(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112815
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】液体供給体およびこの液体供給体を備える塗布具
(51)【国際特許分類】
B43K 5/18 20060101AFI20230807BHJP
A45D 34/04 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
B43K5/18 100
A45D34/04 525A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014761
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000103600
【氏名又は名称】オーベクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002778
【氏名又は名称】弁理士法人IPシーガル
(72)【発明者】
【氏名】吉種 章
(72)【発明者】
【氏名】上田 佳正
(72)【発明者】
【氏名】光永 智哉
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA04
2C350GA06
2C350KA01
2C350NA13
2C350NC03
2C350NC20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】インクなどの液体が大径の粒子を含むものであっても、液体の目詰まりが生ずることなく、ペン先等の塗布部に円滑に液体を供給することができ、かつ筆記具や化粧具等の塗布具を構成する所定の部材にしっかりと固定できる液体供給体、およびこの液体供給体を備える塗布具を提供する。
【解決手段】この発明の液体供給体1は、長尺棒状の供給体主体2からなるもので、前記供給体主体2は、内部空間を画定して軸線方向に沿って延びる外殻体3で構成され、前記内部空間が構成する内部導管4と、前記外殻体3の外周上に形成される外部導管5と、を備え、前記内部導管4は、径方向外側に向かって放射状に延びるよう形成された一又は複数の分岐導管41を備え、前記分岐導管41は、所要の毛細管力を有する狭小流路411と、前記狭小流路411よりも弱い毛細管力を有する広大流路412を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向の先端側に液体を供給する液体供給体であって、
長尺棒状の供給体主体で構成され、
前記供給体主体は、内部空間を画定して軸線方向に沿って延びる外殻体で構成され、
前記外殻体は、所要の厚さを有し、軸線方向に直交する横断面視で多葉断面形状になるよう適宜折り曲げられ、かつ前記供給体主体の軸線方向に沿った筒状をなすよう構成され、
前記内部空間は、軸線方向の先端側に前記液体を供給する内部導管を構成し、
前記外殻体の外周上は、軸線方向の先端側に前記液体を供給する外部導管を構成し、
前記内部導管は、前記供給体主体の軸線方向に直交する横断面視で多葉断面形状になるように外殻体を折り曲げることにより、径方向中心部近傍から外側に向かって放射状に延びるよう形成された所要の大きさの空間からなる一又は複数の分岐導管を備え、
前記分岐導管は、軸線方向に直交する横断面視で径方向内側に軸線方向に沿って延びるよう形成された所要の毛細管力を有する狭小流路と、前記狭小流路の径方向外側に軸線方向に沿って延びるよう形成された前記狭小流路よりも弱い毛細管力を有する広大流路で構成されていること
を特徴とする液体供給体。
【請求項2】
前記分岐導管は、
その少なくとも1つが、軸線方向に直交する横断面視で、左右対称な形状をなすよう前記外殻体を折り曲げることによって構成されていること
を特徴とする液体供給体。
【請求項3】
前記分岐導管の少なくとも1つは、
前記狭小流路と前記広大流路が互いに連通するよう構成されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の液体供給体。
【請求項4】
前記供給体主体は、
互いに連通する狭小流路と広大流路との間に段差部が設けられていること
を特徴とする請求項3に記載の液体供給体。
【請求項5】
前記供給体主体は、
前記分岐導管の少なくとも1つが、所要の厚みを有し、かつ軸線方向に沿って延びる板状の隔壁によって他の分岐導管と区画されるよう構成されていること
