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特開2023-112627乳加工用食品及びそれを備える食品加工用キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112627
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】乳加工用食品及びそれを備える食品加工用キット
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/00 20060101AFI20230804BHJP
   A23C 23/00 20060101ALI20230804BHJP
   A23G 9/40 20060101ALN20230804BHJP
   A23L 35/00 20160101ALN20230804BHJP
   A23L 23/00 20160101ALN20230804BHJP
【FI】
A23C9/00
A23C23/00
A23G9/40
A23L35/00
A23L23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014557
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】393029974
【氏名又は名称】クラシエフーズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮部 文子
(72)【発明者】
【氏名】大谷 泰史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 龍矢
【テーマコード(参考)】
4B001
4B014
4B036
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC03
4B001AC21
4B001AC43
4B001AC45
4B001AC46
4B001AC99
4B001BC01
4B001BC99
4B001DC01
4B001EC01
4B001EC99
4B014GB18
4B014GG11
4B014GK05
4B014GK08
4B014GL01
4B014GL02
4B014GL04
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP01
4B014GP11
4B014GP27
4B036LC01
4B036LF02
4B036LF19
4B036LH01
4B036LH04
4B036LH07
4B036LH10
4B036LH12
4B036LH39
4B036LH50
4B036LK01
4B036LP06
4B036LP19
4B036LP24
(57)【要約】
【課題】
本発明は、牛乳などの乳を加工して新規な乳加工食品を生成するための乳加工用食品及びそれを備える食品加工用キットを提供することを課題とする。
【解決手段】
下記(A)及び下記(B)を備えることを特徴とする乳加工用食品により上記課題を達成する。
(A)乳に混合して酸含有乳にするための酸含有組成物
(B)前記酸含有乳をろ過により分離した凝集物から結着凝集物を生成するための結着粉末
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)及び下記(B)を備えることを特徴とする乳加工用食品。
(A)乳に混合して酸含有乳にするための酸含有組成物
(B)前記酸含有乳をろ過により分離した凝集物から結着凝集物を生成するための結着粉末
【請求項2】
前記(A)が、pH5.6以下の酸含有乳にするための酸含有組成物である請求項1記載の乳加工用食品。
【請求項3】
前記(B)が、α化でん粉及び/又は増粘剤を含有する請求項1又は2記載の乳加工用食品。
【請求項4】
下記(C)を備える請求項1乃至3のいずれか1項に記載の乳加工用食品。
(C)前記酸含有乳をろ過により分離したろ液から風味調整成分含有ろ液を生成するための風味調整成分含有組成物
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の乳加工用食品と、下記(D)とを備える食品加工用キット。
(D)ろ液受槽及び漏斗を備える食品加工用ろ過具
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛乳などの乳を加工して新規な乳加工食品を生成するための乳加工用食品及びそれを備える食品加工用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
牛乳を加工する食品としては、例えば、牛乳と混和するだけで速やかにゲル化するデザート組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。該デザート組成物は低メトキシルペクチンを含有し、牛乳中のカルシウムイオンとイオン結合して網状構造をつくるという化学的性質を利用して、ゲル状デザートを得るものである。
【0003】
その他に、牛乳を加工する食品として、酢やレモン汁などを挙げることができる。牛乳に酢もしくはレモン汁を混合して生じる凝集物を分離し食塩を添加してカッテージチーズとすることが、家庭で簡単にできるレシピとして一般的に知られている。これは、牛乳のpHをカゼインの等電点(pH4.6)に近づけた場合に生じる蛋白凝集という化学的性質を利用してカッテージチーズを得るものである。
【0004】
従来の牛乳を加工して得られる食品は、ゲル状デザートやカッテージチーズのようなものであった。また、どちらも牛乳の化学的性質を利用して加工食品を生成しているが、「混和」のみ、「混合分離」のみのように比較的簡単にできるため、牛乳を加工する行為を化学実験のように実体験している感覚はなかった。さらに、楽しさを伴うものでもなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭59-4104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、牛乳などの乳を加工して新規な乳加工食品を生成するための乳加工用食品及びそれを備える食品加工用キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(A)及び下記(B)を備えることを特徴とする乳加工用食品により上記目的を達成する。
