(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112790
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】水中油型日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/893 20060101AFI20230807BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230807BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230807BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230807BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230807BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20230807BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20230807BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230807BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
A61K8/893
A61K8/06
A61Q17/04
A61K8/34
A61K8/73
A61K8/60
A61K8/31
A61K8/36
A61K8/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014716
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 健人
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB212
4C083AC011
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC212
4C083AC241
4C083AC262
4C083AC342
4C083AC372
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC662
4C083AC852
4C083AC911
4C083AD072
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD221
4C083AD241
4C083AD242
4C083AD352
4C083BB05
4C083BB21
4C083BB46
4C083CC19
4C083DD33
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE17
(57)【要約】
【課題】本発明は、肌に塗布した際に透明で、みずみずしい使用感触があり、高い紫外線防御効果を有する水中油型日焼け止め化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の水中油型日焼け止め化粧料は、(A)1価アルコールおよび2価アルコールから選択される水性成分、(B)ポリオキシアルキレン変性シリコーン、(C)紫外線吸収剤、および(D)以下から選択される少なくとも1種の紫外線防御力向上剤:(D-1)比表面積が190m2/g以上の親水性粉末および(D-2)デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、固形または半固形の炭化水素油、有機変性粘土鉱物および脂肪酸またはその塩から選択される油相増粘剤を含み、前記(A)水性成分が、1価アルコール単独の場合には化粧料全量に対して1~15質量%であり、2価アルコール単独の場合には化粧料全量に対して1~20質量%であり、1価アルコールと2価アルコールとの組み合わせである場合にはその合計量が化粧料全量に対して1~45質量%であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1価アルコールおよび2価アルコールから選択される水性成分、
(B)ポリオキシアルキレン変性シリコーン、
(C)紫外線吸収剤、および
(D)以下から選択される少なくとも1種の紫外線防御力向上剤
(D-1)比表面積が190m2/g以上の親水性粉末
(D-2)デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、固形または半固形の炭化水素油、有機変性粘土鉱物および脂肪酸またはその塩から選択される油相増粘剤
を含み、
前記(A)水性成分が、1価アルコール単独の場合には化粧料全量に対して1~15質量%であり、2価アルコール単独の場合には化粧料全量に対して1~20質量%であり、1価アルコールと2価アルコールとの組み合わせである場合にはその合計量が化粧料全量に対して1~45質量%である、水中油型日焼け止め化粧料。
【請求項2】
さらに、(E)アニオン性界面活性剤を含む、請求項1に記載の水中油型日焼け止め化粧料。
【請求項3】
前記(B)成分が、PEG-12ジメチコンである、請求項1または2に記載の水中油型日焼け止め化粧料。
【請求項4】
前記(B)成分からなるナノディスクが油水界面に付着している、請求項1から3のいずれか一項に記載の水中油型日焼け止め化粧料。
【請求項5】
前記(D-1)親水性粉末がシリカである、請求項1から4のいずれか一項に記載の水中油型日焼け止め化粧料。
【請求項6】
