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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112769
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】ベンチレーションマット及び座席
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/56 20060101AFI20230807BHJP
   A47C 27/00 20060101ALI20230807BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C27/00 F
A47C7/74 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014678
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000129529
【氏名又は名称】株式会社クラベ
(72)【発明者】
【氏名】宮野 大助
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】森下 典栄
(72)【発明者】
【氏名】竹田 浩也
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3B096
【Fターム(参考)】
3B084JA06
3B084JG01
3B084JG06
3B087DE03
3B096AC12
(57)【要約】
【課題】送風源からの風量の減衰を抑え、且つ、様々な座席の態様に適用できる設計の自由度を有するベンチレーションマットとそれを組み込んだ座席を提供すること。
【解決手段】ベンチレーションマット本体10は、通気性のある立体構造を備える第一基材12と、第一基材12の周囲を覆い実質的に通気性を有さない第一バリア材11と、第一バリア材11が存しない通気部13,15を有し、通風ガイド21は、通気性のある立体構造を備える第二基材22と、第二基材22の周囲を覆い実質的に通気性を有さない第二バリア材21を有し、第一基材12に形成された切欠部に第二基材22の一部が嵌合され、第一基材12と第二基材22が空気循環可能なように連通され、通風ガイド20の切欠部に嵌合されない部分が、ベンチレーションマット本体10と少なくとも一部で重なる方向に延出されるベンチレーションマット1。ベンチレーションマット1が配置された座席。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンチレーションマット本体と、
前記ベンチレーションマット本体に接続される通風ガイドと、を有し、
前記ベンチレーションマット本体は、
通気性のある立体構造を備える第一基材と、
前記第一基材の周囲を覆い、実質的に通気性を有さない第一バリア材と、
前記第一バリア材が存しない通気部と、を有し、
前記通風ガイドは、
通気性のある立体構造を備える第二基材と、
前記第二基材の周囲を覆い、実質的に通気性を有さない第二バリア材と、を有し、
前記第一基材に切欠部が形成されるとともに、前記第二基材の一部が前記切欠部に嵌合され、前記第一基材と前記第二基材が空気循環可能なように連通されており、
前記ベンチレーションマット本体の一方の主面に前記通気部が形成され、前記ベンチレーションマット本体のもう一方の主面において、前記通風ガイドが、前記ベンチレーションマット本体と少なくとも一部において重なる方向に延出されているベンチレーションマット。
【請求項2】
前記通風ガイドの通風方向に直行し、且つ、前記第一基材の主面に平行な方向を幅としたとき、前記通風ガイドにおける前記切欠部に嵌合される部分と前記切欠部に嵌合されない部分の境において、前記第二基材の幅が、前記第一基材の幅の1/4以上2/3以下である請求項1記載のベンチレーションマット。
【請求項3】
前記通気部が、通気性を有する通気性カバーと、該通気性カバーに形成された開口部とからなる請求項1記載のベンチレーションマット。
【請求項4】
前記開口部が複数形成されており、該開口部が、前記通風ガイドにおける前記ベンチレーションマット本体側の端部から遠い位置になるにしたがって大きくなっていく請求項3記載のベンチレーションマット。
【請求項5】
前記第一バリア材が、1枚の非通気性フィルムからなる請求項1記載のベンチレーションマット。
【請求項6】
前記通風ガイドが、前記切欠部に嵌合された部分において、前記第一バリア材に挟持された部分を有する請求項5記載のベンチレーションマット。
