IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-レーザ加工装置 図1
  • 特開-レーザ加工装置 図2
  • 特開-レーザ加工装置 図3
  • 特開-レーザ加工装置 図4
  • 特開-レーザ加工装置 図5
  • 特開-レーザ加工装置 図6
  • 特開-レーザ加工装置 図7
  • 特開-レーザ加工装置 図8
  • 特開-レーザ加工装置 図9
  • 特開-レーザ加工装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112731
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/04 20140101AFI20230807BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20230807BHJP
   B23K 26/352 20140101ALI20230807BHJP
   B23K 26/60 20140101ALI20230807BHJP
【FI】
B23K26/04
B23K26/082
B23K26/352
B23K26/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014612
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 通雄
(72)【発明者】
【氏名】中川 龍幸
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AB01
4E168AC00
4E168AD05
4E168BA55
4E168BA87
4E168CB04
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA13
4E168EA15
4E168EA17
(57)【要約】
【課題】レーザ加工装置において、ワークの加工品質及び加工速度を高める。
【解決手段】レーザ加工ヘッド20は、短波長の第1レーザ光L1と、長波長の第2レーザ光L2とを出射する。レーザ加工ヘッド20は、所定の移動方向に沿って、ワークWに対して相対的に移動する。レーザ加工ヘッド20は、第1レーザ光L1の少なくとも一部を、第2レーザ光L2よりも移動方向の前方に出射し、第2レーザ光L2が吸収され易くするように、第2レーザ光L2に先行して第1レーザ光L1によりワークWの表面改質を行い、表面改質されたワークWの表面をさらに第2レーザ光L2により出射してレーザ加工する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対してレーザ光を出射するレーザ加工装置であって、
第1レーザ光と、該第1レーザ光よりも波長の長い第2レーザ光とを出射するレーザ加工ヘッドと、
所定の移動方向に沿って、前記ワークに対して前記レーザ加工ヘッドを相対的に移動させる移動機構とを備え、
前記レーザ加工ヘッドは、前記第1レーザ光の少なくとも一部を、前記第2レーザ光よりも前記移動方向の前方に出射し、前記第2レーザ光が吸収され易くするように、前記第2レーザ光に先行して前記第1レーザ光により前記ワークの表面改質を行い、前記表面改質された前記ワークの表面をさらに前記第2レーザ光により出射してレーザ加工する
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1レーザ光の出射位置を変更する出射位置変更部を備え、
前記出射位置変更部は、前記第1レーザ光の少なくとも一部が前記第2レーザ光よりも前記移動方向の前方に位置する第1位置と、該第1レーザ光の少なくとも一部が該第2レーザ光よりも該移動方向の後方に位置する第2位置との間で、該第1レーザ光の出射位置を変更する
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記第1レーザ光の出射位置を変更する出射位置変更部を備え、
前記出射位置変更部は、前記移動方向に対して交差する幅方向に沿って、周期的に往復移動させ、前記第1レーザ光の出射位置を変更する
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、長波長と短波長の2つのレーザを同軸の光路に導いて重畳させる光学系と、同軸の光路に重畳した2つのレーザの出力ビームをワーク(被加工物)上に集光する集光レンズとを備えたレーザ加工光学装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-324254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、短波長のレーザ光は、レーザ光の反射率が鉄などに比べて相対的に高い、銅やアルミのような高反射率材料のワークに対するレーザ吸収率が高いが、ビーム径が小さく、レーザ光の最大出力が小さい。そのため、必要な溶接ビード幅を得るためには、ビーム径を大きくしなければならないが、パワー密度が低下するため、加工速度を遅くする必要がある。
