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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112628
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】乳加工方法及び乳加工食品生成方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 19/045 20060101AFI20230804BHJP
   A23C 19/05 20060101ALI20230804BHJP
   A23C 21/08 20060101ALI20230804BHJP
   A23C 9/152 20060101ALI20230804BHJP
   A23C 9/156 20060101ALI20230804BHJP
   A23G 9/32 20060101ALN20230804BHJP
   A23L 2/52 20060101ALN20230804BHJP
   A23L 2/38 20210101ALN20230804BHJP
   A23L 2/00 20060101ALN20230804BHJP
   A23L 23/00 20160101ALN20230804BHJP
   A23L 35/00 20160101ALN20230804BHJP
   A23G 3/34 20060101ALN20230804BHJP
【FI】
A23C19/045
A23C19/05
A23C21/08
A23C9/152
A23C9/156
A23G9/32
A23L2/52
A23L2/38 P
A23L2/00 T
A23L23/00
A23L35/00
A23G3/34 106
A23G3/34 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014558
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】393029974
【氏名又は名称】クラシエフーズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮部 文子
(72)【発明者】
【氏名】大谷 泰史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 龍矢
【テーマコード(参考)】
4B001
4B014
4B036
4B117
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC03
4B001AC43
4B001AC45
4B001BC01
4B001BC08
4B001BC13
4B001BC99
4B001EC01
4B001EC04
4B001EC99
4B014GB18
4B014GG03
4B014GG06
4B014GG07
4B014GG11
4B014GG18
4B014GK03
4B014GK08
4B014GL04
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP02
4B014GP10
4B014GP14
4B036LE02
4B036LF02
4B036LF19
4B036LH04
4B036LH10
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4B036LH12
4B036LH15
4B036LK01
4B036LK02
4B036LP01
4B036LP22
4B036LP24
4B117LG29
4B117LK08
4B117LK12
4B117LK13
4B117LL02
4B117LL04
4B117LL09
4B117LP20
(57)【要約】
【課題】
本発明は、化学実験を実体験するように牛乳などの乳を加工できる乳加工方法及び乳加工食品生成方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
下記(S1)~(S3)工程を備えることを特徴とする乳加工方法により上記課題を達成する。
(S1)乳に酸含有組成物を混合して酸含有乳とする酸混合工程
(S2)前記酸含有乳をろ過により凝集物とろ液に分離する分離工程
(S3)前記分離工程で得られた凝集物に、結着粉末を混合して結着凝集物を生成する結着工程
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(S1)~(S3)工程を備えることを特徴とする乳加工方法。
(S1)乳に酸含有組成物を混合して酸含有乳とする酸混合工程
(S2)前記酸含有乳をろ過により凝集物とろ液に分離する分離工程
(S3)前記分離工程で得られた凝集物に、結着粉末を混合して結着凝集物を生成する結着工程
【請求項2】
前記結着凝集物の含水率が、結着凝集物全体重量中10~66重量%である請求項1記載の乳加工方法。
【請求項3】
下記(S4)工程を備える請求項1又は2記載の乳加工方法。
(S4)前記乳又は前記酸含有乳を加熱する加熱工程
【請求項4】
下記(S5)工程を備える請求項1乃至3のいずれか1項に記載の乳加工方法。
(S5)前記分離工程で得られたろ液に、風味調整成分含有組成物を添加し混合して風味調整成分含有ろ液を得る風味調整成分含有ろ液生成工程
