(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112740
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】レーザ装置及びこれを備えたレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/064 20140101AFI20230807BHJP
【FI】
B23K26/064 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014627
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】石川 諒
(72)【発明者】
【氏名】本藤 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】森岡 元希
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168CB12
4E168DA03
4E168DA04
4E168DA39
4E168EA17
4E168EA20
4E168EA24
4E168KA02
(57)【要約】
【課題】短波長のレーザ光を光ファイバで伝送した場合の光伝送効率の低下を抑制できるレーザ装置を提供する。
【解決手段】レーザ装置100は、所定の波長のレーザ光LBを発生させるレーザ発振器10と、入射端48にレーザ光LBが入射され、レーザ光LBを伝送して出射端49からレーザ光LBを出射する光ファイバ40と、を少なくとも備えている。光ファイバ40は、軸心に設けられたコア領域41と、半径方向でコア領域41の外側に配置され、第1屈折率n1を有する第1クラッド領域42と、を少なくとも有している。コア領域41は、軸心に設けられた中空領域41aと、断面視で中空領域41aを取り囲むように設けられた第1リングコア領域41bとで構成される。第1リングコア領域41bは中空領域41aに連続して設けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長のレーザ光を発生させるレーザ発振器と、
入射端に前記レーザ光が入射され、前記レーザ光を伝送して出射端から前記レーザ光を出射する光ファイバと、を少なくとも備え、
前記光ファイバは、
軸心に設けられたコア領域と、
半径方向で前記コア領域の外側に配置され、第1屈折率を有する第1クラッド領域と、を少なくとも有し、
前記コア領域は、軸心に設けられた中空領域と、断面視で前記中空領域を取り囲むようにかつ前記中空領域に連続して設けられた第1リングコア領域とで構成され、
前記第1リングコア領域の屈折率である第2屈折率は、前記第1屈折率よりも高いことを特徴とするレーザ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ装置において、
前記光ファイバは、少なくとも、
前記半径方向で前記第1クラッド領域の外側に配置され、前記第2屈折率を有する第2リングコア領域と、
前記半径方向で前記第2リングコア領域の外側に配置され、前記第2屈折率より低く、前記第1クラッド領域と同じ前記第1屈折率を有する第2クラッド領域と、をさらに有することを特徴とするレーザ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザ装置において、
前記レーザ光は、少なくとも前記中空領域と前記第1リングコア領域とに入射され、前記光ファイバの前記出射端から出射されることを特徴とするレーザ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザ装置において、
前記中空領域に入射される前記レーザ光の光量は、前記第1リングコア領域に入射される前記レーザ光の光量よりも多いことを特徴とするレーザ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のレーザ装置において、
前記レーザ発振器と前記光ファイバとの間に光路変更機構をさらに備え、
前記光路変更機構は、前記レーザ光の光路を変更することで、前記中空領域に入射される前記レーザ光の光量に対する前記第1リングコア領域に入射される前記レーザ光の光量の比率を変更するように構成されていることを特徴とするレーザ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のレーザ装置において、
前記レーザ発振器と前記光ファイバとの間に集光位置変更機構をさらに備え、
前記集光位置変更機構は、前記レーザ光の集光位置を変更することで、前記光ファイバの入射端面における前記レーザ光のスポット径を変更するように構成されていることを特徴とするレーザ装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のレーザ装置において、
前記第1リングコア領域と前記中空領域との間に、前記レーザ光に対して所定の反射率を有する反射層が介在していることを特徴とするレーザ装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のレーザ装置において、
前記レーザ光の波長は、300nm以上、550nm以下であることを特徴とするレーザ装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のレーザ装置と、
前記光ファイバの前記出射端に取り付けられ、前記光ファイバで伝送された前記レーザ光を受け取って、ワークに向けて照射するレーザヘッドと、を少なくとも備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ装置及びこれを備えたレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光を照射してワークをレーザ加工する技術が広く知られている。この場合、作業安全性や加工場所の自由度等を確保するために、レーザ発振器で発生したレーザ光を光ファイバで伝送して、レーザ発振器から離れた場所でレーザ加工を行うことが多い。
