(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112720
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】遊星ギヤアッセンブリ、HMT装置及びトランスミッション構造
(51)【国際特許分類】
F16H 3/66 20060101AFI20230807BHJP
F16H 47/04 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
F16H3/66 A
F16H47/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014585
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 輝延
【テーマコード(参考)】
3J528
【Fターム(参考)】
3J528EA25
3J528EA30
3J528EB21
3J528EB37
3J528EB53
3J528EB62
3J528EB74
3J528EB85
3J528FB05
3J528FC13
3J528FC24
3J528FC64
3J528GA12
3J528HA13
3J528JA02
3J528JD04
3J528JG04
(57)【要約】
【課題】HSTと共働して形成するHMT装置の変速幅を拡げつつ、装置全体の小型化を図り得る遊星ギヤアッセンブリを提供する。
【解決手段】本発明に係る遊星ギヤアッセンブリは、伝動軸と、サンギヤが伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持された第1及び第2遊星ギヤ機構と、伝動軸に軸線回り相対回転自在に外挿された連結部材とを備える。連結部材は、第1遊星ギヤ機構のうちサンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素と、第2遊星ギヤ機構のうちサンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素とを軸線回り相対回転不能に連結する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からポンプ軸に作動的に入力される基準回転速動力を第1HST速及び第2HST速の間で無段変速し、変速後のHST出力をモータ軸から出力するHSTと共働してHMT装置を形成する遊星ギヤアッセンブリであって、
伝動軸と、
第1サンギヤ、第1キャリヤ及び第1インターナルギヤを含む遊星3要素を有し、前記第1サンギヤが前記伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持され、前記第1キャリヤ及び前記第1インターナルギヤの一方が基準回転速動力を入力可能とされた基準回転速動力入力部を形成する第1遊星ギヤ機構と、
第2サンギヤ、第2キャリヤ及び第2インターナルギヤを含む遊星3要素を有し、前記第2サンギヤが前記伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持され、前記第2キャリヤ及び前記第2インターナルギヤのうち、前記第1遊星ギヤ機構における基準回転速動力入力部を形成する遊星要素とは異なる遊星要素が基準回転速動力を入力可能とされた基準回転速動力入力部を形成する第2遊星ギヤ機構と、
前記伝動軸に軸線回り相対回転自在に外挿された連結部材とを備え、
前記連結部材は、前記第1遊星ギヤ機構のうち前記第1サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素と、前記第2遊星ギヤ機構のうち前記第2サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素とを軸線回り相対回転不能に連結していることを特徴とする遊星ギヤアッセンブリ。
【請求項2】
前記伝動軸はHST出力を作動的に入力可能とされ、
前記連結部材は、前記第1遊星ギヤ機構のうち前記第1サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素と、前記第2遊星ギヤ機構のうち第2サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素とを連結する連結体と、前記連結体の回転動力を外部へ出力可能な出力体とを有していることを特徴とする請求項1に記載の遊星ギヤアッセンブリ。
【請求項3】
前記連結部材はHST出力を作動的に入力可能とされ、
前記伝動軸は、自身の軸線回りの回転動力を外部へ出力可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の遊星ギヤアッセンブリ。
【請求項4】
前記伝動軸はHST出力を作動的に入力可能とされた筒軸とされており、
前記遊星ギヤアッセンブリには、前記伝動軸が軸線回り相対回転自在に外挿される出力軸が備えられ、
前記連結部材は、前記第1遊星ギヤ機構のうち前記第1サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素と、前記第2遊星ギヤ機構のうち前記第2サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素とを連結する連結体と、前記連結体の回転動力を外部へ出力可能な出力体とを備え、
前記出力体は前記出力軸に同軸上において軸線回り相対回転不能とされていることを特徴とする請求項2に記載の遊星ギヤアッセンブリ。
【請求項5】
駆動源からポンプ軸に作動的に入力される基準回転速動力を第1HST速及び第2HST速の間で無段変速し、変速後のHST出力をモータ軸から出力するHSTと共働してHMT装置を形成する遊星ギヤアッセンブリであって、
HST出力が作動的に入力可能とされた伝動軸と、
前記伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持された第1要素、基準回転速動力が入力可能とされた第2要素並びに前記第1及び第2要素に入力された回転動力を合成した合成回転動力を出力する第3要素を有する第1遊星ギヤ機構と、
前記伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持された第1要素、基準回転速動力が入力可能とされた第2要素並びに前記第1及び第2要素に入力された回転動力を合成した合成回転動力を出力する第3要素を有する第2遊星ギヤ機構と、
前記伝動軸に軸線回り相対回転自在に外挿された連結部材とを備え、
前記連結部材は、前記第1及び第2遊星ギヤ機構の第3要素同士を連結する連結体と、前記連結体の回転動力を外部へ出力可能な出力体とを有していることを特徴とする遊星ギヤアッセンブリ。
【請求項6】
前記伝動軸に軸線回り相対回転自在な状態で、前記第2遊星ギヤ機構の第2要素に連結された入力部材を備え、
前記入力部材は、基準回転速動力を入力可能な第1及び第2入力ギヤ部を有し、
前記第2入力ギヤ部のピッチ径は前記第1入力ギヤ部のピッチ径よりも小径とされていることを特徴とする請求項5に記載の遊星ギヤアッセンブリ。
【請求項7】
前記第1遊星ギヤ機構は、第1要素として作用する第1サンギヤと、第3要素として作用する第1キャリヤと、第2要素として作用する第1インターナルギヤとを有し、
前記第2遊星ギヤ機構は、第1要素として作用する第2サンギヤと、第2要素として作用する第2キャリヤと、第3要素として作用する第2インターナルギヤとを有し、
前記第1遊星ギヤ機構は、伝動状態下において、HST出力が第1HST速の側から第2HST速の側へ変化されるに従って前記第1キャリヤが軸線回り一方側である第1回転方向へ増速回転し、且つ、HST出力が所定の第1速段最高速用HST速とされた際に前記第1キャリヤが第1回転方向へ所定の第1速段最高速で回転するように、ギヤ比が設定され、
前記第2遊星ギヤ機構は、伝動状態下において、HST出力が第1速段最高速用HST速とされた際に前記第2インターナルギヤが第1回転方向へ第1速段最高速で回転し、且つ、HST出力が第1速段最高速用HST速から第1HST速の側へ所定の第2速段最高速用HST速まで変化されるに従って前記第2インターナルギヤの回転速が第1速段最高速から第2速段最高速まで増速するように、ギヤ比が設定されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の遊星ギヤアッセンブリ。
【請求項8】
前記連結体は、軸線方向に延びる筒部と、前記筒部の軸線方向第1側から径方向外方へ延びて前記第1キャリヤに連結される第1フランジと、前記筒部の軸線方向第2側から径方向外方へ延びて前記第2インターナルギヤに連結される第2フランジとを有していることを特徴とする請求項7に記載の遊星ギヤアッセンブリ。
【請求項9】
前記出力体は、前記第1キャリヤに支持された第1遊星ギヤを挟んで前記連結体とは軸線方向に関し反対側に配置され且つ前記連結体の軸線方向第1側に軸線回り相対回転不能に連結される連結フランジと、前記連結フランジから軸線方向第1側へ延びる軸部とを有していることを特徴とする請求項7又は8に記載の遊星ギヤアッセンブリ。
【請求項10】
前記軸部に軸線回り相対回転自在に外挿された伝動ギヤ部材を備え、
前記伝動ギヤ部材は、前記駆動源から作動的に入力される基準回転速動力を入力する入力ギヤ部と、前記第1インターナルギヤに噛合する出力ギヤ部とを有していることを特徴とする請求項9に記載の遊星ギヤアッセンブリ。
【請求項11】
前記伝動軸のうち前記第2遊星ギヤ機構を支持する部分より軸線方向第2側に相対回転不能に支持され、HST出力を入力可能とされたHST従動ギヤを備えていることを特徴とする請求項5から10の何れかに記載の遊星ギヤアッセンブリ。
【請求項12】
前記第1遊星ギヤ機構は、伝動状態下において、HST出力が所定のゼロ速用HST速とされた際に第3要素がゼロ速となるように、ギヤ比が設定されていることを特徴とする請求項5から11の何れかに記載の遊星ギヤアッセンブリ。
【請求項13】
ゼロ速用HST速は、第1HST速より所定速度だけ第2HST速の側へ変速された速度とされていることを特徴とする請求項12に記載の遊星ギヤアッセンブリ。
【請求項14】
駆動源からポンプ軸に作動的に入力される基準回転速動力を第1HST速及び第2HST速の間で無段変速し、変速後のHST出力をモータ軸から出力するHSTと共働してHMT装置を形成する遊星ギヤアッセンブリであって、
伝動軸と、
前記伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持された第1要素、基準回転速動力が入力可能とされた第2要素及びHST出力が入力可能とされた第3要素を有する第1遊星ギヤ機構と、
前記伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持された第1要素、基準回転速動力が入力可能とされた第2要素及びHST出力が入力可能とされた第3要素を有する第2遊星ギヤ機構と、
前記伝動軸に軸線回り相対回転自在に外挿され連結部材とを備え、
前記連結部材は、HST出力を作動的に入力可能とされ、且つ、前記第1及び第2遊星ギヤ機構の第3要素同士を連結し、
前記伝動軸が、前記第1及び第2遊星ギヤ機構双方に共通のHMT出力部材として作用することを特徴とする遊星ギヤアッセンブリ。
【請求項15】
駆動源からポンプ軸に作動的に入力される基準回転速動力を第1HST速及び第2HST速の間で無段変速し、変速後のHST出力をモータ軸から出力するHSTと、
前記駆動源から基準回転速動力が作動的に伝達される駆動軸と、
伝動軸と、
第1サンギヤ、第1キャリヤ及び第1インターナルギヤを含む遊星3要素を有し、前記第1サンギヤが前記伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持され、前記第1キャリヤ及び前記第1インターナルギヤの一方が基準回転速動力を入力可能とされた基準回転速動力入力部を形成する第1遊星ギヤ機構と、
第2サンギヤ、第2キャリヤ及び第2インターナルギヤを含む遊星3要素を有し、前記第2サンギヤが前記伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持され、前記第2キャリヤ及び前記第2インターナルギヤのうち、前記第1遊星ギヤ機構における基準回転速動力入力部を形成する遊星要素とは異なる遊星要素が基準回転速動力を入力可能とされた基準回転速動力入力部を形成する第2遊星ギヤ機構と、
前記駆動軸から基準回転速動力を前記第1遊星ギヤ機構の基準回転速動力入力部に作動的に伝達可能な第1伝動ギヤ列と、
前記第1伝動ギヤ列による動力伝達を係脱する第1クラッチ機構と、
前記駆動軸から基準回転速動力を前記第2遊星ギヤ機構の基準回転速動力入力部に作動的に伝達可能な第2伝動ギヤ列と、
前記第2伝動ギヤ列による動力伝達を係脱する第2クラッチ機構と、
前記伝動軸に軸線回り相対回転自在に外挿された連結部材とを備え、
前記連結部材は、前記第1遊星ギヤ機構のうち前記第1サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素と、前記第2遊星ギヤ機構のうち前記第2サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素とを軸線回り相対回転不能に連結していることを特徴とするHMT装置。
【請求項16】
前記伝動軸はHST出力を作動的に入力可能とされ、
前記連結部材は、前記第1遊星ギヤ機構のうち前記第1サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素と、前記第2遊星ギヤ機構のうち前記第2サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素とを連結する連結体と、前記連結体の回転動力を外部へ出力可能な出力体とを有していることを特徴とする請求項15に記載のHMT装置。
