(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112734
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】レーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20230807BHJP
B23K 26/361 20140101ALI20230807BHJP
【FI】
B23K26/21 A
B23K26/21 W
B23K26/361
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014619
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 龍幸
(72)【発明者】
【氏名】藤原 潤司
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 通雄
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD03
4E168BA54
4E168BA87
4E168CA06
4E168CB04
4E168CB08
4E168CB22
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA13
4E168EA02
4E168EA08
4E168EA15
4E168EA17
4E168EA20
(57)【要約】
【課題】ワークの加工品質及び加工速度を高める。
【解決手段】ワークWは、第1加工対象部w1と、第2加工対象部w2とを有する。第2加工対象部w2は、第1加工対象部w1から離れた位置にある。第1工程では、第1加工対象部w1に対して第1レーザ光L1が出射される。第2工程では、第1レーザ光L1が出射された第1加工対象部w1に対して、第2レーザ光L2が出射される。第3工程では、第2加工対象部w2に対して第1レーザ光L1が出射される。第4工程では、第1レーザ光L1が出射された第2加工対象部w2に対して、第2レーザ光L2が出射される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射してワークを加工するレーザ加工方法であって、
前記ワークは、第1加工対象部と、該第1加工対象部から離れた位置の第2加工対象部とを少なくとも有し、
前記レーザ光は、第1レーザ光と、該第1レーザ光よりも波長の長い第2レーザ光とを含み、
前記第1加工対象部に対して前記第1レーザ光を出射する第1工程と、
前記第1レーザ光が出射された前記第1加工対象部に対して、前記第2レーザ光を出射する第2工程と、
前記第2加工対象部に対して前記第1レーザ光を出射する第3工程と、
前記第1レーザ光が出射された前記第2加工対象部に対して、前記第2レーザ光を出射する第4工程とを備えた
ことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2工程を行っている間に、前記第3工程を行う
ことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記第1加工対象部及び前記第2加工対象部は、互いに隣り合うように配置され、
前記第2工程では、前記第1加工対象部における前記第2加工対象部寄りの位置に前記第2レーザ光を出射し、
前記第4工程では、前記第2加工対象部における前記第1加工対象部寄りの位置に前記第2レーザ光を出射する
ことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1工程では、所定の移動軌跡に沿って前記第1レーザ光の出射位置を移動させ、
前記第2工程では、前記第1レーザ光の移動軌跡に沿って前記第2レーザ光の出射位置を移動させる
ことを特徴とするレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、長波長と短波長の2つのレーザを同軸の光路に導いて重畳させる光学系と、同軸の光路に重畳した2つのレーザの出力ビームをワーク(被加工物)上に集光する集光レンズとを備えたレーザ加工光学装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、短波長のレーザ光は、レーザ光の反射率が鉄などに比べて相対的に高い、銅やアルミのような高反射率材料のワークに対するレーザ吸収率が高いが、レーザ光の最大出力が低く、加工速度が遅くなる。
【0005】
一方、長波長のレーザ光は、短波長のレーザ光よりもレーザ光の最大出力が高いが、高反射率材料のワークに対するレーザ吸収率が低い。そのため、長波長のレーザ光では、ワークの溶け込み量を一定にすることが困難であり、加工品質が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワークの加工品質及び加工速度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、レーザ光を出射してワークを加工するレーザ加工方法であって、前記ワークは、第1加工対象部と、該第1加工対象部から離れた位置の第2加工対象部とを少なくとも有し、前記レーザ光は、第1レーザ光と、該第1レーザ光よりも波長の長い第2レーザ光とを含み、前記第1加工対象部に対して前記第1レーザ光を出射する第1工程と、前記第1レーザ光が出射された前記第1加工対象部に対して、前記第2レーザ光を出射する第2工程と、前記第2加工対象部に対して前記第1レーザ光を出射する第3工程と、前記第1レーザ光が出射された前記第2加工対象部に対して、前記第2レーザ光を出射する第4工程とを備えたことを特徴とする。