【0003】
光ファイバは、通常、石英からなるコアとその周囲に設けられ、石英からなるクラッドとで構成される。コアの屈折率をクラッドの屈折率よりも高めることで、コアに光が閉じ込められ、光ファイバによる光伝送効率を確保できる。
【0004】
しかし、前述した従来の光ファイバによる光伝送効率には波長依存性があり、550nm以下の波長の光において、光伝送効率が急激に低下してしまう。
【0005】
そこで、多様な波長領域に対応するために、例えば、コアに相当する領域を中空構造とした、いわゆる中空ファイバが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、レーザ加工の対象となるワークの材質が多様になっており、例えば、銅材のレーザ加工に関する要請が増加している。しかし、レーザ光の波長が、従来多く用いられている950nm~1150nm程度である場合、銅に対する光吸収率が低くなってしまう。このため、銅材をレーザ加工するには、400nm~500nm程度の波長のレーザ光が用いられる。
【0008】
しかし、この波長領域の光を従来の光ファイバで伝送した場合、光伝送効率が低下してしまうことは前述した通りである。したがって、ワークに照射されるレーザ光の伝送損失が増大してしまう。
【0009】
一方、特許文献1に開示されるような従来の中空ファイバを用いた場合、光伝送効率は低下しない。しかし、従来の中空ファイバを用いた場合、ワークに照射されるレーザ光のビームプロファイルをレーザ加工の態様に応じて制御することが難しくなる。
【0010】
本開示はかかる点に鑑みてなされたもので、その目的は、近紫外から緑色の短波長のレーザ光を光ファイバで伝送した場合の光伝送効率の低下を抑制し、レーザ加工の態様に応じたビームプロファイルを有するレーザ光を照射可能なレーザ装置及びこれを備えたレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本開示に係るレーザ装置は、所定の波長のレーザ光を発生させるレーザ発振器と、入射端に前記レーザ光が入射され、前記レーザ光を伝送して出射端から前記レーザ光を出射する光ファイバと、を少なくとも備え、前記光ファイバは、軸心に設けられたコア領域と、半径方向で前記コア領域の外側に配置され、第1屈折率を有する第1クラッド領域と、を少なくとも有し、前記コア領域は、軸心に設けられた中空領域と、断面視で前記中空領域を取り囲むようにかつ前記中空領域に連続して設けられた第1リングコア領域とで構成され、前記第1リングコア領域の屈折率である第2屈折率は、前記第1屈折率よりも高いことを特徴とする。
【0012】
本開示に係るレーザ加工装置は、前記レーザ装置と、前記光ファイバの前記出射端に取り付けられ、前記光ファイバで伝送された前記レーザ光を受け取って、ワークに向けて照射するレーザヘッドと、を少なくとも備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、短波長のレーザ光を光ファイバで伝送した場合の光伝送効率の低下を抑制できる。また、レーザ加工の態様に応じたビームプロファイルを有するレーザ光を照射でき、良好なレーザ加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成図である。
【
図2】
図1のII-II線での光ファイバ40の断面図である。
【
図3】比較のための光ファイバ40Aの断面模式図である。
【
図4】比較のための別の光ファイバ40Bの断面模式図である。
【
図5A】
図2に示す光ファイバ40にレーザ光を伝送した後のレーザ光のビームプロファイルを示す模式図である。
【
図5B】
図3に示す光ファイバ40Aにレーザ光を伝送した後のレーザ光のビームプロファイルを示す模式図である。
【
図5C】
図4に示す光ファイバ40Bにレーザ光を伝送した後のレーザ光のビームプロファイルを示す模式図である。
【
図6A】
図3に示す光ファイバ40Aにレーザ光を伝送後、光ファイバ40Aから出射されたレーザ光が照射されたワークの断面模式図である。
【
図6B】
図2に示す光ファイバ40にレーザ光を伝送後、光ファイバ40から出射されたレーザ光が照射されたワークの断面模式図である。
【
図7】光ファイバの伝送損失の波長依存性を示す図である。
【
図8】変形例1に係る光ファイバ40Cの断面模式図である。
【
図9】
図8に示す光ファイバを伝送した後のレーザ光のビームプロファイルを示す模式図である。
【
図10】変形例2に係るレーザ加工装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0016】
(実施形態1)
[レーザ加工装置の構成]
図1は、本実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成図を示す。
【0017】
レーザ加工装置200は、レーザ装置100と光結合ユニット20と集光ユニット30とレーザヘッド50とステージ60とマニピュレータ70とを有している。レーザ装置100は、レーザ発振器10と光ファイバ40とを有している。なお、レーザ装置100に、これ以外の部品、例えば、後で述べる光路変更機構23や集光位置変更機構35が含まれていてもよい。
【0018】
また、以降の説明において、光結合ユニット20から集光ユニット30に向かうレーザ光LBの進行方向をZ方向と呼び、光結合ユニット20の光路変更機構23から折り返しミラー22に向かう方向をX方向と呼び、X方向及びZ方向とそれぞれ交差する方向をY方向と呼ぶことがある。
【0019】
