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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112774
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】弛度調整金具
(51)【国際特許分類】
   H02G 7/02 20060101AFI20230807BHJP
   H02G 7/00 20060101ALI20230807BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
H02G7/02
H02G7/00
H02G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014688
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】514183042
【氏名又は名称】TDM株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】松岡 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高司 顕徳
(72)【発明者】
【氏名】川口 倫慶
(72)【発明者】
【氏名】大岩 豪
【テーマコード(参考)】
5G352
5G367
【Fターム(参考)】
5G352AA12
5G367BA01
5G367BB10
5G367DA01
5G367DC02
(57)【要約】
【課題】送電線を把持するクランプと鉄塔に支持された碍子連との間で、金具長を変化させることで該送電線の弛度を調整する弛度調整金具に関し、コンパクトでありながら調整範囲が広く細かな調整ピッチをもたせる。
【解決手段】間隔をあけて第1調整孔112が設けられた第1部材110と一方側取付金具140との間および間隔をあけて第2調整孔131が設けられた第2部材130と他方側取付金具150との間のうち少なくとも一方の間に配置された追加金具120を備え、追加金具120は、挿通部材160が挿通する第1調整孔112および第2調整孔131の組合せを代えることで金具長を変化させることができる最小調整ピッチ(10mm)よりも短い調整ピッチ(A-B=5mm)で金具長を調整可能なものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線を把持するクランプと鉄塔に支持された碍子連との間で、金具長を変化させることで該送電線の弛度を調整する弛度調整金具において、
前記クランプ側および前記碍子連側のうちのいずれか一方の側に接続された一方側取付金具と、
前記クランプ側および前記碍子連側のうちの、前記一方に対する他方の側に接続された他方側取付金具と、
前記一方側取付金具と前記他方側取付金具との間で前記一方の側に位置し、間隔をあけて第1調整孔が設けられた第1部材と、
前記他方側取付金具と前記一方側取付金具との間で前記他方の側に位置し、間隔をあけて第2調整孔が設けられた第2部材と、
前記第1部材と前記一方側取付金具との間および前記第2部材と前記他方側取付金具との間のうち少なくとも一方の間に配置された追加金具と、
前記第1調整孔と前記第2調整孔が一致する箇所で、一致した該第1調整孔および該第2調整孔の組を挿通する挿通部材とを備え、
前記追加金具は、前記挿通部材が挿通する前記第1調整孔および前記第2調整孔の組合せを代えることで前記金具長を変化させることができる最小調整ピッチよりも短い調整ピッチで該金具長を調整可能なものであることを特徴とする弛度調整金具。
【請求項2】
前記第1部材は、前記一方の側から前記他方の側に向けて延在し、前記第1調整孔が前記金具長の方向に間隔をあけて設けられたものであり、
前記第2部材は、前記他方の側から前記一方の側に向けて延在し、前記第2調整孔が前記金具長の方向に間隔をあけて設けられたものであることを特徴とする請求項1記載の弛度調整金具。
【請求項3】
前記追加金具は、前記金具長の方向に沿った直線に交わる方向に間隔をあけて複数の追加調整孔が設けられたものであって、回動させることで該複数の追加調整孔のうちの一つが該直線上に位置するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の弛度調整金具。
【請求項4】
