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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112808
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】親フック誤巻防止装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 15/00 20060101AFI20230807BHJP
   B66C 23/88 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
B66C15/00 A
B66C23/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014753
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】516259398
【氏名又は名称】株式会社礎基工
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堀田 宗憲
(72)【発明者】
【氏名】小川 清太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 翔
【テーマコード(参考)】
3F204
3F205
【Fターム(参考)】
3F204AA04
3F204BA02
3F204CA05
3F204FA01
3F204FB03
3F204FC01
3F204FD02
3F204FE03
3F205AA07
3F205CA01
(57)【要約】
【課題】親フックをクレーンの下方まで下げて固定した際に、クレーンのオペレータが誤操作により主巻ロープを巻き上げても、この巻き上げを機械的に安全に停止させる。
【解決手段】本装置Aでは、一対のアームにより各アーム間のワイヤーロープを、ブーム1と主巻ロープ11との間に主巻ロープ11に近接して配置し、主巻ロープ11の巻き上げが発生した際に、主巻ロープ11のブーム1側への引き寄せをワイヤーロープで受けて、このワイヤーロープからの引張り力をリミットスイッチで感知して制御信号をコントローラーに送信し、コントローラーにより主巻用のウィンチによる主巻ロープ11の巻き上げを停止する。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に少なくとも主巻用のブームポイントシーブ、補巻用のブームポイントシーブを有し、ベース上に起伏可能に支持されて、前記ベース上に設置される駆動装置により駆動されるブームと、前記ベース上に設置される主巻用のウィンチ又は補巻用のウィンチの一方から繰り出されて、前記ブーム先端側の前記主巻用のブームポイントシーブに巻き掛けられる主巻ロープ、他方から繰り出されて、前記補巻用のブームポイントシーブに巻き掛けられる補巻ロープと、前記主巻ロープ、前記補巻ロープの先端に連結されて、前記ブームの先端側に吊持される親フック、子フックと、前記駆動装置、前記主巻用のウィンチ、前記補巻用のウィンチの動作を制御するコントローラーとを備え、前記主巻用のウィンチ又は前記補巻用のウィンチの一方による前記主巻ロープの繰り出し、巻き取り、他方による前記補巻ロープの繰り出し、巻き取りにより、前記親フック、前記子フックを昇降するクレーンに装備され、前記親フックの誤った巻き取りを防止する親フック誤巻防止装置であって、
前記ブームの下部側で前記主巻ロープに対向する正面に幅方向に並列配置されて突設される一対のアームと、
前記一対のアームの一方に設けられ、索状を引張るための引張りばね、及び他方に設けられて、前記コントローラーに信号線を介して電気的に接続され、索状の引張り力を感知して前記コントローラーに前記主巻用のウィンチ又は前記補巻用のウィンチによる前記主巻ロープの巻き取りを停止する制御信号を送信する引張り検知器と、
一端を前記引張りばねに連結され、他端を前記引張り検知器に作動連結されて、前記一対のアーム間に張り掛けられる索状と、
を備え、
前記補巻ロープ及び前記子フックによる吊り作業に際して、前記各アームにより前記各アーム間の前記索状を、前記ブームと前記主巻ロープを下げ、前記親フックをクレーンの下方まで下げて固定した状態の前記主巻ロープとの間に配置して、
前記吊り作業中に前記主巻用のウィンチ又は前記補巻用のウィンチによる前記主巻ロープの巻き上げが発生した場合に、前記主巻ロープの前記ブーム側への引き寄せを前記索状で弾性的に受けて押えるとともに、前記主巻ロープの前記ブーム側への引き寄せにより引張られた前記索状からの引張り力を前記引張り検知器で感知して送信される制御信号に基づいて前記コントローラーにより前記主巻用のウィンチ又は前記補巻用のウィンチによる前記主巻ロープの巻き取りを停止する、
ことを特徴とする親フック誤巻防止装置。
【請求項2】
一対のアームはそれぞれ、ブームの正面に、前記ブームの正面から前方に向けて突出可能にかつ当該正面に沿って折り畳み可能に、取付金具を介して取り付けられる請求項1に記載の親フック誤巻防止装置。
【請求項3】
引張り検知器はリミットスイッチからなる請求項1又は2に記載の親フック誤巻防止装置。
【請求項4】
引張りばねは引張りコイルスプリングからなる請求項1乃至3のいずれかに記載の親フック誤巻防止装置。
【請求項5】
索状はワイヤーロープからなる請求項1乃至4のいずれかに記載の親フック誤巻防止装置。
【請求項6】
