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特開2023-112629タンク制御支援システム及びタンク制御支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112629
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】タンク制御支援システム及びタンク制御支援方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/02 20060101AFI20230804BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20230804BHJP
【FI】
F17C13/02 302
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014559
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100217364
【弁理士】
【氏名又は名称】田端 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100216770
【弁理士】
【氏名又は名称】三品 明生
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 雅嗣
(72)【発明者】
【氏名】川▲瀬▼ 充弘
【テーマコード(参考)】
3E172
5L049
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172AB05
3E172BA06
3E172BB04
3E172BB12
3E172BB17
3E172DA51
3E172EA03
3E172EA12
3E172EA16
3E172EA22
3E172EA26
3E172EA50
3E172EB19
3E172KA03
3E172KA21
3E172KA22
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】タンクの制御を適切に行うことを可能にするタンク制御支援システム及びタンク制御支援方法を提供する。
【解決手段】タンク制御支援システムSは、記憶部1と状態予測部3を備える。記憶部1は、液化燃料を貯蔵する複数のタンクの全体に対する液化燃料の出入に関する情報及び複数のタンクのそれぞれの状態に関する情報が含まれる入力情報が定期的または不定期的に入力され、当該入力情報を記憶する。状態予測部3は、第1時点において記憶部1に記憶されている入力情報に基づいて導出された、少なくとも1つのタンクにおける液化燃料の出入の計画である運用計画と、第1時点よりも後の第2時点において記憶部1に記憶されている入力情報とに基づいて、当該タンクの第2時点以降の状態を予測する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化燃料を貯蔵する複数のタンクの全体に対する前記液化燃料の出入に関する情報及び前記複数のタンクのそれぞれの状態に関する情報が含まれる入力情報が定期的または不定期的に入力され、当該入力情報を記憶する記憶部と、
第1時点において前記記憶部に記憶されている前記入力情報に基づいて導出された、少なくとも1つの前記タンクにおける前記液化燃料の出入の計画である運用計画と、前記第1時点よりも後の第2時点において前記記憶部に記憶されている前記入力情報とに基づいて、当該タンクの前記第2時点以降の状態を予測する状態予測部と、
を備える、タンク制御支援システム。
【請求項2】
前記状態予測部は、前記運用計画の導出に要する演算時間よりも短い演算時間で、前記タンクの前記第2時点以降における状態を予測する、請求項1に記載のタンク制御支援システム。
【請求項3】
前記状態予測部は、所与の条件式に対して、当該条件式の変数に前記入力情報を適用することによって前記タンクの前記第2時点以降における状態を予測する、請求項2に記載のタンク制御支援システム。
【請求項4】
前記状態予測部は、前記タンク内の気圧から前記タンク外の気圧を減じたタンク圧力を予測する、請求項1~3のいずれか1項に記載のタンク制御支援システム。
【請求項5】
前記状態予測部は、予測した前記タンクの状態を表す第1出力情報を出力する、請求項1~4のいずれか1項に記載のタンク制御支援システム。
【請求項6】