前記複数の追加調整孔のうち前記直線上から外れた追加調整孔は、緊線用金車の取付孔として使用可能な孔であることを特徴とする請求項3記載の弛度調整金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線を把持するクランプと鉄塔に支持された碍子連との間で、金具長を変化させることで該送電線の弛度を調整する弛度調整金具に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔への緊線作業が終了すると、緊線された送電線の弛度を測定し、測定した弛度が設計値から外れていれば、緊線した送電線の弛度を調整する必要が生じる。また、多導体の場合には、複数の導体間における弛度のバラツキがあれば、そのバラツキを抑えるために、緊線した送電線の弛度を調整する必要が生じる。このため、鉄塔に支持された碍子連と送電線の先端を把持したクランプとの間に弛度調整金具が設けられている(例えば、特許文献1、2等参照)。従来の弛度調整金具は、金具長の方向に間隔をあけて外側調整孔がそれぞれ設けられた一対の外板と、金具長の方向に間隔をあけて内側調整孔が設けられその一対の外板の間で進退可能な内板と、外側調整孔と内側調整孔が一致する箇所で一致した外側調整孔および内側調整孔の組を挿通する挿通部材とを備え、前記挿通部材が挿通する前記外側調整孔および前記内側調整孔の組合せを代えることで前記金具長を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-102152号公報
【特許文献2】特開2008-253061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弛度調整作業は、弛度調整金具の金具長を変化させて行うが、鉄塔間の距離(径間長)が離れている場合は金具長の変化は弛度に与える影響が少なく、径間長が狭い場合は金具長の変化が弛度に与える影響が大きくなる。このように、径間長により金具長の変化が弛度に与える影響も変化するため、弛度の調整にはより調整範囲が広く細かい調整ピッチ単位で金具長を変化させることが求められる。これに対処するためには、径間長ごとに異なる調整ピッチを持つ弛度調整金具を用いたり、弛度調整金具を組み込んだ耐張装置全体の長さが異なるものを個別に用いる等の対応が必要となり、金具種別が増加し、それに伴い資材費が増加してしまう。
【0005】
また、上述した従来の弛度調整金具に、調整範囲が広く細かい調整ピッチをもたせようとした場合、外板および/または内板の、長さを長くしたり幅を厚くしたりすることで調整孔の数を増やすことが考えられるが、これもまた資材費が増加してしまう。さらに、弛度調整金具が大型化すると、緊線作業時に弛度調整金具を引き上げる作業が大変になり、作業性が悪化するため、弛度調整金具はコンパクトなものが求められる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、コンパクトでありながら調整範囲が広く細かな調整ピッチをもった弛度調整金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決する本発明の弛度調整金具は、
送電線を把持するクランプと鉄塔に支持された碍子連との間で、金具長を変化させることで該送電線の弛度を調整する弛度調整金具において、
前記クランプ側および前記碍子連側のうちのいずれか一方の側に接続された一方側取付金具と、
前記クランプ側および前記碍子連側のうちの、前記一方に対する他方の側に接続された他方側取付金具と、
前記一方側取付金具と前記他方側取付金具との間で前記一方の側に位置し、間隔をあけて第1調整孔が設けられた第1部材と、
前記他方側取付金具と前記一方側取付金具との間で前記他方の側に位置し、間隔をあけて第2調整孔が設けられた第2部材と、
前記第1部材と前記一方側取付金具との間および前記第2部材と前記他方側取付金具との間のうち少なくとも一方の間に配置された追加金具と、
前記第1調整孔と前記第2調整孔が一致する箇所で、一致した該第1調整孔および該第2調整孔の組を挿通する挿通部材とを備え、
前記追加金具は、前記挿通部材が挿通する前記第1調整孔および前記第2調整孔の組合せを代えることで前記金具長を変化させることができる最小調整ピッチよりも短い調整ピッチで該金具長を調整可能なものであることを特徴とする弛度調整金具。
【0008】