【0005】
一方、長波長のレーザ光は、短波長のレーザ光よりもビーム径が大きく、レーザ光の最大出力が大きい。しかしながら、長波長のレーザ光は、高反射率材料のワークに対するレーザ吸収率が低く、溶け込み深さを一定にすることが困難であり、加工品質が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワークの加工品質及び加工速度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、ワークに対してレーザ光を出射するレーザ加工装置であって、第1レーザ光と、該第1レーザ光よりも波長の長い第2レーザ光とを出射するレーザ加工ヘッドと、所定の移動方向に沿って、前記ワークに対して前記レーザ加工ヘッドを相対的に移動させる移動機構とを備え、前記レーザ加工ヘッドは、前記第1レーザ光の少なくとも一部を、前記第2レーザ光よりも前記移動方向の前方に出射し、前記第2レーザ光が吸収され易くするように、前記第2レーザ光に先行して前記第1レーザ光により前記ワークの表面改質を行い、前記表面改質された前記ワークの表面をさらに前記第2レーザ光により出射してレーザ加工することを特徴とする。
【0008】
第1の発明では、レーザ加工ヘッドは、短波長の第1レーザ光と、長波長の第2レーザ光とを出射する。レーザ加工ヘッドは、所定の移動方向に沿って、ワークに対して相対的に移動する。第1レーザ光の少なくとも一部は、第2レーザ光よりも移動方向の前方に出射される。
【0009】
このように、短波長の第1レーザ光でワークの表面を先行して荒らした後、長波長の第2レーザ光でワークの加工を行うことで、ワークの加工品質及び加工速度を高めることができる。
【0010】
具体的に、短波長の第1レーザ光(例えば、600nm以下のレーザ光)は、銅などの高反射率材料のワークに対するレーザ吸収率が高いが、レーザ光の最大出力が低い。一方、長波長の第2レーザ光(例えば、800nm以上のレーザ光)は、高反射率材料のワークに対するレーザ吸収率は低いが、レーザ光の最大出力が高い。
【0011】
そこで、第1レーザ光をワークの表面に少なくとも先行して出射することで、ワークの表面を酸化させる、ワークの表面を先に一部溶融させる等の表面改質を行い、表面改質が行われた部分に対して第2レーザ光を出射することで、第2レーザ光がワークに吸収されやすくなる。これにより、ワークの加工品質及び加工速度を高めることができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記第1レーザ光の出射位置を変更する出射位置変更部を備え、前記出射位置変更部は、前記第1レーザ光の少なくとも一部が前記第2レーザ光よりも前記移動方向の前方に位置する第1位置と、該第1レーザ光の少なくとも一部が該第2レーザ光よりも該移動方向の後方に位置する第2位置との間で、該第1レーザ光の出射位置を変更することを特徴とする。
【0013】
第2の発明では、第1レーザ光の出射位置を、第1位置と第2位置との間で変更させる。第1位置では、第1レーザ光の少なくとも一部が第2レーザ光よりも移動方向の前方に位置する。第2位置では、第1レーザ光の少なくとも一部が第2レーザ光よりも移動方向の後方に位置する。
【0014】
このように、第2レーザ光の後方にも第1レーザ光を出射することで、第2レーザ光で加工されたワークの加工表面をきれいにすることができる。
【0015】
例えば、具体的には、第2レーザ光で溶接後に凝固した溶接ビードに第1レーザ光を出射することで、スラグを除去して、溶接ビードの外観を滑らかにすることができる。また、レーザ終了位置において、第2レーザ光の後方に第1レーザ光を出射することで、クレータの発生を抑えることができる。また、第2レーザ光でレーザ切断した切断面に第1レーザ光を出射することで、切断面をきれいにすることができる。
【0016】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記第1レーザ光の出射位置を変更する出射位置変更部を備え、前記出射位置変更部は、前記移動方向に対して交差する幅方向に沿って、周期的に往復移動させ、前記第1レーザ光の出射位置を変更することを特徴とする。
【0017】
第3の発明では、言い換えると、第1レーザ光の出射位置を、移動方向に対して交差する幅方向に沿って、周期的に細かく往復移動させる。
【0018】
このように、第1レーザ光を幅方向に出射することで、ビーム径が小さい第1レーザ光であっても、ワークの幅広い範囲を表面改質させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ワークの加工品質及び加工速度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態1に係るレーザ加工装置の概略構成を示す側面図である。
