(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112686
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】パワーデバイスアセンブリとその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230804BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023012781
(22)【出願日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】17/590,232
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】フォン チョウ
(72)【発明者】
【氏名】リョウ ヤンホー
(72)【発明者】
【氏名】請川 紘嗣
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA22
5H770BA01
5H770BA02
5H770PA12
5H770PA22
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA02
5H770QA06
5H770QA28
(57)【要約】
【課題】冷却板アセンブリと1つ又は複数のパワーデバイスアセンブリとを含むパワーエレクトロニクスアセンブリのための装置及び方法を提供すること。
【解決手段】冷却板アセンブリは、第1の表面にヒートシンク空洞を有するマニホールドと、1つ又は複数の基板空洞を含むヒートシンクとを有する。ヒートシンクは、ヒートシンク空洞内に位置決めされる。1つ又は複数のパワーデバイスアセンブリは、1つ又は複数の基板空洞内に位置決めされる。各パワーデバイスアセンブリは、Sセル、パワーデバイス及びSセルに接合された直接接合金属基板を含む。Sセルは、少なくともグラファイト又はグラファイト複合体で構成される基層と、基層を少なくとも部分的に取り囲む導電層と、パワーデバイス空洞とを含む。パワーデバイスは、パワーデバイス空洞内に位置決めされ、導電層に電気的に結合される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却板アセンブリであって、
第1の表面にヒートシンク空洞を具備するマニホールドと、
1つ又は複数の基板空洞を具備するヒートシンクであって、前記ヒートシンクは、前記ヒートシンク空洞内に配置される、ヒートシンクと、を具備する、冷却板アセンブリと、
前記1つ又は複数の基板空洞内に配置された1つ又は複数のパワーデバイスアセンブリであって、前記1つ又は複数のパワーデバイスアセンブリの各パワーデバイスアセンブリは、
Sセルであって、
少なくともグラファイト又はグラファイト複合体で構成される基層と、
前記基層を少なくとも部分的に取り囲む導電層と、
パワーデバイス空洞と、を具備する、Sセルと、
前記パワーデバイス空洞内に配置されたパワーデバイスであって、前記パワーデバイスは、前記導電層に電気的に結合される、パワーデバイスと、
前記Sセルに接合された直接接合金属(DBM)基板と、を具備する、1つ又は複数のパワーデバイスアセンブリと、
を具備する、パワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項2】
前記パワーデバイス空洞と前記パワーデバイスとの間に少なくとも部分的に配置された導電性被覆であって、前記導電性被覆は被覆高さを画成する、導電性被覆をさらに具備し、
前記1つ又は複数の基板空洞のそれぞれは、基板空洞深さを画成し、
前記パワーデバイスは、パワーデバイス高さを画成し、
前記基板空洞深さは、前記導電性被覆を含む前記パワーデバイス高さと値が実質的に等しい、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項3】
前記パワーデバイス空洞と前記パワーデバイスとの間に少なくとも部分的に配置された接合層であって、前記接合層は接合高さを画成する、接合層をさらに具備し、
前記1つ又は複数の基板空洞のそれぞれは、基板空洞深さを画成し、
前記パワーデバイスは、パワーデバイス高さを画成し、
前記基板空洞深さは、前記接合層を含む前記パワーデバイス高さと値が実質的に等しい、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項4】
前記DBM基板は電気絶縁材料で構成される、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項5】
前記パワーデバイス空洞は、前記パワーデバイスを受容するように成形され、サイズ設定される、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項6】
前記Sセルの上面は、前記パワーデバイスの上面と実質的に同じ平面上にある、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項7】
前記第1の表面は、前記パワーデバイスの上面と実質的に同じ平面上にあり、
前記Sセル及び前記パワーデバイスは、前記パワーデバイスの周囲に延在するチャネルを画成し、
前記冷却板アセンブリは、前記チャネルの上面が前記第1の表面と同じ平面上となるまで前記チャネルが印刷されるように構成され、
前記冷却板アセンブリは、プリント回路基板が前記第1の表面に印刷されるように構成される、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項8】
前記チャネル上に印刷された材料は誘電体材料で構成される、請求項7に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項9】
冷却剤を受け取るように構成された前記マニホールドの入口と、
前記冷却剤を提供するように構成された前記マニホールドの出口であって、前記出口は、前記入口に流体結合される、出口と、
前記入口と前記出口との間に配置された複数の流れ分配器であって、前記複数の流れ分配器は、前記入口の流体下流にさらに配置され、前記複数の流れ分配器は、前記入口の下流で前記冷却剤の流れを分配するように構成される、複数の流れ分配器と、
