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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112589
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20230804BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
B60H1/32 624Z
B60H1/22 651C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014480
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】515000199
【氏名又は名称】エバスペヒャ-ミクニクライメットコントロールシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 進太郎
(72)【発明者】
【氏名】曲 慧
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA21
3L211EA86
3L211EA87
3L211FB05
3L211GA21
(57)【要約】
【課題】空調装置の冷凍サイクル装置の空調強度に関わらず、空調装置の冷凍サイクル装
置の停止時のバッテリーの過放電を防止する。
【解決手段】冷房装置10は、バッテリー5の電力により運転されることによって車両の
運転室を空調する冷凍サイクル装置20と、冷凍サイクル装置20の空調強度を段階的に
制御する制御部80と、を備える。制御部80が、冷凍サイクル装置20の空調強度に応
じて閾値を決定する決定手段と、前記決定手段により決定された前記閾値とバッテリー5
の電圧を比較する比較手段と、前記比較手段による比較の結果、バッテリー5の電圧が前
記閾値以下である場合に、冷凍サイクル装置20を停止させる停止手段と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーの電力により運転されることによって車両の運転室を空調する冷凍サイクル
装置と、
前記冷凍サイクル装置の空調強度を段階的に制御する制御部と、を備え、
前記制御部が、
前記冷凍サイクル装置の空調強度に応じて閾値を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された前記閾値と前記バッテリーの電圧を比較する比較手段と

前記比較手段による比較の結果、前記バッテリーの電圧が前記閾値以下である場合に、
前記冷凍サイクル装置を停止させる停止手段と、を有する
空調装置。
【請求項2】
前記冷凍サイクル装置の空調強度の段階が強度の高い強グループとそれよりも強度の低
い弱グループに分けられた場合に、前記冷凍サイクル装置の空調強度が前記弱グループに
属する段階であれば、前記決定手段が前記閾値を上閾値に決定し、前記冷凍サイクル装置
の空調強度が前記強グループに属する段階であれば、前記決定手段が前記閾値を前記上閾
値よりも低い下閾値に決定する
請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記冷凍サイクル装置の空調強度の段階が強度の高い強グループとそれよりも強度の低
い弱グループに分けられた場合に、前記冷凍サイクル装置の空調強度が前記強グループに
属する段階であれば、前記決定手段が前記閾値を下閾値に決定し、前記冷凍サイクル装置
の空調強度が前記弱グループに属する段階であって、且つ、前記冷凍サイクル装置の空調
強度が前記強グループに属する段階から前記弱グループに属する段階に切り替わった時か
ら所定時間経過していれば、前記決定手段が前記閾値を前記下閾値よりも高い上閾値に決
定し、前記冷凍サイクル装置の空調強度が前記弱グループに属する段階であって、且つ、
前記冷凍サイクル装置の空調強度が前記強グループに属する段階から前記弱グループに属
する段階に切り替わった時から前記所定時間経過していなければ、前記決定手段が前記閾
値を前記下閾値に決定する
請求項1に記載の空調装置。
【請求項4】
前記制御部が、
前記冷凍サイクル装置の空調強度が前記強グループに属する段階である場合に、所定閾
値と前記バッテリーの電圧を比較する第2比較手段と、
前記第2比較手段による比較の結果、前記バッテリーの電圧が前記所定閾値以下である
場合に、前記冷凍サイクル装置の空調強度を前記弱グループに属する段階に切り替える切
替手段と、を有する
請求項2又は3に記載の空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転室の空調を行うための空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のバッテリーの過放電の防止技術が開示されている。具体的には
、バッテリーの残量が所定規定値まで低下すると、制御部が空調装置の電動コンプレッサ
ーの出力を制限し、電動コンプレッサーの消費電力を減少させる。更に、バッテリーの残
量が前記所定規定値よりも低い規定値まで低下すると、制御部が電動コンプレッサーを停
止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-045883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バッテリーの残量の算出には様々な方式があり、例えば、シンプルな電圧計
測方式がある。電圧計測方式は、バッテリーの残量が低くなるにつれて、バッテリーの電
圧も低くなるため、そのようなバッテリーの性質を利用したものである。しかし、バッテ
リーの残量と電圧は必ずしも比例関係にあるわけではないため、バッテリーの電圧は残量
を精度良く表していない。そうすると、電動コンプレッサーの消費電力及び空調装置の空
調強度が低い場合にバッテリーの電圧が所定値まで低下した時のバッテリーの残量は、電
動コンプレッサーの消費電力及び空調装置の空調強度が高い場合にバッテリーの電圧が前
記所定値まで低下した時のバッテリーの残量とは異なる虞がある。そのため、バッテリー
の電圧が所定値まで低下した時に空調装置及び電動コンプレッサーが停止しても、電動コ
ンプレッサーの出力及び空調装置の強度次第では、空調装置停止時のバッテリーがエンジ
ンを始動出来ない程度の過放電状態である虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、空調装置の冷凍サイクル
装置の空調強度に関わらず、空調装置の冷凍サイクル装置の停止時のバッテリーの過放電