前記状態予測部は、予測した前記タンクが貯蔵する前記液化燃料の状態が、所定の制約に反する場合、前記タンクのオペレーターに対して警告するための第2出力情報を出力する、請求項1~5のいずれか1項に記載のタンク制御支援システム。
【請求項7】
前記状態予測部は、予測した前記タンクが貯蔵する前記液化燃料の状態が、所定の制約に反する場合、前記タンクが貯蔵する前記液化燃料の状態を制御する機器に対して、当該制約に違反しないように当該機器を制御するための第3出力情報を出力する、請求項1~6のいずれか1項に記載のタンク制御支援システム。
【請求項8】
液化燃料を貯蔵する複数のタンクの全体に対する前記液化燃料の出入に関する情報及び前記複数のタンクのそれぞれの状態に関する情報が含まれる入力情報を取得する第1ステップと、
前記第1ステップで取得した前記入力情報に基づいて少なくとも1つの前記タンクにおける前記液化燃料の出入の計画である運用計画を導出する第2ステップと、
前記第2ステップで導出された運用計画と、前記第1ステップよりも時間的に後に得られた前記入力情報とに基づいて、前記タンクの将来の状態を予測する第3ステップと、
を備える、タンク制御支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化燃料(液化天然ガスに代表される、常温常圧下では気体であるが液体状態で貯蔵される燃料。以下同じ。)を貯蔵するタンクの制御を支援するタンク制御支援システム及びタンク制御支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化燃料を貯蔵するタンクは、安全性の確保などのために、貯蔵する液化燃料の液面の高さやタンクにかかる圧力(タンク内の気圧からタンク外の気圧(大気圧)を減じた値、以下「タンク圧力」という。)などに制約がある。例えば、タンクでは、外部からの熱の流入によって液化燃料が蒸発してBOG(Boil Off Gas:ボイルオフガス)が発生するが、BOGが多量に発生すると、タンク圧力が増大して、タンクの安全弁が開いて可燃性のガスが大気中に放出されたり、場合によってはタンクが破損したりする危険性が高まる。反対に、BOGを必要以上に排気し過ぎると、タンク圧力が負圧になりタンクの真空安全弁が開いてしまったり、場合によってはタンクが破損したりする危険性が高まる。そこで、このようなタンクでは、タンク圧力が上下の管理値の範囲内に収まるように、圧縮機を適度に稼働させてタンク内のBOGを圧縮して排気するなどの処理が行われる。
【0003】
タンク圧力は、外部から供給される液化燃料による入熱により発生するBOGのほか、大気圧の変化などによっても変動するが、上記の管理値をタンクが危険な状態になる限界値と比べてある程度余裕のある値に設定すれば、仮にタンク圧力が管理値を超えることがあったとしても、限界値までは超えないようにすることができる。ただし、限界値に対する管理値のマージンを大きくするほど、タンクの安全性を確保することは容易になるが、タンク圧力が小さくなるまたはタンク圧力の変動幅が大きくなることでBOGの発生量が大きくなるため、圧縮機によるエネルギーの消費量が大きくなってしまう。
【0004】
そこで、特許文献1では、大気圧などのタンク圧力を変動させる事象の予測結果に基づいて圧縮機の稼働計画を策定することで、タンクの安全性を確保するとともに圧縮機の稼働によるエネルギーの消費量を抑制したタンク制御支援システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-175488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1で提案されているシステムは、ある時点における圧縮機の適切な稼働計画を策定することはできるが、策定後に前提とした状況が変動した場合、稼働計画が不適切なものになる場合がある。例えば、2日後の11時にタンカーからの液化燃料の受入が開始されることを前提として、2日後の11時から圧縮機を稼働させるという内容で稼働計画を策定したが、稼働計画を策定した後に受入開始の時間が早まった場合、受入によってタンク圧力が想定よりも早く上昇して、タンク圧力が管理値さらには限界値よりも大きくなる可能性が生じる。このような事態を想定すると、特許文献1で提案されているタンク制御支援システムであっても、限界値に対する管理値のマージンをある程度の大きさとして確保せざるを得ず、圧縮機の稼働によるエネルギーの消費量を十分に抑制することは困難になる。