(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112770
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】洗車装置
(51)【国際特許分類】
B60S 3/04 20060101AFI20230807BHJP
【FI】
B60S3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014681
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青木 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 遥
【テーマコード(参考)】
3D026
【Fターム(参考)】
3D026AA03
3D026AA13
3D026AA25
3D026AA34
3D026AA40
3D026AA76
(57)【要約】
【課題】
車両の色、形状、状態などに影響されず、車両進入時の位置ずれを検出可能な洗車装置を提供する
【解決手段】
洗車装置10は、撮像部(19a、19b)と、識別対象物(20a、20b)と、制御部(50)を有する洗車装置であって、前記制御部は、前記撮像部により撮影された画像内の前記識別対象物を識別する対象物識別手段(59)と、前記対象物識別手段の識別結果をもとに洗浄処理を受ける車両の位置を判定可能な車両位置判定手段(60)を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部と、識別対象物と、制御部を有する洗車装置であって、
前記制御部は、
前記撮像部により撮影された画像内の前記識別対象物を識別する対象物識別手段と、
前記対象物識別手段の識別結果をもとに洗浄処理を受ける車両の位置を判定可能な車両位置判定手段を有する
ことを特徴とする洗車装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記撮像装置により撮影された画像内の物体に輪郭抽出処理を行う画像処理手段を有し、
前記対象物識別手段は、前記画像処理手段により抽出された輪郭線から前記識別対象物を識別する
ことを特徴とする請求項1に記載の洗車装置。
【請求項3】
前記洗車装置は、門型状に形成された本体部と、地面上に設けられた複数のレールを有し、
前記本体部は、前記複数のレール上を走行可能であり、
前記識別対象物は、前記複数のレール間において各前記レール沿いに設けられ、
前記本体部は、前記識別対象物の間に停止した前記車両を跨いで走行し、該車両を洗浄可能である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の洗車装置。
【請求項4】
前記洗車装置は発報手段を有し、前記車両位置判定手段の判定結果に応じて前記車両の運転者に対して発報可能である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の洗車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第6840471号(以下、「特許文献1」という。)には、洗浄前の被洗浄車両を撮像して検出することにより、不適切な状態での洗浄実行を防止可能な洗車機が記載されている。特許文献1においては、洗浄に不適切な状態の例として、被洗浄車両の停止位置のずれが挙げられている。一般に洗車装置は、洗浄開始前に被洗浄車両を所定位置で停止させる必要がある。車両の停止位置が所定位置からずれていると、例えば洗浄処理が途中停止するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている洗車機は、被洗浄車両が適正な停止位置にあることを確認するため、車両を撮像し、その輪郭を抽出して車両の位置を検出する。しかしながら、昨今の自動車はデザイン性に富んでおり、色も形状も様々であるため、検出の難易度が高い。洗浄を受けようとする車両は泥や雪にまみれている場合も多い。従来の洗車装置は、こうした不確定要素や検出困難性のために車両進入時における車両の位置ずれを画像から正しく検出できず、不適切な状態で洗車を開始してしまうおそれがあった。
【0005】