を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、空調装置が、バッテリーの電力により運転されることに
よって車両の運転室を空調する冷凍サイクル装置と、前記冷凍サイクル装置の空調強度を
段階的に制御する制御部と、を備え、前記制御部が、前記冷凍サイクル装置の空調強度に
応じて閾値を決定する決定手段と、前記決定手段により決定された前記閾値と前記バッテ
リーの電圧を比較する比較手段と、前記比較手段による比較の結果、前記バッテリーの電
圧が前記閾値以下である場合に、前記冷凍サイクル装置を停止させる停止手段と、を有す
る。
【0007】
以上によれば、冷凍サイクル装置の運転によりバッテリーの放電が進行するにつれて、
バッテリーの電圧が低下するところ、バッテリーの電圧が閾値以下になると、冷凍サイク
ルが停止する。この閾値は、冷凍サイクル装置の空調強度に応じて決定されたものである
から、冷凍サイクル装置の空調強度に適したものとなる。そのため、バッテリーの電圧が
閾値まで低下した時に冷凍サイクル装置が停止すると、冷凍サイクル装置の強度に関わら
ず、冷凍サイクル装置の停止時のバッテリーの過放電が防止される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冷凍サイクル装置の強度に関わらず、冷凍サイクル装置の停止時のバ
ッテリーの過放電が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】貨物自動車の側面図である。
図2】冷房装置のブロック図である。
図3】冷房装置の操作パネルの図面である。
図4】冷房装置の冷凍サイクルの運転時における制御部の処理の流れを示したフローチャートである。
図5】冷房装置の冷凍サイクルの冷房強度が強段階又は中段階における制御部の処理の流れを示したフローチャートである。
図6】バッテリーの放電が進行する際のバッテリーの電圧の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。但し、以下に述べる実施
形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているので、本
発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
<1. 貨物自動車及び冷房装置の概要>
図1は、貨物自動車1のキャブ2の後部を破断した状態で示した側面図である。貨物自
動車1のシャーシ3がキャブ2の後ろに連結され、貨物自動車1の荷台4がシャーシ3の
上に搭載され、貨物自動車1のバッテリー5がシャーシ3の前後中央部の側部に取り付け
られている。バッテリー5は、貨物自動車1のエンジンの運転時に、エンジンによって駆
動されるオルタネーターによって充電される。バッテリー5の定格電圧は24〔V〕であ
る。バッテリー5は、単数のバッテリーでもよいし、直列接続又は並列接続された複数の
バッテリーからなるものでもよい。
【0012】
空調装置としての冷房装置10は、キャブ2の運転室内の後部に取り付けられている。
なお、冷房装置10の取り付ける位置は運転室内の後部に限るものではなく、例えば天井
であってもよい。
【0013】
冷房装置10は、電力供給線6を介してバッテリー5の正極及び負極に接続されている
。冷房装置10は、電力供給線6を介してバッテリー5から電力の供給を受けて、運転さ
れる。また、冷房装置10は、バッテリー5の電圧の計測のために、信号線7を介してバ
ッテリー5の正極及び負極に接続されている。
【0014】
冷房装置10は、主に、貨物自動車1のエンジンの停止時、つまりバッテリー5の充電
がなされていない時に使用されて、運転される。バッテリー5の充電がなされていない時
に冷房装置10が運転されると、バッテリー5が放電されるため、バッテリー5の電圧、
CCA(Cold Cranking Ampere)及び充電率が漸減する。但し、貨物自動車1のエンジン
の運転中に、冷房装置10が運転されてもよいが、この場合、バッテリー5が充電される
ため、バッテリー5の電圧、CCA(Cold Cranking Ampere)及び充電率が低下しない。
【0015】
<2. 冷房装置>
図2は、冷房装置10のブロック図である。
運転中の冷房装置10は、キャブ2の運転室を冷房する。冷房装置10は、冷凍サイク
ル装置20、電力変換回路30、駆動回路31,32、温度センサ40、操作パネル50
及び制御部80を備える。
【0016】
<2.1 冷凍サイクル装置>
冷凍サイクル装置20は、バッテリー5の電力により運転される。冷凍サイクル装置2
0は、キャブ2の運転室の内側の空気(以下、内気という。)と運転室の外側の空気(以
下、外気という。)との間に冷媒の冷凍サイクルを介して、内気の熱を外気に移動させる
ことによって、運転室を冷房する。
【0017】
冷凍サイクル装置20は、コンプレッサー21、熱交換器22、膨張弁23、熱交換器
24、外気用ファン25及び内気用ファン26を有する。
【0018】
コンプレッサー21は、冷媒を圧縮する電動式の圧縮機である。コンプレッサー21は
、モーターと、モーターによって駆動されることによって冷媒を圧縮する圧縮機本体と、
を有する。コンプレッサー21は、バッテリー5から電力変換回路30を介して電力供給
を受けて、作動する。
【0019】
コンプレッサー21は、冷媒を圧縮することによって、冷媒をコンプレッサー21、熱
交換器22、膨張弁23、熱交換器24、コンプレッサー21の順に循環させる。また、
コンプレッサー21は、熱交換器24から送られた低温低圧な気体状の冷媒を圧縮するこ
とによって、冷媒を高温高圧な気体状態に変化させる。高温高圧な冷媒は、コンプレッサ
ー21から熱交換器22に送られる。
【0020】
熱交換器22は、コンデンサーである。熱交換器22は、コンプレッサー21から送ら
れた高温高圧な冷媒と、運転室の外側から送られた外気との間で熱交換する。これにより
、冷媒は低温高圧な液体に凝縮されて、外気は冷媒の熱を吸収して加熱される。低温高圧
な冷媒は、熱交換器22から膨張弁23に送られる。
【0021】
膨張弁23は、熱交換器22から送られた低温高圧な冷媒を膨張させることによって、
冷媒を低温低圧な気液混合の霧状になって気化しやすい状態に変化させる。低温低圧な冷
媒は、膨張弁23から熱交換器24に送られる。なお、キャピラリ-チューブを膨張弁2
3として使用してもよい。
【0022】
熱交換器24は、エバポレーターである。熱交換器24は、膨張弁23から送られた低
温低圧な冷媒と、運転室の内側から送られた内気との間で熱交換させる。これにより、冷
媒は内気から熱を吸収して気化し、内気は冷却される。低温低圧な気体状の冷媒は、熱交
換器24からコンプレッサー21に送られる。
【0023】
