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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112595
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】ジェル状皮膚洗浄料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20230804BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20230804BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20230804BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q19/10
A61K8/36
A61K8/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014491
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】小森 咲
(72)【発明者】
【氏名】村上 大
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC711
4C083AC712
4C083AC791
4C083AC792
4C083AD131
4C083AD132
4C083BB07
4C083CC23
4C083DD01
4C083DD41
4C083EE05
(57)【要約】
【課題】チューブ容器からの垂れが起こりにくく、乾いた肌でも伸びやすく、泡立てずに使用した場合の洗い流しやすさが良好であり、泡立てて使用した場合は肌上での泡立ちに優れ、外観の透明性が良好であるジェル状皮膚洗浄料の提供。
【解決手段】(a)炭素数12~18の脂肪酸カリウム塩を7~25質量%、(b)アルキルヒドロキシスルホベタイン型両性界面活性剤を4~15質量%、(c)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよびメタクリル酸アルキルを構成モノマーとするポリマーを0.001~0.5質量%含有し、成分(a)と成分(b)の合計が15~35質量%であるジェル状皮膚洗浄料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(a)、(b)および(c)を含有し、成分(a)が7~25質量%、成分(b)が4~15質量%、成分(c)が0.001~0.5質量%あり、成分(a)と成分(b)の合計が15~35質量%であるジェル状皮膚洗浄料。
成分(a):炭素数12~18の脂肪酸カリウム塩
成分(b):下記の式(1)で示される両性界面活性剤
【化1】
(式(1)中、Rは炭素数8~22のアルキル基または炭素数8~22のアルケニル基を示し、RおよびRは各々独立してメチル基またはエチル基を示す。)
成分(c):2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよびメタクリル酸アルキルを構成モノマーとするポリマー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明ジェル状皮膚洗浄料に関し、さらに詳しくは、チューブ容器からの垂れが起こりにくく、乾いた肌でも伸びやすく、泡立てずに使用した場合の洗い流しやすさが良好であり、泡立てて使用した場合は肌上での泡立ちに優れ、外観の透明性が良好であるジェル状皮膚洗浄料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚洗浄料には様々な剤型があるが、水を加えて泡立てる液状洗浄料が最も一般的である。近年では、時短意識の高まりやその手軽さから、泡で出てくるフォーマータイプの洗浄料が増加している。フォーマータイプの洗浄料は泡立てる必要がなく、泡がキメ細かいことから、洗浄の際に肌への摩擦低減が期待できる。しかしながら、泡は洗っている間に弾力が低下するため、肌への摩擦低減効果が十分ではないことがあり、より摩擦力の小さい洗浄料が求められている。
【0003】
このような需要を満たすものとして、ジェル状皮膚洗浄料が挙げられる。ジェル状皮膚洗浄料は、泡立てずにジェルのまま使用することによって手と肌の間の摩擦を十分に低減することが可能であるが、以下の課題に対する改善が求められている。
【0004】
まず、ジェル状の剤型にはチューブ容器がよく用いられるが、チューブ容器から垂れてしまうと、こぼれたり、使用したい量を調節するのが難しくなったりするため、チューブ容器からの垂れがないことが求められる。