クレーンは主巻ロープ用、補巻ロープ用の過巻防止装置を備え、前記各過巻防止装置は、信号線を介して、コントローラーに電気的に接続され、引張り検知器は、当該引張り検知器の信号線を前記各過巻防止装置、前記コントローラー間の前記信号線に分岐配線式のコネクターを介して接続することにより、前記コントローラーに接続される請求項1乃至5のいずれかに記載の親フック誤巻防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン車他各種のクレーンに用い、クレーンによる吊り作業を安全に行える親フック誤巻防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築土木の工事に使用される一般的なクレーンは特許文献1などにより開示されており、その一例を図17に示している。
【0003】
図17のクレーンCは移動式クレーンの一つで、クローラ式の車両の上部に旋回可能に設置された旋回台に搭載され、所謂クレーン車として構成されている。このクレーンCでは、車両上の旋回台にブーム1がブーム支持ブラケットを介して起伏可能に支持され、旋回台上に設置されたブーム起伏ウィンチ、ブーム起伏ロープ、ガイケーブルにより駆動される。また、このクレーンCでは、ブーム1がメインブームМ1とメインブームМ1の先端から延びる上部ブームS1とを備え、メインブームМ1の先端部、上部ブームS1の先端部にそれぞれ、ブームポイントシーブ101,102が設けられる。旋回台にはまた、主巻用、補巻用の各ウィンチが設置され、主巻用、補巻用の各ウィンチから主巻ロープ11、補巻ロープ12が各別に繰り出されて、メインブームМ1の先端部、上部ブームS1の先端部の各ブームポイントシーブ101,102に巻き掛けられる。そして、主巻ロープ11はブームポイントシーブ101と親フック13に設けられるフックシーブとの間に掛け回され、先端をメインブームМ1の先端部内に設けられたエンドピンに結合されて、この主巻ロープ11により、メインブームМ1の先端部から親フック13が吊持され、補巻ロープ12の先端に子フック14が連結されて、上部ブームS1の先端部から吊持される。
なお、図17に示す上部ブーム(S1)は補助ブームとも称され、当業者間では補助シーブと称せられる(図18に示す上部ブーム(S1)も同様である。)。
【0004】
このようにして主巻用、補巻用の各ウィンチからの主巻ロープ11、補巻ロープ12の各別の繰り出し、巻き取りにより、親フック13、子フック14が昇降されるようになっている。
【0005】
このクレーンCはかかる構成を有し、各種の建築土木の工事において、親フック13は主として大負荷の低速吊り作業に使用され、子フック14は主として小(軽)負荷の高速吊り作業に使用される。
【0006】
また、この種のクレーンCには、親フックを昇降させる主巻ロープ、子フックを昇降させる補巻ロープの過巻によるワイヤー切断事故とブームの後方側への転倒事故を防止するために、主巻ロープ用、補巻ロープの過巻防止装置が設けられる。この種の過巻防止装置は特許文献2などにより開示されている。
【0007】
主巻ロープ用、補巻ロープの過巻防止装置はそれぞれ、ブームに取り付けられるリミットスイッチ、リミットスイッチのスイッチアームから垂下されるワイヤーロープ及びウェイトから構成される。この場合、ウェイトは貫通孔を有し、この貫通孔に主巻ロープ、補巻ロープが貫通されて、ウェイトが主巻ロープ、補巻ロープに沿って上下動可能であり、ウェイトによりリミットスイッチのスイッチアームが引き下げられてオフとなっている。この状態から主巻ロープ、補巻ロープが巻き取られて過巻き状態直前になると、親フック、子フックの上端がウェイトを押し上げてワイヤーロープが弛み、リミットスイッチのスイッチアームが上動してスイッチオンとなり、ロープの過巻き直前であることが検出される。そして、リミットスイッチから検出信号がウィンチの制御部に送信されて、ウィンチによる主巻ロープ、補巻ロープの巻き取りが停止される。
かくして主巻ロープ、補巻ロープの過巻が防止されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10-36081号公報
【特許文献2】特開2000-1293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、建築土木の工事でのクレーンを用いた吊り作業では、親フック又は子フックの一方を使用している間、他方は使用されず、宙吊りの状態になっている。例えば、図17に示すように、子フック14で杭を吊り、地盤に掘削された孔に挿入する作業などの場合、使用されない親フック13はクレーンC本体の上部側に巻き上げられて宙吊りになっている。そして、作業に当たり、子フック14の上下運動により杭を上下動すると、摩擦抵抗等によりクレーンに大きな負荷が掛かり、本体・ブームが揺れ、それに増幅するように使用されない親フック13が前後に振られて、ブーム1に激突し、ブームフレームやラチスが損傷することがある。このようにブーム1が損傷し変形すると、ブーム1の損傷箇所を健全なものに交換し、行政(労働基準監督署)上の検査が必要となる。この場合、少なくとも3日は工事停止となり、その分だけ工事は遅延する。
【0010】
そこで、工事の施工側としては、このような工事の遅延を回避すべく、使用されない親フック13の前後の振れを防止するために、図18に示すように、親フック13をクレーンCの下方まで下げ、クレーンCにワイヤーWを取り付けてこのワイヤーWを親フック13に掛け、適度に張って、親フック13を固定することで対応している。
【0011】
しかしながら、このようにしても、クレーンCのオペレータが主巻用のウィンチを誤って操作し主巻ロープ11を巻き上げてしまうと、クレーンCに装備される既述の過巻防止装置は働かず、機械的な感知はできないため、主巻用のウィンチによる主巻ロープ11の巻き取りを停止しない限り、主巻ロープ11の巻き上げは続く。その結果、当然のことながら、主巻ロープ11の下部の巻き過ぎにより、ワイヤーWは切れ、ワイヤーWが切れると、親フック13が振り子の状態となって前後に振れ、クレーンCに近接するものに衝突して破壊するおそれがある。この場合、ブーム1の起伏角度が低いほど、親フック13の振れる範囲と力が大きくなる。親フック13の重量は500kg-1,000kgが主流であることから、力量、破壊力は相当に大きなものになることは想像に難くない。