また、このような問題は、タンク圧力に限られず、タンクが貯蔵する液化燃料の液面の高さや組成など様々な状態についても生じ得る。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、タンクの制御を適切に行うことを可能にするタンク制御支援システム及びタンク制御支援方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、以下に開示するタンク制御支援システムは、液化燃料を貯蔵する複数のタンクの全体に対する前記液化燃料の出入に関する情報及び前記複数のタンクのそれぞれの状態に関する情報が含まれる入力情報が定期的または不定期的に入力され、当該入力情報を記憶する記憶部と、第1時点において前記記憶部に記憶されている前記入力情報に基づいて導出された、少なくとも1つの前記タンクにおける前記液化燃料の出入の計画である運用計画と、前記第1時点よりも後の第2時点において前記記憶部に記憶されている前記入力情報とに基づいて、当該タンクの前記第2時点以降の状態を予測する状態予測部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記のタンク制御支援システムによれば、状態予測部が、運用計画が導出された時点よりも後の時点において記憶部に記憶されている入力情報に基づいて、タンクの将来の状態を予測する。そのため、運用計画の導出後に入力情報が変更されたとしても、当該変更による影響を反映したタンクの将来の状態の予測結果が得られるため、当該予測結果に基づいてタンクの制御を適切に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、タンクを含む貯蔵施設の構成の一例を簡略化して示した模式図である。
図2図2は、タンクの概略構成の一例について示す模式的な断面図である。
図3図3は、本システムの概略構成を示すブロック図である。
図4図4は、タンク圧力の変化を示すグラフである。
図5図5は、タンク圧力の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。また、以下の説明において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、実施形態および変形例に記載された各構成は、適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。また、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、構成の一部が省略されたりしている。
【0012】
最初に、本発明の実施形態に係るタンク制御支援システム(以下、「本システム」ともいう。)の対象であるタンク等の構成のほか、当該タンク等に対して行われる各種操作の内容ついて説明する。なお、以下では、液化天然ガス(LNG)を貯蔵するタンクを例示して説明するが、本システムは、LNG以外の液化燃料を貯蔵するタンクにも適用可能である。
【0013】
図1は、タンクを含む貯蔵施設の構成の一例を簡略化して示した模式図である。図1に示すように、貯蔵施設には複数のタンク10が設置されており、LNGタンカー等の輸送手段11によって、産出地や他の貯蔵施設等から輸送されてきたLNGが、任意のタンク10に供給される。この操作を「受入」という。また、図1に示すように、任意のタンク10に貯蔵されているLNGの一部が、移送ライン12を介して別のタンク10に供給される。この操作を「移送」という。また、図1に示すように、任意のタンク10に貯蔵されているLNGが、当該タンク10に対応付けられた払出ライン14を介して、都市ガスや発電などの需要のために供給される。この操作を「払出」という。
【0014】
また、図1に示すように、タンク10は、移送を行うための移送ポンプ13と、払出を行うための払出ポンプ15を備えている。これらのポンプは、1つが故障等して使用不能になっても移送または払出を行うことができるように、1つのタンク10に対して複数(例えば2つずつ)備えられることがある。また、LNGを通流させる配管類の内部を極低温状態に維持する目的で、移送ライン12や払出ライン14にLNGを送出してタンク10に回収する「クーリング」も行われ得る。なお、図1では、貯蔵施設の構成を簡略化して図示しており、実際の貯蔵施設は図1に示すよりも複雑になり得る。例えば、図1では、1つのタンク10及び払出ポンプ15が1つの払出ライン14に対してのみ払出可能なように図示しているが、複数の払出ラインに対して払出可能であってもよい。また、例えば、図1では、クーリングを行うためのライン及び設備や、タンク10内においてLNGが気化して発生したBOGを排気して圧縮等するためのライン及び設備などの図示を省略している。