をさらに具備する、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項10】
少なくともグラファイト又はグラファイト複合体で構成された基層と、前記基層を少なくとも部分的に取り囲む導電層と、1つ又は複数のパワーデバイス空洞とを具備するSセルと、
前記1つ又は複数のパワーデバイス空洞の1つにそれぞれ配置された1つ又は複数のパワーデバイスであって、前記1つ又は複数のパワーデバイスのそれぞれは前記導電層に電気的に結合される、1つ又は複数のパワーデバイスと、
前記Sセルに接合された直接接合金属(DBM)基板と、
を具備する、パワーデバイスアセンブリ。
【請求項11】
ヒートシンクの第1の表面をさらに具備し、前記DBM基板は、前記第1の表面上のヒートシンク空洞内に配置される、請求項10に記載のパワーデバイスアセンブリ。
【請求項12】
前記第1の表面は、前記パワーデバイスアセンブリの上面と実質的に同じ平面上にある、請求項11に記載のパワーデバイスアセンブリ。
【請求項13】
前記Sセルと、前記1つ又は複数のパワーデバイスのそれぞれとは、前記1つ又は複数のパワーデバイスのそれぞれの周囲に延在するチャネルを画成し、前記チャネルは、前記チャネルの上面が前記第1の表面と実質的に同じ平面上となるまで印刷される、請求項11に記載のパワーデバイスアセンブリ。
【請求項14】
前記チャネル上に印刷された材料を誘電体材料で構成する、請求項13に記載のパワーデバイスアセンブリ。
【請求項15】
前記1つ又は複数のパワーデバイス空洞のそれぞれは、前記1つ又は複数のパワーデバイスのうちの1つのパワーデバイスを受容するように成形され、サイズ設定される、請求項10に記載のパワーデバイスアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、パワーエレクトロニックアセンブリのための装置及び方法に概ね関し、さらに具体的には、熱拡散が強化され、アセンブリの位置合わせが改善されたパワーエレクトロニックアセンブリのための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に電子機器を使用することが増えたため、電子システムをさらにコンパクトにする必要がある。このような電子システムの1つの構成要素が、インバータのスイッチとして使用されるパワーエレクトロニックデバイスである。パワーエレクトロニックデバイスには、熱が発生するため、多くの冷却要件がある。このような理由などから、コンパクトなパッケージサイズを維持しながら、パワーエレクトロニックデバイスの冷却とパワーエレクトロニクスデバイスのアセンブリの位置合わせとを改善する必要がある。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態では、パワーエレクトロニクスアセンブリ用の装置には、冷却板アセンブリ及び1つ又は複数のパワーデバイスアセンブリが含まれる。冷却板アセンブリは、マニホールド及びヒートシンクを有する。マニホールドは、第1の表面にヒートシンク空洞を有する。ヒートシンクは、1つ又は複数の基板空洞を備える。ヒートシンクは、ヒートシンク空洞内に位置決めされる。1つ又は複数のパワーデバイスアセンブリは、1つ又は複数の基板空洞内に位置決めされる。1つ又は複数のパワーデバイスアセンブリの各パワーデバイスアセンブリは、Sセルと、パワーデバイスと、Sセルに接合された直接接合金属(DBM)基板とを備える。Sセルは、少なくともグラファイト又はグラファイト複合体で構成される基層と、基層を少なくとも部分的に取り囲む導電層と、パワーデバイス空洞とを備える。パワーデバイスは、パワーデバイス空洞内に位置決めされ、導電層に電気的に結合される。
【0004】
別の実施形態では、パワーデバイスアセンブリには、Sセルと、1つ又は複数のパワーデバイスと、Sセルに接合された直接接合金属(DBM)基板が含まれる。Sセルは、少なくともグラファイト又はグラファイト複合体で構成される基層と、基層を少なくとも部分的に取り囲む導電層と、1つ又は複数のパワーデバイス空洞とを有する。1つ又は複数のパワーデバイスは、1つ又は複数のパワーデバイス空洞の1つにそれぞれ位置決めされる。1つ又は複数のパワーデバイスのそれぞれは、導電層に電気的に結合される。
【0005】
さらに別の実施形態では、パワーエレクトロニクスアセンブリを形成する方法を示している。この方法は、冷却板マニホールドの第1の表面上のヒートシンク空洞内にヒートシンクを位置決めするステップを含む。ここで、ヒートシンクは1つ又は複数の基板空洞を備える。この方法は、1つ又は複数の基板空洞内に1つ又は複数のパワーデバイスアセンブリを埋め込むステップをさらに含む。ここで、各パワーデバイスアセンブリは、少なくともグラファイト又はグラファイト複合体で構成された基層と、少なくとも部分的に基層を取り囲む導電層と、パワーデバイス空洞とを備える。この方法は、接合層をパワーデバイス空洞内に少なくとも部分的に設置するステップをさらに含む。この方法は、接合層を介してパワーデバイスをパワーデバイス空洞に接合するステップをさらに含み、パワーデバイスはSセルに電気的に結合される。
【0006】
本明細書に記載の実施形態によって提供されるこれまでに挙げた特徴及び追加の特徴は、図面と併せて以下の詳細な説明を考慮することにより、さらに完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図面に記載の実施形態は、本質的に例示的で説明的なものであり、特許請求の範囲によって定義される主題を限定することを意図するものではない。例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、類似の構造を類似の参照番号で示している以下の図面と併せて読むと理解することができる。
【0008】
【
図1】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、複数の埋め込みパワーデバイスアセンブリを含む例示的なパワーエレクトロニクスアセンブリの斜視図を概略的に示す図である。
【