【0012】
なお、このようなワイヤーの切断を回避するために、ワイヤーを2本にしてワイヤーを補強することや2本のワイヤーの一方を適度に張り、他方を数十cm程度長くして弛ませた状態にして、一方が切れても他方で親フックを保持するといった対策も考えられるが、このようにしても、主巻ロープの巻き上げにより1本目のワイヤーが切れた時点で、オペレータが直ぐに主巻ロープの巻き取りを停止しなければ、2本目のワイヤーも切れてしまい、その結果は同じである。
【0013】
本発明は、このような従来の問題を解決するもので、この種のクレーンを用いた吊り作業において、使用されない親フックの前後の振れを防止するため、親フックをクレーンの下方まで下げて固定しておく場合に、クレーンのオペレータが主巻用のウィンチを誤って操作し主巻ロープを巻き上げてしまっても、主巻ロープの巻き取りを機械的に確実かつ安全に停止することのできる、優れた親フック誤巻防止装置を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、
先端側に少なくとも主巻用のブームポイントシーブ、補巻用のブームポイントシーブを有し、ベース上に起伏可能に支持されて、前記ベース上に設置される駆動装置により駆動されるブームと、前記ベース上に設置される主巻用のウィンチ又は補巻用のウィンチの一方から繰り出されて、前記ブーム先端側の前記主巻用のブームポイントシーブに巻き掛けられる主巻ロープ、他方から繰り出されて、前記補巻用のブームポイントシーブに巻き掛けられる補巻ロープと、前記主巻ロープ、前記補巻ロープの先端に連結されて、前記ブームの先端側に吊持される親フック、子フックと、前記駆動装置、前記主巻用のウィンチ、前記補巻用のウィンチの動作を制御するコントローラーとを備え、前記主巻用のウィンチ又は前記補巻用のウィンチの一方による前記主巻ロープの繰り出し、巻き取り、他方による前記補巻ロープの繰り出し、巻き取りにより、前記親フック、前記子フックを昇降するクレーンに装備され、前記親フックの誤った巻き取りを防止する親フック誤巻防止装置であって、
前記ブームの下部側で前記主巻ロープに対向する正面に幅方向に並列配置されて突設される一対のアームと、
前記一対のアームの一方に設けられ、索状を引張るための引張りばね、及び他方に設けられて、前記コントローラーに信号線を介して電気的に接続され、索状の引張り力を感知して前記コントローラーに前記主巻用のウィンチ又は前記補巻用のウィンチによる前記主巻ロープの巻き取りを停止する制御信号を送信する引張り検知器と、
一端を前記引張りばねに連結され、他端を前記引張り検知器に作動連結されて、前記一対のアーム間に張り掛けられる索状と、
を備え、
前記補巻ロープ及び前記子フックによる吊り作業に際して、前記各アームにより前記各アーム間の前記索状を、前記ブームと前記主巻ロープを下げ、前記親フックをクレーンの下方まで下げて固定した状態の前記主巻ロープとの間に配置して、
前記吊り作業中に前記主巻用のウィンチ又は前記補巻用のウィンチによる前記主巻ロープの巻き上げが発生した場合に、前記主巻ロープの前記ブーム側への引き寄せを前記索状で弾性的に受けて押えるとともに、前記主巻ロープの前記ブーム側への引き寄せにより引張られた前記索状からの引張り力を前記引張り検知器で感知して送信される制御信号に基づいて前記コントローラーにより前記主巻用のウィンチ又は前記補巻用のウィンチによる前記主巻ロープの巻き取りを停止する、
ことを要旨とする。
【0015】
また、この親フック誤巻防止装置は各部が次のような構成を備えることが好ましい。
(1)一対のアームはそれぞれ、ブームの正面に、前記ブームの正面から前方に向けて突出可能にかつ当該正面に沿って折り畳み可能に、取付金具を介して取り付けられる。
(2)引張り検知器はリミットスイッチからなる。
(3)引張りばねは引張りコイルスプリングからなる。
(4)索状はワイヤーロープからなる。
(5)クレーンは主巻ロープ用、補巻ロープ用の過巻防止装置を備え、前記各過巻防止装置は、信号線を介して、コントローラーに電気的に接続され、引張り検知器は、当該引張り検知器の信号線を前記各過巻防止装置、前記コントローラー間の前記信号線に分岐配線式のコネクターを介して接続することにより、前記コントローラーに接続される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の親フック誤巻防止装置によれば、上記の構成により、既述のようなクレーンを用いた吊り作業において、使用されない親フックの前後の振れを防止するため、親フックをクレーンの下方まで下げて固定しておく場合に、クレーンのオペレータが主巻用のウィンチ又は補巻用のウィンチを誤って操作し主巻ロープを巻き上げてしまっても、主巻ロープの巻き取りを機械的に確実かつ安全に停止することができる、という本発明独自の格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態における親フック誤巻防止装置の概要を示す図
図2】同装置の使用時の状態をクレーンのブームを倒伏した状態でのブームの先端側から見た図
図3】同装置の使用時の状態をクレーンのブームを倒伏した状態でのブームの基端側から見た図
図4】同装置の使用時の状態をクレーンのブームを倒伏した状態でのブームの右側方から見た図
図5】同装置の使用時の状態をクレーンのブームを倒伏した状態でのブームの左側方から見た図
図6】同装置の使用時の状態をクレーンのブームを倒伏した状態でのブームの上方から見た図
図7】同装置の使用時の状態をクレーンのブームを倒伏した状態でのブームの下方から見た図
図8】同装置の折り畳み収納時の状態をクレーンのブームを倒伏した状態でのブームの先端側から見た図
図9】同装置の折り畳み収納時の状態をクレーンのブームを倒伏した状態でのブームの基端側から見た図