図2】レーザ光の波長と反射率との関係を示すグラフ図である。
図3】ワークのレーザ加工前の状態を示す平面図である。
図4】ワークのレーザ加工中の状態を示す平面図である。
図5】本実施形態1の変形例1におけるレーザ加工中の状態を示す平面図である。
図6】本実施形態1の変形例2におけるレーザ加工中の状態を示す平面図である。
図7】本実施形態2に係るワークのレーザ加工前の状態を示す平面図である。
図8】ワークのレーザ加工中の状態を示す平面図である。
図9】本実施形態2の変形例1におけるレーザ加工中の状態を示す平面図である。
図10】本実施形態2の変形例2におけるレーザ加工中の状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
《実施形態1》
図1に示すように、レーザ加工装置1は、第1レーザ発振器11と、第2レーザ発振器12と、第1伝送ファイバ15と、第2伝送ファイバ16と、レーザ加工ヘッド20と、ロボット2(移動機構)と、制御部5とを備える。
【0023】
第1レーザ発振器11は、制御部5からの指令に基づいて、第1レーザ光L1を出力する。第1レーザ光L1は、短波長のレーザ光である。第1レーザ光L1は、波長が600nm以下(例えば、266nm~600nm)の短波長としてのレーザ光である。
【0024】
第1レーザ発振器11とレーザ加工ヘッド20とは、第1伝送ファイバ15で接続される。第1レーザ光L1は、第1伝送ファイバ15を介して、第1レーザ発振器11からレーザ加工ヘッド20に伝送される。
【0025】
第2レーザ発振器12は、制御部5からの指令に基づいて、第2レーザ光L2を出力する。第2レーザ光L2は、第1レーザ光L1よりも波長の長い、長波長のレーザ光である。第2レーザ光L2は、波長が800nm以上(例えば、800nm~10800nm程度)の長波長としてのレーザ光である。
【0026】
第2レーザ発振器12とレーザ加工ヘッド20とは、第2伝送ファイバ16で接続される。第2レーザ光L2は、第2伝送ファイバ16を介して、第2レーザ発振器12からレーザ加工ヘッド20に伝送される。
【0027】
レーザ加工ヘッド20は、第1伝送ファイバ15及び第2伝送ファイバ16から入射される第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2をワークWに出射する。
【0028】
レーザ加工ヘッド20は、第1コリメートレンズ21と、第2コリメートレンズ22と、第1ミラー23と、第2ミラー24と、2軸MEMSミラー25(出射位置変更部)と、ダイクロイックミラー26と、fθレンズ27とを有する。
【0029】
第1コリメートレンズ21は、第1伝送ファイバ15の出射端から出射された第1レーザ光L1を平行化する。第1ミラー23は、第1コリメートレンズ21で平行化された第1レーザ光L1を反射して、ワークWに対する第1レーザ光L1の出射位置を変更可能に、ミラー角度を可変とする2軸MEMSミラー25に導光する。
【0030】
なお、ここで、第1コリメートレンズ21及び第2コリメートレンズ22を光軸方向に移動することで、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2のビーム径をそれぞれ拡大または縮小するように変更することができる。
【0031】
第2コリメートレンズ22は、第2伝送ファイバ16の出射端から出射された第2レーザ光L2を平行化する。第2ミラー24は、第2コリメートレンズ22で平行化された第2レーザ光L2を反射して、ダイクロイックミラー26に導光する。
【0032】
2軸MEMSミラー25は、第1ミラー23で反射された第1レーザ光L1をさらに反射して、ダイクロイックミラー26に導光する。2軸MEMSミラー25は、ミラーの角度を2軸方向に変更することで、ダイクロイックミラー26に対する第1レーザ光L1の入射位置を変更する。なお、2軸MEMSミラー25の代わりに、2軸のガルバノメータを用いた構成としてもよい。
【0033】
ダイクロイックミラー26は、第2レーザ光L2を透過するとともに、第1レーザ光L1を反射する。ダイクロイックミラー26は、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2をfθレンズ27に導光する。
【0034】
ダイクロイックミラー26は、第2レーザ光L2を透過するとともに、第1レーザ光L1を反射する。ダイクロイックミラー26は、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2をfθレンズ27に導光する。
【0035】
