二の突出方向PD2は、互いに他方の折曲部42に向かう方向である。
図4において、左の折曲部42の第二の突出方向PD2は右の折曲部42に向かう方向であり、右の折曲部42の第二の突出方向PD2は左の折曲部42に向かう方向である。機能部32は、第一の面11において一対の折曲部42に対向する対向部45を含んでいる。対向部45、一対の基部41、及び、一対の折曲部42で囲まれる空間SP1には、ワイヤハーネス130を配置することが可能である。従って、機能部32は、対向部45と一対の突出部40とでワイヤハーネス130を囲む形状を有し、基部41同士の間においてワイヤハーネス130を保持する。機能部32は対向部45と一対の折曲部42との間においてワイヤハーネス130を保持するともいえる。各折曲部42は、空間SP1の外側に向いている誘導面42c、及び、空間SP1に面する保持面42dを有している。誘導面42cは、ワイヤハーネス130が空間SP1に入り易いように、厚さ方向TD1に直交する面から傾斜している。保持面42dは、ワイヤハーネス130が空間SP1から出難いように、厚さ方向TD1に直交している。
【0042】
図4の上部に示すように、各突出部40は、3枚の突出片40a、及び、隣り合う突出片40a同士を繋ぐ接続部40bを含んでいる。2箇所の接続部40bは、
図4において断面を示す斜線部分に相当する。突出片40aと接続部40bは、いずれも、基部41、及び、折曲部42を含んでいる。各突出片40aは、接続部40bから空間SP1とは反対側へ延出している。従って、突出片40aは、基部41と折曲部42を含む突出部40の強度を向上させる機能を有する。
形状変更部50は、第二の面12において一方の基部41に対応する位置から他方の基部41に対応する位置に繋がる凸条51を有している。
図4の下部に示すように、形状変更部50は、3箇所の凸条51を含んでいる。各凸条51は、突出片40aに対応する位置に存在する。
【0043】
各突出部40は弾性を有するので、作業者は、各折曲部42の誘導面42cに沿ってワイヤハーネス130を空間SP1に向かって押し込むと、折曲部42同士の間が広がるように突出部40が弾性変形することにより、ワイヤハーネス130を車室側S2から空間SP1に入れることができる。ワイヤハーネス130が押し込まれる方向は、概ね、厚さ方向TD1であり、車室側S2からエンジンルーム側S1に向かう方向である。一方、
図2に示す機能部31において、ワイヤハーネス130が押し込まれる方向は、概ね、厚さ方向TD1に直交する方向である。従って、
図4に示す機能部32を備えるサイレンサー1は、
図2に示す機能部31を備えるサイレンサー1と比べて、機能部30にワイヤハーネス130を押し込む作業をし易い。
図4に示す遮音材層10においても、折曲部42と凸条51を含む機能部31の最大の厚さが一般部60の厚さT1よりも厚い。従って、機能部32を備えるサイレンサー1は、ワイヤハーネス130といった他部材M1を保持する機能を良好に発揮することができる。また、突出部40が凸条51により補強されるので、ワイヤハーネス130といった他部材M1を保持する機能がさらに高められる。凸条51が一方の基部41に対応する位置から他方の基部41に対応する位置に繋がっているので、第一の面11において他部材M1を囲む部分(一対の突出部40、及び、対向部45)が凸条51により補強され、他部材M1を保持する機能がさらに高められる。
【0044】
一方、
図2に示す機能部31は、基部41と折曲部42を含む突出部40と比べて爪部46が弾性変形し難いので、
図4に示す機能部32と比べてワイヤハーネス130が空間SP1から出難い。
図2に示す機能部31を備えるサイレンサー1は、
図4に示す機能部32を備えるサイレンサー1と比べて、他部材M1を保持する機能がより高い。
【0045】
図5,6に示す機能部33は、基部41と折曲部42を含む突出部40、第一の面11において吸音材層20とは反対側の第一の突出方向PD1へ突出した誘導部47、及び、凹状部52を有する形状変更部50を含んでいる。
突出部40は、吸音材層20に最も近い基端41bから第一の突出方向PD1へ突出した基部41、及び、該基部41の突出端41aから第二の突出方向PD2へ突出した折曲部42を含んでいる。