【0015】
図2は、タンクの概略構成の一例について示す模式的な断面図である。図2に示すように、タンク10は、内部にLNG20を貯蔵する。このタンク10の内部において、LNG20の液面上には、LNG20が蒸発して発生したメタン等から成るBOG21が充満している。
【0016】
タンク10には、下部供給用配管101と、上部供給用配管102と、送出用配管103と、ポンプ104と、排気用配管105が設けられている。下部供給用配管101は、タンク10の底面側からタンク10内に供給されるLNG20が通過する。また、上部供給用配管102は、タンク10の天井側からタンク10内に供給されるLNG20が通過する。また、送出用配管103は、タンク10の内部から外部に送出されるLNG20が通過する。また、ポンプ104は、タンク10の内部かつ送出用配管103の先端に設けられ、送出用配管103にLNG20を送り込む。また、排気用配管105は、タンク10の内部から外部へ排気される気体(主にBOG21)が通過する。
【0017】
圧縮機30は、タンク10の外部かつ排気用配管105の先端に設けられ、排気用配管105を介してタンク10内の気体を強制的に排気する。この操作を「排気」という。なお、圧縮機30によって排気される気体は、例えば、燃料として貯蔵施設内で使用されてもよいし、貯蔵施設の外部に送出されるLNGに混入されてもよい。
【0018】
次に、本システムについて図面を参照して説明する。図3は、本発明の実施形態に係るタンク制御支援システムの構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、本システムSは、記憶部1と、運用計画導出部2と、状態予測部3を備える。
【0019】
記憶部1は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶装置や、RAM(Random Access Memory)などの揮発性の記憶装置や、これらの組み合わせによって構成される。運用計画導出部2及び状態予測部3は、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置で構成される。なお、記憶部1の一部または全部が、運用計画導出部2及び状態予測部3から離れた場所にあるサーバ等の一部として構成され、インターネット等のネットワークを介して運用計画導出部2及び状態予測部3と情報のやり取りが行われてもよい。同様に、運用計画導出部2及び状態予測部3は、別々の演算処理装置で構成されていてもよいし、同一の演算処理装置で構成されていてもよい。また、記憶部1、運用計画導出部2及び状態予測部3の全部または一部は、一体化された電子計算機の一部として構成されてもよい。
【0020】
記憶部1は、入力情報及び制約情報を記憶するとともに、運用計画導出部2及び状態予測部3の演算途中及び演算結果のデータを記憶する。入力情報には、複数のタンク10の全体に対するLNGの出入に関する情報、複数のタンク10のそれぞれの状態に関する情報が含まれる。例えば、入力情報には、輸送手段11が貯蔵施設に来訪する予定の日時や、輸送手段11が供給する予定のLNGの熱量及び供給量、それぞれのタンク10が現在貯蔵しているLNGの熱量、貯蔵量または液面の高さ、タンク圧力、払出ライン14毎の予定需要、大気圧等の気象予報などが含まれる。
【0021】
入力情報は、時間の経過とともに変動する情報であり、定期的または不定期的に記憶部1に入力され、記憶部1は入力される新たな入力情報を記憶する。例えば、記憶部1には、輸送手段11の来訪予定が変更されるなど何らかの変更がある度に当該変更を含む新たな入力情報が入力されたり、タンク10に設けられた各種センサ(タンク圧力を測定するセンサや、LNGの液面の高さを測定するセンサなど)によって所定の周期で検出される検出値が所定の時間間隔で新たな入力情報として入力されたりする。記憶部1は、入力情報に変更があった場合、新たに入力された入力情報で従前に記憶していた入力情報を上書きするが、従前に記憶していた入力情報を履歴の記録やバックアップ等のために別途記憶しておいてもよい。
【0022】