図2】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、埋め込みパワーデバイスアセンブリの分解図と共に埋め込みパワーエレクトロニクスアセンブリの斜視図を概略的に示す図である。
【
図3】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、パワーデバイスアセンブリの分解斜視図を概略的に示す図である。
【
図4】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、埋め込みパワーデバイスアセンブリのSセルの斜視図を概略的に示す図である。
【
図5A】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、埋め込みパワーデバイスアセンブリのSセルの側面断面図を概略的に示す図である。
【
図5B】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、埋め込みパワーデバイスアセンブリのSセルの側面断面図を概略的に示す図である。
【
図5C】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、埋め込みパワーデバイスアセンブリのSセルの側面断面図を概略的に示す図である。
【
図6】
図1のパワーエレクトロニクスアセンブリのためのパワーデバイスアセンブリの詳細
図A-Aを、
図1に示すように、概略的に示す図である。
【
図7】図示し説明する1つ又は複数の実施形態による、冷却板アセンブリ用のマニホールドの斜視図を概略的に示す図である。
【
図8】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、冷却板用のヒートシンクの底面斜視図を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に記載の実施形態では、グラファイト又はグラファイト複合体で少なくとも部分的に構成されたSセルを有するパワーエレクトロニクスアセンブリを概ね対象とする。Sセルは、パワーエレクトロニクスデバイスが設置されるパワーデバイス空洞を有する。Sセルがグラファイト又はグラファイト複合体で少なくとも部分的に構成されているため、パワーエレクトロニクスデバイスは、Sセルを介してさらに多くの熱を拡散することができるほか、従来の取り組みと比較して、さらに効果的に冷却することができる。さらに、Sセルがグラファイト又はグラファイト複合体で少なくとも部分的に構成されているため、Sセルは、さらに正確な公差を定義し、従来の取り組みと比較して、アセンブリのずれが少なくなる。パワーデバイス空洞は、パワーエレクトロニクスデバイスの上面が冷却板アセンブリの上面と面一になるように設計され、パワーエレクトロニクスデバイスをSセルの底部電極に電気的に結合できるようになる。平らな表面により、プリント回路基板(PCB)を冷却板アセンブリに直接印刷することができる。熱を発生するパワーエレクトロニクスデバイスが冷却板に近接しているため、パワーエレクトロニクスアセンブリの冷却が改善される可能性がある。これにより、パワーエレクトロニクスデバイスは、コンパクトなパッケージサイズを維持しながら、さらに高い電力を出力することができる。
【0010】
本明細書では、「約」の付いた1つの特定の値から、及び/又は「約」の付いた別の特定の値までとして、範囲を表すことができる。そのような範囲を表現する場合、別の実施形態には、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までが含まれる。同じように、前置詞「約」を使用して、値を近似値として表す場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されよう。範囲のそれぞれの終点は、他の終点に関連しても、他の終点とは無関係であっても、重要であることがさらに理解されよう。
【0011】
本明細書で使用する方向用語、例えば、上、下、右、左、前、後、最上部、底部は、描かれた図を参照してのみ使用され、絶対的な向きを意味することを意図するものではない。
【0012】
別段の明示的な記載がない限り、本明細書に記載の方法はいずれも、そのステップが特定の順序で実行される必要があると解釈されることも、任意の装置に特定の向きが必要であると解釈されることも決して意図するものではない。このため、方法クレームがそのステップが従うべき順序を実際に述べていない場合、あるいは任意の装置クレームが個々の構成要素に対する順序又は向きを実際に述べていない場合、あるいは、ステップは特定の順序に限定されるべきであること又は装置の構成要素に対する特定の順序又は向きが記載されていないことが請求項又は明細書で特に述べられていない場合に、いかなる点でも順序又は向きが推測されることを意図するものではない。これは、ステップの配列、操作の流れ、構成要素の順序又は構成要素の向きに関する論理思考と、文法構成又は句読点に由来する明白な意味と、明細書に記載の実施形態の数又はタイプとをはじめ、解釈のための可能な任意の非明示的根拠に適用される。
【0013】
単数形「a」、「an」及び「the」は、本明細書で使用する場合、文脈が明確に別の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。このため、例えば、「a」の付いた構成要素への言及には、文脈が明確に別の指示をしない限り、2つ以上のそのような構成要素を有する態様が含まれる。
【0014】
従来のシステムでは、Sセルの熱を放散する能力が制限されている可能性があり、その結果、パワーデバイスの冷却が不充分になる可能性がある。これにより、パワーデバイスの出力が制限される場合がある。また、エッチングによりSセルを製造する場合、Sセルの製造精度が制限される場合がある。製造精度が低下すると、組み立て後にPCBビアがパワーデバイスの信号パッドからずれてしまう可能性がある。パワーエレクトロニクスアセンブリ、パワーエレクトロニクスアセンブリを製造する方法及びパワーエレクトロニクスアセンブリの動作のさまざまな実施形態を、本明細書でさらに詳細に説明する。本明細書に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリは、パワーデバイスの冷却を改善するために熱拡散を改善する可能性がある。パワーエレクトロニクスアセンブリはこのほか、組み立て時のパワーエレクトロニクスアセンブリのずれを低減するために、製造精度が向上したSセルを有する場合がある。可能な限り、同一又は類似の部品を参照するために、図面全体を通して同一の参照番号を使用する。