本発明の一目的は、車両の色、形状、状態などに影響されず、車両進入時の位置ずれを検出可能な洗車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一解決手段に係る洗車装置は、撮像部と、識別対象物と、制御部を有する洗車装置であって、前記制御部は、前記撮像部により撮影された画像内の前記識別対象物を識別する対象物識別手段と、前記対象物識別手段の識別結果をもとに洗浄処理を受ける車両の位置を判定可能な車両位置判定手段を有することを一特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
一解決手段によれば、車両の位置ずれを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る洗車装置10の模式的な正面図である。
【
図2】
図1に示す洗車装置の模式的な側面図である。
【
図3】
図1に示す洗車装置が有するカメラ19aおよび19bの撮像可能範囲を示す模式的な上面図である。
【
図4】
図1に示す洗車装置が有するカメラ19aおよび19bの撮像可能範囲を示す模式的な側面図である。
【
図5】
図1に示す洗車装置が有するカメラ19aおよび19bによるガイド20aおよび20bの撮像処理の様子を表す概念図である。
【
図6】
図1に示す洗車装置の制御系を示すブロック図である。
【
図7】
図1に示す洗車装置が有するガイド20aおよび20bに車両Cがかぶさっている状況の一例を示す概念図である。
【
図8】
図1に示す洗車装置における洗車受付時の処理を示すフロー図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る洗車装置10Aの制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらは互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0010】
(実施形態1)
図1は本実施形態に係る洗車装置10の模式的な正面図、
図2は洗車装置10の模式的な側面図である。
【0011】
洗車装置10は、地面G(敷設面)に起立して設けられた本体部11を備えている。本体部11は、処理対象となる車両Cを跨ぐように門型状のフレーム(筐体)で構成されている。このため、本体部11は、地面Gから起立する一対の脚フレーム11aと、この一対の脚フレーム11aにかかる梁フレーム11bとを有する。
【0012】
また、洗車装置10は、一対のレール12と、車輪13と、車輪14とを備えている。一対のレール12は、互いが平行となるように延在して地面Gに設けられている。車輪13および車輪14は、一対の脚フレーム11aの底部にそれぞれ設けられている。洗車装置10では、車輪13を駆動輪、車輪14を従動輪としている。本体部11は、この一対のレール12間に車両Cが停車した状態で、レール12上を車輪13および車輪14(計4輪)を介して前後に移動(往復走行)可能である。なお、
図2の右側(例えば車両Cや受付装置51が図示されている側)が本体部11の前方向、左側が後方向となる。
【0013】
また、洗車装置10は、走行用モータ15と走行用エンコーダ16を備えている。走行用モータ15は、地面Gに対して車輪13よりも高い位置から車輪13と接続されるように本体部11の一対の脚フレーム11aそれぞれに設けられている。走行用モータ15は正逆転可能に構成されており、車輪13(駆動輪)を介して本体部11を前後に移動させる。走行用エンコーダ16は、本体部11の脚フレーム11aの一方に設けられており、その一方側の走行用モータ15の出力軸に連結されている。走行用エンコーダ16は、レール12上における本体部11の走行位置を検出する。すなわち、走行用エンコーダ16は、走行用モータ15の回転方向(すなわち車輪13の回転方向)を検出しながら単位角度回転ごとにパルス信号を出力する。
【0014】
また、洗車装置10は、前後スイッチ17と、ドック18aと、ドック18bとを備えている。前後スイッチ17は、脚フレーム11aの一方の底部に設けられている。また、ドック18aは、一方のレール12の一端側(本体部11の前後方向前側)に設けられ、ドック18bは、同じレール12の他端側(前後方向後側)に設けられている。前後スイッチ17は、本体部11の移動によりドック18aまたは18bでスイッチングし、ドック18aとドック18bとの間で本体部11の移動限界を検出する。このため、本体部11は、停車した車両Cを跨いで車長方向に通過するように移動限界の範囲内で移動することができる。なお、洗車装置10が入車待ちの状態(待機状態)では、本体部11は前後スイッチ17がドック18bとスイッチングして停止した状態にある。本説明においては、このようにして停止した状態での本体部11の位置を、本体部11の待機位置とする。