また、記憶部1は、タンク10に関する制約である制約情報も記憶している。制約情報には、複数のタンク10のそれぞれにおけるLNGの出入及び貯蔵の制約に関する情報が含まれる。例えば、制約情報には、タンク10の断面積、タンク10が貯蔵可能な液面の高さの上限及び下限、タンク圧力の上限及び下限、タンク10が貯蔵するLNGの組成または密度の上限及び下限、タンク10が払出可能な払出ライン14、ポンプや圧縮機30などの各種機器の能力などが含まれる。制約情報は、原則として時間の経過とともに変動するような情報ではなく、タンク10の構成やタンク10におけるLNGの貯蔵方針等が変更された場合に更新される。記憶部1は、制約情報に変更があった場合、新たに入力された制約情報で従前に記憶していた制約情報を上書きするが、従前に記憶していた制約情報をバックアップ等のために別途記憶しておいてもよい。
【0023】
運用計画導出部2は、記憶部1に記憶されている入力情報と制約情報に基づいて、将来の所定の計画対象期間(例えば、30日間)について、複数のタンク10のそれぞれにおけるLNGの出入の計画である運用計画を導出する。運用計画導出部2は、制約情報によって与えられる所定の制約条件に違反しない範囲で、入力情報に基づいてタンク10の適切な運用計画(受入、払出、移送、クーリング、排気などの各種操作)が策定される。運用計画導出部2により策定された運用計画は、タンク10のオペレーターに提供するために運用計画情報として外部に出力されるとともに、記憶部1にも記憶される。なお、運用計画導出部2による運用計画の導出方法として、どのような方法を採用してもよい。例えば、特開2013-092162号公報で提案されているような導出方法を採用してもよいし、特開2015-175488号公報で提案されているような導出方法を採用してもよい。
【0024】
運用計画導出部2による運用計画の導出は、例えば数理計画法による求解によって行われる。具体的に例えば、運用計画導出部2は、タンク10に関する各種操作の内容(操作の有無、操作によってもたらされる変位量など)を変数として、制約情報によって与えられる当該変数に対する制約条件に違反しない範囲内で、当該変数によって与えられる目的関数が最小または最大などの所定の条件を満たす場合の変数を求めることによって運用計画を策定する。このように、運用計画導出部2による運用計画の導出は、無数に存在する変数を求解するという高度な演算処理が必要であり、高性能な演算処理装置を用いたとしてもその演算処理には長時間を要する。そのため、運用計画導出部2は、新たな入力情報が記憶部1に入力されるたびに運用計画を導出することはせずに、計画対象期間の開始から所定の期間(例えば、数日)だけ前に運用計画を導出した後は、同一の計画対象期間について運用計画を導出しない。なお、運用計画導出部2は、例えば3日先から33日先までの30日間を計画対象期間とする運用計画を毎日導出するなど、前回に導出した計画対象期間と部分的に重複する(この例では29日間が重複する)計画対象期間の運用計画を導出してもよい。
【0025】
状態予測部3は、記憶部1に記憶されている運用計画と入力情報に基づいて、タンク10の将来の状態を予測し、その予測結果または当該予測結果に基づいた情報を出力情報として出力する。具体的に、状態予測部3は、記憶部1に記憶されている入力情報が示すタンク10の状態や周囲の状況などを前提として、記憶部1に記憶されている運用計画に従ってタンク10に対する操作を行った場合におけるタンク10の将来の状態を予測する。なお、状態予測部3によるタンク10の将来の状態の予測方法として、どのような方法を採用してもよい。例えば、AspenTech社が提供するAspen HYSYS、ハネウェル社が提供するUniSim Design、AVEVA社が提供するPRO/IIやDYNSIM、株式会社オメガシミュレーションが提供するOmegalandなど、市販のソフトウェア(プロセスシミュレーター)を用いて予測を行ってもよい。
【0026】
状態予測部3によるタンク10の状態の予測は、例えばPR式(Peng-Robinson式)などの所定の物性推算式、所定のプロセスモデルなどの所与の条件式に対して、当該条件式の変数に入力情報を適用することによって行われる。また、後述するように、状態予測部3がタンク10内の状態を予測する目的及び効果は、タンク10内の状態が所定の制約に違反するか否かの確認だけであるため、予測の範囲も1日~数日程度と短くてよい。そのため、状態予測部3は、運用計画導出部2よりも大幅に短時間で演算を完了させることが可能であり、運用計画導出部2よりも短い時間間隔(例えば、新たな入力情報が記憶部1に入力される都度)で、タンク10の将来の状態を予測し、出力情報を生成する。
【0027】
