(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112575
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】アンテナコイル
(51)【国際特許分類】
H01Q 7/08 20060101AFI20230804BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20230804BHJP
H01F 5/02 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
H01Q7/08
H01F5/00 R
H01F5/02
H01F5/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014456
(22)【出願日】2022-02-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年12月6日、日本大学生産工学部生産工学研究所「第54回(令和3年度)日本大学生産工学部学術講演会講演概要」に発表
(71)【出願人】
【識別番号】592034397
【氏名又は名称】東静工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】外塚 充
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 紀夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 洋
(57)【要約】
【課題】 アンテナコイルを小型化および軽量化する。
【解決手段】 アンテナコイル100は、粉状の軟磁性材料と、非金属材料と、を含む複数の材料の複合物を備えるコア110と、コア110に対して巻き回された状態で配置される巻線120と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号の送信および受信の少なくとも一方を行うためのアンテナコイルであって、
粉状の軟磁性材料と、非金属材料と、を含む複数種類の材料の複合物を備えるコアと、
前記コアに対して巻き回された状態で配置される巻線と、
を備える、アンテナコイル。
【請求項2】
前記粉状の軟磁性材料は、粉状のFe系非晶質合金材、粉状のFe系ナノ結晶合金材、粉状の純鉄、粉状のフェライト、粉状のパーマロイ、および粉状の珪素鋼材のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載のアンテナコイル。
【請求項3】
前記非金属材料は、樹脂を含む、請求項1または2に記載のアンテナコイル。
【請求項4】
前記コアの少なくとも一部の領域が設置される領域を有するケースであって、非金属材料を含むケースをさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のアンテナコイル。
【請求項5】
前記コアの体積に対する前記粉状の軟磁性材料の体積の割合は、5vol%以上95vol%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のアンテナコイル。
【請求項6】
前記コアは、粉状の軟磁性材料と、非金属材料と、を含む複数種類の材料を有する成型品を備え、
前記複数種類の材料を成型するために用いられる金型の領域であって前記複数種類の材料が挿入される領域の体積で、前記コアの質量を割った値で表される前記コアの密度は、1g/cm3以上9g/cm3以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のアンテナコイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信などを行うための装置におけるアンテナに用いられるアンテナコイルは、コアと、コアに対して巻き回される巻線と、を備える。このようなアンテナコイルに用いられるコアとして、特許文献1には、棒形状のフェライトコアを用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているようにコアとして棒形状のフェライトコアを用いると、コアが割れ易くなるため、コアを薄くすることが容易ではない。したがって、コイルを小型化および軽量化することが容易ではない。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、アンテナコイルを小型化および軽量化することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアンテナコイルは、無線信号の送信および受信の少なくとも一方を行うためのアンテナコイルであって、粉状の軟磁性材料と、非金属材料と、を含む複数種類の材料の複合物を備えるコアと、前記コアに対して巻き回された状態で配置される巻線と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アンテナコイルを小型化および軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】アンテナコイルの構成の一例を示す図(斜視図)である。
【
図2】アンテナコイルの構成の一例を示す図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
なお、長さ、位置、大きさ、間隔等、比較対象が同じであることは、厳密に同じである場合の他、発明の主旨を逸脱しない範囲(発明の目的を達成することができる範囲)で異なるもの(例えば、設計時に定められる公差の範囲内で異なるもの)も含むものとする。また、各図に示すx-y-z座標は、各図における向きの関係を示すものである。白丸(○)の中にクロスマーク(×)を付した記号は、紙面の手前側から奥側に向かう方向の矢印線を示す記号であり、白丸(○)の中に黒丸(●)を付した記号は、紙面の奥側から手前側に向かう方向の矢印線を示す記号である。
【0010】
図1は、アンテナコイル100の構成の一例を示す図であり、アンテナコイル100を俯瞰した状態を示す斜視図である。
図2は、アンテナコイルの構成の一例を示す図であり、アンテナコイル100の断面図である。
図2(a)は、
図2(c)のI-I断面図であり、
