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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112640
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】電子レンジ用パウチ
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20230804BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043639
(22)【出願日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2022014096
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】三浦 崇
(72)【発明者】
【氏名】松永 史絵
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA30
3E013BB12
3E013BC01
3E013BC04
3E013BC12
3E013BC13
3E013BC14
3E013BE01
3E013BF06
3E013BF26
3E013BF33
3E013BF35
3E013BF36
3E013BG17
(57)【要約】
【課題】蒸気の放出性および内容物の漏れ出し抑制の両立を図る電子レンジ用パウチを提供すること。
【解決手段】蒸気抜き機構40が、第1フィルム41および第2フィルム42を熱溶着して形成された蒸気抜きシール部43と、蒸気開放部44において第1フィルム41に形成されたスリット41aによって区画されたフラップ片41bと、その少なくとも一部がフラップ片41bに表裏方向に重なるように蒸気開放部44において第2フィルム42に形成された蒸気抜き穴42aとを有している電子レンジ用パウチ10。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気抜きシール部によって内容物収容部から隔離された蒸気開放部を備え、加熱時に前記内容物収容部内の蒸気を前記蒸気開放部から外部に放出する蒸気抜き機構を備えた電子レンジ用パウチであって、
前記蒸気抜き機構は、重ねて配置された第1フィルムおよび第2フィルムと、前記第1フィルムおよび前記第2フィルムを熱溶着して形成された前記蒸気抜きシール部と、前記蒸気開放部において前記第1フィルムに形成されたスリットによって区画されたフラップ片と、その少なくとも一部が前記フラップ片に表裏方向に重なるように前記蒸気開放部において前記第2フィルムに形成された蒸気抜き穴とを有していることを特徴とする電子レンジ用パウチ。
【請求項2】
前記第2フィルムは、前記蒸気抜き穴の周縁部に、前記フラップ片の一部に表裏方向に重なって配置される重複周縁部を有していることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ用パウチ。
【請求項3】
前記フラップ片は、横方向に沿って延び前記第1フィルムに接続されたフラップ基端と、前記横方向に直交する縦方向に前記フラップ基端から離れたフラップ自由端とを有し、
前記重複周縁部は、前記フラップ自由端のうち前記フラップ基端から前記縦方向に最も離れた部分の少なくとも一部に対して、表裏方向に重なるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電子レンジ用パウチ。
【請求項4】
前記蒸気抜きシール部は、加熱時に前記内容物収容部と前記蒸気開放部とを連通させる連通開始予定部を有し、
前記フラップ片は、前記連通開始予定部に対して前記フラップ自由端が近くなるとともに前記フラップ基端が遠くなるように、形成されていることを特徴とする請求項3に記載の電子レンジ用パウチ。
【請求項5】
前記蒸気抜きシール部は、加熱時に前記内容物収容部と前記蒸気開放部とを連通させる連通開始予定部を有し、
前記フラップ片は、前記蒸気抜き穴のうち前記連通開始予定部に最も近い箇所よりも、前記連通開始予定部の近くに形成された部分を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電子レンジ用パウチ。
【請求項6】
前記電子レンジ用パウチは、前記内容物収容部を有したパウチ本体と、前記パウチ本体を構成する表側フィルムから表側に突出して形成されたパウチ分岐部とを備え、