前記(D)成分として、(D-1)比表面積が190m2/g以上の親水性粉末と、(D-2)デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、固形または半固形の炭化水素油、有機変性粘土鉱物および脂肪酸またはその塩から選択される1種以上の油相増粘剤を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の水中油型日焼け止め化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌に塗布した際に透明で、みずみずしい使用感触があり、高い紫外線防御効果を有する水中油型日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線の害から肌を守るために、化粧料においては、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤といった紫外線防御剤が配合される。紫外線吸収剤は、透明性が高い、肌へののび広がりが良い、汗で崩れにくいといった利点があるが、極性が高いので水中油型乳化化粧料に多く配合すると乳化安定性を悪くする場合がある。また、酸化亜鉛や酸化チタン等の無機粉末成分である紫外線散乱剤は、物理的な仕組みで紫外線を散乱・反射することによって肌への紫外線の害を低減するので熱エネルギー等を発生する紫外線吸収剤と比較して刺激が少ないという利点があるが、配合すると化粧料を肌に塗布した際の透明性が失われて白浮きしたり、使用感触が悪くなる場合がある。
よって、日焼け止め化粧料において、高い紫外線防御効果(高SPF)を実現するためには、紫外線吸収剤および紫外線散乱剤のそれぞれの利点を活かしながら、バランス良く組み合わせて配合することが一般的である。
【0003】
近年、シリコーン系界面活性剤により形成される平板状のラメラ液晶閉鎖体(シリコーンナノディスク)を油水界面に吸着させることによって、みずみずしい使用感触がありながら、乳化安定性が高い水中油型乳化化粧料が得られることが知られている(特許文献1)。この水中油型乳化化粧料は乳化安定性が高いため、紫外線吸収剤等の極性油を安定に配合することができるという利点を有する。
【0004】
しかしながら、上記シリコーンナノディスクを用いた水中油型乳化化粧料において塗布膜の透明性を得るために紫外線散乱剤を配合せず、紫外線吸収剤を多く配合したとしても、紫外線吸収剤の配合のみでは高い紫外線防御効果(高SPF)を得ることは困難であった。
また、高極性の紫外線吸収剤を用いる際には、安定性を良くするためにシリコーン油を組み合わせて配合することが行われる。しかしながら、シリコーンナノディスクを用いた水中油型乳化化粧料においては、シリコーン系原料を配合するとシリコーンナノディスクの安定性を悪くする傾向があるので、シリコーン系原料の使用をできる限り避ける必要がある。
【0005】
よって、シリコーンナノディスクを用いた水中油型乳化化粧料においては、シリコーンナノディスク特有の安定性とみずみずしい使用感を維持しながら、肌に塗布した際に透明でありかつ高SPFを有する化粧料を得ることに困難性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2021/177400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、シリコーンナノディスクを用いた水中油型乳化化粧料において、紫外線散乱剤を用いなくとも高い紫外線防御効果(高SPF)が実現でき、みずみずしい使用感を有する水中油型日焼け止め化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、シリコーンナノディスクを用いた水中油型乳化化粧料において、特定の化合物を配合することによって、紫外線防御剤が有する紫外線防御効果が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、日焼け止め化粧料において高SPFを達成するために紫外線吸収剤と紫外線散乱剤を組み合わせて配合するという一般的な方法とは異なり、特定の親水性粉末または特定の油相増粘剤が、紫外線防御力の向上剤または増幅剤として機能することを見出したことに基づく発明である。
【0009】
かくして、本発明は、
(A)1価アルコールおよび2価アルコールから選択される水性成分、
(B)ポリオキシアルキレン変性シリコーン、
(C)紫外線吸収剤、および
(D)以下から選択される少なくとも1種の紫外線防御力向上剤
(D-1)比表面積が190m2/g以上の親水性粉末
(D-2)デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、固形または半固形の炭化水素油、有機変性粘土鉱物および脂肪酸またはその塩から選択される油相増粘剤
を含み、
前記(A)水性成分が、1価アルコール単独の場合には化粧料全量に対して1~15質量%であり、2価アルコール単独の場合には化粧料全量に対して1~20質量%であり、1価アルコールと2価アルコールとの組み合わせである場合にはその合計量が化粧料全量に対して1~45質量%である、水中油型日焼け止め化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る化粧料は、上記構成とすることにより、紫外線吸収剤の配合のみで高い紫外線防御効果を有する水中油型日焼け止め化粧料を得ることができる。すなわち、本発明の化粧料は、肌に塗布した際に透明性があり、スキンケア化粧料のようなみずみずしい使用感がありながら、高SPFを実現することができる。
また、特定の親水性粉末または特定の油相増粘剤を配合することによって得られる紫外線防御向上効果はそれぞれ互いに干渉しないため、高SPFを得るうえで本発明の親水性粉末と油相増粘剤とを組み合わせる利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る水中油型乳化化粧料は、(A)1価アルコールおよび2価アルコールから選択される水性成分、(B)ポリオキシアルキレン変性シリコーン、(C)紫外線吸収剤、および(D)特定の化合物から選択される紫外線防御力向上剤を含むことを特徴とする。以下、本発明の化粧料を構成する各成分について詳述する。
【0012】
<(A)水性成分>
本発明に係る化粧料に配合される(A)水性成分(以下、単に「(A)成分」と称する場合がある)は、1価アルコールおよび2価アルコールから選択される1種または2種以上を指す。
1価アルコールとしては、化粧料に通常用いられるものであれば特に限定されないが、エチルアルコール(エタノール)、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられ、本発明においては、エチルアルコールが好ましい。
2価アルコールとしては、化粧料に通常用いられるものであれば特に限定されないが、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられ、本発明においては、1,3-ブチレングリコールが好ましい。