図5に示す第二の突出方向PD2は、厚さ方向TD1ではないものの、第一の面11のうち一般部60の部分に沿った方向から吸音材層20の方へ近付く方向である。折曲部42は、基部41の突出端41aから最も遠い先端42aを有するフック部44を含んでいる。機能部33は、第一の面11において突出部40の曲がった部分に対向する対向部45を含んでいる。対向部45、基部41、及び、フック部44を含む折曲部42で囲まれる空間SP1には、ワイヤハーネス130を配置することが可能である。従って、機能部33は、対向部45と突出部40とでワイヤハーネス130を囲む形状を有する。
【0046】
フック部44は、折曲部42において空間SP1とは反対側へ突出した形状44aを有している。作業者は、後述する凹状部52の貫通穴53にフック部44を通すことが可能である。フック部44は、貫通穴53の周囲において凹状部52に引っ掛かる形状44aを有する。
誘導部47は、吸音材層20から最も遠い突出端47aから貫通穴53に向かって吸音材層20に近付く傾斜を有している。従って、作業者は、誘導部47に沿ってフック部44を貫通穴53に挿入することができる。
【0047】
図5の上部に示すように、突出部40は、3箇所の補強片40cを含んでいる。誘導部47は、3箇所の誘導片47cを含んでいる。
形状変更部50は、貫通穴53を有する凹状部52、及び、第二の面12において基部41に対応する位置にある凹状部52を含んでいる。両凹状部52は、第二の面12において凹んだ部分である。貫通穴53を有する凹状部52は、第二の面12において誘導部47に対応する位置にある。貫通穴53は、対向部45と突出部40とがワイヤハーネス130を囲んでいる状態で折曲部42のフック部44の通過を許容する。作業者は、対向部45と突出部40とがワイヤハーネス130を囲んでいる状態でフック部44を貫通穴53に通して凹状部52に引っ掛けることができる。
【0048】
図6に二点鎖線で示すように、フック部44が凹状部52に引っ掛かっている状態において、対向部45と突出部40との間の長さL4はワイヤハーネス130の直径R1以上であり、基部41と折曲部42との間の長さL5もワイヤハーネス130の直径R1以上である。従って、対向部45と突出部40とで囲まれる空間SP1にワイヤハーネス130を収容可能である。突出部40は弾性を有するので、フック部44と貫通穴53との間の長さL6は、ワイヤハーネス130の直径R1未満でもよいし、ワイヤハーネス130の直径R1以上でもよい。L6がR1未満である場合、作業者は、誘導部47に沿ってワイヤハーネス130を空間SP1に向かって押し込むと、フック部44と貫通穴53との間が広がるように突出部40が弾性変形することにより、ワイヤハーネス130を車室側S2から空間SP1に入れることができる。その後、作業者がフック部44を貫通穴53に通して凹状部52に引っ掛けると、ワイヤハーネス130が対向部45と突出部40とに囲まれている状態で機能部33に保持される。
【0049】
図6に示すように、突出部40を含む機能部33の最大の厚さT2は、一般部60の厚さT1よりも厚い。従って、機能部33を備えるサイレンサー1は、ワイヤハーネス130といった他部材M1を保持する機能を良好に発揮することができる。また、対向部45と突出部40とが他部材M1を囲んでいる状態で貫通穴53に挿入されたフック部44が凹状部52に引っ掛かるので、他部材M1を保持する機能がさらに高められる。
尚、作業者は、フック部44を貫通穴53から引き抜くことにより、機能部33からワイヤハーネス130を外すことができる。
【0050】
図7に示す機能部34は、第一の面11において吸音材層20とは反対側へ突出した突出部40、及び、該突出部40に対応する位置に存在する凹状部52を含み、ボルト120に保持される。形状変更部50は、第二の面12において凹んだ凹状部52を有している。機能部34は、一般部60よりも薄い薄肉部38を第一の面11にある突出部40と第二の面12にある凹状部52との間に有する。薄肉部38は、遮音材層10においてボルト120で突き破ることが可能な程度に薄い部位であり、サイレンサー1において保持したい箇所に設定される。薄肉部38は、第一の面11及び第二の面12において、吸音材層20から最も遠い部分に存在する。突出部40は、一般部60から薄肉部38に向かって吸音材層20から遠ざかる傾斜面40dを有している。凹状部52は、第二の面12において傾斜面40dに合わせて一般部60から薄肉部38に向かって吸音材層20から遠ざかる誘導面52aを有している。誘導面52aは、ボルト120を薄肉部38まで導く機能を有する。