また、ジェル状洗浄料をインバスで使用する場合は、濡れた肌に使用するので伸びが問題になることは通常ないが、朝の洗顔などアウトバスでの使用が増えたことによって乾いた肌でも伸ばしやすいジェル状洗浄料が求められている。
更に、時短意識の高い使用者からは、洗い流し時もヌルつかず、流水で比較的簡単に洗い流せることが求められている。
【0005】
一方、皮膚洗浄料を増粘するためには、一般的にゲル化剤や増粘剤を用いる方法が採用される。例えば、特許文献1には、特定の非イオン性界面活性剤、多糖類もしくはその誘導体である水溶性高分子、および多価アルコールがそれぞれ特定の割合で配合されたジェル状皮膚洗浄料が開示されており、この洗浄料によれば、泡立てずに使用することができ、使用中のマッサージ効果、洗浄力、すすぎ性などに優れることが記載されている。しかしながら、この洗浄料は、水溶性高分子を用いた従来のジェル状洗浄料に比べてすすぎ性が優れるものの、使用時の感触として、増粘剤に由来するベタつきやヌルつきが生じる場合があった。また、乾いた肌での伸びやすさが不十分であった。
【0006】
また特許文献2には、アニオン性界面活性剤と両性界面活性剤との間の静電相互作用で複合体を生成させて増粘させる方法として、脂肪酸カリウム塩と特定のアミドアミノ酸型両性界面活性剤を用いた透明ゲル状洗浄剤組成物が開示されており、この洗浄剤組成物が泡立ち、泡質に優れることが記載されている。しかしながら、特許文献2には、泡立てない使用方法に関しては何ら言及されておらず、洗い流し終わるまでに時間を要する場合があった。
【0007】
また、泡立てない使用方法の一方で、特に汚れが気になる場合では、ジェルを肌に伸ばして汚れを浮かび上がらせた後に、水を加えて肌上で泡立てて洗うことで、汚れが再付着することなく洗い流すことができ、洗浄実感が得られるため、このような使用方法も所望されている。
【0008】
よって、チューブ容器からの垂れが起こりにくく、乾いた肌でも伸びやすく、泡立てずに使用した場合の洗い流しやすさが良好であり、泡立てて使用した場合は肌上での泡立ちに優れ、透明な外観であるジェル状皮膚洗浄料が求められていたが、かかる要求を達成することは非常に困難であり、かかる要求を満足できるものを提供できているとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015-229638号公報
【特許文献2】特開平11-189788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、チューブ容器からの垂れが起こりにくく、乾いた肌でも伸びやすく、泡立てずに使用した場合の洗い流しやすさが良好であり、泡立てて使用した場合は肌上での泡立ちに優れ、外観の透明性が良好であるジェル状皮膚洗浄料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、後述の成分(a)~(c)を特定の割合で配合したジェル状皮膚洗浄料により上記課題を解決することを見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は次のとおりである。
【0012】
下記の成分(a)、(b)および(c)を含有し、成分(a)が7~25質量%、成分(b)が4~15質量%、成分(c)が0.001~0.5質量%あり、成分(a)と成分(b)の合計が15~35質量%であるジェル状皮膚洗浄料。
成分(a):炭素数12~18の脂肪酸カリウム塩
成分(b):下記の式(1)で示される両性界面活性剤
【化1】
(式(1)中、Rは炭素数8~22のアルキル基または炭素数8~22のアルケニル基を示し、RおよびRは各々独立してメチル基またはエチル基を示す。)
成分(c):2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよびメタクリル酸アルキルを構成モノマーとするポリマー
【発明の効果】
【0013】
本発明のジェル状皮膚洗浄料は、チューブ容器からの垂れが起こりにくく、乾いた肌でも伸びやすく、泡立てずに使用した場合の洗い流しやすさが良好であり、泡立てて使用した場合は肌上での泡立ちに優れ、外観の透明性が良好であるという効果を奏する。
本明細書において「チューブ容器」とは、中空構造を有する略円筒型の容器であって、スクイズ性があり、チューブ容器の口を塞ぐ蓋を有する容器全般を指す。チューブ容器はプラスチック、アルミニウム、スズなどの材質から選ばれる一種または二種以上からら形成され、またラミネート加工されたものでもよい。チューブ容器の大きさは、特に限定されないが、口径が2~10mm、容量が10~500mLであることが好ましい。
また「透明」とは、沈殿物、白濁、おり等が視認されないことを言い、無色透明のみならず有色透明も含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明のジェル状皮膚洗浄料は、下記の成分(a)、成分(b)、成分(c)を含有する。以下、各成分について説明する。