を特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の液体供給体。
【請求項6】
前記供給体主体は、
前記広大流路の周方向の最大幅と前記狭小流路の周方向の最大幅との比が1.2:1~100:1になるよう構成されていること
を特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の液体供給体。
【請求項7】
前記広大流路の径方向の長さは、
前記狭小流路の径方向の長さの半分又はそれ以上の長さになるよう設定されていること
を特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の液体供給体。
【請求項8】
前記供給体主体は、
周方向に隣接する分岐導管を形成する周壁の外面同士が、補強用壁部によって連結されるよう構成されていること
を特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の液体供給体。
【請求項9】
前記広大流路を形成する周壁の外周面には、前記広大流路と前記外部導管が互いに連通するよう外側に向かって開口する一又は複数の開口部が形成されていること
を特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の液体供給体。
【請求項10】
前記供給体主体は、
前記狭小流路を形成するよう周方向及び/又は径方向に対向配置される一対の側壁及び/又は前記広大流路を形成する周壁が、押圧により周方向及び/又は径方向に変形可能に構成されていること
を特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の液体供給体。
【請求項11】
前記供給体主体は、
その軸線方向に直交する断面視において、前記供給体主体の外周線によって形成される円の外周真円度が、0.015~0.20mmになるよう構成されていること
を特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の液体供給体。
【請求項12】
前記外殻体を構成する周壁部の内面には、当該周壁部の内部に向かって突出し、かつ軸線方向に沿って延在する内向きリブが形成されていること
を特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の液体供給体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の液体供給体を備えること
を特徴とする塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体供給体と、この液体供給体を備える塗布具に関するものである。
より詳しくは、インクや液状化粧料などの液体を大量に流す必要がある場合や、前記液体が大径の粒子を含むものや高い粘度を有するものであっても、液体の目詰まりが生ずることなく、筆先ないしペン先等の塗布部に円滑に液体を供給することができ、かつ筆記具や化粧具等の塗布具を構成する所定の部材、特にこれに設けられている穴にしっかりと装着することができる液体供給体、およびこの液体供給体を備え、かつ筆記具や化粧具等の用途に利用可能な塗布具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インクなどの液体を貯蔵する部材(例えばインク貯蔵体)を軸筒に内蔵し、塗布部ないし筆記部としてペン先を軸筒の先端に備える塗布具が、マーキングペンやサインペン、筆ペンなどの筆記具や、アイライナーなどの化粧具等の用途として利用されている。
このような塗布具においては、インクなどを貯蔵する部材からペン先にインクを供給するため、インクなどを貯蔵する部材とペン先との間に中継芯が、連結されるように配設されている。
【0003】
中継芯については、塗布具の用途や、インクの種類(特にインクの粘度や、インクに含まれる顔料の粒子径など)、軸筒の構造などに応じて、その材質や形状(特に横断面形状)が適宜選択される。
このような中継芯の例が、特許文献1及び2に開示されている。
【0004】
特開昭63-11398号公報(特許文献1)においては、供給要素間の連結強度は大で、配列組織は所要の組織構造に安定し、横断面形態および径の自由度は高く、横断面範囲全てが液誘導範囲となっている液体供給体が提案されている。
【0005】