【請求項5】
下記(S6)工程を備える請求項1乃至4のいずれか1項に記載の乳加工方法。
(S6)前記結着工程で得られた結着凝集物に、風味調整成分含有組成物を添加し混合して風味調整成分含有結着凝集物を得る風味調整成分含有結着凝集物生成工程
【請求項6】
請求項4記載の風味調整成分含有ろ液と、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の結着凝集物及び/又は請求項5記載の風味調整成分含有結着凝集物を組み合わせて乳加工食品を得ることを特徴とする乳加工食品生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学実験を実体験するように牛乳などの乳を加工できる乳加工方法及び乳加工食品生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
牛乳の加工方法として、例えば、牛乳とデザート組成物を混和するだけで速やかにゲル状食品を製造できる酸性ゲル状デザートの製造法が知られている。(例えば、特許文献1参照)。この製造方法は、該デザート組成物に含有させた低メトキシルペクチンが、牛乳中のカルシウムイオンとイオン結合して網状構造をつくりゲル状となる化学的性質を利用している。したがって牛乳の化学的な形態変化を実体験できる題材であるが、牛乳との混和のみの簡便な方法で製造できることから、化学実験として実体験するためには物足りないものであった。
【0003】
その他に、家庭で簡単にできる牛乳の加工方法として、例えば、温めた牛乳に酢もしくはレモン汁を混合して生じる凝集物を分離して食塩を添加して作るカッテージチーズの調理方法が挙げられる。これは、牛乳のpHをカゼインの等電点(pH4.6)に近づけた場合に生じる蛋白凝集という化学的性質を利用しており、化学の楽しさを実体験できる魅力的な題材である。しかしながら、このままでは調理方法の範疇に留まり、化学実験として実体験するためには物足りないものであった。
【0004】
これまでの牛乳を加工する方法は、牛乳の化学的性質を利用して加工する方法であるものの、化学的性質に係る加工工程が「混和」のみ、「混合分離」のみという単純作業のため、牛乳の加工を一連の化学実験として実体験するためには、視覚的要素、作業的要素、実験的要素、生成後の牛乳加工食品などの様々な点で改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭59-4104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、化学実験を実体験するように牛乳などの乳を加工できる乳加工方法及び乳加工食品生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(S1)~(S3)工程を備えることを特徴とする乳加工方法により上記目的を達成する。
(S1)乳に酸含有組成物を混合して酸含有乳とする酸混合工程
(S2)前記酸含有乳をろ過により凝集物とろ液に分離する分離工程
(S3)前記分離工程で得られた凝集物に、結着粉末を混合して結着凝集物を生成する結着工程
【0008】
好ましくは、前記結着凝集物の含水率が、結着凝集物全体重量中10~66重量%である。
【0009】
さらに好ましくは下記(S4)工程を、より好ましくは下記(S5)工程を、さらに望ましくは下記(S6)工程を備える。
(S4)前記乳又は前記酸含有乳を加熱する加熱工程
(S5)前記分離工程で得られたろ液に、風味調整成分含有組成物を添加し混合して風味調整成分含有ろ液を得る風味調整成分含有ろ液生成工程
(S6)前記結着工程で得られた結着凝集物に、風味調整成分含有組成物を添加し混合して風味調整成分含有結着凝集物を得る風味調整成分含有結着凝集物生成工程
【0010】
また、好適には、前記風味調整成分含有ろ液と、前記結着凝集物及び/又は前記風味調整成分含有結着凝集物を組み合わせて乳加工食品を得ることを特徴とする乳加工食品生成方法により、上記目的を達成する。
【0011】
化学的性質を利用した食品加工を、科学的な視点を持ち実験的にアプローチできるように、加工の対象として牛乳に注目し鋭意検討した。その結果、牛乳に酸を添加、混合して牛乳のタンパク質を等電点付近にすることで凝集物(カード)を生成させ、そのカードを分離した後、そのままカッテージチーズとするのではなく、結着粉末を添加するなど、さらに手を加えてアイスクリームのような食品に加工できるようにした。
【0012】
そうすることで、蛋白凝集という化学的性質を利用する実験的な要素に加え、加工前後の牛乳の著しい形態変化が視覚を刺激し、添加、混合する酸混合工程、ろ過する分離工程、新たな生成物をつくる結着工程など、牛乳から加工食品に変化する段階的な加工工程が、得られる加工食品への期待感を膨らませることとなり、乳の加工を実験プロセス化しているため、乳化学反応を体験及び観察できることを見出し、本発明に達成した。
【0013】
さらに、牛乳からカード分離後の残りの液体成分(ろ液)に酸成分とアルカリ成分を添加してソーダ水様飲料を生成する工程を設け、上述のカード由来のアイスクリーム様食品と組み合わせることのできるクリームソーダ様食品への加工を可能にした。また、この加工方法は、クリームソーダ様食品に留まることなく様々な加工食品への加工が可能となることを見出し本発明に到達した。