レーザ発振器10は、複数のレーザモジュール11とレーザ光合成器12とを有している。複数のレーザモジュール11からそれぞれ出射されたレーザ光がレーザ光合成器12で合成されて1本のレーザ光LBとして出射される。本実施形態において、レーザ光LBの波長は、450nmであるが、特にこれに限定されず、短波長であればよい。なお、本願明細書において、「短波長」とは、300nm以上、550nm以下の範囲をいう。
【0020】
光結合ユニット20は、筐体21の内部に折り返しミラー22と光路変更機構23とを有している。折り返しミラー22は筐体21の内部に固定配置されており、レーザ光LBを光路変更機構23に向けて反射する。なお、
図1に示す例では、レーザ発振器10が筐体21の内部に配置されているが、筐体21の外部に配置されてもよい。
【0021】
光路変更機構23は、ミラー24とピエゾステージ25とピエゾアクチュエータ26とを有している。ミラー24は、折り返しミラー22で反射されたレーザ光LBを集光ユニット30の集光レンズ32に向けて反射する。ミラー24はピエゾステージ25に一体に取り付けられており、ピエゾアクチュエータ26はピエゾステージ25に取り付けられている。ピエゾアクチュエータ26を駆動することで、ピエゾステージ25及びミラー24は、Y方向と平行な軸回りに傾動し、ミラー24で反射されたレーザ光LBの光軸を所定の範囲で変化させる。なお、光路変更機構23に対してレーザ光LBが直接入射される場合は、折り返しミラー22は省略されうる。なお、光路変更機構23は、レーザ光LBの集光レンズ32に対する出射位置を2軸方向(
図1におけるX方向及びY方向)に調整可能な構成であっても良い。この場合、ミラー24をピエゾアクチュエータ26により2軸方向に可動する構成であっても良い。
【0022】
集光ユニット30は、筐体31の内部に集光レンズ32とシャッタ33とビームダンパ34とを有している。集光レンズ32は、光路変更機構23のミラー24で反射されたレーザ光LBを集光して光ファイバ40に入射させる。シャッタ33は、レーザ光LBの光路中と光路外との間を移動可能に構成されており、所定の制御信号に応じてレーザ光LBの光路を開閉する。シャッタ33がレーザ光LBの光路中に配置される場合、シャッタ33で反射されたレーザ光LBはビームダンパ34に入射され、熱に変換される。なお、レーザ光LBの集光位置を光ファイバ40の入射端面に合わせるために、集光ユニット30には、集光位置変更機構35が設けられている。なお、
図1では、集光位置変更機構35は集光レンズ32に連結されているが、特にこれに限定されない。例えば、集光レンズ32の前段に図示しないコリメーションレンズを配置し、コリメーションレンズに集光位置変更機構35を連結させてもよい。集光ユニット30の集光位置変更機構35がコリメーションレンズまたは集光レンズ32をZ方向に沿って移動させることで、レーザ光LBの集光位置を光ファイバ40の入射端面に合わせることができる。また、光ファイバ40の入射端面におけるレーザ光LBのスポット径を変更させることができる。
【0023】
光ファイバ40は、入射端48に集光ユニット30からレーザ光LBが入射され、レーザ光LBを伝送して出射端49からレーザ光LBを出射する。出射端49にレーザヘッド50が取り付けられている。この光ファイバ40の構造については後で詳述する。
【0024】
レーザヘッド50は、内部に図示しない光学系、例えばコリメーションレンズと集光レンズとを有しており、レーザヘッド50に伝送されたレーザ光LBを平行光に変換した後、ワーク300の表面に集光して、ワーク300がレーザ溶接される。また、レーザヘッド50のレーザ出射口は、図示しない保護ガラスで覆われている。
【0025】
ステージ60は、ワーク300を保持するとともに、レーザヘッド50に対して相対的に移動するように構成されている。マニピュレータ70は、レーザヘッド50を保持するとともに、レーザヘッド50を所望の位置に移動させるように構成されている。
【0026】
また、レーザ加工装置200は、光路制御部91とステージ制御部92とマニピュレータ制御部93とレーザ制御部94とを有している。光路制御部91は、ピエゾアクチュエータ26とシャッタ33の駆動機構(図示せず)と集光位置変更機構35とに電気的に接続されており、ピエゾアクチュエータ26の動作とシャッタ33の開閉動作と集光位置変更機構35の動作とを制御する。光路制御部91からピエゾアクチュエータ26に印加する制御電圧の大きさに応じて、光路変更機構23の傾動範囲が変化し、後で述べるように、レーザ光LBの光ファイバ40への入射位置Pを変化させることができる。なお、ピエゾアクチュエータ26とシャッタ33の駆動機構と集光位置変更機構35とはそれぞれ別の制御部で制御されてもよい。
【0027】
ステージ制御部92は、ステージ60に電気的に接続されており、レーザヘッド50に対するステージ60の相対動作、言い換えるとワーク300に入射されるレーザ光LBに対するステージ60の相対位置を制御するように構成されている。例えば、ステージ制御部92により、ステージ60をレーザ光LBの入射方向と交差する平面に沿って移動させることができる。あるいは、ステージ60は、レーザ光LBの入射方向と略平行な軸回りに回転させることができる。
【0028】
マニピュレータ制御部93は、マニピュレータ70に電気的に接続されており、マニピュレータ70の動作を制御するように構成されている。なお、ステージ60とマニピュレータ70とが同じ制御部で制御されていてもよい。
【0029】
なお、ステージ制御部92とマニピュレータ制御部93とが連動して、マニピュレータ70とステージ60の両方を動作させる場合がある。通常は、マニピュレータ制御部93によりマニピュレータ70を動作させてレーザヘッド50を移動させ、レーザ光LBを溶接線に沿ってワーク300の表面に照射させる。一方、マニピュレータ70の動作範囲を超えて、レーザ光LBを走査する場合は、マニピュレータ70と同時にステージ制御部92によりステージ60も動作させる。このようにすることで、レーザ光LBの照射範囲を拡大できる。また、溶接時間を短縮して作業効率を向上させたい場合も、ステージ制御部92とマニピュレータ制御部93とが連動して、マニピュレータ70とステージ60の両方を動作させることがある。なお、ステージ制御部92によりステージ60のみを移動させることでレーザ光LBを溶接線に沿って移動させてもよい。