この液体供給体は、夫々に軸線方向に毛細管力による誘導通路を有する複数の供給要素が相隣れる供給要素と一以上の連結部分により連成した所要の横断面組織構造に押出し成形してなるものである。
【0006】
さらに、国際公開第2020/116604号(特許文献2)においては、粒子を含有する液体を、中継芯が毛細管力や液体保持力を有した上で、中継芯内で目詰まりすることなく、塗布用の筆先に一定量供給することができる中継芯が提案されている。
【0007】
この中継芯は、粒子を含有する液体を、筆先に供給する中継芯であって、
該中継芯は軸線方向に沿って延在する流路を有し、
前記流路の縦断面は、前記中継芯の後端部分から先端部分まで略直線状であり、
前記流路の横断面は、毛細管力で前記液体を保持可能な形状を有する部分と、前記粒子が通過可能な形状を有する部分とを備えた形状であるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63-11398号公報(特許請求の範囲,
図37)
【特許文献2】国際公開第2020/116604号(請求の範囲,
図1及び2A)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1に開示されている液体供給体において、その横断面組織構造が第37
図II~XIの態様になるように形成されている場合、並びに前記特許文献2に開示されている中継芯において、その横断面組織構造が
図2A(17)~(19)、(23)及び(24)の態様になるように形成されている場合には、横断面組織構造が径方向に変形し易いものであるため、液体供給体又は中継芯は軸筒やインク一時保持部材の穴と嵌合し易いが、成型の際の溶融・固化による体積収縮の歪によって、成型体にネジレが生じるおそれがあった。
【0010】
また、前記特許文献1に開示されている液体供給体において、その横断面組織構造が第37
図XII~XVの態様になるように形成されている場合、並びに前記特許文献2に開示されている中継芯において、その横断面組織構造が
図2A(1)~(12)の態様になるように形成されている場合には、液体供給体又は中継芯の外径にはばらつきがあるため、液体供給体又は中継芯において、軸筒やインク一時保持部材と嵌合できる範囲が狭くなる。
特に、前記特許文献2の
図2A(1)~(9)に示されるように、流路(毛細管)が分割されている場合には、液体(インクなど)の流量が絞られ、供給安定性に劣るものになるおそれがあった。
【0011】
さらに、前記特許文献2に開示されている中継芯において、その横断面組織構造が、
図2A(21)及び(22)に示すように、単純なものになるように形成されている場合には、製造時にネジレが生じ難く、比較的製造がし易い。しかしながら、気孔率が低くなる傾向にあり、液体の流路(毛細管)が少なくなるため、インク流量を増加させることが困難となるおそれがある。さらに、インクが大径の粒子の顔料を含む場合には、インクの供給が安定して行われ難い、という問題があった。
【0012】
さらにまた、従来の、液体供給体や中継芯において、使用するインクにラメ顔料やパール顔料などの大径の粒子が含まれている場合には、中継芯内のインク流路における流動性が悪く、ペン先へのインクの安定した供給を行いづらい、という問題があった。
【0013】
この発明はかかる現状に鑑み、インクなどの液体を大量に流す必要がある場合や、前記液体が大径の粒子を含むものや、高い粘度を有するものであっても、液体の目詰まりが生ずることなく、筆先ないしペン先等の塗布部に円滑に液体を供給することができ、かつ筆記具や化粧具等の塗布具を構成する所定の部材、特にこれに設けられている穴にしっかりと装着・固定することができる液体供給体、およびこの液体供給体を備える塗布具を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、この発明にかかる請求項1に記載の発明は、
軸線方向の先端側に液体を供給する液体供給体であって、
長尺棒状の供給体主体で構成され、
前記供給体主体は、内部空間を画定して軸線方向に沿って延びる外殻体で構成され、
前記外殻体は、所要の厚さを有し、軸線方向に直交する横断面視で多葉断面形状になるよう適宜折り曲げられ、かつ前記供給体主体の軸線方向に沿った筒状をなすよう構成され、
前記内部空間は、軸線方向の先端側に前記液体を供給する内部導管を構成し、
前記外殻体の外周上は、軸線方向の先端側に前記液体を供給する外部導管を構成し、
前記内部導管は、前記供給体主体の軸線方向に直交する横断面視で多葉断面形状になるように外殻体を折り曲げることにより、径方向中心部近傍から外側に向かって放射状に延びるよう形成された所要の大きさの空間からなる一又は複数の分岐導管を備え、
