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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112788
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/22 20060101AFI20230807BHJP
   F24F 11/65 20180101ALI20230807BHJP
   F24F 11/48 20180101ALI20230807BHJP
   F24F 11/83 20180101ALI20230807BHJP
   F24F 140/00 20180101ALN20230807BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20230807BHJP
【FI】
F24F1/0007 361C
F24F1/0007 361D
F24F11/65
F24F11/48
F24F11/83
F24F140:00
F24F110:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014710
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】莅戸 智史
(72)【発明者】
【氏名】皆川 大樹
【テーマコード(参考)】
3L050
3L260
【Fターム(参考)】
3L050AA10
3L050BD05
3L050BE03
3L050BF07
3L260AB02
3L260BA34
3L260CA12
3L260CB62
3L260CB63
3L260EA07
3L260FA02
3L260FB07
3L260FB09
3L260FB12
3L260HA06
(57)【要約】
【課題】洗浄用冷房運転によるドレンパンの汚れを阻止可能な空気調和機を提供する。
【解決手段】ドレンパン36には、室内熱交換器32から滴下した結露水を一時的に溜める保水部37dと、保水部37dに溜められた結露水を保水部37d外のドレンパン36に排出する隙間37eと、が設けられ、隙間37eによる結露水の排出能力を洗浄用冷房運転により室内熱交換器32に発生する結露水量未満とした。洗浄用冷房運転により室内熱交換器32に発生し、保水部37dに滴下した結露水を一時的に溜めてから保水部37d外へ排出する。洗浄用冷房運転により保水部37dに付着した塵埃が溜められた結露水により浮き、塵埃を含む結露水が保水部37d外へ排出される。洗浄用冷房運転後、ドレンパン36に多量の塵埃が残り、ドレンパン36が汚れた状態になることを未然に阻止することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内機と、
当該室内機内に設置され冷媒が通流する室内熱交換器と、
前記室内機内に設置され前記室内熱交換器へ送風する室内ファンと、
前記室内熱交換器から滴下した結露水を回収し室外へ排出するドレンパンと、
前記室内ファンを駆動させると共に前記室内熱交換器に低温の冷媒を通流させ、前記室内熱交換器を結露させて洗浄する洗浄用冷房運転と、
当該洗浄用冷房運転を制御する制御部と、を備え、
前記ドレンパンには、
前記室内熱交換器から滴下した結露水を一時的に溜める保水部と、
当該保水部に溜められた結露水を前記保水部外の前記ドレンパンに排出する排出部と、を設け、
前記排出部による結露水の排出能力を前記洗浄用冷房運転により前記室内熱交換器に発生する結露水量未満としたことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記保水部は、
前記ドレンパンの長手方向に延伸したリブと、
当該リブの長手方向端部と対向し前記リブに対して垂直な方向に延伸した凸部と、
前記リブの長手方向と対向し前記リブに対して平行な方向に延伸した壁部と、で囲われた範囲で構成され、
前記排出部は、
前記リブと前記凸部との間に形成された隙間で構成されたことを特徴とする請求項1記載の空気調和機。
【請求項3】
前記凸部は、前記リブよりも高さが低い凹部を有し、当該凹部が前記排出部を構成することを特徴とする請求項2記載の空気調和機。
【請求項4】