図10】同装置の折り畳み収納時の状態をクレーンのブームを倒伏した状態でのブームの右側方から見た図
図11】同装置の折り畳み収納時の状態をクレーンのブームを倒伏した状態でのブームの左側方から見た図
図12】同装置の折り畳み収納時の状態をクレーンのブームを倒伏した状態でのブームの上方から見た図
図13】同装置の折り畳み収納時の状態をクレーンのブームを倒伏した状態でのブームの下方から見た図
図14】同装置の要部(過巻防止装置)を拡大して示す図
図15】同装置の要部(同装置の信号線と過巻防止装置の信号線とを接続するコネクター)を拡大して示す図
図16】同装置の使用例を示す図
図17】従来のクレーン及びその使用時の問題点を示す図
図18】従来(図17)のクレーン及びその使用時の問題点の対応策、及びこの対応策の問題点を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。図1にクレーンに装備された親フック誤巻防止装置を概略的に示している。図2乃至図13に親フック誤巻防止装置の全体構成を示し、図14図15に親フック誤巻防止装置の要部の構成を示している。
【0019】
図1に示すように、クレーンCは、先端側に少なくとも主巻用のブームポイントシーブ101、補巻用のブームポイントシーブ102を有し、ベース10上に起伏可能に支持されて、ベース10上に設置される駆動装置(図示省略)により駆動されるブーム1と、ベース10上に設置される主巻用のウィンチ(図示省略)又は補巻用のウィンチ(図示省略)の一方から繰り出されて、ブーム1先端側の主巻用のブームポイントシーブ101に巻き掛けられる主巻ロープ11、他方から繰り出されて、補巻用のブームポイントシーブ102に巻き掛けられる補巻ロープ12と、主巻ロープ11、補巻ロープ12の先端に連結されて、ブーム1の先端側に吊持される親フック13、子フック14と、駆動装置、主巻用のウィンチ、補巻用のウィンチの動作を制御するコントローラー(図示省略)とを備え、主巻用のウィンチ又は補巻用のウィンチの一方による主巻ロープ11の繰り出し、巻き取り、他方による補巻ロープ12の繰り出し、巻き取りにより、親フック13、子フック14を昇降するようになっている。
なお、この場合、親フック13は主巻用のウィンチによる主巻ロープ11の繰り出し、巻き取りにより昇降され、子フック14は補巻用のウィンチによる補巻ロープ12の繰り出し、巻き取りにより昇降されるようにしてある。
また、この場合、ブーム1はメインブームМ1と、メインブームМ1の先端から延びる上部ブームS1とからなり、ブーム1の先端側は、メインブームМ1の先端部、上部ブームS1の先端部をいい、メインブーム2の先端部、上部ブーム3の先端部にそれぞれ、ブームポイントシーブ101,102が回転自在に配設される。ここで上部ブーム(S1)は、既述のとおり、補助ブームとも称され、当業者間では補助シーブと称せられる。主巻ロープ11はブームポイントシーブ101と親フック13に設けられるフックシーブ(図示省略)との間に掛け回され、先端をメインブームМ1の先端部内に設けられたエンドピン(図示省略)に結合されて、主巻ロープ11の先端に親フック13が連結され、メインブームМ1の先端部から吊持される。補巻ロープ12の先端に子フック14が連結され、上部ブームS1の先端部から吊持される。
さらに、この場合、クレーンCは、ベース10として、クローラ式の車両の上部に旋回可能に設置された旋回台に搭載され、所謂クレーン車として構成される。
【0020】
また、このクレーンCには、従来と同様に、親フック13を昇降させる主巻ロープ11、子フック14を昇降させる補巻ロープ12の過巻によるワイヤー切断事故とブーム1の後方側への転倒事故を防止するために、主巻ロープ用、補巻ロープの各過巻防止装置が設けられる。なお、主巻ロープ用、補巻ロープの各過巻防止装置は、基本的に共通の構成を有するので、ここでは、図14に主巻ロープ用の過巻防止装置Bのみを図示して説明を行い、補巻ロープ用の過巻防止装置については図示及び説明を省略する。
【0021】
図14に示すように、過巻防止装置Bは、標準仕様のもの、つまり、一般的なもので、過巻き検知器21、ウェイト吊りロープ22及びウェイト23により構成される。過巻き検知器21は公知のリミットスイッチ(以下、リミットスイッチ21という。)からなり、ウェイト吊りロープ22からの張力を感知する作動ピンの作動により、制御信号を送信する方式になっている。この場合、作動ピンはリミットスイッチ21の本体ケース内にコイルスプリングを介して配置され、コイルスプリングの付勢力により常態として上方に付勢されてオン状態を取り、この作動ピンにウェイト吊りロープ22を介して連結されるウェイト23の重量により下方に引張られてオフ状態になる。ウェイト吊りロープ22はワイヤーロープ(以下、ワイヤーロープ22という。)からなり、リミットスイッチ21の作動ピンの下端に連結されて作動ピンの下方に垂下される。ウェイト23は中央部に主巻ロープ11を通すための通し孔(図示省略)を有し、ワイヤーロープ22の下端に連結される。なお、このウェイト23の位置、言い換えれば、ワイヤーロープ22の長さは、親フック13がブーム1の先端側の下方から所定の安全距離(親フック13がブーム1の先端側に当接することのない距離)を確保することが困難になる直前の位置まで上動されたときに親フック13でウェイト23を押し上げ可能に設定される。
【0022】
過巻防止装置Bはこのような構成からなり、リミットスイッチ21がブーム1の先端側の側面所定の位置に取り付けられ、ウェイト23の通し孔に主巻ロープ11を通されて、ウェイト23がブーム1の先端側と親フック13との間の主巻ロープ11上に上下動可能に配置される。かくしてリミットスイッチ21は戻り感知式として用いられる。
【0023】