前記分岐導管は、軸線方向に直交する横断面視で径方向内側に軸線方向に沿って延びるよう形成された所要の毛細管力を有する狭小流路と、前記狭小流路の径方向外側に軸線方向に沿って延びるよう形成された前記狭小流路よりも弱い毛細管力を有する広大流路で構成されていること
を特徴とする液体供給体である。
【0015】
この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の液体供給体において、
前記分岐導管は、
その少なくとも1つが、軸線方向に直交する横断面視で、左右対称な形状をなすよう前記外殻体を折り曲げることによって構成されていること
を特徴とするものである。
【0016】
この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1又は2に記載の液体供給体において、
前記分岐導管の少なくとも1つは、
前記狭小流路と前記広大流路が互いに連通するよう構成されていること
を特徴とするものである。
【0017】
この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項3に記載の液体供給体において、
前記供給体主体は、
互いに連通する狭小流路と広大流路との間に段差部が設けられていること
を特徴とするものである。
【0018】
この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項1~4のいずれかに記載の液体供給体において、
前記供給体主体は、
前記分岐導管の少なくとも1つが、所要の厚みを有し、かつ軸線方向に沿って延びる板状の隔壁によって他の分岐導管と区画されるよう構成されていること
を特徴とするものである。
【0019】
この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項1~5のいずれかに記載の液体供給体において、
前記供給体主体は、
前記広大流路の周方向の最大幅と前記狭小流路の周方向の最大幅との比が1.2:1~100:1になるよう構成されていること
を特徴とするものである。
【0020】
この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項1~6のいずれかに記載の液体供給体において、
前記広大流路の径方向の長さは、
前記狭小流路の径方向の長さの半分又はそれ以上の長さになるよう設定されていること
を特徴とするものである。
【0021】
この発明の請求項8に記載の発明は、
請求項1~7のいずれかに記載の液体供給体において、
前記供給体主体は、
周方向に隣接する分岐導管を形成する周壁の外面同士が、補強用壁部によって連結されるよう構成されていること
を特徴とするものである。
【0022】
この発明の請求項9に記載の発明は、
請求項1~8のいずれかに記載の液体供給体において、
前記広大流路を形成する周壁の外周面には、前記広大流路と前記外部導管が互いに連通するよう外側に向かって開口する一又は複数の開口部が形成されていること
を特徴とするものである。
【0023】
この発明の請求項10に記載の発明は、
請求項1~9のいずれかに記載の液体供給体において、
前記供給体主体は、
前記狭小流路を形成するよう周方向及び/又は径方向に対向配置される一対の側壁及び/又は前記広大流路を形成する周壁が、押圧により周方向及び/又は径方向に変形可能に構成されていること
を特徴とするものである。
【0024】
この発明の請求項11に記載の発明は、
請求項1~10のいずれかに記載の液体供給体において、
前記供給体主体は、
その軸線方向に直交する断面視において、前記供給体主体の外周線によって形成される円の外周真円度が、0.015~0.20mmになるよう構成されていること
を特徴とするものである。
【0025】
この発明の請求項12に記載の発明は、
請求項1~11のいずれかに記載の液体供給体において、
前記外殻体を構成する周壁部の内面には、当該周壁部の内部に向かって突出し、かつ軸線方向に沿って延在する内向きリブが形成されていること
を特徴とするものである。
【0026】
この発明の請求項13に記載の発明は、
請求項1~12のいずれかに記載の液体供給体を備えること
を特徴とする塗布具である。
【発明の効果】
【0027】