【0030】
レーザ制御部94は、レーザ発振器10に接続された電源81及びレーザ発振器10に接続されており、レーザ光LBの出力開始及び出力停止のタイミングや期間、また、レーザ光LBの出力を制御するように構成されている。
【0031】
光路制御部91、ステージ制御部92、マニピュレータ制御部93及びレーザ制御部94における前述の機能は、それぞれが有するハードウェア上で、所定の溶接プログラムを実行することで実現される。当該ハードウェアは、主にCPU(Central Processing Unit)やメモリで構成される。また、光路制御部91、ステージ制御部92、マニピュレータ制御部93及びレーザ制御部94が、図示しない上位コントローラに接続される場合は、上位コントローラで実行される溶接プログラムに基づいた実行命令が、光路制御部91、ステージ制御部92、マニピュレータ制御部93及びレーザ制御部94のそれぞれに送信され、所定の処理を実行する。なお、光路制御部91、ステージ制御部92、マニピュレータ制御部93及びレーザ制御部94が、一体化されて一つの制御部になっていてもよい。
【0032】
[光ファイバの構成]
図2は、
図1のII-II線での断面図であり、光ファイバ40の断面構造を示している。なお、
図2及び後で示す
図3,4において、光ファイバ40,40A,40Bの半径方向(以下、単に半径方向という)に関して、光ファイバ40,40A,40Bを構成する各層の屈折率分布も同時に示している。
【0033】
図2に示すように、光ファイバ40は、コア領域41と第1クラッド領域42と保護皮膜47とを有している。コア領域41は、中空領域41aと第1リングコア領域41bとを有している。中空領域41aは、第1リングコア領域41bの内部に設けられた中空状でかつ空気で満たされた領域である。中空領域41aは、光ファイバ40の軸心に設けられている。第1リングコア領域41bは、断面視でリング形状である。第1リングコア領域41bは、石英からなり、中空領域41aの屈折率、つまり、空気の屈折率(=1)よりも高い第2屈折率n2を有している。第1リングコア領域41bは、断面視で中空領域41aを取り囲むように設けられている。また、第1リングコア領域41bは、中空領域41aに連続して設けられている。ただし、第1リングコア領域41bと中空領域41aとの間には、レーザ光LBに対して所定の反射率を有する反射層46が介在している。つまり、断面視で、中空領域41aに連続して、かつ中空領域41aの半径方向外側に反射層46が配置されている。また、断面視で、反射層46に連続して、かつ反射層46の半径方向外側に第1リングコア領域41bが配置されている。
【0034】
第1クラッド領域42は、断面視でリング形状であり、半径方向でコア領域41の外側に配置されている。第1クラッド領域42は、石英からなり、中空領域41aの屈折率、つまり、空気の屈折率よりも高く、第1リングコア領域41bの第2屈折率n2よりも低い第1屈折率n1を有している。したがって、前述した光ファイバ40の屈折率の構成は、
図2に示すように、空気の屈折率(=1)(中空領域41a)<第1屈折率n1(第1クラッド領域42)<第2屈折率n2(第1リングコア領域41b)となる。
【0035】
保護皮膜47は、例えば、合成樹脂からなり、コア領域41及び第1クラッド領域42を機械的に保護するとともに、光ファイバ40からレーザ光LBが漏れ出たり、外部から光ファイバ40に光が漏れ込んだりするのを防止する。
【0036】
図3は、
図2の光ファイバ40に対する比較のための光ファイバ40Aの断面模式図を示す。
図3に示す光ファイバ40Aは、中空ファイバであり、光ファイバ40Aの軸心に、屈折率が1である空気で満たされた領域である中空領域41aと、その半径方向の外側に断面視でリング形状の第1クラッド領域42とを有している。中空領域41aは、光ファイバ40Aのコア領域、つまり、レーザ光LBが伝送される領域である。光ファイバ40Aの第1クラッド領域42は、石英からなり、中空領域41aの屈折率、つまり、空気の屈折率(=1)よりも高い第2屈折率n2を有している。また、第1クラッド領域42の半径方向の外側に保護皮膜47を有している。なお、第1クラッド領域42の内周面に、レーザ光LBに対して所定の反射率を有する反射層(図示せず)が設けられていてもよい。
【0037】
光ファイバ40Aの屈折率の構成は、
図3に示すように、空気の屈折率(中空領域41a)(=1)<第2屈折率n2(第1クラッド領域42)となる。
【0038】
図4は、さらに比較のための別の光ファイバ40Bの断面模式図を示す。
図4に示す光ファイバ40Bは、マルチコアファイバであり、第1コア領域43と前述の第1クラッド領域42と第2コア領域44と第2クラッド領域45と保護皮膜47とを有している。第1コア領域43は、断面視で円形であり、光ファイバ40Bの軸心に設けられている。軸心に設けられた第1コア領域43は、中実状で石英からなり、第2屈折率n2を有している。
【0039】
第1クラッド領域42は、断面視でリング形状であり、半径方向で第1コア領域43の外側に配置されている。光ファイバ40Bの第1クラッド領域42は、石英からなり、第1コア領域43よりも低い第1屈折率n1を有している。
【0040】
第2コア領域44は、断面視でリング形状であり、半径方向で第1クラッド領域42の外側に配置されている。第2コア領域44は、石英からなり、光ファイバ40Bの第1クラッド領域42の第1屈折率n1より高く、第1コア領域43の第2屈折率n2と同じ第2屈折率n2を有している。なお、以降の説明において、第2コア領域44を第2リングコア領域44と呼ぶことがある。
【0041】