図2(b)は、
図2(c)のII-II断面図であり、
図2(c)は、
図2(a)のI-I断面図である。
【0011】
図1および
図2において、アンテナコイル100は、無線信号の送信および受信の少なくとも一方を行うためのコイルであり、コア110と、巻線120と、ケース130と、を備える。アンテナコイル100は、アンテナの一部を構成し、無線信号の受信端および送信端のうち少なくとも一方となるコイルである。
【0012】
<コア110>
コア110は、粉状の軟磁性材料と、非金属材料と、を含む複数種類の材料の複合物(当該複数種類の材料を合わせて1つにした物体)を備える。複合物は、例えば、複数種類の材料を混合して成形して1つの物体とした成形品である。本実施形態では、コア110が、当該複数種類の材料を混合して成型した成型品である場合を例示する。
なお、成型は、金型を用いて形成されることを意味し、成形は、金型を用いて形成することに限定されないことを意味するものとする。
【0013】
粉状の軟磁性材料は、軟磁性を有する磁性材料であればよいが、例えば、粉状のFe系非晶質合金材、粉状のFe系ナノ結晶合金材、粉状の純鉄、粉状のフェライト、粉状のパーマロイ、および粉状の珪素鋼材などのうちの少なくとも1つを含む。軟磁性材料を粉体とすることにより、粉体とせずに焼結して形成されたフェライトコアよりも薄く小さいコアを実現することができる。Fe系非晶質合金材、Fe系ナノ結晶合金材、純鉄、および珪素鋼材は、フェライトよりもキュリー温度が高い。したがって、粉状のFe系非晶質合金材、粉状のFe系ナノ結晶合金材、粉状の純鉄、および粉状の珪素鋼材のうちの少なくとも1つを粉状の軟磁性材料として用いれば、高温環境下においてもインダクタンスの低下を抑制することができる。また、Fe系非晶質合金材、Fe系ナノ結晶合金材、純鉄、および珪素鋼材は、フェライトよりも飽和磁束密度が高い。したがって、粉状のFe系非晶質合金材、粉状のFe系ナノ結晶合金材、粉状の純鉄、および粉状の珪素鋼材のうちの少なくとも1つを粉状の軟磁性材料として用いれば、(コアにおける磁束密度が同じである場合には)巻線120の巻回数を少なくすることができ、アンテナコイル100を小型化および軽量化することができる。
【0014】
以上のことから、粉状の軟磁性材料は、軟磁性を有する磁性材料を粉体したものであれば良い。例えば、粉状のFe系非晶質合金材、粉状のFe系ナノ結晶合金材、粉状の純鉄、粉状のフェライト、および粉状の珪素鋼材などのうち少なくとも1つを含むのが好ましく、粉状のFe系非晶質合金材、粉状のFe系ナノ結晶合金材、粉状の純鉄、および粉状の珪素鋼材のうち少なくとも1つを含むのがより好ましい。また、コア110の製造を容易にすることができることなどを重要視する場合、粉状の軟磁性材料は、粉状のFe系非晶質合金材、粉状のFe系ナノ結晶合金材、粉状の純鉄、粉状のフェライト、および粉状の珪素鋼材のいずれかのみであるのが好ましく、粉状のFe系非晶質合金材、粉状のFe系ナノ結晶合金材、粉状の純鉄、および粉状の珪素鋼材のいずれかのみであるのがより好ましい。ただし、粉状の軟磁性材料は、粉状のFe系非晶質合金材、粉状のFe系ナノ結晶合金材、粉状の純鉄、粉状のパーマロイ、および粉状の珪素鋼材などのうち少なくとも2つを含んでいても良い。例えば、フェライトコアよりも重量を軽くすると共に、各材料の利点を活かした特性をコアが有するようにする場合には、粉状の軟磁性材料は、粉状のFe系非晶質合金材、粉状のFe系ナノ結晶合金材、粉状の純鉄、粉状のパーマロイ、および粉状の珪素鋼材などのうち少なくとも2つを含んでいても良い。
【0015】
軟磁性材料としてFe系ナノ結晶合金材を用いる場合、Fe系ナノ結晶合金材の出発材料の組成は、Fe系ナノ結晶合金材に要求される特性に応じて定めれば良いが、Fe系ナノ結晶合金材の出発材料の組成は、Fe系ナノ結晶合金材に要求される特性に応じて定めれば良い。以下の組成式が例示される。
Fe100-(a+b+c)-Sia-Bb-Mc (原子%)
4≦a≦18、4≦b≦12、0.5≦c≦10
Mは、Cu、Nb、Mo、Ta、W、Ti、V、Cr、Mn、Zr、Hf、Y、Al、C、P)の中から選択される少なくとも一種以上を含む元素群である。
【0016】
以上の組成において、Feの一部を10原子%以下のNiまたは10原子%以下のCoに置き換えても良い。
【0017】
以上の出発材料に対して熱処理などを行うことによって製造されるFe系ナノ結晶合金材料においてbccFe結晶が生成された場合、αFeの結晶サイズは、1nm以上、1000nm以下であるのが好ましい。αFeの結晶サイズは、例えば、1000nm未満であるのが好ましく、500nm未満であるのがより好ましく、100nm未満であるのがより一層好ましい。なお、結晶サイズは、例えば、X線回折により得られる回折線のピークの半値幅から算出される値である。また、出発材料に対して熱処理を行わずに、bccFe結晶が生成されないアモルファス状態のFe系ナノ結晶合金材を構成しても、コアの透磁率として高い透磁率が得られることから、本来は出発材料に対して熱処理を行うことが好ましいが、出発材料に対して熱処理を行わなくても良い。出発材料に対して熱処理を行わないことにより、bccFe結晶を含まないアモルファス状態のFe系ナノ結晶合金材とすれば、Fe系ナノ結晶合金材が脆くなることを抑制することができる。よって、コア110の機械的強度を向上させることができる。また磁気特性を向上させるために、熱処理工程時に、出発材料に対して磁場を印加しても良いが、熱処理工程時に出発材料に対して磁場を印加しなくても良い。また、Fe系ナノ結晶合金材を粉体として用いる場合は、コアの渦電流損失を小さくするために、粉体表面に絶縁物(例えば、酸化膜などの酸化物および/または窒化物など)を形成することにより、粉体同士の絶縁性、および、粉体と粉体以外の材料との絶縁性を確保しても良い。
【0018】
軟磁性材料としてFe系非晶質合金材を用いる場合、Fe系非晶質合金材の出発材料の組成は、Fe系非晶質合金材に要求される特性に応じて定めれば良い。以下の組成式が例示される。
Fe100-(a+b+c)-Sia-Bb-Mc (原子%)
4≦a≦14、6≦b≦16、0≦c≦6
Mは、Cu、Nb、Mo、Ta、W、Ti、V、Cr、Mn、Zr、Hf、Y、Al、C、P)の中から選択される少なくとも一種以上を含む元素群である。