【0015】
また、洗車装置10は、本体部11の前方を撮像可能なカメラ19aと、カメラ19bとを備えている。さらに洗車装置11は、一対のレール12沿いにガイド20aと、ガイド20bとを備えている。本実施形態におけるカメラ19aおよび19b、ガイド20aおよび20bの設置位置などについて、
図3~
図5を用いて説明する。
【0016】
カメラ19aおよび19bは、後述するガイド20aまたは20b(請求項に記載の識別対象物)の全部または大部分がその撮像範囲に収まるよう、門型状に形成される本体部11に(あるいは本体部11の周辺に)配置される。より具体的には、カメラ19aはガイド20aの全部または大部分を、カメラ19bはガイド20bの全部または大部分を撮像可能なように配置される。
【0017】
カメラ19aおよび19bは、前記した条件を満たす位置であればどのような位置に配置されてもよい。本実施形態においては、カメラ19aおよび19bは本体部11の前面に治具で固定されており、かつカメラ19aはガイド20aの延長線上に、カメラ19bはガイド20bの延長線上に配置されている。なお、カメラ19aおよび19bは、例えば本体部11と向かい合うようにして
図3における一対のレール12の他端側に設けられても良い。例えば後述するゲート装置23の遮断桿などに搭載してもよい。
【0018】
カメラ19aおよび19bにより撮像されるガイド20aおよび20b(請求項に記載の識別対象物)は、一対のレール12に沿ってレール12間の地面G上に設けられる。本実施形態において、ガイド20aおよび20bは、地面G上に塗料などで描かれた線として設けられる。
【0019】
ガイド20aおよび20bは、洗浄処理を受ける車両Cがレール12間を進行して適正停止範囲(
図3中の範囲L)に近づく際の位置指標としての機能を有する。車両Cは、ガイド20aおよび20bに沿ってレール12間を進行することで、わかりやすく適正停止範囲にたどり着くことができる。車両Cがガイド20aまたは20bのいずれかを踏み越えていたり、いずれかにかぶさっていたりするとき、車両Cが適正停止範囲からはみだしていることがわかる。ガイド20aおよび20bはそのような位置に設けられる。
【0020】
ガイド20aおよび20bは、前記した位置指標としての機能のために、地面Gから際立つ色で描くと良い。また、ガイド20aおよび20bは、踏み越えられた際に車両Cの運転者がそれを認識しやすいよう、レールやパイプなどの立体物により形成してもよい。立体物によりガイド20aおよび20bを形成する場合、車両Cから洗い落とされる泥などが残留しにくい形状にするとなおよい。
【0021】
また、洗車装置10は、一対のレール12間にタイヤ検出装置21を備えている。タイヤ検出装置21は、投光ユニット21aと受光ユニット21bを有する公知の光電センサを有する。タイヤ検出装置21は適正停止範囲内を進行する車両Cのタイヤによって投光ユニット21aの投光が遮られるよう設けられる。タイヤ検出装置21は、レール12間を進行する車両Cが適正停止範囲に進入しきったことを検出することができる。
【0022】
なお、適正停止範囲は、本体部の構造などにより洗車装置ごとに求められるものであるが、本実施形態における洗車装置10は、一例として
図3の範囲Lを車両Cの適正停止範囲としている。車両Cは本体部11による洗浄処理を受けるにあたり、本体部11と車両Cとが衝突しないよう、車体全体が範囲L内に収まっている必要がある。
【0023】
また、洗車装置10は、表示装置22を備えている。表示装置22は、本体部11の後方などに設置される。表示装置22は、例えば複数のLEDが配列された表示部を有し、任意の文字や記号を表示する機能を有している。洗車装置10は、例えば洗浄処理開始前には表示装置22により「前進」などの表示を行い、車両Cに進入を促す。タイヤ検出ユニット21の投光ユニット21aの投光が遮光されたら、車両Cが適正停止範囲に進入しきったとして「停止」などの表示を行い、車両Cを停車させる。洗浄処理終了後には「退出」などの表示を行い、車両Cに退出を促す。
【0024】