ところで、輸送手段11の運行予定、受入をするLNGの密度または熱量、各種操作によるBOGの発生量などは、運用計画の導出時点において確定することが困難であり、予定と実際とが異なることを完全に避けることは不可能である。一方、これらの予定と実際とが乖離し得ることを容認して、運用計画を短時間で繰り返し導出するということも考えられるが、そのためには運用計画導出部2の演算方法を相当程度まで簡略化する必要があり、導出される運用計画の信頼性がなくなってしまうため、現実的ではない。
【0028】
そこで、本システムSでは、演算の負担が比較的小さい状態予測部3により、運用計画の導出後の入力情報に基づいてタンク10の将来の状態を予測することにより、入力情報の変更がタンク10の将来の状態におよぼす影響を正確に把握にするという現実的かつ実用的な方法を実現する。
【0029】
次に、状態予測部3が上記のようにしてタンク10の将来の状態を予測して出力情報を出力することによる効果等について、タンク圧力を制御する場合を例に挙げて説明する。
【0030】
図4及び図5のそれぞれは、タンク圧力の変化を示すグラフであり、横軸は時間、縦軸はタンク1圧力である。なお、図4及び図5ともに、(A)は状態予測部3が予測したタンク圧力、(B)は(A)よりも後の時間において状態予測部3が予測したタンク圧力、(C)は(B)の予測結果に基づいてオペレーターが圧縮機30の稼働開始時間を修正した場合のタンク圧力を示している。また、以下では、状態予測部3が、予測結果をそのまま出力情報として出力する場合を例示する。
【0031】
図4に示す例は、受入等のBOGの発生量が増大する事象が、当初予定していた時間T1よりも早い時間T10から開始される場合を示している。この場合、運用計画導出部2は、タンク圧力が上限の管理値P1及び下限の管理値P2の範囲内になるように圧縮機30を稼働させる運用計画を策定し、状態予測部3は図4(A)に示す予測結果を出力情報として出力する。
【0032】
図4(A)の予測結果が得られた後、BOGの発生量が増大する事象の開始時間が時間T10に変更され、その旨を示す入力情報が記憶部1に記憶される。しかし、運用計画導出部2は、記憶部1に記憶された新たな入力情報に基づいた運用計画を策定しないため、圧縮機30が稼働するタイミングはT2のまま変わらない。一方、状態予測部3は、記憶部1に記憶された新たな入力情報に基づいてタンク圧力を予測するため、BOGの発生量が増大する事象の開始時間が時間T10に変更されたことを前提としてタンク圧力を予測し、図4(B)に示すように時間T2においてタンク圧力が上限の管理値P1よりも大きくなる予測結果を出力情報として出力する。
【0033】
図4(B)の予測結果を見たオペレーターは、時間T2においてタンク圧力が上限の管理値P1よりも大きくなることを認識することができるため、圧縮機30の稼働開始時間を、時間T2よりも早い時間T20に変更する。これにより、図4(C)に示すように、タンク圧力が上限の管理値P1よりも大きくなることが防止される。
【0034】
図5に示す例は、図4に示した例とは反対に、受入等のBOGの発生量が増大する事象が、当初予定していた時間T1よりも遅い時間T11から開始される場合を示している。この場合も、まず、運用計画導出部2は、タンク圧力が、上限の管理値P1及び下限の管理値P2の範囲内になるように圧縮機30を稼働させる運用計画を策定し、状態予測部3は図5(A)に示す予測結果を出力情報として出力する。
【0035】
図5(A)の予測結果が得られた後、BOGの発生量が増大する事象の開始時間が時間T11に変更され、その旨を示す入力情報が記憶部1に記憶される。しかし、運用計画導出部2は、記憶部1に記憶された新たな入力情報に基づいた運用計画を策定しないため、圧縮機30が稼働するタイミングはT2のまま変わらない。一方、状態予測部3は、記憶部1に記憶された新たな入力情報に基づいてタンク圧力を予測するため、BOGの発生量が増大する事象の開始時間が時間T11に変更されたことを前提としてタンク圧力を予測し、図5(B)に示すように時間T2よりも後の時間T12においてタンク圧力が下限の管理値P2よりも小さくなる予測結果を出力情報として出力する。
【0036】
図5(B)の予測結果を見たオペレーターは、時間T12においてタンク圧力が下限の管理値P2よりも小さくなることを認識し、圧縮機30の稼働開始時間を、時間T2よりも遅い時間T21に変更する。これにより、図5(C)に示すように、タンク圧力が下限の管理値P2よりも小さくなることが防止される。