以上の組成において、Feの一部を10原子%以下のNiまたは10原子%以下のCoに置き換えても良い。
【0019】
以上の出発材料に対して熱処理などを行うことによって製造されるFe系非晶質合金z材においてbccFe結晶が生成された場合、bccFe結晶の結晶サイズは、0.1μm以上、5000μm以下であるのが好ましい。熱処理工程後のFe系非晶質合金材におけるbccFe結晶の結晶サイズは、例えば、100μm未満であるのが好ましく、50μm未満であるのがより好ましく、10μm未満であるのがより一層好ましい。なお、結晶サイズは、例えば、X線回折により得られる回折線のピークの半値幅から算出される値である。また、種々の用途により、コアに対して歪取り焼鈍を行うことにより、コアの磁気特性として良好な磁気特性を得るための熱処理を出発材料に対して行わなくても、コアの透磁率として必要な透磁率が得られる。したがって、本来は出発材料に対して熱処理を行うことが好ましいが、出発材料に対して熱処理を行わなくても良い。出発材料に対して熱処理を行わないことにより、bccFe結晶を含まないFe系非晶質合金材とすれば、Fe系非晶質合金材が脆くなることを抑制することができる。よって、コア110の機械的強度を向上させることができる。また、コアの磁気特性を向上させるために熱処理工程時に出発材料に対して磁場を印加しても良いが、熱処理工程時に出発材料に対して磁場を印加しなくても良い。また、Fe系非晶質合金材を粉体として用いる場合は、コアの渦電流損失を小さくするために、粉体表面に絶縁物(例えば、酸化膜などの酸化物および/または窒化物など)を形成することにより、粉体同士の絶縁性、および、粉体と粉体以外の材料との絶縁性を確保しても良い。
【0020】
粉状の軟磁性材料の粒径(直径)は、0.01μm以上2mm以下の範囲であるのが好ましい。粉状の軟磁性材料の粒径は、顕微鏡法を用いて幾何学的平均径を測定することにより定めれば良い。例えば、幾何学的平均径として、短軸径、長軸径、および二軸平均径(短軸径と長軸径との算術平均値)を測定する場合、粉状の軟磁性材料の粒径を二軸平均径としても良い。
【0021】
幾何学的平均径の測定方法の第1の具体例として、光学顕微鏡、走査電子顕微鏡(SEM(Scanning Electron Microscope))または透過電子顕微鏡(TEM(Transmission Electron Microscope)/AEM(Analytical Electron Microscope))を用いて、顕微鏡の視野内に存在する粒子の粒径を直接測定する方法がある。また、幾何学的平均径の測定方法の第2の具体例として、光散乱回折法を用いて幾何学的平均径(例えば、光散乱径、球相当径)を測定する方法がある。第2の具体例においては、例えば、粒子径分布測定装置を用いて光散乱、レーザ回折によりブラウン運動の動きを光の強度として観測し、光の強度から粒径を算出する。
【0022】
また、粉状の軟磁性材料の形状は、球状であってもその他の形状であっても良い。ただし、コア110の透磁率を大きくするために、短軸径と長軸径と厚みとに差があり、複雑な形状であるのが好ましい。例えば、短軸径に対する長軸径の比が1以上であることと、厚みに対する長軸径の比が1以上であることと、の少なくとも一方を満たすのが好ましい。
【0023】
非金属材料は、コア110の電気抵抗を大きくすること(好ましくはコア110を絶縁体とすること)、コア110の耐衝撃性を高めることと、コア110の成形を容易にすることと、コア110のコストダウンを図ることと、を実現するために用いられる。コア110に含まれる非金属材料は、特に限定されないが、製造過程において加えられる熱によって昇温する製造過程のコアの温度として想定される最高温度以上の耐熱温度を有しているのが好ましい。例えば、非金属材料の耐熱温度は250℃以上であるのが好ましい。また、非金属材料は絶縁材料が好ましい。非金属材料は、例えば、熱可塑性樹脂、汎用プラスチック(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、AS樹脂(ASもしくはSAN)、ABS樹脂(ABS)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニル樹脂(PVC)、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET))、汎用エンジニアリングプラスチック(例えば、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT))スーパーエンジニアリングプラスチック(例えば、ポリフェニレンスルファイド(PPS),ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP))、熱硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂(PF)、ユリア樹脂(UF)、メラミン樹脂(MF)、エポキシ樹脂(EP)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、ポリウレタン(PU)、ジアリルフタレート樹脂(PDAP)、シリコーン樹脂(SI)、アルキド樹脂ポリフェニレンスルファイド(PPS))、または、セラミックス(例えば、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O2)、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si2N4)、窒化ホウ素(BN)、石英ガラス(SiO2)、マコール(フッ素金雲母))である。その他、非金属材料は、例えば、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリメチルペンテン(PMP)、生分解性プラスチック、または繊維素系プラスチックでも良い。また、非金属材料は、例えば、以上の二種以上の混合物であっても良い。
【0024】
次に、コア110の製造方法の一例を説明する。
粉状の軟磁性材料の製造方法は特に限定されない。公知の方法で粉状の軟磁性材料を製造すれば良い。軟磁性材料としてFe系ナノ結晶合金材および/またはFe系非晶質合金材を用いる場合、例えば、液体急冷法、回転液中紡糸法、またはスパッタ法を用いて、Fe系ナノ結晶合金材および/またはFe系非晶質合金材を薄帯として製造しても良い。