本発明の弛度調整金具によれば、前記第1調整孔と前記第2調整孔の組合せによって調整範囲を広く確保することができる。一方、前記追加金具によって細かな調整ピッチが確保される。また、前記追加金具は、前記最小調整ピッチよりも短い調整ピッチの種類の数を少なくすればするほど小型化することができる。よって、本発明の弛度調整金具は、コンパクトでありながら調整範囲が広く細かな調整ピッチをもったものになる。
【0009】
なお、前記第1部材は、一対の外板であって、該一対の外板それぞれに前記第1調整孔が設けられており、前記第2部材は、内板であって、前記一方の側が前記一対の外板の間に位置するものであってもよい。
【0010】
また、前記第1部材は、前記第1調整孔が円弧状の間隔をあけて設けられたものであってもよい。あるいは、前記第2部材が、円弧状の間隔をあけて前記第2調整孔が設けられたものであってもよい。
【0011】
前記追加金具が、前記第1部材と前記一方側取付金具との間に配置された場合には、該追加金具と該第1部材との間に他の部材が配置されていてもよいし、該一方側取付金具と該追加金具との間に他の部材が配置されていてもよい。また、前記追加金具が、前記第2部材と前記他方側取付金具との間に配置された場合には、該追加金具と該第2部材との間に他の部材が配置されていてもよいし、該他方側取付金具と該追加金具との間に他の部材が配置されていてもよい。
【0012】
前記追加金具は、前記第1部材と前記一方側取付金具との間および前記第2部材と前記他方側取付金具との間それぞれに配置されたものであってもよい。
【0013】
前記追加金具は、前記最小調整ピッチよりも短い一種類の調整ピッチでのみ該金具長を調整可能なものであってもよい。
【0014】
また、
前記第1部材は、前記一方の側から前記他方の側に向けて延在し、前記第1調整孔が前記金具長の方向に間隔をあけて設けられたものであり、
前記第2部材は、前記他方の側から前記一方の側に向けて延在し、前記第2調整孔が前記金具長の方向に間隔をあけて設けられたものである態様であってもよい。
【0015】
この態様によれば、前記第1調整孔にしても前記第2調整孔にしても金具長の方向に設けられた孔であるため、前記第1部材および第2部材の幅を抑えることができる。
【0016】
また、
前記追加金具は、前記金具長の方向に沿った直線に交わる方向に間隔をあけて複数の追加調整孔が設けられたものであって、回動させることで該複数の追加調整孔のうちの一つが該直線上に位置するものであってもよい。
【0017】
前記直線に一致した、回動中心と前記追加調整孔との間隔が、この追加金具の調整ピッチになる。例えば、前記複数の追加調整孔として第1追加調整孔と第2追加調整孔を設けた場合には、回動中心と前記第1追加調整孔との間隔が第1調整ピッチになり、回動中心と前記第2追加調整孔との間隔が第2調整ピッチになる。第1調整ピッチと第2調整ピッチとの差分が前記最小調整ピッチよりも短い調整ピッチになる。
【0018】
また、
前記複数の追加調整孔のうち前記直線上から外れた追加調整孔は、緊線用金車の取付孔として使用可能な孔であってもよい。
【0019】
一般には、碍子連側に設けられたヨークにある孔に緊線用金車を取り付けて緊線作業を行うが、施工現場において利用しやすい孔を用いて緊線作業を行うことがある。前記追加調整孔を緊線用金車の取付孔として使用可能であれば、施工時の自由度が高められ、作業性の向上に寄与することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コンパクトでありながら調整範囲が広く細かな調整ピッチをもった弛度調整金具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態の弛度調整金具を示す図である。
図2図1(B)に示す追加金具を拡大してその全体を示した正面図である。
図3】(A)は送電線の緊線作業を示す図であり、(B)は弛度調整作業を示す図であり、(C)は一対の外板が内板に仮連結され、一対の外板の碍子連側の端部が追加金具から外されて一対の外板が垂れ下がった様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の弛度調整金具の一実施形態について説明する。ここで説明するのは4導体の例であるが、本実施形態の弛度調整金具は、4導体に限らず様々な導体数に用いることができる。
【0023】