また、過巻防止装置Bは、リミットスイッチ21と主巻用のウィンチのコントローラーが信号線24を介して電気的に接続されて、コントローラーに作動連結される。この場合、リミットスイッチ21に接続された信号線24(図1参照)がメインブームМ1に沿って配線され、メインブームМ1の基端側でコードリール15を介して、コントローラーに向けて延ばされ、コントローラーに接続される。
【0024】
このようにして過巻防止装置Bは、ワイヤーロープ22がウェイト23からの重力を受けてリミットスイッチ21の作動ピンの下端から垂下され、この状態では、ウェイト23の重力がリミットスイッチ21の作動ピンに作用して作動ピンが下方に引張られ、リミットスイッチ21はオフ状態を取る。オフ状態の場合、リミットスイッチ21から制御信号は送信されない。そして、このオフ状態から、主巻用のウィンチにより主巻ロープ11が巻き取られて親フック13が上動され、親フック13の上部がウェイト23に当接してこれを押し上げると、ワイヤーロープ22が弛み、リミットスイッチ21の作動ピンがウェイト23の重量から解放される。リミットスイッチ21の作動ピンはコイルスプリングの付勢力により上動し、リミットスイッチ21はオン状態となる。このオン状態によりリミットスイッチ21から制御信号が主巻用のウィンチのコントローラーへ送信され、コントローラーにより主巻用のウィンチによる主巻ロープ11の巻き取りが停止される。かくして、主巻ロープ11の巻き過ぎが防止され、親フック13とブーム1との衝突、さらにはブーム1の後方への転倒が未然に防止される。
【0025】
図1に示すように、親フック誤巻防止装置Aは、ブーム1の下部側で主巻ロープ11に対向する正面に装備され、主巻ロープ11の誤った巻き取りを防止するものになっている。
【0026】
図2乃至図17に示すように、この親フック誤巻防止装置A(以下、本装置Aという。)は、一対のアーム3と、引張りばね4及び引張り検知器5と、索状6とからなる。
【0027】
一対のアーム3は、ブーム1の上下方向中間部の下部側で主巻ロープ11に対向する正面に幅方向に並列配置されて突設される。
【0028】
この場合、一対のアーム3はそれぞれ、鋼管、鋼棒、鋼板などの鋼材からなり、メインブームМ1の先端部から吊り下ろされる主巻ロープ11の位置よりも少し手前まで延びる長さを有する。ここでは、一対のアーム3は適宜径の鋼管により、メインブームМ1の正面から主巻ロープ11の位置よりも少し手前の位置までの所定の長さに形成される。そして、これらのアーム3の先端部には、索状6を掛け通すための滑車30が取り付けられる。なお、これらの滑車30は各アーム3の先端部に各アーム3間の索状6の張り架け方向に向けて回動可能に取り付けられる。
【0029】
また、この場合、一対のアーム3はそれぞれ、ブーム1の正面に、ブーム1の正面から前方に向けて突出可能に、かつ、図8乃至図13に示すように、この正面に沿って平行に折り畳み可能に、取付金具31を介して取り付けられる。ここで、取付金具31はフレーム取付部311とアーム取付部312とを有する。フレーム取付部311はメインブームМ1の正面左右両側に上下方向に延びる柱状のフレームМ11に取り付け可能に断面略U字形(この場合、断面略半円形)の受け金具311Aとこの受け金具311Aの両端間に複数のボルトにより固定して連結される平板状の(この場合、内面が断面略半円形をなす)締め付け金具311Bとからなる。アーム取付部312は、フレーム取付部311の側面に固定され、締め付け金具311Bに対して略直角(換言すると、フレームМ11と直角)に延び、アーム3の一端が嵌合可能な管からなる突出方向取付部312A、及び締め付け金具311Bに対して略平行(換言すると、フレームМ11と平行)に延び、アーム3の一端が嵌合可能な管からなる折り畳み方向取付部312Bからなる。突出方向取付部312A、折り畳み方向取付部312Bの周面にはそれぞれ、ボルト用のねじ孔が形成される。なお、これら一対のアーム3はそれぞれ、一端を取付金具を介してブームの正面に枢支されて、ブームの正面上に折り畳み可能に取り付けられてもよい。この場合、取付金具はフレーム取付部とアーム取付部とからなり、アーム取付部がフレーム取付部の側面に回動可能にかつ所定の回動角度で固定可能になっていればよい。
【0030】
さらに、この場合、一対のアーム3間に、後述する索状6の引張りによる各アーム3間の引き寄せを防止するアーム間保持部材33が併せて設けられる。アーム間保持部材33は、鋼管、鋼棒、鋼板などの鋼材からなり、各アーム3間に配置固定される。この場合、アーム間保持部材33は鋼管からなり、各アーム3の取付金具31間に架け渡され、各取付金具31に固着される。なお、このアーム間保持部材33は各アーム3間に配置され、各アーム3に直接固着されてもよい。
【0031】
引張りばね4は、一対のアーム3の一方に設けられ、各アーム3間に張り掛けられる索状6を引張るためのもので、この場合、引張りばね4は引張りコイルスプリング(以下、引張りコイルスプリング4という。)からなる。この引張りコイルスプリング4は右側のアーム3の長さ方向中間部で外側に向けられる側面(他方(左側)のアーム3に対向する側面とは反対側の側面)に設けられる取付部32に取り付けられる。この場合、取付部32は、一方のアーム3の側面に突設されるボルト挿通孔を有する突出部321と、この突出部321のボルト挿通孔に通されるボルト322及びこのボルト322に螺合されるナット323とからなる。引張りコイルスプリング4は一端がこの取付部32のボルト322の先端部に連結され、他端が一方のアーム3の先端側に向けられて、右側一方のアーム3と平行に配置される。
【0032】
引張り検知器5は、一対のアーム3の他方に設けられて、コントローラーに信号線L5を介して電気的に接続され、索状6の引張り力を感知してコントローラーに主巻用のウィンチ又は補巻用のウィンチ、この場合は前者による主巻ロープ11の巻き取りを停止する制御信号を送信する方式に構成される。
【0033】