【0008】
第1の発明では、ワークは、第1加工対象部と、第2加工対象部とを有する。第2加工対象部は、第1加工対象部から離れた位置にある。第1工程では、第1加工対象部に対して第1レーザ光が出射される。第2工程では、第1レーザ光が出射された第1加工対象部に対して、第2レーザ光が出射される。第3工程では、第2加工対象部に対して第1レーザ光が出射される。第4工程では、第1レーザ光が出射された第2加工対象部に対して、第2レーザ光が出射される。
【0009】
このように、ワークの加工対象部を第1レーザ光で予熱した後に、第2レーザ光を出射することで、ワークの加工品質及び加工速度を高めることができる。
【0010】
具体的に、短波長の第1レーザ光(例えば、600nm以下の青色レーザ光)は、銅などの高反射率材料のワークに対するレーザ吸収率が高いが、レーザ光の最大出力が低い。一方、長波長の第2レーザ光(例えば、800nm以上の赤外レーザ光)は、高反射率材料のワークに対するレーザ吸収率は低いが、レーザ光の最大出力が高い。
【0011】
そこで、第1レーザ光をワークの表面に先行して出射することで、ワークの表面を酸化させる等の表面改質やワークの予熱を行う。そして、ワークの表面改質及び予熱が行われた部分に対して第2レーザ光を出射することで、第2レーザ光がワークに吸収されやすくなる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記第2工程を行っている間に、前記第3工程を行うことを特徴とする。
【0013】
第2の発明では、第1加工対象部を第2レーザ光で加工している間に、次に加工すべき第2加工対象部を第1レーザ光で予熱しておくことで、ワークの加工時間を短くすることができる。
【0014】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記第1加工対象部及び前記第2加工対象部は、互いに隣り合うように配置され、前記第2工程では、前記第1加工対象部における前記第2加工対象部寄りの位置に前記第2レーザ光を出射し、前記第4工程では、前記第2加工対象部における前記第1加工対象部寄りの位置に前記第2レーザ光を出射することを特徴とする。
【0015】
第3の発明では、第1加工対象部及び第2加工対象部に対して、それぞれ相手側に近い位置にレーザ光を出射することで、溶融された加工対象部が相手側に向かって流れ、互いに接合され易くなる。
【0016】
第4の発明は、第1の発明において、前記第1工程では、所定の移動軌跡に沿って前記第1レーザ光の出射位置を移動させ、前記第2工程では、前記第1レーザ光の移動軌跡に沿って前記第2レーザ光の出射位置を移動させることを特徴とする。
【0017】
第4の発明では、第1レーザ光で予熱した部分の温度が低下する前に第2レーザ光を出射することで、ワークの加工品質を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ワークの加工品質及び加工速度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態1に係るレーザ加工装置の概略構成を示す側面図である。
【
図2】レーザ光の波長と反射率との関係を示すグラフ図である。
【
図3A】第1レーザ光を第1加工対象部に出射した状態を示す平面図である。
【
図3B】第1レーザ光を第2加工対象部に出射する一方、第2レーザ光を第1加工対象部に出射した状態を示す平面図である。
【
図3C】第1レーザ光を第3加工対象部に出射する一方、第2レーザ光を第2加工対象部に出射した状態を示す平面図である。
【
図3D】第1レーザ光を第4加工対象部に出射する一方、第2レーザ光を第3加工対象部に出射した状態を示す平面図である。
【
図3E】第1レーザ光を第5加工対象部に出射する一方、第2レーザ光を第4加工対象部に出射した状態を示す平面図である。
【
図3F】第1レーザ光を第6加工対象部に出射する一方、第2レーザ光を第5加工対象部に出射した状態を示す平面図である。
【
図3G】第2レーザ光を第6加工対象部に出射した状態を示す平面図である。
【
図3H】レーザ加工後のワークの状態を示す平面図である。
【
図4A】本実施形態1の変形例に係るレーザ加工装置において、第1レーザ光を第1加工対象部に出射した状態を示す平面図である。
【
図4B】第1レーザ光を第2加工対象部に出射する一方、第2レーザ光を第1加工対象部に出射した状態を示す平面図である。
【
図4C】第1レーザ光を第3加工対象部に出射する一方、第2レーザ光を第2加工対象部に出射した状態を示す平面図である。
【
図4D】第1レーザ光を第4加工対象部に出射する一方、第2レーザ光を第3加工対象部に出射した状態を示す平面図である。
【
図5A】本実施形態2に係るレーザ加工装置において、第1レーザ光を第1加工対象部に出射した状態を示す斜視図である。