外気用ファン25は、バッテリー5から駆動回路31を介して電力供給を受けて、作動
する。外気用ファン25は、外気を熱交換器22に送風して、熱交換器22によって加熱
された外気を運転室の外に排出する。
【0024】
内気用ファン26は、バッテリー5から駆動回路32を介して電力供給を受けて、作動
する。内気用ファン26は、内気を熱交換器24に送風して、熱交換器24によって冷却
された内気を運転室の内側に排出する。
【0025】
<2.2 電力変換回路及び駆動回路>
電力変換回路30は、バッテリー5から出力される直流電力をコンプレッサー21が駆
動可能な駆動電力に変換して、駆動電力をコンプレッサー21に出力する。これにより、
電力変換回路30は、コンプレッサー21を駆動する。電力変換回路30は例えばインバ
ーター装置、DC/DCコンバーター又はスイッチング・レギュレーターである。
【0026】
駆動回路31は、バッテリー5から出力される直流電力を外気用ファン25が駆動可能
な駆動電力に変換して、駆動電力を外気用ファン25に出力する。これにより、駆動回路
31は、外気用ファン25を駆動する。駆動回路32は、バッテリー5から出力される直
流電力を内気用ファン26が駆動可能な駆動電力に変換して、駆動電力を内気用ファン2
6に出力する。これにより、駆動回路31は、内気用ファン26を駆動する。駆動回路3
1,32は例えばDC/ACコンバーター、DC/DCコンバーター又はスイッチング・
レギュレーターである。
【0027】
<2.3 温度センサ>
温度センサ40は、キャブ2の運転室の温度を計測して、計測温度を表す信号を制御部
80に出力する。
【0028】
<2.4 制御部>
制御部80は、CPU及びメモリ等を有するコンピューターからなる。
制御部80は、信号線7を介してバッテリー5の正極及び負極に接続されている。制御
部80は、バッテリー5の電圧を検出する。
【0029】
制御部80は、電力変換回路30を制御することによって、コンプレッサー21の運転
速度を強段階、中段階、弱段階及び停止段階の4段階で制御する。コンプレッサー21の
運転速度は強段階、中段階、弱段階の順に高く、停止段階ではコンプレッサー21が停止
する。
【0030】
制御部80は、駆動回路31,32を個別に制御することによって、外気用ファン25
及び内気用ファン26の運転速度を個別に強段階、中段階、弱段階及び停止段階の4段階
で制御する。外気用ファン25及び内気用ファン26の運転速度は強段階、中段階、弱段
階の順に高く、停止段階では外気用ファン25及び内気用ファン26が停止する。
【0031】
制御部80は、コンプレッサー21、外気用ファン25及び内気用ファン26の運転速
度を個別に制御することによって、冷凍サイクル装置20の冷房強度を制御する。具体的
に、制御部80は、コンプレッサー21、外気用ファン25及び内気用ファン26を強段
階の運転速度で動作させることによって、冷凍サイクル装置20の冷房強度を強段階に制
御する。制御部80は、コンプレッサー21、外気用ファン25及び内気用ファン26を
中段階の運転速度で動作させることによって、冷凍サイクル装置20の冷房強度を中段階
に制御する。制御部80は、コンプレッサー21、外気用ファン25及び内気用ファン2
6を弱段階の運転速度で動作させることによって、冷凍サイクル装置20の冷房強度を弱
段階に制御する。制御部80は、コンプレッサー21及び外気用ファン25を停止させ、
且つ、内気用ファン26を弱段階の運転速度で動作させることによって、冷凍サイクル装
置20の冷房強度を送風段階に制御する。冷凍サイクル装置20の消費電力は、強段階、
中段階、弱段階、送風段階の順に高い。
【0032】
制御部80は、冷凍サイクル装置20の運転中、冷凍サイクル装置20の冷房強度の現
在の段階をメモリに記憶する。
【0033】
たとえば、冷凍サイクル装置20の冷房強度の段階を強度の高い強グループとそれより
も強度の低い弱グループに分けることができる。この場合に、上述の強段階及び中段階は
強グループに属し、弱段階及び送風段階は弱グループに属する。
【0034】
<2.4.1 制御部の制御モード>
上述のように冷凍サイクル装置20の冷房強度には強段階、中段階、弱段階、送風段階
があるが、冷房強度の設定の仕方にバリエーションがある。以下、冷房強度の設定の仕方
を制御部80の制御モードという。
【0035】
制御部80の制御モードのバリエーションとしては、省エネ制御モード、自動強度設定
制御モード及び手動強度設定制御モードがある。制御部80の制御モードは、省エネ制御
モード、自動強度設定制御モード及び手動強度設定制御モードの中から手動で選択可能で
ある。手動による選択には、操作パネル50が用いられる。操作パネル50については、
後に詳細に説明する。
【0036】
<2.4.1.1 省エネ制御モード>
省エネ制御モードでは、制御部80は、弱段階の運転速度でコンプレッサー21、外気
用ファン25及び内気用ファン26を動作させ、冷凍サイクル装置20の冷房強度を弱段
階に制御する。省エネ制御モードでは、制御部80は、手動による冷房強度変更ボタン5
5,56の操作を無視して、冷凍サイクル装置20の冷房強度を強制的に弱段階に制御す
る。乗員が夜間に睡眠する場合等における冷房強度は、日中に必要とする冷房強度よりも
低くても済むことが多いため、省エネ制御モードは、冷凍サイクル装置20を弱段階で長
時間運転することを目的として、設定される。
【0037】
制御部80の制御モードが省エネ制御モードである場合、制御部80は、現在の制御モ
ードが省エネ制御モードである旨をメモリに記憶する。
【0038】
<2.4.1.2 自動強度設定制御モード>
自動強度設定制御モードでは、制御部80は、温度センサ40の計測温度に基づいて、
冷凍サイクル装置20の冷房強度の段階を強段階、中段階、弱段階及び送風段階の中から
選択して、冷凍サイクル装置20の冷房強度を選択段階に制御する。
【0039】
具体的に、制御部80は、温度センサ40の計測温度から設定温度を減算した差分を第
1閾値、第2閾値及び第3閾値(但し、第1閾値、第2閾値及び第3閾値は「第1閾値>
第2閾値>第3閾値」の関係にある。)と比較する。比較の結果、差分が第1閾値以上で
ある場合には、制御部80は、強段階の運転速度でコンプレッサー21、外気用ファン2
5及び内気用ファン26を動作させることによって、冷凍サイクル装置20の冷房強度を
強段階に制御する。比較の結果、差分が第2閾値以上であって第1閾値未満である場合に
は、制御部80は、中段階の運転速度でコンプレッサー21、外気用ファン25及び内気
用ファン26を動作させ、冷凍サイクル装置20の冷房強度を中段階に制御する。比較の
結果、差分が第3閾値以上であって第2閾値未満である場合には、制御部80は、弱段階