図1は、本実施形態の弛度調整金具を示す図である。この図1では、図の右側が鉄塔側になり、懸垂碍子81が示されている。この懸垂碍子81が連なって碍子連が構成される。以下、鉄塔側のことを碍子連側と称する。また、図の左側が送電線側になり、送電線を把持するクランプ82が示されている。クランプ82は、圧縮クランプであったり、くさびクランプであったりする。以下、送電線側のことをクランプ側と称する。図1(A)は弛度調整金具の上面図であり、図の左右方向が延線方向であり、この図1(A)には、上方から弛度調整金具を見たときの様子が示されている。一方、図1(B)は、弛度調整金具の正面図であり、この図1(B)には、延線方向に対して側方から弛度調整金具を見たときの様子が示されている。
【0024】
本実施形態の弛度調整金具100は、一対の外板110と、追加金具120と、1枚の内板130を有する。一対の外板110は第1部材の一例に相当し、1枚の内板130は第2部材の一例に相当する。この弛度調整金具100は、延線方向に延在したものであり、延線方向の長さが金具長になる。弛度調整金具100の碍子連側の端部には直角クレビスリンク140が設けられており、反対側になるクランプ側の端部には平行クレビス150が設けられている。直角クレビスリンク140は、直角クレビス84を介して2連耐張ヨーク83に連結されている。直角クレビスリンク140は一方側取付金具の一例に相当し、平行クレビス150は他方側取付金具の一例に相当する。なお、図1(B)に示す4導体のうちの下側導体では、導体間隔を確保するために、直角クレビスリンク140と直角クレビス84の間に、延線方向に延びた直角クレビスリンク88が設けられている。直角クレビスリンク140には、後述する弛度調整工具の碍子連側の取付アームが固定されるボルト孔141が設けられている。取付アームを垂直方向にも水平方向にも取り付けられるように、ボルト孔141は、直角クレビスリンク140の、上下面に設けられる(図1(A)参照)とともに側面にも設けられている(図1(B)参照)。
【0025】
2連耐張ヨーク83の碍子連側には、直角クレビスリンク85を介してホーン取付金具86が接続しており、ホーン取付金具86にはホーン87が取り付けられている。一方、クランプ側の端部に設けられた平行クレビス150には、クランプ82が取り付けられている。
【0026】
一対の外板110は、曲げ加工を施していないストレートタイプの板材であって、碍子連側の直角クレビスリンク140とクランプ側の平行クレビス150との間で、碍子連側からクランプ側に向けて延在したものである。一対の外板110の碍子連側の端部には、連結孔111(図1(B)参照)が設けられている。また、図1(B)に示すように、一対の外板110それぞれには、クランプ側に、所定間隔αをあけて複数の外側調整ボルト孔112が設けられている。これら複数の外側調整ボルト孔112は、金具長の方向に所定間隔αをあけて直線状に一列に設けられたものであり、第1調整孔の一例に相当する。
【0027】
1枚の内板130は、クランプ側の平行クレビス150と碍子連側の直角クレビスリンク140との間で、クランプ側から碍子連側に向けて延在したものである。この内板130における碍子連側の部分は、一対の外板110の間に位置している。すなわち、一対の外板110のクランプ側の部分は、内板130の碍子連側の部分を挟み込んでいる。図1(B)に示すように、内板130にも、所定間隔βをあけて複数の内側調整ボルト孔131が設けられている。これら複数の内側調整ボルト孔131も、金具長の方向に所定間隔βをあけて直線状に一列に設けられたものである。内側調整ボルト孔131は第2調整孔の一例に相当する。外側調整ボルト孔112の所定間隔αと、内側調整ボルト孔131の所定間隔βは異なる長さであり、本実施形態では、内側調整ボルト孔131の所定間隔βの方が、外側調整ボルト孔112の所定間隔αよりも長くなっている。後述するように、弛度調整の際に、一対の外板110と1枚の内板130とを金具長の方向に進退させ、外側調整ボルト孔112と内側調整ボルト孔131が一致する箇所で、一致した外側調整ボルト孔112および内側調整ボルト孔131の組に連結ボルト160を挿通し、一対の外板110と1枚の内板130を連結する。この連結ボルト160は挿通部材の一例に相当する。1枚の内板130のクランプ側の部分には、後述する弛度調整工具のクランプ側の取付アームが固定される固定部132が設けられている。取付アームを垂直方向にも水平方向にも取り付けられるように、固定部132の上下面にボルト孔1321が設けられる(図1(A)参照)とともに側面にもボルト孔1321が設けられている(図1(B)参照)。また、内板130のクランプ側の端部は、平行クレビス150にボルト固定されている。