【0014】
他に、加工の対象を牛乳だけでなく、酸性下に等電点を有する大豆タンパク質を含有する豆乳でも同様に加工できることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、化学実験を実体験するように乳を加工することができる。すなわち、乳の化学反応を、乳加工として実験プロセス化しているため、本発明の乳加工方法によって実際に乳を加工すると、乳化学反応を体験及び観察できる。
【0016】
さらに、本発明によれば、楽しみながら乳の加工ができる。
【0017】
また、本発明によれば、乳を結着凝集物に加工することで、好ましくは、乳を結着凝集物及び/又は風味調整成分含有結着凝集物と、風味調整成分含有ろ液に加工することで、乳が苦手な人にとっても喫食し易い形態に加工することができる。
【0018】
本発明は、従来の乳加工方法とは異なり、乳を2つの成分に分離した後にその両者を組み合わせるという新しく斬新な乳加工食品生成方法である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の乳加工方法及び乳加工食品生成方法を示すフローチャートである。
図2】本発明に係る食品加工用ろ過具の一例を示す斜視図である。
図3図2の食品加工用ろ過具のろ液受槽の凹部に漏斗を載置した状態を示す図である。
図4】本発明に係る食品加工用ろ過具の別の一例を示す斜視図である。
図5】本発明の乳加工方法及び乳加工食品生成方法の一例を示す説明図である。
図6】本発明の乳加工方法に関するアンケート結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を詳しく説明する。以下、本発明の乳加工方法、好ましくは、乳加工食品生成方法を、図1を用いて説明する。図1は、本発明の乳加工方法及び乳加工食品生成方法を示すフローチャートである。
【0021】
本発明の乳加工方法は、図1に示すように、(S1)酸混合工程、(S2)分離工程、(S3)結着工程の3工程を備える。
【0022】
<(S1)酸混合工程>
(S1)酸混合工程(以下、(S1)という。)とは、図1に示すように、乳11に酸含有組成物1を混合して酸含有乳12とする工程である。すなわち、S1は、酸含有組成物1によって乳11のpHをカゼインや大豆タンパク質の等電点付近になるよう調整するための工程であり、酸含有乳12とすることで、カゼインや大豆タンパク質による蛋白凝集が起こり、凝集物が生成される。
【0023】
<(S2)分離工程>
(S2)分離工程(以下、(S2)という。)とは、図1に示すように、S1で得られた酸含有乳12をろ過により凝集物(ろ物)13とろ液14に分離する工程である。すなわちS2は、酸含有乳12から蛋白凝集によって生成された凝集物を回収するためにろ過する工程であり、その結果、ろ物には凝集物(ろ物)13が、ろ液には乳清や水分などからなる液体成分がろ液14として分離される。
【0024】
<(S3)結着工程>
(S3)結着工程(以下、(S3)という。)とは、図1に示すように、S2で得られた凝集物(ろ物)13に、結着粉末2を混合して結着凝集物15を生成する工程である。すなわち、S3は、結着粉末2によってそぼろ状の凝集物(ろ物)13をまとめて一つの塊状とするための工程であり、その結果、例えば、アイスクリーム様食品のような結着凝集物15を生成する。
【0025】
S1に係る乳11とは、酸性下で等電点を有する両性電解質のタンパク質を含有する牛乳及び/又は豆乳である。本発明では、乳が含有するタンパク質が等電点で凝集する化学的性質を利用することから、乳タンパク質のカゼイン(等電点pH4.6)や大豆タンパク質(同pH4.5)を含有する乳であることが重要である。
【0026】
牛乳としては、例えば、乳等省令で定められている飲用乳7種類が挙げられ、そのうち牛乳、特別牛乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳の5種類がカゼインを含有する。飲用乳の残りの2種類である加工乳と乳飲料については、カゼインを含有するものに限られる。豆乳としては、大豆タンパク質を含有する豆乳を挙げることができる。
【0027】
S1に係る酸含有組成物1とは、酸を含有する組成物である。酸としては、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酒石酸、フマル酸、グルコノデルタラクトンなどが挙げられる。好ましくは、アスコルビン酸が、酸含有乳の凝集性及び結着凝集物の風味が良好となる点で好適である。
【0028】
酸含有組成物1は、前記酸以外に副原料として、例えば、糖質甘味料(砂糖、ブドウ糖、糖アルコールなど)、デキストリン、βでん粉、香料、着色料、水、溶液とした場合に中性を示す原料などが挙げられる。これらは、適宜選択して、単独もしくは複数を含有すればよい。また、酸含有組成物1の形態は、粉体状、液体状のどちらでもよい。
【0029】
S1に係る酸含有乳12は、タンパク質の等電点(カゼインpH4.6、大豆タンパク質pH4.5)を超える場合は、等電点から遠ざかるにつれて(中性近くになるにつれて)、タンパク質が凝集しにくくなる傾向がある。したがって本発明では、好ましくは、酸含有乳12が酸含有組成物1によってpH5.6以下となるようにすると、凝集性の点で好適である。さらに好ましくは、結着凝集物の風味(特に酸味)を考慮すると、pH4.0以上とすることが好適である。