【0025】
そして、軟磁性材料を粉砕する。軟磁性材料を粉砕する方法は特に限定されない。公知の方法で軟磁性材料を粉砕すれば良い。例えば、アトマイズ法(水アトマイズ法またはガスアトマイズ法)や機械的粉砕法(ボールミル、ミキサーミル、アトライターなど)を用いて軟磁性材料を粉砕しても良い。
【0026】
そして、粉状の軟磁性材料と、非金属材料とを含む複数の材料を混合する。粉状の軟磁性材料と、非金属材料とを含む複数の材料の混合の方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法が具体例として挙げられる。
【0027】
まず、粉状の軟磁性材料と混合される材料(非金属材料を含む材料)を、ミキサーなどを用いて粉砕する。粉状の軟磁性材料と混合される材料(非金属材料を含む材料)が粉状の軟磁性材料と可能な限り偏りなく混ざるようにするためである。また、非金属材料として樹脂を用いる場合、樹脂を粉砕せずに粉状の軟磁性材料と混合すると、コア110(複合物)の中に樹脂のみの塊り(いわゆるダマ)が発生する虞がある。そうすると、粉状の軟磁性材料と粉状の樹脂とが相互に分離する虞がある。非金属材料として樹脂を用いる場合、この分離を抑制することも、粉状の軟磁性材料と混合される材料(非金属材料を含む材料)を粉状の軟磁性材料と混合する前に粉砕するのが好ましい理由である。
【0028】
粉状の軟磁性材料と混合する材料として、非金属材料に加えて、例えば、硬化剤、硬化促進剤、分散剤、および離型剤の少なくともいずれか1つを含めるのが好ましい。硬化剤は、後述する複合物の成型のために材料に熱が加えられた際に材料を硬化させるための材料である。硬化促進剤は、当該材料の硬化を促進するための材料である。分散剤は、粉状の軟磁性材料の流動性を高めて粉状の軟磁性材料の分散を促進させるための材料である。分散剤は、例えば、球状の微粒子のシリカを含む。離型剤は、後述する複合物の成型のために用いられる金型から複合物(成型品)を取り出す際に、金型と複合物(成型品)とを分離させ易くするための材料である。また、軟磁性材料と混合する材料は粉状でも良いし液体でも良い。以下の説明では、以上のようにして粉砕された、粉状の軟磁性材料と混合される材料(非金属材料を含む材料)を、必要に応じて、非軟磁性混合材料と称する。
【0029】
以上のようにして得られた非軟磁性混合材料を混錬機などで混合する。このとき、非軟磁性混合材料に含まれる各材料が可及的に均一に混ざるようにする(すなわち非軟磁性混合材料において各材料が可及的に均一に分布する(可及的に分散する))のが好ましい。
【0030】
以下の説明では、粉状の軟磁性材料と分散剤としてシランカップリング剤とが混合された材料を、必要に応じて、軟磁性混合材料と称する。シランカップリング剤は、粉状の軟磁性材料と非金属材料との接着性を高めるための材料(接着剤)の一例である。シランカップリング剤は液状であるため塊り(いわゆるダマ)になり易い。このため、軟磁性混合材料に塊りが含まれないように、粉状の軟磁性材料とシランカップリング剤とを混合するのが好ましい。また、粉状の軟磁性材料とシランカップリング剤とが可及的に均一に混ざるようにする(すなわち、軟磁性混合材料において粉状の軟磁性材料とシランカップリング剤とが可及的に均一に分布する(可及的に分散する))のが好ましい。
【0031】
コア110の体積に対する粉状の軟磁性材料の体積の割合として予め設定された体積割合に基づいて、軟磁性混合材料の質量に対する非軟磁性混合材料の質量の割合を算出し、算出した質量割合に基づいて、軟磁性混合材料の質量と非軟磁性混合材料の質量を算出して決定する。ここで、コア110の体積に対する粉状の軟磁性材料の体積の割合は、コア110の形状を安定させる観点から、5vol%以上95vol%以下であるのが好ましく、成型のし易さの観点からは、25vol%以上85vol%以下であるのがより好ましい。そして、決定した質量の軟磁性混合材料および非軟磁性混合材料を高速混錬機などで混合する。以下の説明では、軟磁性混合材料と非軟磁性混合材料とが混合された材料を、必要に応じて、軟磁性・非軟磁性混合材料と称する。前述したようにシランカップリング剤は液状であるため塊り(いわゆるダマ)になり易い。このため、軟磁性・非軟磁性混合材料に塊りが含まれないように、軟磁性混合材料と非軟磁性混合材料とを混合するのが好ましい。また、軟磁性混合材料と非軟磁性混合材料とが可及的に均一に混ざるようにする(すなわち、軟磁性・非軟磁性混合材料において軟磁性混合材料と非軟磁性混合材料とが可及的に均一に分布する(可及的に分散する))のが好ましい。
【0032】
そして、軟磁性・非軟磁性混合材料を金型(治具)の溝(凹部の領域)に挿入し、熱プレス機などを用いて、軟磁性・非軟磁性混合材料を成型する。成型に熱プレス機を用いる場合、成型に先立って、熱プレス機(加熱板(プレスの対象物に圧力をかけるための板))の温度を加圧時の温度に昇温しておくのが好ましい。また、軟磁性・非軟磁性混合材料の挿入に先立って、金型を加圧時の温度に昇温しておくのが好ましい。このような昇温は、軟磁性・非軟磁性混合材料における空隙が小さく且つ少なくなる(好ましくは無くなる)ように、軟磁性・非軟磁性混合材料に対して熱加圧成型を行うために行われる。このような観点から、例えば、熱プレス機および金型の少なくとも一方の加圧時の温度の設定値として、加圧時における軟磁性・非軟磁性混合材料の温度が、非金属材料の融点以上、粉末の軟磁性材料の融点未満の温度となる設定値を採用しても良い。このようにすれば、加圧時における軟磁性・非軟磁性混合材料の温度が、非金属材料の融点以上、粉末の軟磁性材料の融点未満の温度となるので、非金属材料を溶融させることができる。このようにする場合、例えば、熱プレス機および金型の少なくとも一方の加圧時の温度(の設定値)を、例えば、非金属材料の融点としても良い。すなわち、例えば、非金属材料の融点が180℃である場合、熱プレス機および金型の少なくとも一方の加圧時の温度(の設定値)を180℃としても良い。しかしながら、必ずしも、熱プレス機および金型の少なくとも一方の加圧時の温度の設定値として、加圧時における軟磁性・非軟磁性混合材料の温度が、非金属材料の融点以上、粉末の軟磁性材料の融点未満の温度となる設定値を採用する必要はない。