また、洗車装置10は、ゲート装置23を備えている。ゲート装置23は上下に揺動する遮断桿を有している。ゲート装置23の遮断桿は、例えば後述する受付装置51により洗車受付(洗浄処理実行予約)がなされた場合などに必要に応じて開放される。ゲート装置23は、車両Cの洗浄処理中などに本体部11の走行範囲内に他の車両が近づくことを防止する。
【0025】
また、洗車装置10は、洗浄処理装置として、本体部11に設けられたトップブラシ30および一対のサイドブラシ31を備えている。トップブラシ30(回転ブラシ)は、待機時には門型状の本体部11の梁フレーム11bに収容されている。トップブラシ30は、可動部として本体部11の移動に伴って回転しながら上下に昇降し、主に車両Cの上面をブラッシングすることができる。また、一対のサイドブラシ31(回転ブラシ)は、それぞれ待機時には門型状の本体部11の脚フレーム11aに収容されている。一対のサイドブラシ31は、可動部として本体部11の移動に伴って回転しながら開閉動作(互いが近づいたり離れたりする動作)し、主に車両Cの前面、側面、および後面をブラッシングすることができる。
【0026】
また、洗車装置10は、洗浄処理装置として、本体部11に設けられるトップスプレー32および一対のサイドスプレー33を備えている。トップスプレー32は、門型状の本体部11の梁フレーム11bに収容されている。トップスプレー32は、本体部11の移動に伴ってパイプに設けられた複数の噴射ノズル(不図示)から水や洗浄剤などの洗浄液を噴射し、主に車両Cの上面を洗浄することができる。また、一対のサイドスプレー33は、それぞれ門型状の本体部11の脚フレーム11aに収容されている。一対のサイドスプレー33は、本体部11の移動に伴ってパイプに設けられた複数の噴射ノズル(不図示)から水や洗浄剤などの洗浄液を噴射し、主に車両Cの側面を洗浄することができる。なお、洗車装置10では、本体部11の前進に伴って車両Cをブラッシング洗浄するため、トップスプレー32およびサイドスプレー33はトップブラシ30およびサイドブラシ31よりも本体部11の前側に設けられている。
【0027】
また、洗車装置10は、洗浄処理装置として、本体部11に設けられるトップノズル34(ブロワノズル)および一対のサイドノズル35(ブロワノズル)を備えている。トップノズル34は、待機時には門型状の本体部11の梁フレーム11bに収容されている。トップノズル34は、可動部として本体部11の移動に伴って送風しながら車両Cと接触せずに上下に昇降し、主に車両Cの上面を乾燥することができる。また、一対のサイドノズル35は、それぞれ待機時には門型状の本体部11の脚フレーム11aに収容されている。一対のサイドノズル35は、可動部として本体部11の移動に伴って送風しながら車両Cと接触せずに開閉動作し、主に車両Cの側面を乾燥することができる。
【0028】
また、洗車装置10は、本体部11に、車両Cの形状を検出する車両検出部36を備えている。車両検出部36は、本体部11の前側で本体部11の起立方向(車両Cの車高方向)に延在して設けられている。車両検出部36は、例えば光電センサを用いた公知の手法により車両Cの形状を検出することができる。より具体的には、本体部11の移動に伴い、車両Cの側方からの形状(シルエット)を読み取ることができる。なお、洗車装置10は本体部11の前進に伴い車両Cの形状に沿ってブラッシング洗浄するため、車両検出部36はトップブラシ30およびサイドブラシ31よりも本体部11の前側に設けられている。
【0029】
洗車装置10は、車両検出部36の検出結果をもとにトップブラシ30やトップノズル34などの洗浄処理装置を駆動する。車両検出部36で取得した車両Cの形状に沿って処理装置を駆動することにより、例えばブラッシング時にトップブラシ30が車両Cに強く押し当てられることを防止したり、乾燥時にトップノズル34が車両Cと接触することを防止したりすることができる。
【0030】
図6は本実施形態の制御系を示すブロック図である。洗車装置10は、
図6に示す制御部50(例えば半導体素子や、これを搭載した電子基板)を備えている。制御部50は本体部11に設けられ、走行用エンコーダ16、前後スイッチ17、タイヤ検出装置21、表示装置22、ゲート装置23、車両検出部36、受付装置51、駆動部52と電気的に接続されている。制御部50は、受付装置51などからの信号やデータに基づき、予めプログラムされたシーケンス(手段)を実行する。
【0031】
制御部50は、走行検出手段53と、車形検出手段54と、車形データ作成手段55と、車形データ記憶手段56と、処理手段57を有する。
【0032】