【
図5B】第1レーザ光を第2加工対象部に出射する一方、第2レーザ光を第1加工対象部に出射した状態を示す斜視図である。
【
図5C】第1レーザ光を第3加工対象部に出射する一方、第2レーザ光を第2加工対象部に出射した状態を示す斜視図である。
【
図5D】第2レーザ光を第3加工対象部に出射した状態を示す斜視図である。
【
図5E】レーザ加工後のワークの状態を示す斜視図である。
【
図6A】本実施形態3に係るレーザ加工装置において、第1レーザ光及び第2レーザ光の出射位置を第1加工対象部の領域内で移動させた状態を示す斜視図である。
【
図6B】第1レーザ光及び第2レーザ光の出射位置を第2加工対象部の領域内で移動させた状態を示す斜視図である。
【
図6C】第1レーザ光及び第2レーザ光の出射位置を第3加工対象部の領域内で移動させた状態を示す斜視図である。
【
図6D】レーザ加工後のワークの状態を示す斜視図である。
【
図7】本実施形態3の変形例1において、レーザ光の出射位置の移動軌跡を示す斜視図である。
【
図8】本実施形態3の変形例2において、レーザ光の出射位置の移動軌跡を示す斜視図である。
【
図9】本実施形態3の変形例3において、レーザ光の出射位置の移動軌跡を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
《実施形態1》
図1に示すように、レーザ加工装置1は、第1レーザ発振器11と、第2レーザ発振器12と、第1伝送ファイバ15と、第2伝送ファイバ16と、レーザ加工ヘッド20と、ロボット2と、制御部5とを備える。
【0022】
第1レーザ発振器11は、制御部5からの指令に基づいて、第1レーザ光L1を出力する。第1レーザ光L1は、短波長のレーザ光である。短波長の第1レーザ光L1は、波長が600nm以下(例えば、266nm~600nm)の青色レーザ光又は緑色レーザ光である。
【0023】
第1レーザ発振器11とレーザ加工ヘッド20とは、第1伝送ファイバ15で接続される。第1レーザ光L1は、第1伝送ファイバ15を介して、第1レーザ発振器11からレーザ加工ヘッド20に伝送される。
【0024】
第2レーザ発振器12は、制御部5からの指令に基づいて、第2レーザ光L2を出力する。第2レーザ光L2は、第1レーザ光L1よりも波長の長い長波長のレーザ光である。長波長の第2レーザ光L2は、波長が800nm以上(例えば、800nm~16000nm程度)の赤外レーザ光である。
【0025】
第2レーザ発振器12とレーザ加工ヘッド20とは、第2伝送ファイバ16で接続される。第2レーザ光L2は、第2伝送ファイバ16を介して、第2レーザ発振器12からレーザ加工ヘッド20に伝送される。
【0026】
レーザ加工ヘッド20は、第1伝送ファイバ15及び第2伝送ファイバ16から入射される第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を、ワークWに出射する。
【0027】
レーザ加工ヘッド20は、第1コリメートレンズ21と、第2コリメートレンズ22と、第1ミラー23と、第1調整機構24と、第2調整機構25と、ダイクロイックミラー26と、fθレンズ27とを有する。
【0028】
第1コリメートレンズ21は、第1伝送ファイバ15の出射端から出射された第1レーザ光L1を平行化する。第2コリメートレンズ22は、第2伝送ファイバ16の出射端から出射された第2レーザ光L2を平行化する。第1ミラー23は、第1コリメートレンズ21で平行化された第1レーザ光L1を反射して、ワークWに対する第1レーザ光L1の出射位置を変更可能に、ミラー角度を可変とする第1調整機構24に導光する。
【0029】
なお、ここで、第1コリメートレンズ21及び第2コリメートレンズ22を光軸方向に移動することで、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2のビーム径を拡大または縮小するように変更することができる。
【0030】
第1調整機構24は、2軸MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーで構成される。第1調整機構24は、第1ミラー23で反射された第1レーザ光L1をさらに反射して、ダイクロイックミラー26に導光する。第1調整機構24は、ミラーの角度を2軸方向に変更することで、ダイクロイックミラー26に対する第1レーザ光L1の入射位置を変更する。なお、第1調整機構24は、2軸のガルバノメータ(ガルバノミラー)を用いた構成としてもよい。
【0031】
第2調整機構25は、2軸MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーで構成される。第2調整機構25は、第2コリメートレンズ22で平行化された第2レーザ光L2を反射して、ダイクロイックミラー26に導光する。第2調整機構25は、ミラーの角度を2軸方向に変更することで、ダイクロイックミラー26に対する第2レーザ光L2の入射位置を変更する。なお、第2調整機構25は、2軸のガルバノメータ(ガルバノミラー)を用いた構成としてもよい。
【0032】