(A)乳に混合して酸含有乳にするための酸含有組成物
(B)前記酸含有乳をろ過により分離した凝集物から結着凝集物を生成するための結着粉末
【0008】
好ましくは、前記(A)が、pH5.6以下の酸含有乳にするための酸含有組成物である。さらに好ましくは、前記(B)が、α化でん粉及び/又は増粘剤を含有する。より好ましくは、下記(C)を備える。
(C)前記酸含有乳をろ過により分離したろ液から風味調整成分含有ろ液を生成するための風味調整成分含有組成物
【0009】
さらに望ましくは、前記乳加工用食品と、下記(D)とを備える食品加工用キットによ
り上記目的を達成する。
(D)ろ液受槽及び漏斗を備える食品加工用ろ過具
【0010】
牛乳を加工して新たな食品を生成するために、牛乳の化学的性質に注目し鋭意検討した。その結果、牛乳に酸を添加して起こる蛋白凝集を利用して凝集物(カード)から単にカッテージチーズを生成するのではなく、結着粉末を添加するなど、さらに手を加えてアイスクリーム様食品を生成できるようにした。
【0011】
さらに、牛乳からカード分離後の残りの液体成分(ろ液)に炭酸ガス発生成分を添加してソーダ水様飲料を生成し、上述のカード由来のアイスクリーム様食品と組み合わせてクリームソーダ様飲食品を生成できるようにした。このように、牛乳に酸、結着粉末、炭酸ガス発生成分を作用させて、アイスクリーム様食品、ソーダ水様飲料、クリームソーダ様飲食品のように、今までにない新規な食品への加工が可能となることを見出し本発明に到達した。
【0012】
また、カードに添加する結着粉末、ろ液への添加成分を工夫することで、それぞれの生成物にバリエーションを持たせることができ、さらに両者を相性の良い生成物にして組み合わせると、さらに様々な食品への加工が可能となることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
他に、牛乳に対して実施する、添加、混合、分離、結着などの段階的な加工作業が化学実験をするような感覚を与え、さらに、加工前後の牛乳の著しい形態変化が視覚を刺激し、得られる生成物への期待感を膨らませることとなり、化学実験を楽しく実体験する感覚で牛乳を加工できることを見出した。
【0014】
さらに、加工の対象を牛乳だけでなく、酸性下に等電点を有する大豆タンパク質を含有する豆乳もまた同様の加工食品を生成できることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0015】
本発明の乳加工用食品による生成物、すなわち、生成された結着凝集物、好ましくは結着凝集物と風味調整成分含有ろ液、さらに好ましくは両者の組み合わせによる乳加工食品は、従来の乳加工食品とは全く異なる、新規の乳加工食品である。
【0016】
本発明では、乳を結着凝集物に加工することで、好ましくは、結着凝集物と風味調整成分含有ろ液に加工することで、乳が苦手な人にとっても喫食し易い形態に変化させることができる。
【0017】
本発明によれば、化学実験を楽しく実体験するような感覚で牛乳などの乳を加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の乳加工用食品による生成方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の乳加工用食品による乳加工の一例を示す説明図である。
図3】本発明に係る食品加工用ろ過具の一例を示す斜視図である。
図4】本発明に係る食品加工用ろ過具の使用方法のうち、切断後のろ液受槽と漏斗を示す図である。
図5】本発明に係る食品加工用ろ過具の使用方法のうち、ろ液受槽の凹部と漏斗の排出口を示す図である。
図6】本発明に係る食品加工用ろ過具の使用方法のうち、ろ液受槽の凹部に漏斗を載置した状態を示す図である。
図7】本発明に係る食品加工用ろ過具の使用方法のうち、漏斗にフィルターをセットした状態を示す図である。
図8図3の食品加工用ろ過具の側面図である。
図9】本発明に係る食品加工用ろ過具の別の一例を示す斜視図である。
図10】本発明の食品加工用キットに関するアンケート結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を詳しく説明する。本発明の乳加工用食品は、乳から結着凝集物を生成するために(A)酸含有組成物と(B)結着粉末とを備える。
【0020】
まず、前記乳とは、酸性下で等電点を有する両性電解質のタンパク質を含有する牛乳及び/又は豆乳である。本発明に係る乳の加工では、乳が含有するタンパク質が等電点で凝集する化学的性質を利用することから、乳タンパク質のカゼイン(等電点pH4.6)や大豆タンパク質(同pH4.5)を含有する乳であることが重要である。
【0021】
牛乳としては、例えば、乳等省令で定められている飲用乳7種類が挙げられ、そのうち牛乳、特別牛乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳の5種類はカゼインを含有する。飲用乳の残りの2種類である加工乳と乳飲料については、カゼインを含有するものに限られる。豆乳としては、大豆タンパク質を含有する豆乳を挙げることができる。
【0022】
前記結着凝集物とは、前記乳から、本発明の乳加工用食品を用いて生成される生成物を指す。具体的には、乳に(A)酸含有組成物を混合した酸含有乳より生じた凝集物を、ろ過によって凝集物とろ液に分離し、分離後の凝集物に(B)結着粉末を混合して得られる生成物である。
【0023】
<(A)酸含有組成物>
本発明に係る(A)酸含有組成物とは、乳に混合して酸含有乳にするための組成物(以下、「(A)組成物」という。)であり、酸を含有する。酸としては、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酒石酸、フマル酸、グルコノデルタラクトンなどが挙げられる。好ましくは、アスコルビン酸が、酸含有乳の凝集性が良好であり、結着凝集物の風味が良好となる点で好適である。
【0024】