第2クラッド領域45は、断面視でリング形状であり、半径方向で第2コア領域44の外側に配置されている。第2クラッド領域45は、石英からなり、空気の屈折率(=1)よりも高く第1屈折率n1よりも低い第3屈折率n3を有している。したがって、前述の光ファイバ40Bの屈折率の構成は、
図4に示すように、第2屈折率n2(第1コア領域43、第2コア領域44)>第1屈折率n1(光ファイバ40Bの第1クラッド領域42)>第3屈折率n3(第2クラッド領域45)>(空気の屈折率=1)となる。
【0042】
なお、
図2~4において、光ファイバ40,40A,40Bの入射端面に入射されるレーザ光LBのスポットの外径を破線で示している。
図2に示すように、本実施形態の光ファイバ40では、レーザ光LBは、中空領域41aと第1リングコア領域41bとの両方に伝送される。なお、本実施形態では、中空領域41aに入射されるレーザ光LBの光量が、第1リングコア領域41bに入射されるレーザ光LBの光量よりも多くなるように、光ファイバ40へのレーザ光LBの入射状態(入射領域)が調整される。
【0043】
例えば、光路変更機構23によりレーザ光LBの光路を変更することで、中空領域41aに入射されるレーザ光LBの光量に対する第1リングコア領域41bに入射されるレーザ光LBの光量の比率(第1リングコア領域41bに入射されるレーザ光LBの割合)が変更される。
【0044】
また、集光位置変更機構35によりレーザ光LBの集光位置を変更することで、光ファイバ40の入射端面におけるレーザ光LBのスポットのサイズが変更される。このことにより、中空領域41aに入射されるレーザ光LBの光量に対する第1リングコア領域41bに入射されるレーザ光LBの光量の比率が変更されてもよい。
【0045】
図3に示す光ファイバ40Aでは、レーザ光LBは中空領域41aに照射される。
図4に示す光ファイバ40Bでは、レーザ光LBは第1コア領域43と第1クラッド領域42と第2コア領域44とに照射される。
【0046】
[レーザ加工時のレーザ光のビームプロファイル及びワークの状態]
図5Aは、
図2に示す光ファイバ40にレーザ光LBを伝送した後のレーザ光LBのビームプロファイルの模式図を示す。
図5Bは、
図3に示す光ファイバ40Aにレーザ光を伝送した後のレーザ光のビームプロファイルの模式図を示す。
図5Cは、
図4に示す光ファイバ40Bにレーザ光を伝送した後のレーザ光のビームプロファイルの模式図を示す。
【0047】
なお、
図5A~5Cに示すレーザ光LBのビームプロファイルは簡略化して図示している。また、説明の便宜上、レーザ光LBの光軸をZ方向とした場合、X方向に関する一次元のビームプロファイルのみ図示しているが、実際には、Z方向のレーザ光LBの光軸を中心として、X方向の軸とY方向の軸とでなす平面において、等方的に同じビームプロファイルとなっている。また、
図5Aに示すレーザ光LBのビームプロファイルの最大光強度を例えば1として、
図5A~5Cに示すレーザ光LBのビームプロファイルの光強度を規格化して示している。また、X方向における「0」は、光ファイバ40,40A,40Bの軸心位置に相当する。
【0048】
図6Aは、
図3に示す光ファイバ40Aに伝送され、光ファイバ40Aから出射された後のレーザ光が照射されたワークの断面模式図を示し、
図6Bは、
図2に示す光ファイバ40に伝送され、光ファイバ40から出射された後のレーザ光が照射されたワークの断面模式図を示す。
【0049】
図7は、光ファイバの伝送損失の波長依存性を示す。なお、
図7には、コア内の光がクラッドで反射されながら進むステップインデックス型のシングルコア構造の光ファイバにおける伝送損失の波長依存性を示している。
【0050】
図5Aに示すように、
図2に示す本実施形態の光ファイバ40にレーザ光LBを伝送した後のレーザ光LBのビームプロファイルは、X=0となる位置にピークを有し(以下、センターピークCPという)、かつセンターピークCPの両縁が持ち上がった形状となる。なお、以降の説明において、センターピークCPの両縁に位置する持ち上がった部分を第1サイドピークSP1と呼ぶことがある。
【0051】
センターピークCPは、光ファイバ40に伝送したレーザ光LBのうち、中空領域41aに伝送した成分に相当し、第1サイドピークSP1は、第1リングコア領域41bに伝送した成分に相当する。
【0052】
図5Bに示すように、
図3に示す光ファイバ40Aにレーザ光LBを伝送した後のレーザ光LBのビームプロファイルは、X=0となる位置にセンターピークCPを有している。また、X=0となる位置を中心とした単峰状のガウシアン分布となる。
図5Aに示すセンターピークCPの光強度と
図5Bに示すセンターピークCPの光強度とは略同じである。
【0053】
図5Cに示すように、
図4に示す光ファイバ40Bにレーザ光LBを伝送した後のレーザ光LBのビームプロファイルは、X=0となる位置にセンターピークCPを有している。また、センターピークCPの両側に2つのピーク(以下、第2サイドピークSP2という)を有している。センターピークCPは、光ファイバ40Bに伝送したレーザ光LBのうち、第1コア領域43に伝送した成分に相当し、第2サイドピークSP2は、第2コア領域44に伝送した成分に相当する。
【0054】
図5Cに示すセンターピークCPの光強度は、
図5Aに示すセンターピークCPの光強度よりも大幅に低下している。
図7に示すように、本実施形態におけるレーザ光LBの波長領域では、石英からなる第1コア領域43での伝送損失が大きくなるためである。また、センターピークCPと第2サイドピークSP2との間では、
図5Aに示す場合に比べて、光強度が大幅に低下している。これは、第1コア領域43と第2コア領域44との間に第1クラッド領域42が存在しているためである。
【0055】
次に、
図6A及び
図6Bを用いて、レーザ加工時のワーク300の状態について説明する。本実施形態のワーク300は、銅からなる板材であるが、特にこれに限定されず、適宜他の材質や形状を採りうる。
【0056】
レーザ光LBを照射してワーク300をレーザ溶接する場合、