【0015】
本明細書に示し説明する各構造は、コンパクトなパッケージサイズ、熱拡散の増大、製造精度の向上、組立公差の改善及び流量分布の改善により、従来の構造(例えば、パワーエレクトロニクスアセンブリ)よりも優れた利点を提供し、そのいずれもが冷却能力を高める。さらに、本明細書に示し説明する構造はこのほか、従来とは異なる空間で展開可能であったり、及び/又は既存の構成要素と統合されたりしてもよい。例えば、本明細書に示し説明する構造は、モータ冷却システム(例えば、インホイールモータ)又は冷却剤を使用する他のシステムと一体化され、その結果、冷却剤を複数の目的に使用することができる。
【0016】
ここで
図1-
図2を参照すると、本明細書に記載の1つ又は複数の実施形態による例示的なパワーエレクトロニクスアセンブリ100を示している。特に、
図1は、組み立てられた構成の複数のパワーデバイスアセンブリ114を含むパワーエレクトロニクスアセンブリ100を示すのに対し、
図2は、分解図で示す複数のパワーデバイスアセンブリ114の個々のパワーデバイスアセンブリを有するパワーエレクトロニクスアセンブリ100を示す。
【0017】
いくつかの実施形態では、例示的なパワーエレクトロニクスアセンブリ100は、電気自動車で利用される。他の実施形態では、パワーエレクトロニクスアセンブリ100は、ハイブリッド車両、任意の電気モータ、発電機、工業用工具、家庭用電化製品などの電気駆動装置で使用されるが、ここに挙げたものに限定されない。パワーエレクトロニクスアセンブリ100は、電気モータ及び/又はバッテリに電気的に結合されてもよく、電気モータ及び/又はバッテリから電力を受け取るように構成される。
【0018】
例示的なパワーエレクトロニクスアセンブリ100は、パワーデバイスアセンブリ114によって生成された熱を吸収しながら、冷却板アセンブリ102に埋め込まれたパワーデバイスアセンブリ114を収容するように構成された冷却板アセンブリ102を含んでもよい。本明細書でさらに詳細に考察するように、冷却板アセンブリ102は、パワーデバイスアセンブリ114によって生成された熱を吸収し得る冷却剤を受け取り、その冷却剤を下流の冷却システムに提供する。このようにして、冷却板アセンブリ102は、効率的な方法でパワーエレクトロニクスアセンブリ100から熱を除去することができる。冷却板アセンブリ102は、熱伝導性材料のブロックから機械加工されても、鍛造されても、押し出し成型されても、鋳造されてもよい。いくつかの実施形態では、冷却板アセンブリ102は3D印刷される。
【0019】
例示的な冷却板アセンブリ102は、マニホールド104(例えば、マニホールドプレート)を備えてもよい。マニホールド104は、パワーエレクトロニクスアセンブリ100から熱を除去するために冷却剤を受け渡すように構成される。マニホールド104は、第1の表面106(例えば、第1の平面)と、第1の表面106の反対側に位置決めされた第2の表面107(例えば、第2の平面)とを有する。第1の表面106は、実質的に平坦な外形を形成してもよい。本明細書でさらに詳細に考察するように、PCBを、第1の表面106上に(例えば、3次元印刷(3D印刷)によって)印刷してもよい。これは、パワーエレクトロニクスアセンブリ100の熱抵抗を低減するため、有利である。実施形態では、第1の表面106は、凹状又は凸状の外形を形成してもよい。実施形態では、第1の表面106は、空洞又は押し出しボスを形成してもよい。このような実施形態では、PCBの合わせ面を、第1の表面106の外形を受容するような外形にする。
【0020】
マニホールド104は、入口132(例えば、入力ポート)、ヒートシンク空洞108及びヒートシンク110を備える。入口132は、(図示しない)冷却システムから冷却剤を受け取るように構成される。冷却剤は、入口132に流入した後に、ヒートシンク空洞108内に位置決めされたヒートシンク110と相互作用する。冷却剤は、ヒートシンク110と相互作用した後、ヒートシンク110から熱を受け取るように構成される。冷却板アセンブリ102は、出口134(例えば、出力ポート)をさらに備える。温められた冷却剤は、出口134を介して冷却板アセンブリ102から流出する。このようにして、冷却板アセンブリ102は、パワーエレクトロニクスアセンブリ100を冷却することができる。実施形態では、入口132及び出口134は、マニホールド104の対向する側壁に位置決めされる。実施形態では、入口132及び出口134は、マニホールド104の同じ側壁又は隣接する側壁に位置決めされる。実施形態では、入口132及び/又は出口134のいずれかが、マニホールド104の第1の表面106又は第2の表面107上に位置決めされてもよい。
【0021】
ヒートシンク110をヒートシンク空洞108内に設置した後、ヒートシンク110の上面が、第1の表面106と面一(例えば、同じ平面に沿って平ら)であってもよい。これは、パワーエレクトロニクスアセンブリ100上に印刷されるPCBに平らな表面を提供するため、有利である。ヒートシンク110は、ヒートシンク110の上面に位置決めされた複数の基板空洞112を備えてもよい。複数の基板空洞112のそれぞれは、構成要素が複数の基板空洞112のそれぞれに設置されるときに、複数の基板空洞112のそれぞれの上面が第1の表面106と面一になるのに充分な基板空洞の深さを形成する。これは、パワーエレクトロニクスアセンブリ100上に印刷されるPCBに平らな表面を提供するため、有利である。
【0022】
いくつかの実施形態では、パワーエレクトロニクスアセンブリ100全体が3D印刷される。ヒートシンク空洞108、基板空洞112及びパワーデバイス空洞122の自動位置合わせのために、各構成要素はそれぞれの基準点を有する。これにより、アセンブリ全体にわたる組立公差が低くなる。組立公差が小さいほど、パワーエレクトロニクスデバイスの3D印刷されたPCBビアと電気パッドとの間のずれが少なくなる可能性がある。いくつかの実施形態では、パワーエレクトロニクスアセンブリ100のばらつきが少ないため、パワーエレクトロニクスアセンブリ100の全体を3D印刷してもよい。