走行検出手段53は、走行用エンコーダ16のパルス信号および前後スイッチ17の信号から本体部11の走行位置(移動位置)を検出することができる。車形検出手段54は、走行用エンコーダ16のパルス信号をトリガに単位距離移動する毎に車両検出部36を駆動し、車両Cの上面形状を検出することができる。車形データ作成手段55は、走行検出手段53と車形検出手段54の検出結果から車形データ(車両の形状データ)を作成することができる。車形データ記憶手段56は、車形データを記憶することができる。処理手段57は、車形データなどをもとに駆動部52を介して各種の洗浄処理装置や走行用モータ15などの駆動を制御することができる。
【0033】
制御部50は、さらに輪郭線抽出手段58と、対象物識別手段59と、はみ出し判定手段60を有する。輪郭線抽出手段58は、カメラ19aおよび19bが撮影した画像上に存在する物体の輪郭線を抽出することができる。より具体的には、輪郭線抽出手段58は、画像における特定の座標範囲(少なくともガイド20a、20bのいずれかが写っている範囲)に注目し、その座標範囲内の画素値に平滑化処理や輝度勾配検出に係る適宜のフィルタ演算処理を施すことにより、ガイド20aおよび20bを含む特定座標範囲内に存在する物体の輪郭線を抽出することができる。
【0034】
対象物識別手段59は、輪郭線抽出手段58により抽出された輪郭線からガイド20aおよび20bの輪郭線を識別することができる。より具体的には、例えば対象物識別手段59は、輪郭線抽出手段58により抽出された各輪郭線の長さ(すなわちその輪郭線の画素数)を求め、所定の長さを有する輪郭線を識別することができる。この際、輪郭線の識別に係る所定の長さを例えばガイド20aおよび20bの長手方向長さとして設定することで、対象物識別手段59は抽出された輪郭線からガイド20aおよび20bの輪郭線を識別可能となる。
【0035】
なお、ガイド20aおよび20bの識別に係る条件はその長さに限るものではない。例えば画素の輝度値や、カメラ19aまたは19bから各輪郭線の奥行き距離などに閾値を設けてガイド20aおよび20bの識別に用いてもよい。また、ガイド20aおよび20bの識別に係る所定の長さは、必ずしも絶対的な値でなくてもよく、例えばその値以上の長さを有する線分がガイド20aおよび20bであるという推測が成り立つ値として範囲を設けて設定してもよい。
【0036】
はみ出し判定手段60は、対象物識別手段59がガイド20aおよび20bの輪郭線を識別できたかどうかをもとに、レール12間で停止または進行する車両Cの左右の偏り(すなわち適正停止範囲からのはみ出し)を判定することができる。
【0037】
対象物識別手段59がガイド20aおよび20bの輪郭線を識別できない状況とは、例えば
図7に示すように車両Cがガイド20aおよび20bに部分的に(あるいは全体的に)かぶさっている状況である。
図7の状況においてカメラ19aおよび19bが撮影する画像では、ガイド20aと20bはともに部分的に欠けているように写る。そのような画像に対して輪郭線抽出手段58が輪郭線抽出処理を行い、対象物識別手段59がガイド20aおよび20bの輪郭線識別処理を行うとする。この場合、対象物識別手段59は所定の長さ(本実施形態においてはガイド20aおよび20bの長さ)を有する輪郭線を検出することができない。車両Cがガイド20aおよび20bに部分的に覆いかぶさっており、画像上におけるガイド20aおよび20bの輪郭線が本来の長さよりも短い線分として抽出されるためである。
【0038】
前記したようにガイド20aおよび20bは適正停止範囲の位置指標として地面G上に描かれるものであるから、車両Cがガイド20aまたは20bを覆い隠しているとき、その車両Cが適正停止範囲からずれたりはみだしたりしていることがわかる。このようにして、はみ出し判定手段60は、対象物識別手段59がガイド20aおよび20bの輪郭線を識別できたかどうかをもとに、車両Cがレール12間を適正に進入しているか(あるいは適正に進入したか)を判定することができる。
【0039】
このように洗車装置10は種々の手段(機能)を備えており、制御部50によって各手段が実行される。なお、各手段は制御部50が有するものとして説明したが、その一部が制御部50とは別個の部材あるいは装置として設けられてもよい。例えばガイド20aおよび20bの輪郭線検出処理に係る手段(すなわち本実施形態においては輪郭線抽出手段58、画像記憶手段59、画像判定手段60)を別個の制御基板に実装して設け、制御部50と通信させてもよい。ガイド20aの輪郭線検出処理とガイド20bの輪郭線検出処理をそれぞれ別個の制御基板に実装して設けてもよい。