ダイクロイックミラー26は、第2レーザ光L2を透光させるとともに、第1レーザ光L1を反射する。ダイクロイックミラー26は、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を重ね合わせて、fθレンズ27に導光する。
【0033】
fθレンズ27は、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の入射位置において、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2をそれぞれ、ワークWの面(像面)に対して垂直入射するビームとなるように集光する。fθレンズ27で集光された第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2は、互いに平行光(言い換えると主光線が光軸に対して平行な平行光)としてワークWに出射される。
【0034】
ここで、fθレンズ27に対する第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の入射位置は、第1調整機構24及び第2調整機構25の角度をそれぞれ変更することで移動する。これにより、第1調整機構24及び第2調整機構25によって、ワークWに対する第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の出射位置が変更可能となる。
【0035】
ロボット2は、ロボットアーム3を有する。ロボットアーム3の先端部には、レーザ加工ヘッド20が取り付けられる。ロボットアーム3は、複数の関節部4を有する。
【0036】
ロボット2は、制御部5からの指令に基づいて、レーザ加工ヘッド20を所定の加工方向に沿って移動させ、ワークWに対するレーザ加工ヘッド20の位置を変更する。これにより、ワークWに対する第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の位置を移動させ、レーザ加工を行う。
【0037】
制御部5は、第1レーザ発振器11、第2レーザ発振器12、レーザ加工ヘッド20、及びロボット2に接続される。制御部5は、第1レーザ発振器11、第2レーザ発振器12、レーザ加工ヘッド20、及びロボット2の動作を制御する。
【0038】
制御部5は、レーザ加工ヘッド20の移動速度の他に、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の出力開始や停止、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の出力強度などを制御する機能も備える。なお、制御部5は、ここで1つの構成になっているが、複数で構成しても良い。
【0039】
ワークWは、上下方向に延びる複数のピン部材を有する。
図1に示す例では、ピン部材は、6つ設けられる。6つのピン部材の上端部には、第1加工対象部w1、第2加工対象部w2、第3加工対象部w3、第4加工対象部w4、第5加工対象部w5、第6加工対象部w6がそれぞれ設けられる。なお、加工対象部の数はあくまでも例示であり、これに限定するものではない。
【0040】
第1加工対象部w1、第3加工対象部w3、第5加工対象部w5は、溶接方向に沿って互いに間隔をあけて配置される。第2加工対象部w2、第4加工対象部w4、第6加工対象部w6は、溶接方向に沿って互いに間隔をあけて配置される。
【0041】
第1加工対象部w1と第2加工対象部w2とは、溶接方向に交差する交差方向に互いに間隔をあけて配置される。第3加工対象部w3と第4加工対象部w4とは、交差方向に互いに間隔をあけて配置される。第5加工対象部w5と第6加工対象部w6とは、交差方向に互いに間隔をあけて配置される。
【0042】
レーザ加工装置1は、第1加工対象部w1と第2加工対象部w2とを溶接する。レーザ加工装置1は、第3加工対象部w3と第4加工対象部w4とを溶接する。レーザ加工装置1は、第5加工対象部w5と第6加工対象部w6とを溶接する。
【0043】
ワークWは、レーザ吸収率の低い高反射率材料で構成される。具体的に、
図2に示すように、レーザ光の反射率は、ワークWの材質によって異なる。例えば、波長が800nm以上の長波長としての赤外レーザ光を基準とした場合、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)は、鉄(Fe)に比べてレーザ光の波長の反射率(%)が高く、言い換えるとレーザ吸収率の低い高反射率材料であることが分かる。一方、鉄(Fe)は、相対的にレーザ光の波長の反射率(%)が低く、言い換えるとレーザ吸収率の高い低反射率材料であることが分かる。
【0044】
そこで、本実施形態では、ワークWをレーザ吸収率の低い高反射率材料である銅で構成している。なお、ワークWを金又は銀で構成してもよい。
【0045】
〈レーザ加工装置の動作〉
ところで、短波長の第1レーザ光L1は、銅などの高反射率材料のワークWに対するレーザ吸収率が高いが、レーザ光の最大出力が低く、加工速度が遅くなる。
【0046】
一方、長波長の第2レーザ光L2は、短波長の第1レーザ光L1よりもレーザ光の最大出力が高いが、高反射率材料のワークWに対するレーザ吸収率が低い。そのため、長波長の第2レーザ光L2では、ワークWの溶け込み量を一定にすることが困難であり、加工品質が低下するおそれがある。
【0047】