【0037】
以上のように、本システムSでは、状態予測部3が、運用計画が導出された時点よりも後の時点において記憶部1に記憶されている入力情報に基づいて、タンク10の将来の状態を予測する。そのため、運用計画の導出後に入力情報が変更されたとしても、当該変更による影響を反映したタンク10の将来の状態の予測結果が得られるため、当該予測結果に基づいてタンク10の制御を適切に行うことが可能になる。
【0038】
また、本システムSによれば、状態予測部3によって、変更後の入力情報に基づいてタンク10の将来の状態が正確に予測されるとともに、タンク10に生じ得る異常を事前に知ることができる。そのため、タンク10の限界値に近い(余裕が小さい)管理値P1,P2を設定しても、タンク10の制御を適切に行うことが可能になる。したがって、圧縮機30の稼働によるエネルギーの消費量を十分に抑制することができる。
【0039】
なお、上記の実施形態において、オペレーターが運用計画とは異なる操作を行った場合であっても、その操作内容を入力情報に含めることで、そのような変更も踏まえて状態予測部3がタンク10の状態を予測することが可能である。
【0040】
また、図4及び図5では、BOGの発生量が増大する事象の開始時期(タンク10に対する特定の操作の開始時期)が予定から変更された場合において、状態予測部3がタンク圧力を予測する場合について例示した。しかし、例えば受入等の操作が現に開始された後にBOGの発生量が予定と異なることが判明した場合のように、特定の操作が開始された後に予定とは異なることが分かるような場合であっても、状態予測部3は短時間でタンク10の将来の状態を予測することができるため、オペレーターに対して予測結果を出力して対応させることが可能である。
【0041】
また、図4及び図5では、状態予測部3がタンク圧力を予測する場合について例示したが、これに加えて(または代えて)、状態予測部3が、タンク10が貯蔵するLNGの液面の高さや、圧縮機30などの機器で消費されるエネルギーの消費量の予測結果など、タンク10に対する操作をする上で有用な情報を出力情報として出力してもよい。タンク10が貯蔵するLNGの液面の高さは、タンク圧力と同様に、タンク10によるLNGの貯蔵状態が安全であるか否かを判断する点で有用である。また、圧縮機30などの機器で消費されるエネルギーの消費量は、貯蔵施設で使用可能な総量が決まっている(例えば、圧縮機30が電力で稼働する場合、自家発電であっても電力会社から供給を受ける場合であっても電力量には上限がある)ところ、機器によるエネルギーの消費量が供給可能な上限を超えて機器の動作が不安定になることを防ぐという点で有用である。
【0042】
また、上述した実施形態では、状態予測部3による予測結果がそのまま出力情報として出力される場合について例示したが、出力情報はこの例の限りではない。例えば、状態予測部3が、予測結果に加えて(または代えて)、所定の制約(上記例における上限の管理値P1及び下限の管理値P2)に反するか否かの情報を出力情報として出力してもよい。この場合、状態予測部3は、予測結果が所定の制約に反する場合、出力情報によりタンク10のオペレーターに対して警告する。これにより、オペレーターに対して、将来的にタンク10の状態が所定の制約に違反することを確実に認識させることができるため、オペレーターによるタンク10に対する適切な操作を支援することができる。
【0043】
さらに、状態予測部3が、予測結果や当該予測結果の所定の制約に対する判定結果に加えて(または代えて)、圧縮機30などのタンク10を制御する機器を制御するための情報を出力情報として出力してもよい。例えば、記憶部1において、想定される違反状態の種類や程度と、それを回避するための対処方法(タンク圧力が増大するタイミングが想定よりも早くなる場合は圧縮機30の稼働開始も同じだけ早めるなど)が対応付けられて記憶されており、状態予測部3が、予測した違反状態に対応する対処方法を記憶部1から読み出すことで、当該対処方法を出力情報に含めてもよい。この場合、状態予測部3は、予測結果が所定の制約に反する場合、圧縮機30などのタンク10の状態を制御する機器が、所定の制約に違反しないように出力情報によってその動作が制御されるため、タンク10の状態が所定の制約に違反することを自動的に防止することができる。
【0044】
以上、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0045】
また、上述したタンク制御支援システム及びタンク制御支援方法は、以下のように説明することができる。