【0023】
ここで
図4及び
図5Aを参照すると、パワーデバイスアセンブリ114用のSセル116を示している。Sセル116は、導電層116bによって封入されたグラファイト又はグラファイト複合体で少なくとも部分的に構成された基層116aを備える。グラファイト及びグラファイト複合体は、グラファイトの高い熱伝導率により、Sセル116への熱拡散を改善する。Sセル116への熱拡散が改善されたことにより、Sセル116がヒートシンク110に伝達する熱を増大させる可能性がある。これにより、各パワーデバイスアセンブリ114の冷却が改善される。この改善された冷却により、各パワーデバイスアセンブリ114の電力出力を増大させる可能性がある。これは、パワーエレクトロニクスアセンブリ100のサイズをさらにコンパクトにし、電力密度を高くする可能性がある。パワーデバイス空洞122が第1の深さD1を形成するように、パワーデバイス空洞122の上面が導電層116bの厚い層132を形成する。このようにして、パワーデバイス126と導電層116bとの間の電気伝導性を改善する可能性がある。
【0024】
実施形態では、グラファイト又はグラファイト複合体の塩基組成は、(
図4に示すように)グラファイト又はグラファイト複合体の熱伝導率がZ軸にて増大するように、再配向されてもよい。これは、熱伝達の方向を制御して、各パワーデバイスアセンブリ114の冷却速度を増大させる可能性があるため、有利である。実施形態では、グラファイト又はグラファイト複合体はこのほか、グラファイト又はグラファイト複合体の熱伝導率がZ軸及び第2の軸(例えば、
図4に示すX軸又はY軸)にて増大するように、再配向されてもよい。実施形態では、グラファイト又はグラファイト複合体は、グラファイト又はグラファイト複合体の熱伝導率がX軸及び/又はY軸にて増大するように、再配向されてもよい。グラファイト又はグラファイト複合体は、任意の既知の手段(例えば、炭化処理、磁気処理)によって再配向されてもよい。
【0025】
従来のシステムでは、組立公差が大きいため、ずれが生じる場合がある。組立公差が大きいのは、このような従来のシステムの個々の構成要素の製造上の不正確さの結果である可能性がある。このため、このような従来のシステムは、PCBビアがパワーエレクトロニクスデバイスの電気パッドからずれる傾向があり、このような従来のシステム上にPCBを3D印刷することを妨げる可能性がある。
【0026】
改善された熱拡散に加えて、グラファイト又はグラファイト複合体で構成された基層116aの製造を機械加工によって実施してもよい。これは、基層116aの製造公差の減少をもたらす可能性がある。さらに、本明細書に開示するSセル116は、マニホールド104を直接基準とする(例えば、同マニホールドに位置合わせされる)。これにより、複数のパワーデバイスアセンブリ114のそれぞれを特定の位置に固定することによって、複数のパワーデバイスアセンブリ114のそれぞれの位置がわかるようになり、これにより、パワーエレクトロニクスアセンブリ100の全体的な組立公差が減少する。これにより、PCBをパワーエレクトロニクスアセンブリ100上に直接印刷することが可能になる。
【0027】
Sセル116は、基層116aを取り囲む、
図5Aに示すような導電層116bをさらに備える。導電層116bは、パワーデバイスアセンブリ114のそれぞれに電気導管を提供する。導電層116bは、銅、アルミニウム又は任意の他の適切な導電性材料で構成されてもよい。導電層116bは、マニホールド104に設置されたときに第1の表面106と実質的に面一である最上層表面117(例えば、上板)を備える。Sセル116は、パワーデバイスアセンブリ114のパワーデバイス126を収容するために最上層表面117内に形成されたパワーデバイス空洞122をさらに備える。
【0028】
ここで
図5A~
図5Cを参照すると、3つの異なる実施形態によるSセル116の側面断面図を示している。
図5Aでは、パワーデバイス空洞122が第1の深さD1を形成するように、パワーデバイス空洞122の上面が導電層116bの厚い層132を形成する。このようにして、パワーデバイス126と導電層116bとの間の電気伝導性を改善してもよい。
【0029】
図5Bでは、導電層116b´は、パワーデバイス空洞122の上面まで延びていない。このような実施形態では、グラファイト又はグラファイト複合体で構成された露出基層116a上に導電性被覆134を付与してもよい。その後、パワーデバイス126は、基層116a及び導電性被覆134に直接接合されてもよい。このようにして、パワーデバイス126から導電層116b´への熱伝導率を高めてもよい。さらに、導電性被覆134は、パワーデバイス126とSセル116´との間の接着を向上させてもよい。このような実施形態では、パワーデバイス126の高さ及び導電性被覆134の被覆高さは、パワーデバイス126がパワーデバイス空洞122内に組み入れられたときに、パワーデバイス空洞122の深さに実質的に等しくなるように構成される。これにより、パワーデバイスアセンブリ114の上面が第1の表面106と面一になる。
【0030】
図5Cでは、パワーデバイス空洞122の表面は、導電層116b´´の薄層132´´を形成し、その結果、Sセル116´´´のパワーデバイス空洞122が、第1の深さD1よりも大きい第2の深さD2を形成する。このようにして、パワーデバイス126は、導電層116bへの熱拡散を増大させてもよい。
【0031】
ここで
図3を参照すると、さまざまな実施形態によるパワーデバイスアセンブリ114を分解図で示している。複数のパワーデバイスアセンブリ114は、複数の基板空洞112に埋め込まれる(例えば、配置される)。非限定的な例として、複数のパワーデバイスアセンブリ114は、電気モータなどの電気装置に電力を供給するためのインバータ回路を形成してもよい。パワーデバイスアセンブリ114のそれぞれは、直接接合金属(DBM)基板119を備える。DBM基板119は、2つの金属層(例えば、Cu又はAl)の間に挟まれた(例えば、挿入された)セラミック層(例えば、アルミナ)を含む。DBM基板119は、パワーデバイスアセンブリ114を互いから電気的に絶縁する。各DBM基板119は、第1の接合層(例えば、接着層)を介してパワーデバイス空洞122に接合される。第1の接合層は、パワーデバイス空洞122の底面及び/又は側面に位置決めされ、構成要素をパワーデバイス空洞122に接合するように構成される。第1の接合層は、銀焼結、はんだ付け、過渡液相接合(TLP)又は任意の他の適切な接合材料で構成されてもよい。次いで、Sセル116は、Sセル116とDBM基板119との間に介在する第2の接合層を介してDBM基板119に接合されてもよい。