前記蒸気抜き機構は、前記パウチ分岐部に形成され、
前記パウチ分岐部は、前記蒸気抜き穴を有した前記第2フィルムが前記パウチ本体の前記表側フィルムに対向するように設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の電子レンジ用パウチ。
【請求項7】
前記フラップ片は、横方向に沿って延び前記第1フィルムに接続されたフラップ基端と、前記横方向に直交する縦方向に前記フラップ基端から離れたフラップ自由端とを有し、
前記蒸気抜き穴は、前記縦方向における縦幅よりも前記横方向における横幅の方が狭くなるように、形成されていることを特徴とする請求項6に記載の電子レンジ用パウチ。
【請求項8】
前記縦方向に見た場合、前記横方向における前記蒸気抜き穴の形成範囲は、前記横方向における前記フラップ片の形成範囲内に収まるように設定されていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の電子レンジ用パウチ。
【請求項9】
前記横方向における前記フラップ片の横幅は、前記横方向における前記蒸気抜き穴の横幅よりも広く設定されていることを特徴とする請求項8に記載の電子レンジ用パウチ。
【請求項10】
前記第2フィルムは、前記蒸気抜き穴の周縁部に、前記フラップ片の一部に表裏方向に重なって配置される重複周縁部を有し、
前記縦方向に見た場合、前記重複周縁部は、前記横方向における前記蒸気抜き穴の形成範囲内に位置する部分を有することを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の電子レンジ用パウチ。
【請求項11】
前記フラップ片および前記蒸気抜き穴は、前記パウチ本体のパウチ上下方向の上方側または下方側に寄った位置であって、前記パウチ本体のパウチ左右方向の中央を通ってパウチ上下方向に沿って延びる第1仮想線を跨ぐ位置に形成され、または、前記パウチ本体のパウチ左右方向の左側または右側に寄った位置であって、前記パウチ本体のパウチ上下方向の中央を通ってパウチ左右方向に沿って延びる第2仮想線を跨ぐ位置に形成されていることを特徴とする請求項6乃至請求項10のいずれかに記載の電子レンジ用パウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱時に内部の蒸気を自動的に逃がす蒸気抜き機構を備えた電子レンジ用パウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重ねたフィルムを熱接着することにより袋状に成形されたパウチ内に、調理済あるいは半調理済の食品を収容し、当該食品を食べる時に、電子レンジによって加熱調理する包装食品が市場に出回っている。
【0003】
このような電子レンジ用パウチでは、電子レンジで加熱すると、食品から発生する蒸気や内部空気の熱膨張によりパウチの内圧が高まり、パウチに破袋や変形が生じたり、破袋によりパウチ内の食品が飛散する恐れがある。
【0004】
そのため、近年、電子レンジ用パウチに、加熱時に内部の蒸気を自動的に逃がす蒸気抜き機構が一般的に設けることが知られており(例えば、特許文献1を参照)、このような蒸気抜き機構の一態様として、重ねたフィルムを熱溶着して形成され蒸気開放部を内容物収容部から隔離する蒸気抜きシール部と、蒸気開放部に配置される2枚のフィルムのうちの一方に貫通形成された蒸気抜き穴とを備えたものが知られている。
【0005】
この特許文献1に開示される電子レンジ用パウチでは、電子レンジによる加熱に伴って内容物収容部内の圧力が高まると、蒸気抜きシール部の一部が剥離して内容物収容部と蒸気開放部とが連通して、蒸気抜き穴を通じて内容物収容部内の蒸気が外部へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-192042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、このような蒸気抜き機構を備えた電子レンジ用パウチでは、蒸気を放出する蒸気抜き穴のサイズを大きくすると、加熱時における蒸気の放出性を充分に確保することができるものの、加熱状態によっては、蒸気とともに内容物が蒸気抜き穴から漏れ出してしまうことがあり、他方、蒸気を放出する蒸気抜き穴のサイズを小さく形成したり、蒸気抜き穴の代わりにスリットを形成すると、加熱時におけるパウチの膨張具合によっては