【0046】
タンク制御支援システムは、液化燃料を貯蔵する複数のタンクの全体に対する前記液化燃料の出入に関する情報及び前記複数のタンクのそれぞれの状態に関する情報が含まれる入力情報が定期的または不定期的に入力され、当該入力情報を記憶する記憶部と、第1時点において前記記憶部に記憶されている前記入力情報に基づいて導出された、少なくとも1つの前記タンクにおける前記液化燃料の出入の計画である運用計画と、前記第1時点よりも後の第2時点において前記記憶部に記憶されている前記入力情報とに基づいて、当該タンクの前記第2時点以降の状態を予測する状態予測部と、を備える(第1の構成)。この構成によれば、運用計画の導出後に入力情報が変更されたとしても、当該変更による影響が反映されたタンクの状態の予測結果が得られるため、当該予測結果に基づいてタンクの制御を適切に行うことが可能になる。
【0047】
第1の構成において、前記演算処理部は、前記状態予測部は、前記運用計画の導出に要する演算時間よりも短い演算時間で、前記タンクの前記第2時点以降における状態を予測してもよい(第2の構成)。この構成によれば、導出される運用計画の正確性に影響を与えることなく、入力情報の変更がタンクの将来の状態におよぼす影響を正確に把握にするという現実的かつ実用的な方法を実現することができる。
【0048】
さらに、第2の構成において、前記状態予測部は、所与の条件式に対して、当該条件式の変数に前記入力情報を適用することによって前記タンクの前記第2時点以降における状態を予測してもよい(第3の構成)。この構成によれば、状態予測部は、例えば新たな入力情報が記憶部に入力される都度にタンクの将来の状態を予測するなど、短時間で演算を完了することができる。
【0049】
第1~第3の構成のいずれか1つにおいて、前記状態予測部は、前記タンク内の気圧から前記タンク外の気圧を減じたタンク圧力を予測してもよい(第4の構成)。この構成によれば、タンク圧力が将来的に危険な状態になるか否かを正確に把握することができるため、タンクの限界値に近い(余裕が小さい)管理値を設定して、圧縮機の稼働によるエネルギーの消費量を十分に抑制することができる。
【0050】
第1~第4の構成のいずれか1つにおいて、前記状態予測部は、予測した前記タンクの状態を表す第1出力情報を出力してもよい(第5の構成)。この構成によれば、オペレーターに対して、将来的にタンクの状態が所定の制約に違反することを認識させることができるため、オペレーターによるタンクに対する適切な操作を支援することができる。
【0051】
第1~第5の構成のいずれか1つにおいて、前記状態予測部は、予測した前記タンクが貯蔵する前記液化燃料の状態が、所定の制約に反する場合、前記タンクのオペレーターに対して警告するための第2出力情報を出力してもよい(第6の構成)。この構成によれば、オペレーターに対して、将来的にタンクの状態が所定の制約に違反することを確実に認識させることができる。
【0052】
第1~第6の構成のいずれか1つにおいて、前記状態予測部は、予測した前記タンクが貯蔵する前記液化燃料の状態が、所定の制約に反する場合、前記タンクが貯蔵する前記液化燃料の状態を制御する機器に対して、当該制約に違反しないように当該機器を制御するための第3出力情報を出力してもよい(第7の構成)。この構成によれば、タンクの状態が所定の制約に違反することを自動的に防止することができる。
【0053】
本発明の他の実施形態は、液化燃料を貯蔵する複数のタンクの全体に対する前記液化燃料の出入に関する情報及び前記複数のタンクのそれぞれの状態に関する情報が含まれる入力情報を取得する第1ステップと、前記第1ステップで取得した前記入力情報に基づいて少なくとも1つの前記タンクにおける前記液化燃料の出入の計画である運用計画を導出する第2ステップと、前記第2ステップで導出された運用計画と、前記第1ステップよりも時間的に後に得られた前記入力情報とに基づいて、前記タンクの将来の状態を予測する第3ステップと、を備える、タンク制御支援方法である(第8の構成)。
【符号の説明】
【0054】
S…タンク運用計画導出システム、1…記憶部、2…運用計画導出部、3…状態予測部、10…タンク、101…下部供給用配管、102…上部供給用配管、103…送出用配管、104…ポンプ、105…BOG排気用配管、11…輸送手段、12…移送ライン、13…移送ポンプ、14…払出ライン、15…払出ポンプ、20…LNG、21…BOG、30…圧縮機、100…タンク群
図1
図2
図3
図4
図5