本発明では、乳に(A)組成物を混合することで、酸含有乳のpHをカゼインや大豆タンパク質の等電点付近となるよう操作し、凝集物を生成させる。特に、酸含有乳のpHが、タンパク質の等電点(カゼインpH4.6、大豆タンパク質pH4.5)を超える場合は、等電点から遠ざかるにつれて(中性近くなるにつれて)、タンパク質は凝集しにくくなる傾向がある。したがって、好ましくは、pH5.6以下の酸含有乳となるように(A)組成物を設計すると凝集性の点で好適である。
【0025】
さらに好ましくは、pH4.0以上の酸含有乳となるようにすると、結着凝集物の風味(特に酸味)の点で望ましい。
【0026】
具体的には、酸としてアスコルビン酸を用いる場合は、飲用乳の牛乳50gに0.5gのアスコルビン酸を混合できるように(A)組成物を設計することを例示できる。そうすると、酸含有乳はpH4.8となり、酸含有乳の凝集性、及び結着凝集物の風味が良好となる。
【0027】
(A)組成物の形態は、粉体状、液体状のどちらでもよい。粉体状の場合は、携帯性(軽量化)、保存安定性、経日安定性、製造上の点で好適であり、液体状の場合は、溶解性、分散性の点で好適である。
【0028】
(A)組成物は、上述の酸以外に副原料として、例えば、糖質甘味料(砂糖、ブドウ糖、糖アルコールなど)、デキストリン、βでん粉、香料、着色料、水、さらに、溶液とした場合に中性を示す原料などが挙げられる。これらは、適宜選択して、単独もしくは複数を含有すればよい。
【0029】
<(B)結着粉末>
本発明に係る(B)結着粉末とは、前記酸含有乳をろ過により分離した凝集物から結着凝集物を生成するための粉末(以下、「(B)粉末」という。)である。本発明では、乳に(A)組成物を混合した酸含有乳より生じた凝集物を、ろ過によって凝集物とろ液に分離し、分離後の凝集物に混合し凝集物を結着させて結着凝集物とするための粉末である。
【0030】
(B)粉末に用いる原料としては、例えば、α化でん粉、増粘剤、糖質甘味料(砂糖、ブドウ糖、糖アルコールなど)、デキストリン、食塩、炭酸カルシウム、酸味料、香料、着色料、乳製品、マッシュポテトパウダー、粉末餡、みじん粉、果汁、果汁粉末などが挙げられる。これらは、適宜選択して、単独もしくは複数を含有すればよい。
【0031】
好ましくは、α化でん粉及び/又は増粘剤を含有すると、結着性の点で好適である。α化でん粉と増粘剤は、それぞれ単独もしくは両方を組み合わせてもよい。
【0032】
α化でん粉としては、小麦でん粉、米でん粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯でん粉、甘藷でん粉、タピオカでん粉等のでん粉及びこれらの加工でん粉をα化したα化でん粉などが挙げられ、適宜単独もしくは複数を組み合わせて用いることができる。
【0033】
なお、α化でん粉の調製方法は、一般的に行われている方法、例えば、でん粉あるいは加工でん粉の懸濁液を熱ロール(ドラムドライヤー)等で糊化後、乾燥して調製される。乾燥方法としては、脱水フィルム乾燥、エクストルーダーによる押し出し膨化乾燥、スプレードライヤーによるスプレー乾燥等が挙げられる。
【0034】
また、でん粉から加工でん粉への加工方法としては、公知の方法、例えば、エーテル化、リン酸架橋、アセチル化、エステル化、酸化等を単独又は複数組み合わせた方法が挙げられる。具体的には、α化でん粉、リン酸架橋α化でん粉、ヒドロキシプロピルリン酸架橋α化でん粉などが挙げられる。
【0035】
なお、マッシュポテトパウダー、粉末餡、みじん粉などのように、じゃがいも、小豆等の豆類、米などの穀類を蒸煮等して乾燥させた穀類粉末中のα化でん粉も同様に本願所望の結着性効果を得ることができる。
【0036】
増粘剤としては、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギナン、アラビアガム、ペクチン、プルラン、ゼラチン、アルギン酸、アルギン酸エステル、カードラン、コンニャクマンナン、ジェランガム、タマリンド種子ガム、寒天などが挙げられ、適宜単独もしくは複数を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガムは、結着凝集物の食感の点で好適に用いられる。
【0037】
(B)粉末中のα化でん粉及び/又は増粘剤の含有量は、(B)粉末全体重量中、好ましくは8.5~100重量%とすると、凝集物の結着性の点で好適である。なお、前記含有量とは、α化でん粉又は増粘剤の一方を含有する場合はその含有する成分の含有量を、併用して含有する場合は両者の合計量を意味する。
【0038】
なお、(B)粉末に、生成後の結着凝集物の風味、食感を、実際の食品を想起できるような類似食品とする原料を用いると、様々な乳加工食品を生成できる点で好適である。例えば、結着凝集物をアイスクリーム様食品とする場合は、脱脂粉乳、練乳、ホエー、チーズ等のような乳製品等を、ポテトサラダ様食品とする場合はマッシュポテトパウダーのようなポテト原料等を、こし餡、羊羹、団子のような和菓子様食品とする場合は粉末餡やみじん粉のような和菓子原料等を適宜選択すればよい。
【0039】
本発明の乳加工用食品は、(A)組成物及び(B)粉末に加え、好ましくはさらに、(C)風味調整成分含有組成物を備えることが、乳から結着凝集物と風味調整成分含有ろ液を生成することができる点で好適である。
【0040】
<(C)風味調整成分含有組成物>
本発明に係る(C)風味調整成分含有組成物とは、前記酸含有乳をろ過により分離したろ液から風味調整成分含有ろ液を生成するための組成物(以下、「(C)組成物」という。)であり、風味調整成分を含有する。風味調整成分としては、ろ液を、所望の風味や食感に変化させる原料が挙げられる。
【0041】
本発明では、乳に(A)組成物を混合した酸含有乳より生じた凝集物をろ過によって凝集物とろ液に分離し、分離後の凝集物から結着凝集物を生成する。その一方で、分離後のろ液から風味調整成分含有ろ液を生成する。その際、結着凝集物と相性の良い風味調整成分含有ろ液となるように風味調整成分を選択すると、様々な食品への加工が可能となり、かつ魅力的な乳加工食品とすることができる、得られる乳加工食品への期待が膨らみ、化学実験を楽しく実体験する感覚で牛乳を加工できる点で好適である。
【0042】