【0032】
各パワーデバイスアセンブリ114は、パワーデバイス126をさらに備える。パワーデバイス126は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)又は任意の他の適切なパワーデバイスであってもよい。パワーデバイス126は、パワーデバイス空洞122に埋め込まれる。パワーデバイス126は、接合層124を介してパワーデバイス空洞122に接合されても、はんだ付けされても、接着されてもよい。パワーデバイス126は、高電圧を必要とする構成要素の電源接続を可能にする電気パッド128を備える。パワーデバイス126は、ドライバ(例えば、ゲートドライバ)から制御信号を受信し、パワーデバイスアセンブリ114に埋め込まれたセンサ(例えば、温度センサ、電流センサ)から信号を提供し得る小さめの電気パッド130をさらに備える。パワーデバイス126は、Sセル116に電気的に結合される(図示しない)底部電極を備える。パワーデバイス126のパワーデバイス高さ及び接合層124の接合高さを、パワーデバイス空洞122の深さと実質的に等しくなるように構成する。これにより、パワーデバイスアセンブリ114の上面が第1の表面106と面一になる。
【0033】
各パワーデバイス126がパワーデバイス空洞122のうちの1つに位置決めされるため、各パワーデバイス126は冷却板アセンブリ102に対して自動位置合わせされる。換言すれば、各パワーデバイス126を特定の位置に固定することにより、各パワーデバイス126の位置がわかる。これにより、パワーエレクトロニクスアセンブリ100の全体的な組立公差が減少する。さらに、この配置により、PCBを第1の表面106上に直接3D印刷することが容易になる。これは、パワーエレクトロニクスアセンブリ100の各パワーデバイス高さが第1の表面106に対して面一であり、各空洞がそれぞれの構成要素を自動位置合わせすることによるものである。
【0034】
ここで
図6を参照すると、
図1の詳細
図A-Aから取り出された、
図1のパワーデバイスアセンブリの斜視図を示している。パワーデバイスアセンブリ114は、パワーデバイスアセンブリ114の周囲と基板空洞112との間にチャネル602(例えば、空間、空き領域)を形成する。実施形態では、パワーエレクトロニクスアセンブリ100上にPCBを設置するか、3D印刷する前に、マニホールド104はリフロー処理を受けてもよい。リフロー処理は、マニホールド104上に、冷却板アセンブリ102に位置合わせされたリフロー固定具を適用するステップを含んでもよい。その後、マニホールド104は、パワーデバイスアセンブリ114のそれぞれが基板空洞112のそれぞれの内部で一時的に移動可能であるように、再加熱されてもよい。次に、パワーデバイスアセンブリ114のそれぞれを動かして、リフロー固定具に位置合わせしてもよい。このようにして、パワーデバイスアセンブリ114のそれぞれを、冷却板アセンブリ102に位置合わせして、DBM基板119によって引き起こされるあらゆるずれを補償する。
【0035】
リフロー処理が完了した時点で、チャネル602は、第1の表面106と面一になるように充填されてもよい。チャネル602は、手動の充填処理によって充填されてもよく、あるいは3Dプリンタによって印刷される。これは、第1の表面106が冷却板アセンブリ102の上面全体にわたって面一であることを可能にするため、有利である。さらに、チャネルは、各パワーデバイスアセンブリ114を互いからさらに電気的に絶縁し得るように、誘電体材料で充填されてもよい。
【0036】
ここで
図7を参照すると、組み立てられていない状態のマニホールド104の斜視図を示している。マニホールド104の入口132は、入口開口部702及びマニホールド入口704を備える。入口132は、入口開口部702を介して冷却剤を受け取る。図示のように、入口開口部702は円形を形成するが、他の形状(例えば、楕円形、長方形)が考えられ、可能である。入口132は、マニホールド入口704を介してヒートシンク空洞108に冷却剤を提供する。図示のように、マニホールド入口704は楕円形を形成するが、他の形状(例えば、円形、長方形)が考えられ、可能である。
【0037】
マニホールド104は、複数の流れ分配器708を備える。複数の流れ分配器708は、ヒートシンク空洞108の底面から延在し、入口132と出口134との間にさらに位置決めされる。複数の流れ分配器708のそれぞれは、マニホールド104の所定の領域に冷却剤の流れを導くように協働する。これは、マニホールド104の冷却を向上させる必要のある領域に冷却剤を方向づけ得るため、有利である。例えば、他のパワーデバイスアセンブリ114より高い電圧で動作するパワーデバイスアセンブリ114の直下を流れるように、追加の冷却剤を方向づけてもよい。このようにして、パワーデバイスアセンブリ114からマニホールド104内の冷却剤までの全体的な冷却速度が向上する場合がある。
【0038】
図示のように、複数の流れ分配器708は、3つの流れ分配器を形成する。しかし、複数の流れ分配器708には、任意の数の流れ分配器があってもよい。図示のように、複数の流れ分配器708は、入口132に隣接している。しかし、複数の流れ分配器708は、入口132と出口134との間の等距離に位置決めされても、出口134に隣接して位置決めされてもよい。実施形態では、複数の流れ分配器708の複数のセットがあり、それぞれがマニホールド104内のさまざまな点に位置決めされる。
【0039】
出口134は、マニホールド出口710及び出口開口部712を備える。冷却剤は、ヒートシンク110から熱を受け取った後、マニホールド出口710を介してヒートシンク空洞108から流出してもよい。図示のように、マニホールド出口710は楕円形を形成するが、他の形状(例えば、円形、長方形)が考えられ、可能である。次に、冷却剤は、出口開口部712を介して(図示しない)下流の構成要素に提供されてもよい。