例えば、熱プレス機および金型の少なくとも一方の加圧時の温度の設定値として、加圧時における軟磁性・非軟磁性混合材料の温度が、粉末の軟磁性材料および非金属材料の融点未満の温度となる設定値を採用しても良い。このようにする場合、加圧時における軟磁性・非軟磁性混合材料の温度が、粉末の軟磁性材料および非金属材料の融点未満の温度となるので、例えば、融点の高い非金属材料を用いる場合でも軟磁性材料の溶融を防止することができる。このようにする場合、粉状の軟磁性材料および非金属材料を含む材料を溶融させずに圧粉成形するので、軟磁性・非軟磁性混合材料はいわゆる焼結体となる。このようにしても、軟磁性・非軟磁性混合材料における空隙が小さく且つ少なくなる(好ましくは無くなる)ように、軟磁性・非軟磁性混合材料に対して圧粉成形を行うことができる。また、軟磁性・非軟磁性混合材料における空隙が小さく且つ少なくなる(好ましくは無くなる)ようにすることができれば、軟磁性・非軟磁性混合材料を構成する材料に応じて、熱プレス機および金型を加熱せずに、粉状の軟磁性材料および非金属材料を含む材料を圧粉成形しても良い。
軟磁性・非軟磁性混合材料の成形方法は、熱プレス成型に限らない。軟磁性・非軟磁性混合材料の成形方法は、例えば、圧縮成形、射出成形、ブロー成形、押出し成形、または真空成形・圧空成形でも良い。また、軟磁性・非軟磁性混合材料の成形時に、軟磁性・非軟磁性混合材料に対して磁場を印加してもよい。磁場の印加により、充填した粉状の軟磁性材料の磁区の方向を磁場が印加される方向に整列させることができ、成形品(成形後の軟磁性・非軟磁性混合材料)の内部において、粉状の軟磁性材料の均一な分散あるいは異方的な分散を実現することができる。また、成形品の品質を高めたり、成形品に磁化し易い方向や磁化し難い方向を与えることにより成形品の磁化の方向を制御したりすることができる。
そして、軟磁性・非軟磁性混合材料の成型が終了して金型が冷却した後、以上のようにして製造された軟磁性・非軟磁性混合材料の成型品を金型から取り出す。また、成形品(成形後の軟磁性・非軟磁性混合材料(コア))に対し磁気特性を向上させるために磁場を印加しても良い。
【0033】
以上のようにして製造されるコア110(成型品)の大きさは、特に限定されないが、アンテナコイル100を設置する装置における設置スペースの観点から、以下のようにするのが好ましい。すなわち、コア110(成型品)の長さ(巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)の長さ)は1mm以上300mm以下の範囲にするのが好ましい。コア110の厚み(アンテナコイル100の高さ方向(z軸方向)の長さ)は0.5mm以上100mm以下の範囲であるのが好ましい。コア110(成型品)の幅(x軸方向の長さ)は1mm以上300mm以下の範囲であるのが好ましい。また、コア110の長さは幅の0.003倍以上300倍以下であるのが好ましく、コア110の厚みは幅の0.015倍以上100倍以下の範囲であるのが好ましい。
【0034】
ここで、
図1および
図2では、コア110(成型品)の形状が直方体形状である場合を例示する。しかしながら、コア(成型品)の形状は直方体形状に限定されず、その他の形状であっても良い。コア110の形状として、例えば、以下の(a)および(b)の双方を満たす形状が挙げられる。
(a)エッジ部(相互に隣接する2つの面の境界部)以外の表面の領域が平面と曲面とからなる形状、エッジ部以外の表面の領域が平面(のみ)からなる形状、または、エッジ部以外の表面の領域が曲面(のみ)からなる形状。なお、エッジ部は、曲率を有していてもいなくても良い(湾曲していても湾曲していなくても(屈曲していても)良い)。
(b)回転対称性を有していない形状、または、回転対称性を有する形状。回転対称性を有する形状として、n角柱(nは3以上の整数)が挙げられる。なお、回転対称性とは、コア110の中心線(コア110の重心の位置を通り、巻線120の巻軸に平行な方向に延びる仮想線)を回転対称軸とするn回対称性(nは2以上の整数)を指す。
本実施形態では、複数種類の材料を混合して成形することによりコア110が構成されるので、コア110の形状を様々な形状とすることができるという利点がある。
【0035】
また、コア110の密度が低すぎる(すなわち、成型時の加圧力が低すぎる)と成型性が低下する虞がある。一方、コア110の密度が高すぎる(すなわち、成型時の加圧力が高すぎる)とアンテナコイル100の電気特性(インダクタンスL、品質係数Qなど)が低下する虞がある。このような観点から、コア110の密度は、1g/cm3以上9g/cm3以下であるのが好ましい。また、(粉砕前の)軟磁性材料の真密度は、5g/cm3以上10g/cm3以下であるのが好ましく、非金属材料の真密度は、0g/cm3超4g/cm3以下であるのが好ましい。
【0036】
ここで、コア110の密度は、複数種類の材料(本実施形態では、軟磁性・非軟磁性混合材料)を成型するために用いられる金型の領域であって当該複数種類の材料が挿入される領域の体積で、コア110の質量を割った値(=当該質量÷当該体積)で表される。以下の説明では、複数種類の材料(本実施形態では、軟磁性・非軟磁性混合材料)を成型するために用いられる金型の領域であって当該複数種類の材料が挿入される領域を、必要に応じて、金型の材料挿入領域と称する。金型の材料挿入領域は、当該複数種類の材料を挿入可能な金型の凹部の全領域のうち、当該複数の材料が実際に挿入される領域とするのが好ましい。ただし、簡易的に、当該複数の材料を挿入可能な金型の凹部の全領域を金型の材料挿入領域としても良い。
【0037】
<巻線120>
巻線120は、コア110に対して巻き回された状態で(コア110を取り巻くように)配置される。巻線120は、例えば絶縁被覆付きの金属線(例えば、エナメル銅線やポリウレタン銅線)など、公知の技術で実現される。
図1および
図2では、巻線120の巻軸に平行な方向(アンテナコイル100の中心軸(中心線)に平行な方向)がy軸に平行な方向である場合を例示する。なお、
図1および
図2では、表記の都合上、巻線120の巻回数を実際の巻回数よりも少なく表記している。巻線120の端部121a~121bは、不図示の共振用コンデンサを含む外部回路に電気的に接続される。また、巻線120は、複数の部分巻線を有していても良い。このようにする場合、不図示の共振用コンデンサを含む外部回路に電気的に接続される2つの端部が存在するように、2つ以上の部分巻線の端部が相互に電気的に接続された状態とする。例えば、第1の部分巻線の一端部と第2の部分巻線の一端部とが相互に電気的に接続された状態として巻線120を構成する場合、第1の部分巻線の他端部と第2の部分巻線の他端部が、巻線120の端部(不図示の共振用コンデンサを含む外部回路に電気的に接続される2つの端部)となる。