なお、「ジェル状」とは、流動性を有する半固形状態を意味する。また「皮膚」は顔面を含む頭部、頚部、胴部、腕部および脚部における体表面を意味する。
本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~5」は2以上、5以下を表す。
また、各成分の含有量は、ジェル状皮膚洗浄料総量を100質量%としたときの質量%である。
【0015】
〔成分(a):炭素数12~18の脂肪酸カリウム塩〕
本発明に用いられる成分(a)は、炭素数12~18の脂肪酸カリウム塩である。脂肪酸カリウム塩に用いる脂肪酸は飽和または不飽和の脂肪酸であり、炭素数が12~18である偶数炭素脂肪酸が好ましい。かかる脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられる。これら脂肪酸から選ばれる一種を単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
成分(a)として二種以上の脂肪酸カリウム塩を用いる場合、成分(a)として使用する炭素数12~18の脂肪酸カリウム塩の合計含有量を100質量%とすると、ラウリン酸カリウムの含有量は、好ましくは10~55質量%であり、より好ましくは20~40質量%である。ミリスチン酸カリウムの含有量は、好ましくは20~60質量%であり、より好ましくは30~50質量%である。パルミチン酸カリウムの含有量は、好ましくは5~40質量%であり、より好ましくは10~30質量%である。また、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、およびパルミチン酸カリウムの合計含有量は、好ましくは90~100質量%、より好ましくは95~100質量%である。
【0017】
本発明に用いられる成分(a)は、遊離脂肪酸を含有する系(過脂肪)であることが好ましい。成分(a)が遊離脂肪酸を含有する系に調製する方法として、例えば、1)脂肪酸カリウム塩を調整した後、これに脂肪酸を添加する方法、2)脂肪酸とアルカリ剤とを反応させる時にアルカリ剤の添加量を少なくして未反応の遊離脂肪酸を残存させる方法が挙げられる。本発明において、水酸化カリウム等のアルカリ剤の使用量は、脂肪酸に対して、好ましくは0.90~0.98当量であり、より好ましくは0.92~0.96当量である。アルカリ剤の含有量が前記範囲内である場合、チューブ容器からの垂れのなさ、乾いた肌での伸びやすさ、肌上での泡立ちが更に優れるジェル状皮膚洗浄料を得ることができる。
【0018】
本発明において、成分(a)の含有量は、ジェル状皮膚洗浄料総量に対して、7~25質量%であり、好ましくは9~23質量%、より好ましくは11~20質量%である。成分(a)の含有量が少なすぎると、チューブ容器からの垂れのなさ、肌上での泡立ちが不十分となることがある。また成分(a)の含有量が多すぎると、乾いた肌での伸びやすさ、外観の透明性が不十分となることがある。
【0019】
〔成分(b):両性界面活性剤〕
本発明に用いられる(b)成分は、式(1)で表されるアルキルヒドロキシスルホベタイン型両性界面活性剤である。
【0020】
【化1】
【0021】
式(1)中のRは炭素数8~22のアルキル基または炭素数8~22のアルケニル基を示す。アルキル基およびアルケニル基の各炭素数は8~18であることが好ましい。アルキル基およびアルケニル基は直鎖または分岐鎖のいずれでもよく、飽和炭化水素または不飽和炭化水素を由来とするアルキル基またはアルケニル基のみならず、これら炭化水素の二種以上を含む混合炭化水素由来のアルキル基またはアルケニル基であってもよい。
なお、Rが混合炭化水素由来のアルキル基またはアルケニル基である場合、混合炭化水素由来を構成する各種炭化水素の炭素数から算出される炭素数の平均値が前記炭素数の範囲内であればよい。
【0022】
かかるアルキル基またはアルケニル基としては、例えば、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基、アラキジル基、ベヘニル基が挙げられる。また、混合油脂由来のアルキル基またはアルケニル基を用いることができ、例えば、ヤシ油アルキル基、パーム核油アルキル基、牛脂アルキル基などが挙げられる。好ましくは、ラウリル基、ミリスチル基、ヤシ油アルキル基、パーム核油アルキル基である。
【0023】
式(1)中のRおよびRは各々独立してメチル基またはエチル基である。好ましくはRおよびRのいずれもがメチル基である。
【0024】
式(1)で表されるアルキルヒドロキシスルホベタインの具体例としては、例えば、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ココヒドロキシスルホベタインなどが挙げられる。