、蒸気の放出性が充分に確保できず、蒸気によるパウチの膨張状態が長く維持されてパウチの内面材の熱損傷が生じてしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡素な構造で、蒸気の放出性および内容物の漏れ出し抑制の両立を図る電子レンジ用パウチを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、蒸気抜きシール部によって内容物収容部から隔離された蒸気開放部を備え、加熱時に前記内容物収容部内の蒸気を前記蒸気開放部から外部に放出する蒸気抜き機構を備えた電子レンジ用パウチであって、前記蒸気抜き機構は、重ねて配置された第1フィルムおよび第2フィルムと、前記第1フィルムおよび前記第2フィルムを熱溶着して形成された前記蒸気抜きシール部と、前記蒸気開放部において前記第1フィルムに形成されたスリットによって区画されたフラップ片と、その少なくとも一部が前記フラップ片に表裏方向に重なるように前記蒸気開放部において前記第2フィルムに形成された蒸気抜き穴とを有していることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、第2フィルムに蒸気抜き穴を形成するとともに、第1フィルムにフラップ片を区画するスリットを形成することで、蒸気の放出性および内容物の漏れ出し抑制の両立を図ることができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、第2フィルムが、蒸気抜き穴の周縁部に、フラップ片の一部に表裏方向に重なって配置される重複周縁部を有していることにより、この重複周縁部によってフラップ片の第2フィルム側への移動を阻止して、フラップ片が蒸気抜き穴の内縁に引っかかることを抑制することが可能であるため、加熱時に、フラップ片を良好に開かせて蒸気を適切に放出することができる。
請求項3、4に係る発明によれば、重複周縁部は、フラップ自由端のうちフラップ基端から縦方向に最も離れた部分の少なくとも一部に対して、表裏方向に重なるように形成されていることにより、重複周縁部によってフラップ片全体の第2フィルム側への移動を効果的に阻止することができる。
請求項5に係る発明によれば、フラップ片が、蒸気抜き穴のうち連通開始予定部に最も近い箇所よりも、連通開始予定部の近くに形成された部分を有していることにより、加熱時に、蒸気抜き穴から蒸気が放出され始めるよりも前に、フラップ片の一部を開かせることが可能であるため、フラップ片を確実に開かせ、蒸気抜き穴のみから蒸気が放出される事態を抑制することができる。
請求項6に係る発明によれば、蒸気抜き穴を有した第2フィルムをパウチ本体の表側フィルムに対向させて配置することにより、蒸気抜き穴から内容物が漏れ出してしまった場合であっても、漏れ出した内容物をパウチ本体およびパウチ分岐部の間に留めて、外部から視認され易いパウチ外側に内容物が付着することを抑制できるばかりでなく、フラップ片が形成された第1フィルムの裏側に蒸気抜き穴が形成された第2フィルムを配置することにより、加熱時におけるパウチ本体の膨らみに起因してパウチ本体の表側フィルムに表側に向けて凸状になるように形成されるフィルム山折頂部が、フラップ片の裏側位置に形成されるように誘導することが可能であるため、凸状のフィルム山折頂部によってフラップ片を裏側から突き上げて、加熱時にフラップ片が開き易い状態とすることができる。
請求項7に係る発明によれば、フラップ片が、第1フィルムに繋がったフラップ基端と、フラップ基端から縦方向に離れたフラップ自由端とを有し、蒸気抜き穴が、縦方向における縦幅よりも横方向における横幅の方が狭くなるように形成されていることにより、フラップ片および蒸気抜き穴の付近において、上記のフィルム山折頂部が縦方向に沿って延びるように形成されるように誘導することが可能であるため、縦方向に延びるフィルム山折頂部によってフラップ片を良好に突き上げて、加熱時にフラップ片が開き易い状態とすることができる。
請求項8、9に係る発明によれば、縦方向に見た場合、横方向における蒸気抜き穴の形成範囲が、横方向におけるフラップ片の形成範囲内に収まるように設定されていることにより、縦方向に延びるフィルム山折頂部によってフラップ片が突き上げられるように誘導でき、加熱時にフラップ片が開き易い状態とすることができる。