【請求項7】
前記第一バリア材、前記第二バリア材、前記第一基材及び前記第二基材が、縫製によって固定されている請求項1記載のベンチレーションマット。
【請求項8】
前記第一バリア材、前記第二バリア材、前記第一基材、前記第二基材及び前記通気性カバーが、縫製によって固定されている請求項3記載のベンチレーションマット。
【請求項9】
前記第一バリア材と前記第二バリア材の内の一方又は両方が、非通気性フィルムと布体が積層されたものである請求項1記載のベンチレーションマット。
【請求項10】
前記布体が不織布である請求項9記載のベンチレーションマット。
【請求項11】
前記第二基材が、前記第一基材よりも通気性が高い請求項1記載のベンチレーションマット。
【請求項12】
シートクッション材と、表皮カバーと、請求項1~11何れか記載のベンチレーションマットを有し、
前記シートクッション材が前記表皮カバーに覆われており、
前記シートクッション材に貫通孔が形成されており、
前記貫通孔に前記通風ガイドが配置されており、
前記シートクッション材と前記表皮カバーとの間に前記ベンチレーションマット本体が配置されている座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車等に設置される座席とそれに使用されるベンチレーションマットに係り、特に、座席を通じて送風等を行う場合に適した構成とすることが可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の座席に、特に周囲の温度や湿度が高い条件の下で長時間に渡って着座する場合、座席の表面と人体接触部に「蒸れ」や「べたつき感」が生じる。この「蒸れ」や「べたつき感」は着座者の快適感を損なう原因となることから、従来からこのような問題に対する対策が種々検討されている。
【0003】
このような検討の一つとして、例えば、当該特許出願人より特許文献1,2のような提案がなされている。特許文献1、2には、送風装置としてベンチレーションマットが組込まれた座席の概略断面図が示されている。ベンチレーションマットは、ベンチレーションマット本体と通風ガイドから構成されており、ベンチレーションマット本体は、通気性のある立体構造を備えた基材と、基材を覆う非通気性材料からなるサイドバリアとからなり、通風ガイドは、通気性のある立体構造を備えた基材と、基材を覆う非通気性材料からなるチューブとからなるものである。ファンなどの送風源より送られた風は、通風ガイド及びベンチションマット本体の基材を通過して、ベンチレーションマット本体における基材の一方の面を覆う通気性カバーより吹き出し、着座者に送風させる態様となっている。この送風により着座者の「蒸れ」や「べたつき感」が解消されることとなる。又、関連する技術として、例えば特許文献3~8も挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2018/221422:クラベ
【特許文献2】特開2020-32924公報:クラベ
【特許文献3】特開2007-84039公報:ブリヂストン
【特許文献4】特開2017-71368公報:ブリヂストン
【特許文献5】特許第4107033号公報:松下電器産業
【特許文献6】特許第4125721号公報:W.E.T.
【特許文献7】特許第4999455号公報:クラベ
【特許文献8】特許第5430085号公報:クラベ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、ベンチレーションマットに接続される送風源は、座席の下部に配置されることとなり、この送風源と、座席の座面側に配置されるベンチレーションマット本体とが通風ガイドで接続される態様となる。ここで、通風ガイドが長くなると、その分だけ送風源からの風量が減衰してしまうため、できるだけ多くの風量を確保するため、ベンチレーションマット本体と送風源は最短距離で結ばれることが望まれている。また、座席は、車両の用途、特性、デザインによって多様な形態となっている。例えば、座面の両サイドが大きく盛り上がった形状のもの、オットマンと称される座席の前部が跳ね上げられて延長され足を延ばした状態で休息できるようにしたもの、座席の表皮カバーを座席のクッション材に固定するための吊り込み部が複数組合されたものなどが挙げられる。ベンチレーションマットは、この様々な態様の座席に適用できるような設計の自由度を有していることが望まれている。