【0040】
次に、洗車装置10の動作の一例について、
図8のフロー図をもとに説明する。
【0041】
洗車装置10は、ユーザによって受付装置51で受付がなされると[1]、ゲート装置23の遮断桿を開放し、タイヤ検出装置21の位置まで車両Cを進入させるよう表示装置22によってユーザに案内を出す[2]。さらに、洗車装置10は、カメラ19a、19bによりガイド20aおよび20b周辺を撮像する。この撮像処理は車両Cの進入が完了するまで(あるいは受付られた洗浄処理がキャンセルさせられるまで)所定の時間間隔をおいて繰り返し行われる[3]。
【0042】
前記した撮像処理が行われ、ガイド20aおよび20b周辺の画像が得られるたびに、制御部50は、輪郭線抽出手段58によりその画像上の物体の輪郭線を抽出する。対象物識別手段59は、輪郭線抽出手段58により抽出された各輪郭線の長さを求め、ガイド20aおよび20bの輪郭線を識別する[4]。対象物識別手段59がガイド20aおよび20bの輪郭線を識別できなかった場合、車両Cがガイド20aまたは20bに部分的に(あるいは全体的に)かぶさった状態でいることがわかる。すなわち、車両Cが適正停止範囲からはみ出し、左右(一対のレール12のいずれかの側)にずれていたりすることがわかる。
【0043】
洗車装置10は、対象物識別手段59の判定に応じて車両Cの運転者に案内を出すことができる。本実施形態において、洗車装置10は、ガイド20aおよび20bの輪郭線の識別状況に応じた案内を車両Cの運転者に行う[5]。対象物識別手段59がガイド20aおよび20bの輪郭線を識別しておらず、かつタイヤ検出装置21が車両Cのタイヤを検出している場合、車両Cの運転者に対して、いったん後退してレーン12間における左右の偏り(すなわち適正停止範囲からのはみ出し)をなくし、再度タイヤ検出装置21の位置まで入り直すよう表示装置22で案内する[6]。対象物識別手段59がガイド20aおよび20bの輪郭線を識別しておらず、タイヤ検出装置21は車両Cのタイヤを検出していない場合、レール12間における左右の偏りを修正して進行するよう表示装置22で案内する[7]。
【0044】
対象物識別手段59がガイド20aおよび20bの輪郭線を識別している場合、洗車装置10は、表示装置22によりそのまま直進するよう案内する[8]。対象物識別手段59がガイド20aおよび20bの輪郭線を識別しており、かつタイヤ検出装置21が車両Cのタイヤを検出した場合には[9]、適正に入車が完了したものとしてゲート装置23の遮断桿を降ろし[10]、受付装置51で選択された洗浄処理を開始する[11]。
【0045】
例えば本体部11がレール12上を1.5往復して洗浄を行う工程(1.5往復洗車コース)が受付装置51で選択されている場合、洗車装置10は、第1往工程として、本体部11を前方に移動(往行走行)させながら車両検出部36により車両Cを検出しつつ、トップスプレー32およびサイドスプレー33から洗浄水と洗浄剤を散布する。さらに車両検出部36で求められた車両Cの形状に合わせ、トップブラシ30やサイドブラシ31を用いて車両Cの表面をブラッシング洗浄する。
【0046】
次いで、洗車装置10は、復工程として、本体部11を後方に移動(復行走行)させながらトップスプレー32およびサイドスプレー33から車両Cに洗浄水を散布し、汚れや洗浄剤を流し落とす。
【0047】
最後に、洗車装置10は、第2往工程として、本体部11を前方に移動(往行走行)させながらトップノズル34などを用いて車両Cに送風し、水滴を除去して乾燥を図る。その後、表示装置22によりユーザに退車するよう案内し、洗浄処理終了とする。
【0048】
このように本実施形態において、洗車装置10は、車両Cの進入時、車両Cではなく車両Cの進入路上に設けられたガイド20aおよび20bを識別対象とする。ガイド20aおよび20bは、車両Cが所定範囲からはみ出していたりする場合に、それが部分的あるいは全体的に車両Cによって隠される位置に設けられる。そのため洗車装置10は、ガイド20aおよび20bの輪郭線を抽出することにより、車両Cの形状などに影響されずに車両Cの停止位置や進行位置のずれを判定することができる。
【0049】
ガイド20aおよび20bの形状が一般的な車両の形状より複雑でなく、識別しやすいものであるため、車両Cの停止位置および進行位置のずれを高い精度で判定することができる。