図6A及び
図6Bに示すように、レーザ光LBの照射箇所にキーホール401が形成され、さらにその周囲に溶融池402が形成される。また、溶接方向に沿って、溶融池402の後方(溶接方向の後方)に溶融池402が固化した固化部403が形成される。
【0057】
ここで、
図3に示す光ファイバ40Aにレーザ光LBを伝送した後、光ファイバ40Aから出射されたレーザ光LBをワーク300に照射した場合、
図5Bに示すビームプロファイルを反映して、
図6Aに示すように、レーザ光LBの照射箇所は狭くなり、キーホール401の直径が狭くなる。また、レーザ光LBの照射箇所の中央と周縁とでの入熱エネルギーの差も大きくなってくる。
【0058】
この場合、
図6Aに示すように、具体的には、キーホール401の直径が狭くなるとともに、内部にくびれを生じやすくなる。くびれた部分で、キーホール401の内壁がくっつくと、ワーク300の内部に空洞を生じてしまうおそれがある。また、空洞内で金属蒸気が加熱されて、溶融池402が突沸し、ワーク300の表面にスパッタが付着するおそれがある。また、キーホール401の開口が不十分となる場合は、キーホール401の開口部が閉じやすくなる。この場合も、ワーク300の内部に空洞を生じたり、ワーク300の表面にスパッタが付着したりするおそれがある。
【0059】
一方、
図1に示す光路変更機構23及び集光位置変更機構35の少なくとも一方を動作させることで、
図2に示すように、レーザ光LBを光ファイバ40の第1コア領域41における中空領域41aと第1リングコア領域41bとの2か所に入射させることができる。
【0060】
これにより、
図2に示す本実施形態の光ファイバ40にレーザ光LBを伝送した後、光ファイバ40から出射されたレーザ光LBをワーク300に照射した場合、青紫や緑色等の短波長のレーザ光LBを光ファイバ40で伝送した場合の光伝送効率の低下(伝送損失)を抑制できる。また、さらに
図5Aに示すビームプロファイルを反映して、レーザ光LBの照射箇所は、
図5Bに示す場合よりも広くなり、
図6Bに示すように、キーホール401の開口部が広がる。また、
図5Aに示すビームプロファイルを反映して、レーザ光LBの照射箇所の周縁では、
図5Bに示す場合よりも入熱量が大きくなる。つまり、第1サイドピークSP1に起因して、
図5Bに示す場合よりも入熱量が大きくなる。したがって、レーザ光LBの照射箇所の中央と周縁とでの入熱エネルギーの差は、
図5Bに示す場合よりも小さくなる。
【0061】
この場合、
図6Bに示すように、具体的には、キーホール401の開口部が広がり、キーホール401の内部に金属蒸気が閉じ込められるのを防止できる。また、第1サイドピークSP1により、キーホール401の開口部が広がり、溶融した金属が下方にそらされることで、溶融池402が安定化し、キーホール401の開口部からの金属蒸気の排出性が向上し、金属蒸気の運動エネルギーを小さくできる。このことにより、溶融した金属がスパッタとなってワーク300の表面に付着するのを防止できる。
【0062】
また、キーホール401の開口部が広がり、キーホール401が、レーザLBの進行方向において、キーホール401の先に比べてキーホール401の開口部がより広がった形状の順テーパ状の傾斜形状となる。このことにより、キーホール401の内壁に照射されるレーザ光LBの光量が増加し、前述のくびれが発生するのを防止できる。これらのことにより、スパッタや空洞の発生が抑制され、良好なレーザ溶接を行うことができる。
【0063】
なお、
図4に示す光ファイバ40Bを伝送した後のレーザ光LBをワーク300に照射した場合、
図5Cに示すビームプロファイルを反映して、レーザ光LBの照射箇所における入熱量が、
図5Aに示す場合よりも小さくなる。よって、安定したキーホール401を形成するために、レーザ光LBの出力を
図5Aに示す場合よりも大幅に増加させる必要がある。しかし、このことにより、レーザ加工装置200の稼働時の消費電力が大きくなり、運転コストが増大するという問題を生じる。
【0064】
また、第2サイドピークSP2に起因して、レーザ光LBの照射箇所の周縁での入熱量は増加するものの、センターピークCPと第2サイドピークSP2との間での入熱量は、
図5Aに示す場合よりも大幅に小さくなる。
【0065】
このため、図示しないが、キーホール401の開口部近傍で溶融池402の流動性が低下し、キーホール401の開口部が十分に広がらないおそれがある。また、このことにより、キーホール401の内壁に照射されるレーザ光LBの光量が
図5Aに示す場合よりも減少し、キーホール401にくびれが発生しやすくなる。したがって、この場合も、ワーク300の内部に空洞を生じたり、ワーク300の表面にスパッタが付着したりするおそれがある。
【0066】
なお、ワーク300にキーホール401を形成せずにレーザ溶接を行う場合も、
図2に示す光ファイバ40を用いて、中空領域41aに入射されるレーザ光LBの光量に対する第1リングコア領域41bに入射されるレーザ光LBの光量の比率を調整することで、レーザ光LBの照射箇所における入熱量及びその分布を適正化できる。
【0067】
また、レーザ溶接に限らず、ワーク300のレーザ切断やレーザ穴開け等の用途に本実施形態のレーザ加工装置200が適用可能なことは言うまでもない。レーザ加工の態様に応じてレーザ光LBのビームプロファイルを変化させることで、スパッタ等の加工不良を低減して良好なレーザ加工を行うことができる。
【0068】
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係るレーザ装置100は、レーザ光LBを発生させるレーザ発振器10と、入射端48にレーザ光LBが入射され、レーザ光LBを伝送して出射端49からレーザ光LBを出射する光ファイバ40と、を備えている。
【0069】
光ファイバ40は、
図2に示すように、軸心に設けられたコア領域41と、半径方向でコア領域41の外側に配置され、第1屈折率n1を有する第1クラッド領域42と、を有している。