【請求項17】
前記連結部材はHST出力を作動的に入力可能とされ、
前記伝動軸は、自身の軸線回りの回転動力を外部へ出力可能とされていることを特徴とする請求項15に記載のHMT装置。
【請求項18】
前記伝動軸はHST出力を作動的に入力可能とされた筒軸とされており、
前記HMT装置には、前記伝動軸を軸線回り相対回転自在に外挿する出力軸が備えられ、
前記連結部材は、前記第1遊星ギヤ機構のうち前記第1サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素と、前記第2遊星ギヤ機構のうち前記第2サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素とを連結する連結体と、前記連結体の回転動力を外部へ出力可能な出力体とを備え、
前記出力体は前記出力軸に同軸上において軸線回り相対回転不能とされていることを特徴とする請求項15に記載のHMT装置。
【請求項19】
駆動源からポンプ軸に作動的に入力される基準回転速動力を第1HST速及び第2HST速の間で無段変速し、変速後のHST出力をモータ軸から出力するHSTと、
前記駆動源から基準回転速動力が作動的に伝達される駆動軸と、
前記モータ軸からHST出力が作動的に伝達される伝動軸と、
前記伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持された第1要素、基準回転速動力が入力可能とされた第2要素並びに前記第1及び第2要素に入力された回転動力を合成した合成回転動力を出力する第3要素を有する第1遊星ギヤ機構と、
前記駆動軸から基準回転速動力を前記第1遊星ギヤ機構の第2要素に作動的に伝達可能な第1伝動ギヤ列と、
前記第1伝動ギヤ列による動力伝達を係脱する第1クラッチ機構と、
前記伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持された第1要素、基準回転速動力が入力可能とされた第2要素並びに前記第1及び第2要素に入力された回転動力を合成した合成回転動力を出力する第3要素を有する第2遊星ギヤ機構と、
前記駆動軸から基準回転速動力を前記第2遊星ギヤ機構の第2要素に作動的に伝達可能な第2伝動ギヤ列と、
前記第2伝動ギヤ列による動力伝達を係脱する第2クラッチ機構と、
前記第1及び第2遊星ギヤの第3要素同士を軸線回り相対回転不能に連結する連結部材とを備え、
前記連結部材は、前記伝動軸に軸線回り相対回転自在に外挿された状態で、軸線方向第1側が前記第1遊星ギヤ機構の第3要素に連結され且つ軸線方向第2側が前記第2遊星ギヤ機構の第3要素に連結された連結体と、前記連結体の回転動力を外部へ出力可能な出力体とを有していることを特徴とするHMT装置。
【請求項20】
前記第1遊星ギヤ機構は、第1要素として作用する第1サンギヤと、第3要素として作用する第1キャリヤと、第2要素として作用する第1インターナルギヤとを有し、
前記第2遊星ギヤ機構は、第1要素として作用する第2サンギヤと、第2要素として作用する第2キャリヤと、第3要素として作用する第2インターナルギヤとを有し、
前記第1遊星ギヤ機構は、伝動状態下において、HST出力が所定のゼロ速用HST速とされた際に前記第1キャリヤがゼロ速となり、HST出力が第1HST速の側から第2HST速の側へ変化されるに従って前記第1キャリヤが軸線回り一方側である第1回転方向へ増速回転し、且つ、HST出力が所定の第1速段最高速用HST速とされた際に前記第1キャリヤが第1回転方向へ所定の第1速段最高速で回転するように、ギヤ比が設定され、
前記第2遊星ギヤ機構は、伝動状態下において、HST出力が第1速段最高速用HST速とされた際に前記第2インターナルギヤが第1回転方向へ第1速段最高速で回転し、且つ、HST出力が第1速段最高速用HST速から第1HST速の側へ所定の第2速段最高速用HST速まで変化されるに従って前記第2インターナルギヤの回転速が第1速段最高速から第2速段最高速まで増速するように、ギヤ比が設定されていることを特徴とする請求項19に記載のHMT装置。
【請求項21】
前記連結体は、軸線方向に延びる筒部と、前記筒部の軸線方向第1側から径方向外方へ延びて前記第1キャリヤに連結される第1フランジと、前記筒部の軸線方向第2側から径方向外方へ延びて前記第2インターナルギヤに連結される第2フランジとを有していることを特徴とする請求項20に記載のHMT装置。
【請求項22】
前記駆動軸は、前記ポンプ軸に同軸上において軸線回り相対回転不能に連結され、
前記伝動軸は、前記駆動軸と平行に配置され、
前記第1伝動ギヤ列は、前記駆動軸に軸線回り相対回転自在に支持された第1駆動ギヤと、前記第1駆動ギヤに作動的に噛合され且つ第1インターナルギヤに軸線回り相対回転不能に連結された状態で、前記伝動軸に直接又は間接的に軸線回り相対回転自在に支持された第1従動ギヤとを含み、
前記第1クラッチ機構は、前記駆動軸から前記第1駆動ギヤへの動力伝達を係脱するように前記駆動軸上に設けられ、
前記第2伝動ギヤ列は、前記駆動軸に軸線回り相対回転自在に支持された第2駆動ギヤと、前記第2駆動ギヤに作動的に噛合され且つ第2キャリヤに軸線回り相対回転不能に連結された状態で、前記伝動軸に直接又は間接的に軸線回り相対回転自在に支持された第2従動ギヤとを含み、
前記第2クラッチ機構は、前記駆動軸から前記第2駆動ギヤへの動力伝達を係脱するように前記駆動軸上に設けられていることを特徴とする請求項20又は21に記載のHMT装置。
【請求項23】
前記第1及び第2クラッチ機構は、軸線方向に関し、前記連結体の前記第1及び第2フランジの間に配置されており、
前記第1及び第2クラッチ機構の一部が、前記筒部の外周面と前記第1及び第2フランジの対向面との間によって画される空間内に入り込んでいることを特徴とする請求項22に記載のHMT装置。
【請求項24】
前記駆動軸からの基準回転速動力を前記第2キャリヤに作動的に伝達可能な第3伝動ギヤ列と、
前記第3伝動ギヤ列による動力伝達を係脱する第3クラッチ機構とを備え、
前記第3伝動ギヤ列は、前記駆動軸に軸線回り相対回転自在に支持された第3駆動ギヤと、前記第3駆動ギヤに作動的に噛合され且つ第2キャリヤに軸線回り相対回転不能に連結された状態で、前記伝動軸に直接又は間接的に軸線回り相対回転自在に支持された第3従動ギヤとを含み、前記第2伝動ギヤ列よりも前記第2キャリヤを高速回転させるようにギヤ比が設定されており、
前記第3クラッチ機構は、前記駆動軸から前記第3駆動ギヤへの動力伝達を係脱するように前記駆動軸上に設けられていることを特徴とする請求項22又は23に記載のHMT装置。
【請求項25】
前記伝動軸に軸線回り相対回転自在な状態で、前記第2遊星ギヤ機構の第2要素に連結された入力部材を備え、
前記第2及び第3従動ギヤは前記入力部材に設けられていることを特徴とする請求項24に記載のHMT装置。
【請求項26】
請求項19から25の何れかに記載のHMT装置と、
ゼロ速位置及び最高速位置の間の変速操作範囲で人為操作可能な変速操作部材と、
前記変速操作部材の操作位置を検出する操作位置センサと、
前記第1クラッチ機構の係脱動作を切替える第1クラッチ作動部材と、
前記第2クラッチ機構の係脱動作を切替える第2クラッチ作動部材と、
前記HSTの出力調整部材を作動させるHST作動部材と、
前記連結部材の回転速度を直接又は間接的に検出する出力センサと、
前記第1及び第2クラッチ作動部材並びに前記HST作動部材の作動制御を司る制御装置とを備え、
前記変速操作範囲は、ゼロ速位置から第1速段最高速位置までの範囲に設定された低速側の第1速段操作領域と、第1速段最高速位置から第2速段最高速位置までの範囲に設定された高速側の第2速段操作領域とに区画されており、
前記制御装置は、前記変速操作部材が前記第1速段操作領域で操作されている際には、前記第1クラッチ機構が係合状態且つ前記第2クラッチ機構が遮断状態となり、前記変速操作部材が第1速段最高速位置に位置されている際には、前記第1及び第2クラッチ機構の一方が係合状態で且つ他方が遮断状態となり、前記変速操作部材が前記第2速段操作領域で操作されている際には、前記第1クラッチ機構が遮断状態且つ前記第2クラッチ機構が係合状態となるように、第1及び第2クラッチ作動部材を作動させ、
前記変速操作部材のゼロ速位置への操作に応じて、HST出力がゼロ速用HST速となり、第1速段操作領域内での前記変速操作部材の増速側への操作に応じて、HST出力が第1HST速の側から第2HST速の側へ変速され、前記変速操作部材の第1速段最高速位置への操作に応じて、HST出力が第1速段最高速用HST速となり、第2速段操作領域内での前記変速操作部材の増速側への操作に応じて、HST出力が第2HST速の側から第1HST速の側へ変速され、前記変速操作部材の最高速位置への操作に応じて、HST出力が第2速段最高速用HST速となるように、前記HST作動部材を作動させることを特徴とするトランスミッション構造。
【請求項27】
前記出力体から作動的に入力されるHMT動力の回転方向を変更せずに出力する正転出力状態及び前記HMT動力の回転方向を逆転させて出力する逆転出力状態を選択的に取り得る前後進切替機構と、
前記前後進切換機構を作動させる前後進作動部材とを備え、
前記変速操作部材の変速操作範囲は、ゼロ速位置から前進側最高速位置までの前進側操作範囲と、ゼロ速位置から後進側最高速位置までの後進側操作範囲とを含み、
前記制御装置は、前記変速操作部材が前進側操作範囲に位置されている際には前記前後進切替機構が正転出力状態とされ且つ前記変速操作部材が後進側操作範囲に位置されている際には前記前後進切替機構が逆転出力状態とされるように、前記前後進作動部材を作動させることを特徴とする請求項26に記載のトランスミッション構造。
【請求項28】
前記出力体から作動的に入力されるHMT動力を低速段及び高速段を含む複数変速段に変速可能な副変速機構を備えていることを特徴とする請求項26又は27に記載のトランスミッション構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの遊星ギヤ機構を有する遊星ギヤアッセンブリ、前記遊星ギヤアッセンブリを備えた静油圧・機械式無段変速装置(HMT装置)、及び、前記HMT装置を備えたトランスミッション構造に関する。
【背景技術】
【0002】
静油圧式無段変速機構(HST)及び遊星ギヤ機構を組み合わせてなるHMT装置が種々提案されており、コンバインやトラクタ等の作業車輌のトランスミッション構造に好適に利用されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、ポンプ軸が駆動源に作動連結され且つモータ軸が前記ポンプ軸と平行に配置されたHSTと、前記ポンプ軸に同軸上において軸線回り相対回転不能に連結された駆動軸と、前記モータ軸に同軸上において軸線回り相対回転不能に連結された第1伝動軸と、前記駆動軸及び前記第1伝動軸の双方と平行に配置された第2伝動軸と、第1サンギヤ、第1キャリヤ及び第1インターナルギヤを有し、前記第1伝動軸と同軸上に配置された第1遊星ギヤ機構と、第2サンギヤ、第2キャリヤ及び第2インターナルギヤを有し、前記第2伝動軸と同軸上に配置された第2遊星ギヤ機構と、前記第2伝動軸に対し相対回転自在な状態で同軸上に配置された出力軸と、第1~第4クラッチ機構とを備えたHMT装置(以下、第1従来例という)が開示されている。
【0004】
第1サンギヤは、前記第1伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持され、第1キャリヤは、前記第1クラッチ機構を介して前記第1伝動軸(即ち、前記モータ軸)に作動連結され且つ前記第2クラッチ機構を介して前記駆動軸(即ち、前記ポンプ軸)に作動連結され、第1インターナルギヤが前記出力軸に作動連結されている。
【0005】
また、第2インターナルギヤは、前記第3クラッチ機構を介して前記駆動軸(即ち、前記ポンプ軸)に作動連結され、第2キャリヤは、前記第4クラッチ機構を介して前記第1伝動軸(即ち、前記モータ軸)に作動連結され、第2サンギヤが前記第2伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持されており、前記第2伝動軸が前記出力軸に作動連結されている。
【0006】
前記第1従来例は、前記第1クラッチ機構を係合状態とし且つ前記第2~第4クラッチ機構を解除状態とする第1伝動状態と、前記第2クラッチ機構を係合状態とさせ且つ前記第1、第3及び第4クラッチ機構を解除状態とする第2伝動状態と、前記第3及び第4クラッチ機構を係合状態とさせ且つ前記第1及び第2クラッチ機構を解除状態とさせる第3伝動状態とを、選択的に現出させることができる。
【0007】
前記第1伝動状態においては、第1サンギヤ及び第1キャリヤの双方に前記モータ軸からのHST出力が入力されて、第1インターナルギヤから前記出力軸に回転動力が出力される。
【0008】
前記第2伝動状態においては、第1キャリヤに前記駆動源からの基準回転速動力が入力され且つ第1サンギヤに前記モータ軸からのHST出力が入力されて、第1インターナルギヤから前記第1遊星ギヤ機構による合成回転動力が前記出力軸に出力される。
【0009】
前記第3伝動状態においては、第2インターナルギヤに前記駆動源からの基準回転速動力が入力され且つ第2キャリヤに前記モータ軸からのHST出力が入力されて、第2サンギヤから前記第2遊星ギヤ機構による合成回転動力が前記第2伝動軸に出力されて、前記出力軸に作動伝達される。
【0010】
斯かる構成の前記第1従来例は、前記出力軸に現出させ得る回転速度の変速幅を拡げることができる点で有用であるが、軸線方向に関しオーバーラップ状態で配置された3本の軸(前記駆動軸、前記第1伝動軸及び前記第2伝動軸)が必要となり、さらには、3本の軸の間の動力伝達を行う為のギヤ列も必要となる為、設置スペース、伝動効率及びコストの観点で改善の余地がある。
【0011】