【0040】
マニホールド104は、マニホールド合わせ面706をさらに備える。マニホールド合わせ面706は、ヒートシンク110を受容し得るような外形を有する。図示のように、マニホールド合わせ面706は平らな外形を形成するが、他の外形が考えられ、可能である。
【0041】
ここで
図8を参照すると、ヒートシンク110の底面斜視図を示している。ヒートシンク110は、ヒートシンク合わせ面802を備える。組み立てられた状態では、ヒートシンク合わせ面802は、マニホールド合わせ面706と接触している(例えば、同合わせ面上に載っている)。図示のように、ヒートシンク合わせ面802は平らな外形を形成するが、他の外形が考えられ、可能である。
【0042】
ヒートシンク110は、ヒートシンク110の底面に位置決めされた複数のチャネル804を備えてもよい。パワーデバイスアセンブリ114のそれぞれによって熱が生成されると、熱はヒートシンク110に伝達される。ヒートシンク110は、マニホールド104内の冷却剤によって熱が消散され得るように、熱をヒートシンク110の底面に伝達する。複数のチャネル804は、ヒートシンク110の幅に沿って延在し、マニホールド104内の冷却剤と相互作用する。複数のチャネル804のそれぞれは、チャネル入口806、チャネル808及びチャネル出口810を備える。
【0043】
複数の流れ分配器708は、複数のチャネル804と協働して、冷却板アセンブリ102の冷却能力を高めてもよい。例えば、冷却剤がヒートシンク空洞108に流入した後、複数の流れ分配器708のそれぞれは、複数のチャネル804のそれぞれのセットに冷却剤を分配してもよい。次に、冷却剤は、チャネル入口806を介して、複数のチャネル804のそれぞれのセットに流入する。次いで、冷却剤は、チャネル808を介して熱を吸収するために、ヒートシンク110と相互作用する。冷却剤は、チャネル出口810を介して複数のチャネル804のそれぞれから流出する。このようにして、冷却剤の流路をさらに制御して、冷却板アセンブリ102の冷却能力を高めてもよい。
【0044】
上記から、本明細書で定義する実施形態は、グラファイト又はグラファイト複合体で少なくとも部分的に構成されたSセルを有するパワーエレクトロニクスアセンブリを概ね対象とする実施形態であることを理解されたい。Sセルは、パワーエレクトロニクスデバイスが設置されるパワーデバイス空洞を有する。Sセルがグラファイト又はグラファイト複合体で少なくとも部分的に構成されているため、パワーエレクトロニクスデバイスは、従来の取り組みと比較して、Sセルに拡散する熱を増大させ、冷却をさらに効果的にすることができる。さらに、Sセルがグラファイト又はグラファイト複合体で少なくとも部分的に構成されているため、Sセルは、いっそう正確な公差を定義し、従来の取り組みと比較して、アセンブリのずれが少なくなる。パワーデバイス空洞は、パワーエレクトロニクスデバイスの上面が冷却板アセンブリの上面と面一になるように設計され、パワーエレクトロニクスデバイスをSセルの底部電極に電気的に結合することができるようにする。平らな表面により、プリント回路基板(PCB)を冷却板アセンブリに直接印刷することができる。熱を発生するパワーエレクトロニクスデバイスが冷却板に近接しているため、パワーエレクトロニクスアセンブリの冷却が改善される場合がある。これにより、パワーエレクトロニクスデバイスは、コンパクトなパッケージサイズを維持しながら、出力する電力を高くすることができる。
【0045】
「実質的に」及び「約」という用語は、定量的比較、値、測定又は他の表現に起因する可能性がある固有の不確実性の程度を表すために本明細書で使用され得ることに留意されたい。このような用語はこのほか、問題の主題の基本的な機能に変化をもたらすことなく、量的表現が、記載された基準から変化し得る程度を表すために本明細書で使用される。
【0046】
本明細書では特定の実施形態を例示し説明してきたが、特許請求される主題の範囲から逸脱することなく、他のさまざまな変更及び修正を施し得ることを理解されたい。さらに、特許請求される主題のさまざまな態様を本明細書で説明してきたが、そのような態様を組み合わせて利用する必要はない。このため、添付の特許請求の範囲は、特許請求された主題の範囲内にあるそのような変更及び修正をいずれも網羅することが意図されている。
【0047】
当業者には、特許請求される主題の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態に対してさまざまな修正及び変形を施すことができることが明らかであろう。このため、本明細書は、本明細書に記載のさまざまな実施形態の修正及び変形を網羅することを意図しており、そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にある。
【0048】
〔例1〕
冷却板アセンブリであって、
第1の表面にヒートシンク空洞を具備するマニホールドと、
1つ又は複数の基板空洞を具備するヒートシンクであって、前記ヒートシンクは、前記ヒートシンク空洞内に配置される、ヒートシンクと、を具備する、冷却板アセンブリと、
前記1つ又は複数の基板空洞内に配置された1つ又は複数のパワーデバイスアセンブリであって、前記1つ又は複数のパワーデバイスアセンブリの各パワーデバイスアセンブリは、
Sセルであって、
少なくともグラファイト又はグラファイト複合体で構成される基層と、
前記基層を少なくとも部分的に取り囲む導電層と、
パワーデバイス空洞と、を具備する、Sセルと、
前記パワーデバイス空洞内に配置されたパワーデバイスであって、前記パワーデバイスは、前記導電層に電気的に結合される、パワーデバイスと、
前記Sセルに接合された直接接合金属(DBM)基板と、を具備する、1つ又は複数のパワーデバイスアセンブリと、
を具備する、パワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例2〕
前記パワーデバイス空洞と前記パワーデバイスとの間に少なくとも部分的に配置された導電性被覆であって、前記導電性被覆は被覆高さを画成する、導電性被覆をさらに具備し、