そこで、本実施形態では、第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の出射方法を工夫することで、ワークWの加工品質及び加工速度を高めることができるようにしている。
【0048】
図3Aに示すように、レーザ加工装置1は、ワークWの第1加工対象部w1に対して短波長の第1レーザ光L1を出射する第1工程を行う。第1レーザ光L1は、平面視で第1加工対象部w1の中心部に出射される。第1工程では、短波長の第1レーザ光L1によって、第1加工対象部w1に付着していた被膜や接着剤が除去されるとともに、第1加工対象部w1が予熱される。
【0049】
具体的に、レーザ加工ヘッド20は、高反射率材料に対するレーザ吸収率の高い第1レーザ光L1を、ワークWの表面に先行して出射することで、ワークWの表面を酸化させたり、ワークWの表面を先に一部溶融させる等の表面改質を行う。
【0050】
図3Bに示すように、レーザ加工装置1は、第1レーザ光L1が出射された第1加工対象部w1に対して、パワー密度の高い長波長の第2レーザ光L2を出射する第2工程を行う。長波長の第2レーザ光L2は、平面視で第1加工対象部w1の中心部に出射される。第2工程では、長波長の第2レーザ光L2によって、第1加工対象部w1の一部が溶融することで溶融部31が形成される。
【0051】
レーザ加工装置1は、第2加工対象部w2に対して短波長の第1レーザ光L1を出射する第3工程を行う。第3工程では、短波長の第1レーザ光L1によって、第2加工対象部w2に付着していた被膜や接着剤が除去されるとともに、第2加工対象部w2が予熱される。
【0052】
ここで、第3工程は、第2工程を行っている間に実行するのが好ましい。このように、第1加工対象部w1を長波長の第2レーザ光L2で加工している間に、次に加工すべき第2加工対象部w2を短波長の第1レーザ光L1で予熱しておくことで、ワークWの加工時間を短くすることができる。
【0053】
図3Cに示すように、レーザ加工装置1は、短波長の第1レーザ光L1が出射された第2加工対象部w2に対して長波長の第2レーザ光L2を出射する第4工程を行う。第4工程では、長波長の第2レーザ光L2によって、第2加工対象部w2の一部が溶融することで溶融部31が形成される。第1加工対象部w1の溶融部31と、第2加工対象部w2の溶融部31とが、相手側に向かって流動して、溶融部31同士が一体化する。
【0054】
このように、ワークの加工対象部を短波長の第1レーザ光L1で予熱した後に、長波長の第2レーザ光L2を出射することで、ワークWの加工品質及び加工速度を高めることができる。
【0055】
レーザ加工装置1は、第3加工対象部w3に対して短波長の第1レーザ光L1を出射する第5工程を行う。第5工程では、短波長の第1レーザ光L1によって、第3加工対象部w3に付着していた被膜や接着剤が除去されるとともに、第3加工対象部w3が予熱される。第5工程は、第4工程を行っている間に実行される。
【0056】
図3Dに示すように、溶融部31が凝固することで接合部32が形成される。第1加工対象部w1と第2加工対象部w2とは、接合部32によって接合される。
【0057】
以下、残りの加工対象部に対しても同様に、短波長の第1レーザ光L1で予熱した後、長波長の第2レーザ光L2で溶融させる工程を繰り返し行う。
【0058】
具体的に、レーザ加工装置1は、短波長の第1レーザ光L1が出射された第3加工対象部w3に対して長波長の第2レーザ光L2を出射する。レーザ加工装置1は、第4加工対象部w4に対して短波長の第1レーザ光L1を出射する。
【0059】
図3Eに示すように、レーザ加工装置1は、短波長の第1レーザ光L1が出射された第4加工対象部w4に対して長波長の第2レーザ光L2を出射する。レーザ加工装置1は、第5加工対象部w5に対して短波長の第1レーザ光L1を出射する。
【0060】
第3加工対象部w3の溶融部31と、第4加工対象部w4の溶融部31とが、相手側に向かって流動して、溶融部31同士が一体化する。
【0061】
図3Fに示すように、溶融部31が凝固することで接合部32が形成される。第3加工対象部w3と第4加工対象部w4とは、接合部32によって接合される。レーザ加工装置1は、短波長の第1レーザ光L1が出射された第5加工対象部w5に対して長波長の第2レーザ光L2を出射する。レーザ加工装置1は、第6加工対象部w6に対して短波長の第1レーザ光L1を出射する。
【0062】
図3Gに示すように、レーザ加工装置1は、短波長の第1レーザ光L1が出射された第5加工対象部w5に対して長波長の第2レーザ光L2を出射する。第5加工対象部w5の溶融部31と、第6加工対象部w6の溶融部31とが、相手側に向かって流動して、溶融部31同士が一体化する。
【0063】
図3Hに示すように、溶融部31が凝固することで接合部32が形成される。第5加工対象部w5と第6加工対象部w6とは、接合部32によって接合される。
【0064】
-実施形態1の変形例-
図4Aに示すように、レーザ加工装置1は、ワークWの第1加工対象部w1に対して短波長の第1レーザ光L1を出射する第1工程を行う。第1レーザ光L1は、平面視で第1加工対象部w1の溶接方向と交差する交差方向(
図4Aで上下方向)の中心線よりも第2加工対象部w2寄り(下側寄り)の位置に出射される。