【0006】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、送風源からの風量の減衰を抑え、且つ、様々な座席の態様に適用できる設計の自由度を有するベンチレーションマットとそれを組み込んだ座席を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく、本発明によるベンチレーションマットは、ベンチレーションマット本体と、前記ベンチレーションマット本体に接続される通風ガイドと、を有し、 前記ベンチレーションマット本体は、 通気性のある立体構造を備える第一基材と、 前記第一基材の周囲を覆い、実質的に通気性を有さない第一バリア材と、前記第一バリア材が存しない通気部と、を有し、 前記通風ガイドは、 通気性のある立体構造を備える第二基材と、 前記第二基材の周囲を覆い、実質的に通気性を有さない第二バリア材と、を有し、前記第一基材に切欠部が形成されるとともに、前記第二基材の一部が前記切欠部に嵌合され、前記第一基材と前記第二基材が空気循環可能なように連通されており、前記ベンチレーションマット本体の一方の主面に前記通気部が形成され、前記ベンチレーションマット本体のもう一方の主面において、前記通風ガイドの前記切欠部に嵌合されない部分が、前記ベンチレーションマット本体と少なくとも一部において重なる方向に延出されているものである。
また、前記通風ガイドの通風方向に直行し、且つ、前記第一基材の主面に平行な方向を幅としたとき、前記通風ガイドにおける前記切欠部に嵌合される部分と前記切欠部に嵌合されない部分の境において、前記第二基材の幅が、前記第一基材の幅の1/3以上1/2以下であることが考えられる。
また、前記通気部が、通気性を有する通気性カバーと、該通気性カバーに形成された開口部とからなることが考えられる。
また、記開口部が複数形成されており、該開口部が、前記通風ガイドにおける前記ベンチレーションマット本体側の端部から遠い位置になるにしたがって大きくなっていくことが考えられる。
また、前記第一バリア材が、1枚の非通気性フィルムからなることが考えられる。
また、前記通風ガイドが、前記切欠部に嵌合された部分において、前記第一バリア材に挟持された部分を有することが考えられる。
また、前記第一バリア材、前記第二バリア材、前記第一基材及び前記第二基材が、縫製によって固定されていることが考えられる。
また、前記第一バリア材、前記第二バリア材、前記第一基材、前記第二基材及び前記通気性カバーが、縫製によって固定されていることが考えられる。
また、前記第一バリア材と前記第二バリア材の内の一方又は両方が、非通気性フィルムと布体が積層されたものであることが考えられる。
また、前記布体が不織布であることが考えられる。
また、前記第二基材が、前記第一基材よりも通気性が高いことが考えられる。
本発明による座席は、シートクッション材と、表皮カバーと、前記のベンチレーションマットを有し、前記シートクッション材が前記表皮カバーに覆われており、前記シートクッション材に貫通孔が形成されており、前記貫通孔に前記通風ガイドが配置されており、前記シートクッション材と前記表皮カバーとの間に前記ベンチレーションマット本体が配置されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるベンチレーションマットによれば、ベンチレーションマット本体の主面の何れの箇所でも通風ガイドを接続できる。そのため、ベンチレーションマット本体と送風源を最短距離で結ぶことができ、風量の減衰を抑えることができる。また、様々な態様の座席であっても、通風ガイドを接続する位置を調整できるので、容易に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のベンチレーションマットの概略図である。
図2】本発明のベンチレーションマットの基材形状を説明する図である。
図3】本発明のベンチレーションマットの組立工程を説明する斜視図である。
図4】本発明のベンチレーションマットを搭載する自動車用シートの概略図である。
図5】本発明のベンチレーションマットを搭載する自動車用シートの概略断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下では、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。以下で説明するベンチレーションマットは、自動車用シートの座面と背もたれとの少なくとも一方に設けられるものである。また、本発明にかかるベンチレーションマットは、自動車用シートのクッション材と、当該クッション材を覆う表皮カバーと、の間に挟み込むように設置される。また、ベンチレーションマットには、送風源としてのファンが設けられ、このファンにより、ベンチレーションマットから空気を吸引する又はベンチレーションマットに空気が流し込まれる。