【0013】
界面活性剤により形成される球状ベシクルは表面がすべて親水基で覆われているが、ナノディスクはエッジ部分に親油基を有するため、ナノディスクを水中で生成させることは難しい。(A)1価および2価のアルコールが水中に存在すると溶媒効果により界面活性剤(本発明においては、(B)ポリオキシアルキレン変性シリコーン)が親水化され、その結果、球状ベシクルからナノディスクへの転移が促進される。
【0014】
一方、PEG-12ジメチコン等のポリオキシアルキレン変性シリコーンをアルコールに溶解する場合、グリセリン等の3価アルコール、ソルビトール等の多価アルコール等は界面活性剤を親油化してナノディスクへの転移を阻害する傾向があるため、3価以上のアルコールを配合する場合には、(A)1価および2価のアルコールの総量を3価以上の多価アルコールの総量より多くすることが望ましい。
【0015】
1価アルコールを単独で用いる場合には、その配合量は化粧料全量に対して1~15質量%であり、2価アルコールを単独で用いる場合には、その配合量は化粧料全量に対して1~20質量%である。また、1価アルコールと2価アルコールとを組み合わせて用いる場合には、その合計配合量は化粧料全量に対して1~45質量%であり、好ましくは1~35質量%である。より好ましくは以下の式(1)を満たす1価アルコールおよび2価アルコールの濃度を上限として配合することが好ましい。
水相中1価アルコール濃度(%)/15+水相中2価アルコール濃度(質量%)/20≦1 (1)
【0016】
1価アルコール単独の配合量、2価アルコール単独の配合量または1価アルコールおよび2価アルコールの合計配合量が1質量%未満であると、ベシクルが生成しないか構造が乱れて乳化できなくなる場合がある。また、1価アルコール単独の配合量が15質量%を超える場合や2価アルコール単独の配合量が20質量%を超える場合、さらに1価アルコールおよび2価アルコールの配合比が上記式(1)の範囲外である場合や上記式(1)の範囲内であっても合計配合量が45質量%を超えるとベシクル膜が柔軟になりすぎるかベシクルがミセルへ転移してしまい安定化効果が得られない場合がある。
【0017】
<(B)ポリオキシアルキレン変性シリコーン>
本発明に係る化粧料に配合される(B)ポリオキシアルキレン変性シリコーン(以下、単に「(B)成分」と称する場合がある)は、疎水性基としてポリシロキサン構造、親水基としてポリオキシアルキレン構造を有する界面活性剤であり、ジメチコンのメチル基の一部をポリエチレングリコールで置換した水溶性のシリコーン系界面活性剤であることが好ましい。具体的には下記式(2)で表される。
【0018】
【0019】
前記式(2)中、R1は、水素または炭素数1~6のアルキル基であり、それぞれ同一でも、独立に異なっていてもよい。Aは、少なくともその1つが式(3):
-(CH2)a-(C2H4O)b-(C3H6O)c-R2 (3)
で示されるポリオキシアルキレン基であり、その他のAは水素または炭素数1~6のアルキル基であり、それぞれ同一でも独立に異なっていてもよい。式(3)中のR2は水素または炭素数1~6のアルキル基であり、aは1~6、bは0~50、cは0~50の整数であり、b+cは少なくとも5以上である。前記式(2)のmは1~200の整数であり、nは0~50の整数である。
本発明の(B)ポリオキシアルキレン変性シリコーンとしては、グリフィンの式によるHLB計算においてHLBが10未満であることが好ましい。
【0020】
本発明に係る化粧料においては、(B)ポリオキシアルキレン変性シリコーンの中でも特に前記式(3)においてcが0、bが12であるPEG-12ジメチコンが好ましい。また、PEG-12ジメチコンはHLBが10未満であることがさらに好ましい。
【0021】
PEG-12ジメチコンの市販品としては、DOWSILTM ES-5373、SH3772M,SH3773M,SH3775M(いずれもダウ・東レ社製)、IM-22(ワッカーケミカル社製)等が挙げられる。
【0022】
(B)成分の配合量は、ナノディスクの前駆体であるベシクルを形成し得る限り特に限定されないが、例えば、化粧料全量に対して0.1~5.0質量%であり、好ましくは0.3~3.0質量%、さらに好ましくは0.8~2.0質量%である。配合量が0.1質量%未満であると十分にベシクルが形成されない場合があり、5.0質量%を超えるとベシクルの安定性が劣る場合がある。
【0023】
本発明において、ベシクルとは二分子膜(ラメラ液晶)からなる球状閉鎖体を指す。本発明に係る化粧料は、(B)成分の界面活性剤からなるナノディスクを含有する。ナノディスクの前駆体であるベシクルは常法によって形成させることが可能である。具体的には、(A)水性成分と(B)ポリオキシアルキレン変性シリコーンとを混合攪拌することによって、(B)成分からなるベシクルが形成される。ベシクル形成に際しては、(A)水性成分の他に、水や通常化粧品に用いられる水性成分がベシクルの安定性を損なわない範囲の量で配合されていてもよい。なお、ベシクルの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、通常30nm~150nm程度である。
【0024】
ここで「ナノディスク」とは、両親媒性物質により形成されるベシクル(ラメラ液晶球状閉鎖体)を前駆体とした平板状のラメラ液晶閉鎖体であり、閉鎖体内部に水溶性成分を内包せず、エッジ部分に親油基を有するものをいう。ナノディスクは、油を含まない組成においては前駆体であるベシクルとして存在し、油を添加して乳化を行うことでベシクルがナノディスクに構造変化(以下「転移」ともいう)する。本発明のナノディスクは、1価アルコールおよび2価アルコールから選択される水性成分とポリオキシアルキレン変性シリコーンとを混合してベシクルを形成させたベシクル水分散液に、アニオン性界面活性剤と油分を添加し、強い攪拌力を加えながら分散することによって得られる。ナノディスクは、乳化状態において油水界面に吸着した状態で存在し、乳化安定性に寄与する。本明細書では、ベシクルを形成する両親媒性物質がシリコーン系界面活性剤であるので、本発明のナノディスクを「シリコーンナノディスク」とも指す。
【0025】
<(C)紫外線吸収剤>