請求項10に係る発明によれば、縦方向に見た場合、重複周縁部が、横方向における蒸気抜き穴の形成範囲内に位置する部分を有することにより、上記のフィルム山折頂部の形成を利用して、フラップ片の一部に表裏方向に重なって配置される重複周縁部によってもフラップ片を裏側から押し上げて、加熱時にフラップ片が開き易い状態とすることができる。
請求項11に係る発明によれば、加熱時におけるパウチ本体の膨らみに起因してフィルム山折頂部が形成され易い位置に、フラップ片および蒸気抜き穴を形成することにより、上記のフィルム山折頂部が、フラップ片の裏側位置に形成され易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る電子レンジ用パウチを示す説明図。
図2】蒸気抜き機構を中心として示す説明図。
図3】フラップ片と蒸気抜き穴との関係性を説明する説明図。
図4】フィルム山折頂部を説明する説明図。
図5】蒸気抜き機構の変形例を示す説明図。
図6】電子レンジ用パウチの変形例を示す説明図。
図7】蒸気抜き機構の変形例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態に係る電子レンジ用パウチ10について、図面に基づいて説明する。
【0014】
まず、電子レンジ用パウチ10は、図1に示すように、樹脂フィルムを所定箇所で熱接着した製袋用シール部11を形成することにより袋状に形成され、その内側の内容物収容部12に食品等の内容物を収容するものである。
【0015】
本実施形態の電子レンジ用パウチ10は、図1に示すように、内容物収容部12を有したパウチ本体20と、パウチ本体20を構成する表側フィルム21から表側に突出して形成されたパウチ分岐部30とを備えた、いわゆる分岐型パウチとして構成されている。
【0016】
パウチ本体20は、図1に示すように、表裏方向に重ねた表側フィルム21および裏側フィルム22を有し、これらフィルム21、22の所定箇所同士を熱溶着した製袋用シール部11(トップシール部11a、サイドシール部11b)を形成することで袋状に構成されている。
【0017】
パウチ分岐部30は、図1に示すように、パウチ上下方向の途中において、パウチ左右方向の全域に亘って、パウチ本体20の表側フィルム21から表側に突出して形成された部位として構成されている。
パウチ分岐部30は、図1に示すように、パウチ本体20の表側フィルム21から表側に突出して形成された部位であり、パウチ本体20の表側フィルム21に対向するように配置された第2フィルム42と、第2フィルム42の表側に配置された第1フィルム41とを有している。
【0018】
パウチ分岐部30の上端部31においては、図1に示すように、フィルム41、42が接続され(本実施形態では、互いに連続して一体に形成され)ている。なお、フィルム41、42を別体に形成し、パウチ分岐部30の上端部31においてフィルム41、42間を熱溶着してもよい。
また、パウチ分岐部30の左右両側部においては、図1に示すように、フィルム41、42が接続され、本実施形態では、フィルム41、42がサイドシール部11bで熱溶着されている。
また、パウチ分岐部30の下端部32においては、図1に示すように、フィルム41、42が接続されていない。
また、パウチ分岐部30の下端部32においては、図1に示すように、フィルム21、41が接続され(本実施形態では、互いに連続して一体に形成され)、フィルム21、42が接続され(本実施形態では、互いに連続して一体に形成され)ている。なお、パウチ分岐部30の下端部32において、別体に形成されたフィルム21、41を熱溶着してもよく、また、別体に形成されたフィルム21、42を熱溶着してもよい。
また、パウチ分岐部30の下端部32における第2フィルム42と表側フィルム21との接続部には折り目が形成され(折り目加工が施され)ており、これにより、パウチ分岐部30は、無負荷状態(特に力が作用していない状態)で、図1に示すように、第2フィルム42が表側フィルム21に対向した状態が維持される。
また、パウチ分岐部30の上端部31におけるフィルム41、42間の接続部には折り目が形成されており、パウチ分岐部30の下端部32における第1フィルム41と表側フィルム21との接続部には折り目が形成されていない。
【0019】
電子レンジ用パウチ10は、電子レンジによる加熱時に、内容物収容部12内で発生した蒸気をパウチ外部に放出するための蒸気抜き機構40を備え、本実施形態では、図1に示すように、蒸気抜き機構40は、パウチ分岐部30に形成されている。
【0020】