【0011】
以下の説明では、自動車用シートにベンチレーションマットを設置した状態で、表皮カバー側、つまり座面側に位置する面を表面、自動車用シートのクッション材側に位置する面を裏面と称す。
【0012】
図1に本実施の形態にかかるベンチレーションマット1の概略図を示す。図1(a)は、ベンチレーションマット1の上面図を示し、図1(b)は、ベンチレーションマット1の下面図を示す。上面図(図1(a))は、本実施の形態にかかるベンチレーションマット1の表面側の構成を示すものであり、下面図(図1(b))は、本実施の形態にかかるベンチレーションマット1の裏面側の構成を示すものである。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態にかかるベンチレーションマット1は、ベンチレーションマット本体10と、通風ガイド20を有している。このようなベンチレーションマット1は、通風ガイド20が、一端にファン取り付け孔24が設けられ、他端がベンチレーションマット本体10に接続されることで形成される。
【0014】
ベンチレーションマット本体10は、例えば、第一基材12、第一バリア材11、通気性カバー13を備えるものが考えられる。また、通気性カバーには、開口部15が形成されることが考えられる。本実施の形態における第一基材12は、スペーサとして機能するものであり、通気性のある立体構造を備えるシートである。第一基材12は、例えば、繊維を立体的に編んだ3Dメッシュシートである。この3Dメッシュシートを所定形状に切り出す際には、レーザ溶断により加工することが好ましい。これにより、端面のほつれにより繊維クズが発生することを防止することができる。
【0015】
第一バリア材11は、通気性カバー13よりも通気性が低いものであって実質的に通気性を有しないものであり、第一基材12の周囲を覆う。バリア材11は、第一基材12に、例えば、接着剤や粘着剤で接着される、或いは、第一基材12に縫製される、溶着されるなどの形態で第一基材12の外周を覆う。特に縫製であれば、熱的又は経時的な影響によって接着力が低下することがないため好ましい。
【0016】
通気性カバー13は、布で形成され、全体が通気性を備え、第一基材12の表面を覆う。なお、通気性カバー13が第一基材12を覆う面積は、第一基材12のうちバリア材11で覆われていない領域である。
【0017】
通気性カバー13は、例えば、不織布のような繊維素材であって、高い通気性を有するものが好ましい。一方、第一バリア材11は、通気性カバー13よりも通気性が低い素材を選択する。本実施の形態においては、第一バリア材11として、ポリエステル繊維で補強したポリウレタンフィルムを使用した。
【0018】
本実施の形態においては、通気性カバー13には、開口部15a、15b及び15cが形成されている。通風ガイド20におけるベンチレーションマット本体11側の端部から遠い順に開口部15a、開口部15b、開口部15cが形成されており、開口部の大きさは、大きい順に開口部15a、開口部15b、開口部15cとなっている。上記の通気性カバー13と開口部15a、15b及び15cにより、通気部が構成される。
【0019】
通風ガイド20は、非通気性材料からなる第二バリア材21と、通気性のある立体構造を備える第二基材22により構成され、内部に通風路が形成される。この第二基材22は、第一基材12と同じ素材、例えば、繊維を立体的に編んだ3Dメッシュシートを用いることができる。また、第二バリア材21については、第一バリア材11と同じ素材を用いることができる。本実施の形態においては、第二バリア材21として、ポリエチレンフィルムと難燃性ポリエステル繊維からなる不織布を積層したものを使用した。なお、第二基材22の側がポリエチレンフィルムとなるよう、第二バリア材21を配置した。
【0020】
通風ガイド20の一端には、第二基材22が露出するように開口部が設けられる。この開口部は、プラスチック素材で形成された型が嵌め込まれ、ファン取り付け孔24となる。通風ガイド20の他端は、第一バリア材11に設けられた接続孔17に差し込まれる。また、第一基材12には、図2に示すように、切欠部16が形成されており、この切欠部16に、通風ガイド20(第二基材22)が嵌合される。
【0021】
ここで、ベンチレーションマット1の組立方法についてさらに詳細に説明する。図3に本実施の形態にかかるベンチレーションマット1の組立方法を説明する図を示す。なお、図3においては便宜上、通風ガイド20における送風方向(図3における右上から左下の方向)のことを長さ方向、通風ガイド20における送風方向と直行し且つベンチレーションマット本体10の主面と平行な方向(図3における左上から右下の方向)のことを幅方向、ベンチレーションマット本体10の主面と垂直な方向(図3における上下方向)のことを厚さ方向と記すことがある。また、図3においては、上側がベンチレーションマット1の裏面となり、下側がベンチレーションマット1の表面となる。