の運転速度でコンプレッサー21、外気用ファン25及び内気用ファン26を動作させ、
冷凍サイクル装置20の冷房強度を弱段階に制御する。比較の結果、差分が第3閾値未満
である場合には、制御部80は、コンプレッサー21及び外気用ファン25を停止させる
とともに、弱段階の運転速度で内気用ファン26を動作させることによって、冷凍サイク
ル装置20の冷房強度を送風段階に制御する。なお、設定温度は操作パネル50を用いて
手動により増減可能であるが、設定温度の増減については、後述する。
【0040】
制御部80の制御モードが自動強度設定制御モードである場合、制御部80は、現在の
制御モードが自動強度設定制御モードである旨をメモリに記憶する。
【0041】
<2.4.1.3 手動強度設定制御モード>
手動強度設定制御モードでは、制御部80は、冷凍サイクル装置20の冷房強度を、強
段階、中段階、弱段階及び送風段階の中から手動で選択された段階に制御する。手動によ
る段階の選択には、操作パネル50が用いられる。操作パネル50については、後に詳細
に説明する。
【0042】
制御部80の制御モードが手動強度設定制御モードである場合、制御部80は、現在の
制御モードが手動強度設定制御モードである旨をメモリに記憶する。
【0043】
<2.5 操作パネル>
操作パネル50は、乗員によって操作され、操作内容に応じた信号を制御部80に出力
する。操作パネル50は、乗員が省エネ制御モード、自動強度設定制御モード及び手動強
度設定制御モードの中から制御部80の制御モードを手動で選択するために、使用される
。操作パネル50は、乗員が自動強度設定制御モードにおける設定温度を手動で変更する
ために、使用される。操作パネル50は、乗員が手動強度設定制御モードにおける冷凍サ
イクル装置20の冷房強度の段階を手動で変更するために、使用される。
【0044】
図3は、操作パネル50の一例を示した図面である。操作パネル50は、冷房運転開始
ボタン58、省エネ設定ボタン51、設定温度変更ボタン52,53、設定温度表示部5
4、冷房強度変更ボタン55,56及び冷房強度表示部57を有する。
【0045】
<2.5.1 冷房運転開始ボタン>
冷房運転開始ボタン58は冷房運転を開始するためのボタンである。乗員が冷房運転開
始ボタン58を押下すると、冷房運転開始ボタン58が信号を制御部80に出力する。制
御部80は、冷房運転開始ボタンから信号が入力されると、自動強度運転モードで冷凍サ
イクル装置20の運転を開始する。
【0046】
<2.5.2 省エネ設定ボタン>
省エネ設定ボタン51は、省エネ制御モードをオン・オフするためのボタンである。制
御部80の制御モードが自動強度設定制御モード又は手動強度設定制御モードである状態
において、乗員が省エネ設定ボタン51を押下すると、省エネ設定ボタン51が信号を制
御部80に出力し、その信号を入力した制御部80は制御モードを自動強度設定制御モー
ド又は手動強度設定制御モードから省エネ設定制御モードに切り替える。制御部80の制
御モードが省エネ制御モードである状態において、乗員が省エネ設定ボタン51を押下す
ると、省エネ設定ボタン51が信号を制御部80に出力し、その信号を入力した制御部8
0は制御モードを省エネ制御モードから自動強度設定制御モードに切り替える。
【0047】
<2.5.3 設定温度変更ボタン>
設定温度変更ボタン52は、設定温度をインクリメントするためのものである。乗員が
設定温度変更ボタン52を押下すると、設定温度変更ボタン52が信号を制御部80に出
力する。制御部80は、設定温度変更ボタン52から信号が入力されると、設定温度をイ
ンクリメントする。
【0048】
設定温度変更ボタン53は、設定温度をデクリメントするためのものである。乗員が設
定温度変更ボタン53を押下すると、設定温度変更ボタン53が信号を制御部80に出力
する。制御部80は、設定温度変更ボタン53から信号が入力されると、設定温度をデク
リメントする。
【0049】
なお、制御部80の制御モードが自動強度設定制御モードである場合に、設定温度変更
ボタン52又は53が押下されると、制御部80は制御モードを自動強度設定制御モード
に維持した上で、上述のように、制御部80は、温度センサ40の計測温度からインクリ
メント又はデクリメント後の設定温度を減算した差分を、第1閾値、第2閾値及び第3閾
値と比較する。制御部80の制御モードが手動強度設定制御モードである場合に、設定温
度変更ボタン52又は53が押下されると、制御部80は制御モードを手動強度設定制御
モードから自動強度設定制御モードに切り替えた上で、上述のように、制御部80は、温
度センサ40の計測温度からインクリメント又はデクリメント後の設定温度を減算した差
分を、第1閾値、第2閾値及び第3閾値と比較する。制御部80の制御モードが省エネ制
御モードである場合に、設定温度変更ボタン52又は53が押下されると、制御部80は
制御モードを省エネ制御モードに維持した上で、制御部80は設定温度のインクリメント
又はデクリメントを行う。
【0050】
<2.5.4 設定温度表示部>
設定温度表示部54は、ドットマトリックス表示器又はセグメント表示器である。設定
温度表示部54は、設定温度を表示する。
【0051】
<2.5.5 冷房強度変更ボタン>
乗員が冷房強度変更ボタン55を押下すると、冷房強度変更ボタン55が信号を制御部
80に出力する。乗員が冷房強度変更ボタン56を押下すると、冷房強度変更ボタン56
が信号を制御部80に出力する。
【0052】
冷房強度変更ボタン55は、制御部80の制御モードが手動強度設定制御モード又は自
動強度設定制御モードである場合に、冷凍サイクル装置20の冷房強度の段階をインクリ
メントするためのものである。制御部80の制御モードが手動強度設定制御モードである
場合に、冷房強度変更ボタン55から信号が制御部80に入力されると、制御部80は制
御モードを手動強度設定制御モードに維持した上で、冷凍サイクル装置20の冷房強度の
段階をインクリメントする。制御部80の制御モードが自動強度設定制御モードである場
合に、冷房強度変更ボタン55から信号が制御部80に入力されると、制御部80は制御
モードを自動強度設定制御モードから手動強度設定制御モードに切り替えた上で、冷凍サ
イクル装置20の冷房強度の段階をインクリメントする。
【0053】
冷房強度変更ボタン56は、制御部80の制御モードが手動強度設定制御モード又は自
動強度設定制御モードである場合に、冷凍サイクル装置20の冷房強度の段階をデクリメ
ントするためのものである。制御部80の制御モードが手動強度設定制御モードである場
合に、冷房強度変更ボタン56から信号が制御部80に入力されると、制御部80は制御
モードを手動強度設定制御モードに維持した上で、冷凍サイクル装置20の冷房強度の段