【0038】
<ケース130>
ケース130は、非金属材料、好ましくは絶縁材料を用いて構成される。ケース130に、コア110の少なくとも一部の領域が設置される領域を有する。ケース130は、コア110と巻線120との電気的な絶縁を確保することができるように構成されるのが好ましい。
【0039】
ケース130は、例えば、熱可塑性樹脂、汎用プラスチック(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、AS樹脂(ASもしくはSAN)、ABS樹脂(ABS)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニル樹脂(PVC)、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET))、汎用エンジニアリングプラスチック(例えば、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT))スーパーエンジニアリングプラスチック(例えば、ポリフェニレンスルファイド(PPS),ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP))、熱硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂(PF)、ユリア樹脂(UF)、メラミン樹脂(MF)、エポキシ樹脂(EP)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、ポリウレタン(PU)、ジアリルフタレート樹脂(PDAP)、シリコーン樹脂(SI)、アルキド樹脂ポリフェニレンスルファイド(PPS))、または、セラミックス(例えば、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O2)、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si2N4)、窒化ホウ素(BN)、石英ガラス(SiO2)、マコール(フッ素金雲母))を用いて構成される。その他、ケース130は、例えば、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリメチルペンテン(PMP)、生分解性プラスチック、または繊維素系プラスチックを用いて構成されても良い。また、ケース130は、例えば、以上の二種以上の混合物を用いて構成されても良い。
【0040】
図2に示す例では、ケース130は、穴131を有する。
図2では、穴131が、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)において貫通する貫通穴である場合を例示する。しかしながら、穴131は、例えば、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)の一方側のみで開口し、他方側では閉塞する有底穴であっても良い。
【0041】
また、
図2では、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)に垂直な方向における穴131の断面(x-z断面)の形状が、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)に垂直な方向におけるコア110の断面(x-z断面)の形状と同じ場合を例示する。具体的に
図2(b)に示すように、当該断面の形状が四角形である場合を例示する。
【0042】
また、
図2では、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)に垂直な方向における穴131の断面(x-z断面)の大きさが、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)に垂直な方向におけるコア110の断面(x-z断面)の大きさ以上の大きさを有する場合を例示する。具体的に
図2(b)に示すように、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)に垂直な方向における穴131の断面(x-z断面)の大きさが、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)に垂直な方向におけるコア110の断面(x-z断面)の大きさとほぼ同じ(同じまたは僅かに大きい)場合を例示する。ただし、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)に垂直な方向における穴131の断面(x-z断面)の大きさは、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)に垂直な方向におけるコア110の断面(x-z断面)の大きさよりも大きくても良い。このようにする場合、穴131の壁面と、コア110の表面との間に、絶縁材料(例えば、絶縁紙および絶縁テープの少なくとも一方)などが設置されても良い。
【0043】
また、
図2に示す例では、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)における穴131の長さが、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)におけるコア110の長さとほぼ同じ(同じまたは僅かに短い)場合を例示する。ただし、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)における穴131の長さは、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)におけるコア110の長さより長くても短くても良い。