【0028】
一対の外板110の碍子連側の端部は、追加金具120と連結している。追加金具120は、一対の外板110と碍子連側の直角クレビスリンク140との間に配置されたものである。
【0029】
図2は、図1(B)に示す追加金具を拡大してその全体を示した正面図である。
【0030】
図2に示す追加金具120では、図の左側が一対の外板110側になり、右側が直角クレビスリンク140側になる。この追加金具120は、三角形の頂点に丸みを与えた形状のものであり、直角クレビスリンク140側に連結ボルト孔121が設けられおり、この連結ボルト孔121を利用して追加金具120は、図1に示す直角クレビスリンク140のクレビス部142にボルト143によって回動自在に連結される。また、追加金具120には、一対の外板110側の2箇所に追加調整ボルト孔が設けられている。連結ボルト孔121の中心から直線距離Aだけ離れた位置に設けられた追加調整ボルト孔を第1追加調整ボルト孔122と称し、直線距離Bだけ離れた位置に設けられた追加調整ボルト孔を第2追加調整ボルト孔123と称する。追加金具120は、連結ボルト孔121に挿通された図1に示すボルト143を回動軸にして回動自在(図2中の実線の矢印参照)である。図2には、金具長の方向に沿った直線Lが点線で示されている。この直線Lは、図1(B)に示す、金具長の方向に所定間隔をあけて一列に設けられた複数の外側調整ボルト孔112の中心を通る直線であり、連結ボルト孔121の中心も通っている。また、図2に示す直線Lは、第1追加調整ボルト孔122の中心も通っている。第1追加調整ボルト孔122と第2追加調整ボルト孔123は、この直線Lに交わる方向に間隔をあけて設けられたものである。追加金具120を回動させることで、この直線Lに第2追加調整ボルト孔123の中心を一致させることも可能である。直線L上に第1追加調整ボルト孔122がある状態では、第1追加調整ボルト孔122が一対の外板110の碍子連側の端部に設けられた連結孔111(図1(B)参照)に一致し、追加金具120は、第1追加調整ボルト孔122を用いて一対の外板110に連結される。一方、直線L上に第2追加調整ボルト孔123がある状態では、第2追加調整ボルト孔123が一対の外板110の連結孔111に一致し、追加金具120は、第2追加調整ボルト孔123を用いて一対の外板110に連結される。
【0031】
図1(B)に示す外側調整ボルト孔112の所定間隔αは30mmであり、内側調整ボルト孔131の所定間隔βは40mmである。本実施形態の弛度調整金具100は、連結ボルト160が挿通する、外側調整ボルト孔112および内側調整ボルト孔131の組合せを代えることで金具長を-180mm以上+180mm以下の範囲で10mm単位で変化させることができる。すなわち、金具長を変化させることができる最小調整ピッチは10mmである。また、図2に示すように、直線距離Aは直線距離Bよりも5mm長く、直線L上に第1追加調整ボルト孔122を一致させた場合と、第2追加調整ボルト孔123を一致させた場合とでは、金具長は、上記最小調整ピッチの半分となる5mmの長さ分変化する。
【0032】
続いて、図1に示す弛度調整金具100が取り付けられた状態で行われる送電線の緊線作業と弛度調整作業についてそれぞれ説明する。ここでの説明では、正面図を用いて説明するが、下側の導体については図示省略している。また、図の右側が碍子連側になり、左側がクランプ側になる。
【0033】
図3(A)は、送電線の緊線作業を示す図である。
【0034】
緊線作業では、緊線用の金車(ミニ金車)が用いられる。緊線用の金車は、碍子連側金車91とクランプ側金車92とがあり、両者にはセミワイヤが巻き掛けられている。図3(A)では、このセミワイヤを図示省略している。
【0035】
図3(A)に示す2連耐張ヨーク83は、ホーン取付金具86に取り付けられたロック金具93によって固定され、垂直姿勢を維持している。2連耐張ヨーク83には、直角クレビス84を介して図1に示す弛度調整金具100が取り付けられている。一方、弛度調整金具100の平行クレビス150はクランプ82に接続されているが、内板130のクランプ側の端部はその平行クレビス150から離れた状態にある。
【0036】