【0065】
第1工程では、短波長の第1レーザ光L1によって、第1加工対象部w1に付着していた被膜や接着剤が除去されるとともに、第1加工対象部w1における第2加工対象部w2に近い部分が予熱される。
【0066】
図4Bに示すように、レーザ加工装置1は、短波長の第1レーザ光L1が出射された第1加工対象部w1に対して長波長の第2レーザ光L2を出射する第2工程を行う。長波長の第2レーザ光L2は、平面視で第1加工対象部w1の交差方向(
図4Bで上下方向)の中心線よりも第2加工対象部w2寄り(下側寄り)の位置に出射される。第2工程では、長波長の第2レーザ光L2によって、第1加工対象部w1の一部が溶融することで溶融部31が形成される。
【0067】
レーザ加工装置1は、第2加工対象部w2に対して短波長の第1レーザ光L1を出射する第3工程を行う。短波長の第1レーザ光L1は、平面視で第2加工対象部w2の交差方向(
図4Bで上下方向)の中心線よりも第1加工対象部w1寄り(上側寄り)の位置に出射される。
【0068】
第3工程では、短波長の第1レーザ光L1によって、第2加工対象部w2に付着していた被膜や接着剤が除去されるとともに、第2加工対象部w2における第1加工対象部w1に近い部分が予熱される。
【0069】
図4Cに示すように、レーザ加工装置1は、短波長の第1レーザ光L1が出射された第2加工対象部w2に対して長波長の第2レーザ光L2を出射する第4工程を行う。長波長の第2レーザ光L2は、平面視で第2加工対象部w2の交差方向(
図4Cで上下方向)の中心線よりも第1加工対象部w1寄り(上側寄り)の位置に出射される。
【0070】
第4工程では、長波長の第2レーザ光L2によって、第2加工対象部w2の一部が溶融することで溶融部31が形成される。
【0071】
ここで、第1加工対象部w1及び第2加工対象部w2では、それぞれ相手側に近い位置に第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2が出射されている。そのため、第1加工対象部w1の溶融部31と、第2加工対象部w2の溶融部31とが、相手側に向かって流動し易くなり、溶融部31同士が一体化する。
【0072】
第4工程を行っている間、レーザ加工装置1は、第3加工対象部w3に対して短波長の第1レーザ光L1を出射する。短波長の第1レーザ光L1は、平面視で第3加工対象部w3の交差方向(
図4Cで上下方向)の中心線よりも第4加工対象部w4寄り(下側寄り)の位置に出射される。
【0073】
図4Dに示すように、溶融部31が凝固することで接合部32が形成される。第1加工対象部w1と第2加工対象部w2とは、接合部32によって接合される。
【0074】
以下、残りの加工対象部に対しても同様に、短波長の第1レーザ光L1で予熱した後、長波長の第2レーザ光L2で溶融させる工程を繰り返し行う。
【0075】
《実施形態2》
以下、前記実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0076】
図5Aに示すように、ワークWは、互いに重ね合わされた2枚の板状の部材を有する。ワークWには、第1加工対象部w1、第2加工対象部w2、及び第3加工対象部w3が設けられる。第1加工対象部w1、第2加工対象部w2、及び第3加工対象部w3は、溶接方向に間隔をあけて設けられる。なお、加工対象部の数はあくまでも例示であり、これに限定するものではない。
【0077】
図5Aに示すように、レーザ加工装置1は、ワークWの第1加工対象部w1に対して短波長の第1レーザ光L1を出射する第1工程を行う。第1工程では、短波長の第1レーザ光L1によって、第1加工対象部w1が予熱される。
【0078】
図5Bに示すように、レーザ加工装置1は、短波長の第1レーザ光L1が出射された第1加工対象部w1に対して長波長の第2レーザ光L2を出射する第2工程を行う。第2工程では、長波長の第2レーザ光L2によって、第1加工対象部w1の一部が溶融することで溶融部31が形成される。
【0079】
レーザ加工装置1は、第2加工対象部w2に対して短波長の第1レーザ光L1を出射する第3工程を行う。第3工程では、短波長の第1レーザ光L1によって、第2加工対象部w2が予熱される。第3工程は、第2工程を行っている間に実行される。
【0080】
図5Cに示すように、第1加工対象部w1には、溶融部31が凝固することで接合部32が形成される。ワークWの2枚の板状の部材は、接合部32で接合される。
【0081】
レーザ加工装置1は、短波長の第1レーザ光L1が出射された第2加工対象部w2に対して長波長の第2レーザ光L2を出射する第4工程を行う。第4工程では、長波長の第2レーザ光L2によって、第2加工対象部w2の一部が溶融することで溶融部31が形成される。
【0082】
レーザ加工装置1は、第3加工対象部w3に対して短波長の第1レーザ光L1を出射する第5工程を行う。第5工程では、短波長の第1レーザ光L1によって、第3加工対象部w3が予熱される。第5工程は、第4工程を行っている間に実行される。
【0083】
図5Dに示すように、第2加工対象部w2には、溶融部31が凝固することで接合部32が形成される。ワークWの2枚の板状の部材は、接合部32で接合される。
【0084】