蒸気抜き機構40は、図1に示すように、重ねて配置された第1フィルム41および第2フィルム42と、第1フィルム41および第2フィルム42を熱溶着して形成された蒸気抜きシール部43と、蒸気抜きシール部43によってパウチ本体20の内容物収容部12から隔離された蒸気開放部44と、蒸気開放部44において第1フィルム41に形成されたスリット41aによって区画されたフラップ片41bと、その少なくとも一部がフラップ片41bに表裏方向に重なるように蒸気開放部44において第2フィルム42に形成された蒸気抜き穴42aとを備えている。
【0021】
蒸気抜き機構40は、電子レンジによる加熱時に、内容物収容部12内で発生した蒸気によって蒸気抜きシール部43を剥離させて内容物収容部12および蒸気開放部44を連通させ、内容物収容部12内の蒸気を蒸気開放部44に形成された蒸気抜き穴42aおよびスリット41aからパウチ外部に放出するように構成されている。
【0022】
以下に、蒸気抜き機構40の各構成要素について説明する。
【0023】
まず、第1フィルム41に形成されたフラップ片41bは、図1図2に示すように、U字状に形成されたスリット41aによって、蒸気開放部44において第1フィルム41の周辺部位から部分的に分離され、加熱時に蒸気によって表側に向けて移動する部位である。
フラップ片41bは、図2に示すように、フラップ片41bの外周縁の一部であって横方向Xに沿って直線状に延び第1フィルム41に接続された(繋がった)フラップ基端41cと、フラップ片41bの外周縁の一部であって横方向Xに直交する縦方向Yにフラップ基端41cから離れた部分であるフラップ自由端41dとを有している。
フラップ片41bは、図2に示すように、蒸気抜きシール部43の連通開始予定部43aに対してフラップ自由端41dが近くなるとともにフラップ基端41cが遠くなるように、形成されている。
ここで、連通開始予定部43aは、加熱時に内容物収容部12内に発生する蒸気によって内容物収容部12と蒸気開放部44とを最初に連通させる予定の部位であり、本実施形態では、加熱時に内容物収容部12内に発生する蒸気によって、蒸気抜きシール部43のうち最初に剥離を開始するように設計された部位(シール剥離開始部)である。
【0024】
また、第2フィルム42には、図2に示すように、第2フィルム42を表裏方向に貫通する蒸気抜き穴42aが形成されている。
第2フィルム42は、図2に示すように、蒸気抜き穴42aの周縁部に、フラップ片41bの第2フィルム42側(裏側)への移動を阻止するように、フラップ片41bの一部に表裏方向に重なって配置される重複周縁部42bを有している。
【0025】
次に、フラップ片41bや蒸気抜き穴42aの具体的設計や、フラップ片41bと蒸気抜き穴42aとの関係性について、以下に説明する。
【0026】
まず、図2図5(a)(f)に示すように、フラップ片41b(スリット41a)が、蒸気抜き穴42aのうち連通開始予定部43aに最も近い箇所よりも連通開始予定部43aの近くに形成された部分を有するのが好ましい。
このように構成した場合、加熱時に、蒸気抜き穴42aから蒸気が放出され始めるよりも前に、フラップ片41bの一部を開かせる(表側に向けて移動させる)ことが可能であるため、フラップ片41bを確実に開かせ、蒸気抜き穴42aのみから蒸気が放出される事態を抑制することができる。
【0027】
また、フラップ片41bに表裏方向に重なる部位である重複周縁部42bの位置については、図2図5(a)(b)(d)(e)(f)に示すように、フラップ片41bのフラップ自由端41dのうちフラップ基端41cから縦方向Yに最も離れた部分(フラップ自由端41dのうち、縦方向Yにおけるフラップ基端41cからの離間寸法が最も大きい線部分または点部分)の少なくとも一部に重複周縁部42bが表裏方向に重なるように設定することが好ましい。
このように構成した場合、重複周縁部42bによってフラップ片41b全体の第2フィルム42側への移動を効果的に阻止することができる。
しかしながら、重複周縁部42bの位置の具体的設定は上記に限定されず、例えば、フラップ片41bの横方向Xにおける側方部分のみに重複周縁部42bが重なるように設定してもよく、また、図5(c)に示すように、フラップ片41bのフラップ基端41c側のみに重複周縁部42bが重なるように設定してもよい。
また、重複周縁部42bの数量についても、1箇所に限定されず、互いに離れた複数箇所に重複周縁部42bを形成してもよい。
【0028】