【0070】
コア領域41は、軸心に設けられた中空領域41aと、断面視で中空領域41aを取り囲むようにかつ中空領域41aに連続して設けられた第1リングコア領域41bとで構成される。中空領域41aの屈折率は、空気の屈折率(=1)と同じである。第1リングコア領域41bの屈折率である第2屈折率n2は、空気の屈折率(=1)よりも高い第1クラッド領域42の第1屈折率n1よりも高い。
【0071】
本実施形態によれば、石英からなる公知の光ファイバを用いる場合に比べて、青紫や緑色等の短波長のレーザ光LBを光ファイバ40で伝送した場合の光伝送効率の低下(伝送損失)を抑制でき、高出力のレーザ光LBを光ファイバ40から出射できる。また、レーザ加工の態様に応じたビームプロファイルを有するレーザ光LBを照射でき、良好なレーザ加工を行うことができる。
【0072】
レーザ光LBは、中空領域41aと第1リングコア領域41bとに入射され、光ファイバ40の出射端49から出射される。この場合、中空領域41aに入射されるレーザ光LBの光量は、第1リングコア領域41bに入射されるレーザ光LBの光量よりも多いことが好ましい。
【0073】
このようにすることで、短波長のレーザ光LBを光ファイバ40で伝送した場合の光伝送効率の低下を抑制しつつ、キーホール401の開口部がより広がった傾斜形状となることで、キーホール401の内壁に照射されるレーザ光LBの光量が増加し、スパッタの発生が抑制され、良好なレーザ溶接を行うことができる。また、レーザ溶接のみならず、これ以外のレーザ加工の態様に応じたビームプロファイルを有するレーザ光LBを照射でき、良好なレーザ加工を行うことができる。
【0074】
レーザ発振器10と光ファイバ40との間に光路変更機構23をさらに備えるのが好ましい。光路変更機構23は、レーザ光LBの光路を変更することで、中空領域41aに入射されるレーザ光LBの光量に対する第1リングコア領域41bに入射されるレーザ光LBの光量の比率を変更するように構成されているのが好ましい。
【0075】
このようにすることで、レーザ加工の態様に応じて、ワーク300に照射されるレーザ光LBのビームプロファイルやスポット径を変更でき、良好なレーザ加工を行うことができる。
【0076】
レーザ発振器10と光ファイバ40との間に集光位置変更機構35をさらに備えてもよい。集光位置変更機構35は、レーザ光LBの集光位置を変更することで、光ファイバ40の入射端面におけるレーザ光LBのスポット径を変更するように構成されている。
【0077】
このようにすることで、レーザ加工の態様に応じて、レーザ光LBのビームプロファイルやスポット径を変更でき、良好なレーザ加工を行うことができる。
【0078】
レーザ光LBが入射されるコア領域(第1コア領域)41における、第1リングコア領域41bと中空領域41aとの間には、レーザ光LBに対して所定の反射率を有する反射層46が介在していることが好ましい。具体的には、第1リングコア領域41bの内周面に反射層46が設けられる。これにより、短波長のレーザ光LBを光ファイバ40、40Cで伝送した場合の光伝送効率の低下をより抑制でき、高出力のレーザ光LBを光ファイバ40から出射できる。
【0079】
前述したように、中空領域41aの屈折率(=1)は、第1リングコア領域41bの屈折率である第2屈折率n2よりも低い。よって、中空領域41aに伝送されるレーザ光LBに対して、第1リングコア領域41bは光閉じ込め機能を有さない。このため、レーザ光LBの伝送中に中空領域41aから第1リングコア領域41bにレーザ光LBが漏れ出すと、光ファイバ40から出射されるレーザ光LBに対する中空領域41aに伝送されるレーザ光LBの比率が低下してしまう。つまり、レーザ光LBを光ファイバ40で伝送した場合の光伝送効率が低下してしまうことがある。
【0080】
第1リングコア領域41bと中空領域41aとの間に反射層46を介在させることで、中空領域41aから第1リングコア領域41bへのレーザ光LBの漏れ出しを確実に抑制できる。ひいてはレーザ光LBを光ファイバ40で伝送した場合の光伝送効率の低下を確実に抑制でき、高出力のレーザ光LBを光ファイバ40から出射できる。
【0081】
なお、反射層46の材質や構造は、レーザ光LBの波長や反射率の許容範囲に応じて適宜変更されうる。例えば、レーザ光LBの波長が550nm程度の場合、反射層46として銀膜を適用できる。反射率を100%に近づけたい場合やレーザ光LBの波長が400nm未満になる場合等であれば、反射層46として誘電体多層膜を適用できる。誘電体多層膜は、互いに屈折率の異なる誘電体膜を交互に積層した構造である。誘電体膜間の屈折率差やそれぞれの膜厚を適切に設定することで、所望の反射率を得ることができる。
【0082】
レーザ光LBの波長は、前述した通り、300nm以上、550nm以下である。なお、青色レーザのレーザ加工への適用という観点から見れば、レーザ光LBの波長は、400nm以上、500nm以下であってもよい。
【0083】
本実施形態によれば、当該波長域のレーザ光LBを効率良く光ファイバ40で伝送できるため、高出力のレーザ光LBを光ファイバ40から出射できる。
【0084】
本実施形態に係るレーザ加工装置200は、レーザ装置100と、光ファイバ40の出射端49に取り付けられ、光ファイバ40で伝送されたレーザ光LBを受け取って、ワーク300に向けて照射するレーザヘッド50と、を少なくとも備えている。
【0085】
このようにすることで、短波長のレーザ光LBを光ファイバ40で伝送した場合の光伝送効率の低下を抑制でき、高出力のレーザ光LBを光ファイバ40から出射できる。また、レーザ加工の態様に応じたビームプロファイルを有するレーザ光LBをワーク300に向けて照射でき、良好なレーザ加工を行うことができる。
【0086】
<変形例1>
図8は、本変形例に係る光ファイバの断面模式図を示し、
図9は、