前記ドレンパンに断熱材が設置され、前記保水部、及び前記排出部が前記断熱材に形成されたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内機内にある室内熱交換器を洗浄する洗浄運転が実施可能な空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものでは、室内に設置された室内機内にある室内熱交換器が蒸発器として機能する洗浄用冷房運転により室内熱交換器の表面に結露水を発生させ、結露水を利用して室内熱交換器の表面に付着した塵埃を洗い流す洗浄運転を実施する空気調和機があった。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-300030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、洗浄用冷房運転によって室内熱交換器の表面に発生する結露水量が少ないと、室内熱交換器からドレンパンへ滴下する結露水量が少なくなり、洗浄運転完了後、洗浄用冷房運転によってドレンパンに滴下した結露水中に含まれる塵埃がドレンパンから結露水と共に排出されず残ってしまい、ドレンパンが汚れる虞があったことから、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る空気調和機は、上述した課題を解決するために、請求項1では、室内機と、
当該室内機内に設置され冷媒が通流する室内熱交換器と、
前記室内機内に設置され前記室内熱交換器へ送風する室内ファンと、
前記室内熱交換器から滴下した結露水を回収し室外へ排出するドレンパンと、
前記室内ファンを駆動させると共に前記室内熱交換器に低温の冷媒を通流させ、前記室内熱交換器を結露させて洗浄する洗浄用冷房運転と、
当該洗浄用冷房運転を制御する制御部と、を備え、
前記ドレンパンには、
前記室内熱交換器から滴下した結露水を一時的に溜める保水部と、
当該保水部に溜められた結露水を前記保水部外の前記ドレンパンに排出する排出部と、を設け、
前記排出部による結露水の排出能力を前記洗浄用冷房運転により前記室内熱交換器に発生する結露水量未満としたことを特徴とした。
【0006】
また、請求項2では、前記保水部は、
前記ドレンパンの長手方向に延伸したリブと、
当該リブの長手方向端部と対向し前記リブに対して垂直な方向に延伸した凸部と、
前記リブの長手方向と対向し前記リブに対して平行な方向に延伸した壁部と、で囲われた範囲で構成され、
前記排出部は、
前記リブと前記凸部との間に形成された隙間で構成されたことを特徴とした。
【0007】
また、請求項3では、前記凸部は、前記リブよりも高さが低い凹部を有し、当該凹部が前記排出部を構成することを特徴とした。
【0008】
また、請求項4では、前記ドレンパンに断熱材が設置され、前記保水部、及び前記排出部が前記断熱材に形成されたことを特徴とした。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、ドレンパンに一時的に溜めた結露水を排出する排出部での結露水の排出能力が洗浄用冷房運転による結露水の発生量未満としたので、洗浄用冷房運転で室内熱交換器に発生しドレンパンに滴下する結露水量が少なくても、ドレンパンに滴下した結露水を一時的に溜めることで塵埃を浮かし、結露水と共にドレンパンから排出することができるため、ドレンパンが塵埃により汚れることを未然に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態における空気調和機の模式図である。
図2】同実施形態の室内機の側面視断面図である。
図3】同実施形態の制御ブロック図である。
図4】同実施形態のドレンパン構造を説明する斜視図である。
図5】同実施形態のドレンパン構造を説明する平面視部分拡大図である。
図6】別実施形態のドレンパン構造を説明する斜視部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【0012】
図1には、内部を冷媒が流れる冷媒回路11を備えたエアコン装置10(空気調和機)が示されている。エアコン装置10は、室内Rを冷却する冷房運転と、室内Rを暖める暖房運転と、を行う機能を備えている。冷媒回路11は、室外Ouに配置された室外機20と、室内Rに配置された室内機30とを、含んでいる。以下、特に説明のない限り、冷媒の循環する方向は、冷房運転時を基準とする。