前記1つ又は複数の基板空洞のそれぞれは、基板空洞深さを画成し、
前記パワーデバイスは、パワーデバイス高さを画成し、
前記基板空洞深さは、前記導電性被覆を含む前記パワーデバイス高さと値が実質的に等しい、例1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例3〕
前記パワーデバイス空洞と前記パワーデバイスとの間に少なくとも部分的に配置された接合層であって、前記接合層は接合高さを画成する、接合層をさらに具備し、
前記1つ又は複数の基板空洞のそれぞれは、基板空洞深さを画成し、
前記パワーデバイスは、パワーデバイス高さを画成し、
前記基板空洞深さは、前記接合層を含む前記パワーデバイス高さと値が実質的に等しい、例1に記載のワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例4〕
前記DBM基板は電気絶縁材料で構成される、例1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例5〕
前記パワーデバイス空洞は、前記パワーデバイスを受容するように成形され、サイズ設定される、例1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例6〕
前記Sセルの上面は、前記パワーデバイスの上面と実質的に同じ平面上にある、例1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例7〕
前記第1の表面は、前記パワーデバイスの上面と実質的に同じ平面上にあり、
前記Sセル及び前記パワーデバイスは、前記パワーデバイスの周囲に延在するチャネルを画定し、
前記冷却板アセンブリは、前記チャネルの上面が前記第1の表面と同じ平面上となるまで前記チャネルが印刷されるように構成され、
前記冷却板アセンブリは、プリント回路基板が前記第1の表面に印刷されるように構成される、例1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例8〕
前記チャネル上に印刷された材料は誘電体材料で構成される、例7に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例9〕
冷却剤を受け取るように構成された前記マニホールドの入口と、
前記冷却剤を提供するように構成された前記マニホールドの出口であって、前記出口は、前記入口に流体結合される、出口と、
前記入口と前記出口との間に配置された複数の流れ分配器であって、前記複数の流れ分配器は、前記入口の流体下流にさらに配置され、前記複数の流れ分配器は、前記入口の下流で前記冷却剤の流れを分配するように構成される、複数の流れ分配器と、
をさらに具備する、例1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例10〕
少なくともグラファイト又はグラファイト複合体で構成された基層と、前記基層を少なくとも部分的に取り囲む導電層と、1つ又は複数のパワーデバイス空洞とを具備するSセルと、
前記1つ又は複数のパワーデバイス空洞の1つにそれぞれ配置された1つ又は複数のパワーデバイスであって、前記1つ又は複数のパワーデバイスのそれぞれは前記導電層に電気的に結合される、1つ又は複数のパワーデバイスと、
前記Sセルに接合された直接接合金属(DBM)基板と、
を具備する、パワーデバイスアセンブリ。
〔例11〕
ヒートシンクの第1の表面をさらに具備し、前記DBM基板は、前記第1の表面上のヒートシンク空洞内に配置される、例10に記載のパワーデバイスアセンブリ。
〔例12〕
前記第1の表面は、前記パワーデバイスアセンブリの上面と実質的に同じ平面上にある、例11に記載のパワーデバイスアセンブリ。
〔例13〕
前記Sセルと、前記1つ又は複数のパワーデバイスのそれぞれとは、前記1つ又は複数のパワーデバイスのそれぞれの周囲に延在するチャネルを画定し、前記チャネルは、前記チャネルの上面が前記第1の表面と実質的に同じ平面上となるまで印刷される、例11に記載のパワーデバイスアセンブリ。
〔例14〕
前記チャネル上に印刷された材料を誘電体材料で構成する、例13に記載のパワーデバイスアセンブリ。
〔例15〕
前記1つ又は複数のパワーデバイス空洞のそれぞれは、前記1つ又は複数のパワーデバイスのうちの1つのパワーデバイスを受容するように成形され、サイズ設定される、例10に記載のパワーデバイスアセンブリ。
〔例16〕
前記Sセルの上面が、前記パワーデバイスアセンブリの上面と実質的に同じ平面にある、例10に記載のパワーデバイスアセンブリ。
〔例17〕
パワーエレクトロニクスアセンブリを形成する方法であって、
冷却板マニホールドの第1の表面上のヒートシンク空洞内にヒートシンクを位置決めすることであって、前記ヒートシンクは1つ又は複数の基板空洞を具備することと、
前記1つ又は複数の基板空洞内に1つ又は複数のパワーデバイスアセンブリを埋め込むことであって、各パワーデバイスアセンブリは、少なくともグラファイト又はグラファイト複合体で構成された基層と、前記基層を少なくとも部分的に取り囲む導電層と、パワーデバイス空洞とを有するSセルを具備する、ことと、
接合層を前記パワーデバイス空洞内に少なくとも部分的に設置することと、
前記接合層を介してパワーデバイスを前記パワーデバイス空洞に接合することであって、前記パワーデバイスは前記Sセルに電気的に結合されることと、
を含む、方法。
〔例18〕
前記パワーデバイス空洞は、前記パワーデバイスを受容するように成形され、サイズ設定される、例17に記載の方法。
〔例19〕
前記第1の表面上にプリント回路基板を印刷することをさらに含み、前記Sセルの上面が、前記パワーデバイスの上面と実質的に同じ平面上にある、例17に記載の方法。
〔例20〕
前記冷却板マニホールドの入口を介して冷却剤の流れを受け取ることと、
前記冷却板マニホールドの出口を介して前記冷却剤の流れを提供することであって、前記出口は前記入口に流体接合される、ことと、
複数の流れ分配器を介して前記入口の下流に前記冷却剤の流れを分配することであって、前記複数の流れ分配器は、前記入口と前記出口との間に配置され、前記複数の流れ分配器は、前記入口の流体下流にさらに配置される、ことと、
をさらに含む、例17に記載の方法。
【外国語明細書】