本発明に係る化粧料に配合される(C)紫外線吸収剤(以下、単に「(C)成分」と称する場合がある)は、日焼け止め化粧料に通常配合されるものを使用することができる。例えば、安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイヒ酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β,β-ジフェニルアクリレート誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジリデンショウノウ誘導体、フェニルベンズイミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルベンゾトリアゾール誘導体、アントラニル誘導体、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、4,4-ジアリールブタジエン誘導体等が例示される。以下に具体例および商品名などを列挙するが、これらに限定されるものではない。
【0026】
安息香酸誘導体としては、パラ-アミノ安息香酸(PABA)エチル、エチル-ジヒドロキシプロピルPABA、エチルヘキシル-ジメチルPABA(例えば「エスカロール507」;ISP社)、グリセリルPABA、PEG-25-PABA(例えば「ユビナールP25」;BASF社)、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(例えば「ユビナールAプラス」)などが例示される。
【0027】
サリチル酸誘導体としては、ホモサレート(「ユーソレックス(Eusolex)HMS」;ロナ/EMインダストリーズ社)、エチルヘキシルサリチレート又はサリチル酸エチルヘキシル(例えば「ネオ・ヘリオパン(NeoHeliopan)OS」;ハーマン・アンド・レイマー社)、ジプロピレングリコールサリチレート(例えば「ディピサル(Dipsal)」;スケル社)、TEAサリチラート(例えば「ネオ・ヘリオパンTS」;ハーマン・アンド・レイマー社)などが例示される。
【0028】
ケイヒ酸誘導体としては、オクチルメトキシシンナメート又はメトキシケイヒ酸エチルヘキシル(例えば「パルソールMCX」;ホフマン-ラ・ロシュ社)、メトキシケイヒ酸イソプロピル、メトキシケイヒ酸イソアミル(例えば「ネオ・ヘリオパンE1000」;ハーマン・アンド・レイマー社)、シンノキセート、DEAメトキシシンナメート、メチルケイヒ酸ジイソプロピル、グリセリル-エチルヘキサノエート-ジメトキシシンナメート、ジ-(2-エチルヘキシル)-4’-メトキシベンザルマロネートなどが例示される。
【0029】
ジベンゾイルメタン誘導体としては、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン(例えば「パルソール1789」)などが例示される。
【0030】
β,β-ジフェニルアクリレート誘導体としては、オクトクリレン(例えば「ユビナールN539T」;BASF社)などが例示される。
【0031】
ベンゾフェノン誘導体としては、ベンゾフェノン-1(例えば「ユビナール400」;BASF社)、ベンゾフェノン-2(例えば「ユビナールD50」;BASF社)、ベンゾフェノン-3又はオキシベンゾン(例えば「ユビナールM40」;BASF社)、ベンゾフェノン-4(例えば「ユビナールMS40」;BASF社)、ベンゾフェノン-5、ベンゾフェノン-6(例えば「ヘリソーブ(Helisorb)11」;ノルクアイ社)、ベンゾフェノン-8(例えば「スペクトラ-ソーブ(Spectra-Sorb)UV-24」;アメリカン・シアナミド社)、ベンゾフェノン-9(例えば「ユビナールDS-49」;BASF社)、ベンゾフェノン-12などが例示される。
【0032】
ベンジリデンショウノウ誘導体としては、3-ベンジリデンショウノウ(例えば「メギゾリル(Mexoryl)SD」;シメックス社)、4-メチルベンジリデンショウノウ、ベンジリデンショウノウスルホン酸(例えば「メギゾリルSL」;シメックス社)、メト硫酸ショウノウベンザルコニウム(例えば「メギゾリルSO」;シメックス社)、テレフタリリデンジショウノウスルホン酸(例えば「メギゾリルSX」;シメックス社)、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンショウノウ(例えば「メギゾリルSW」;シメックス社)などが例示される。
【0033】
フェニルベンズイミダゾール誘導体としては、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸(例えば「オーソレックス232」;メルク社)、フェニルジベンズイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム(例えば「ネオ・ヘリオパンAP」;ハーマン・アンド・レイマー社)などが例示される。
【0034】
トリアジン誘導体としては、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(例えば「チノソーブ(Tinosorb)S」;チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社)、エチルヘキシルトリアゾン(例えば「ユビナールT150」;BASF社)、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン(例えば「ユバソーブ(Uvasorb)HEB」;シグマ3 V社)、2,4,6-トリス(ジイソブチル-4’-アミノベンザルマロナート)-s-トリアジン、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジンなどが例示される。
【0035】
フェニルベンゾトリアゾール誘導体としては、ドロメトリゾールトリシロキサン(例えば「シラトリゾール(Silatrizole)」;ローディア・シミー社)、メチレンビス(ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール)(例えば「チノソーブM」(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社))などが例示される。
【0036】
アントラニル誘導体としては、アントラニル酸メンチル(例えば「ネオ・ヘリオパンMA」;ハーマン・アンド・レイマー社)などが例示される。
【0037】
イミダゾリン誘導体としては、エチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオナートなどが例示される。