【0013】
室外機20は、冷房運転時及び暖房運転時における冷媒の通流方向を切り替える切替弁21と、この切替弁21を通過した冷媒が流され冷媒を圧縮する圧縮機22と、この圧縮機22において圧縮され高温高圧となった冷媒が流れる室外熱交換器23と、この室外熱交換器23に向かって室外空気を送るプロペラファン24と、室外熱交換器23を通過した冷媒を減圧する膨張弁25と、を有する。
【0014】
室内機30は、室内Rにおいて壁Waに掛けられている。室内機30は、室内から空気を取り込むと共に室内へ空気を送風する室内ファン31と、この室内ファン31が取り込んだ室内空気と熱交換する室内熱交換器32と、室内ファン31及び室内熱交換器32を収納しているケース33と、を有している。
【0015】
図2を参照する。室内熱交換器32は、ケース33の前側に位置する前側室内熱交換器32aと、ケース33の後ろ側に位置する後側室内熱交換器32bと、で構成されている。前側室内熱交換器32aは、上下方向で2分割した構成である。
【0016】
ケース33は、室内ファン31が送り出す風の吹出口となる送風口33aを有する。送風口33aには、吹き出される送風の左右の向きを調整する左右ルーバ34と、吹き出される送風の上下の向きを調整する上下ルーバ35と、が配置されている。
【0017】
ケース33内には、前側室内熱交換器32aの下方にドレンパン36が設置されている。ドレンパン36は、上下方向に延伸する壁部36aで囲まれ上面が開口した容器状構造である。また、ドレンパン36の底面には断熱材37が設置されており、前側室内熱交換器32aで発生した結露水は断熱材37に滴下する。ドレンパン36は、前側室内熱交換器32aの左右方向幅よりも長いので、前側室内熱交換器32aで発生し滴下した結露水を漏れなく回収することができる。断熱材37の詳細な構造については後述する。
【0018】
冷房運転について説明する。圧縮機22により高温高圧とされた冷媒は、室外熱交換器23において室外空気と熱交換を行い、熱を放出する。このとき、プロペラファン24が回転することによって、外気を強制的に室外熱交換器23の外周に流し、熱交換を促す。室外熱交換器23を通過し熱を放出した冷媒は、膨張弁25において減圧され、温度が低下する。温度が低下した冷媒は、室内熱交換器32へ流れる。
【0019】
室内熱交換器32に流れ込んだ低温の冷媒は、室内熱交換器32において室内Rの室内空気と熱交換を行い、室内Rの空気を冷却する。冷却された空気は、室内ファン31によって室内Rに送風される。室内ファン31は、空気を強制的に室内熱交換器32の外周に流し、冷媒との熱交換を促す。
【0020】
暖房運転時には、切替弁21が冷媒の流路を切り替え、冷房運転時とは逆方向に冷媒を循環させる。
【0021】
図3には、エアコン装置10(図1参照)の制御ブロック図が示されている。室内機30は、室内ファン31と、左右ルーバ34と、上下ルーバ35とを制御する室内制御部40(制御部)と、室内の温度を検出する温度センサ41と、室内制御部40により運転状況を表示する表示ランプ42と、リモコン12との間で所定の情報をやり取りするリモコン送受信部43と、を内蔵している。
【0022】
室内制御部40は、リモコン送受信部43を介して受信したデータや、温度センサ41の検出値や、後述する設定温度や基準時間や、その他所定のプログラム等が記憶される記憶部44と、経過時間を計測する複数のタイマt1~t4と、を有している。
【0023】
室外機20は、室内制御部40と電気的に接続している室外制御部45を有している。室内制御部40は、室外制御部45を介して、切替弁21と、圧縮機22と、プロペラファン24と、膨張弁25とを制御可能である。
【0024】
エアコン装置10は、室内熱交換器32(図1参照)の表面に付着した塵埃を洗浄する洗浄運転を行う機能も備えている。以下、エアコン装置10の洗浄運転の制御内容を説明する。
【0025】