この場合、引張り検知器5はリミットスイッチ(以下、リミットスイッチ5という。)からなる。このリミットスイッチ5は、既述の過巻防止装置Bに使用されるリミットスイッチ21と共通のもので、装置の配線方式により戻り感知式と引張り感知式に選択使用できる。過巻防止装置Bにおいては、リミットスイッチ21が戻り感知式として用いられたのに対し、この引張り検知器5では、このリミットスイッチ5が引張り感知式として用いられる。すなわち、このリミットスイッチ5は、作動ピンがコイルスプリングの付勢力により常態として上方に付勢されてオフ状態を取り、この作動ピンが外力(この場合、索状6による引張り力)により下方に引張られることでオン状態に切り替えられるように構成される。このリミットスイッチ5は本体ケースが左側のアーム3の長さ方向中間部で外側に向けられる側面(一方(右側)のアーム3に対向する側面とは反対側の側面)に固定され、本体ケース内の作動ピンが先端を他方のアーム3の先端側に向けて左側他方のアーム3と平行に配置される。かくしてこのリミットスイッチ5は引張り感知式として用いられる。
【0034】
また、この場合、リミットスイッチ5の信号線L5はメインブームМ1に沿って配線され、直接主巻用のウィンチのコントローラーに接続されてもよいが、本装置Aでは、既述のとおり、クレーンCに主巻ロープ用、補巻ロープ用の各過巻防止装置が装備されており、この過巻防止装置とコントローラーとの間に接続された信号線24を利用して、この信号線24にリミットスイッチ5の信号線L5が接続(分岐配線)されて、コントローラーに電気的に接続される。この場合、図15に示すように、過巻防止装置Bとコントローラーとの間に接続された信号線24がメインブームМ1の基端側のコードリール15の位置で切り離され、この切り離された信号線24の各端部が、リミットスイッチ5の信号線L5を分岐配分された分岐接続用のコネクターJを介して、接続されて、リミットスイッチ5が、過巻防止装置、コントローラー間の回路に分岐配線されて、つまり、過巻防止装置とコントローラーとの間の回路に組み入れられて、コントローラーに電気的に接続される。このように引張り検知器をなすリミットスイッチ5の信号線L5がメインブームМ1の基端側のコードリール15の位置でコネクターJを介して過巻防止装置、コントローラー間の信号線24に接続されることで、リミットスイッチ5の信号線L5が短くて済み、この信号線L5は邪魔になることがない。
【0035】
索状6は、一端を引張りコイルスプリング4に連結され、他端をリミットスイッチ5に作動連結されて、一対のアーム3間に弾性的に張り掛けられる。この場合、索状6はワイヤーロープ(以下、ワイヤーロープ6という。)からなり、一対のアーム3間の長さに一端を引張りコイルスプリング4に連結するのに必要な長さ及び他端をリミットスイッチ5の作動ピンに連結するのに必要な長さを加えた長さを有している。このワイヤーロープ6は各アーム3の先端部間に各滑車30を介して張り掛けられ、右端が右側のアーム3の側面の引張りコイルスプリング4の先端に連結され、左端が左側のアーム3の側面のリミットスイッチ5の作動ピンにワイヤーロープ6側のワイヤークリップと作動ピン側のシャックルとを介して連結される。なお、このワイヤーロープ6の一対のアーム3間での緊張状態が、右側のアーム3の引張りコイルスプリング4の取付部32において、ボルト322をナット323に対して進退させることで、調整可能になっている。
【0036】
このようにしてクレーンCの補巻ロープ12及び子フック14による吊り作業に際して、各アーム3により各アーム3間のワイヤーロープ6を、ブーム1と主巻ロープ11を下げ、親フック13をクレーンの下方まで下げて固定した状態の主巻ロープ11との間に配置して、吊り作業中に主巻用のウィンチ又は補巻用のウィンチ、この場合は前者による主巻ロープ11の巻き上げが発生した場合に、主巻ロープ11の弛みが減り主巻ロープ11がブーム1側へ引き寄せられるので、主巻ロープ11の引き寄せをワイヤーロープ6で弾性的に受けて押えるとともに、この主巻ロープ11のブーム1側への引き寄せにより引張られたワイヤーロープ6からの引張り力をリミットスイッチ5で感知して送信される制御信号に基づいてコントローラーにより主巻用のウィンチ又は補巻用のウィンチ、この場合は前者による主巻ロープ11の巻き取りを停止するようになっている。
【0037】
図16に本装置Aの使用例を示している。なお、ここでは、クレーン作業として、子フック14で杭を吊り、地盤に掘削された孔に挿入する作業を例示している。この場合、子フック14の上下運動により杭を上下動したときに、使用されない親フック13が前後に振られてブーム1に激突しブームフレームやラチスを損傷しないように、親フック13をクレーンCの下方まで下げ、クレーンC(旋回台など)にワイヤーWを取り付けてこのワイヤーWを親フック13に掛け、適度に張って、親フック13を固定することにより、親フック13の前後の振れを防止してある。
【0038】
本装置Aの使用に当たり、本装置AをクレーンCのブーム1に取り付けるが、この取り付けは、図2乃至図7に示すように、一対のアーム3をそれぞれ、取付金具31により、メインブームМ1の正面左右両側の各フレームМ11に取り付けることにより行う。この場合、クレーンCのブーム1を略水平に倒伏させて、取付金具31を2つ、それぞれ、メインブームМ1の正面左右両側の各フレームМ11で、親フック13の固定位置よりも少し上方の位置に、倒伏させたブーム1の下から受け金具311Aを巻き、倒伏させたブーム1の上から締め付け金具311Bを受け金具311Aの両端にボルトにより締め付けて、取り付ける。そして、これら取付金具31のアーム取付部312の突出方向取付部312Aにそれぞれ、各アーム3の一端を差し込み、各突出方向取付部312Aの各ねじ孔にボルトを締め込むことにより固定して、各アーム3をメインブームМ1正面の各フレームМ11から各フレームМ11に対して直角に下方に向けて突出させる。そして、必要に応じて、このワイヤーロープ6の一対のアーム3間での緊張状態を、一方のアーム3の引張りコイルスプリング5の取付部32において、ボルト322をナット323に対して進退させることで、調整する。なお、このときのワイヤーロープ6の引張りによる各アーム3間の引き寄せがアーム間保持部材33により防止される。