【0030】
具体的には、酸にアスコルビン酸を用いる場合は、飲用乳の牛乳50gに、0.5gのアスコルビン酸を混合できるようにすると、酸含有乳12がpH4.8となり、酸含有乳の凝集性、及び結着凝集物の風味が良好となる。
【0031】
S2に係る酸含有乳12のろ過には、例えば、実験用漏斗、食品加工用漏斗、コーヒードリッパー、こし器、篩、ザル、調理用漏斗、食品加工用ろ過具、漏斗、食品加工用ろ過具などが用いられる。これらの中でも、ろ液受槽及び漏斗を備える食品加工用ろ過具は簡便性、生産容易性、利便性の点で、好適に用いられる。さらに、ろ過の際、例えば、ろ紙、コーヒーフィルター、キッチンペーパー、こし布、油こし紙、だしこしシートなどのようなフィルターを併用すると、細かな凝集物もろ物として回収できる点で好適である。
【0032】
前記食品加工用ろ過具を、図2を用いて説明する。図2は、本発明に係る食品加工用ろ過具の一例を示す斜視図であり、4は食品加工用ろ過具、41はろ液受槽、31は漏斗である。図2に示すように、ろ液受槽41と漏斗31は連結され一体化された状態で両者を備えている。両者を備えることから、ろ過による分離後の凝集物(ろ物)13を漏斗31内に収容するとともにろ液14をろ液受槽41に収容することができるため、ろ液を受ける容器を準備する手間を省略でき簡便性がある。また、一体化の状態は、形状及び機能の異なるものであっても一体成型によって生産することができ、生産点数を減らし生産容易性を有する点で好適である。さらに、輸送時(市場流通時)に、ろ液受槽41と漏斗31がバラバラに分離せず利便性の点でも好ましい。
【0033】
図2に示すように、ろ液受槽41には凹部41aが形成され、漏斗31はろ液排出部32を2個備えている。漏斗31によるろ過で分離したろ液を、ろ液排出部32を通過した後凹部41aにて収容する。ろ液排出部32は1個でもよいが、複数個有すると、ろ液速度が向上する点で好適である。凹部41aの形状は、図2に示すような略半球状に限定されることなく、例えば、略円柱状、略多角柱状などであってもよい。ただし、凹部の底辺は、ろ液を収容しても安定するように平坦であることが好ましい。
【0034】
図2に示すように、漏斗31には設置部36を、設置部36にはフィルター固定手段37を備えている。すなわち、漏斗31に設置部36のような窪みを設けると、ろ過用のフィルターを容易に、かつ安定してセットできる点で望ましい。また、設置部36にフィルター固定手段37のような2か所のへこみを設けると、フィルターがより一層安定して固定される点で望ましい。
【0035】
また、図2に示すように、食品加工用ろ過具4は支持壁34を備えている。この支持壁34は、ろ液受槽の凹部41aと漏斗31の設置部36との周囲を囲むように配置されていることから、輸送時の外圧による破損を抑制できる点で好ましい。
【0036】
さらに、食品加工用ろ過具4は切り離し線21及び22を設けてもよい。図2には、切り離し線21はろ液受槽41と漏斗31を分けるために、切り離し線22はろ液受槽41から凹部41aを切り離すために設けられている。なお、切り離し線21及び22は、ミシン目加工により切り離しやすくしてもよい。
【0037】
次に、S2にて前記食品加工用ろ過具4を用いる場合のセッティング方法を、図3を用いて説明する。図3は、図2の食品加工用ろ過具のろ液受槽の凹部に漏斗を載置した状態を示す図である。
【0038】
まず、図2に示す食品加工用ろ過具4を、はさみなどを用いて切り離し線21で切断し、ろ液受槽41と漏斗31とに分ける。次に、切り離し線22で切断し、ろ液受槽41から凹部41aを切り離す。
【0039】
次に、図3に示すように、ろ液受槽の凹部41aの上方に漏斗31を載置する。図3では、ろ液受槽の凹部41aの内側に漏斗31の設置部36が載置されており、その様子を容易に視認することができる。これは、連結され一体化された状態の食品加工用ろ過具4をろ液受槽41と漏斗31とに分けたことで、漏斗31の設置部36の周囲に配置された支持壁34の一部に開口部35が設けられたことによる。また、この開口部35があることで、ろ液受槽の凹部41aの載置を容易にしている。
【0040】
さらに、図3に示すように、漏斗31が、設置部36を支持する支持壁34を独立して備えることから、ろ過の際、漏斗31に分離前の酸含有乳12の重さを受けとめる耐久性を与え、ろ液受槽41に漏斗31を直接乗せることから生じる不安定さを解消できる点で好適である。
【0041】
次に、食品加工用ろ過具の別の形態を図4に基づき説明する。図4は、本発明に係る食品加工用ろ過具の別の一例を示す斜視図である。5は食品加工用ろ過具、41はろ液受槽、31は漏斗である。図4に示すように、食品加工用ろ過具5は、ろ液受槽41と漏斗31が連結され一体化された状態で両者を備えている。
【0042】
図4に示すように、ろ液受槽41には略多角柱状の凹部41aと浅型凸部43が形成され、漏斗31はろ液排出部32を3個備えている。また、漏斗31は設置部36及びフィルター固定手段37を備えている。さらに、ろ液受槽の凹部41aと漏斗31の設置部36との周囲を囲むように、小さな凹凸のある支持壁34が配置されていることから、支持壁34の強度向上のために好適である。他に、食品加工用ろ過具5には、切り離し線21及び22が設けられている。