図2に示すように、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)における穴131の長さが、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)におけるコア110の長さ以上である場合、コア110の全部の領域をケース130の内部に設置することが可能になる。一方、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)における穴131の長さが、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)におけるコア110の長さより短い場合、コア110の一部の領域がケース130の内部に設置されることになる。
【0044】
また、
図1および
図2に示す例では、ケース130が、巻回部132と、鍔部133a~133bと、蓋部134a~134bと、を有する場合を例示する。
図1および
図2に示す例では、巻回部132と鍔部133a~133bとが一体成型(同一の金型を用いて製造)されている場合を例示する。したがって、巻回部132と鍔部133a~133bとの間に境界線は存在しない。また、
図1および
図2に示す例では、蓋部134a~134bが、巻回部132および鍔部133a~133bとは別の金型を用いて製造されている場合を例示する。したがって、蓋部134a~134bと鍔部133a~133bとの間には境界線が存在する。巻回部132および鍔部133a~133bと、蓋部134a~134bは、同じ材料で製造されても別の材料で製造されても良い。
【0045】
図2に示すように、巻回部132の内部および鍔部133a~133bの内部に前述した穴131が形成される。また、
図1および
図2に示すように、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)に垂直な方向におけるケース130の断面において、鍔部133a~133bが巻回部132に対して張り出した形状となるように、巻回部132および鍔部133a~133bが形成される。
図2(a)では、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)およびコア110の厚み方向(z軸方向)に平行な方向におけるケース130の断面(y-z断面)において、z軸の正負の両側で鍔部133a~133bが巻回部132に対して張り出しており、当該断面が全体としてほぼH型の形状である場合を例示する。また、同様に、
図2(c)では、コア110の幅方向(x軸方向)および巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)におけるケース130の断面(x-y断面)において、x軸の正負の両側で鍔部133a~133bが巻回部132に対して張り出しており、当該断面が全体としてほぼH型の形状である場合を例示する。
【0046】
なお、
図2では、x軸方向よりもz軸方向の方が、鍔部133a~133bが巻回部132に対して大きく張り出している場合を例示する。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、z軸方向よりもx軸方向の方が、鍔部133a~133bが巻回部132に対して大きく張り出していても良い。また、x軸方向とz軸方向とで巻回部132に対し鍔部133a~133bが同じように張り出すようにしても良い(すなわち、鍔部133a~133bの領域のうち、巻回部132に対して張り出している鍔部133a~133bの領域の大きさおよび形状を同じにしても良い)。また、鍔部133a~133bは存在していなくても良い(ケース130の形状は、巻回部132に対して張り出している領域がない形状であっても良い)。
【0047】
蓋部134a、134bは、それぞれ、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)における鍔部133a、133bの外側端面に取り付けられる。
図2では、蓋部134a、134bの形状および大きさが、それぞれ、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)における鍔部133a、133bの外側端面(y軸の負の方向側の端面、y軸の正の方向側の端面)の形状および大きさと同じである場合を例示する。ただし、蓋部134a、134bによって、穴131の少なくとも一部(好ましくは全部)が塞がれるようにしていれば、蓋部134a、134bの形状および大きさは、特に限定されない。
【0048】
穴131にコア110が設置された後、蓋部134a、134bは、それぞれ、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)における鍔部133a、133bの外側端面に取り付けられる。鍔部133a~133bから脱落しないように取り付けられていれば蓋部134a~134bの取付方法は特に限定されない。例えば、鍔部133a~133bと蓋部134a~134bとが嵌合するように鍔部133a~133bおよび蓋部134a~134bを形成しても良い。このようにする場合、蓋部134a~134bが鍔部133a~133bに対し着脱可能となるようにしても良いし、着脱不能となるようにしても良い。また、接着剤などを用いて蓋部134a~134bを鍔部133a~133bに取り付けても良い。
【0049】
なお、
図2では、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)の両側に蓋部134a~134bを取り付ける場合を例示した。しかしながら、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)の片側のみに蓋部を取り付けても良い。例えば、前述したように、穴131は、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)の一方側のみで開口し、他方側では閉塞する有底穴であっても良い。例えば、穴131がy軸の正の方向側のみで開口し、y軸の負の方向側では閉塞している場合、蓋部134aを鍔部133aに取り付け、蓋部134bを鍔部133bに取り付けなくても良い(すなわち、この場合、蓋部134bは不要である)。また、巻線120の巻軸に平行な方向(y軸方向)におけるコア110の長さが、当該方向における穴131の長さよりも長く、コア110がケース130に対し当該方向の両側において突出するように設置される場合、蓋部134a~134bは不要になる。このようにする場合、例えば、絶縁性を有する接着剤などを用いてコア110をケース130に固定するのが好ましい。なお、蓋部134a~134bを用いる場合であっても、絶縁性を有する接着剤などを用いてコア110をケース130に固定しても良い。