また、下記特許文献2には、駆動源に作動連結された駆動軸と、ポンプ軸が前記駆動軸に対して平行に配置された状態で前記駆動軸に作動連結され且つモータ軸が前記駆動軸及び前記ポンプ軸とは変位された位置で前記両軸に平行に配置されたHSTと、前記駆動軸、前記ポンプ軸及び前記モータ軸とは変位された位置でこれらの軸に平行に配置された第1伝動軸と、第1サンギヤ、第1キャリヤ及び第1インターナルギヤを有し、前記第1伝動軸と同軸上に配置された第1遊星ギヤ機構と、前記第1遊星ギヤ機構と同軸上に配置された第1中間軸と、前記モータ軸に同軸上において軸線回り相対回転不能に連結された第2伝動軸と、第2サンギヤ、第2キャリヤ及び第2インターナルギヤを有し、前記第2伝動軸と同軸上に配置された第2遊星ギヤ機構と、前記第2遊星ギヤ機構と同軸上に配置された第2中間軸と、出力軸と、前記第1中間軸から前記出力軸への動力伝達を係脱する第1クラッチ機構と、前記第2中間軸から前記出力軸への動力伝達を係脱する第2クラッチ機構とを備えたHMT装置(以下、第2従来例という)が開示されている(前記特許文献2の
図1等)。
【0012】
前記第2従来例は、前記駆動軸、前記第1伝動軸、前記第2伝動軸、前記第1中間軸、及び第2中間軸を含む多くの軸を必要としており、設置スペース、伝動効率及びコストの観点において非常に不利である。
【0013】
さらに、前記特許文献2には、HSTと、直列配置された第1及び第2遊星ギヤ機構とを備えたHMT装置(以下、第3従来例という)も開示されている(前記特許文献2の
図5等)。
【0014】
前記第3従来例においても、ポンプ軸と同軸上において軸線回り相対回転不能に連結された駆動軸、モータ軸と同軸上において軸線回り相対回転不能に連結された状態で、第1及び第2遊星ギヤ機構並びに第1~第3クラッチ機構を支持する伝動軸、及び、前記伝動軸にギヤ列を介して作動連結された出力軸を含む3本の軸が軸線方向に関しオーバーラップ状態で配置されており、設置スペース、伝動効率及びコストの観点で改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第4194709号公報
【特許文献2】国際公開公報WO2020/097650号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、HSTと共働してHMT装置を形成する遊星ギヤアッセンブリであって、HMT出力の変速幅を拡げつつ、HMT装置全体の小型化を図り得る遊星ギヤアッセンブリの提供を第1の目的とする。
【0017】
また、本発明は、HSTと第1及び第2遊星ギヤ機構とを含むHMT装置であって、HMT出力の変速幅を拡げつつ、小型化を図り得るHMT装置の提供を第2の目的とする。
【0018】
また、本発明は、HSTと第1及び第2遊星ギヤ機構とを含むHMT装置を備えたトランスミッション構造であって、HMT出力の変速幅を拡げつつ、前記HMT装置の小型化を図ることができ、さらに、HMT出力を制御性良く出力可能なトランスミッション構造の提供を第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記第1の目的を達成する為に、本発明の第1態様は、駆動源からポンプ軸に作動的に入力される基準回転速動力を例えば逆転側最高速である第1HST速及び例えば正転側最高速である第2HST速の間で無段変速し、変速後のHST出力をモータ軸から出力するHSTと共働してHMT装置を形成する遊星ギヤアッセンブリであって、伝動軸と、第1サンギヤ、第1キャリヤ及び第1インターナルギヤを含む遊星3要素を有し、第1サンギヤが前記伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持され、第1キャリヤ及び第1インターナルギヤの一方が基準回転速動力を入力可能とされた基準回転速動力入力部を形成する第1遊星ギヤ機構と、第2サンギヤ、第2キャリヤ及び第2インターナルギヤを含む遊星3要素を有し、第2サンギヤが前記伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持され、第2キャリヤ及び第2インターナルギヤのうち、前記第1遊星ギヤ機構における基準回転速動力入力部を形成する遊星要素とは異なる遊星要素が基準回転速動力を入力可能とされた基準回転速動力入力部を形成する第2遊星ギヤ機構と、前記伝動軸に軸線回り相対回転自在に外挿された連結部材とを備え、前記連結部材は、前記第1遊星ギヤ機構のうち第1サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素と、前記第2遊星ギヤ機構のうち第2サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素とを軸線回り相対回転不能に連結している遊星ギヤアッセンブリを提供する。
【0020】
前記第1態様の一形態においては、前記伝動軸はHST出力を作動的に入力可能とされる。
この場合、前記連結部材は、前記第1遊星ギヤ機構のうち第1サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素と、前記第2遊星ギヤ機構のうち第2サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素とを連結する連結体と、前記連結体の回転動力を外部へ出力可能な出力体とを有するものとされる。
【0021】
前記第1態様の他の形態においては、前記連結部材はHST出力を作動的に入力可能とされる。
この場合、前記伝動軸は、自身の軸線回りの回転動力を外部へ出力可能とされる。
【0022】
前記第1態様のさらに他の形態においては、前記伝動軸はHST出力を作動的に入力可能とされた筒軸とされ、前記遊星ギヤアッセンブリには、前記伝動軸が軸線回り相対回転自在に外挿される出力軸が備えられる。
この場合、前記連結部材は、前記第1遊星ギヤ機構のうち第1サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素と、前記第2遊星ギヤ機構のうち第2サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素とを連結する連結体と、前記連結体の回転動力を外部へ出力可能な出力体とを備えるものとされ、前記出力体は前記出力軸に同軸上において軸線回り相対回転不能とされる。
【0023】
前記第1の目的を達成する為に、本発明の第2態様は、駆動源からポンプ軸に作動的に入力される基準回転速動力を例えば逆転側最高速とされる第1HST速及び例えば正転側最高速とされる第2HST速の間で無段変速し、変速後のHST出力をモータ軸から出力するHSTと共働してHMT装置を形成する遊星ギヤアッセンブリであって、HST出力が作動的に入力可能とされた伝動軸と、前記伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持された第1要素、基準回転速動力が入力可能とされた第2要素並びに前記第1及び第2要素に入力された回転動力を合成した合成回転動力を出力する第3要素を有する第1遊星ギヤ機構と、前記伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持された第1要素、基準回転速動力が入力可能とされた第2要素並びに前記第1及び第2要素に入力された回転動力を合成した合成回転動力を出力する第3要素を有する第2遊星ギヤ機構と、前記伝動軸に軸線回り相対回転自在に外挿された連結部材とを備え、前記連結部材は、前記第1及び第2遊星ギヤ機構の第3要素同士を連結する連結体と、前記連結体の回転動力を外部へ出力可能な出力体とを有している遊星ギヤアッセンブリを提供する。
【0024】
前記第2態様に係る遊星ギヤアッセンブリは、好ましくは、前記伝動軸に軸線回り相対回転自在な状態で、前記第2遊星ギヤ機構の第2要素に連結された入力部材を備え得る。
前記入力部材は、基準回転速動力を入力可能な第1及び第2入力ギヤ部を有しするものとされ、前記第2入力ギヤ部のピッチ径は前記第1入力ギヤ部のピッチ径よりも小径とされる。
【0025】
前記第2態様の第1形態においては、前記第1遊星ギヤ機構は、第1要素として作用する第1サンギヤと、第3要素として作用する第1キャリヤと、第2要素として作用する第1インターナルギヤとを有し、前記第2遊星ギヤ機構は、第1要素として作用する第2サンギヤと、第2要素として作用する第2キャリヤと、第3要素として作用する第2インターナルギヤとを有するものとされる。
【0026】
この場合、前記第1遊星ギヤ機構は、伝動状態下において、HST出力が第1HST速の側から第2HST速の側へ変化されるに従って第1キャリヤが軸線回り一方側である第1回転方向へ増速回転し、且つ、HST出力が所定の第1速段最高速用HST速とされた際に第1キャリヤが第1回転方向へ所定の第1速段最高速で回転するように、ギヤ比が設定される。
【0027】
前記第2遊星ギヤ機構は、伝動状態下において、HST出力が第1速段最高速用HST速とされた際に第2インターナルギヤが第1回転方向へ第1速段最高速で回転し、且つ、HST出力が第1速段最高速用HST速から第1HST速の側へ所定の第2速段最高速用HST速まで変化されるに従って第2インターナルギヤの回転速が第1速段最高速から第2速段最高速まで増速するように、ギヤ比が設定される。
【0028】
前記第2態様の第1形態において、好ましくは、前記連結体は、軸線方向に延びる筒部と、前記筒部の軸線方向第1側から径方向外方へ延びて第1キャリヤに連結される第1フランジと、前記筒部の軸線方向第2側から径方向外方へ延びて第2インターナルギヤに連結される第2フランジとを有し得る。
【0029】
より好ましくは、前記出力体は、前記第1キャリヤに支持された第1遊星ギヤを挟んで前記連結体とは軸線方向に関し反対側に配置され且つ前記連結体の軸線方向第1側に軸線回り相対回転不能に連結される連結フランジと、前記連結フランジから軸線方向第1側へ延びる軸部とを有し得る。
【0030】
好ましくは、前記第2態様に係る遊星ギヤアッセンブリは、前記軸部に軸線回り相対回転自在に外挿された伝動ギヤ部材を備え得る。
前記伝動ギヤ部材は、前記駆動源から作動的に入力される基準回転速動力を入力する入力ギヤ部と、第1インターナルギヤに噛合する出力ギヤ部とを有するものとされる。
【0031】
好ましくは、前記第2態様に係る遊星ギヤアッセンブリは、前記伝動軸のうち前記第2遊星ギヤ機構を支持する部分より軸線方向第2側に相対回転不能に支持され、HST出力を入力可能とされたHST従動ギヤを備え得る。
【0032】
前記第2態様においては、好ましくは、前記第1遊星ギヤ機構は、伝動状態下において、HST出力が所定のゼロ速用HST速とされた際に第3要素がゼロ速となるように、ギヤ比が設定される。
【0033】
より好ましくは、ゼロ速用HST速は、第1HST速より所定速度だけ第2HST速の側へ変速された速度とされる。
【0034】
前記第1の目的を達成する為に、本発明の第3態様は、駆動源からポンプ軸に作動的に入力される基準回転速動力を例えば逆転側最高速とされる第1HST速及び例えば正転側最高速とされる第2HST速の間で無段変速し、変速後のHST出力をモータ軸から出力するHSTと共働してHMT装置を形成する遊星ギヤアッセンブリであって、伝動軸と、前記伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持された第1要素、基準回転速動力が入力可能とされた第2要素及びHST出力が入力可能とされた第3要素を有する第1遊星ギヤ機構と、前記伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持された第1要素、基準回転速動力が入力可能とされた第2要素及びHST出力が入力可能とされた第3要素を有する第2遊星ギヤ機構と、前記伝動軸に軸線回り相対回転自在に外挿され連結部材とを備え、前記連結部材は、HST出力を作動的に入力可能とされ、且つ、前記第1及び第2遊星ギヤ機構の第3要素同士を連結するように構成され、前記伝動軸が、前記第1及び第2遊星ギヤ機構双方に共通のHMT出力部材として作用する遊星ギヤアッセンブリを提供する。
【0035】
前記第2の目的を達成する為に、本発明の第4態様は、駆動源からポンプ軸に作動的に入力される基準回転速動力を例えば逆転側最高速とされた第1HST速及び例えば正転側最高速とされた第2HST速の間で無段変速し、変速後のHST出力をモータ軸から出力するHSTと、前記駆動源から基準回転速動力が作動的に伝達される駆動軸と、伝動軸と、第1サンギヤ、第1キャリヤ及び第1インターナルギヤを含む遊星3要素を有し、第1サンギヤが前記伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持され、第1キャリヤ及び第1インターナルギヤの一方が基準回転速動力を入力可能とされた基準回転速動力入力部を形成する第1遊星ギヤ機構と、第2サンギヤ、第2キャリヤ及び第2インターナルギヤを含む遊星3要素を有し、第2サンギヤが前記伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持され、第2キャリヤ及び第2インターナルギヤのうち、前記第1遊星ギヤ機構における基準回転速動力入力部を形成する遊星要素とは異なる遊星要素が基準回転速動力を入力可能とされた基準回転速動力入力部を形成する第2遊星ギヤ機構と、前記駆動軸から基準回転速動力を前記第1遊星ギヤ機構の基準回転速動力入力部に作動的に伝達可能な第1伝動ギヤ列と、前記第1伝動ギヤ列による動力伝達を係脱する第1クラッチ機構と、前記駆動軸から基準回転速動力を前記第2遊星ギヤ機構の基準回転速動力入力部に作動的に伝達可能な第2伝動ギヤ列と、前記第2伝動ギヤ列による動力伝達を係脱する第2クラッチ機構と、前記伝動軸に軸線回り相対回転自在に外挿された連結部材とを備え、前記連結部材は、前記第1遊星ギヤ機構のうち第1サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素と、前記第2遊星ギヤ機構のうち第2サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素とを軸線回り相対回転不能に連結しているHMT装置を提供する。