【0043】
S3に係る結着粉末2とは、そぼろ状の凝集物(ろ物)13をまとめて一つの塊状の結着凝集物を生成するための粉末である。結着粉末2に用いられる原料としては、例えば、α化でん粉、増粘剤、糖質甘味料(砂糖、ブドウ糖、糖アルコールなど)、デキストリン、食塩、炭酸カルシウム、酸味料、香料、着色料、乳製品、マッシュポテトパウダー、粉末餡、みじん粉、果汁、果汁粉末などが挙げられる。これらは、適宜選択して、単独もしくは複数を含有すればよい。
【0044】
好ましくは、α化でん粉及び/又は増粘剤を含有すると、結着性の点で好適である。α化でん粉と増粘剤は、それぞれ単独もしくは両方を組み合わせてもよい。
【0045】
α化でん粉としては、小麦でん粉、米でん粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯でん粉、甘藷でん粉、タピオカでん粉等のでん粉及びこれらの加工でん粉をα化したもの、などが挙げられる。なお、加工でん粉の加工方法は、公知の加工方法、例え
ば、エーテル化、リン酸架橋、アセチル化、エステル化、酸化等を単独又は複数組み合わせた方法が挙げられ、具体的には、α化でん粉、リン酸架橋α化でん粉、ヒドロキシプロピルリン酸架橋α化でん粉などが挙げられる。これらのα化でん粉は適宜単独もしくは複数を組み合わせて用いることができる。なお、マッシュポテトパウダー、粉末餡、みじん粉などのように、じゃがいも、小豆等の豆類、米などの穀類を蒸煮等して乾燥させた穀類粉末中のα化でん粉も同様に所望の結着性効果を得ることができる。
【0046】
増粘剤としては、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギナン、アラビアガム、ペクチン、プルラン、ゼラチン、アルギン酸、アルギン酸エステル、カードラン、コンニャクマンナン、ジェランガム、タマリンド種子ガム、寒天などが挙げられ、適宜単独もしくは複数を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガムは、結着凝集物の食感の点で好適に用いられる。
【0047】
結着粉末2中のα化でん粉及び/又は増粘剤の含有量は、結着粉末全体重量中、好ましくは8.5~100重量%とすると、凝集物の結着性の点で好適である。なお、前記含有量とは、α化でん粉又は増粘剤の一方を含有する場合はその含有する成分の含有量を、併用して含有する場合はα化澱粉及び増粘剤の合計量を意味する。
【0048】
なお、結着粉末2には、生成後の結着凝集物の風味、食感を、実際の食品を想起できるような類似食品とする原料を用いると、乳の加工をより楽しく、一層魅力のある乳加工方法にできる点で好適である。例えば、結着凝集物をアイスクリーム様食品とする場合は、脱脂粉乳、練乳、ホエー、チーズ等のような乳製品等が好ましい。一方、ポテトサラダ様食品とする場合は、マッシュポテトパウダーのようなポテト原料等が好ましく、こし餡、羊羹、団子のような和菓子様食品とする場合粉末餡やみじん粉のような和菓子原料等が好ましく、目的とする食品に合わせて適宜選択すればよい。
【0049】
S3に係る結着凝集物15は、好ましくは、含水率が、結着凝集物全体重量中10~66重量%であると食感、結着性の点で好適である。10重量%以上とすると余剰の結着粉末による結着凝集物の粉っぽさを抑制でき、66重量%以下とすると結着により凝集物がペースト状とならないからである。
【0050】
また、本発明の乳加工方法は、図1に示すように、好ましくは(S4)加熱工程を、さらに好ましくは(S5)風味調整成分含有ろ液生成工程を、より好ましくは(S6)風味調整成分含有結着凝集物生成工程を備える。
【0051】
<(S4)加熱工程>
(S4)加熱工程(以下、(S4)という。)とは、図1に示すように、乳11又は酸含有乳12を加熱する工程である。S4を備えると、早く蛋白凝集する点で好適である。加熱方法としては、電子レンジによる加熱、あるいは直火による加熱などが挙げられるが、簡便性、安全性の点で電子レンジによる加熱が好適である。例えば、電子レンジによる加熱条件としては、乳11、酸含有乳12のどちらの場合でも、500~600W30秒程度を例示できる。
【0052】
<(S5)風味調整成分含有ろ液生成工程>
(S5)風味調整成分含有ろ液生成工程(以下、(S5)という。)とは、図1に示すように、S2で得られたろ液14に、風味調整成分含有組成物3を添加し混合して風味調整成分含有ろ液16を生成する工程である。その結果、例えば、風味調整成分含有組成物3に炭酸ガス発生成分を用いると、ソーダ水様飲料のような風味調整成分含有ろ液16を生成することができる。
【0053】
<(S6)風味調整成分含有結着凝集物生成工程>
(S6)風味調整成分含有結着凝集物生成工程(以下、(S6)という。)とは、図1に示すように、S3で得られた結着凝集物15に、風味調整成分含有組成物3を添加し混合して風味調整成分含有結着凝集物17を生成する工程である。その結果、例えば、風味調整成分含有組成物3に炭酸ガス発生成分を用いると、炭酸ガス入りアイスクリーム様食品のような風味調整成分含有結着凝集物17を生成することができる。
【0054】