本発明において成分(b)は、上記式(1)に包含される化合物から選ばれる一種を単独で、または二種以上を適宜選択して用いることができる。
成分(b)として具体的には、例えば、商品名「ニッサンアノン(登録商標)L-SB」〔日油(株)製、上記式(1)中のR:ラウリル基、RおよびR:メチル基〕が挙げられる。
【0025】
本発明において、成分(b)の含有量は、ジェル状皮膚洗浄料総量に対して、4~15質量%であり、好ましくは5~13質量%、より好ましくは6~11質量%である。成分(b)の含有量が少なすぎると、チューブ容器からの垂れのなさ、肌上での泡立ちが不十分となることがある。また成分(b)の含有量が多すぎると、チューブ容器からの垂れのなさ、乾いた肌での伸びやすさ、泡立てずに使用した場合の洗い流しやすさ、外観の透明性が不十分となることがある。
なお、式(1)で表される両性界面活性剤の複数種を併用する場合には、これら複数種の配合量の総量が上記の成分(b)の含有量の範囲内であればよい。
【0026】
〔成分(c):2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよびメタクリル酸アルキルを構成モノマーとするポリマー〕
本発明に用いられる成分(c)は、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよびメタクリル酸アルキルを構成モノマーとするポリマーである。具体的には、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸アルキルを共重合させることによって得られるポリマーであり、ポリマー中の2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸アルキルのモル比は1:0.2~1:3(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン:メタクリル酸アルキル)であることが好ましい。
メタクリル酸アルキルにおけるアルキル基としては、例えば、炭素数1~6の直鎖アルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられ、好ましくはブチル基である。
成分(c)は、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよびメタクリル酸アルキルに加えて、他の共重合性モノマーを構成モノマーとして含むモノマー混合物を共重合させて得られたポリマーであってもよく、この場合、モノマー混合物100モル%に対して他のモノマーの割合が10モル%以下であることが好ましい。他の共重合性モノマーとしては、成分(c)としてのポリマーが本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。
【0027】
成分(c)のポリマーの重量平均分子量は、好ましくは10,000~2,000,000であり、より好ましくは100,000~1,000,000である。なお、重量平均分子量はゲルパーミュエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0028】
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよびメタクリル酸アルキルを構成モノマーとするポリマーとして具体的には、例えば、商品名「LIPIDURE(登録商標)-PMB」〔日油(株)製、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン80モル%、メタクリル酸ブチル20モル%、重量平均分子量:60万〕が挙げられる。
【0029】
本発明において、成分(c)の含有量は、ジェル状皮膚洗浄料総量に対して、0.001~0.5質量%であり、好ましくは0.005~0.3質量%、より好ましくは0.01~0.1質量%である。成分(c)の含有量が少なすぎると、乾いた肌での伸びやすさ、泡立てずに使用した場合の洗い流しやすさが不十分となることがある。また成分(c)の含有量が多すぎると、肌上での泡立ち、外観の透明性が不十分となることがある。
【0030】
〔成分(a)および成分(b)の含有量の合計〕
本発明において、成分(a)および成分(b)の各含有量の合計は、ジェル状皮膚洗浄料総量に対して、15~35質量%であり、好ましくは18~32質量%、より好ましくは20~30%である。成分(a)および成分(b)の合計含有量が少なすぎると、チューブ容器からの垂れのなさ、肌上での泡立ちが不十分となることがある。またかかる合計含有量が多すぎると、泡立てずに使用した場合の洗い流しやすさ、外観の透明性が不十分となることがある。
【0031】
〔成分(a)に対する成分(b)の含有量の質量比〕