【0036】
前記第4態様の一形態においては、前記伝動軸はHST出力を作動的に入力可能とされる。
この場合、前記連結部材は、前記第1遊星ギヤ機構のうち第1サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素と、前記第2遊星ギヤ機構のうち第2サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素とを連結する連結体と、前記連結体の回転動力を外部へ出力可能な出力体とを有するものとされる。
【0037】
前記第4態様の他形態においては、前記連結部材はHST出力を作動的に入力可能とされる。
この場合、前記伝動軸は、自身の軸線回りの回転動力を外部へ出力可能とされる。
【0038】
前記第4態様のさらに他の形態においては、前記伝動軸はHST出力を作動的に入力可能とされた筒軸とされ、前記HMT装置には、前記伝動軸が軸線回り相対回転自在に外挿される出力軸が備えられる。
この場合、前記連結部材は、前記第1遊星ギヤ機構のうち第1サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素と、前記第2遊星ギヤ機構のうち第2サンギヤ及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素とを連結する連結体と、前記連結体の回転動力を外部へ出力可能な出力体とを備えるものとされ、前記出力体は前記出力軸に同軸上において軸線回り相対回転不能とされる。
【0039】
前記第2の目的を達成する為に、本発明の第5態様は、駆動源からポンプ軸に作動的に入力される基準回転速動力を例えば逆転側最高速とされた第1HST速及び例えば正転側最高速とされた第2HST速の間で無段変速し、変速後のHST出力をモータ軸から出力するHSTと、前記駆動源から基準回転速動力が作動的に伝達される駆動軸と、前記モータ軸からHST出力が作動的に伝達される伝動軸と、前記伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持された第1要素、基準回転速動力が入力可能とされた第2要素並びに前記第1及び第2要素に入力された回転動力を合成した合成回転動力を出力する第3要素を有する第1遊星ギヤ機構と、前記駆動軸から基準回転速動力を前記第1遊星ギヤ機構の第2要素に作動的に伝達可能な第1伝動ギヤ列と、前記第1伝動ギヤ列による動力伝達を係脱する第1クラッチ機構と、前記伝動軸に軸線回り相対回転不能に支持された第1要素、基準回転速動力が入力可能とされた第2要素並びに前記第1及び第2要素に入力された回転動力を合成した合成回転動力を出力する第3要素を有する第2遊星ギヤ機構と、前記駆動軸から基準回転速動力を前記第2遊星ギヤ機構の第2要素に作動的に伝達可能な第2伝動ギヤ列と、前記第2伝動ギヤ列による動力伝達を係脱する第2クラッチ機構と、前記第1及び第2遊星ギヤの第3要素同士を軸線回り相対回転不能に連結する連結部材とを備え、前記連結部材は、前記伝動軸に軸線回り相対回転自在に外挿された状態で、軸線方向第1側が前記第1遊星ギヤ機構の第3要素に連結され且つ軸線方向第2側が前記第2遊星ギヤ機構の第3要素に連結された連結体と、前記連結体の回転動力を外部へ出力可能な出力体とを有しているHMT装置を提供する。
【0040】
前記第5態様の第1形態においては、前記第1遊星ギヤ機構は、第1要素として作用する第1サンギヤと、第3要素として作用する第1キャリヤと、第2要素として作用する第1インターナルギヤとを有し、前記第2遊星ギヤ機構は、第1要素として作用する第2サンギヤと、第2要素として作用する第2キャリヤと、第3要素として作用する第2インターナルギヤとを有するものとされる。
【0041】
この場合、前記第1遊星ギヤ機構は、伝動状態下において、HST出力が所定のゼロ速用HST速とされた際に第1キャリヤがゼロ速となり、HST出力が第1HST速の側から第2HST速の側へ変化されるに従って第1キャリヤが軸線回り一方側である第1回転方向へ増速回転し、且つ、HST出力が所定の第1速段最高速用HST速とされた際に第1キャリヤが第1回転方向へ所定の第1速段最高速で回転するように、ギヤ比が設定される。
【0042】
前記第2遊星ギヤ機構は、伝動状態下において、HST出力が第1速段最高速用HST速とされた際に第2インターナルギヤが第1回転方向へ第1速段最高速で回転し、且つ、HST出力が第1速段最高速用HST速から第1HST速の側へ所定の第2速段最高速用HST速まで変化されるに従って第2インターナルギヤの回転速が第1速段最高速から第2速段最高速まで増速するように、ギヤ比が設定される。
【0043】
前記第5態様の第1形態においては、好ましくは、前記連結体は、軸線方向に延びる筒部と、前記筒部の軸線方向第1側から径方向外方へ延びて第1キャリヤに連結される第1フランジと、前記筒部の軸線方向第2側から径方向外方へ延びて第2インターナルギヤに連結される第2フランジとを有するものとされる。
【0044】
前記第5態様の第1形態においては、好ましくは、前記駆動軸は、前記ポンプ軸に同軸上において軸線回り相対回転不能に連結され、前記伝動軸は、前記駆動軸と平行に配置され、前記第1伝動ギヤ列は、前記駆動軸に軸線回り相対回転自在に支持された第1駆動ギヤと、前記第1駆動ギヤに作動的に噛合され且つ第1インターナルギヤに軸線回り相対回転不能に連結された状態で、前記伝動軸に直接又は間接的に軸線回り相対回転自在に支持された第1従動ギヤとを含み、前記第1クラッチ機構は、前記駆動軸から前記第1駆動ギヤへの動力伝達を係脱するように前記駆動軸上に設けられ、前記第2伝動ギヤ列は、前記駆動軸に軸線回り相対回転自在に支持された第2駆動ギヤと、前記第2駆動ギヤに作動的に噛合され且つ第2キャリヤに軸線回り相対回転不能に連結された状態で、前記伝動軸に直接又は間接的に軸線回り相対回転自在に支持された第2従動ギヤとを含み、 前記第2クラッチ機構は、前記駆動軸から前記第2駆動ギヤへの動力伝達を係脱するように前記駆動軸上に設けられる。
【0045】
より好ましくは、前記第1及び第2クラッチ機構の一部が、前記筒部の外周面と前記第1及び第2フランジの対向面との間によって画される空間内に入り込むように、前記第1及び第2クラッチ機構は、軸線方向に関し前記連結体の前記第1及び第2フランジの間に配置される。
【0046】
前記第5態様の第1形態に係るHMT装置は、好ましくは、前記駆動軸からの基準回転速動力を第2キャリヤに作動的に伝達可能な第3伝動ギヤ列と、前記第3伝動ギヤ列による動力伝達を係脱する第3クラッチ機構とを備え得る。
【0047】
前記第3伝動ギヤ列は、前記駆動軸に軸線回り相対回転自在に支持された第3駆動ギヤと、前記第3駆動ギヤに作動的に噛合され且つ第2キャリヤに軸線回り相対回転不能に連結された状態で、前記伝動軸に直接又は間接的に軸線回り相対回転自在に支持された第3従動ギヤとを含み、前記第2伝動ギヤ列よりも第2キャリヤを高速回転させるようにギヤ比が設定される。
前記第3クラッチ機構は、前記駆動軸から前記第3駆動ギヤへの動力伝達を係脱するように前記駆動軸上に設けられる。
【0048】
より好ましくは、前記第5態様の第1形態に係るHMT装置は、前記伝動軸に軸線回り相対回転自在な状態で、前記第2遊星ギヤ機構の第2要素に連結された入力部材を備え得る。
前記第2及び第3従動ギヤは前記入力部材に設けられる。
【0049】
前記第3の目的を達成する為に、本発明の第6態様は、前記第5態様の第1形態の種々の構成に係るHMT装置と、ゼロ速位置及び最高速位置の間の変速操作範囲で人為操作可能な変速操作部材と、前記変速操作部材の操作位置を検出する操作位置センサと、前記第1クラッチ機構の係脱動作を切替える第1クラッチ作動部材と、前記第2クラッチ機構の係脱動作を切替える第2クラッチ作動部材と、前記HSTの出力調整部材を作動させるHST作動部材と、前記連結部材の回転速度を直接又は間接的に検出する出力センサと、前記第1及び第2クラッチ作動部材並びに前記HST作動部材の作動制御を司る制御装置とを備え、前記変速操作範囲は、ゼロ速位置から第1速段最高速位置までの範囲に設定された低速側の第1速段操作領域と、第1速段最高速位置から第2速段最高速位置までの範囲に設定された高速側の第2速段操作領域とに区画されており、前記制御装置は、前記変速操作部材が前記第1速段操作領域で操作されている際には、前記第1クラッチ機構が係合状態且つ前記第2クラッチ機構が遮断状態となり、前記変速操作部材が第1速段最高速位置に位置されている際には、前記第1及び第2クラッチ機構の一方が係合状態で且つ他方が遮断状態となり、前記変速操作部材が前記第2速段操作領域で操作されている際には、前記第1クラッチ機構が遮断状態且つ前記第2クラッチ機構が係合状態となるように、第1及び第2クラッチ作動部材を作動させ、前記変速操作部材のゼロ速位置への操作に応じて、HST出力がゼロ速用HST速となり、第1速段操作領域内での前記変速操作部材の増速側への操作に応じて、HST出力が第1HST速の側から第2HST速の側へ変速され、前記変速操作部材の第1速段最高速位置への操作に応じて、HST出力が第1速段最高速用HST速となり、第2速段操作領域内での前記変速操作部材の増速側への操作に応じて、HST出力が第2HST速の側から第1HST速の側へ変速され、前記変速操作部材の最高速位置への操作に応じて、HST出力が第2速段最高速用HST速となるように、前記HST作動部材を作動させるトランスミッション構造を提供する。
【0050】
一形態においては、前記トランスミッション構造は、前記出力体から作動的に入力されるHMT動力の回転方向を変更せずに出力する正転出力状態及び前記HMT動力の回転方向を逆転させて出力する逆転出力状態を選択的に取り得る前後進切替機構と、前記前後進切換機構を作動させる前後進作動部材とを備え得る。
【0051】
この場合、前記変速操作部材の変速操作範囲は、ゼロ速位置から前進側最高速位置までの前進側操作範囲と、ゼロ速位置から後進側最高速位置までの後進側操作範囲とを含むものとされ、前記制御装置は、前記変速操作部材が前進側操作範囲に位置されている際には前記前後進切替機構が正転出力状態とされ且つ前記変速操作部材が後進側操作範囲に位置されている際には前記前後進切替機構が逆転出力状態とされるように、前記前後進作動部材を作動させる。
【0052】
好ましくは、前記トランスミッション構造は、前記出力体から作動的に入力されるHMT動力を低速段及び高速段を含む複数変速段に変速可能な副変速機構を備え得る。
【発明の効果】
【0053】
本発明に係る遊星ギヤアッセンブリによれば、HSTと共働して形成するHMT装置におけるHMT出力の変速幅を拡げつつ、HMT装置全体の小型化を図ることができる。
本発明に係るHMT装置によれば、HMT出力の変速幅を拡げつつ、小型化を図ることができる。
本発明に係るトランスミッション構造によれば、HMT出力の変速幅を拡げつつ、HMT装置の小型化を図ることができ、さらに、HMT出力の制御性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係る遊星ギヤアッセンブリが適用された作業車輌のトランスミッション構造の伝動模式図である。
【
図2】
図2は、前記トランスミッション構造の油圧回路図である。
【
図3】
図3は、前記実施の形態1に係る遊星ギヤアッセンブリを含むHMT装置の部分縦断面図である。
【
図4】
図4は、前記実施の形態1に係る遊星ギヤアッセンブリの縦断面図である。
【
図5】
図5は、前記実施の形態1に係る遊星ギヤアッセンブリにおける連結部材の分解縦断面図である。
【
図6】
図6は、前記実施の形態1に係る遊星ギヤアッセンブリを含むHMT装置におけるHST出力とHMT出力との関係を表すグラフである。
【
図7】
図7は、前記実施の形態1に係る遊星ギヤアッセンブリを含むHMT装置の変形例におけるHST出力とHMT出力との関係を表すグラフである。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態2に係る遊星ギヤアッセンブリが適用された作業車輌のトランスミッション構造の伝動模式図である。
【
図9】
図9は、前記実施の形態2に係る遊星ギヤアッセンブリを含むHMT装置におけるHST出力とHMT出力との関係を表すグラフである。
【
図10】
図10は、前記実施の形態1に係る遊星ギヤアッセンブリが適用された他のトランスミッション構造の伝動模式図である。
【
図11】
図11は、
図10に示すトランスミッション構造におけるHST出力と副変速機構の出力との関係を表すグラフである。
【
図12】
図12は、本発明の実施の形態4に係る遊星ギヤアッセンブリが適用された作業車輌のトランスミッション構造の伝動模式図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施の形態5に係る遊星ギヤアッセンブリが適用された作業車輌のトランスミッション構造の部分伝動模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
実施の形態1
以下、本発明に係る遊星ギヤアッセンブリの一実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1及び
図2に、それぞれ、本実施の形態に係る遊星ギヤアッセンブリ1Aが適用された作業車輌におけるトランスミッション構造200Aの伝動模式図及び油圧回路図を示す。
【0056】
図1に示すように、前記作業車輌は、駆動源410と、主駆動輪420と、前記駆動源410から前記主駆動輪420へ至る走行系伝動経路に介挿された前記トランスミッション構造200Aとを備えている。なお、
図1及び
図2中の符号411は前記駆動源410に含まれるフライホイールである。
【0057】