ユーザによりリモコン12にある所定のスイッチが操作され、洗浄運転の開始が指示されると、室内制御部40は、温度センサ41で検出された室温が洗浄運転を実施可能な温度以上であると判断したとき、冷房運転時と同様に冷媒回路11内を冷媒が通流するよう、切替弁21を切り替えた後、圧縮機22を所定回転数で駆動させると共に室内ファン31を所定回転数で駆動させる洗浄用冷房運転を開始する。洗浄用冷房運転を実施することで室内熱交換器32内に低温の冷媒が通流し、室内熱交換器32の表面が露点温度以下となる。室内熱交換器32の表面に結露水が発生し滴下することで、当該室内熱交換器32の表面に付着した塵埃を結露水により洗い流すことができる。
【0026】
洗浄用冷房運転の実施後、室内制御部40は、所定時間経過したと判断したら圧縮機22の駆動を停止させ室内ファン31のみを駆動させる送風運転を所定時間だけ実施した後、再度洗浄用冷房運転を実施する。洗浄用冷房運転を長時間実施すると室内熱交換器32の周辺に湿気溜まりが発生し、室内熱交換器32の表面に結露水を効率よく発生させ難くい状態になる。送風運転により室内熱交換器32の周辺にある湿気を室内へ送風することで、洗浄用冷房運転で室内熱交換器32の表面に結露水を効率よく発生させ続けることができ、当該室内熱交換器32の洗浄効果を高めることができる。
【0027】
洗浄用冷房運転と送風運転とを所定時間毎に繰り返す動作の実施中、室内制御部40は、温度センサ41で検出された室温が所定温度以下になったと判断したら、洗浄用冷房運転又は送風運転を停止し、暖房運転時と同様に冷媒回路11内を冷媒が通流するよう、切替弁21を切り替えた後、圧縮機22を所定回転数で駆動させると共に室内ファン31を所定回転数で駆動させる洗浄用暖房運転を開始する。洗浄用冷房運転を継続すると室内熱交換器32の温度が下がり続け、当該室内熱交換器32の表面に発生した結露水が凍結してしまい、結露水による当該室内熱交換器32の洗浄ができなくなる。洗浄用暖房運転を実施することで室内熱交換器32の表面温度を上昇させることができ、当該室内熱交換器32の表面に発生した結露水の凍結を阻止し、結露水による当該室内熱交換器32の洗浄を継続して実施可能とする。
【0028】
室内制御部40は、洗浄用暖房運転の実施後、温度センサ41で検出された室温が所定温度以上になったと判断したら、洗浄用暖房運転を停止し再度洗浄用冷房運転を実施する。洗浄用冷房運転と洗浄用暖房運転とを繰り返すことで、室内熱交換器32の表面に結露水を継続して効率よく発生させ続けることができる。
【0029】
室内制御部40は、リモコン12による洗浄運転の開始指示から所定時間経過したと判断したら、当該所定時間経過時点で実施している洗浄用冷房運転、送風運転、あるいは洗浄用暖房運転を停止し、室内ファン31のみを所定回転数で駆動させる洗浄用乾燥運転を実施する。洗浄用冷房運転の実施により室内熱交換器32の表面は結露水により濡れた状態であり、当該室内熱交換器32が濡れたままの状態で放置すると、当該室内熱交換器32の表面にカビが発生する虞がある。洗浄用乾燥運転の実施により室内熱交換器32を乾かすことができるので、室内熱交換器32の表面でカビが発生することを未然に阻止することができる。
【0030】
室内制御部40は、洗浄用乾燥運転を所定時間だけ実施したと判断したら、室内ファン31を停止させ洗浄運転を終了する。
【0031】
次に、本実施形態におけるドレンパン36の詳細構造について、図4、及び図5に基づき説明する。
【0032】
ドレンパン36には、前後左右方向において底面を囲うように立設した壁部36aと、左右方向端部にそれぞれ位置し断熱材37から排出された結露水が流れる排水案内部36bと、当該排水案内部36bに流れる結露水を室外へ排出する排水口36cと、が形成されている。左右方向の端部に形成された排水口36cのいずれか一方側に図示しないドレンホースの一端側を装着し、当該ドレンホースの他端側が室外の適切な位置に設置することで、ドレンパン36内に溜まった結露水を室外へ排出することができる。また、前記ドレンホースが装着されなかった他方側の排水口36cには閉止栓が装着されることで、ドレンパン36内に溜まった結露水が他方側の排水口36cから漏れ出ることを阻止する。
【0033】