本発明において、成分(a)に対する成分(b)の含有量の質量比(b)/(a)が1/3~3/2であることが好ましく、より好ましくは1/2~1/1である。質量比(b)/(a)が前記範囲内である場合、チューブ容器からの垂れのなさ、泡立てずに使用した場合の洗い流しやすさ、外観の透明性がいずれも更に良好となる。
【0032】
〔水〕
本発明のジェル状皮膚洗浄料は、上記の成分(a)~成分(c)に加えて、通常は水を含有する。本発明のジェル状皮膚洗浄料において、水としては、イオン交換水、蒸留水等の精製水等、皮膚洗浄料の製造に適する水が用いられる。
本発明において、水の含有量は、ジェル状皮膚洗浄料総量に対して、通常60~85質量%であり、好ましくは65~83質量%、より好ましくは70~80質量%である。
【0033】
〔他の成分〕
本発明のジェル状皮膚洗浄料には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記の成分(a)~成分(c)以外の他の成分を含有させることができる。他の成分は皮膚洗浄料に常用されるものであり、例えば、エタノールなどの低級アルコール、プロピレングリコールなどのジオール類、糖アルコールおよび糖アルコール誘導体、カルボキシビニルポリマーなどの増粘剤、糖類、界面活性剤、有機塩、無機塩、pH調整剤、キレート剤、抗酸化剤、殺菌剤、血流促進剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン類、アルギニンなどのアミノ酸、色素、香料などが挙げられる。
本発明のジェル状皮膚洗浄料がかかる他の成分を含有する場合、その含有量は、ジェル状皮膚洗浄料総量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0034】
〔ジェル状皮膚洗浄料の製造〕
本発明のジェル状皮膚洗浄料は公知の方法により製造することができる。例えば、成分(a)としての炭素数が12~18の脂肪酸カリウム塩と水とを混合し加熱して溶融させた後、成分(b)としての両性界面活性剤を添加し混合する。更に、成分(c)としての水溶性高分子(ポリマー)や必要に応じて配合されるその他の成分などを添加して均一に混合した後、これを室温付近まで攪拌冷却して本発明のジェル状皮膚洗浄料を製造することができる。
【実施例0035】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明の実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
各成分を表2および3に示す含有量で配合した実施例1~12および比較例1~7のジェル状皮膚洗浄料について下記評価方法により評価を行った。
実施例および比較例において用いた成分は以下のとおりである。
なお、表2および3に示す成分(b)および成分(c)の各含有量は、用いた製剤中に含まれる目的成分の換算含有量である。
【0036】
〔成分(a)〕
下記表1に記載の配合に従って脂肪酸塩を混合することにより調製した脂肪酸カリウム塩(a1)~(a3)を成分(a)として用いた。
【0037】
【表1】
【0038】
〔成分(b)〕
アルキルヒドロキシスルホベタイン:日油(株)製「ニッサンアノン(登録商標)L-SB」(ラウリルヒドロキシスルホベタイン30質量%、水70質量%)
【0039】
〔成分(c)〕
アクリルポリマー:日油(株)製「LIPIDURE(登録商標)-PMB」(ポリマー5質量%、水95質量%)
【0040】
<評価方法>
(1)チューブ容器からの垂れ
ジェル状皮膚洗浄料をプラスチック製のチューブ容器(口径5mm、容量40mL)に容積の約80%(約32g)充填して蓋を閉め、25℃の恒温槽に静置した。30分後、恒温槽から取り出してチューブ容器の口を下に向けながら、蓋を開けて1分間静置した時の状態を真横から観察し、下記のように判定した。
◎:チューブ容器から中身が全く出ていない。
○:チューブ容器から中身が少し出ているが、垂れない。
△:チューブ容器から中身がやや垂れる。
×:チューブ容器から中身が垂れる。
【0041】
(2)乾いた肌での伸びやすさ
20名の男女をパネラーとし、ジェル状皮膚洗浄料1gを乾いた手に取り、顔に伸ばした際の伸びやすさを下記の基準により判定した。
2点:非常に伸びやすいと感じた場合。
1点:伸びやすいと感じた場合。
0点:伸び難いと感じた場合。
20名の合計点を求めて、下記の基準で評価して表に示した。
◎:合計点が35点以上かつ0点の評価をしたパネラーがいない。
○:合計点が30点以上35点未満かつ0点の評価をしたパネラーがいない。
△:合計点が20点以上30点未満、または、合計点が30点以上かつ0点の評価をしたパネラーがいる。
×:合計点が20点未満である。
【0042】
(3)泡立てずに使用した場合の洗い流しやすさ