また、図1に示す例では、パウチ本体20の表側フィルム21とフラップ片41bが形成された第1フィルム41との間に、その少なくとも一部がフラップ片41bに表裏方向に重なるように形成された蒸気抜き穴42aを有した第2フィルム42が配置されている。
このように構成した場合、図4に示すように、加熱時におけるパウチ本体20の膨らみに起因してパウチ本体20の表側フィルム21に表側に向けて凸状になるように形成されるフィルム山折頂部21aが、フラップ片41bの裏側位置に形成されるように誘導することが可能であるため、フィルム山折頂部21aや、フィルム山折頂部21aの形成に起因して第2フィルム42に生じる折れ曲がり(表側に向けて凸状の折れ曲がり)によってフラップ片41bを裏側から突き上げて、加熱時にフラップ片41bが開き易い状態とすることができる。
なお、本明細書で言うところのフィルム山折頂部21は、図4に示されるようなパウチ左右方向の中央(またはパウチ長手方向の中央)に形成されるものに限定されず、表側フィルム21に形成される湾曲(または折り曲げ)に起因して生じる表側に向けて凸状の部分のことを広く意味する。
【0029】
また、図3(や図5(e)(f))に示すように、蒸気抜き穴42aについては、縦方向Yにおける縦幅H1(最も縦幅H1が広い部分の縦幅H1)よりも、横方向Xにおける横幅W1(最も横幅W1が広い部分の横幅W1)の方が狭くなるように、形成するのが好ましい。
このように構成した場合、フラップ片41bや蒸気抜き穴42aの付近において、上記のフィルム山折頂部21aが縦方向Yに沿って延びるように形成されるように誘導することが可能であるため、縦方向Yに延びるフィルム山折頂部21aによってフラップ片41bを良好に突き上げて、加熱時にフラップ片41bが開き易い状態とすることができる。
なお、蒸気抜き穴42aの横幅W1を狭く形成した方が、フィルム山折頂部21aや、フィルム山折頂部21aの形成に起因して第2フィルム42に生じる折れ曲がりの高さを確保し易い。
【0030】
また、図3(や図5(a)(b)(c)(e)(f))に示すように、縦方向Yに見た場合、横方向Xにおける蒸気抜き穴42aの形成範囲R1を、横方向Xにおけるフラップ片41bの形成範囲R2内に収まるように設定するのが好ましい。
このように構成した場合、上述した縦方向Yに延びるフィルム山折頂部21aによってフラップ片41bを良好に突き上げて、加熱時にフラップ片41bが開き易い状態とすることができる。
【0031】
また、図3(や図5(b)(e)(f))に示すように、横方向Xにおけるフラップ片41bの横幅W2(最も横幅W2が広い部分の横幅W2)を、横方向Xにおける蒸気抜き穴42aの横幅W1(最も横幅W1が広い部分の横幅W1)よりも広く設定するのが好ましい。
このように構成した場合、上述した縦方向Yに延びるフィルム山折頂部21aによってフラップ片41bを良好に突き上げて、加熱時にフラップ片41bが開き易い状態とすることができる。
【0032】
また、図3(や図5(a)(c)(f))に示すように、縦方向Yに見た場合、重複周縁部42bが、横方向Xにおける蒸気抜き穴42aの形成範囲R1内に位置する部分(図3の符号42b-1で示す部分)を有しているのが好ましい。
このように構成した場合、フィルム山折頂部21aの形成を利用して、重複周縁部42bによってもフラップ片41bを裏側から押し上げて、加熱時にフラップ片41bが開き易い状態とすることができる。
【0033】
また、電子レンジ用パウチ10の平面方向における、フラップ片41bおよび蒸気抜き穴42aの形成位置は、以下の通りである。
まず、フラップ片41bおよび蒸気抜き穴42aは、図1に示す例のように、パウチ本体20のパウチ上下方向の上方側または下方側に寄った位置であって、パウチ本体20のパウチ左右方向の中央を通ってパウチ上下方向に沿って延びる第1仮想線L1を跨ぐ位置に形成され、または、パウチ本体20のパウチ左右方向の左側または右側に寄った位置であって、パウチ本体20のパウチ上下方向の中央を通ってパウチ左右方向に沿って延びる第2仮想線L2を跨ぐ位置に形成されているのが、好ましい。
このように構成した場合、フィルム山折頂部21aが、フラップ片41bの裏側位置に形成され易くなる。すなわち、第1仮想線L1や第2仮想線L2の周辺部分は、加熱時におけるパウチ本体20の膨らみに起因してフィルム山折頂部21aがされ易い部位であり、上記の位置にフラップ片41bや蒸気抜き穴42aを形成することで、フィルム山折頂部21aが、フラップ片41bの裏側位置に形成され易くなる。