【0022】
まず、図3(a)に示すような形状の1枚の第一バリア材11を用意し、この第一バリア材11の上に、通気性カバー13と第一基材12を順に重ねる。次いで、図3(b)に示すように、第一バリア材11に形成された接続孔17に通風ガイド20の片端が差し込まれる。なお、通風ガイド20における接続孔17に差し込まれる部分は第二バリア材21が除かれており第二基材22が露出した状態となっている。この第二基材22が露出した部分は、第一基材12における切欠部16の長さよりやや小さくなっている。この状態で、図3(c)に示すように、第一バリア材11を第一基材12の幅方向の外周に沿って折り曲げ、同時に、通風ガイド20の片端を第一基材12の切欠部16に嵌合させる。次いで、図3(d)に示すように、第一バリア材11を第一基材12の長さ方向の外周に沿って折り曲げる。併せて、図3(e)に示すように、第一バリア材11を第一基材12の幅方向の外周に沿って折り曲げる。この際、第一バリア材11の先端の幅は通風ガイド20の幅と略同寸法となっているので、この第一バリア材11の先端を通風ガイド20と第一基材12の間に入るように接続孔17に差し込む。そして、図3(f)に示すように、第一基材12の外周を縫製によって縫糸30で固定するとともに、接続孔17よりやや先端側の部分(即ち、通風ガイド20における切欠部16に嵌合した側の片端に近い部分)についても縫製によって縫糸30で固定する。このようにして、ベンチレーションマット1は組立てられる。
【0023】
本実施の形態においては、通風ガイド20が、前記ベンチレーションマット本体10と少なくとも一部において重なる方向に延出されるようになっている。このような形態の通風ガイド20とベンチレーションマット本体10の接続構造であれば、ベンチレーションマット本体10の主面の何れの箇所でも通風ガイド20を接続できる。そのため、ベンチレーションマット本体10と送風源(ファン40)を最短距離で結ぶことができ、風量の減衰を抑えることができる。また、通風ガイド20を接続する位置をいかようにも調整できるので、様々な態様の座席であっても、容易に適用することができるようになる。なお、本発明のベンチレーションマット1は、通風ガイド20を屈曲して使用することもできるが、本発明で言うところの「少なくとも一部において重なる」とは、屈曲した後の状態ではなく、屈曲する前、即ち、通風ガイド20を屈曲せず平面状に配置した状態で判断される。
【0024】
また、縫製によって第一バリア材11、第二バリア材21、第一基材12、第二基材22及び通気性カバー13が機械的に固定されることになる。例えば、接着剤や熱融着による固定であると、高温環境下や長時間の経過によって、接着剤や熱融着部が劣化して剥がれてしまう恐れがあるが、縫製であればこのようなことはない。なお、第一バリア材11、第二バリア材21、第一基材12、第二基材22及び通気性カバー13の全てが1つの縫製(縫糸30)で固定されている必要はなく、複数の縫糸によってそれぞれが個別に固定されていれば良い。勿論、縫製だけで固定するのではなく、接着剤や熱融着部を組合せてこれらを固定することも考えられる。
【0025】
また、図3(e)に示すように、本実施の形態では、第一バリア材11の先端が、通風ガイド20と第一基材12の間に入るように接続孔17に差し込まれている。そして、図3(f)に示すように、通風ガイド20(第二バリア材21及び第二基材22)は、この第一バリア材11の先端と、第一バリア材11の他の部分に挟持された状態で、縫糸30によって固定されている。そのため、接続孔17近傍からの送風の漏れをより最小限に抑えることができる。
【0026】
また、本実施の形態では、通風ガイド20における切欠部16に嵌合される部分と嵌合されない部分の境において、第二基材22の幅が、前記第一基材12の幅の1/2となっている。これにより、通風ガイド20からの送風が、通風ガイド20の横を通って第一基材12全体に広がることになり、第一基材12の末端でも十分に送風がなされることになる。
【0027】