階をデクリメントする。制御部80の制御モードが自動強度設定制御モードである場合に
、冷房強度変更ボタン56から信号が制御部80に入力されると、制御部80は制御モー
ドを自動強度設定制御モードから手動強度設定制御モードに切り替えた上で、冷凍サイク
ル装置20の冷房強度の段階をデクリメントする。
【0054】
なお、制御部80の制御モードが省エネ制御モードである場合に、冷房強度変更ボタン
55,56から信号が制御部80に入力されても、制御部80は制御モードを省エネ制御
モードに維持するとともに、冷凍サイクル装置20の冷房強度の段階を弱段階に維持する
【0055】
<2.5.6 冷房強度表示部>
冷房強度表示部57は、複数のLEDからなるインジゲータである。冷房強度表示部5
7は、冷凍サイクル装置20の冷房強度の段階を表示する。
【0056】
<3. 冷房装置の過放電防止機能>
貨物自動車1のエンジンの停止中に冷凍サイクル装置20が運転されると、バッテリー
5が放電され、バッテリー5の電圧、CCA及び充電率が低下する。バッテリー5が過放
電状態になるまで冷凍サイクル装置20が運転されると、バッテリー5のCCA及び充電
率が低下し過ぎ、バッテリー5の能力は貨物自動車1のエンジンを始動できない程度まで
過剰に低下する。そこで、バッテリー5が過放電状態になることを防止するべく、冷房装
置10は過放電防止機能を有する。
【0057】
冷房装置10の過放電防止機能は、冷凍サイクル装置20の運転中の以下のような制御
部80の処理(1)によって実現される。制御部80の制御モードが省エネ制御モード、
自動強度設定制御モード及び手動強度設定制御モードの何れの場合でも、制御部80は以
下の処理(1)を実行する。また、冷凍サイクル装置20の冷房強度が強段階、中段階、
弱段階及び送風段階の何れの場合でも、制御部80は以下の処理(1)を実行する。
【0058】
<3.1 処理(1)>
図4は、制御部80が実行する処理(1)の流れを示したフローチャートである。
まず、制御部80が電圧検出手段として機能する(ステップS1)。電圧検出手段は、
信号線7を介して、バッテリー5の電圧を検出する。
【0059】
次に、制御部80が認識手段として機能する(ステップS2)。認識手段は、メモリの
記憶内容から冷凍サイクル装置20の冷房強度を認識する。
【0060】
次に、制御部80が決定手段として機能する(ステップS3)。決定手段は、ステップ
S2において認識した冷凍サイクル装置20の冷房強度に応じて閾値を決定する。例えば
、冷凍サイクル装置20の冷房強度が、強グループに属する強段階又は中段階である場合
には、決定手段は閾値を下閾値に決定し、冷凍サイクル装置20の冷房強度が、弱グルー
プに属する弱段階又は送風段階である場合には、決定手段は閾値を下閾値よりも高い上閾
値に決定する。上閾値及び下閾値の値は、バッテリー5が貨物自動車1のエンジンを始動
できる電圧であれば、特に限定されるものではないが、例えば上閾値及び下閾値はバッテ
リー5の定格電圧よりも低く、より具体的には上閾値及び下閾値はそれぞれ23.5〔V
〕、23.3〔V〕であるか、それぞれ23.7〔V〕、23.5〔V〕であるか、それ
ぞれ24.0〔V〕、23.8〔V〕である。なお、処理(1)が実行される前に、作業
者が操作パネル50を操作することによって、上閾値及び下閾値の設定値が例えば0.1
〔V〕刻みで変更されるものとしてもよいし、以上に挙げた数値の中から上閾値及び下閾
値の設定値が決定されるものとしてもよい。或いは、上閾値及び下閾値が以上に挙げた数
値の何れかに固定されていてもよい。
【0061】
次に、制御部80が比較手段として機能する。比較手段は、ステップS1において検出
したバッテリー5の電圧と、ステップS3において決定した閾値とを比較する(ステップ
S4)。
【0062】
ステップS4の比較の結果、バッテリー5の電圧が閾値よりも高ければ(ステップS4
:No)、制御部80は処理をステップS1に戻して、制御部80はステップS1~S4
の処理を再度実行する。そのため、制御部80は、バッテリー5の電圧が閾値以下になる
まで、ステップS1~S4の処理を繰り返し実行するとともに、冷凍サイクル装置20の
運転を継続する。
【0063】
ステップS4の比較の結果、バッテリー5の電圧が閾値以下であれば(ステップS4:
Yes)、制御部80は処理をステップS5に移行する。ステップS5では、制御部80
が停止手段として機能する。停止手段は、コンプレッサー21、外気用ファン25及び内
気用ファン26を停止させることによって、冷凍サイクル装置20を停止させる。そのた
め、バッテリー5の電力が消費されなくなり、バッテリー5の過放電が防止される。
【0064】
冷凍サイクル装置20が停止したら、制御部80は処理を終了する。
なお、制御部80が電圧検出手段としてバッテリー5の電圧を検出するタイミングは、
ステップS4よりも前であれば、いつでもよい。例えば、ステップS2又はステップS3
後に、制御部80がバッテリー5の電圧を検出してもよい。
【0065】
<3.2 検証>
満充電の新品なバッテリー5の電圧が下閾値(=23.3〔V〕)に低下するまで、冷
凍サイクル装置20が強段階の冷房強度で運転された場合、バッテリー5の端子における
電流値と、バッテリー5の電圧が下閾値に低下するまでの時間と、バッテリー5の電圧が
下閾値になった際のバッテリー5のCCA及び充電率とを実験により調べた。
【0066】
また、満充電の新品なバッテリー5の電圧が下閾値(=23.3〔V〕)に低下するま
で、冷凍サイクル装置20が弱段階の冷房強度で運転された場合、バッテリー5の端子に
おける電流値と、バッテリー5の電圧が下閾値に低下するまでの時間と、バッテリー5の
電圧が下閾値になった際のバッテリー5のCCA及び充電率とを実験により調べた。
【0067】
実験結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1から明らかなように、冷凍サイクル装置20が強段階の冷房強度で運転された場合
よりも、冷凍サイクル装置20が弱段階の冷房強度で運転された場合の方が、バッテリー
5のCCA及び充電率がより低下することが分かる。このような実験結果から分かるよう
に、冷凍サイクル装置20が弱段階又は送風段階の冷房強度で運転された場合、上述の処
理(1)のように、バッテリー5の電圧が上閾値に至った時点で、制御部80が冷凍サイ
クル装置20を停止させると、バッテリー5の過放電が防止される。一方、冷凍サイクル
装置20が強段階又は中段階の冷房強度で運転された場合、上述の処理(1)のように、
バッテリー5の電圧が上閾値よりも低い下閾値に至った時点で、制御部80が冷凍サイク
ル装置20を停止させることによって、冷凍サイクル装置20の運転時間が長期になる上
、バッテリー5の過放電が防止される。