S5、S6に係る風味調整成分含有組成物3とは、ろ液14や結着凝集物15に混合して所望の風味や食感に変化させる成分である。該組成物3には、例えば、酸成分とアルカリ成分との併用による炭酸ガス発生成分、コンソメパウダー、ポテトパウダー、米麹、食塩、粉末餡、糖質甘味料(砂糖、ブドウ糖、糖アルコールなど)、デキストリン、βでん粉、香料、着色料などが用いられる。これらは、単独もしくは複数を適宜選択すればよい。
【0055】
さらに、本発明の乳加工食品生成方法は、図1に示すように、本発明の乳加工方法により得られた生成物(風味調整成分含有ろ液16と、結着凝集物15及び/又は風味調整成分含有結着凝集物17)同士を組み合わせて乳加工食品18を得ることである。
【0056】
例えば、次のような組み合わせを例示できる。ソーダ水様飲料(風味調整成分含有ろ液16(以下、(16)という。))とアイスクリーム様食品(結着凝集物15(以下、(15)という。))の組み合わせ。ソーダ水様飲料(16)と炭酸ガス入りアイスクリーム様食品(風味調整成分含有結着凝集物17(以下、(17)という。))の組み合わせ。ソーダ水様飲料(16)とアイスクリーム様食品(15)及び炭酸ガス入りアイスクリーム様食品(17)の組み合わせなどである。これらの組み合わせから、クリームソーダ様飲食品(乳加工食品18(以下、(18)という。))を得ることができる。このように、生成物を組み合わせて実際の食品を想起できるような乳加工食品にすれば、乳の加工をより楽しく、一層魅力のある乳加工方法にできる点で好適である。
【0057】
乳加工食品の他の事例としては、次のようなものが挙げられる。例えば、コンソメスープ様食品(16)とポテトサラダ様食品(15)による洋食セット(18)。ポタージュスープ様食品(16)とポテトサラダ様食品(15)による洋食セット(18)。甘酒様食品(16)と羊羹様食品(15)によるお茶菓子セット(18)。小豆飲料様食品(16)と団子様食品(15)によるおしるこセット(18)などである。
【0058】
次に、本発明の乳加工方法、好ましくは乳加工食品生成方法を、図5図5の(a)~(f))を用いて説明する。図5は、本発明の乳加工方法及び乳加工食品生成方法の一例を示す説明図である。なお、次項からの図5の説明では、乳11に「飲用乳の牛乳」、結着凝集物15に「アイスクリーム様食品」、風味調整成分含有組成物3の風味成分に酸成分とアルカリ成分との併用による「炭酸ガス発生成分」、風味調整成分含有ろ液16に「ソーダ水様飲料」、乳加工食品18に「クリームソーダ様飲食品」を用いて説明する。
【0059】
まず、図5(a)に示すように、マグカップなどの容器に注いだ乳11(飲用乳の牛乳)に酸含有組成物1を添加後、スプーン62などを用いてよく撹拌して混合する(S1)。添加混合後は酸含有乳12となる(図示せず)。S1では、酸含有乳12とすることで凝集物を生成する。なお、飲用乳の牛乳11又は酸含有乳12を加熱する工程(S4(図示せず))を備えると、早く蛋白凝集する点で好適である。
【0060】
次に、酸含有乳12をろ過して凝集物(ろ物)13とろ液14に分離する(S2)。図5(b)に示すように、ろ液14を収容するための容器の上にコーヒードリッパー7、そ
の内側にフィルター61をセットする。このフィルター61内に酸含有乳12を投入後静置すると、フィルター61内にそぼろ状の凝集物(ろ物)13が集積し、ろ液14は下方の容器に落下し、凝集物(ろ物)13とろ液14とに分離する。なお、S2では、図5(b)に示すコーヒードリッパー7及びろ液14を収容するための容器の代わりに、図2に示す食品加工用ろ過具4を、図3のようにセッティングして使用してもよい。
【0061】
次に、ろ過後の凝集物(ろ物)13に結着粉末2を混合して結着凝集物15(アイスクリーム様食品)を生成する(S3)。図5(c)に示すように、フィルター61内の凝集物(ろ物)13を、スプーン62などを用いて容器63に移した後、凝集物(ろ物)13に結着粉末2を添加する。図5(d)に示すように、スプーン62などを用いてよく撹拌して混合しそぼろ状の凝集物13を一つの塊状にまとめ、容器63内に結着凝集物15(アイスクリーム様食品)を生成する。なお、容器63としては、マグカップ、湯飲み、グラス、紙コップ、プラスチックカップ等、混合できる容器であれば、特に限定されない。
【0062】
次いで、好ましくは、図5(b)にて分離したろ液14に風味調整成分含有組成物3を添加して風味調整成分含有ろ液16を生成する(S5)。図5(e)に示すように、ろ液14に風味調整成分含有組成物3(炭酸ガス発生成分含有組成物)を添加し混合する。添加混合後には風味調整成分含有ろ液16(発泡性のあるソーダ水様飲料)が生成される(図示せず)。
【0063】
次いで、さらに好ましくは、図5(d)にて生成した結着凝集物15に風味調整成分含有組成物3を添加して風味調整成分含有結着凝集物17を生成する(S6(図示せず))。すなわち、結着凝集物15に風味調整成分含有組成物3(炭酸ガス発生成分含有組成物)を添加し混合して風味調整成分含有結着凝集物17(炭酸ガス入りアイスクリーム様食品)を生成する(図示せず)。
【0064】
より好ましくは、例えば、図5(d)にて生成した結着凝集物15と、図5(e)にて生成した風味成分含有ろ液16とを組み合わせて、乳加工食品18を得る。例えば、図5(f)に示すように、グラスに、風味成分含有ろ液16(ソーダ水様飲料)を注ぎ、その上に結着凝集物15(アイスクリーム様食品)を添えると、ソーダ水様飲料16中に炭酸ガス70が発泡する様子が涼しげな、クリームソーダ様飲食品18を生成する。