前記遊星ギヤアッセンブリ1Aは、前記駆動源410から作動的に入力される基準回転速動力を無段変速して出力する静油圧式無段変速機構(HST)110と共働してHMT装置(静油圧・機械式無段変速装置)100Aを形成するものであり、前記トランスミッション構造200Aの一構成要素として利用される。
【0058】
即ち、
図1に示すように、前記トランスミッション構造200Aは、前記HST110及び前記遊星ギヤアッセンブリ1Aを含む前記HMT装置100Aを備えている。
【0059】
本実施の形態においては、
図1に示すように、前記トランスミッション構造200Aは、前記HMT装置100に加えて、さらに、前記HMT装置100Aの出力(HMT出力)の回転方向を前進方向及び後進方向に切替可能な前後進切替機構220と、前記前後進切替機構220の出力を左右一対の前記主駆動輪320に差動伝達するディファレンシャル機構230とを備えている。
【0060】
前記トランスミッション構造200Aは、さらに、前記一対の主駆動輪320に選択的に制動力を付加する走行ブレーキ機構240と、前記一対の主駆動輪320を強制的に同期駆動するデフロック機構235と、前記前後進切替機構220の出力を副駆動輪へ向けて選択的に出力可能な副駆動輪用駆動力取出機構250とを有している。
【0061】
また、前記トランスミッション構造200Aは、外部へ回転動力を出力するPTO軸260と、前記駆動源410からPTO軸260へ至るPTO伝動経路に介挿されたPTOクラッチ265を含むPTO多段変速機構270とを有している。
これら前記トランスミッション構造200A、ディファレンシャル機構230、副駆動輪用駆動力取出機構250、PTO多段変速機構270は図外のミッションケースに収容される。
【0062】
前記HST110は、前記駆動源410から基準回転速動力を第1HST速及び第2HST速の間で無段変速し、変速後のHST出力を出力するように構成されている。
【0063】
具体的には、
図1及び
図2に示すように、前記HST10は、前記駆動源410から基準回転速動力を作動的に入力するポンプ軸112と、前記ポンプ軸112に相対回転不能に支持された油圧ポンプ114と、前記油圧ポンプ114に一対の作動油ライン115を介して流体接続されて前記油圧ポンプ114によって油圧的に回転駆動される油圧モータ118と、前記油圧モータ118を相対回転不能に支持するモータ軸116と、前記油圧ポンプ114及び前記油圧モータ118の少なくとも一方の容積を変更させる出力調整部材120とを有している。
【0064】
前記出力調整部材120は、第1及び第2作動端位置によって画される作動可能範囲で作動され、前記HST10は、前記出力調整部材120の作動可能範囲内での作動位置に応じて、前記ポンプ軸112に入力される基準回転速に対する、前記モータ軸116から出力されるHST出力の回転速度の割合(即ち、HST110の変速比)を第1HST速及び第2HST速の間で無段階に変化させ得るようになっている。
なお、本実施の形態においては、前記出力調整部材120は前記油圧ポンプ114の容積量(吐出量)を変更させるように構成されている。
【0065】
本実施の形態においては、前記HST110は、HST出力の回転方向を正逆切替可能とされている。
【0066】
即ち、前記HST110においては、基準回転速動力の回転方向を第1回転方向(例えば正転方向)とした場合に、前記出力調整部材120が第1作動端位置に位置された際のHST出力の回転速度(第1HST速)は、第1回転方向とは反対方向の第2回転方向(例えば逆転方向)に最高速(-max)とされ、且つ、前記出力調整部材120が第2作動端位置に位置された際のHST出力の回転速度(第2HST速)は第1回転方向(例えば正転方向)に最高速(+max)とされる。
【0067】
この場合、前記出力調整部材120が第1及び第2作動端位置の間の中立位置に位置されると、HST出力の回転速度は中立速(ゼロ速)となる。
【0068】
前記HST110は、アキシャルピストン型及びラジアルピストン型を含む、種々の形態をとり得る。
前記HST110がアキシャルピストン型の場合には、前記出力調整部材120は可動斜板とされ得る。前記HST110がラジアルピストン型の場合には、前記出力調整部材120は可動カムリングとされ得る。
【0069】
前記出力調整部材120は、人為操作に応じて作動され得る。
即ち、
図1に示すように、前記トランスミッション構造200Aには、ゼロ速位置及び最高速位置の間の変速操作範囲で人為操作可能な変速操作部材310と、前記変速操作部材310の操作位置を検出する操作位置センサ315と、前記出力調整部材120を作動させるHST作動部材320と、前記変速操作部材310の操作位置に応じて前記HST作動部材320の作動制御を司る制御装置300とが備えられる。
本実施の形態においては、前記変速操作部材310はレバー型とされている。
【0070】
前記HST作動部材320は、前記制御装置300からの制御信号によって前記出力調整部材120を作動させ得る限り、油圧サーボ機構及び前記油圧サーボ機構への圧油給排を切替える電磁弁を含む油圧アクチュエータや電動アクチュエータ等の種々の形態をとり得る。
【0071】
図3に、前記遊星ギヤアッセンブリ1Aを含む前記HMT装置100Aの部分縦断面図を示す。
図4に、前記遊星ギヤアッセンブリ1Aの縦断面図を示す。
【0072】
図1~
図4に示すように、前記遊星ギヤアッセンブリ1Aは、伝動軸10と、前記伝動軸10に支持された第1及び第2遊星ギヤ機構20、30とを備えている。
【0073】
本実施の形態においては、前記伝動軸10は、HST出力が作動的に入力可能とされている。
詳しくは、前記伝動軸10は、HST伝動ギヤ列130を介して前記モータ軸116からHST出力を作動的に入力する。
【0074】
前記HST伝動ギヤ列130は、前記モータ軸116に軸線回り相対回転不能に連結されたHST駆動ギヤ132と、前記HST駆動ギヤ132に作動的に噛合されたHST従動ギヤ134とを有している。
【0075】
図1及び
図3に示すように、前記伝動軸10は、前記モータ軸116と平行に配置されており、軸線方向第1側(軸線方向に関し前記モータ軸116とは離間する側で、
図1及び
図3において右側)に前記第1遊星ギヤ機構20を支持し、且つ、軸線方向第2側(軸線方向に関し前記モータ軸116に近接する側で、
図1及び
図3において左側)に前記第2遊星ギヤ機構30を支持している。
【0076】
前記伝動軸10は、前記第2遊星ギヤ機構30を支持する部分より軸線方向第2側において前記HST従動ギヤ134を軸線回り相対回転不能に支持している。
【0077】
前記第1遊星ギヤ機構20は、
図3及び
図4に示すように、第1サンギヤ22と、第1サンギヤ22と噛合する第1遊星ギヤ24と、第1遊星ギヤ24と噛合する第1インターナルギヤ26と、第1遊星ギヤ24を軸線回り回転自在に支持し且つ第1遊星ギヤ24の第1サンギヤ22回りの公転に連動して第1サンギヤ22の軸線回りに回転する第1キャリヤ28とを有しており、第1サンギヤ22、第1キャリヤ28及び第1インターナルギヤ26が遊星3要素を形成している。
【0078】
図3及び
図4に示すように、前記遊星3要素のうちの第1要素である第1サンギヤ22が前記伝動軸10に相対回転不能に支持されている。
前述の通り、本実施の形態においては、前記伝動軸10にHST出力が入力される。
従って、本実施の形態においては、第1サンギヤ22がHST出力を入力する可変動力入力部として作用する。
【0079】
前記遊星3要素のうちの第2要素が基準回転速動力を入力する基準動力入力部として作用する。
本実施の形態においては、第1インターナルギヤ26が前記第1遊星ギヤ機構20の第2要素とされている。
【0080】
本実施の形態においては、前記HMT装置100Aには前記駆動源410から基準回転速動力が作動伝達される駆動軸125が備えられており、第1インターナルギヤ26へは、前記駆動源410から基準回転速動力が作動伝達される駆動軸125から基準回転速動力が作動的に入力されるようになっている。
【0081】
詳しくは、本実施の形態においては、
図3に示すように、前記駆動軸125は、前記ポンプ軸112と同軸上において軸線回り相対回転不能に連結されており、前記HMT装置100Aには、前記前記駆動軸125と、前記駆動軸125から基準回転速動力を第1インターナルギヤ26に作動的に伝達可能な第1伝動ギヤ列135(1)と、前記第1伝動ギヤ列135(1)による動力伝達を係脱する第1クラッチ機構140(1)とが設けられている。
【0082】
前記第1伝動ギヤ列135(1)は、前記駆動軸125に軸線回り相対回転自在に支持された第1駆動ギヤ136(1)と、前記第1駆動ギヤ136(1)に作動的に噛合され且つ第1インターナルギヤ26に軸線回り相対回転不能に連結された状態で、前記伝動軸10に直接又は間接的に軸線回り相対回転自在に支持された第1従動ギヤ137(1)とを有している。
【0083】
即ち、本実施の形態においては、第1インターナルギヤ26は、前記第1クラッチ機構140(1)及び前記第1伝動ギヤ列135(1)を介して、前記駆動軸125から基準回転速動力を入力し得るようになっている。
【0084】
前記第1遊星ギヤ機構20においては、第3要素が、前記第1及び第2要素に入力された回転動力を合成した合成回転動力を出力する遊星出力部として作用する。
本実施の形態においては、第1キャリヤ28が前記第3要素とされている。
【0085】
前記第2遊星ギヤ機構30は、
図3及び
図4に示すように、第2サンギヤ32と、第2サンギヤ32と噛合する第2遊星ギヤ34と、第2遊星ギヤ34と噛合する第2インターナルギヤ36と、第2遊星ギヤ34を軸線回り回転自在に支持し且つ第2遊星ギヤ34の第2サンギヤ32回りの公転に連動して第2サンギヤ32の軸線回りに回転する第2キャリヤ38とを有しており、第2サンギヤ32、第2キャリヤ38及び第2インターナルギヤ36が遊星3要素を形成している。
【0086】
図3及び
図4に示すように、前記遊星3要素のうちの第1要素である第2サンギヤ32が前記伝動軸10に相対回転不能に支持されている。
前述の通り、本実施の形態においては、前記伝動軸10にHST出力が入力される。
従って、本実施の形態においては、第2サンギヤ32がHST出力を入力する可変動力入力部として作用する。
【0087】
前記遊星3要素のうちの第2要素が基準回転速動力を入力する基準動力入力部として作用する。
本実施の形態においては、第2キャリヤ38が前記第2遊星ギヤ機構30の第2要素とされている。
【0088】
本実施の形態においては、第2キャリヤ38へは前記駆動軸125から基準回転速動力が作動的に入力されるようになっている。
【0089】
詳しくは、本実施の形態においては、
図3に示すように、前記HMT装置100Aには、前記駆動軸125から基準回転速動力を第2キャリヤ38に作動的に伝達可能な第2伝動ギヤ列135(2)と、前記第2伝動ギヤ列135(2)による動力伝達を係脱する第2クラッチ機構140(2)とが設けられている。
【0090】
前記第2伝動ギヤ列135(2)は、前記駆動軸125に軸線回り相対回転自在に支持された第2駆動ギヤ136(2)と、前記第2駆動ギヤ2136(2)に作動的に噛合され且つ第2キャリヤ38に軸線回り相対回転不能に連結された状態で、前記伝動軸10に直接又は間接的に軸線回り相対回転自在に支持された第2従動ギヤ137(2)とを有している。
【0091】
即ち、本実施の形態においては、第2キャリヤ38は、前記第2クラッチ機構140(2)及び前記第2伝動ギヤ列135(2)を介して、前記駆動軸125から基準回転速動力を入力し得るようになっている。
【0092】
前記第2遊星ギヤ機構30においては、第3要素が、前記第1及び第2要素に入力された回転動力を合成した合成回転動力を出力する遊星出力部として作用する。
本実施の形態においては、第2インターナルギヤ36が前記第3要素とされている。
【0093】
図1~
図4に示すように、前記遊星ギヤアッセンブリ1Aは、さらに、前記伝動軸10に軸線回り相対回転自在に外挿された状態で、前記第1及び第2遊星ギヤ機構20、30における第3要素同士を軸線回り相対回転不能に連結する連結部材40を備えている。
【0094】
前述の通り、本実施の形態においては、前記第1遊星ギヤ機構20の第3要素(第1キャリヤ28)は前記第1遊星ギヤ機構20の合成出力部として作用し、且つ、前記第2遊星ギヤ機構30の第3要素(第2インターナルギヤ36)は前記第2遊星ギヤ機構30の合成出力部として作用しており、従って、前記連結部材40は、前記第1及び第2遊星ギヤ機構20、30双方に共通のHMT出力部材として作用する。
【0095】
詳しくは、
図3及び
図4に示すように、前記連結部材40は、前記第1遊星ギヤ機構20が動力伝達状態とされ且つ前記第2遊星ギヤ機構30が動力遮断状態とされている際には、前記第1遊星ギヤ機構20による合成回転動力(HMT出力)を出力し、前記第1遊星ギヤ機構20が動力遮断状態とされ且つ前記第2遊星ギヤ機構30が動力伝達状態とされている際には、前記第2遊星ギヤ機構30による合成回転動力(HMT出力)を出力する。
【0096】
図5に、前記連結部材40の分解縦断面図を示す。
図3~
図5に示すように、前記連結部材40は、前記伝動軸10に軸線回り相対回転自在に外挿された状態で、軸線方向第1側が前記第1遊星ギヤ機構20の第3要素に連結され且つ軸線方向第2側が前記第2遊星ギヤ機構30の第3要素に連結された連結体41と、前記連結体41の回転動力を外部へ出力可能な出力体45とを有している。
【0097】
前述の通り、本実施の形態においては、第1キャリヤ28が前記第1遊星ギヤ機構20の第3要素(遊星出力部)として作用し、且つ、第2インターナルギヤ36が前記第2遊星ギヤ機構30の第3要素(遊星出力部)として作用している。
【0098】
従って、前記連結体41は、前記伝動軸10に軸線回り相対回転自在に外挿された状態で、軸線方向第1側が第1キャリヤ28に軸線回り相対回転不能に連結され且つ軸線方向第2側が第2インターナルギヤ36に軸線回り相対回転不能に連結されている。