【0070】
<4. 冷房装置の運転時間延長機能>
貨物自動車1のエンジンの停止中に冷凍サイクル装置20が自動強度設定制御モード及
び手動強度設定制御モードの強段階又は中段階で運転されると、バッテリー5が速く放電
され、冷凍サイクル装置20の運転可能時間が短い。そこで、冷凍サイクル装置20の運
転可能時間の長期化を図るべく、この冷房装置10は運転時間延長機能を有する。
【0071】
冷房装置10の運転時間延長機能は、冷凍サイクル装置20の運転中の以下のような制
御部80の処理(2)によって実現される。なお、冷凍サイクル装置20の冷房強度が自
動強度設定制御モード及び手動強度設定制御モードにおける強段階又は中段階の場合に、
制御部80は以下の処理(2)を実行するが、冷凍サイクル装置20の冷房強度が弱段階
又は送風段階の場合には、制御部80は以下の処理(2)を実行しない。また、制御部8
0は、上述の処理(1)と並行して、処理(2)を実行してもよいし、上述の処理(1)
を行わずに、処理(2)を実行してもよい。
【0072】
<4.1 処理(2)>
図5は、制御部80が実行する処理(2)の流れを示したフローチャートである。
まず、制御部80が電圧検出手段として機能する(ステップS21)。電圧検出手段は
、信号線7を介して、バッテリー5の電圧を検出する。
【0073】
次に、制御部80が比較手段として機能する(ステップS22)。比較手段は、ステッ
プS21において検出したバッテリー5の電圧と、所定閾値とを比較する。所定閾値の値
は、バッテリー5が貨物自動車1のエンジンを始動できる電圧であれば、特に限定される
ものではないが、例えば所定閾値はバッテリー5の定格電圧よりも低く、より具体的には
所定閾値は前述の上閾値に等しくて、23.5〔V〕、23.7〔V〕又は24.0〔V
〕である。
【0074】
ステップS22の比較の結果、バッテリー5の電圧が所定閾値よりも高ければ(ステッ
プS22:No)、制御部80は処理をステップS21に戻して、制御部80はステップ
S21~S22の処理を再度実行する。そのため、制御部80は、バッテリー5の電圧が
処理閾値以下になるまで、ステップS21~S22の処理を繰り返し実行するとともに、
冷凍サイクル装置20の運転を強段階又は中段階で継続する。
【0075】
ステップS22の比較の結果、バッテリー5の電圧が所定閾値以下であれば(ステップ
S22:Yes)、制御部80は処理をステップS23に移行する。ステップS23では
、制御部80が切替手段として機能する。切替手段は、コンプレッサー21、外気用ファ
ン25及び内気用ファン26の運転速度を弱段階に切り替えることによって、冷凍サイク
ル装置20の冷房強度を弱段階に切り替える。
【0076】
冷凍サイクル装置20の冷房強度が弱段階に切り替わったら、制御部80は処理を終了
するとともに冷凍サイクル装置20の運転を弱段階で継続する。このような弱段階の冷房
強度は、省エネ制御モードにおける弱段階であってもよいし、手動強度設定制御モードに
おける弱段階であってもよい。
【0077】
冷凍サイクル装置20の冷房強度がステップS23において強段階又は中段階から弱段
階に切り替わると、バッテリー5の電圧が上昇するため、冷凍サイクル装置20の運転時
間が延長される。
【0078】
また、冷凍サイクル装置20の冷房強度がステップS23において弱段階に切り替わる
と、乗員がそのことに気付く。乗員は、これをきっかけとして、バッテリー5の残量低下
に気付く。そして、乗員は、エンジンを始動させてバッテリー5の残量を回復せて、バッ
テリー5の過放電を未然に防止できる。
【0079】
また、冷凍サイクル装置20の冷房強度がステップS23において弱段階に切り替わっ
た後、弱段階より強い冷房強度が短時間でも必要な場合には、乗員は操作パネル50を操
作する。具体的には、ステップS23の切り替わり後の段階が省エネ制御モードにおける
弱段階である場合、乗員が省エネ設定ボタン51を押下すると、制御部80が制御モード
を省エネ制御モードから自動強度設定制御モードに切り替えるとともに、冷凍サイクル装
置20の冷房強度を弱段階へ切り替え前の冷房強度に戻すことから、快適性が維持される
。ステップS23の切り替わり後の段階が手動強度設定制御モードにおける弱段階である
場合、乗員が冷房強度変更ボタン55を押下すると、制御部80が冷凍サイクル装置20
の冷房強度をインクリメントすることから、快適性が維持される。このように乗員が操作
パネル50の操作により冷凍サイクル装置20の冷房強度を弱段階から中段階又は強段階
に切り替えた後、ステップS3において決定される閾値が下閾値になるため、バッテリー
5の過放電を未然に防止できる。
【0080】
なお、制御部80が処理(2)と並行して、処理(1)を実行した場合、ステップS2
3において冷凍サイクル装置20の冷房強度が強段階又は中段階から弱段階に切り替わっ
た後、バッテリー5の電圧が上閾値以下になると(ステップS4:Yes)、停止手段と
して機能する制御部80は、コンプレッサー21、外気用ファン25及び内気用ファン2
6を停止させることによって、冷凍サイクル装置20を停止させる(ステップS5)。こ
れにより、バッテリー5の過放電が防止される。
【0081】
<4.2 検証>
満充電のバッテリー5の電圧が所定閾値(=23.5〔V〕)に低下するまで、冷凍サ
イクル装置20が強段階の冷房強度で運転された後に、冷凍サイクル装置20の冷房強度
が強段階から弱段階に切り替わった場合、バッテリー5の電圧の変化を実験により調べた
。実験結果を図6のグラフに示す。
【0082】
図6から明らかなように、冷凍サイクル装置20が強段階の冷房強度で運転されている
時には、バッテリー5の電圧が漸減する。運転開始時から約2時間40分経過すると、バ
ッテリー5の電圧が所定閾値に低下する。そして、冷凍サイクル装置20の冷房強度が強
段階から弱段階に切り替わると、バッテリー5の電圧が所定閾値から上昇する。そのため
、冷凍サイクル装置20の運転時間は、バッテリー5の電圧が所定閾値に再度低下するま
での時間だけ延長される。
【0083】
<5. 変形例>
以下に、上述の実施形態から変更した変形例について説明する。以下に説明する少なく
とも2つの変更は、組み合わせて適用してもよい。
【0084】
(1) 上述の実施形態では、ステップS23において、切替手段として機能する制御部
80が冷凍サイクル装置20の冷房強度を強段階又は中段階から弱段階に切り替える。そ
れに対して、制御部80が冷凍サイクル装置20の冷房強度を強段階又は中段階から送風
段階に切り替えてもよい。
【0085】
(2) 上述の実施形態では、ステップS3において、冷凍サイクル装置20の冷房強度
が強段階又は中段階(強グループに属する段階)である場合には、決定手段として機能す