続いて、本実施の形態にかかるベンチレーションマット1の自動車用シートへの組込み形態について説明する。そこで、図4及び図5に本実施の形態にかかるベンチレーションマット1を搭載する自動車用シートの概略図を示す。図4及び図5に示す自動車用シート60は、背もたれ61及び座面62を有するものであり、本実施の形態によるベンチレーションマットは座面62に設置される。本実施の形態にかかるベンチレーションマット1は、実際には表皮カバー65の下に設置されるため、表皮カバー65に隠れた状態で自動車用シート60に搭載される。そこで、図4に示す概略図では、自動車用シート60において、ベンチレーションマット1が設置される部分を網掛け模様で示した。なお、通風ガイド20については、ファン取り付け孔24が自動車用シート60の裏面側に回り込むように取り回しがなされる。本実施の形態においては、図5に示すように、クッション材64に形成された貫通孔に通風ガイド20が配置されることとなり、送風源となるファン40とベンチレーションマット本体10が接続されることとなる。ファン40は、送風機取付具46によりシートフレーム67に取付けられるとともに、通風ガイド20のファン取り付け孔24に取付けられる。
【0028】
また、本実施の形態において、通風ガイド20は、送風源に接続するために、ベンチレーションマット本体10の主面と垂直の方向に曲げられ、その曲げられた部分がクッション材64に形成された貫通孔に挿通され、更にその先の部分で送風源となるファン40に接続され固定される。本発明によるベンチレーションマット1であれば、通風ガイド20の曲げられた箇所の周囲が、第一基材12と第二基材22で囲われることになる。これにより、クッション材64に形成された貫通孔の周囲を第一基材12及び第二基材22で囲って支えることになるため、着座者が貫通孔による違和感を受けにくくなる。
【0029】
また、通風ガイド20を曲げて使用する際、第二基材22として反発力が強いものを使用すると、その反発力によって、曲げた部分の近傍が浮き上がってしまうことが懸念される。ここで、本実施の形態では、接続孔17の近傍も縫糸30で固定されていることで、縫糸30が支点となって通風ガイド20が曲がりやすくなる。これにより、通風ガイド20を曲げた際にも、曲げた部分の近傍の浮き上がりを抑止することができる。
【0030】
また、本実施の形態にかかるベンチレーションマット1は、簡単な形状の部品を組合せることで形成されるため、ベンチレーションマット1の構成部品の材料利用効率が高い(例えば、1つの材料に占める廃棄材料に対する利用可能材料の比率が高い)。つまり、材料の利用効率が高まることで、本実施の形態にかかるベンチレーションマット1は、製造コストを低減することができる。
【0031】
本発明によるベンチレーションマット1を自動車用シート60に組込む際、例えば、ベンチレーションマット本体10等を、クッション材64上に粘着テープ等で固定することが考えられる。このような態様のみでなく、例えば、クッション材64を成形する際、予めベンチレーションマット本体10等を成形型内に配置しておき、そこにクッション材の材料を流し込んだ後、クッション材の材料を発泡硬化させることも考えられる。この場合、ベンチレーションマット本体1等とクッション材64が確実に固定されて位置ズレを防止することができる。このような工法は、カーシートヒータの技術分野で一般的なものであり、例えば、特許文献5等が参照できる。
【0032】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、本発明によるベンチレーションマットを座面62側ではなく、背もたれ61側に配置することも可能であるし、座面62側と背もたれ61側の両方に配置することも可能である。
【0033】
本実施の形態では、ベンチレーションマット本体は1つのみであるが、例えば、第一のベンチレーションマット本体と第二のベンチレーションマット本体を接続マットで接続したものであっても良い。この接続マットは、ベンチレーションマット本体と同様の構造のものが使用できる。勿論、接続マットは1つでも良いし、2つ以上であっても良い。また、ベンチレーションマット本体は2つ以上であっても良い。
【0034】
第一バリア材11や第二バリア材としては、例えば、不織布、スパンボンド不織布、織布、フィルム、ゴム引き布を用いることができる。ここで、不織布、スパンボンド不織布及び織布の素材は、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維等が考えられる。また、フィルムの素材としては、ポリエチレン、ポリビニル、ポリプロピレン、PET、塩化ビニル、ポリウレタン、各種熱可塑性エラストマー等が考えられる。また、種々の繊維で補強したフィルムを使用しても良い。ゴム引き布は、繊維に気密性を与える加工をしたものである。この中でも、第一バリア材11や第二バリア材12の材料として、非通気性フィルムと布体が積層されたものであることが好ましい。