【0038】
ベンザルマロナート誘導体としては、ベンザルマロナート官能基を有するポリオルガノシロキサン(例えば、ポリシリコーン-15;「パルソールSLX」;DSMニュートリション ジャパン社)などが例示される。
【0039】
4,4-ジアリールブタジエン誘導体としては、1,1-ジカルボキシ(2,2’-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエンなどが例示される。
【0040】
本発明に用いる(C)紫外線吸収剤は、1種を単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
(C)紫外線吸収剤の配合量は、化粧料全量に対して、3~40質量%であり、好ましくは3~30質量%、さらに好ましくは3~20質量%である。(A)紫外線吸収剤の配合量が3質量%未満では十分な紫外線防御効果が得られにくく、40質量%を超えて配合しても配合量に見合った紫外線防御効果の増加を期待できず、却って安定性や使用性が悪くなるなどの点から好ましくない。
【0041】
一般的に日焼け止め化粧料においては、高SPFを達成するためにメトキシケイヒ酸エチルヘキシルが配合されることが多い。
本発明の日焼け止め化粧料においては、後述の(D)紫外線防御力向上剤を配合することにより高SPFを達成することができるため、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルの配合量が化粧料全量に対して3質量%以下あるいは1質量%以下であってもよく、さらには、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルを含まなくとも高いSPFを得ることができる。
【0042】
本発明の日焼け止め化粧料は、(C)紫外線吸収剤の配合のみで高い紫外線防御効果を得ることができるので、酸化亜鉛、酸化チタン等の紫外線散乱剤を含まなくてもよい。よって、本発明の態様には、紫外線散乱剤の配合量が化粧料全量に対して3質量%以下あるいは1質量%以下である態様、ないしは、紫外線散乱剤を含まない態様が含まれる。
本発明の化粧料においては、紫外線散乱剤の配合量を少なくする、あるいは、紫外線散乱剤を配合しないことにより、肌に塗布した際に白浮きせず透明な日焼け止め化粧料とすることができる。
【0043】
本発明において「透明」とは、化粧料を肌に塗布した際に色彩、特に白色が生じないことを意味する。具体的には、画像色彩計測装置IMAGE COLORIMETER(浅枝設計事務所製)を使用して、刺激値直読方法に基づき算出される明度(L値)を求め、塗布前の明度(L0)と塗布後の明度(L*)の差(ΔL)が1.2以下、好ましくは0.65以下の場合に塗布後が透明であるとした。
【0044】
<(D)紫外線防御力向上剤>
本発明の(D)紫外線防御力向上剤(以下、単に「(D)成分」と称する場合がある)とは、本発明に係る化粧料に配合される紫外線吸収剤が有する紫外線防御力を向上させるまたは増幅する機能を有する化合物を指す。具体的には、以下の(D-1)成分および(D-2)成分から選択される化合物である。
【0045】
(D-1)親水性粉末
本発明に係る化粧料に配合される(D-1)親水性粉末(以下、単に「(D-1)成分」と称する場合がある)は、化粧料に通常配合されるものであって、粒子表面が親水性であり、比表面積が190m2/g以上、好ましくは190~800m2/gである粉末成分を指す。
(D-1)成分を構成する粉末としては、シリカ(無水ケイ酸)、セルロース、スターチ、タルク、マイカ等を挙げることができる。なかでも、シリカが好ましい。
【0046】
本発明の(D-1)成分としては、サンスフェアL-51S(AGCエスアイテック社製)、ゴッドボールE-6C(鈴木油脂工業社製)、TMS-10(テイカ社製)等の市販品を用いることもできる。
【0047】
前記(D-1)成分のなかでも、平均粒子径が4~15μmかつJIS K5101-13-2(煮あまに油法)に従って測定した吸油量が120~250ml/100gの粉末を用いると、紫外線防御力向上効果が特に優れる。なお、本発明における平均粒子径は、粉末0.05gをエタノール溶媒20g中に添加後、超音波ホモジナイザー(US-150T;日本精機製作所製)を用いて1分間超音波分散を行い、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(MT3300EXII;マイクロトラック・ベル製)を用いて体積平均粒子径(D50)として測定した値である。
【0048】
本発明の(D-1)親水性粉末として、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(D-1)成分の配合量は、化粧料全量に対して、1~10質量%が好ましく、1~8質量%がより好ましく、1.5~6質量%がさらに好ましい。(D-1)成分の配合量が1質量%未満では(D-1)成分による紫外線防御力向上効果を十分に発揮できない傾向があり、10質量%を超えて配合すると使用性が悪くなる場合がある。
【0049】
(D-2)油相増粘剤
本発明に係る化粧料に配合される(D-2)油相増粘剤(以下、単に「(D-2)成分」と称する場合がある)は、通常の乳化型化粧料等において油分に溶解または油分で膨潤することにより油相を増粘する効果を発揮する成分として使用されている物質から適宜選択できる。具体例としては、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、固形または半固形の炭化水素油、有機変性粘土鉱物、あるいは脂肪酸またはその塩等が挙げられる。
【0050】
デキストリン脂肪酸エステルは、デキストリンまたは還元デキストリンと高級脂肪酸とのエステルであり、化粧料に一般的に使用されているものであれば特に制限されず使用することができる。デキストリンまたは還元デキストリンは平均糖重合度が3~100のものを用いるのが好ましい。また、デキストリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸としては、炭素数8~22の飽和脂肪酸を用いるのが好ましい。具体的には、パルミチン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸)デキストリン等を挙げることができる。
【0051】