fθレンズ27は、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の入射位置において、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2をそれぞれ、ワークWの面(像面)に対して垂直入射するビームとなるように集光する。fθレンズ27で集光された第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2は、互いに平行光(言い換えると主光線が光軸に対して平行な平行光)としてワークWに向かって出射される。
【0036】
ここで、ワークWに対する第1レーザ光L1の出射位置は、2軸MEMSミラー25の角度を変更して、fθレンズ27に対する第1レーザ光L1の入射位置を移動させることで、変更可能となっている。
【0037】
ロボット2は、ロボットアーム3を有する。ロボットアーム3の先端部には、レーザ加工ヘッド20が取り付けられる。ロボットアーム3は、複数の関節部4を有する。
【0038】
ロボット2は、制御部5からの指令に基づいて、レーザ加工ヘッド20を所定の加工方向(移動方向)に沿って移動させ、ワークWに対するレーザ加工ヘッド20の位置を変更する。これにより、ワークWに対する第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の位置を移動させ、レーザ加工を行う。
【0039】
制御部5は、第1レーザ発振器11、第2レーザ発振器12、レーザ加工ヘッド20、及びロボット2に接続される。制御部5は、第1レーザ発振器11、第2レーザ発振器12、レーザ加工ヘッド20、及びロボット2の動作を制御する。
【0040】
制御部5は、レーザ加工ヘッド20の移動速度の他に、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の出力開始や停止、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の出力強度などを制御する機能も備える。
【0041】
ワークWは、例えば板状に形成される。ワークWは、レーザ吸収率の低い高反射率材料で構成される。具体的に、図2に示すように、レーザ光の反射率は、ワークWの材質によって異なる。例えば、波長が800nm以上の長波長としての赤外レーザ光を基準とした場合、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)は、鉄(Fe)に比べてレーザ光の波長の反射率(%)が高く、言い換えるとレーザ吸収率の低い高反射率材料であることが分かる。一方、鉄(Fe)は、相対的にレーザ光の波長の反射率(%)が低く、言い換えると、レーザ吸収率の高い低反射率材料であることが分かる。
【0042】
そこで、本実施形態では、ワークWをレーザ吸収率の低い高反射率材料である銅で構成している。なお、ワークWを金又は銀で構成してもよい。
【0043】
〈レーザ加工装置の動作〉
ところで、短波長の第1レーザ光L1は、銅などの高反射率材料のワークWに対するレーザ吸収率が高いが、レーザ光の最大出力が低い。そのため、必要な溶接ビード幅を得るためには、ビーム径を大きくしなければならないが、パワー密度が低下するため、加工速度を遅くする必要がある。
【0044】
一方、長波長の第2レーザ光L2は、高反射率材料のワークWに対するレーザ吸収率は低いが、短波長の第1レーザ光L1よりもレーザ光の最大出力が高い。しかしながら、長波長の第2レーザ光L2は、高反射率材料のワークWに対するレーザ吸収率が低く、溶け込み深さを一定にすることが困難であり、加工品質が低下するおそれがある。
【0045】
そこで、本実施形態では、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の出射位置を工夫することで、ワークWの加工品質及び加工速度を高めることができるようにしている。
【0046】
図3に示すように、第1レーザ光L1の出射位置は、第2レーザ光L2よりも加工方向(図3で左方向)の前方位置に設定される。図4に示すように、レーザ加工装置1は、レーザ加工ヘッド20を加工方向(移動方向)に移動させながら、ワークWに対して第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を出射する。このとき、短波長の第1レーザ光L1でワークWの表面を先行して荒らした後、長波長の第2レーザ光L2でワークWの切断が行われる。
【0047】
具体的に、レーザ加工ヘッド20は、高反射率材料に対するレーザ吸収率の高い第1レーザ光L1を、ワークWの表面に先行して出射することで、ワークWの表面を酸化させる、ワークWの表面を先に一部溶融させる等の表面改質を行う。
【0048】