【0050】
(実施形態2)
前記実施形態1では、カメラ19aおよび19bにより撮影された画像を輪郭線抽出手段58により輪郭線抽出し、さらに得られた各輪郭線の長さを対象物識別部59により求めることで、識別対象物であるガイド20aおよび20bを識別する場合について説明したが、ガイド20aおよび20bの検出方法はこのような方法に限定されるものではない。
【0051】
ガイド20aおよび20bは、例えばカメラ19aおよび19bにより撮影した画像上の領域として検出されてもよい。本実施形態では、領域分類手段90とはみ出し判定手段91を有する洗車装置10Aについて説明する。
【0052】
洗車装置10Aが有する制御部50Aは、領域分類手段90と、はみ出し判定手段91を有する。領域分類手段90は、カメラ19aおよび19bにより撮影された画像にセグメント抽出処理を行うことができる。より具体的には、領域分類手段90は、ディープラーニングなどの機械学習アルゴリズムにより学習した学習データ(学習モデル)に基づき、カメラ19aおよび19bにより撮影された画像の各画素が、事前定義された複数の領域のいずれに該当するかを分類することができる。
【0053】
領域分類手段90の分類に係る複数の領域は、例えば画像中において地面Gが占める領域、ガイド20aおよび20b(すなわち識別対象物)が占める領域、被洗浄車両が占める領域などとして設定するとよい。学習データとしては、例えばカメラ19aおよび19bが撮影した画像と、その画像の各画素に対応する領域ラベルが付与された画像のペア群などを用いるとよい。このようにして生成された学習済みモデルを領域分類エンジンとして用いることにより、領域分類手段90は、カメラ19aおよび19bが新たに撮影した画像について、都度その画像のどの領域がガイド20aおよび20bであるか判定可能となる。
【0054】
はみ出し判定手段91は、領域分類手段90によりガイド20aおよび20bとして分類された各画素が占める画像上の領域を、あらかじめ記憶されているガイド20aおよび20bの画像と比較することで、ガイド20aおよび20bが車両Cに覆われているかどうかを判定することができる。この比較処理には、例えば前記したような機械学習アルゴリズムを用いてもよいし、テンプレートマッチング処理を用いてもよい。
【0055】
例えば車体に覆われていない状態のガイド20aおよび20bの画像をはみ出し判定手段91にあらかじめ記憶しておき、カメラ19aおよび19bが新たにガイド20aおよび20bを撮影するたびにこれらの画像の類似度を求めるようにはみ出し判定手段91を設定してもよい。こうした設定により、はみ出し判定手段91は、その類似度が所定値以下であればガイド20aおよび20bが車両Cに覆われているとして判定可能となる。ガイド20aおよび20bが車両Cに覆われている状態とは、すなわち車両Cが適正停止位置からずれたりはみだしたりしている状態である。
【0056】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0057】
例えば実施形態1で説明した輪郭線抽出によるガイド20aおよび20bの識別手段と、実施形態2で説明した領域検出によるガイド20aおよび20bの識別手段は、識別精度向上のために洗車装置に両方とも搭載されてもよい。ガイド20aおよび20bの識別手段は、ガイド20aおよび20bの形状などに合わせて適宜応用可能である。
【0058】
また、カメラ19およびガイド20は必ずしも複数個所に設けられなければならないものではない。カメラ19およびガイド20の個数は本体部11の構造や本体部11が設置される場所ごとの都合などにより変更可能である。
【0059】
また、本体部11の形状は必ずしも門型状に形成されなければならないものではない。例えば地面Gに対して垂直に起立する柱状に本体部を設けてもよい。さらに、洗浄時において本体部11が前後走行するのではなく、車両Cに走行させるよう(またはコンベアなどで車両Cを移動させるよう)洗車装置を構成してもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 洗車装置
11 本体部
12 レール
19a カメラ
19b カメラ
20a ガイド
20b ガイド
21 タイヤ検出装置
22 表示装置
50 制御部
57 処理手段
58 輪郭線抽出手段
59 対象物識別手段
60 はみ出し判定手段