例えば、結着凝集物をアイスクリーム様食品とする場合は、風味調整成分に酸成分とアルカリ成分との併用による炭酸ガス発生成分を用いて風味調整成分含有ろ液をソーダ水様飲料とし、両者を合わせてクリームソーダ様飲食品とすることができる。
【0043】
前記炭酸ガス発生成分に用いる酸成分としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸などが挙げられ、アルカリ成分としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0044】
この他の風味調整成分及びその組み合わせ例として、次のようなものが挙げられる。風味調整成分にコンソメパウダーを用いたコンソメスープ様食品(風味調整成分含有ろ液)とポテトサラダ様食品(結着凝集物)による洋食セット。風味調整成分にコンソメパウダー及びポテトパウダーを用いたポタージュスープ様食品(風味調整成分含有ろ液)とポテトサラダ様食品(結着凝集物)による洋食セット。風味調整成分に米麹や食塩を用いた甘酒様食品(風味調整成分含有ろ液)と羊羹様食品(結着凝集物)によるお茶菓子セット。風味調整成分に粉末餡や砂糖を用いた小豆飲料様食品(風味調整成分含有ろ液)と団子様食品(結着凝集物)によるおしるこセット。
【0045】
(C)組成物は、風味調整成分のほかに、例えば、糖質甘味料(砂糖、ブドウ糖、糖アルコールなど)、デキストリン、βでん粉、香料、着色料などを適宜選択して、単独もしくは複数を用いることができる。
【0046】
本発明の乳加工用食品の製品化は、例えば、次のようにして行われる。まず、別々に容器詰めされた(A)組成物と(B)粉末、好ましくは、さらに(C)組成物を準備する。これらを一つの包装体に密封し、乳加工用食品製品とすればよい。
【0047】
さらに、混合や分離や飲食時に用いる、容器、スプーン、ストロー、かきまぜ棒、マドラー、フィルター等の治具等を適宜同封してもよい。好ましくは、原理説明、操作方法、凝集や分離などの状況記録欄などを記載したノート、テキスト等を同封すると、乳の化学的性質と乳加工食品の生成との関連性を理解し易くなり、乳加工食品を生成することがあたかも化学実験をしているように感じる点で好適である。なお、容器及び包装体の材質は、特に制限するものではなく、例えば、ポリエチレン等の軟質なプラスチック、紙、あるいは金属等の各種材質等の中から適宜選択して用いればよい。
【0048】
次に、本発明の乳加工用食品を用いて乳から結着凝集物を生成する方法、好ましくは、さらに風味調整成分含有ろ液を生成する方法を、図1を用いて説明する。図1は、本発明の乳加工用食品による生成方法を示すフローチャートである。
【0049】
まず、図1に示すように、乳11に(A)組成物1を混合し、酸含有乳12を得る。こうすることで、酸含有乳12のpHを乳が含有するタンパク質の等電点付近に調整し、凝集物13を生成させる。次に、酸含有乳12をろ過して凝集物(ろ物)13とろ液14に分離する。次に、凝集物(ろ物)13に(B)粉末2を混合し凝集物13を結着させて結着凝集物15を生成する。
【0050】
なお、本発明の乳加工用食品は、好ましくは、結着凝集物15の含水率が結着凝集物全体重量中10~66重量%となるように設計することが好適である。10重量%以上とすると余剰の(B)粉末による結着凝集物の粉っぽさを抑制でき、66重量%以下とすると本発明所望の結着性が得られ結着凝集物がペースト状にならないからである。
【0051】
次いで、風味調整成分含有ろ液を生成する場合は、図1に示すように、酸含有乳12から分離されたろ液14に、(C)組成物3を添加し混合すると風味調整成分含有ろ液16が得られる。
【0052】
なお、図示していないが、乳11に(A)組成物1を混合する際、好ましくは、混合前の乳11又は混合後の酸含有乳12を加熱すると、乳が含有するタンパク質が早く凝集する点で好適である。加熱方法としては、電子レンジによる加熱、あるいは直火による加熱などが挙げられるが、簡便性、安全性の点で電子レンジによる加熱が好適である。例えば、電子レンジによる加熱条件としては、乳11、酸含有乳12のどちらの場合でも、500~600W30秒程度を例示できる。
【0053】
また、酸含有乳12のろ過は、凝集物(ろ物)13とろ液14に分離できればよく、図1に示すように、後述する(D)食品加工用ろ過具4のほかに、例えば、実験用漏斗、コーヒードリッパー、こし器、篩、ザル、調理用漏斗なども利用できる。さらに、ろ過の際、ろ紙、コーヒーフィルター、キッチンペーパー、こし布、油こし紙、だしこしシートなどのようなフィルターを併用すると、細かな凝集物13もろ物として回収できる点で好適である。
【0054】
さらに、図示していないが、好ましくは、生成後の結着凝集物15に(C)組成物3を添加し混合して風味調整成分含有結着凝集物を生成してもよい。また、図示していないが、好ましくは、生成後の結着凝集物15や前記風味調整成分含有結着凝集物に、風味調整成分含有ろ液16とを組み合わせ、乳加工食品(上述のクリームソーダ様飲食品、洋食セット、お茶菓子セット、おしるこセットなど)としてもよい。
【0055】
次に、本発明の乳加工用食品を用いて乳から結着凝集物、好ましくはさらに風味調整成分含有ろ液、より好ましくは乳加工食品を生成する方法を、図2図2の(a)~(f))を用いて説明する。図2は、本発明の乳加工用食品による乳加工の一例を示す説明図で
ある。なお、次項からの図2の説明では、乳11に「飲用乳の牛乳」、結着凝集物15に「アイスクリーム様食品」、(C)組成物3の風味成分に酸成分とアルカリ成分との併用による[炭酸ガス発生成分」、風味調整成分含有ろ液16に「ソーダ水様飲料」、乳加工食品18に「クリームソーダ様飲食品」を用いて説明する。
【0056】
まず、図2(a)に示すように、マグカップなどの容器に注いだ乳11(飲用乳の牛乳)に(A)組成物1を添加後、スプーン62などを用いてよく撹拌して混合する。添加混合後は酸含有乳12となる(図示せず)。飲用乳の牛乳11に(A)組成物1を添加することで、酸含有乳12のpHをカゼインの等電点付近に調整し、凝集物を生成させる。なお、飲用乳の牛乳11又は酸含有乳12を電子レンジ等によって加熱する(図示せず)と、カゼインが早く凝集する点で好適である。
【0057】