レーザ加工装置1は、短波長の第1レーザ光L1が出射された第3加工対象部w3に対して長波長の第2レーザ光L2を出射する第6工程を行う。第6工程では、長波長の第2レーザ光L2によって、第3加工対象部w3の一部が溶融することで溶融部31が形成される。
【0085】
図5Eに示すように、第3加工対象部w3には、溶融部31が凝固することで接合部32が形成される。ワークWの2枚の板状の部材は、接合部32で接合される。
【0086】
《実施形態3》
以下、前記実施形態2と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0087】
図6Aに示すように、レーザ加工装置1は、第1加工対象部w1に対して短波長の第1レーザ光L1を出射する第1工程を行う。第1工程では、第1加工対象部w1の領域内で、短波長の第1レーザ光L1の出射位置を溶接方向に沿って移動させる。第1工程では、短波長の第1レーザ光L1によって、第1加工対象部w1が予熱される。
【0088】
レーザ加工装置1は、短波長の第1レーザ光L1が出射された第1加工対象部w1に対して長波長の第2レーザ光L2を出射する第2工程を行う。第2工程では、短波長の第1レーザ光L1の移動軌跡に沿って、長波長の第2レーザ光L2の出射位置を移動させる。具体的には、第1加工対象部w1の領域内で、長波長の第2レーザ光L2の出射位置を溶接方向に沿って移動させる。第2工程では、長波長の第2レーザ光L2によって、第1加工対象部w1の一部が溶融することで、溶接方向に延びる溶融部31が形成される。
【0089】
第1工程及び第2工程は、第1加工対象部w1の領域内において同時に行われる。短波長の第1レーザ光L1は、長波長の第2レーザ光L2よりも溶接方向の前方に先行して出射される。
【0090】
図6Bに示すように、第1加工対象部w1には、溶融部31が凝固することで接合部32が形成される。ワークWの2枚の板状の部材は、接合部32で接合される。
【0091】
レーザ加工装置1は、第2加工対象部w2に対して短波長の第1レーザ光L1を出射する第3工程を行う。第3工程では、第2加工対象部w2の領域内で、短波長の第1レーザ光L1の出射位置を溶接方向に沿って移動させる。第3工程では、短波長の第1レーザ光L1によって、第2加工対象部w2が予熱される。
【0092】
レーザ加工装置1は短波長の第1レーザ光L1が出射された第2加工対象部w2に対して長波長の第2レーザ光L2を出射する第4工程を行う。第4工程では、短波長の第1レーザ光L1の移動軌跡に沿って、長波長の第2レーザ光L2の出射位置を移動させる。第4工程では、長波長の第2レーザ光L2によって、第2加工対象部w2の一部が溶融することで、溶接方向に沿って延びる溶融部31が形成される。
【0093】
第3工程及び第4工程は、第2加工対象部w2の領域内において同時に行われる。短波長の第1レーザ光L1は、長波長の第2レーザ光L2よりも溶接方向の前方に先行して出射される。
【0094】
図6Cに示すように、第2加工対象部w2には、溶融部31が凝固することで接合部32が形成される。ワークWの2枚の板状の部材は、接合部32で接合される。
【0095】
レーザ加工装置1は、第3加工対象部w3に対して短波長の第1レーザ光L1を出射する第5工程を行う。第5工程では、第3加工対象部w3の領域内で、短波長の第1レーザ光L1の出射位置を溶接方向に沿って移動させる。第5工程では、短波長の第1レーザ光L1によって、第3加工対象部w3が予熱される。
【0096】
レーザ加工装置1は、短波長の第1レーザ光L1が出射された第3加工対象部w3に対して長波長の第2レーザ光L2を出射する第6工程を行う。第6工程では、短波長の第1レーザ光L1の移動軌跡に沿って、長波長の第2レーザ光L2の出射位置を移動させる。第6工程では、長波長の第2レーザ光L2によって、第3加工対象部w3の一部が溶融することで、溶接方向に沿って延びる溶融部31が形成される。
【0097】
第5工程及び第6工程は、第3加工対象部w3の領域内において同時に行われる。短波長の第1レーザ光L1は、長波長の第2レーザ光L2よりも溶接方向の前方に先行して出射される。
【0098】
図6Dに示すように、第3加工対象部w3には、溶融部31が凝固することで接合部32が形成される。ワークWの2枚の板状の部材は、接合部32で接合される。
【0099】
このように、短波長の第1レーザ光L1の移動軌跡に沿って、長波長の第2レーザ光L2の出射位置を移動させ、短波長の第1レーザ光L1で予熱した部分の温度が低下する前に長波長の第2レーザ光L2を出射することで、ワークWの加工品質を高めることができる。
【0100】
-実施形態3の変形例1-
図7に示すように、レーザ加工装置1は、加工対象部の領域内で、所定の移動軌跡に沿って短波長の第1レーザ光L1の出射位置を移動させる。
図7に示す例では、レーザ加工装置1は、第1加工対象部w1の領域内で、短波長の第1レーザ光L1の出射位置を螺旋状に移動させる。
【0101】
具体的に、平面視で第1加工対象部w1の中心部をレーザ開始位置35、レーザ開始位置35から径方向外側に離れた位置をレーザ終了位置36とする。そして、レーザ開始位置35からレーザ終了位置36までの間で、短波長の第1レーザ光L1の出射位置を、径方向外側へ徐々に広がるように時計回り方向に螺旋状に移動させる(
図7の一点鎖線参照)。
【0102】