ショ糖脂肪酸エステルは、その脂肪酸が直鎖状あるいは分岐鎖状の、飽和あるいは不飽和の、炭素数12~22のものを好ましく用いることができる。具体的には、ショ糖カプリル酸エステル、ショ糖カプリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル等を挙げることができる。
【0052】
固形または半固形の炭化水素油は、常温(25℃)で固形または半固形の炭化水素であり、具体例として、オゾケライト、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、水添パーム油、パーム核硬化油、硬化ヒマシ油、水添ピーナッツ(落花生)油、水添ナタネ種子油、水添ツバキ油、水添大豆油、水添オリーブ油、水添マカダミアナッツ油、水添ヒマワリ油、水添小麦胚芽油、水添米胚芽油、水添米ヌカ油、水添綿実油、水添アボカド油等を挙げることができる。
【0053】
有機変性粘土鉱物は、三層構造を有するコロイド性含水ケイ酸アルミニウムの一種で、下記式(4)で表される粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で変性したものが代表的である。
(X,Y)2-3(Si,Al)4O10(OH)2Z1/3・nH2O (4)
ただし、X=Al、Fe(III)、Mn(III)、Cr(III)、Y=Mg、Fe(II)、Ni、Zn、Li、Z=K、Na、Caである。
【0054】
有機変性粘土鉱物の具体例として、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト(ジステアルジモニウムヘクトライト)、ジメチルアルキルアンモニウムヘクトライト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ケイ酸アルミニウムマグネシウム等が挙げられる。市販品としては、ベントン27(ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:エレメンティスジャパン社製)およびベントン38(ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:エレメンティスジャパン社製)が好ましい。
【0055】
脂肪酸としては、化粧料等に使用できるものであれば特に限定されるものではなく、直鎖状または分岐鎖状の飽和または不飽和の炭化水素基を有する脂肪酸から選択できる。特に、常温で固体であり、かつ、炭素数8~22の高級脂肪酸、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸(ベヘン酸)、オレイン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸等が挙げられる。なかでも、ステアリン酸、パルミチン酸およびベヘニン酸から選択される1種または2種以上を用いるのが特に好ましい。脂肪酸の塩としては、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等の金属塩を挙げることができる。また、脂肪酸のアミド誘導体やエステル誘導体を用いることもできる。
【0056】
なかでも、本発明の(D-2)油相増粘剤として、デキストリン脂肪酸エステルを用いるのが好ましい。
本発明の(D-2)油相増粘剤として、上記物質から選択される1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
(D-2)油相増粘剤の配合量は、化粧料全量に対して0.01~10質量%、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.1~2質量%とすることができる。配合量が0.01質量%未満では十分な紫外線防御力向上効果が得られず、10質量%を超えて配合しても効果のさらなる増大は得られ難い傾向がある。
【0058】
本発明において、前記(D-1)成分または前記(D-2)成分によって得られる紫外線防御力向上効果は、互いの効果を打ち消すことなくそれぞれ発揮される効果であるので、前記(D-1)成分と前記(D-2)成分を組み合わせて配合すると紫外線防御力向上効果において相加的効果が得られる。よって、日焼け止め化粧料において高SPFを達成するうえで前記(D-1)成分と前記(D-2)成分とを組み合わせる利点がある。
【0059】
本発明に係る化粧料においては、前記(A)~(D)成分に加え、(E)アニオン性界面活性剤(以下、単に「(E)成分」と称する場合がある)を配合することにより乳化安定性をさらに向上させることができる。
【0060】
本発明に係る化粧料に配合される(E)アニオン性界面活性剤は、通常化粧料に用いられるものであればよく、前記(B)ポリオキシアルキレン変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤以外のものであって、カルボン酸、スルホン酸、リン酸構造を有するもの等の陰イオン性の親水基を持つ界面活性剤をいう。アニオン性界面活性剤の配合によりナノディスクが安定化する。
【0061】
なかでも、クラフト点が室温より高いアニオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。アニオン性界面活性剤のクラフト点が室温より低い場合には、シリコーン系界面活性剤とアニオン性界面活性剤が混ざりやすく、相互作用しやすくなるため、ベシクルからナノディスクへの転移が妨げられる傾向がある。
【0062】
本発明に係る化粧料に配合される(E)アニオン性界面活性剤としては、スルホン酸塩型アニオン性界面活性剤が好ましい。スルホン酸塩型アニオン性界面活性剤としては、スルホコハク酸ジエステル塩、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩、アシルメチルタウリン塩、アシルタウリン塩、セチルリン酸カリウム、ココイルグルタミン酸カリウム等が挙げられる。なかでも、アシルメチルタウリン塩、セチルリン酸カリウムおよびココイルグルタミン酸カリウムから選択して用いるのが好ましい。
【0063】
本発明においては、特にN-アシルメチルタウリン塩をアニオン性界面活性剤として配合することが好ましい。さらに下記式(5)で表されるN-アシルメチルタウリン塩の中でもN-ステアロイル-N-メチルタウリン塩であることが好ましい。
【0064】
【0065】