図3(A)に示す一対の外板110と1枚の内板130は連結ボルト160によって連結されている。また、一対の外板110の碍子連側の端部は、追加金具120の第1追加調整ボルト孔122に連結されており、第2追加調整ボルト孔123には、碍子連側金車91が取り付けられている。従来では、碍子連側金車91は、2連耐張ヨーク83に取り付けられることが多いが、本実施形態の弛度調整金具100では、緊線作業時には第2追加調整ボルト孔123が使用されないことから、その第2追加調整ボルト孔123を金車の取付孔として使用することができる。したがって、施工現場において、第2追加調整ボルト孔123が利用しやすい場合には、図3(A)に示すように、第2追加調整ボルト孔123に碍子連側金車91を取り付ける。この結果、施工時の自由度が高められ、作業性の向上に寄与することができる。一方、クランプ側金車92は、クランプ82に取り付けられている。
【0037】
不図示のセミワイヤを引っ張ることで、碍子連側金車91とクランプ側金車92の距離が縮まり、クランプ82に接続された平行クレビス150が、内板130のクランプ側の端部に近付いてくる(図3(A))に示す矢印参照)。こうして、内板130のクランプ側の端部が、平行クレビス150に連結される。
【0038】
図3(B)は、弛度調整作業を示す図である。
【0039】
弛度調整金具100の、碍子連側の端部に設けられた直角クレビスリンク140のボルト孔141には、碍子連側の取付アーム95の下端部分が固定されている。また、内板130のクランプ側のボルト孔1321には、クランプ側の取付アーム96の下端部分が固定されている。各取付アーム95,96は、上方に向かって延在している。すなわち、取付アーム95,96は垂直方向に取り付けられている。これらの取付アーム95,96は、延在方向中央部分で、支持ロッド97によって結ばれている。各取付アーム95,96は、支持ロッド97に接続する箇所951,961を中心にその支持ロッド97に対して回動自在である。また、各取付アーム95,96の上端部分には、アーム金具981,982を介して弛度調整工具99が取り付けられている。図3(B)に示す弛度調整工具99は油圧シリンダである。油圧シリンダである弛度調整工具99のピストンロッドを伸ばすと、取付アーム95,96が回動し、内板130が相対的に碍子連側に向けて進出し、金具長が短くなる。弛度調整金具100に弛度調整工具99を取り付けると、まず、ピストンロッドを伸ばし弛度調整金具100の金具長を短くして、一対の外板110と1枚の内板130を連結していた連結ボルト160を外す。図3(B)に示す1枚の内板130は、平行クレビス150を介してクランプ82に支持されており、水平方向に延在している。一方、一対の外板110は、追加金具120の連結ボルト孔121(図2参照)に挿通されたボルト143を回動軸にして下方へ回動し、垂れ下がった状態にある。油圧シリンダである弛度調整工具99のピストンロッドを縮めると、取付アーム95,96が回動し、内板130が相対的にクランプ側に向けて後退し、金具長が長くなる。弛度調整工具99のピストンロッドを伸縮させることで、金具長が変化し、送電線の弛度を調整することができる。所望の弛度に調整した状態で、一対の外板110を引き上げ、外側調整ボルト孔112と内側調整ボルト孔131が一致していれば、その一致した外側調整ボルト孔112と内側調整ボルト孔131の組に連結ボルト160を挿通し、一対の外板110と1枚の内板130を連結する。一対の外板110は不必要に長くないため、従来と同様に一対の外板110の引き上げ作業を行うことができる。
【0040】
上述のごとく、外側調整ボルト孔112および内側調整ボルト孔131の組合せを代えることで金具長を変化させることができる最小調整ピッチは10mmである。所望の弛度に調整した状態で、外側調整ボルト孔112と内側調整ボルト孔131が不一致であれば、外側調整ボルト孔112と内側調整ボルト孔131を一旦一致させ、連結ボルト160で仮連結させ、これまで追加金具120の第1追加調整ボルト孔122に連結されていた、一対の外板110の碍子連側の端部をその追加金具120から外す。
【0041】
図3(C)は、一対の外板が内板に仮連結され、一対の外板の碍子連側の端部が追加金具から外されて一対の外板が垂れ下がった様子を示す図である。
【0042】