次に、酸含有乳12をろ過して凝集物(ろ物)13とろ液14に分離する。図2(b)に示すように、ろ液14を収容するための容器の上にコーヒードリッパー7、その内側にフィルター61をセットする。このフィルター61内に酸含有乳12を投入後静置すると、フィルター61内にそぼろ状の凝集物(ろ物)13が集積し、ろ液14は下方の容器に落下し、凝集物(ろ物)13とろ液14とに分離される。
【0058】
次に、凝集物(ろ物)13に(B)粉末2を混合して結着凝集物15(アイスクリーム様食品)を生成する。図2(c)に示すように、フィルター61内の凝集物(ろ物)13を、スプーン62などを用いて容器63に移した後、凝集物(ろ物)13に(B)粉末2を添加する。図2(d)に示すように、スプーン62などを用いてよく撹拌して混合しそぼろ状の凝集物13を結着させ一つの塊状にまとめると、容器63内に結着凝集物15(アイスクリーム様食品)が生成される。なお、容器63としては、マグカップ、湯飲み、グラス、紙コップ、プラスチックカップ等、混合できる容器であれば、特に限定されない。
【0059】
次いで、好ましくは、図2(b)にて分離されたろ液14に(C)組成物3を添加して風味調整成分含有ろ液16(ソーダ水様飲料)を生成する。図2(e)に示すように、ろ液14に(C)組成物3(炭酸ガス発生成分含有組成物)を添加し混合する。添加混合後は発泡性の風味調整成分含有ろ液16(ソーダ水様飲料)となる(図示せず)。
【0060】
さらに好ましくは、例えば、図2(d)にて生成されたアイスクリーム様食品15と、図2(e)にて生成されたソーダ水様飲料16とを組み合わせて、乳加工食品18(クリームソーダ様飲食品)とする。図2(f)に示すように、グラスに、ソーダ水様飲料16を注ぎ、その上にアイスクリーム様食品15を添えると、ソーダ水様飲料16中に炭酸ガス70が発泡する様子が涼しげな、クリームソーダ様飲食品18を生成することができる。
【0061】
さらに、本発明では、前記乳加工用食品と、下記(D)とを備える食品加工用キットとすると、簡便性の点で好適である。
(D)ろ液受槽及び漏斗を備える食品加工用ろ過具
【0062】
すなわち、(D)食品加工用ろ過具は、ろ液受槽及び漏斗を備えることから、ろ過により凝集物(ろ物)とろ液を分離し、かつ、分離後のろ物を漏斗内に収容するとともにろ液をろ液受槽に収容することができるため、ろ液を受ける容器を準備する手間を省略でき、簡便性が良好である。
【0063】
<(D)食品加工用ろ過具>
本発明に係る(D)食品加工用ろ過具(以下、「(D)ろ過具」という。)を、図3
用いて説明する。図3は、本発明に係る食品加工用ろ過具の一例を示す斜視図であり、4は(D)ろ過具、41はろ液受槽、31は漏斗である。図3に示すように、ろ液受槽41と漏斗31は連結され一体化された状態で両者を備えている。この一体化の状態は、形状及び機能の異なるものであっても一体成型によって生産することができ、生産点数を減らし生産容易性を有する点で好適である。さらに、輸送時(市場流通時)に、ろ液受槽と漏斗がバラバラに分離せず利便性の点でも好ましい。
【0064】
図3に示すように、ろ液受槽41には凹部41aが形成され、漏斗31はろ液排出部32を2個備えている。漏斗31によるろ過で分離したろ液を、ろ液排出部32を通過した後、凹部41aにて収容する。ろ液排出部32は1個でもよいが、複数個有すると、ろ過速度が向上する点、ろ液が排出しにくい排出口を形成した場合でも他の排出部があることで確実にろ過できる点で好適である。
【0065】
ろ液受槽の凹部41aの形状は、図3に示すような略半球状に限定されることなく、例えば、略円柱状、略多角柱状などであってもよい。ただし、凹部の底辺は、ろ液を収容しても安定するよう平坦であることが好ましい。ろ液排出部32の形状は、図3に示すような楕円状に限定されることなく、例えば、円状、多角形状、星形などであってもよい。
【0066】
図3に示すように、漏斗31は設置部36を備えることが好ましい。設置部36は漏斗31に設けられた窪みであり、ろ過用のフィルターを容易に、かつ安定してセットできる点で望ましい。
【0067】
設置部36は、より好ましくは、フィルター固定手段37を備える。図3に示すように、設置部36の楕円状開口部の円形頂点部に対角状に2か所のへこみを設けフィルター固定手段37とすると、設置部36にセットされた前記フィルターがより一層安定して固定される点で望ましい。
【0068】
また、図3に示すように、(D)ろ過具4は支持壁34を備える。この支持壁34は、ろ液受槽の凹部41aと漏斗31の設置部36との周囲を囲むように配置されていることから、輸送時の外圧による破損を抑制できる点で好ましい。
【0069】
さらに、(D)ろ過具4は、切り離し線21及び22を設けてもよい。図3には、切り離し線21はろ液受槽41と漏斗31を分けるために、切り離し線22はろ液受槽41から凹部41aを切り離すために設けられている。なお、切り離し線21及び22は、ミシン目加工により切り離しやすくしてもよい。
【0070】
次に、図3で示した(D)ろ過具の使用方法を、図4図7を用いて説明する。使用方法のうち、図4は切断後のろ液受槽と漏斗を、図5はろ液受槽の凹部と漏斗の排出口を、図6はろ液受槽の凹部に漏斗を載置した状態を、図7は漏斗にフィルターをセットした状態を示す図である。
【0071】
まず、図3に示す(D)ろ過具4を、はさみなどを用いて切り離し線21で切断し、図4のようにろ液受槽41と漏斗31とに分ける。
【0072】
図4は、切断後のろ液受槽41と漏斗31を、図3のP側の側面を外側にして開き、ろ液受槽41を左側に、漏斗31を右側に配置した図である。図4に示すように、漏斗31は、設置部36及び2個のろ液排出部32を備えている。なお、ろ液排出部32は設置部36の下方へ突出する筒状とすると、後述する排出口33の形成を、はさみなどを用いて容易に切り取ることができる点で好適である
【0073】
また、図4に示すように、漏斗31は、周囲を支持壁34により固定され、前記支持壁34の一部(図4の場合は漏斗31の手前側)が開口された開口部35を備えている。
【0074】
次に、使用時に、すなわちろ過による分離を行う時に、図5のようにろ液受槽41から凹部41aを切り離す。そして好ましくは、漏斗31のろ液排出部32にろ液を排出するための孔が形成されていない場合は、はさみなどを用いて排出口33を形成する。