【0039】
このように本装置Aを取り付けて、クレーンCのメインブームМ1を起立させ、本装置AをメインブームМ1と主巻ロープ11との間に介装して、一対のアーム3によりワイヤーロープ6を主巻ロープ11に近接して配置し、この状態で、クレーンCによる作業、この場合、子フック14で杭を吊り、地盤に掘削された孔に挿入する作業を実施する。
【0040】
図16に示すように、このクレーンCの作業中に、クレーンCのオペレータが主巻用のウィンチを誤って操作し主巻ロープ11を巻き上げる事故が発生した場合、この主巻ロープ11の巻き上げ時点では主巻ロープ11は過巻の状態になっていないのでクレーンCに装備された過巻防止装置Bは働かず、この過巻防止装置Bによる機械的な感知はできない。このため、従来は、オペレーターにより主巻用のウィンチによる主巻ロープ11の巻き取りを停止しない限り、主巻ロープ11の巻き上げが続くところ、このクレーンCでは、本装置Aの装備により、主巻ロープ11の巻き取りが機械的に確実かつ安全に停止される。
【0041】
すなわち、クレーンCに固定された主巻ロープ11の巻き上げにより、主巻ロープ11は徐々に緊張し、メインブームМ1の正面に向けて引き寄せられ、接近していく。主巻ロープ11が本装置Aのワイヤーロープ6に接触しこれを押圧すると、この主巻ロープ11をこのワイヤーロープ6で、このワイヤーロープ6一端の引張りコイルスプリング4の伸縮作用により弾性的に受けながら、この主巻ロープ11の押しによりワイヤーロープ6は主巻ロープ11の振れ方向、つまり、メインブームМ11の正面に向けて引張られる。この引張り力は本装置Aのリミットスイッチ5で感知され、このリミットスイッチ5から制御信号が主巻用のウィンチのコントローラーに送信される。この場合、制御信号はリミットスイッチ5の信号線L5から、この信号線L5にメインブームМ1の基端側のコードリール15の位置でコネクターJにより接続された過巻防止装置、コントローラー間の信号線24を通してコントローラーに送信される。そして、この制御信号に基づいてコントローラーの制御により、主巻用のウィンチの駆動を停止され、このウィンチによる主巻ロープ11の巻き取りが停止される。このようにして主巻ロープ11のブーム1側への引き寄せが停止され、主巻ロープ11の巻き上げが停止されて、親フック13の誤巻きが防止される。
【0042】
これにより、従来のような、主巻ロープ11の巻き過ぎによるワイヤーWの切断を防ぐことができ、ワイヤーWの切断に起因する親フック13の前後の振れによるクレーンCに近接するものとの衝突、破壊が未然に防止される。この結果、従来、子フック14の上下運動により杭を上下動すると、使用されない宙吊りの親フック13が前後に振られて、ブーム1に激突しブームフレームやラチスが損傷することがあり、これを防止するために、親フック13をクレーンCの下方まで下げ、クレーンCにワイヤーWを取り付けてこのワイヤーWを親フック13に掛け、適度に張って、親フック13を固定することで対応しているが、この対応が実効あるものとなる。
【0043】
クレーンCを解体し回送する場合は、図8乃至図13に示すように、本装置AをクレーンCに折り畳んでクレーンCとともに移動することができる。本装置Aを折り畳むには、まず、クレーンCのブーム1を略水平に倒伏させて、メインブームМ1の正面左右両側の各フレームМ11の各取付金具31から本装置Aを取り外す。この場合(図2乃至図7参照)、各取付金具31のアーム取付部312の突出方向取付部312Aの各ねじ孔からボルトを緩め又は取り外し、各アーム3の一端の固定を解除して、各突出方向取付部312Aから各アーム3を引き抜く。そして、各アーム3の一端を各折り畳み方向取付部312Bに差し込み、各ねじ孔にボルトを締め込むことにより固定して、各アーム3をメインブームМ1正面の各フレームМ11に沿って平行に折り畳み配置する。これにより、本装置AはメインブームМ1と平行に折り畳まれて搭載され、メインブームМ1の正面から突出することなく、何ら邪魔にならない。このようにすることにより、本装置AをクレーンCの移動とともにクレーンCにより搬送することができる。また、このようにすることにより、本装置AをクレーンCに邪魔になることなく常備することができ、クレーンCの同様の吊り作業の際に本装置Aを同様に用いることができる。
【0044】
以上説明したように、本装置Aでは、補巻ロープ12及び子フック14による吊り作業に際して、各アーム3により各アーム3間のワイヤーロープ6を、ブーム1と主巻ロープ11を下げ、親フック13をクレーンCの下方まで下げて固定した状態の主巻ロープ11との間に主巻ロープ11に近接して配置し、吊り作業中に主巻用のウィンチによる主巻ロープ11の巻き上げが発生した場合に、主巻ロープ11のブーム1側への引き寄せをワイヤーロープ6で弾性的に受けてこれを押えるとともに、主巻ロープ11の振れにより引張られたワイヤーロープ6からの引張り力をリミットスイッチ5で感知して送信される制御信号に基づいてコントローラーにより主巻用のウィンチによる主巻ロープの巻き取りを停止するようにしたので、既述のようなクレーンCを用いた吊り作業において、使用されない親フック13のブーム1側への引き寄せを防止するため、親フック13をクレーンCの下方まで下げてワイヤーWで固定しておく場合に、クレーンCのオペレータが主巻用のウィンチを誤って操作し主巻ロープ11を巻き上げてしまっても、主巻ロープ11の巻き取りを機械的に確実かつ安全に停止することができる。