(E)成分は、本発明の化粧料における選択的配合成分であるから、必ず配合しなければならないものではないが、配合する場合には、ナノディスク安定化の観点から好ましい配合量である必要がある。例として、化粧料全量に対して0.01~1質量%、0.01~0.1質量%、0.01~0.06質量%が挙げられる。また、(B)ポリオキシアルキレン変性シリコーンと(E)アニオン性界面活性剤との配合量比が質量比にして1:0 .01~1:0.06であることが好ましい。
【0066】
本発明に係る化粧料に配合される水は、イオン交換水、精製水、水道水、天然水等、必要に応じて選択される。配合量は、本発明に係る必須成分と、その他の任意的配合成分の和に対する残量(化粧料全量に対する質量%)である。一般的には、化粧料全量に対して30~70質量%程度が好適である。
【0067】
本発明に係る水中油型乳化化粧料には、上記成分の他に、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の任意の添加成分、例えば、(C)成分以外の油分、多価アルコール、非イオン性界面活性剤、皮膜剤、収れん剤、キレート剤、pH調整剤、酸化防止剤、美白剤等の各種薬剤、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。ただし、これら例示に限定されるものではない。
【0068】
本発明に係る化粧料は前記(C)成分以外の油分が配合されてもよい。前記(C)成分以外の油分としては、炭化水素油、エステル油、炭素数12~22の高級アルコール、油脂が挙げられる。
【0069】
炭化水素油としては、常温(25℃)で液状の炭化水素であり、例えば、流動パラフィン、イソヘキサデカン、イソドデカン、スクワラン、スクワレン、プリスタン、パラフィン、イソパラフィン、水添ポリイソブテン、オレフィンオリゴマー、揮発性炭化水素油(例えば、イソドデカン、イソヘキサデカン、ウンデカン、トリデカン等)等が挙げられる。
【0070】
エステル油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-へプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸グリセリン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリエチルヘキサノイン(トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル)、セチル2-エチルヘキサノエート、パルミチン酸2-エチルヘキシル、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2-へプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、ジピバリン酸ポリプロピレングリコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等のトリエステル油等が挙げられる。
【0071】
炭素数12~22の高級アルコールとしては、例えば、オレイルアルコール、2-デシルテトラデシノール、ドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等が挙げられる。
【0072】
油脂としては、例えば、モクロウ、カカオ脂、アボカド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等が挙げられる。
【0073】
前記(C)成分以外の油分は、本発明の化粧料における選択的配合成分であるから、必ず配合しなければならないものではないが、配合する場合には、当該配合の効果が認められる程度に、かつ、配合量が過度になって使用感を損なう等の弊害が認められない限度で配合することが好ましい。本発明に係る化粧料における前記(C)成分以外の油分の好適な配合量としては、化粧料全量に対して1~30質量%程度が好ましい。
【0074】
乳化安定性を良くする観点から、本発明の化粧料においては、シリコーン油の配合量は化粧料全量に対して5質量%以下、あるいは3質量%以下、さらに1質量%以下であることが好ましい。また、本発明の態様には、シリコーン油を実質的に配合しない化粧料が包含される。
【0075】
本発明に係るナノディスクの前駆体であるベシクルは、(B)ポリオキシアルキレン変性シリコーンを(A)水性成分と十分に混合し、次いでその混合液を(A)成分以外の水性成分を含む水相に攪拌しながら滴下することによって、ベシクル水分散液として製造することができる。前記(B)ポリオキシアルキレン変性シリコーンと(A)水性成分の混合状態は、当該混合液が透明で一相状態であることが確認できればよく、例えば、室温~90℃で1~30分間混合を行うことで達成することができる。この方法により、動的光散乱法によって測定される平均粒子径が30~150nmであるベシクル粒子が得られる。
【0076】
本発明に係るベシクルは、常法により、ベシクルの二分子膜内部に油性成分を保持した形態として製造することもできる。具体的には、本発明に係るベシクルは、(B)ポリオキシアルキレン変性シリコーンと(A)水性成分を混合する工程において、香料等の油溶性成分を添加して混合することにより、該油溶性成分をベシクルの二分子膜内に保持したベシクルとして製造されてもよい。
【0077】
本発明に係る水中油型乳化化粧料は、ベシクルを含む水相中に油性成分を添加し、強い攪拌力を加えながら分散することによって、ベシクルから転移したナノディスク(相)が油相(油滴)に付着した水相-ナノディスク相-油相の三相構造が形成されて安定化されたものである。
よって、本発明に係る水中油型乳化化粧料は、(B)ポリオキシアルキレン変性シリコーンからなるナノディスクが油水界面、つまり油相からなる油滴の周りに付着(局在)していることを特徴とする。前記ナノディスクは、その長径が20nm~1000nmである。
【0078】
本発明に係る水中油型乳化化粧料における水相-ナノディスク相-油相の三相構造は常法により形成させることができる。すなわち、撹拌下で、(B)ポリオキシアルキレン変性シリコーンを(A)水性成分へ滴下してベシクル粒子を形成させてベシクル水分散液を得て、このベシクル水分散液に別途混合溶解した油性成分を加え、強い攪拌力にて分散すると、ベシクルがナノディスクに転移し、水相-ナノディスク相-油相の三相構造となる。このとき、(E)アニオン性界面活性剤を配合する場合には油性成分を加える前のベシクル水分散液に添加することが好ましい。水相中に油性成分からなる油滴が乳化分散し、さらに油滴粒子表面にナノディスクが局在しているため、乳化安定性に優れるとともに、使用感(みずみずしさ、べたつきのなさ)にも優れている。なお、撹拌に用いられる撹拌装置は特に限定されるものではなく、例えばホモミキサー、ディスパー等を使用することができる。