そして、レーザ加工ヘッド20は、高反射率材料のワークWに対するレーザ吸収率が高い短波長の第1レーザ光L1により、高反射率材料のワークWにおける表面改質が行われた部分に対して、その直後に追従して、パワー密度の高い、長波長の第2レーザ光L2を出射することで、高反射率材料のワークWに対するレーザ吸収率は低い第2レーザ光L2が高反射率材料のワークWに吸収されやすくなる。言い換えると、レーザ加工ヘッド20は、第1レーザ光L1の少なくとも一部を、第2レーザ光L2よりも移動方向の前方に出射するし、第2レーザ光L2が吸収され易くするように、第2レーザ光L2に先行して第1レーザ光L1によりワークWの表面改質を行い、表面改質されたワークWの表面をさらに第2レーザ光L2により出射してレーザ加工する。これにより、ワークの加工品質及び加工速度を高めることができる。
【0049】
-実施形態1の変形例1-
以下、前記実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0050】
図5に示すように、レーザ加工装置1は、レーザ加工ヘッド20を加工方向(図5で左方向)に移動させながら、ワークWに対して第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を出射する。第1レーザ光L1は、第2レーザ光L2よりも加工方向の前方に出射され、第2レーザ光L2は、第1レーザ光L1に対して加工方向に少なくとも追従して出射される。
【0051】
レーザ加工ヘッド20は、ワークWに対して第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を出射しながら、2軸方向に角度変更可能な2軸MEMSミラー25(図1参照)の角度調整を行うことで、第1レーザ光L1の出射位置を変更する。
【0052】
具体的に、レーザ加工ヘッド20は、第1レーザ光L1の出射位置を、第1位置と第2位置との間で変更させる。第1位置では、第1レーザ光L1が第2レーザ光L2よりも加工方向の前方に位置する。第2位置では、第1レーザ光L1が第2レーザ光L2よりも加工方向の後方に位置する。
【0053】
このように、第1位置では、短波長の第1レーザ光L1でワークWの表面を少なくとも先行して表面改質として一部溶融させて荒らした後、長波長の第2レーザ光L2でワークWの加工を行うことで、ワークWの加工品質及び加工速度を高めることができる。
【0054】
また、第2位置では、第2レーザ光L2の後方にも第1レーザ光L1を出射することで、第2レーザ光L2で加工されたワークWの加工表面をきれいにすることができる。例えば、具体的には、第2レーザ光L2で溶接後に凝固した溶接ビードに第1レーザ光L1を出射することで、スラグを除去して、溶接ビード30の外観を滑らかにすることができる。また、レーザ終了位置において、第2レーザ光L2の後方に第1レーザ光L1を出射することで、クレータの発生を抑えることができる。また、第2レーザ光L2でレーザ切断した切断面に第1レーザ光L1を出射することで、切断面をきれいにすることができる。
【0055】
-実施形態1の変形例2-
図6に示すように、レーザ加工装置1は、レーザ加工ヘッド20を加工方向(図6で左方向)に移動させながら、ワークWに対して第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を出射する。第1レーザ光L1は、第2レーザ光L2よりも加工方向の前方に少なくとも出射される。
【0056】
レーザ加工ヘッド20は、ワークWに対して第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を出射しながら、2軸方向に角度変更可能な2軸MEMSミラー25(図1参照)の角度調整を行うことで、第1レーザ光L1の出射位置を変更する。
【0057】
具体的に、レーザ加工ヘッド20は、第1レーザ光L1の出射位置を、加工方向に対して交差(例えば直交)する幅方向(図6で上下方向)に沿って周期的に細かく往復移動させる。
【0058】
このように、第1レーザ光L1を幅方向に出射することで、ビーム径が小さい第1レーザ光L1であっても、ワークWの幅広い範囲を表面改質させることができる。
【0059】
《実施形態2》
以下、前記実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0060】
図7に示すように、板状に形成された2つのワークWは、互いの側縁部が対向するように、突合せ継手として配置される。ワークWは、高反射率材料である銅で構成される。なお、ワークWをアルミニウム又はマグネシウムで構成してもよい。
【0061】
第1レーザ光L1の出射位置は、出射方向において、2つのワークWに跨がる位置に設定される。第2レーザ光L2の出射位置は、少なくとも2つのワークWに跨がる位置に設定される。また、第1レーザ光L1の出射位置は、第2レーザ光L2よりも加工方向(図7で左方向)の前方位置に設定される。
【0062】
図8に示すように、レーザ加工装置1は、レーザ加工ヘッド20を加工方向に移動させながら、2つのワークWの対向位置に沿ってレーザ光を出射する。このとき、短波長の第1レーザ光L1でワークWの表面を先行して荒らした後、長波長の第2レーザ光L2でワークWの溶接が行われる。