【0065】
以上のことから、本発明は、化学実験を楽しく実体験するように乳を加工することができる。すなわち、乳の化学反応を、乳加工として実験プロセス化しているため、本発明に係る方法で乳を加工すると、段階的な加工工程、それに伴う乳の形態変化によって、乳化学反応を、楽しく、体験及び観察できる。さらに、従来の乳加工方法とは異なり、乳を2つの成分に分離した後にその両者を組み合わせるという新しく斬新な乳加工食品生成方法である。
【実施例0066】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0067】
≪酸含有組成物、結着粉末、及び風味調整成分含有組成物の調製≫
表1に示す組成の酸含有組成物(A1~A2)、表2に示す組成の結着粉末(B1~B8)、表3に示す組成の風味調整成分組成物(C1~C4)を調製した。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
≪結着凝集物の生成≫
<実施例1>
表1の酸含有組成物A1及び表2の結着粉末B1を用いて、図1に示すように、(S1)酸混合工程、(S2)分離工程、(S3)結着工程を経て結着凝集物15(アイスクリーム様食品)を生成した。なお、乳11には飲用乳の牛乳を使用した。また、ろ過には、図2の食品加工用ろ過具4を、図3のようにセッティングして使用した。
【0072】
まず、乳11(50g)に酸含有組成物1(A1、3.0g)を混合して酸含有乳12とした(S1)。次に、この酸含有乳12を、図2の食品加工用ろ過具4を用いてろ過により凝集物(ろ物)13とろ液14とに分離した(S2)。次に、ろ過後の凝集物(ろ物)13に、結着粉末2(B1、6.2g)を混合して結着凝集物15(アイスクリーム様食品)を生成した(S3)。なお、一連の生成作業時の室温は20℃であった。
【0073】
<実施例2>
さらに(S4)加熱工程を追加する以外は、実施例1と同様にして結着凝集物15(アイスクリーム様食品)を生成した。
【0074】
まず、乳11(50g)に酸含有組成物1(A1、3.0g)を混合して酸含有乳12とした(S1)。次に、この酸含有乳12を、電子レンジで600W30秒間加熱した(
S4)。次に、加熱後の酸含有乳12を、食品加工用ろ過具4を用いてろ過により凝集物(ろ物)13とろ液14とに分離した(S2)。次に、ろ過後の凝集物(ろ物)13に、結着粉末2(B1、6.2g)を混合して結着凝集物15(アイスクリーム様食品)を生成した(S3)。なお、一連の生成作業時の室温は20℃であった。
【0075】
用いた酸含有組成物及び結着粉末、その混合量、酸含有乳のpH、分離時の凝集性評価及び分離時間、結着凝集物の含水率、結着性評価について、表4に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
実施例1、2はいずれも牛乳を加工して結着凝集物(アイスクリーム様食品)を生成することができた。実施例2は凝集性及び結着性はいずれも良好であった。一方、(S4)加熱工程のない実施例1は、酸含有乳のろ過を開始してから凝集物(ろ物)とろ液の分離に時間を要したが凝集性はあり、凝集物は若干緩く結着した。
【0078】
≪結着凝集物の生成≫
<実施例3~5>
表4記載の酸含有組成物及び結着粉末を用いる以外は、実施例2と同様にして結着凝集物(アイスクリーム様食品)を生成した。
<実施例6>
飲用乳の牛乳の代わりに豆乳を使用し、表4記載の結着粉末を用いる以外は、実施例2と同様にして結着凝集物(アイスクリーム様食品)を生成した。
<実施例7>
表4記載の結着粉末を用いる以外は、実施例2と同様にして結着凝集物(こし餡様食品)を生成した。
【0079】
用いた酸含有組成物及び結着粉末、その混合量、酸含有乳のpH、分離時の凝集性評価及び分離時間、結着凝集物の含水率、結着性評価について、表4に示す。
【0080】
実施例3~6はいずれも、牛乳又は豆乳を加工して結着凝集物(アイスクリーム様食品)を生成することができた。また、実施例7は牛乳を加工して結着凝集物(こし餡様食品)を生成することができた。
【0081】
≪結着凝集物の生成≫
<実施例8~13>
結着粉末とその混合量を表5記載の通りにする以外は、実施例2と同様にして結着凝集物(アイスクリーム様食品)を生成した。
【0082】
用いた酸含有組成物及び結着粉末、その混合量、酸含有乳のpH、分離時の凝集性評価及び分離時間、結着凝集物の含水率、結着性評価について、表5に示す。
【0083】
【表5】
【0084】
実施例8~13は結着性に違いはあるものの、すべて牛乳を加工して結着凝集物(アイスクリーム様食品)を生成することができた。
【0085】
≪結着凝集物及び風味調整成分含有ろ液の生成≫
<実施例14>
実施例2と同様にして、図1に示すように、(S1)酸混合工程、(S2)分離工程、(S3)結着工程を経て、結着凝集物15(アイスクリーム様食品)を生成した。
【0086】
さらに、表6記載の風味調整成分含有組成物C1を用いて、図1に示すように、(S5)風味調整成分含有ろ液生成工程を経て、風味調整成分含有ろ液16(ソーダ水飲料)を生成した。すなわち、S2にて分離したろ液14に、風味調整成分含有組成物3(C1、1.71g)を添加し混合して風味調整成分含有ろ液16(ソーダ水飲料)を生成した。