【0075】
図5は、はさみなどを用いて、図4のろ液受槽41を切り離し線22(図示せず)で切断し、凹部41aとその残部41bに分けた状態と、図4の漏斗31のろ液排出部32の先端を切り取り、排出口33を形成した状態を示す図である。図5に示すように、漏斗31には、設置部36に2個の排出口33が形成されている。なお、漏斗31は、支持壁34の一部に開口部35を備えることから、排出口33を形成する際、はさみを挿入しやすく容易に切断加工できる点で好適である。
【0076】
次に、ろ過による分離を行うために、図6のようにろ液受槽の凹部41aの上方に漏斗31を載置する。
【0077】
図6は、ろ液受槽の凹部41aに、漏斗31を載置した状態を示す図である。図6に示すように、ろ液受槽の凹部41aの内側に漏斗31の設置部36が載置されており、その様子を漏斗31の開口部35より確認できる。すなわち、漏斗31は、支持壁34の一部に開口部35を備えることから、容易に目視することができる。また、開口部35を備えることで、ろ液受槽の凹部41aの載置を容易にする。
【0078】
さらに、図6に示すように、漏斗31が、設置部36を支持する支持壁34を独立して備えることから、ろ過の際、漏斗31に分離前の酸含有乳の重さを受けとめる耐久性を与え、ろ液受槽に漏斗を直接乗せることから生じる不安定さを解消できる点で好適である。さらに好ましくは、ろ液受槽の凹部41aの内壁面と漏斗31の設置部36の外壁面の間に高さ方向に隙間を設ければ、ろ液が設置部36の下部に接触しないようにすることができ、ろ過速度が向上する点で好適である。
【0079】
次に、図7のように漏斗31にフィルター61をセットする。
【0080】
図7は、漏斗31にフィルター61をセットした状態を示す図である。図7の右側に示すように、一番下に置かれたろ液受槽の凹部41aの上方に支持壁34を備える漏斗31が載置され、漏斗31の設置部36に、ろ過に用いるフィルター61がセットされ、フィルター固定手段37にそのフィルター61の両端が固定されている。
【0081】
さらに、図7の左側に示すように、ろ液受槽41の残部41bを逆さにしてスプーン62置き場に利用してもよく、スプーン62が固定できるよう、図3のろ液受槽41に浅型凸部43(図3には図示せず。図5に示す残部41bを逆さにすることで凹部となる)を設けてもよい。
【0082】
さらに、本発明に係る(D)ろ過具は、図8に示すように前記支持壁の高さをろ液受槽の深さよりも高くすることが好適である。
【0083】
図8は、図3の(D)ろ過具の側面図である。図8(a)は、図3の(D)ろ過具4をP側から見た側面図である。図8(b)は、図8(a)の手前側の支持壁34を一部切り除いた側面図である。図8(b)に示すように、支持壁34の内側を、ろ液受槽41の凹部41aを左側に、漏斗31の設置部36及びろ液排出部32を右側に見ることができる。
【0084】
図8(b)に示すように、漏斗31の支持壁34の高さh1は、ろ液受槽41の深さh2、直接的には凹部41aの深さh2よりも高くなっている。この高さの違いにより、図6で説明したように、ろ液受槽の凹部41aの内側に漏斗31の設置部36を載置でき、設置部36は支持壁34によって支持され、ろ液受槽に漏斗を直接乗せることから生じる不安定さを解消できる点で好適である。
【0085】
さらに好ましくは、前記高さh1を前記深さh2より高くすることでろ液受槽の凹部41aの内壁面と漏斗31の設置部36の外壁面の間に高さ方向に隙間を設けるようにすると、ろ液が設置部36の下部に接触しないようにすることができ、ろ液速度が向上する点で好適である。
【0086】
次に、(D)ろ過具の別の形態を図9に基づき説明する。図9は、本発明に係る食品加工用ろ過具の別の一例を示す斜視図である。5は(D)ろ過具、41はろ液受槽、31は漏斗である。図9に示すように、(D)ろ過具5は、ろ液受槽41と漏斗31とを、連結され一体化された状態で備えている。
【0087】
図9に示すように、ろ液受槽41には略多角柱状の凹部41aと浅型凸部43が形成され、漏斗31は楕円状のろ液排出部32を3個備えている。また、漏斗31は設置部36及びフィルター固定手段37を備えている。
【0088】
さらに、図9に示すように、(D)ろ過具5は、ろ液受槽の凹部41aと漏斗31の設置部36との周囲を囲むように、小さな凹凸のある支持壁34が配置されていることから、輸送時の外圧による破損を抑制できる点で好適である。すなわち、この小さな凹凸は支持壁34の強度の向上のために好適である。他に、(D)ろ過具5には、切り離し線21及び22が設けられている。
【0089】
そして、(D)ろ過具の材質は、特に制限するものではないが、好ましくは、樹脂又は紙であることが、成形しやすく、軽量であり、支持壁の効果が一層発揮される点で好適である。樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、シリコン等の軟質な物性を有するものが挙げられる。
【0090】
本発明の食品加工用キットの製品化は、例えば、次のようにして行われる。まず、別々に容器詰めされた(A)組成物と(B)粉末、そして(D)ろ過具、好ましくは、さらに容器詰めされた(C)組成物を準備する。これらを一つの包装体に密封し、食品加工用キット製品とすればよい。
【0091】
さらに、上述の乳加工用食品の製品化と同様に、治具、ノート、テキスト等を適宜同封してもよい。なお、容器及び包装体の材質についても、上述の乳加工用食品の製品化と同様である。
【0092】
次に、本発明の食品加工用キットを用いて乳から結着凝集物、好ましくはさらに風味調整成分含有ろ液、より好ましくは乳加工食品を生成する方法は、図1及び図2図2の(a)~(f))に準じる。なお、(D)ろ過具は、図2(b)のろ液14を収容するための容器とコーヒードリッパー7に代えて、例えば図3図9に示すようなろ液受槽及び漏斗を備える食品加工用ろ過具4、5を、図4~7のように準備して用いればよい。
【0093】
以上のことから、本発明の食品加工用キットは、牛乳などの乳を加工して新規な乳加工食品を、簡便に、生成することができる。さらに、化学実験を楽しく実体験するような感覚で乳を加工して、従来の乳加工食品とは異なる、結着凝集物、好ましくは結着凝集物と