レーザ加工装置1は、第1加工対象部w1の領域内で、短波長の第1レーザ光L1の移動軌跡に沿って第1レーザ光L1の出射位置を移動させる。具体的に、短波長の第1レーザ光L1は、長波長の第2レーザ光L2よりも移動軌跡の前方に先行して出射される。長波長の第2レーザ光L2の出射位置は、短波長の第1レーザ光L1の螺旋状の移動軌跡に沿って、レーザ開始位置35からレーザ終了位置36までの間で、時計回り方向に螺旋状に移動する。
【0103】
これにより、第1加工対象部w1の広範囲にわたって第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を出射することができる。
【0104】
なお、
図7に示す例では、第1加工対象部w1の領域内における第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2の移動軌跡について説明したが、他の加工対象部においても同様に、第1レーザ光L1及び第2レーザ光を出射すればよい。
【0105】
-実施形態3の変形例2-
図8に示すように、レーザ加工装置1は、加工対象部の領域内で、所定の移動軌跡に沿って短波長の第1レーザ光L1の出射位置を移動させる。
図8に示す例では、レーザ加工装置1は、第1加工対象部w1の領域内で、短波長の第1レーザ光L1の出射位置を四角螺旋状に移動させる。
【0106】
具体的に、平面視で第1加工対象部w1の中心部付近をレーザ開始位置35、第1加工対象部w1の
図8で左下隅部をレーザ終了位置36とする。そして、レーザ開始位置35からレーザ終了位置36までの間で、短波長の第1レーザ光L1の出射位置を、外側へ徐々に広がるように時計回り方向に四角螺旋状に移動させる(
図8の一点鎖線参照)。
【0107】
レーザ加工装置1は、第1加工対象部w1の領域内で、短波長の第1レーザ光L1の移動軌跡に沿って第1レーザ光L1の出射位置を移動させる。具体的に、短波長の第1レーザ光L1は、長波長の第2レーザ光L2よりも移動軌跡の前方に先行して出射される。長波長の第2レーザ光L2の出射位置は、短波長の第1レーザ光L1の四角螺旋状の移動軌跡に沿って、レーザ開始位置35からレーザ終了位置36までの間で、時計回り方向に四角螺旋状に移動する。
【0108】
これにより、第1加工対象部w1の広範囲にわたって第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を出射することができる。
【0109】
-実施形態3の変形例3-
図9に示すように、レーザ加工装置1は、加工対象部の領域内で、所定の移動軌跡に沿って第1レーザ光L1の出射位置を移動させる。
図9に示す例では、レーザ加工装置1は、第1加工対象部w1の領域内で、短波長の第1レーザ光L1の出射位置をジグザグ状に移動させる。
【0110】
具体的に、平面視で第1加工対象部w1における
図9で右上隅部をレーザ開始位置35、
図9で左下隅部をレーザ終了位置36とする。そして、レーザ開始位置から35からレーザ終了位置36までの間で、短波長の第1レーザ光L1の出射位置をジグザグ状に移動させる(
図9の一点鎖線参照)。
【0111】
レーザ加工装置1は、第1加工対象部w1の領域内で、短波長の第1レーザ光L1の移動軌跡に沿って第1レーザ光L1の出射位置を移動させる。具体的に、短波長の第1レーザ光L1は、長波長の第2レーザ光L2よりも移動軌跡の前方に先行して出射される。長波長の第2レーザ光L2の出射位置は、短波長の第1レーザ光L1のジグザグ状の移動軌跡に沿って、レーザ開始位置35からレーザ終了位置36までの間で、ジグザグ状に移動する。
【0112】
これにより、第1加工対象部w1の広範囲にわたって第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を出射することができる。
【0113】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0114】
本実施形態では、ロボット2でレーザ加工ヘッド20を移動させ、ワークWに対するレーザ加工ヘッド20の位置を変更するようにしたが、この形態に限定するものではない。例えば、ワークWを移動テーブル(図示省略)に搭載して、ワークWに対してレーザ加工ヘッド20を相対的に移動させる構成であってもよい。
【0115】
本実施形態では、1つのレーザ加工ヘッド20から第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を出射するようにした形態について説明したが、この形態に限定するものではない。例えば、第1レーザ光L1を出射するレーザ加工ヘッドと、第2レーザ光L2を出射するレーザ加工ヘッドとを別々に設けた構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
以上説明したように、本発明は、ワークの加工品質及び加工速度を高めることができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0117】
1 レーザ加工装置
11 第1レーザ発振器
12 第2レーザ発振器
20 レーザ加工ヘッド
L1 第1レーザ光
L2 第2レーザ光
W ワーク
w1 第1加工対象部
w2 第2加工対象部