る制御部80が閾値を下閾値に決定し、冷凍サイクル装置20の冷房強度が弱段階又は送
風段階(弱グループに属する段階)である場合には、制御部80が閾値を上閾値に決定す
る。それに対して、ステップS3において、冷凍サイクル装置20の冷房強度が強段階(
強グループに属する段階)である場合には、決定手段として機能する制御部80が閾値を
下閾値に決定し、冷凍サイクル装置20の冷房強度が中段階、弱段階又は送風段階(弱グ
ループに属する段階)である場合には、制御部80が閾値を上閾値に決定してもよい。或
いは、ステップS3において、冷凍サイクル装置20の冷房強度が強段階、中段階又は弱
段階(強グループに属する段階)である場合には、決定手段として機能する制御部80が
閾値を下閾値に決定し、冷凍サイクル装置20の冷房強度が送風段階(弱グループに属す
る段階)である場合には、制御部80が閾値を上閾値に決定してもよい。
【0086】
(3) 上述の実施形態では、冷凍サイクル装置20の冷房強度の段階は4段階である。
冷凍サイクル装置20の冷房強度の段階は2段階以上であれば、このようなものに限らず
、例えば、強段階と弱段階の2段階であってもよいし、3段階若しくは5段階又はそれ以
上の段階であってもよい。
【0087】
(4) 上述の実施形態では、ステップS3において、決定手段として機能する制御部8
0が閾値を決定するに際して、強グループと弱グループのグループ毎に閾値が割り当てら
れている。それに対して、冷凍サイクル装置20の冷房強度の段階毎に閾値が割り当てら
れてもよい。この場合、冷凍サイクル装置20の冷房強度の段階が強くなるほど、割り当
てられる閾値が低くなる。つまり、ステップS3において、冷凍サイクル装置20の冷房
強度が強段階である場合には、決定手段として機能する制御部80が最も低い閾値に決定
し、冷凍サイクル装置20の冷房強度が中段階である場合には、制御部80が2番目に低
い閾値に決定し、冷凍サイクル装置20の冷房強度が弱段階である場合には、制御部80
が3番目に低い閾値に決定し、冷凍サイクル装置20の冷房強度が送風段階である場合に
は、制御部80が最も高い閾値に決定する。
【0088】
(5) 上述の実施形態では、空調の一例として冷房が挙げられ、空調装置の一例として
冷房装置10が挙げられている。それに対して、冷房装置10が暖房装置に変更されても
よい。この場合、冷房装置10の説明における「冷房」という用語は「暖房」という用語
に読み替えられる。また、冷凍サイクル装置20における冷媒の流れの方向が逆方向にな
り、熱交換器22がエバポレーターであり、熱交換器24がコンデンサーである。
【0089】
(6) 上述の実施形態では、空調装置の一例として冷房装置10が挙げられている。そ
れに対して、冷房装置10が、冷房と暖房の切り替え可能な空調装置に変更されてもよい
。この場合、コンプレッサー21が四方弁に接続され、熱交換器22と熱交換器24が四
方弁に接続されている。冷房の際には、制御部80が四方弁を制御して、これにより、四
方弁が、冷媒の流れ方向を、熱交換器24(熱交換器24がエバポレーターである)から
コンプレッサー21を経由して熱交換器22(熱交換器22がコンデンサーである)に向
かう方向に切り替える。一方、暖房の際には、制御部80が四方弁を制御して、これによ
り、四方弁が、冷媒の流れ方向を、熱交換器22(熱交換器22がエバポレーターである
)からコンプレッサー21を経由して熱交換器24(熱交換器24がコンデンサーである
)に向かう方向に切り替える。
【0090】
(7) 上述のステップS3において、決定手段としての制御部80が閾値を次のように
決定してもよい。即ち、冷凍サイクル装置20の冷房強度が、強グループに属する強段階
又は中段階である場合には、決定手段としての制御部80が閾値を下閾値に決定する。冷
凍サイクル装置20の冷房強度が、弱グループに属する弱段階又は送風段階である場合で
あっても、冷凍サイクル装置20の冷房強度が強段階又は中段階から弱段階又は送風段階
に切り替わった時から所定時間(例えば、5分)経過していなければ、決定手段としての
制御部80が閾値を下閾値に決定する。冷凍サイクル装置20の冷房強度が、弱グループ
に属する弱段階又は送風段階である場合であって、冷凍サイクル装置20の冷房強度が強
段階又は中段階から弱段階又は送風段階に切り替わった時から所定時間(例えば、5分)
経過していれば、決定手段としての制御部80が閾値を下閾値よりも高い上閾値に決定す
る。なお、これを実現するべく、制御部80は、冷凍サイクル装置20の冷房強度が強段
階又は中段階から弱段階又は送風段階に切り替わった時に計時を開始する。
【0091】
<6. 有利な効果>
(1) 以上に説明したように、本実施形態に係る冷房装置10は、バッテリー5の電力
により運転されることによって貨物自動車1の運転室を空調する冷凍サイクル装置20と
、冷凍サイクル装置20の空調強度を段階的に制御する制御部80と、を備える。制御部
80は、冷凍サイクル装置20の空調強度に応じて閾値を決定する決定手段(ステップS
3)と、決定手段(ステップS3)により決定された閾値とバッテリー5の電圧を比較す
る比較手段(ステップS4)と、比較手段(ステップS4)による比較の結果、バッテリ
ー5の電圧が閾値以下である場合に(ステップS4:Yes)、冷凍サイクル装置20を
停止させる停止手段(ステップS5)と、を有する。
このような冷房装置10においては、閾値が冷凍サイクル装置20の空調強度に応じて
決定されたものであるため、その閾値が冷凍サイクル装置20の空調強度に適したものと
なる。そのため、バッテリー5の電圧が閾値まで低下した時に冷凍サイクル装置20が停
止すると、冷凍サイクル装置20の空調強度に関わらず、冷凍サイクル装置20の停止時
のバッテリー5の過放電が防止される。
【0092】
(2) 本実施形態に係る冷房装置10において、冷凍サイクル装置20の空調強度が弱
グループに属する弱段階又は送風段階であれば、決定手段(ステップS3)が閾値を上閾
値に決定し、冷凍サイクル装置20の空調強度が強グループに属する強段階又は中段階で
あれば、決定手段(ステップS3)が閾値を下閾値に決定する。
このように、冷凍サイクル装置20が弱段階又は送風段階の空調強度で運転された場合
、バッテリー5の電圧が上閾値に至った時点で、停止手段(ステップS5)が冷凍サイク
ル装置20を停止させると、バッテリー5の過放電が防止される。一方、冷凍サイクル装
置20が強段階又は中段階の空調強度で運転された場合、バッテリー5の電圧が下閾値に
至った時点で、停止手段(ステップS5)が冷凍サイクル装置20を停止させることによ
って、冷凍サイクル装置20の運転時間が長期になる上、バッテリー5の過放電が防止さ
れる。
【0093】