ここでの布体とは、例えば、織布、スパンボンド不織布、織布、ゴム引き布が挙げられ、特に難燃性の不織布が好ましい。第一バリア材11と第二バリア材12の一方または両方が、非通気性フィルムと布体が積層されたものであるため、破断強度と耐摩耗性が向上し、摩擦に起因した摩耗、破断及び割れを防止することができる。また、布体の存在により、他の材料と擦れた際にも、異音を発生することがない。布体の中でも、不織布がこのような効果を最も良く得ることができる。なお、第一バリア材11と第二バリア材12の内、より強く摩擦力を受ける方について、非通気性フィルムと布体が積層されたものとすればよいが、もちろん両方について非通気性フィルムと布体が積層されたものとしてもよい。
【0035】
また、第一バリア材11と第二バリア材21について、非通気性フィルムと布体が積層されたものを使用する場合、基材(第一基材12、第二基材22)に対する側が非通気性フィルムとなっていることが好ましい。これにより、外面側が布体になるので、ベンチレーションマット本体や通風ガイドが他部材と擦れた際の摩擦に強くなり、また、異音の発生も防止できる。一方、基材(第一基材12、第二基材22)に対する側が布体となっていることも考えられる。この場合は、基材(第一基材12、第二基材22)と擦れた際の摩擦に強くなり、また、異音の発生も防止できる。第一バリア材11と第二バリア材21について、非通気性フィルムが2枚の布体で挟持され積層されたものであれば、内外の部材との摩擦に対応できるため、最も好ましい。
【0036】
また、上記の通り、通風ガイド20にはファン40が取付けられる。この取付け部分には、取付け部分からの空気の漏れを防止するため、通常は、ゴム材料や発泡樹脂材料のようなクッション性のある接続部材(図示しない)が使用され、接続部材が圧縮された状態で通風ガイド20とファン40が取付けられる。ここで、第二バリア材21について、外側が布体となるようにして、非通気性フィルムと布体が積層されたものを使用すると、この接続部材を省略することができる。即ち、布体は十分なクッション性があり、圧縮することで空気の漏れを遮断することができる。そのため、接続部材がなくても、通風ガイド20にはファン40の取付け部分からの空気の漏れを防止することができる。
【0037】
第一基材12や第二基材22としては、例えば、ダブルラッセルや3Dメッシュシートのような繊維を立体的に編んだ立体編物、繊維が三次元状に複雑に絡み合ってできた構造体、連続気泡を有するフォーム材(スポンジ)、ゴムチューブを並べたもの等を用いることができる。立体編物としては、例えば、旭化成社製のフュージョン(登録商標)、住江織物社製のスウィングネット(登録商標)、ミュラーテキスタイル社製の3mesh(登録商標)、ユニチカ社製のキュービックアイ(登録商標)等が挙げられる。繊維が三次元状に絡み合ってできた構造体としては、例えば、東洋紡社製のブレスエアー(登録商標)等が挙げられる。連続気泡を有するフォーム材やゴムチューブを構成する材料としては、例えば、ウレタン、EPDM、クロロプレン、イソプレン、シリコーン、各種熱可塑性エラストマー等の材料が使用される。これら第一基材12や第二基材22は、通気しやすい方向と通気しにくい方向のような方向性を持つものも考えられる。例えば、立体編物のようなものだと、断続的に断面当たりの繊維の密度が高くなる(本数が多くなる)部分が形成されるような方向や、連続的に繊維の密度が低くなる(本数が少なくなる)部分を有するような方向が形成されるようなものがある。この場合、繊維の密度が低い(本数が少ない)方が通気しやすいことになる。このような方向性を持つ第一基材12や第二基材22を使用する場合は、実際に通気がなされる方向である空気流動方向が、第一基材12や第二基材22における通気しやすい方向、例えば、連続的に繊維の密度が低くなる(本数が少なくなる)部分を有するような方向と同じ方向であることが好ましい。
【0038】
また、第一基材12は、ベンチレーションマット本体10の構成部品として着座者の下に配置されるものであるため、着座の圧力に耐えうるための耐久性を有することが好ましい。一方で、第二基材22は通風ガイド20の構成部品となり、それほど圧力はかからないため、送風が減衰しないように通気性を重視したものであることが好ましい。このため、第二基材22が、第一基材12よりも通気性が高いことが好ましい。
【0039】