【0079】
なお、本発明においては、水相中に形成されるベシクル粒子は、前記したホモミキサー等で強シェアをかけることによって、十分に微小な粒子径に成型させ、水相中に均一分散させることができる。強シェアの程度は特に限定されないが、通常、ホモミキサーによる7000~12000回転/分の条件で5分間程度とする。
【0080】
本発明において、(E)アニオン性界面活性剤を配合する場合は、水相中にベシクル粒子を形成させ、そのベシクル分散液に(E)アニオン性界面活性剤を添加した後に、油性成分を加えて乳化することが好ましい。
したがって、本発明に係る水中油型乳化化粧料の製造方法は、(A)水性成分と(B)ポリオキシアルキレン変性シリコーンとを混合してベシクルを形成するベシクル形成工程と、場合によってベシクル形成工程で得られたベシクル分散液に、(E)アニオン性界面活性剤を添加する工程と、前記工程によって得られた混合液に別途混合溶解した油性成分を攪拌およびせん断力を加えながら乳化させる乳化工程と、を備える。
【0081】
前記ベシクル形成工程においては、(A)水性成分と(B)ポリオキシアルキレン変性シリコーンを予め溶解し、その溶解物を残りの水相成分と混合することで水相中にベシクルが分散したベシクル分散液を得てもよいし、(A)水性成分と(A)成分以外の水性成分とを含む水相に(B)ポリオキシアルキレン変性シリコーンを混合攪拌することで水相中にベシクルが分散したベシクル分散液を得てもよい。
【0082】
本発明に係る化粧料は、水中油型乳化物に特有のみずみずしい使用感触があり、優れた紫外線防御効果を発揮する。また、本発明に係るナノディスク含有乳化物は通常の可溶化物では配合できない程度の多くの量の油分を配合できるにもかかわらずさっぱりした使用感が得られる。
【0083】
本発明に係る化粧料は、クリーム状、乳液状、液状等の様々な剤型で好適に用いられる。製品形態としては、日焼け止め等のスキンケア化粧料、あるいは、化粧下地、ファンデーション等のメーキャップ化粧料とすることができる。
【実施例0084】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。各実施例について具体的に説明する前に、採用した評価方法について説明する。
【0085】
<紫外線防御力の向上率>
測定プレート(Sプレート)(5×5cmのV溝PMMA板、SPFMASTER-PA01)に各例の化粧料(サンプル)を2mg/cm2の量で滴下し、60秒間指で塗布し、15分間乾燥した後に、形成された塗膜の吸光度をU-3500型自記録分光光度計(日立製作所製)にて測定した。無塗布のプレートをコントロールとし、吸光度(Abs)を以下の式で算出し、280nm~400nmにおける測定値を積算し、310nmにおける吸光度を求めた。
Abs=-log(T/To)
T:サンプルの透過率、To:無塗布の透過率
【0086】
求めたサンプルの310nmにおける吸光度から、対照試料を基準とする紫外線防御力の向上率を以下の式により算出した。なお、表1に示す実施例1~6、比較例2~6および参考例は、本発明の(D)成分を配合しない比較例1を対照試料とした。
[紫外線防御力の向上率(%)]=[各サンプルの310nmにおける吸光度-対照試料の310nmにおける吸光度]/[対照試料の310nmにおける吸光度]×100
向上率0%とは、紫外線防御力の増減に変化がなかったことを表し、向上率100%および200%とは、サンプルでの紫外線防御力がそれぞれ対象試料の紫外線防御力の100%分および200%分増加した、つまり紫外線防御力がそれぞれ2倍および3倍になったことを表す。
【0087】
(実施例および比較例)
表1に掲げた組成を有する日焼け止め化粧料を調製した。具体的には、攪拌下で(B)成分を(A)成分へ滴下混合した後、アニオン性界面活性剤と他の水性成分を混合して水相溶液を得、油性成分および粉末成分を別途混合して得た油相溶液を、前記水相溶液に攪拌しながら混合することによって、水中油型乳化化粧料を得た。調製した試料について、紫外線防御力の向上率を評価した。結果は表中に示す。なお、表中の評価結果の欄における「×」の表記は、化粧料が調製できなかったことを表す。
【0088】
【0089】
*1:サンスフェアL-51S(AGCエスアイテック社製)
*2:ゴッドボールE-6C(鈴木油脂工業社製)
*3:TMS-10(テイカ社製)
*4:サティニアM5(日揮触媒化成社製)
*5:シフォンシルP-3R(日揮触媒化成社製)
【0090】
表1に示すように、本発明の(D-1)成分として比表面積190m2/g以上のシリカを配合した実施例1~3の化粧料では、本発明の(D)成分を配合していない比較例1の化粧料と比較して、紫外線防御力が向上した。
なかでも、平均粒子径4~15μmかつ吸油量120~250ml/100gのシリカを配合した化粧料(実施例1)では、紫外線防御力向上効果が特に優れていた。
一方、比表面積が190m2/g未満のシリカを配合した比較例2の化粧料では紫外線防御力向上効果は確認できず、比較例3の化粧料では紫外線防御力向上効果はほとんど確認できなかった。
【0091】
また、本発明の(D-2)成分としてデキストリン脂肪酸エステルを配合した実施例6の化粧料は、紫外線防御力が向上した。
一方、一般的には油相増粘剤と分類される化合物であっても、シリコーンワックスやロウ類は、本発明の化粧料には適さず(比較例5および比較例6)、アミノ酸ゲル化剤を配合した比較例4の化粧料では、紫外線防御力向上効果はほとんど確認できなかった。
【0092】
参考例の化粧料は、シリコーンナノディスクを用いた水中油型乳化化粧料であって、紫外線吸収剤と紫外線散乱剤を配合して高いSPFを有する日焼け止め化粧料の例である。
実施例4および実施例5に示されるように、本発明の化粧料においては、(D)成分として(D-1)成分と(D-2)成分を組み合わせて配合するとそれぞれの紫外線防御力向上効果が発揮され、紫外線散乱剤を配合しなくとも、参考例の化粧料と同程度の高いSPFを有する化粧料を得ることができる。