したがって、本装置Aによれば、主巻ロープ11の巻き過ぎによるワイヤーWの切断を確実に防ぐことができ、ワイヤーWの切断に起因する親フック13の前後の振れによるクレーンCに近接するものとの衝突、破壊を未然に防止することができる。
【0045】
そして、本装置Aでは、一対のアーム3はそれぞれ、ブーム1の正面に、ブーム1の正面から前方に向けて突出可能にかつこの正面に沿って折り畳み可能に、取付金具31を介して取り付けられるので、本装置Aをブーム1の正面に沿って折り畳むことにより、本装置Aをブーム1の正面から突出することなく何ら邪魔になることなくブーム1に搭載することができ、本装置AをクレーンCに搭載したままクレーンCを解体し回送することができる。また、このようにすることで、本装置AをクレーンCに邪魔になることなく常備することができ、クレーンCの同様の吊り作業の際に本装置Aを同様に用いることができる。
【0046】
また、本装置Aは、引張り検知器がリミットスイッチ5からなり、引張りばねが引張りコイルスプリング4からなり、索状がワイヤーロープ6からなり、これら少ない機器機材により構成されるので、本装置A全体を簡単な構造にすることができ、本装置Aを簡易にかつ低コストに製造することができる。
【0047】
さらに、本装置Aでは、クレーンCに主巻ロープ用、補巻ロープ用の過巻防止装置を装備され、各過巻防止装置が信号線24を介してコントローラーに電気的に接続されることを利用して、引張り検知器をなすリミットスイッチ5は、この引張り検知器の信号線L5を各過巻防止装置、コントローラー間の信号線24に分岐配線式のコネクターJを介して接続することにより、コントローラーに接続されるので、信号線、コントローラーを共通にして、クレーンCに簡易に装備することができる。
【0048】
なお、この実施の形態では、親フックの巻き上げに主巻用のウィンチを使用し、子フックの巻き上げに補巻用のウィンチを使用するものとしたが、これとは反対に、親フックの巻き上げに補巻用のウィンチを使用し、子フックの巻き上げに主巻用のウィンチを使用することがある。このようなウィンチの使い方は例えば地中障害撤去工事やバケット掘削工事などに見られる。通常、負荷が大きく掛かる主巻用のウィンチはブームに近い前側に設置され、補巻用のウィンチがその後側に設置されるが、運転席の操作レバーやブレーキペダルは左から主巻用、補巻用の配列になっているものがあれば、これとは違った配列のものもあり、操作レバーやブレーキペダルの配置はメーカーによって異なるのが現状である。また、通常、主巻ロープや補巻ロープの巻き上げ、巻き下げは動力操作により、つまりウィンチで行うが、例えば杭打ちの杭の挿入でも動力操作で入らない場合は、荷の重さで下げる、つまり、フリー落下の重力操作により行っている。このような操作は例えば地中障害撤去工事やクラム削孔工事で多く使われている。この場合、巻き上げは操作レバーで行うが、巻き下げは荷を重力で落下させて行うので、その落下の減速、停止はブレーキペダルで操作する。ブレーキペダルの操作はブレーキペダルを足で押えて行うため、運転手にとってブレーキペダルの位置は、運転手の使い勝手等も含めて、操作上重要であるところ、ブレーキペダルの位置は固定で変えることができない。そこで、ブレーキペダルの位置に応じて、主巻ロープを補巻ウィンチに補巻ロープを主巻用のウィンチに入れ替え、親フックの巻き上げに補巻用のウィンチを使用し、子フックの巻き上げに主巻用のウィンチを使用することが行われる。なお、主巻用、補巻用の各ウィンチの回転速度は同じである。ただし、主巻用のウィンチでも、補巻用のウィンチでも、親フックを仕込んだ場合は、ワイヤーロープを滑車に掛ける数が増えるため、その分だけ親フックの上下運動は遅くなる。
このように親フックの巻き上げに補巻用のウィンチを使用し、子フックの巻き上げに主巻用のウィンチを使用する場合でも、本装置は、上記実施の形態と同様に適用することができ、上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0049】
また、この実施の形態では、引張り検知器に一般的なリミットスイッチを用いたが、このリミットスイッチと概ね同様の機能を有するものであれば、他の各種の検知器、センサーから適宜のものを選択し、適宜代えてもよい。
【0050】
また、この実施の形態では、引張りばねに引張りコイルスプリングを用いたが、この引張りコイルスプリングと同様の機能を有するものであれば、他の各種のばね部材、ばね機構から適宜のものを選択し、適宜代えてもよい。
【0051】
さらに、この実施の形態では、索状にワイヤーロープを用いたが、このワイヤーロープと同様の機能を有するものであれば、他の各種の索状、線材から適宜のものを選択し、適宜代えてもよい。
【符号の説明】
【0052】
C クレーン
1 ブーム
М1 メインブーム
М11 フレーム
S1 上部ブーム
10 ベース
101 主巻用のブームポイントシーブ
102 補巻用のブームポイントシーブ
11 主巻ロープ
12 補巻ロープ
13 親フック
14 子フック
15 コードリール
W ワイヤー
B 過巻防止装置
21 過巻き検知器(リミットスイッチ)
22 ウェイト吊りロープ(ワイヤーロープ)
23 ウェイト
24 信号線
A 親フック誤巻防止装置(本装置)
3 アーム
30 滑車
31 取付金具
311 フレーム取付部
311A 受け金具
311B 締め付け金具
312 アーム取付部
312A 突出方向取付部
312B 折り畳み方向取付部
32 取付部
321 突出部
322 ボルト
323 ナット
33 アーム間保持部材
4 引張りばね(引張りコイルスプリング)
5 引張り検知器(リミットスイッチ)
L5 信号線
6 索状(ワイヤーロープ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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