【0050】
図2に示す例では、巻回部132を取り巻くように巻線120が巻き回され、鍔部133a~133bを取り巻くように巻線120が巻き回されない場合を例示する。ケース130の内部(穴131)にコア110を設置した後に、巻線120をケース130(巻回部132)に巻き回しても、巻線120をケース130(巻回部132)に巻き回した後に、ケース130の内部(穴131)にコア110を設置しても良い。コア110をケース130の内部に設置した際にコア110とケース130との間のクリアランスが小さい(または無い)場合、コア110をケース130の内部に設置した後に巻線120を巻き回すと、コア110に応力がかかり、アンテナコイル100の電気特性(インダクタンスL、品質係数Qなど)が低下する虞がある。そこで、このような場合には、ケース130に対して巻線120を巻き回してからコア110をケース130(の穴131)に設置するのが好ましい。ただし、例えば、コア110に要求される電気特性が低いためにコア110に応力がかかってもコア110が所望の電気特性を満足する場合や、コア110にかかる応力が小さい場合(例えば、穴131の壁面と、コア110の表面との間に比較的厚い絶縁材料などが配置されている場合)には、コア110をケース130(の穴131)に設置してからケース130に対して巻線120を巻き回しても良い。
【0051】
なお、ケースの形状は、コアの少なくとも一部の領域が設置される領域を有するようにコアの形状に合わせて定められ、
図1および
図2に示す形状に限定されない。例えば、ケースは、相互に組み合わされる複数のケース部材であって、コアの少なくとも一部の領域が設置される領域を有する複数のケース部材を備えていても良い。例えば、ケースにおける穴の開口部からコアをケースの内部に通すことができない形状をコアが有している場合、コアの一部の領域を第1のケース部材に設置した状態で、第2のケース部材を第1のケース部材に組み合わせるようにしても良い。
また、アンテナコイル100がケース130を備えれば、巻線120の巻回作業、金属材(例えば金属線)とコア110との絶縁、およびコア110の位置決めなど、アンテナコイル100の製造が容易になると共に、コア110を保護することができるので好ましい。しかしながら、アンテナコイル100は、必ずしもケース130を備えていなくても良い。例えば、コアを樹脂に浸漬させることと、粉状の軟磁性材料を含む非絶縁性の粉体を塗装することによる表面コーティングを行うことと、アルマイト処理やタフトライト処理など絶縁物(例えば、酸化物および窒化物のうちの少なくとも一方など)をコアの表面に形成することと、のうちの少なくとも1つを行うことなどによって、コア110の絶縁性を確保しても良いし、このようなコア110の絶縁性を確保しなくても良い。また、ケース130の形状は、
図1および
図2に示す形状に限定されない。
【0052】
<適用範囲>
本実施形態のアンテナコイル100は、無線信号の送信および受信の少なくとも一方を行うためのコイルであれば、その使用周波数は特に限定されないが、例えば、本実施形態のアンテナコイル100の使用周波数範囲は、例えば、1kHz以上、3THz以下の周波数範囲である。
【0053】
また、本実施形態のアンテナコイル100は、無線信号の送信および受信の少なくとも一方を行うためのコイルであれば、その適用先は特に限定されないが、例えば、特定小電力無線局の設備(例えば、テレメータ・テレコントロール・データ伝送用、防犯装置用リモコン等、ラジオマイク用、無線電話用(小電力小型ハンディ機)など)に本実施形態のアンテナコイル100を適用しても良い。また、無線LAN(Local Area Network)(Wi-Fi)やBluetooth(登録商標)により電波を送受信する装置(例えば、携帯電話・タブレット機器、パソコン周辺無線機器(マウス、キーボード、タッチペン、プリンタ等)、オーディオ機器(ヘッドホン、スピーカ、FMトランスミッター等)、ネットワーク機器(ルータ、アクセスポイント等)、ウェアラブルデバイス(スポーツウォッチ、スマートグラス等)、ゲーム機、防犯カメラ、ラジコン(ドローン等の小型無人航空機操縦用)、自撮り棒(セルカ棒)など)に本実施形態のアンテナコイル100を適用しても良い。また、船舶、航空機において電波を送受信する装置(ビーコン、レーダ)に本実施形態のアンテナコイル100を適用しても良い。また、自動車において電波を送受信する装置(例えば、スマートエントリ(キーレスエントリ)において電波を送受信する装置、イモビライザ、レーダ、TPMS(Tire Pressure Monitoring System)、ETC(Electronic Toll Collection System)において電波を送受信する装置、ETC(Electronic Toll Collection System)、ITS(Intelligent Transport Systems)、VICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、DCM(Data Communication Module))に本実施形態のアンテナコイル100を適用しても良い。その他(DTV(Digital Terrestrial Television Broadcasting)、GPS(Global Positioning System)、携帯電話(6G/5G/4G/3G回線、LTE(Long Term Evolution)等)、携帯電話基地局の設備、アマチュア無線局の設備)、受信用として電波時計(ウォッチ、クロック)、ラジオに本実施形態のアンテナコイル100を適用しても良い。
【0054】
なお、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
100 アンテナコイル
110 コア
120 巻線
121a~121b 巻線の端部
130 ケース
131 ケースの穴
132 ケースの巻回部
133a~133b ケースの鍔部
134a~134b ケースの蓋部