吸音材層20は、機能部34の位置に合わせてボルト120を厚さ方向TD1へ通すための開口21を有している。
【0051】
突出部40を含む機能部34の最小の厚さT3は、一般部60の厚さT1よりも薄い。従って、作業者は、ボルト120で薄肉部38を容易に突き破ることができる。また、破れた薄肉部38にボルト120のねじ溝が引っ掛かることにより、ボルト120が薄肉部38から抜け難くなる。これにより、作業者は、クリップ等といった別部品無しに機能部34をボルト120に保持させることができる。従って、機能部34を備えるサイレンサー1は、ボルト120といった他部材M1に保持される機能を良好に発揮することができる。さらに、薄肉部38は弾性を有するので、破れた薄肉部38がボルト120の外周に密着し、ボルト120の周囲に隙間が生じることを防ぐ。これにより、ボルト120の周囲においてエンジンルーム側S1から車室側S2に向かう騒音が破れた薄肉部38に遮られ、サイレンサー1が良好な遮音性能を発揮する。
加えて、作業者が機能部34にボルト120を通す際にボルト120が誘導面52aに沿って薄肉部38に誘導されるので、作業者は、薄肉部38にボルト120を容易に通すことができる。
【0052】
尚、薄肉部38には、予めスリットが形成されていてもよい。これにより、薄肉部38にボルト120を通すための荷重が少なくなり、薄肉部38にボルト120を通すことがさらに容易となる。
【0053】
以上説明したように、第一の面11にある突出部40と第二の面12にある形状変更部50を含む機能部30の少なくとも一部の厚さが一般部60の厚さT1とは異なるので、機能部30は、一般部60の厚さT1では発揮することができない機能を発揮することができる。従って、本具体例は、車両用サイレンサー1が発揮する機能を高めることが可能となる。
【0054】
(3)車両用サイレンサーの製造方法の具体例:
図8は、車両用サイレンサー1の製造方法を模式的に例示している。分かり易く示すため、
図8には、
図2に示す機能部31が機能部30として示されている。尚、サイレンサー1がダッシュサイレンサーである場合、サイレンサー1は、機能部34(
図7参照)を備え、機能部32(
図4参照)と機能部33(
図5参照)の少なくとも一方を備えていてもよい。
サイレンサー1の製造方法は、以下の工程(A1),(A2)を含んでいる。
(A1)遮音材層10が、突出部40と形状変更部50を含む機能部30、及び、機能部30の周囲にある一般部60を備え、形状変更部50が凸状と凹状の少なくとも一方の形状であり、且つ、機能部30の少なくとも一部の厚さが一般部60の厚さT1とは異なるように、弾性を示す材料70で遮音材層10を射出成形により形成する射出成形工程ST1。
(A2)第二の面12に接合された吸音材層20を形成する吸音材層形成工程ST2。
【0055】
図8に示す射出成形機200は、射出成形工程ST1において遮音材層10を形成するために使用される。射出成形機200は、可動型212と固定型214を含む射出成形型210、及び、射出装置220を備えている。型212,214は、互いに近接及び離隔可能に設けられている。尚、型212を固定型にして型214を可動型にしてもよいし、両型212,214を可動型にしてもよい。射出成形後に射出成形型210から遮音材層10を取り出すため、固定型214は複数の分割型で構成されてもよく、可動型212も複数の分割型で構成されてもよい。複数の分割型は、例えば、母型(master block)と1以上の入子型(insert die)で構成することができる。可動型212は、遮音材層10の第二の面12の形状に合わせられた型面を有する金型とされている。固定型214は、遮音材層10の第一の面11の形状に合わせられた型面を有する金型とされている。両型212,214を閉じた型締め状態で生じるキャビティCA1は、機能部30を備える遮音材層10の形状を有している。
【0056】