20名の男女をパネラーとし、ジェル状皮膚洗浄料1gを手に取って顔に塗り伸ばして1分置き、その後ぬるま湯で洗い流した際の洗い流しやすさを下記の基準により判定した。
2点:非常に洗い流しやすいと感じた場合。
1点:やや洗い流しやすいと感じた場合。
0点:洗い流しにくいと感じた場合。
20名の合計点を求めて、下記の基準で評価して表に示した。
◎:合計点が35点以上かつ0点の評価をしたパネラーがいない。
○:合計点が30点以上35点未満かつ0点の評価をしたパネラーがいない。
△:合計点が20点以上30点未満、または、合計点が30点以上かつ0点の評価をしたパネラーがいる。
×:合計点が20点未満である。
【0043】
(4)肌上での泡立ち
20名の男女をパネラーとし、ジェル状皮膚洗浄料1gを手に取って顔に塗り伸ばして1分置き、その後ぬるま湯を加えながら肌上で泡立てた際の泡立ちの良さを下記の基準により判定した。
2点:非常に泡立ちが良いと感じた場合。
1点:やや泡立ちが良いと感じた場合。
0点:泡立ちにくいと感じた場合。
20名の合計点を求めて、下記の基準で評価して表に示した。
◎:合計点が35点以上かつ0点の評価をしたパネラーがいない。
○:合計点が30点以上35点未満かつ0点の評価をしたパネラーがいない。
△:合計点が20点以上30点未満、または、合計点が30点以上かつ0点の評価をしたパネラーがいる。
×:合計点が20点未満である。
【0044】
(5)外観の透明性
ジェル状皮膚洗浄料を製造後、高さ8cm、口径3cmの硬質透明ガラス瓶(容量55mL)に50mL(高さ6cm)充填し、当該ガラス瓶の底に置いた紙の文字(フォントサイズ11ポイント程度)を当該ガラス瓶の上方から目視したときの判読のし易さで評価した。文字の判読が容易な場合を「透明性良好」、文字の判読が困難であるか、沈殿物、白濁、おり等が視認される場合を「透明性なし」、これら以外の場合を「透明性がやや悪い」と評価した。
○:透明性良好
△:透明性がやや悪い
×:透明性なし
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
表2に示されるように、実施例1~12の各ジェル状皮膚洗浄料は、チューブ容器からの垂れがなく、乾いた肌でも伸びやすく、泡立てずに使用した場合の洗い流しやすさが良好であり、泡立てて使用した場合は肌上での泡立ちが優れ、外観の透明性が良好であるジェル状皮膚洗浄料と評価された。
特に、成分(a)を16質量%、成分(b)を10質量%および成分(c)を0.01質量%含有する実施例1のジェル状皮膚洗浄料は、すべての評価項目において、非常に良好な評価が得られた。
【0048】
一方、表3に示されるように、比較例1~7のジェル状皮膚洗浄料については、以下のとおり、すべての評価項目おいて十分な有効性の認められたものはなかった。
例えば、成分(a)を十分量含有していない比較例1のジェル状皮膚洗浄料は、成分(a)と成分(b)の合計含有量および成分(c)の含有量が十分であっても、チューブ容器からの垂れ、泡立てずに使用した場合の洗い流しやすさ、肌上での泡立ちが不十分であると評価された。
反対に、成分(a)の含有量が過剰である比較例2では、成分(a)と成分(b)の合計含有量および成分(c)の含有量が十分であっても、乾いた肌での伸びやすさ、外観の透明性が不十分であると評価された。
【0049】
成分(b)を十分量含有していない比較例3では、成分(a)と成分(b)の合計含有量および成分(c)の含有量が十分であっても、チューブ容器からの垂れ、肌上での泡立ち、外観の透明性が不十分であると評価された。
反対に、成分(b)の含有量が過剰である比較例4では、成分(a)と成分(b)の合計含有量および成分(c)の含有量が十分であっても、チューブ容器からの垂れ、乾いた肌での伸びやすさ、泡立てずに使用した場合の洗い流しやすさ、外観の透明性が不十分であると評価された。
【0050】
成分(c)を十分量含有していない比較例5では、成分(a)と成分(b)の各含有量および合計含有量が十分であっても、乾いた肌での伸びやすさ、泡立てずに使用した場合の洗い流しやすさが不十分であると評価された。
反対に、成分(c)の含有量が過剰である比較例6では、成分(a)と成分(b)の各含有量および合計含有量が十分であっても、肌上での泡立ち、外観の透明性が不十分であると評価された。
【0051】
成分(a)と成分(b)の合計含有量が過剰である比較例7では、成分(a)~成分(c)の各含有量が十分であっても、乾いた肌での伸びやすさ、泡立てずに使用した場合の洗い流しやすさ、外観の透明性が不十分であると評価された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のジェル状皮膚洗浄料は、インバスのみならず、朝の洗顔などアウトバスでの使用が可能であり、また時短意識の高い使用者の要望にも応えることができる。