また、更に具体的には、フラップ片41bを上記の第1仮想線L1を跨ぐ位置に形成する時には、フラップ基端41cが第1仮想線L1に交差するようにフラップ片41bを形成するのが更に好ましく、また、フラップ片41bを上記の第2仮想線L2を跨ぐ位置に形成する時には、フラップ基端41cが第2仮想線L2に交差するようにフラップ片41bを形成するのが更に好ましい。
また、フラップ片41bを上記の第1仮想線L1を跨ぐ位置に形成する時には、フラップ片41bの縦方向Y(フラップ基端41cが延びる横方向Xに直交する方向)とパウチ上下方向(第1仮想線L1が延びる方向)とが一致する(平行になる)ようにするのが好ましく、また、フラップ片41bを上記の第2仮想線L2を跨ぐ位置に形成する時には、フラップ片41bの縦方向Y(フラップ基端41cが延びる横方向Xに直交する方向)とパウチ左右方向(第2仮想線L2が延びる方向)とが一致する(平行になる)ようにするのが好ましい。
また、フラップ片41bを上記の第1仮想線L1を跨ぐ位置に形成する時には、第1仮想線L1を跨ぐ位置に重複周縁部42bを形成するのが好ましく、また、フラップ片41bを上記の第2仮想線L2を跨ぐ位置に形成する時には、第2仮想線L2を跨ぐ位置に重複周縁部42bを形成するのが好ましい。
【0034】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記または下記の実施形態や変形例の各構成を任意に組み合わせて電子レンジ用パウチ10を構成する等、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0035】
例えば、電子レンジ用パウチ10を構成する各フィルム21、22、41、42の具体的態様は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド等の合成樹脂性フィルムや、これら合成樹脂性フィルムにガスバリア性や水分バリア性を付与したコーティングフィルム又は蒸着フィルム等の公知の合成樹脂性フィルムを積層したり、該合成樹脂製フィルムに紙またはアルミ箔を積層すること等で形成されたものであれば、如何なるものでもよい。
また、電子レンジ用パウチ10を構成する各フィルム21、22、41、42については、別体のフィルムとして形成してもよく、少なくとも一部のフィルムを一体に(連続した一枚のフィルムとして)形成してもよい。
また、上述した実施形態では、電子レンジ用パウチ10の内容物が食品であるものとして説明したが、内容物の具体的態様は、水分を含むものであれば如何なるものでもよく、食品に限定されない。
【0036】
また、上述した実施形態では、蒸気抜き機構40が、分岐型パウチのパウチ分岐部30に形成されているものとして説明したが、蒸気抜き機構40の形成位置は、上記に限定されず、第2フィルム42と第1フィルム41とが重ねて配置された箇所であれば、如何なるものでもよい。
その変形例の一例として挙げられる図6に示す例では、電子レンジ用パウチ10がスタンディングパウチとして構成され、蒸気抜き機構40が、パウチ本体20を構成するフィルムとしての第1フィルム41および第2フィルム42と、フィルム41、42を熱溶着して形成された蒸気抜きシール部43と、蒸気抜きシール部43によって内容物収容部12から隔離された蒸気開放部44において第1フィルム41に形成されたスリット41aによって区画されたフラップ片41bと、蒸気開放部44において第2フィルム42に形成された蒸気抜き穴42aとを有している。
【0037】
また、図1図6に示す例では、電子レンジ用パウチ10が分岐型パウチやスタンディングパウチとして構成されているものとして説明したが、電子レンジ用パウチ10の具体的態様は、重ねて配置された第1フィルム41および第2フィルム42を備えたものであれば、例えば、いわゆる平パウチ等、如何なるものでもよい。
【0038】
また、上述した実施形態では、フラップ片41bを区画するスリット41aが(材料除去を伴わない)切込み状のスリットとして形成されているものとして説明したが、スリット41aの具体的態様は、これに限定されず、(材料除去を伴う)幅を有した(穴状の)スリットとして形成されていてもよい。