射出成形工程ST1において、射出装置220は、弾性を示す材料70となる液状材料75を射出成形型210内のキャビティCA1に射出する。例えば、弾性を示す材料70が熱可塑性エラストマー等といった熱可塑性材料を含む場合、液状材料75は溶融材料となる。この場合、射出装置220は、熱可塑性材料の融点以上に加熱する加熱装置を備えていてもよい。弾性を示す材料70が熱可塑性樹脂を含む場合、液状材料75は溶融樹脂となる。キャビティCA1内の液状材料75が固化又は硬化してから、両型212,214を開いた片開き状態にすると、射出成形型210から遮音材層10を取り出すことができる。
遮音材層10を射出成形により形成することにより、一般部60の厚さT1とは異なる厚さの複雑な形状を有する機能部30を容易に形成することができる。
【0057】
吸音材層形成工程ST2において、遮音材層10の第二の面12に吸音材層20が接合される。例えば、空隙V1を有する材料80(
図1参照)で形成されたシート状の吸音材85を遮音材層10の第二の面12に貼り付けることにより、遮音材層10の第二の面12に吸音材層20が接合される。吸音材85が柔軟な材料である場合、遮音材層10の第二の面12に凸条51等といった凸状の形状変更部50が存在しても、吸音材85が凸状の形状変更部50の形状に合わせて変形することにより、遮音材層10の第二の面12に概ね密着した吸音材層20を形成することができる。空隙V1を有する材料80が発泡樹脂である場合、樹脂22(
図1参照)を含有する樹脂材料を発泡させて遮音材層10の第二の面12に射出することにより吸音材層20を成形する二色成形が行われてもよい。例えば、
図2,4に示すように形状変更部50が複数の凸条51を含む場合、凸条51同士の間に発泡樹脂が入り込むことにより、機能部31,32がさらに補強され、他部材M1を保持する機能がさらに高められる。その結果、遮音材層10に形成される凸条51の数を減らすことも可能である。
【0058】
図8に示す製造方法により、
図2に示すサイレンサー1が製造される。むろん、
図4に示す機能部32を備えるサイレンサー1、
図5に示す機能部33を備えるサイレンサー1、及び、
図7に示す機能部34を備えるサイレンサー1も、同様にして製造される。
以上説明した製造方法により、第一の面11にある突出部40と第二の面12にある形状変更部50を含む機能部30の少なくとも一部の厚さが一般部60の厚さT1とは異なるように遮音材層10が射出成形により形成される。形成される機能部30は、一般部60の厚さT1では発揮することができない機能を発揮することができる。従って、本具体例は、発揮する機能を高めることが可能な車両用サイレンサー1を製造することができる。
【0059】
(4)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
本発明を適用可能な車両用サイレンサーは、ダッシュサイレンサーに限定されず、ドア用のサイレンサー、車室天井部のサイレンサー、車室フロア部のサイレンサー、等でもよい。
【0060】
(5)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、発揮する機能を高めることが可能な車両用サイレンサー及びその製造方法等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1…サイレンサー、
10…遮音材層、11…第一の面、12…第二の面、
20…吸音材層、21…開口、
22…樹脂、23…繊維、24…バインダー、
30,31,32,33,34…機能部、
38…薄肉部、
40…突出部、40a…突出片、40b…接続部、40c…補強片、40d…傾斜面、
41…基部、41a…突出端、41b…基端、
42…折曲部、42a…先端、42c…誘導面、42d…保持面、
43…爪部、43a…誘導面、43b…保持面、
44…フック部、44a…形状、
45…対向部、
46…爪部、46a…誘導面、46b…保持面、
47…誘導部、47a…突出端、47c…誘導片、
50…形状変更部、
51…凸条、52…凹状部、52a…誘導面、53…貫通穴、
60…一般部、
70…弾性を示す材料、75…液状材料、
80…空隙を有する材料、85…吸音材、
100…自動車、110…パネル、120…ボルト、130…ワイヤハーネス、
200…射出成形機、210…射出成形型、220…射出装置、
M1…他部材、
PD1…第一の突出方向、PD2…第二の突出方向、
S1…エンジンルーム側、S2…車室側、
ST1…射出成形工程、ST2…吸音材層形成工程、
T1…一般部の厚さ、T2,T3…厚さ、
TD1…厚さ方向、
V1…空隙。