【0063】
具体的に、レーザ加工ヘッド20は、高反射率材料に対するレーザ吸収率の高い短波長の第1レーザ光L1を、高反射率材料としてのワークWの表面に少なくとも先行して出射することで、ワークWの表面を酸化させる、ワークWの表面を先に一部溶融させる等の表面改質を行う。
【0064】
そして、レーザ加工ヘッド20は、短波長の第1レーザ光L1によりワークWにおける表面改質が行われた部分に対して、パワー密度の高い長波長の第2レーザ光L2を加工方向に追従して出射することで、高反射率材料のワークWに対するレーザ吸収率の低い長波長の第2レーザ光L2が、レーザ吸収率の低い高反射率材料のワークWに、より吸収され、ワークWが溶融しやすくなる。溶融したワークWが凝固すると、加工方向の後方に溶接ビード30が形成される。言い換えると、高反射率材料のワークWの溶融性が促進される。これにより、2つのワークW同士を溶接することができる。
【0065】
-実施形態2の変形例1-
図9に示すように、レーザ加工ヘッド20は、ワークWに対して第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を出射しながら、2軸MEMSミラー25(図1参照)の角度調整を行うことで、第1レーザ光L1の出射位置を変更する。
【0066】
具体的に、レーザ加工ヘッド20は、第1レーザ光L1の出射位置を、第1位置と第2位置との間で変更させる。第1位置では、第1レーザ光L1が第2レーザ光L2よりも加工方向の前方に位置する。第2位置では、第1レーザ光L1が第2レーザ光L2よりも加工方向の後方に位置する。
【0067】
このように、少なくとも第1位置では、短波長の第1レーザ光L1でワークWの表面を先行して荒らした後、長波長の第2レーザ光L2でワークWの加工を行うことで、ワークWの加工品質及び加工速度を高めることができる。
【0068】
また、第2位置では、第2レーザ光L2の後方にも第1レーザ光L1を出射することで、第2レーザ光L2で加工されたワークWの加工表面をきれいにすることができる。例えば、第2レーザ光L2で溶接後に凝固した溶接ビード30に第1レーザ光L1を出射することで、第2レーザ光L2により発生したスラグを除去することができる。
【0069】
-実施形態2の変形例2-
図10に示すように、第1レーザ光L1は、少なくとも第2レーザ光L2よりも加工方向の前方に出射される。レーザ加工ヘッド20は、ワークWに対して第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を出射しながら、2軸MEMSミラー25(図1参照)の角度調整を行うことで、第1レーザ光L1の出射位置を変更する。
【0070】
具体的に、レーザ加工ヘッド20は、第1レーザ光L1の出射位置を、加工方向に対して交差する幅方向(図10で上下方向)に沿って周期的に細かく往復移動させる。
【0071】
このように、第1レーザ光L1を幅方向に出射することで、ビーム径が小さい第1レーザ光L1であっても、ワークWの幅広い範囲を第2レーザ光が吸収され易くするように、第2レーザ光に先行して第1レーザ光L1により表面改質させることができる。
【0072】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0073】
本実施形態では、第1レーザ光L1全体を、第2レーザ光L2よりも加工方向の前方に出射させるようにしたが、例えば、第1レーザ光L1の一部を、第2レーザ光L2よりも加工方向の前方に出射させるようにしてもよい。
【0074】
本実施形態では、ロボット2でレーザ加工ヘッド20を移動させ、ワークWに対するレーザ加工ヘッド20の位置を変更するようにしたが、この形態に限定するものではない。例えば、ワークWを移動テーブル(図示省略)に搭載して、ワークWに対してレーザ加工ヘッド20を相対的に移動させる構成であってもよい。
【0075】
本実施形態では、1つのレーザ加工ヘッド20から第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を出射するようにした形態について説明したが、この形態に限定するものではない。例えば、第1レーザ光L1を出射するレーザ加工ヘッドと、第2レーザ光L2を出射するレーザ加工ヘッドとを別々に設けた構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明は、ワークの加工品質及び加工速度を高めることができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0077】
1 レーザ加工装置
2 ロボット(移動機構)
20 レーザ加工ヘッド
25 2軸MEMSミラー(出射位置変更部)
L1 第1レーザ光
L2 第2レーザ光
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10