第一基材12における切欠部16の形状は任意であり、本実施の形態のような長方形だけでなく、円形や多角形やこれらを組合せた形状であっても良い。切欠部16の形状は、嵌合される第二基材22の片端部の形状に適合した形状とすることが好ましい。第二基材22を嵌合させる際の位置合わせを適正にするため、切欠部16及び第二基材22の片端部の形状を、それぞれが適合するような段付きの形状等にすることも考えられる。また、第一基材12における切欠部16の位置も任意である。ファン40の取付け位置や座席の形状、或いは、座席のクッション材に形成される貫通孔の位置などに応じて適宜設定することができる。本実施の形態において、切欠部16は、第一基材12の外周に接した箇所に形成されているが、例えば、第一基材12の中心部近傍を打抜いて、その箇所を切欠部16とすることも考えられる。
【0040】
本実施の形態においては、通風ガイド20における切欠部16に嵌合される部分と嵌合されない部分の境(以下、単に境と記すことがある)において、第二基材22の幅が、第一基材12の幅の1/2となっている。この境の部分における第二基材22の幅が、第一基材12の幅に対して大きすぎると、通風ガイド20からの送風が、第一基材12全体に伝わりにくくなってしまう。通風ガイド20からの送風は、切欠部16から通風ガイド20と第一バリア材11の間に位置する第一基材12を通過して、第一基材12全体に広がっている。第二基材22の幅が大きすぎると、この送風が通過する部分が狭くなってしまうことになる。そのため、境の部分における第二基材22の幅が、第一基材12の幅の2/3以下であることが好ましく、1/2以下であることが特に好ましい。一方で、この境の部分における第二基材22の幅が、第一基材12の幅に対して小さすぎると、圧力損失が大きくなり、送風源からの送風が十分になされないことになってしまう。そのため、境の部分における第二基材22の幅が、第一基材12の幅の1/4以上であることが好ましく、1/3以上であることが特に好ましい。
【0041】
本実施の形態においては、通気部として、通気性を有する通気性カバー13と、通気性カバー13に形成された開口部15a,15b,15cとからなるものを例示したが、これに限定されることはない。例えば、開口部なしに全て通気性カバー13で覆われているものや、逆に通気性カバー13を使用せず第1バリア材12に囲われた部分が全て開口部となっているものも考えられる。また、開口部の位置や形状や個数も任意であり、必要特性に応じて適宜設計すればよい。本実施の形態においては、通風ガイド20におけるベンチレーションマット本体11側の端部から遠い順に開口部15a、開口部15b、開口部15cが形成されており、開口部の大きさは、大きい順に開口部15a、開口部15b、開口部15cとなっている。このように、複数の開口部を形成する際は、通風ガイド20におけるベンチレーションマット本体10側の端部から遠い位置になるにしたがって大きくなっていくように、開口部の位置と大きさを設計することが好ましい。これにより、各開口部からの送風量の均一化を図ることができる。
【0042】
また、ベンチレーションマット本体10の裏面には、通気性カバー13が設けられておらず、第一バリア材11で囲まれる部分が開口面となっていてもよく、この開口面においては第一基材12が露出することも考えられる。
【0043】
また、本実施の形態では、送風源からの送風という記載をしているが、本発明は、送風源から風を吹き出す形態と、送風源により風を吸い込む形態の両方の形態で適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上詳述したように本発明のベンチレーションマットは、送風源からの風量の減衰を抑え、且つ、様々な座席の態様に適用できる設計の自由度を有する。その用途としては、自動車の座席以外にも、例えば、自動二輪車や鉄道車両等の車両座席でも良いし、チャイルドシート、土木建築用重機の座席、船舶や航空機などの座席、遊園地の観覧車の座席、各種競技場の観覧席、劇場や映画館等の鑑賞用座席、駅やテーマパーク、屋外公園等に設置されたベンチ、家庭内やオフィスで使用されるソファーや座椅子、理髪店の椅子、各種医療機関で使用されている医療用の椅子などへの適用も考えられる。また、座席のみならず、例えば、ベッド、ベビーカーなど、幅広く応用が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 ベンチレーションマット
10 ベンチレーションマット本体
11 第一バリア材
12 第一基材
13 通気性カバー
15a,15b,15c 開口部
16 切欠部
17 接続孔
20 通風ガイド
21 第二バリア材
22 第二基材
24 ファン取り付け孔
30 縫糸
40 ファン
60 自動車用シート
61 背もたれ
62 座面
64 クッション材
65 表皮カバー
図1
図2
図3
図4
図5