また、上述した実施形態では、フラップ片41bが、図2に示すように、蒸気抜きシール部43の連通開始予定部43aに対してフラップ自由端41dが近くなるとともにフラップ基端41cが遠くなる、向きで形成されているものとして説明したが、フラップ片41b(スリット41a)の具体的態様は、上記に限定されず、如何なるものでもよく、例えば、連通開始予定部43aに対してフラップ自由端41dが遠くなるとともにフラップ基端41cが近くなる、向きで、フラップ片41b(スリット41a)を形成してもよい。
【0039】
また、上述した実施形態では、第2フィルム42に重複周縁部42bが形成されているものとして説明したが、このような重複周縁部42bを形成しなくてもよい。
【0040】
また、蒸気抜きシール部43については、図1図6に示す例では製袋用シール部11に連続して形成されているものとして形成されているが、蒸気抜きシール部43を製袋用シール部11から独立して形成してもよい。
【0041】
また、上述した図1に示す例では、連通開始予定部43aが、蒸気抜きシール部43のうち内容物収容部14側に向けて突出して形成された部位(内容物収容部14の中央に最も近い部位)として形成され、また、上述した図6に示す例では、内容物収容部14の中央に最も近い部位として形成されているものとして説明したが、連通開始予定部43aの具体的態様は、上記以外にも蒸気抜きシール部43の各部のシール強度に強弱を付けることでその位置を決定されたもの等、蒸気抜きシール部43のうち最初に剥離を開始するように設計された部位であれば、如何なるものでもよい。
【0042】
また、上述した実施形態では、蒸気開放部44が、第1フィルム41と第2フィルム42とが熱溶着されていない領域(未シール部)として形成されているが、蒸気開放部44を、蒸気抜きシール部43(や製袋用シール部11)よりも弱めにフィルム41、42間に熱接着を施した弱接着部や、フィルム41、42にローレットシール等を施したパターン状接着部として形成してもよい。
【0043】
また、上述した実施形態では、蒸気抜き機構40が、電子レンジによる加熱時に、内容物収容部12内で発生した蒸気によって、蒸気抜きシール部43(の連通開始予定部43a)において熱溶着されたフィルム41、42間を剥離させることで、内容物収容部12および蒸気開放部44を連通させて、内容物収容部12内の蒸気を蒸気開放部44から外部に放出するように構成されているものとして説明した。
しかしながら、電子レンジによる加熱時に、内容物収容部12および蒸気開放部44を連通させるための具体的構造(連通開始予定部43aの具体的態様)は、上述したような蒸気抜きシール部43において熱溶着されたフィルム41、42間を剥離させるものに限定されず、内容物収容部12内で発生した蒸気を利用して内容物収容部12および蒸気開放部44を連通させるものであれば、如何なるものでもよい。
例えば、図7に示すように、蒸気抜きシール部43において、第1フィルム41または第2フィルム42の少なくとも一方に、内容物収容部12内に発生した蒸気によって剥離または破壊される弱化部を形成し、当該弱化部を連通開始予定部43aとして利用して、電子レンジによる加熱時に、当該弱化部(連通開始予定部43a)を剥離または破壊して、内容物収容部12および蒸気開放部44を連通させる蒸気通路Pを第1フィルム41または第2フィルム42の少なくとも一方に形成するようにしてもよい。なお、このような蒸気通路Pを形成する弱化部としては、フィルム41、42を積層フィルムとして形成した場合の、接着力が弱く設定された層間や、機械的に弱く破壊を生じ易く形成された弱化部分等を利用することが考えられる。
【符号の説明】
【0044】
10 ・・・ 電子レンジ用パウチ
11 ・・・ 製袋用シール部
11a ・・・ トップシール部
11b ・・・ サイドシール部
12 ・・・ 内容物収容部
20 ・・・ パウチ本体
21 ・・・ 表側フィルム
21a ・・・ フィルム山折頂部
22 ・・・ 裏側フィルム
30 ・・・ パウチ分岐部
31 ・・・ パウチ分岐部の上端部
32 ・・・ パウチ分岐部の下端部
40 ・・・ 蒸気抜き機構
41 ・・・ 第1フィルム
41a ・・・ スリット
41b ・・・ フラップ片
41c ・・・ フラップ基端
41d ・・・ フラップ自由端
42 ・・・ 第2フィルム
42a ・・・ 蒸気抜き穴
42b ・・・ 重複周縁部
43 ・・・ 蒸気抜きシール部
43a ・・・ 連通開始予定部
44 ・・・ 蒸気開放部
L1 ・・・ 第1仮想線
L2 ・・・ 第2仮想線
X ・・・ 横方向
Y ・・・ 縦方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7