【0099】
詳しくは、
図4及び
図5に示すように、前記連結体41は、軸線方向に延びる筒部42と、前記筒部42の軸線方向第1側から径方向外方へ延びて第1キャリヤ28に連結される第1フランジ43と、前記筒部42の軸線方向第2側から径方向外方へ延びて第2インターナルギヤ36に連結される第2フランジ44とを有している。
【0100】
本実施の形態においては、前記出力体45は前記連結体41とは別体とされている。
詳しくは、前記出力体45は、第1キャリヤ28に支持される第1遊星ギヤ24を挟んで前記連結体41とは軸線方向に関し反対側に配置され且つ前記連結体41の軸線方向第1側にボルト等の締結部材49を介して軸線回り相対回転不能且つ着脱可能に連結される連結フランジ46と、前記連結フランジ46から軸線方向第1側へ延びる軸部47とを有している。
【0101】
図5に示すように、本実施の形態においては、第1キャリヤ28は、第1遊星ギヤ24を軸線回り回転自在に支持する第1キャリヤピン28aを有している。
【0102】
第1キャリヤピン28aは、軸線方向第1側が前記連結フランジ46に形成された係合孔46aに係入され、且つ、軸線方向第2側が前記第1フランジ43に形成された係合孔43aに係入されており、前記連結フランジ46及び前記第1フランジ43が、第1キャリヤピン28aと共に第1サンギヤ22の軸線回りに回転する第1キャリヤ28を形成している。
【0103】
なお、本実施の形態においては、前記出力体45は、前記連結体41に着脱可能に連結されているが、これに代えて、前記連結体41の筒部42の外周面に、出力体として作用する出力ギヤ(図示せず)を設けることも可能である。
【0104】
本実施の形態においては、
図4に示すように、前記第1従動ギヤ137(1)は、前記出力体45の軸部47に軸線回り相対回転自在に外挿支持された状態で、入力ギヤ部137a(1)において前記第1駆動ギヤ136(1)(
図3参照)に連結され且つ出力ギヤ部137b(1)において第1インターナルギヤ26に連結されている。
【0105】
図4に示すように、本実施の形態においては、第2キャリヤ38は、第2遊星ギヤ34を軸線回り回転自在に支持する第2キャリヤピン38aと、第2キャリヤピン38aと共に第2サンギヤ32の軸線回りに回転するように、前記伝動軸10に軸線回り相対回転自在に支持された第2キャリヤ本体38bとを有している。
前記第2従動ギヤ137(2)は、第2キャリヤ本体38bに軸線回り相対回転不能に支持されている。
【0106】
図1~
図3に示すように、本実施の形態においては、前記第1及び第2クラッチ機構140(1)、140(2)は共に前記駆動軸125に支持されている。
【0107】
即ち、前記第1クラッチ機構140(1)は、前記駆動軸125から前記第1駆動ギヤ136(1)への動力伝達を係脱するように前記駆動軸125上に設けられ、前記第2クラッチ機構140(2)は、前記駆動軸125から前記第2駆動ギヤ136(2)への動力伝達を係脱するように前記駆動軸125上に設けられている。
【0108】
図1~
図3に示すように、本実施の形態においては、前記第1及び第2クラッチ機構140(1)、140(2)は油圧多板式クラッチとされている。
【0109】
詳しくは、前記第1クラッチ機構140(1)は、前記駆動軸125に相対回転不能に支持された第1クラッチハウジング141(1)と、前記第1クラッチハウジング141に相対回転不能に支持された第1駆動側摩擦板及び前記第1駆動側摩擦板に対向された状態で前記第1駆動ギヤ136(1)に相対回転不能に支持された第1従動側摩擦板を含む1摩擦板群142(1)と、前記第1摩擦板群142(1)を摩擦係合させる第1ピストン143(1)とを有している。
【0110】
前記第2クラッチ機構140(2)は、前記駆動軸に相対回転不能に支持された第2クラッチハウジング62と、前記第2クラッチハウジング62に相対回転不能に支持された第2駆動側摩擦板及び前記第2駆動側摩擦板に対向された状態で前記第2駆動ギヤ136(2)に相対回転不能に支持された第2従動側摩擦板を含む2摩擦板群142(2)と、前記第2摩擦板群142(2)を摩擦係合させる第2ピストン143(2)とを有している。
なお、
図3に示すように、前記第1及び第2クラッチハウジング141(1)、141(2)は一体形成されている。
【0111】
図3に示すように、本実施の形態においては、前記第1及び第2クラッチ機構140(1)、140(2)は、軸線方向に関し、前記連結体41の前記第1及び第2フランジ43、44の間に配置されており、前記第1及び第2クラッチ機構140(1)、140(2)の一部が、前記筒部42の外周面と前記第1及び第2フランジ43、44の対向面との間によって画される空間S(
図4参照)内に入り込んでいる。
【0112】
斯かる構成によれば、前記駆動軸125、前記第1及び第2クラッチ機構140(1)、140(2)、前記第1及び第2伝動ギヤ列135(1)、135(2)、並びに、前記遊星ギヤアッセンブリ1Aを含む構造体の小型化を図ることができる。
【0113】
前記第1及び第2クラッチ機構140(1)、140(2)は、それぞれ、前記制御装置300によって作動制御される第1及び第2クラッチ作動部材145(1)、145(2)によって動力伝達の係脱を行うように構成されている。
【0114】
即ち、前記トランスミッション構造200Aには、さらに、前記第1クラッチ機構140(1)の係脱動作を切替える前記第1クラッチ作動部材145(1)と、前記第2クラッチ機構140(2)の係脱動作を切替える前記第2クラッチ作動部材145(2)とが備えられ、前記制御装置300は、前記HST作動部材320の作動制御に加えて、前記第1及び第2クラッチ作動部材145(1)、145(2)の作動制御を司るように構成されている。
【0115】
本実施の形態においては、前記第1及び第2クラッチ作動部材145(1)、145(2)は油圧アクチュエータとされている。
【0116】
詳しくは、
図2に示すように、前記第1クラッチ作動部材145(1)は、上流側が油圧ポンプ等の油圧源430に流体接続される圧油供給ライン146と、ドレンライン147と、前記第1クラッチ機構140(1)に対して圧油を給排する第1給排ライン148(1)と、第1クラッチ用電磁弁150(1)とを備えている。
【0117】
前記第1クラッチ用電磁弁150(1)は、前記制御装置300からの信号に応じて、前記第1給排ライン148(1)を前記圧油供給ライン146に流体接続させるクラッチ係合位置及び前記第1給排ライン148(1)を前記ドレンライン147に流体接続するクラッチ遮断位置を選択的に取るように構成されている。
【0118】
前記第2クラッチ作動部材145(2)は、前記圧油供給ライン146と、前記ドレンライン147と、前記第2クラッチ機構140(2)に対して圧油を給排する第2給排ライン148(2)と、第2クラッチ用電磁弁150(2)とを備えている。
【0119】
前記第2クラッチ用電磁弁150(2)は、前記制御装置300からの信号に応じて、前記第2給排ライン148(2)を前記圧油供給ライン146に流体接続させるクラッチ係合位置及び前記第2給排ライン148(2)を前記ドレンライン147に流体接続するクラッチ遮断位置を選択的に取るように構成されている。
【0120】
なお、
図2中の符号146aは前記圧油供給ライン146のクラッチ作動油圧を設定する作動油リリーフ弁である。
【0121】
本実施の形態においては、前記第1及び第2クラッチ用電磁弁150(1)、150(2)は比例圧力弁とされているが、これに代えて、ON・OFF弁とすることも可能である。
【0122】
また、本実施の形態においては、前記第1及び第2クラッチ作動部材145(1)、145(2)は油圧多板式クラッチを作動させる油圧アクチュエータとされているが、例えば、前記第1及び第2クラッチ機構140(1)、140(2)がドグクラッチとされている場合には、前記第1及び第2クラッチ作動部材145(1)、145(2)をドグクラッチをシフト操作する電動モータ等の電動アクチュエータとすることも可能である。
【0123】
前述の通り、本実施の形態においては、前記トランスミッション構造200Aは、前記前後進切替機構220を有している。
この場合、前記トランスミッション構造200Aには、さらに、前記前後進切換機構220を作動させる前後進作動部材155が備えられ、前記変速操作部材310は、ゼロ速位置から前進側最高速位置までの前進側操作範囲と、ゼロ速位置から後進側最高速位置までの後進側操作範囲とにおいて人為操作可能とされる。
【0124】
そして、前記制御装置300は、前記変速操作部材310が前進側操作範囲に位置されている際には前記前後進切替機構220が正転出力状態(前進出力状態)とされ且つ前記変速操作部材310が後進側操作範囲に位置されている際には前記前後進切替機構220が逆転出力状態(後進出力状態)とされるように、前記前後進作動部材155を作動させる。
【0125】
なお、前記トランスミッション構造200Aに、前記前後進切替機構220を人為操作する為の専用の前後進切替操作部材を備えることも可能である。この場合、前記前後進切替操作部材は、前記前後進切替機構220に機械的に操作可能に連結されるレバー又は電気スイッチ式等、種々の構成をとることができる。
前記前後進切替操作部材が備えられる場合には、前記変速操作部材310は、例えば、ペダル式等のゼロ速位置から最高速位置まで操作可能な部材とされ、前記トランスミッション構造200Aは、前記変速操作部材310及び前記前後進切替操作部材への人為操作に応じて、ゼロ速から前進側最高速まで、及び、ゼロ速から後進側最高速までの駆動力を出力するように構成される。
【0126】
前記前後進作動部材155は、前記制御装置300からの制御信号によって前記前後進切替機構220を作動させ得る限り、油圧アクチュエータや電動アクチュエータ等の種々の形態をとり得る。
【0127】
本実施の形態においては、
図2に示すように、前記前後進作動部材155も油圧アクチュエータとされている。
【0128】
図1に示すように、前記前後進切替機構220は、前記連結部材40からHMT出力を作動的に入力する中間駆動軸210と前記ディファレンシャル機構230に作動連結された走行出力軸215との間で、HMT出力の回転方向を前進方向及び後進方向へ切り替えるように構成されている。
【0129】
本実施の形態においては、前記前後進切替機構220は、前記中間駆動軸210に支持された前進側駆動ギヤ331F及び前記走行出力軸215に支持され、前記前進側駆動ギヤ331Fに噛合された前進側従動ギヤ332Fを含む前進側ギヤ列330Fと、前記中間駆動軸210に支持された後進側駆動ギヤ331R及び前記走行出力軸215に支持され、アイドルギヤ333を介して前記後進側駆動ギヤ331Rに噛合された後進側従動ギヤ332Rを含む後進側ギヤ列330Rと、前進側ギヤ列330Fの動力伝達を係脱する前進側クラッチ機構340Fと、後進側ギヤ列330Rの動力伝達を係脱する後進側クラッチ機構340Rとを有している。
【0130】
図2に示すように、前記前後進作動部材155は、前記圧油供給ライン146と、前記ドレンライン147と、前記前進側クラッチ機構330Fに対して圧油を給排する前進給排ライン156Fと、前記後進側クラッチ機構330Rに対して圧油を給排する後進給排ライン156Rと、前進用電磁弁157Fと、後進用電磁弁158Rとを備えている。
【0131】
前記前進用電磁弁157Fは、前記制御装置300からの信号に応じて、前記前進給排ライン156Fを前記圧油供給ライン146に流体接続させるクラッチ係合位置及び前記前進給排ライン156Fを前記ドレンライン147に流体接続するクラッチ遮断位置を選択的に取るように構成されている。
【0132】
同様に、前記後進用電磁弁157Rは、前記制御装置300からの信号に応じて、前記後進給排ライン156Rを前記圧油供給ライン146に流体接続させるクラッチ係合位置及び前記後進給排ライン156Rを前記ドレンライン147に流体接続するクラッチ遮断位置を選択的に取るように構成されている。
【0133】
本実施の形態においては、前記トランスミッション構造200Aには、潤滑油供給構造が備えられている。
図2~
図4に示すように、前記潤滑油供給構造は、前記作動油リリーフ弁146aから、調圧後の排出油を受け入れる潤滑油供給ライン161と、前記潤滑油供給ライン161から受け入れた油を、前記中間駆動軸210(
図2~
図4においては図示せず)に形成された軸線油路を経由して、前記伝動軸10に形成された軸線油路162a(
図4参照)を介して前記第1及び第2遊星ギヤ機構20、30の所望潤滑箇所へ案内する遊星ギヤ用潤滑油ライン162と、前記潤滑油供給ライン161から受け入れた油を、前記駆動軸125に形成された軸線油路163a(
図3参照)を介して前記第1及び第2クラッチ機構140(1)、140(2)の所望潤滑箇所へ案内するクラッチ用潤滑油ライン163とを有している。
【0134】
なお、
図2中の符号161aは前記潤滑油供給ライン161の油圧を設定する潤滑油リリーフ弁である。
【0135】
ここで、前記第1及び第2遊星ギヤ機構20、30の設定ギヤ比について説明する。
図6に、前記HMT装置100AにおけるHST出力とHMT出力との関係を表すグラフを示す。
【0136】
図6に示すように、前記第1遊星ギヤ機構20は、第1サンギヤ22にHST出力が入力され且つ第1インターナルギヤ26に基準回転速動力が入力されている第1遊星伝動状態(第1速段伝動状態)において、HST出力がゼロ速用HST速とされた際に第1キャリヤ28(即ち、前記連結部材40)に現出されるHMT出力がゼロ速となり、HST出力が第1HST速の側から第2HST速の側へ変化されるに従って第1キャリヤ28に現出されるHMT出力が軸線回り一方側である第1回転方向へ増速回転し、且つ、HST出力が所定の第1速段最高速用HST速とされた際に第1キャリヤ28に現出されるHMT出力が第1回転方向へ所定の第1速段最高速で回転するように、ギヤ比が設定されている。
【0137】