風味調整成分含有ろ液、さらに好ましくはその両者の組み合わせによる乳加工食品を生成することができる。
【実施例0094】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0095】
≪乳加工用食品の調製≫
<実施例1>
表1に示す組成の(A)組成物3.0g及び(B)粉末6.2gを調製し、アルミ製の袋に別々に充填後密封し、さらに両者を一つのアルミ製の包装体に一緒に密封し、乳加工用食品を調製した。
【0096】
【表1】
【0097】
≪結着凝集物の生成≫
実施例1の包装体を開封し、図2(a)~(d)に示す手順で結着凝集物(アイスクリーム様食品)を生成した。なお、乳11には飲用乳の牛乳を使用した。また、生成作業時の室温は20℃であった。まず、マグカップに乳11を50g注いだ。図2(a)に示すように、マグカップ中の乳11に(A)組成物1(3.0g)を添加後、スプーン62を用いてよく撹拌して混合した。添加混合後は酸含有乳12となった(図示せず)。この酸含有乳12を電子レンジにて600W30秒間加熱後、さらに混合した(図示せず)。次に、図2(b)に示すように、ろ液14を収容するための容器の上にコーヒードリッパー7、その内側にコーヒーフィルター61をセットした。このフィルター61内に酸含有乳12を投入後、表1に示す分離時間の間静置し、フィルター61内の凝集物(ろ物)13と、下方の容器内のろ液14とに分離した。
【0098】
次に、図2(c)に示すように、フィルター61内の凝集物(ろ物)13を、スプーン62を用いて容器63に移した後、凝集物(ろ物)13に(B)粉末2(6.2g)を添加した。次いで、図2(d)に示すように、容器63内でスプーン62を用いてよく撹拌して混合し、結着凝集物15(アイスクリーム様食品)を生成した。
【0099】
酸含有乳のpH、分離時の凝集性評価及び分離時間、結着凝集物の含水率、結着性評価について、表1に併せて示す。
【0100】
評価の結果、実施例1は凝集性良好のためそぼろ状の凝集物とろ液に完全に分離でき、分離後の凝集物に対する(B)粉末の結着性もまた良好であった。したがって、生成された結着凝集物は、一塊にまとまりなめらかなクリームのような様相を呈するアイスクリーム様食品であった。
【0101】
≪乳加工用食品の調製≫
<実施例2~15、比較例1~2>
表1及び表2に示す組成及び重量の(A)組成物及び(B)粉末を調製し、アルミ製の袋に別々に充填後密封し、さらに両者を一つのアルミ製の包装体に一緒に密封し、乳加工用食品を調製した。
【0102】
【表2】
【0103】
≪結着凝集物の生成≫
<実施例2~12、比較例2>
実施例1と同様にして、結着凝集物(アイスクリーム様食品)を生成した。
【0104】
<比較例1>
乳11の飲用乳の牛乳の代わりに水道水を用いる以外は、実施例1と同様にして結着凝集物(アイスクリーム様食品)を生成した。
【0105】
<実施例13~15>
酸含有乳12を電子レンジにて加熱しない以外は、実施例1と同様にして結着凝集物(アイスクリーム様食品)を生成した。
【0106】
実施例2~15及び比較例1~2の酸含有乳のpH、分離時の凝集性評価及び分離時間、結着凝集物の含水率、結着性評価について、表1及び表2に併せて示す。なお、凝集物を分離できなかった比較例1~2については、その時点で生成作業を中止した。
【0107】
評価の結果、実施例10を除く表1の実施例はすべて凝集性及び結着性がともに良好で、結着凝集物(アイスクリーム様食品)を生成することができた。実施例10は一部ろ液を含む凝集物が得られ、凝集物は若干緩く結着したものの、アイスクリーム様の結着凝集物を生成することができた。特に、実施例2、7、8、9、12は、実施例1と同様のなめらかなアイスクリーム様食品であった。実施例3、4、5、6、11は、用いる酸に由来する酸味が強調される、粉っぽさを感じるなど、実施例1と若干風味や食感の異なる結着凝集物が得られたが、凝集性と結着性に関しては問題なく、他の原料を工夫することで改良できる程度の違いであった。したがって、(A)組成物は、酸の種類、酸の含有量、形態が相違していても、結着凝集物を生成できた。
【0108】
酸含有乳を加熱しない実施例13~15は、酸含有乳のろ過を開始してから凝集物(ろ物)とろ液の分離に時間を要したが凝集性はあり凝集物を分離できた。結着性も概ね良好で、結着凝集物(アイスクリーム様食品)を生成することができた。
【0109】
一方、比較例はいずれも凝集物が生成されたかったため凝集物を分離できず、結着凝集物を生成することはできなかった。
【0110】
≪乳加工用食品の調製≫
<実施例16~29>
表3及び表4に示す組成及び重量の(A)組成物及び(B)粉末を調製し、アルミ製の袋に別々に充填後密封し、さらに両者を一つのアルミ製の包装体に一緒に密封し、乳加工用食品を調製した。
【0111】
【表3】
【0112】
【表4】
【0113】
≪結着凝集物の生成≫
<実施例16~24>
実施例1と同様にして、結着凝集物(アイスクリーム様食品)を生成した。
【0114】
<実施例25>
乳11の飲用乳の牛乳の代わりに豆乳を用いる以外は、実施例1と同様にして結着凝集
物(アイスクリーム様食品)を生成した。
【0115】
<実施例26~29>
実施例1と同様にして、アイスクリーム様食品とは異なる結着凝集物を生成した。
【0116】
実施例16~29の酸含有乳のpH、分離時の凝集性評価及び分離時間、結着凝集物の含水率、結着性評価について、表3及び表4に併せて示す。
【0117】
評価の結果、実施例17を除く表3の実施例はすべて凝集性及び結着性がともに良好で、結着凝集物(アイスクリーム様食品)を生成することができた。実施例17は若干緩めではあったが結着し、アイスクリーム様の結着凝集物を生成することができた。(B)粉末にα化でん粉を含有するとくちどけが良く、やわらかい結着凝集物が得られ、増粘剤を含有するとねっとりとした結着凝集物が得られた。
【0118】
また、表4の実施例はすべて凝集性及び結着性ともに良好であった。得られた結着凝集物は、実施例26はポテトサラダ様の、実施例27はこし餡様の、実施例28は羊羹様の、実施例29は団子様の食品であった。
【0119】
≪乳加工用食品の調製≫
<実施例30~32>