図8に示す光ファイバ40Cにレーザ光を伝送した後のレーザ光のビームプロファイルの模式図を示す、なお、説明の便宜上、
図8及び以降に示す各図面において、実施形態と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0087】
図8に示す本変形例の光ファイバ40Cは、以下に示す点で
図2に示す光ファイバ40と異なる。
図8に示す光ファイバ40Cは、半径方向で第1クラッド領域42の外側に配置され、第2屈折率n2を有する第2コア領域44(第2リングコア領域44)と、半径方向で第2コア領域44の外側に配置され、第2屈折率n2より低く、第1クラッド領域42と同じ第1屈折率n1を有する第2クラッド領域45と、をさらに有している。したがって、光ファイバ40Cの屈折率の構成は、
図8に示すように、第2屈折率n2(第1コア領域41の第1リングコア領域41b、第2リングコア領域44)>第1屈折率n1(第1クラッド領域42、第2クラッド領域45)>空気の屈折率(=1)(第1コア領域41の中空領域41a)となる。
【0088】
光ファイバ40Cをこのように構成してもよく、例えば、光路変更機構23及び集光位置変更機構35の少なくとも一方を動作させることで、
図8に示すように、レーザ光LBを第1コア領域41における中空領域41aと第1リングコア領域41bと、さらに第2コア領域44との3か所に入射させることができる。
【0089】
この場合、
図9に示すように、レーザ光LBのビームプロファイルは、
図5Aに太い実線で示す第1サイドピークSP1が、破線で示す位置までさらに広がった形状となる。このことにより、青紫や緑色等の短波長のレーザ光LBを光ファイバ40で伝送した場合の光伝送効率の低下(伝送損失)を抑制できるとともに、広がった形状のビームプロファイルの第1サイドピークSP1により、さらに、溶融池402を安定化させる効果が高まり、溶融した金属がスパッタとなってワーク300の表面に付着するのを確実に防止できる。また、スパッタや空洞の発生が抑制され、良好なレーザ加工を行うことができる。
【0090】
なお、
図8では、第2クラッド領域45の屈折率を第1クラッド領域42と同じ第1屈折率N1としたが、
図4に示すように第3屈折率N3としてもよい。
図4に示す例も含めて、第2クラッド領域45の屈折率を第1屈折率N1よりさらに低い第3屈折率n3とすることで、第2コア領域44への光閉じ込めが強化され、レーザ光LBを光ファイバ40Cで伝送した場合の光伝送効率の低下を抑制できる。
【0091】
また、第2クラッド領域45の半径方向の外側に1または複数のリングコア領域が設けられていてもよい。その場合、リングコア領域の間にクラッド領域が設けられることは言うまでもない。
【0092】
<変形例2>
図10は、本変形例に係るレーザ加工装置の概略構成図を示す。
【0093】
レーザ加工用途が一義的に決まっているような場合には、
図1に示すレーザ加工装置200から1または複数の構成部品を省略して、
図10に示すレーザ加工装置200にすることもできる。
【0094】
レーザヘッド50を所定の位置に固定するとともに、ステージ60を動かしてワーク300をレーザ加工する場合は、
図10に示すように、マニピュレータ70及びマニピュレータ制御部93を省略できる。また、光ファイバ40の入射端面へのレーザ光LBの入射位置やスポット径を予め固定しておく場合は、
図10に示すように、光路変更機構23や集光ユニット30を省略できる。つまり、レーザ装置100は、レーザ発振器10と光ファイバ40とのみで構成される。ただし、この場合も、レーザ光LBを光ファイバ40に結合されるための集光レンズ32は必要である。集光レンズ32は、例えば、
図10に示すように、レーザ発振器10の内部に設けてもよい。
【0095】
本変形例によれば、実施形態に示す構成が奏するのと同様の効果を奏することができる。つまり、光ファイバの入射端48に集光レンズ32から予め設定した所定のスポットサイズ(集光サイズ)のレーザLBを入射することで、シン池な構成で、短波長のレーザ光LBを光ファイバ40で伝送した場合の光伝送効率の低下を抑制できる。また、さらに、高出力のレーザ光LBを光ファイバ40の出射端49から出射できる。また、レーザ加工の態様に応じたビームプロファイルを有するレーザ光LBを照射でき、良好なレーザ加工を行うことができる。
【0096】
(その他の実施形態)
実施形態及び変形例1,2に示す各構成要素を適宜組み合わせて、新たな実施形態とすることもできる。例えば、変形例1(
図8参照)に示す光ファイバ40Cを変形例2に示すレーザ装置100に適用することも可能である。
【0097】
また、ピエゾアクチュエータ26の代わりに別のアクチュエータ、例えば、ステッピングモータを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本開示のレーザ装置は、短波長のレーザ光を光ファイバで伝送した場合の光伝送効率の低下を抑制できるため、有用である。
【符号の説明】
【0099】
10 レーザ発振器
11 レーザモジュール
12 レーザ光合成器
20 光結合ユニット
21 筐体
22 折り返しミラー
23 光路変更機構
24 ミラー
25 ピエゾステージ
26 ピエゾアクチュエータ(アクチュエータ)
30 集光ユニット
31 筐体
32 集光レンズ
33 シャッタ
34 ビームダンパ
35 集光位置変更機構
40,40A,40B,40C 光ファイバ
41、43 コア領域(第1コア領域)
41a 中空領域
41b 第1リングコア領域
42 第1クラッド領域
44 第2コア領域(第2リングコア領域)
45 第2クラッド領域
46 反射層
47 保護皮膜
48 入射端
49 出射端
50 レーザヘッド
60 ステージ
70 マニピュレータ
81 電源
91 光路制御部
92 ステージ制御部
93 マニピュレータ制御部
94 レーザ制御部
100 レーザ装置
200 レーザ加工装置
300 ワーク
401 キーホール
402 溶融池
403 固化部