本実施の形態においては、ゼロ速用HST速は、HST出力の可変範囲の一方側端である第1HST速から所定速度だけ第2HST速の側へ変速された速度とされている。
【0138】
これは、下記理由に依る。
即ち、理論上においては、ゼロ速用HST速を第1HST速に設定することも可能であるが、この場合、作業車輌の走行負荷等によっては、前記出力調整部材120を第1HST速に応じた第1作動端位置に位置させても、HST出力が第1HST速に到達しない事態が生じ得る。
この点を考慮して、前記制御装置300は、HST出力の可変範囲の一方側の速度端である第1HST速から所定速度だけ第2HST速の側へ控えた速度をゼロ速用HST速に設定している。
【0139】
同様の理由により、本実施の形態においては、前記制御装置300は、HST出力の可変範囲の他方側の速度端である第2HST速から所定速度だけ第1HST速の側へ変速された速度を第1速段最高速用HST速に設定している。
即ち、本実施の形態において、「最高速用HST速」は、前記HST110の機械的な限界出力値ではなく前記制御装置300による調整出力値を指す。
【0140】
図6に示すように、前記第2遊星ギヤ機構30は、第2サンギヤ32にHST出力が入力され且つ第2キャリヤ38に基準回転速動力が入力されている第2遊星伝動状態(第2速段伝動状態)において、HST出力が第1速段最高速用HST速とされた際に第2インターナルギヤ36(即ち、前記連結部材40)に現出されるHMT出力が第1速段最高速となり、HST出力が第2HST速の側から第1HST速の側へ変化されるに従って第2インターナルギヤ36に現出されるHMT出力が軸線回り一方側である第1回転方向へ増速回転し、且つ、HST出力が所定の第2速段最高速用HST速とされた際に第2インターナルギヤ36に現出されるHMT出力が第1回転方向へ所定の第2速段最高速で回転するように、ギヤ比が設定されている。
【0141】
本実施の形態においては、第2速段最高速用HST速も、HST出力の可変範囲の一方側端である第1HST速から所定速度だけ第2HST速の側へ変速された速度とされている。
【0142】
第2遊星伝動状態(第2速段伝動状態)で出力し得る車速の最高速度が作業車両の仕様に対して早過ぎる場合には、前記制御装置300の調整によって、
図7に示すように、第1HST速から大きく第2HST速の側へ(好ましくは、中立位置N又は中立位置の近傍まで)変速された速度を、第2速段最高速用HST速に設定することができる。
【0143】
本実施の形態においては、前記制御装置300は、下記制御を行うことで、
図6のHMT出力を現出させるように構成されている。
【0144】
即ち、前記トランスミッション構造200Aには、さらに、前記連結部材40の回転速度を直接又は間接的に検出する出力センサ50(
図1参照)が備えられる。
前記出力センサ50は、例えば、前記連結部材40又は前記中間駆動軸210の回転速度を検出するように配置される。
【0145】
図6に示すように、前記変速操作部材310の変速操作範囲は、低速側の第1速段操作領域と前記第1速段操作領域より高速側の第2速段操作領域とに区画される。
前記第1速段操作領域は、ゼロ速位置から第1速段最高速位置までの範囲に設定され、前記第2速段操作領域は、第1速段最高速位置から第2速段最高速位置までの範囲に設定される。
【0146】
前記制御装置300は、前記第1及び第2クラッチ作動部材145(1)、145(2)に対しては下記作動制御を実行する。
【0147】
即ち、前記制御装置300は、
・前記操作位置センサ315からの信号に基づき前記変速操作部材310が前記第1速段操作領域で操作されていると判断すると、前記第1クラッチ機構140(1)が係合状態且つ前記第2クラッチ機構140(2)が遮断状態となるように前記第1及び第2クラッチ作動部材145(1)、145(2)を作動させ、
・前記操作位置センサ315からの信号に基づき前記変速操作部材310が第1速段最高速位置に位置されていると判断すると、前記第1及び第2クラッチ機構140(1)、140(2)の一方が係合状態で且つ他方が遮断状態となるように前記第1及び第2クラッチ作動部材145(1)、145(2)を作動させ、
・前記操作位置センサ315からの信号に基づき前記変速操作部材310が前記第2速段操作領域で操作されていると判断すると、前記第1クラッチ機構140(1)が遮断状態且つ前記第2クラッチ機構140(2)が係合状態となるように第1及び第2クラッチ作動部材145(1)、145(2)を作動させる。
【0148】
また、前記制御装置300は、前記HST作動部材320に対しては下記作動制御を実行する。
【0149】
即ち、前記制御装置330は、
・前記操作位置センサ315からの信号に基づき前記変速操作部材310がゼロ速位置へ操作されていると判断すると、HST出力がゼロ速用HST速となるように前記HST作動部材320を作動させ、
・前記操作位置センサ315からの信号に基づき前記変速操作部材310が第1速段操作領域内において増速操作されていると判断すると、HST出力が第1HST速の側から第2HST速の側へ変速するように前記HST作動部材320を作動させ、
・前記操作位置センサ315からの信号に基づき、前記変速操作部材310が第1速段最高速位置へ操作されたと判断すると、HST出力が第1速段最高速用HST速となるように前記HST作動部材320を作動させ、
・前記操作位置センサ315からの信号に基づき前記変速操作部材310が第2速段操作領域内において増速操作されていると判断すると、HST出力が第2HST速の側から第1HST速の側へ変速するように前記HST作動部材320を作動させ、
・前記操作位置センサ315からの信号に基づき前記変速操作部材310が最高速位置へ操作されたと判断すると、HST出力が第2速段最高速用HST速となるように前記HST作動部材320を作動させる。
【0150】
さらに、前記制御装置300は前記前後進作動部材155に対しては下記作動制御を実行する。
【0151】
即ち、前記制御装置300は、
・前記操作位置センサ315からの信号に基づき前記変速操作部材310が前進側操作範囲に位置されていると判断すると、前記前後進切替機構220が正転出力状態となるように前記前後進作動部材155を作動させ、
・前記操作位置センサ315からの信号に基づき前記変速操作部材310が後進側操作範囲に位置されていると判断すると、記前後進切替機構220が逆転出力状態となるように前記前後進作動部材155を作動させる。
【0152】
実施の形態2
以下、本発明に係る遊星ギヤアッセンブリの他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図8に、本実施の形態に係る遊星ギヤアッセンブリ2が適用された作業車輌のトランスミッション構造200Bの伝動模式図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1におけると同一部材は同一符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0153】
図8に示すように、本実施の形態に係る遊星ギヤアッセンブリ1Bは、前記実施の形態1に係る遊星ギヤアッセンブリ1に比して、さらに、入力部材60を有している。
【0154】
前記入力部材60は、前記伝動軸10に軸線回り相対回転自在な状態で、前記第2遊星ギヤ機構30のうち基準回転速動力を入力する第2要素(図示の形態においては、第2キャリヤ36)に連結されており、さらに、基準回転速動力を入力可能な第1及び第2入力ギヤ部61、62を有している。
前記第2入力ギヤ部62のピッチ径は前記第1入力ギヤ部61のピッチ径よりも小径とされている。
【0155】
前記遊星ギヤアッセンブリ1Bが前記HST10と共働して形成するHMT装置100Bは、前記HMT装置100Aに比して、さらに、前記駆動軸125から基準回転速動力を前記第2遊星ギヤ機構30の第2要素(第2キャリヤ38)に作動的に伝達可能な第3伝動ギヤ列135(3)と、前記第3伝動ギヤ列135(3)による動力伝達を係脱する第3クラッチ機構140(3)とを備えている。
【0156】
前記第3伝動ギヤ列135(3)は、前記第2伝動ギヤ列135(2)よりも第2キャリヤ38を高速回転させるようにギヤ比が設定されている。
【0157】
本実施の形態においては、前記第3伝動ギヤ列135(3)は、前記駆動軸125に軸線回り相対回転自在に支持された第3駆動ギヤ136(3)と、前記第3駆動ギヤ136(3)に作動的に噛合され且つ第2キャリヤ38に軸線回り相対回転不能に連結された状態で、前記伝動軸10に直接又は間接的に軸線回り相対回転自在に支持された第3従動ギヤ137(3)とを有している。
【0158】
そして、前記入力部材60の第1及び第2入力ギヤ部61、62が、それぞれ、前記第2従動ギヤ137(2)及び前記第3従動ギヤ137(3)として作用している。
【0159】
前記第3クラッチ機構140(3)は、前記制御装置300によって作動制御される第3クラッチ作動部材(図示せず)によって動力伝達の係脱を行うように構成されている。
【0160】
図9に、前記HMT装置100BにおけるHST出力とHMT出力との関係を表すグラフを示す。
【0161】
図9に示すように、前記HMT装置100Bにおいては、第2遊星伝動状態は、第2速段伝動状態と第3速段伝動状態とを含んでいる。
【0162】
第2速段伝動状態は、前記第1クラッチ機構140(1)が遮断され、前記第2クラッチ機構140(2)が係合され且つ前記第3クラッチ機構140(3)が遮断されることにより現出される伝動状態である。
【0163】
第3速段伝動状態は、前記第1クラッチ機構140(1)が遮断され、前記第2クラッチ機構140(2)が遮断され且つ前記第3クラッチ機構140(3)が係合されることにより現出される伝動状態である。
【0164】
この場合、前記変速操作部材310の変速操作範囲は、
図9に示すように、ゼロ速位置から第1速段最高速位置までの第1速段操作領域と、第1速段最高速位置から第2速段最高速位置までの第2速段操作領域と、第2速段最高速位置から第3速段最高速位置までの第3速段操作領域とを含むものとされる。
【0165】
前記制御装置300は、前記変速操作部材310がゼロ速位置から第2速段最高速位置までの範囲で操作されている際には、前記HST作動部材320並びに前記第1及び第2クラッチ作動部材145(1)、145(2)に対し前記実施の形態1におけると同様の作動制御を実行する。
【0166】
一方、前記変速操作部材310が第3速段操作領域に位置されると、前記制御装置300は、前記第1及び第2クラッチ機構140(1)、140(2)が遮断状態とされ且つ前記第3クラッチ機構140(3)が係合状態となるように前記第1~第3クラッチ作動部材を作動させて第3速段伝動状態を現出させる。
【0167】
本実施の形態においては、前記制御装置300は、第2速段伝動状態及び第3速段伝動状態の間の移行に際し、HMT出力に急激な速度変化が生じることを防止する為に、下記作動制御を実行する。
【0168】
即ち、前記制御装置300は、第2速段操作領域内において前記変速操作部材310が第2速段最高速位置まで増速操作されると、HST出力が第2速段最高速用HST速となるように前記HST作動部材320を作動させて、HMT出力を第2速段最高速とする。
【0169】
ここで、第3速段伝動状態においては、前記第2遊星ギヤ機構30の第2要素(図示の形態においては第2キャリヤ38)へは前記2伝動ギヤ列135(2)より高変速比の前記第3伝動ギヤ列135(3)を介して基準回転速動力が入力される。
【0170】
従って、HST出力を第2速段最高速用HST速に維持したままで、第2速段伝動状態から第3速段伝動状態へ移行させると、HMT出力に大きな速度変化が生じる。
【0171】
この点を考慮して、本実施の形態においては、前記変速操作部材310が第2速段操作領域から第3速段操作領域へ操作されると、前記制御装置300は、前記第2クラッチ機構140(2)が遮断状態となり且つ前記第3クラッチ機構140(3)が係合状態となるように前記第2及び第3クラッチ作動部材を作動させて第2速段伝動状態から第3速段伝動状態へ移行させる一方で、HST出力が第2速段最高速用HST速から第3速段最低速用HST速まで変速するように前記HST作動部材320を作動させて、第2速段伝動状態及び第3速段伝動状態間の移行時に、HMT出力に速度変化が生じることを防止乃至は低減している。
【0172】
なお、第3速段最低速用HST速は、第3速段伝動状態下において、HMT出力を第2速段最高速とさせる速度に設定される。
【0173】
実施の形態3
本実施の形態においては、前記実施の形態1に係る遊星ギヤアッセンブリ1Aが前記トランスミッション構造200Aとは異なる他のトランスミッション構造200Cに適用されている。
図10に、前記遊星ギヤアッセンブリ1Aが適用された作業車輌におけるトランスミッション構造200Cの伝動模式図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1及び2におけると同一部材は同一符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0174】
図10に示すように、前記トランスミッション構造200Cは、前記実施の形態1におけるトランスミッション構造200Aに比して、前記HMT装置100Aの出力を多段変速可能な副変速機構280を備えている。
【0175】
本実施の形態においては、前記副変速機構280は、動力伝達方向に関し、前記HMT装置100Aと前記前後進切替機構220との間に配設されており、低速段L及び高速段Hの2段階に変速可能とされている。
【0176】
前記副変速機構280は、例えば、レバー等あるいは電気スイッチ式で構成される副変速操作部材(図示せず)への人為操作に応じて、機械的リンク機構を介して、若しくは、前記制御装置300によって作動制御される油圧アクチュエータ又は電動アクチュエータ等の副変速作動部材を介して、低速段L及び高速段Hの切替が行われるように構成される。