実施例1と同じ(A)組成物(A1)及び(B)粉末(B1)、さらに表5に示す組成及び重量の(C)組成物(C1~C3)をそれぞれ調製し、アルミ製の袋に別々に充填後密封し、表5に記載の組み合わせの通り一つのアルミ製の包装体に一緒に密封し、乳加工用食品を調製した。
【0120】
【表5】
【0121】
≪結着凝集物、風味調整成分含有ろ液、及び乳加工食品の生成≫
まず、実施例1と同様にして結着凝集物15(アイスクリーム様食品)を生成した。次に、図2(e)に示す手順で風味調整成分含有ろ液(ソーダ水様飲料)を、図2(f)に示す手順で乳加工食品(クリームソーダ様飲食品)を生成した。
【0122】
図2(e)に示すように、図2(b)にて分離されたろ液14に、(C)組成物3を添加し混合した。添加混合後は風味調整成分含有ろ液16(ソーダ水様飲料)が得られた(図示せず)。
【0123】
次いで、図2(f)に示すように、グラスに風味調整成分含有ろ液16(ソーダ水様飲料)を注ぎ、その上に結着凝集物15(アイスクリーム様食品)を添えて、乳加工食品18(クリームソーダ様飲食品)を生成した。
【0124】
得られた乳加工食品18は、実施例30~32のいずれも、ソーダ水様飲料16中に炭酸ガス70が発泡する様子が涼しげなクリームソーダ様飲食品であった。
【0125】
≪乳加工用食品の調製≫
<実施例33>
実施例26と同じ(A)組成物(A1)及び(B)粉末(B11)、さらに表5に示す組成及び重量の(C)組成物(C4)をそれぞれ調製し、アルミ製の袋に別々に充填後密封し、この3点を一つのアルミ製の包装体に一緒に密封し、乳加工用食品を調製した。
<実施例34>
実施例28と同じ(A)組成物(A1)及び(B)粉末(B13)、さらに表5に示す組成及び重量の(C)組成物(C5)をそれぞれ調製し、アルミ製の袋に別々に充填後密封し、この3点を一つのアルミ製の包装体に一緒に密封し、乳加工用食品を調製した。
<実施例35>
実施例29と同じ(A)組成物(A1)及び(B)粉末(B14)、さらに表5に示す組成及び重量の(C)組成物(C6)をそれぞれ調製し、アルミ製の袋に別々に充填後密封し、この3点を一つのアルミ製の包装体に一緒に密封し、乳加工用食品を調製した。
【0126】
≪結着凝集物、風味調整成分含有ろ液、及び乳加工食品の生成≫
<実施例33~35>
実施例30と同様にして、結着凝集物及び風味調整成分含有ろ液を生成した。なお、実施例33は前者がポテトサラダ様食品、後者がポタージュスープ様食品となり、この二つを並べて洋食セット(乳加工食品18)を生成した。また、実施例34は前者が羊羹様食品、後者が甘酒様食品となり、この二つを並べてお茶菓子セット(乳加工食品18)を生成した。さらに、実施例35は前者が団子様食品、後者が小豆飲料様食品となり、この二つを一つの容器に入れておしるこセット(乳加工食品18)を生成した。
【0127】
得られた乳加工食品18は、いずれも、結着凝集物と風味調整成分含有ろ液とが、相性のよい調和のとれた食品同士であった。また、生成時は最初の牛乳とは全く違うものに変化していく様子が楽しく、分離して生成した異なる食品をもう一度合わせて食品セットとすることは意外性を感じるものであった。
【0128】
≪乳加工用食品の調製≫
<実施例36~39>
実施例1と同じ組成の(A)組成物(A1)及び(B)粉末(B1)による乳加工用食品を調製した。
<実施例40~41>
実施例20と同じ組成の(A)組成物(A1)及び(B)粉末(B6)による乳加工用食品を調製した。
【0129】
≪結着凝集物の生成≫
<実施例36~41>
凝集物への(B)粉末の添加量を、表6に示す量とする以外は、実施例1と同様にして、結着凝集物(アイスクリーム様食品)を調製した。
【0130】
【表6】
【0131】
実施例36~41の酸含有乳のpH、分離時の凝集性評価及び分離時間、結着凝集物の含水率、結着性評価について、表6に併せて示す。
【0132】
評価の結果、結着性に多少違いはあるものの、実施例36~41はすべて結着凝集物(アイスクリーム様食品)を生成できた。
【0133】
≪食品加工用キットの調製≫
<実施例42>
実施例30と同じ(A)組成物(A1)、(B)粉末(B1)、(C)組成物(C1)をそれぞれ調製し、アルミ製の袋に別々に充填後密封し、乳加工用食品を調製した。さらに、図3の食品加工用ろ過具4、及び樹脂製のスプーン、フィルター、及び原理説明、操作方法などを記した手順書を準備した。これらすべてを一つのアルミ製の包装体に一緒に密封し、食品加工用キットを調製した。
【0134】
実施例42を4~9歳の男女30名に提供し、結着凝集物(アイスクリーム様食品)、風味調整成分含有ろ液(ソーダ水様飲料)、乳加工食品(クリームソーダ様飲食品)を生成、喫食させた後、アンケート調査を実施した。アンケートは、生成中の主要な操作などについて質問し「とても楽しかった」「ちょっと楽しかった」「どちらでもない」「あまり楽しくなかった」「楽しくなかった」のうち該当するものを選択させた。その結果を図10に示す。
【0135】
その結果、生成操作に関してはアンケート回答者の83%以上が楽しい(「とても楽しかった」、「ちょっと楽しかった」の合計)と感じていた。
【0136】
また、このほかに、実施例42のようなキットの購入意向について質問したところ、75%以上が購入したいと回答しており、その理由として、「実験をしているようだった」、「ろ過が楽しかった」、「手順書が楽しかった」などの回答が寄せられた。したがって、本発明は、化学実験を楽しく実体験するような感覚で乳を加工できるといえる。
【符号の説明】
【0137】
1 (A)酸含有組成物
2 (B)結着粉末
3 (C)風味調整成分含有組成物
4 (D)食品加工用ろ過具
5 (D)食品加工用ろ過具
7 コーヒードリッパー
11 乳
12 酸含有乳
13 凝集物(ろ物)
14 ろ液
15 結着凝集物
16 風味調整成分含有ろ液
18 乳加工食品
21 切り離し線
22 切り離し線
31 漏斗
32 ろ液排出部
33 排出口
34 支持壁
35 開口部
36 設置部
37 フィルター固定手段
41 ろ液受槽
41a ろ液受槽の凹部
41b ろ液受槽の残部
43 浅型凸部
61 フィルター
62 スプーン
63 容器
70 炭酸ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10