(3) 本実施形態に係る冷房装置10において、冷凍サイクル装置20の空調強度が強
グループに属する強段階又は中段階であれば、決定手段(ステップS3)が閾値を下閾値
に決定し、冷凍サイクル装置20の空調強度が弱グループに属する弱段階又は送風段階で
あって、且つ、冷凍サイクル装置20の空調強度が強段階又は中段階から弱段階又は送風
段階に切り替わった時から所定時間経過していれば、決定手段(ステップS3)が閾値を
上閾値に決定し、冷凍サイクル装置20の空調強度が弱段階又は送風段階であって、且つ
、冷凍サイクル装置20の空調強度が強段階又は中段階から弱段階又は送風段階に切り替
わった時から所定時間経過していなければ、決定手段(ステップS3)が閾値を下閾値に
決定する。
このように、冷凍サイクル装置20が強段階又は中段階の空調強度で運転された場合、
バッテリー5の電圧が下閾値に至った時点で、停止手段(ステップS5)が冷凍サイクル
装置20を停止させることによって、冷凍サイクル装置20の運転時間が長期になる上、
バッテリー5の過放電が防止される。冷凍サイクル装置20の空調強度が強段階又は中段
階から弱段階又は送風段階に切り替わった時から所定時間経過するまでは、バッテリー5
の電圧がすぐに変動しない可能性もあるため、その期間では、バッテリー5の電圧が下閾
値に至った時点で、停止手段(ステップS5)が冷凍サイクル装置20を停止させること
によって、冷凍サイクル装置20の運転時間が長期になる上、バッテリー5の過放電が防
止される。冷凍サイクル装置20の空調強度が強段階又は中段階から弱段階又は送風段階
に切り替わった時から所定時間経過した後は、バッテリー5の電圧が上閾値に至った時点
で、停止手段(ステップS5)が冷凍サイクル装置20を停止させると、バッテリー5の
過放電が防止される。
【0094】
(4) 本実施形態に係る冷房装置10において、制御部80が、冷凍サイクル装置20
の空調強度が強グループに属する強段階又は弱段階である場合に、所定閾値とバッテリー
5の電圧を比較する第2比較手段(ステップS22)と、第2比較手段(ステップS22
)による比較の結果、バッテリー5の電圧が所定閾値以下である場合に、冷凍サイクル装
置の空調強度を弱グループに属する弱段階又は送風段階に切り替える切替手段(ステップ
S23)と、を有する。
このように、冷凍サイクル装置20の冷房強度が強段階又は中段階から弱段階又は送風
段階に切り替わると、バッテリー5の電圧が上昇する。そのため、冷凍サイクル装置20
の運転時間は、バッテリー5の電圧が所定閾値に再度低下するまでの時間だけ延長される
【符号の説明】
【0095】
10…冷房装置(空調装置)
20…冷凍サイクル装置
80…制御部(決定手段、比較手段、停止手段、第2比較手段、切替手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーの電力により運転されることによって車両の運転室を空調する冷凍サイクル装置と、
前記冷凍サイクル装置の空調強度を段階的に制御する制御部と、を備え、
前記制御部が、
前記冷凍サイクル装置の空調強度に応じて閾値を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された前記閾値と前記バッテリーの電圧を比較する比較手段と、
前記比較手段による比較の結果、前記バッテリーの電圧が前記閾値以下である場合に、前記冷凍サイクル装置を停止させる停止手段と、を有し、
前記冷凍サイクル装置の空調強度の段階が強度の高い強グループとそれよりも強度の低い弱グループに分けられた場合に、前記冷凍サイクル装置の空調強度が前記弱グループに属する段階であれば、前記決定手段が前記閾値を上閾値に決定し、前記冷凍サイクル装置の空調強度が前記強グループに属する段階であれば、前記決定手段が前記閾値を前記上閾値よりも低い下閾値に決定する
空調装置。
【請求項2】
バッテリーの電力により運転されることによって車両の運転室を空調する冷凍サイクル装置と、
前記冷凍サイクル装置の空調強度を段階的に制御する制御部と、を備え、
前記制御部が、
前記冷凍サイクル装置の空調強度に応じて閾値を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された前記閾値と前記バッテリーの電圧を比較する比較手段と、
前記比較手段による比較の結果、前記バッテリーの電圧が前記閾値以下である場合に、前記冷凍サイクル装置を停止させる停止手段と、を有し、
前記冷凍サイクル装置の空調強度の段階が強度の高い強グループとそれよりも強度の低い弱グループに分けられた場合に、前記冷凍サイクル装置の空調強度が前記強グループに属する段階であれば、前記決定手段が前記閾値を下閾値に決定し、前記冷凍サイクル装置の空調強度が前記弱グループに属する段階であって、且つ、前記冷凍サイクル装置の空調強度が前記強グループに属する段階から前記弱グループに属する段階に切り替わった時から所定時間経過していれば、前記決定手段が前記閾値を前記下閾値よりも高い上閾値に決定し、前記冷凍サイクル装置の空調強度が前記弱グループに属する段階であって、且つ、前記冷凍サイクル装置の空調強度が前記強グループに属する段階から前記弱グループに属する段階に切り替わった時から前記所定時間経過していなければ、前記決定手段が前記閾値を前記下閾値に決定する
空調装置。
【請求項3】
前記制御部が、
前記冷凍サイクル装置の空調強度が前記強グループに属する段階である場合に、所定閾値と前記バッテリーの電圧を比較する第2比較手段と、
前記第2比較手段による比較の結果、前記バッテリーの電圧が前記所定閾値以下である場合に、前記冷凍サイクル装置の空調強度を前記弱グループに属する段階に切り替える切替手段と、を有する
請求項又はに記載の空調装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
以上の課題を解決するために、空調装置が、バッテリーの電力により運転されることによって車両の運転室を空調する冷凍サイクル装置と、前記冷凍サイクル装置の空調強度を段階的に制御する制御部と、を備え、前記制御部が、前記冷凍サイクル装置の空調強度に応じて閾値を決定する決定手段と、前記決定手段により決定された前記閾値と前記バッテリーの電圧を比較する比較手段と、前記比較手段による比較の結果、前記バッテリーの電圧が前記閾値以下である場合に、前記冷凍サイクル装置を停止させる停止手段と、を有し、前記冷凍サイクル装置の空調強度の段階が強度の高い強グループとそれよりも強度の低い弱グループに分けられた場合に、前記冷凍サイクル装置の空調強度が前記弱グループに属する段階であれば、前記決定手段が前記閾値を上閾値に決定し、前記冷凍サイクル装置の空調強度が前記強グループに属する段階であれば、前記決定手段が前記閾値を前記上閾値よりも低い下閾値に決定する