【0177】
図11に、HST出力と前記副変速機構の出力との関係を表すグラフを示す。
【0178】
前記トランスミッション構造200Cには、前記副変速機構280の伝動状態を検出して、前記制御装置300に検出信号を送信し得る副変速センサ285が備えられる。
前記副変速センサ285は、前記副変速操作部材の操作位置を検出するセンサ、前記副変速機構280の作動状態を検出するセンサ、又は、前記副変速作動部材の動きを検出するセンサ等、種々の形態をとり得る。
【0179】
本実施の形態においては、
図11に示すように、前記制御装置300は、副変速L段係合状態においては前記変速操作部材310の第2速段最高速位置への操作に応じてHST出力を副変速L段係合時第2速段最高速用HST速とする一方で、副変速H段係合状態においては前記変速操作部材310の第2速段最高速位置への操作に応じてHST出力を、副変速L段係合時第2速段最高速用HST速より所定速度だけ低速の副変速H段係合時第2速段最高速用HST速とするように構成されている。
【0180】
副変速L段係合時第2速段最高速用HST速及び副変速H段係合時第2速段最高速用HST速は、作業車輌の仕様に応じて適宜設定される。
【0181】
実施の形態4
以下、本発明に係る遊星ギヤアッセンブリのさらに他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図12に、本実施の形態に係る遊星ギヤアッセンブリ1Dが適用された作業車輌におけるトランスミッション構造200Dの部分伝動模式図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1~3におけると同一部材は同一符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0182】
図12に示すように、前記遊星ギヤアッセンブリ1Dは、前記実施の形態1に係る遊星ギヤアッセンブリ1Aに比して、前記連結部材40に代えて連結部材70を備えている。
【0183】
即ち、前記遊星ギヤアッセンブリ1Dは、前記伝動軸10と、前記第1及び第2遊星ギヤ機構20、30と、前記連結部材70とを備えている。
【0184】
本実施の形態に係る前記遊星ギヤアッセンブリ1Dは、
・第1サンギヤ22が前記伝動軸10に軸線回り相対回転不能に支持され、第1キャリヤ28及び第1インターナルギヤ26の一方が基準回転速動力を入力可能とされた基準回転速動力入力部として作用する点、
・第2サンギヤ32が前記伝動軸10に軸線回り相対回転不能に支持され、第2キャリヤ38及び第2インターナルギヤ36のうち、前記第1遊星ギヤ機構20における基準回転速動力入力部として作用する遊星要素とは異なる遊星要素が基準回転速動力を入力可能とされた基準回転速動力入力部として作用する点、
・前記連結部材70は、前記第1遊星ギヤ機構20のうち第1サンギヤ22及び基準回転速動力入力部として作用する遊星要素以外の遊星要素と、前記第2遊星ギヤ機構30のうち第2サンギヤ32及び基準回転速動力入力部として作用する遊星要素以外の遊星要素とを軸線回り相対回転不能に連結している点
においては、前記実施の形態1に係る遊星ギヤアッセンブリ1Aと共通している。
【0185】
即ち、前記実施の形態1に係る遊星ギヤアッセンブリ1Aにおいては、第1サンギヤ22が前記伝動軸10に軸線回り相対回転不能に支持され、第1キャリヤ28及び第1インターナルギヤ26の一方である第1インターナルギヤ26が基準回転速動力入力部として作用し、第2サンギヤ32が前記伝動軸10に軸線回り相対回転不能に支持され、第2キャリヤ38及び第2インターナルギヤ36のうち、前記第1遊星ギヤ機構20における基準回転速動力入力部として作用する遊星要素(第1インターナルギヤ26)とは異なる遊星要素(第2キャリヤ38)が基準回転速動力入力部として作用し、前記連結部材40が、前記第1遊星ギヤ機構20のうち第1サンギヤ22及び基準回転速動力入力部として作用する遊星要素(第1インターナルギヤ26)以外の遊星要素(第1キャリヤ28)と、前記第2遊星ギヤ機構30のうち第2サンギヤ32及び基準回転速動力入力部として作用する遊星要素(第2キャリヤ38)以外の遊星要素(第2インターナルギヤ36)とを軸線回り相対回転不能に連結している。
【0186】
そして、本実施の形態に係る遊星ギヤアッセンブリ1Dにおいては、第1サンギヤ22が前記伝動軸10に軸線回り相対回転不能に支持され、第1キャリヤ28及び第1インターナルギヤ26の一方である第1キャリヤ28が基準回転速動力入力部として作用し、第2サンギヤ32が前記伝動軸10に軸線回り相対回転不能に支持され、第2キャリヤ38及び第2インターナルギヤ36のうち、前記第1遊星ギヤ機構20における基準回転速動力入力部として作用する遊星要素(第1キャリヤ28)とは異なる遊星要素(第2インターナルギヤ36)が基準回転速動力入力部として作用し、前記連結部材70が、前記第1遊星ギヤ機構20のうち第1サンギヤ22及び基準回転速動力入力部として作用する遊星要素(第1キャリヤ28)以外の遊星要素(第1インターナルギヤ26)と、前記第2遊星ギヤ機構30のうち第2サンギヤ32及び基準回転速動力入力部として作用する遊星要素(第2インターナルギヤ36)以外の遊星要素(第2キャリヤ38)とを軸線回り相対回転不能に連結している。
【0187】
一方、前記実施の形態1に係る遊星アッセンブリ1Aにおいては、前記連結部材40が前記HMT出力部材として作用しているのに対し、本実施の形態に係る遊星ギヤアッセンブリ1Dにおいては、前記伝動軸10が前記HMT出力部材として作用している点において、本実施の形態に係る遊星ギヤアッセンブリ1Dは、前記実施の形態1に係る遊星ギヤアッセンブリ1Aと相違している。
【0188】
詳しくは、前記遊星ギヤアッセンブリ1Dにおいては、第1キャリヤ28が前記駆動軸125から前記第1伝動ギヤ列135(1)を介して基準回転速動力を入力し、且つ、第2インターナルギヤ36が前記駆動軸125から前記第2伝動ギヤ列135(2)を介して基準回転速動力を入力している。
【0189】
前記連結部材70は、前記伝動軸10に軸線回り相対回転自在に外挿された状態で、第1インターナルギヤ26及び第2キャリヤ38を連結しており、さらに、HST出力を作動的に入力可能とされている。
【0190】
即ち、本実施の形態においては、第1インターナルギヤ26が前記第1遊星ギヤ機構20においてHST出力を入力する可変動力入力部として作用し、且つ、第2キャリヤ38が前記第2遊星ギヤ機構30においてHST出力を入力する可変動力入力部として作用する。
【0191】
本実施の形態においては、前記連結部材70は前記HST伝動ギヤ列130を介して前記モータ軸116からHST出力を入力している。
【0192】
このように、前記第1遊星ギヤ機構20においては、第1キャリヤ28が基準回転速動力が入力し且つ第1インターナルギヤ26がHST出力を入力して、前記伝動軸10に軸線回り相対回転不能に支持された第1サンギヤ22が合成回転動力を出力する遊星出力部として作用する。
【0193】
また、前記第2遊星ギヤ機構30においては、第2インターナルギヤ36が基準回転速動力が入力し且つ第2キャリヤ38がHST出力を入力して、前記伝動軸10に軸線回り相対回転不能に支持された第2サンギヤ32が合成回転動力を出力する遊星出力部として作用する。
【0194】
前記伝動軸10は、自身の回転動力を外部に出力可能とされており、前記第1及び第2遊星ギヤ機構20、30双方に共通のHMT出力部材として作用している。
【0195】
実施の形態5
以下、本発明に係る遊星ギヤアッセンブリのさらに他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図13に、本実施の形態に係る遊星ギヤアッセンブリ1Eが適用された作業車輌におけるトランスミッション構造200Eの部分伝動模式図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1~4におけると同一部材は同一符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0196】
本実施の形態に係る遊星ギヤアッセンブリ1Eは、前記伝動軸10に代えて筒状の伝動軸15を有している点、前記連結部材40に代えて連結部材80を有している点、及び、出力軸90を有している点において、前記実施の形態1に係る遊星ギヤアッセンブリ1Aと相違している。
【0197】
前記出力軸90の両端は、図示しないミッションケースの支持壁に軸受支持され、一端部において、前述の中間駆動軸210と連結するための継手部が設けられる。
【0198】
前記伝動軸15は、前記出力軸90に軸線回り相対回転自在に外挿支持された状態で、前記HST伝動ギヤ列130を介して前記モータ軸からHST出力を入力可能とされている。
【0199】
前記連結部材80は、前記第1遊星ギヤ機構20のうち第1サンギヤ22及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素と、前記第2遊星ギヤ機構30のうち第2サンギヤ32及び基準回転速動力入力部を形成する遊星要素以外の遊星要素とを連結する連結体81を有している。
【0200】
図13に示すように、本実施の形態においては、第1インターナルギヤ26が前記第1遊星ギヤ機構20の基準回転速動力入力部として作用し、第2キャリヤ38が前記第2遊星ギヤ機構30の基準回転速動力入力部として作用する。
従って、前記連結体81は、第1キャリヤ28と第2インターナルギヤ36とを軸線回り相対回転不能に連結している。
【0201】
図13に示すように、前記連結部材80は、さらに、前記連結体81の回転動力を外部へ出力可能な出力体85を備えている。
本実施の形態おいては、前記出力体85は、前記出力軸90と同軸上において前記出力軸90に軸線回り相対回転不能に連結されている。
【0202】
図13に示すように、前記遊星ギヤアッセンブリ1Eを備えたHMT装置100Eは、前記HMT装置100Aに比して、前記第1及び第2クラッチ機構140(1)、140(2)に代えて、第1及び第2クラッチ機構180(1)、180(2)を備えている。
【0203】
前記ポンプ軸112に連結された前記駆動軸125に、前記第1及び第2駆動ギヤ136(1)・136(2)が軸線回り相対回転不能に連結されており、前記第1及び第2クラッチ機構180(1)、180(2)は、前記伝動軸15と同軸上に配置されている。
【0204】
詳しくは、前記第1クラッチ機構180(1)は、前記第1従動ギヤ137(1)から前記第1遊星ギヤ機構20の基準回転速動力入力部(本実施の形態においては前記第1インターナルギヤ26)への動力伝達を係脱するように構成されている。
【0205】
前記第2クラッチ機構180(2)は、前記第2従動ギヤ137(2)から前記第2遊星ギヤ機構30の基準回転速動力入力部(本実施の形態においては前記第2キャリヤ36)への動力伝達を係脱するように構成されている。
【0206】
前記実施の形態1(
図1)においては、前記第1クラッチ機構140(1)が前記駆動軸125及び前記第1駆動ギヤ136(1)の間に配置され、前記第2クラッチ機構140(2)が前記駆動軸125及び前記第2駆動ギヤ136(2)の間に配置されている為、一方のクラッチ機構(例えば、前記第1クラッチ機構140(1))を係合させたときに、非係合側の駆動ギヤ(この例においては、前記第2駆動ギヤ136(2))は、前記連結部材40の回転を受ける従動ギア(この例においては、前記第2従動ギヤ137(2))によって逆駆動されてしまう。この際に、非係合側の駆動ギヤ(この例においては、前記第2駆動ギヤ136(2))と前記駆動軸125との間の相対回転差が許容値を越えていると異常磨耗や焼き付きが起こる可能性がある。
【0207】
これに対し、本実施の形態(
図13)においては、前記第1及び第2駆動ギヤ136(1)、136(2)が前記駆動軸125に軸線回り相対回転不能とされた状態で、前記第1クラッチ機構180(1)が前記伝動軸15及び前記第1従動ギヤ137(1)の間に配置され、前記第2クラッチ機構180(2)が前記伝動軸15及び前記第2従動ギヤ137(2)の間に配置されている。その為、一方のクラッチ機構(例えば、前記第1クラッチ機構140(1))を係合させたときに、非係合側の従動ギヤ(この例においては、前記第2従動ギヤ137(2))には前記連結部材80の回転は伝達されず、前記駆動軸125まわりの設計を有利にできる利点がある。
【符号の説明】
【0208】
1A~1E 遊星ギヤアッセンブリ
10、15 伝動軸
20 第1遊星ギヤ機構
22 第1サンギヤ
26 第1インターナルギヤ
28 第1キャリヤ
30 第2遊星ギヤ機構
32 第2サンギヤ
36 第2インターナルギヤ
38 第2キャリヤ
40、70、80 連結部材
41、81 連結体
42 筒部
43 第1フランジ
44 第2フランジ
45、85 出力体
46 連結フランジ
47 軸部
50 出力センサ
60 入力部材
61 第1入力ギヤ部
62 第2入力ギヤ部
85 出力軸
100A~100E HMT装置
110 HST
112 ポンプ軸
116 モータ軸
100A~100D HMT装置
125 駆動軸
134 HST従動ギヤ
135(1) 第1伝動ギヤ列
136(1) 第1駆動ギヤ
137(1) 第1従動ギヤ(伝動ギヤ部材)
137a(1) 入力ギヤ部
137b(1) 出力ギヤ部
135(2) 第2伝動ギヤ列
136(2) 第2駆動ギヤ
137(2) 第2従動ギヤ
135(3) 第3伝動ギヤ列
136(3) 第3駆動ギヤ
137(3) 第3従動ギヤ
140(1)、180(1) 第1クラッチ機構
140(2)、180(2) 第2クラッチ機構
140(3) 第3クラッチ機構
200A~200E トランスミッション構造
220 前後進切替機構
280 副変速機構
300 制御装置
310 変速操作部材
315 操作位置センサ
320 HST作動部材
410 駆動源