ドレンパン36には、底面の大部分(ここでは、排水案内部36bを除いた全底面)を覆うように断熱材37が設置される。断熱材37には、前後方向の略中央において長手方向である左右方向に延伸したリブ37aと、リブ37aと左右方向の端部で対向しリブ37aに対して垂直な方向である前後方向に延伸した凸部37bと、リブ37aと前後方向で対向しリブ37aに対して平行な方向である左右方向に延伸した壁部37cと、が形成されている。断熱材37の壁部37cはドレンパン36の左右方向へ延びる壁部36aの内側に当接しており、上下方向高さが断熱材37の壁部37cの方がドレンパン36の壁部36aよりも低くなるよう形成されている。リブ37aと凸部37bは、上下方向高さが同一となるように形成されている。
【0034】
リブ37aには、他の部分より上下方向高さが高い支持部36a1が左右方向の複数箇所に形成されている。前側室内熱交換器32aの所定位置における下端部分が支持部36a1により支持固定される。また、前側室内熱交換器32aの左右方向端部の下端部分が凸部37bと近接した状態で設置される。冷房運転、及び暖房運転時において前側室内熱交換器32aの左右方向下端部分と断熱材37との間を通過し、前側室内熱交換器32aを介さず熱交換しない空気の発生が抑制される。冷房運転、及び暖房運転の運転効率低下を抑制することができる。
【0035】
断熱材37には、リブ37a、凸部37b、及び後方の壁部37cとで囲われた保水部37dと、リブ37aと凸部37bとの間に排出部としての隙間37eと、が形成されている。前側室内熱交換器32aで発生した結露水は主に保水部37dに滴下し一時的に溜められる。保水部37dに溜まった結露水は、隙間37eを介して保水部37d外へ排出される。隙間37eを介して保水部37d外へ排出された結露水は、排水案内部36bを介して排水口36cにより室外へ排出される。
【0036】
隙間37eは、保水部37dに溜まった結露水を保水部37d外へ排出する排出能力が洗浄用冷房運転で前側室内熱交換器32aに発生する結露水量未満となるよう、予め大きさが設定されている(結露水量>排出能力)。当該結露水量は、室温や室内湿度等の環境条件によって変動する値であるが、通常使用状態における環境条件(例えば、室温27℃、室内湿度60%)で発生する量(例えば、1L/h)としている。洗浄用冷房運転により前側室内熱交換器32aに発生し保水部37dに滴下した結露水は、保水部37dが形成されていない場合と比較して相対的に排水案内部36bまで容易に流れ出ない。よって、保水部37dに溜まる結露水の深さが大きくなり、結露水に含まれる塵埃が保水部37dに溜まった結露水と共に保水部37d外へ排出され易くなる。
【0037】
これにより、洗浄用冷房運転で室内熱交換器32の表面に発生しドレンパン36に滴下する結露水量が少ない場合であっても、保水部37dに滴下した結露水中の塵埃を確実に保水部37d外へ排出し、断熱材37に残らないようにすることができるため、洗浄用冷房運転後、断熱材37に塵埃が残ってドレンパン36が汚れた状態になることを未然に阻止することができる。
【0038】
次に、本発明の別実施形態について、図6に基づいて説明する。なお、凸部37b以外については前記した実施形態と同一なので、説明を省略する。
【0039】
凸部37bには、リブ37aよりも上下方向高さが低い排出部としての凹部37b1が形成されている。洗浄用冷房運転により前側室内熱交換器32aから多量の結露水が滴下すると、保水部37d外への結露水の排出が隙間37eだけでは不足し、保水部37dに溜まった結露水がリブ37aを乗り越えて保水部37d外へ排出される虞がある。リブ37aを乗り越えて保水部37d外へ排出された結露水の位置が排水案内部36bまで遠いと、断熱材37から結露水が排出されず、結露水中に含まれる塵埃が断熱材37に残りドレンパン36が汚れたままとなる虞がある。凸部37bに凹部37b1が形成されたことで、保水部37dに溜まった結露水が凹部37b1を介して排水案内部36bに流れ込む。結露水が排水案内部36bから遠い保水部37d外に排出されることがなく、洗浄用冷房運転後、ドレンパン36に塵埃が残ることを未然に阻止することができる。
【0040】
凸部37bに形成した凹部37b1は、本実施形態のように高さが一律に低くなった構造に限定されない。例えば、前後方向において上端の高さが異なる面を複数有したような構成にし、保水部37d外へ排出する結露水量を調節可能としたものであってもよい。
【0041】