追加金具120を、連結ボルト孔121(図2参照)に挿通されたボルト143を回動軸にして少し上方へ回動し、第2追加調整ボルト孔123の中心が、図3(C)に示す複数の内側調整ボルト孔131の中心を通る直線(図2に示す直線L参照)上に位置した状態にする。この状態で、真下に垂れ下がった一対の外板110を引き上げ、一対の外板110の碍子連側の端部を、追加金具120の第2追加調整ボルト孔123にボルト止めする。次いで、仮連結させていた連結ボルト160を外し、再度、所望の弛度に調整する。ここでは、外側調整ボルト孔112と内側調整ボルト孔131が不一致であった状態に比べて金具長が5mm変化しているため、外側調整ボルト孔112と内側調整ボルト孔131が一致しやすくなっている。外側調整ボルト孔112と内側調整ボルト孔131が一致していれば、その一致した外側調整ボルト孔112と内側調整ボルト孔131の組に連結ボルト160を挿通し、一対の外板110と1枚の内板130を連結する。
【0043】
外側調整ボルト孔112と内側調整ボルト孔131の組に連結ボルト160を挿通した後、連結ボルト160のボルト締めが完了すると、油圧シリンダである弛度調整工具99のピストンロッドを元に戻す。その後、弛度調整金具100から取付アーム95,96を取り外すことで弛度調整工具99を撤去し、弛度調整作業が終了する。
【0044】
以上説明した本実施形態の弛度調整金具100によれば、一対の外板110に設けられた外側調整ボルト孔112と内板130に設けられた内側調整ボルト孔131の組合せによって調整範囲を広く確保することができる。一方、追加金具120によって細かな調整ピッチが確保される。しかも、外側調整ボルト孔112にしても内側調整ボルト孔131にしても直線上に設けられた孔であるため、一対の外板110および内板130それぞれの幅を抑えることができる。加えて、追加金具120は、図2に示す直線Lに交わる方向に間隔をあけた追加調整ボルト孔が2種類(第1追加調整ボルト孔122、第2追加調整ボルト孔123)しか設けられていないため小型であり、弛度調整金具100全体としてもコンパクトである。
【0045】
また、一対の外板110及び内板130と、追加金具120との両方が、碍子連よりもクランプ側に配置されているため1箇所で弛度調整作業を行うことができる。さらに、導体ごとに大きな調整範囲で弛度を調整することができる。
【0046】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、一対の外板110は、ストレートタイプの板材に限らず、扇形のものであってもよい。この場合、外側調整ボルト孔112は、円弧状の間隔をあけて設けられる。あるいは、内板130が、円弧状の間隔をあけて内側調整ボルト孔131が設けられた扇形のものであってもよい。また、追加金具120の最小調整ピッチは、一対の外板110と内板130の最小調整ピッチの半分のピッチには限らない。また、追加金具120は、内板130のクランプ側の端部と平行クレビス150との間に配置されたものであってもよい。あるいは、追加金具120は、一対の外板110の碍子連側の端部と直角クレビスリンク140との間に配置されるとともに内板130のクランプ側の端部と平行クレビス150との間にも配置されたものであってもよい。この場合には、両側の追加金具120それぞれは、3.3mmずつ金具長を変化させるものであってもよい。また、追加金具120は、一対の外板110の碍子連側の端部と直接ではなく他の部材を介して接続したものであってもよいし、直角クレビスリンク140と直接ではなく他の部材を介して接続したものであってもよい。追加金具120が内板130のクランプ側の端部と平行クレビス150との間に配置される場合にも同様に、追加金具120は、内板130のクランプ側の端部と直接ではなく他の部材を介して接続したものであってもよいし、平行クレビス150と直接ではなく他の部材を介して接続したものであってもよい。また、一対の外板110がクランプ側に位置し1枚の内板130が碍子連側に位置してもよい。あるいは、内板130も一対の板部材で構成してもよいし、一対の外板110のうちの一方の板部材のみを用いてもよい。
【符号の説明】
【0047】
100 弛度調整金具
110 外板
111 連結孔
112 外側調整ボルト孔
120 追加金具
121 連結ボルト孔
122 第1追加調整ボルト孔
123 第2追加調整ボルト孔
130 内板
131 内側調整ボルト孔
140 直角クレビスリンク
150 平行クレビス
160 連結ボルト
81 懸垂碍子
82 クランプ
83 2連耐張ヨーク
91 碍子連側金車
92 クランプ側金車
99 調整工具
L 直線
図1
図2
図3