【0087】
【表6】
【0088】
≪乳加工食品の生成≫
図1に示すように、実施例14で生成した風味調整成分含有ろ液16と結着凝集物15とを組み合わせ、乳加工食品18を得た。すなわち、前記風味調整成分含有ろ液16(ソーダ水飲料)をグラスに注ぎ、その上に前記結着凝集物15(アイスクリーム様食品)を添えて、乳加工食品18(クリームソーダ様飲食品)とした。
【0089】
≪結着凝集物及び風味調整成分含有ろ液の生成≫
≪乳加工食品の生成≫
<実施例15~17>
実施例14と同様にして、結着凝集物及び風味調整成分含有ろ液を生成した。なお、実施例15は前者がポテトサラダ様食品、後者がポタージュスープ様食品となり、この二つを並べて洋食セット(乳加工食品18)とした。また実施例16は前者が羊羹様食品、後者が甘酒様食品となり、この二つを並べてお茶菓子セット(乳加工食品18)とした。さらに、実施例17は前者が団子様食品、後者が小豆飲料様食品となり、この二つを一つの容器に入れておしるこセット(乳加工食品18)とした。
【0090】
実施例14~17で得られた乳加工食品は、いずれも、結着凝集物と風味調整成分含有ろ液とが、相性のよい調和のとれた食品同士であった。また、生成時は最初の牛乳とは全く違うものに変化していく様子が楽しく、分離して生成した異なる食品をもう一度合わせて乳加工食品とすることは意外性を感じるものであった。
【0091】
≪結着凝集物、風味調整成分含有ろ液、及び風味調整成分含有結着凝集物の生成≫
<実施例18>
実施例14と同じ酸含有組成物A1(3.0g)、結着粉末B1(6.2g)及び風味調整成分含有組成物C1(1.71g)を用いて、実施例14と同様にして、結着凝集物15(アイスクリーム様食品)及び風味調整成分含有ろ液16(ソーダ水飲料)を生成した。なお、得られた結着凝集物15は2等分にした。
【0092】
さらに、風味調整成分含有組成物C1(1.71g)を用いて、図1に示すように、(S6)風味調整成分含有結着凝集物生成工程を経て、風味調整成分含有結着凝集物17を生成した。すなわち、2等分したうちの一方の結着凝集物15(アイスクリーム様食品)に、風味調整成分含有組成物3(C1、炭酸ガス発生成分含有組成物)を添加し混合して風味調整成分含有結着凝集物17(炭酸ガス入りアイスクリーム様食品)を生成した。
【0093】
≪乳加工食品の生成≫
図1に示すように、風味調整成分含有ろ液16と結着凝集物15及び風味調整成分含有結着凝集物17とを組み合わせ、乳加工食品18を得た。すなわち、前記風味調整成分含有ろ液16(ソーダ水飲料)をグラスに注ぎ、その上に前記結着凝集物15(アイスクリーム様食品)及び風味調整成分含有結着凝集物17(炭酸ガス入りアイスクリーム様食品)を添えて、乳加工食品18(クリームソーダ様飲食品)とした。
【0094】
実施例18で得られた乳加工食品は、結着凝集物及び風味調整成分含有結着凝集物と、風味調整成分含有ろ液とが、相性のよい調和のとれた食品同士であった。
【0095】
<実施例19>
実施例14と同じ組成の酸含有組成物、結着粉末、風味調整成分含有組成物、さらに、図2の食品加工用ろ過具5、及び樹脂製のスプーン、フィルター、及び原理説明、操作方法などを記した手順書を準備し、これらすべてを4~9歳の男女30名に提供し、結着凝集物(アイスクリーム様食品)、風味調整成分含有ろ液(ソーダ水様飲料)、乳加工食品(クリームソーダ様飲食品)を生成、喫食させた後、アンケート調査を実施した。アンケートは、生成中の主要な操作などについて質問し「とても楽しかった」「ちょっと楽しかった」「どちらでもない」「あまり楽しくなかった」「楽しくなかった」のうち該当するものを選択させた。その結果を図6に示す。
【0096】
その結果、生成操作に関してはアンケート回答者の83%以上が楽しい(「とても楽し
かった」、「ちょっと楽しかった」の合計)と感じていた。
【0097】
また、このほかに、提供した実施例19のようなセット製品の購入意向について質問したところ、75%以上が購入したいと回答しており、その理由として、「実験をしているようだった」、「ろ過が楽しかった」、「手順書が楽しかった」などの回答が寄せられた。したがって、本発明は、化学実験を実体験するように乳を加工することができ、乳の化学反応を、楽しく、体験及び観察できるといえる。
【符号の説明】
【0098】
1 酸含有組成物
2 結着粉末
3 風味調整成分含有組成物
4 食品加工用ろ過具
5 食品加工用ろ過具
7 コーヒードリッパー
11 乳
12 酸含有乳
13 凝集物(ろ物)
14 ろ液
15 結着凝集物
16 風味調整成分含有ろ液
17 風味調整成分含有結着凝集物
18 乳加工食品
21 切り離し線
22 切り離し線
31 漏斗
32 ろ液排出部
34 支持壁
35 開口部
36 設置部
37 フィルター固定手段
41 ろ液受槽
41a ろ液受槽の凹部
43 浅型凸部
61 フィルター
62 スプーン
63 容器
70 炭酸ガス
S1 酸混合工程
S2 分離工程
S3 結着工程
S4 加熱工程
S5 風味調整成分含有ろ液生成工程
S6 風味調整成分含有結着凝集物生成工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-02-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正の内容】
図6