なお、本実施形態、及び別実施形態では、ドレンパン36に断熱材37を設置したもので説明したが、これに限られない。ドレンパン36に断熱材37を設置せず、ドレンパン36の底面にリブ、及び凸部を形成し、前記リブの左右端部と前記凸部との間に排出部としての隙間、及び前記凸部に凹部を形成してもよい。この場合、ドレンパン36の壁部36a、前記リブ、及び前記凸部で囲われた範囲が保水部となる。
【0042】
前記隙間による結露水の排出能力を洗浄用冷房運転により前側室内熱交換器32aに発生する結露水量未満となるよう、前記隙間の大きさを設定することで、前記保水部に結露水を一時的に溜めてから前記保水部外へ結露水を排出することができるので、洗浄用冷房運転後、ドレンパン36に塵埃が残ることを未然に阻止することができる。
【0043】
また、本実施形態、及び別実施形態では、前側室内熱交換器32aの下方に設置したドレンパン36で説明したが、これに限られない。洗浄用冷房運転により室内熱交換器32で発生する結露水を回収可能な位置にあるドレンパン36において、本発明における保水部、及び排出部に該当するものが形成されていれば、本発明の範疇である。
【0044】
次に、本発明の効果を説明する。
【0045】
ドレンパン36には、室内熱交換器32から滴下した結露水を一時的に溜める保水部37dと、保水部37dに溜められた結露水を保水部37d外のドレンパン36に排出する隙間37eと、が設けられ、隙間37eによる結露水の排出能力を洗浄用冷房運転により室内熱交換器32に発生する結露水量未満とした。洗浄用冷房運転により室内熱交換器32に発生し、保水部37dに滴下した結露水を一時的に溜めてから保水部37d外へ排出する。洗浄用冷房運転により保水部37dに付着した塵埃が溜められた結露水により浮き、塵埃を含む結露水が保水部37d外へ排出される。洗浄用冷房運転により室内熱交換器32に発生しドレンパン36に滴下する結露水量が少なくても、洗浄用冷房運転後、ドレンパン36に塵埃が残り、ドレンパン36が汚れた状態になることを未然に阻止することができる。
【0046】
また、保水部37dは、ドレンパン36の長手方向である左右方向に延伸するリブ37aと、リブ37aの長手方向である左右方向端部と対向しリブ37aに対して垂直な方向に延伸した凸部37bと、リブ37aの長手方向である左右方向と対向しリブ37aに対して平行な方向に延伸した後方側の壁部37cと、で囲われた範囲で構成され、排出部は、リブ37aと凸部37bとの間に形成された隙間37eで構成された。洗浄用冷房運転で発生し滴下する結露水を一時的に溜める保水部37d、及び保水部37dから結露水を排出する排出部を、簡易な構造でドレンパン36に形成することができる。
【0047】
また、凸部37bは、リブ37aよりも高さが低い凹部37b1を有する。洗浄用冷房運転により室内熱交換器32で発生し、ドレンパン36へ滴下する結露水が多量にある場合、結露水がリブ37aを乗り越えて保水部37d外へ排出され、排水案内部36bまでスムーズに案内されず、結露水中の塵埃がドレンパン36に残る虞がある。凸部37bにリブ37aよりも高さが低い凹部37b1を有することで、保水部37d内に結露水が多量に溜まった場合、結露水が凹部37b1を介して排水案内部36bに排出される。結露水がリブ37aを乗り越えて保水部37d外へ排出され、排水案内部36bに到達しない結露水の発生を未然に阻止することができるので、ドレンパン36に塵埃が残り、ドレンパン36が汚れることを未然に阻止することができる。
【0048】
また、ドレンパン36に断熱材37が設置され、保水部37d、及び排出部である隙間37eが断熱材37に形成された。ドレンパン36に対して直接成形することに対し、保水部37d、及び隙間37eを容易に成形することが可能となるので、作業効率が向上する。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
10 エアコン装置(空気調和機)
30 室内機
31 室内ファン
32 室内熱交換器
36 ドレンパン
36a 壁部
37 断熱材
37a リブ
37b 凸部
37b1 凹部(排出部)
37c 壁部
37d 保水部
37e 隙間(排出部)
40 室内制御部(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6