この発明の液体供給体は、軸線方向の先端側に液体を供給するためのもので、長尺棒状の供給体主体で構成され、前記供給体主体は、内部空間を画定して軸線方向に沿って延びる外殻体で構成され、前記外殻体は、所要の厚さを有し、軸線方向に直交する横断面視で多葉断面形状になるよう適宜折り曲げられ、かつ前記供給体主体の軸線方向に沿った筒状をなすよう構成され、前記内部空間は、軸線方向の先端側に前記液体を供給する内部導管を構成し、前記外殻体の外周上は、軸線方向の先端側に前記液体を供給する外部導管を構成し、前記内部導管は、前記供給体主体の軸線方向に直交する横断面視で多葉断面形状になるように外殻体を折り曲げることにより、径方向中心部近傍から外側に向かって放射状に延びるよう形成された所要の大きさの空間からなる一又は複数の分岐導管を備え、前記分岐導管は、軸線方向に直交する横断面視で径方向内側に軸線方向に沿って延びるよう形成された所要の毛細管力を有する狭小流路と、軸線方向に直交する横断面視で前記狭小流路の径方向外側に軸線方向に沿って延びるよう形成された前記狭小流路よりも弱い毛細管力を有する広大流路で構成されている。
したがって、前記液体供給体によれば、塗布具を構成する所定の部材と組み合わされた状態では、前記内部導管に加え、前記外部導管を利用して前記液体(インクなど)の供給が可能となるので、前記液体の供給を円滑にかつ安定して行うことが可能となる。
さらに、前記液体供給体では、前記内部導管が備える分岐導管は、所要の毛細管力を有する前記狭小流路と、前記狭小流路よりも弱い毛細管力を有する前記広大流路を備えるように構成されているので、前記液体の目詰まりが生ずることなく、前記液体が円滑に、かつ安定して供給される。
なお、前記内部導管については、これを形成する空間(内部空間)が分割(区画)されないよう構成することができ、このように構成した場合には、液体(インクなど)の流量が絞られることがないので、前記液体供給体は、供給安定性に優れたものとなる。
【0028】
従来、液体供給体の毛細管力を強くするためには、液体供給体を構成している外郭部などの構造体部分(例えば、リブ)同士を近接させる必要があり、構造体部分同士の近接は、リブなどの構造体部分の数を増やすことや、構造体部分の厚さを厚くすることなどによって行われ、これは、結果的に液体供給体の気孔率を下げるものであった。
この発明の液体供給体においては、前記内部導管は、その広大流路が大きくなる(所定の大きさを有する)ように構成されることで、一定の厚みを有する外殻体を境に内部導管と外部導管が共存しているので、前記外部導管においては、これを構成するよう対向する外殻体同士が近接した状態にある。
したがって、前記外部導管の毛細管力が強くなり、その結果、気孔率を下げる必要がない。
【0029】
さらに、この発明の液体供給体において、前記内部導管は、強い毛細管力を有する狭小流路と、供給体主体の軸線方向に直交する横断面視で狭小流路の径方向外側に形成され、かつ弱い毛細管力を有する広大流路を備えるように構成されている。
したがって、前記液体供給体は、高い気孔率と高い毛細管力とを兼ね備えたものとなるので、高いインクフロー(液体排出)を維持しつつ液体排出量の調整が可能となる。
【0030】
前記液体供給体においては、前記分岐導管を、その少なくとも1つが、軸線方向に直交する横断面視で、左右対称な形状をなすよう前記外殻体を折り曲げることによって構成することができる。
このような構成によって、例えば、前記供給体主体が異形押出成型で製造される場合においては、前記供給体主体の歪みが打ち消し合うので、ネジレ等が生じることなく、その成型を簡単に行うことができる。
【0031】
前記液体供給体においては、前記分岐導管の少なくとも1つを、前記狭小流路と前記広大流路が互いに連通するよう構成することができる。
このような構成によって、前記液体供給体の液体(インクなど)の追随性が向上する。
また、前記構成によれば、前記狭小流路が有する強い毛細管力によって導引された液体の影響により、毛細管力が弱い前記広大流路においても液体が導引されるので、過不足なく十分に液体を通過(供給・排出)させることが可能である。
さらに、前記構成によれば、前記液体供給体がその軸線方向に直交する横断面視で径方向に押圧されたときには、径方向への柔軟な変形が可能となる。したがって、前記液体供給体が装着される部材に設けられている穴の径が、前記液体供給体の外径より細い場合であっても、前記液体供給体が前記変形によって縮径するので、前記穴への前記液体供給体の挿入は、極めてスムーズである。
【0032】
前記液体供給体においては、前記分岐導管の少なくとも1つを、前記狭小流路と前記広大流路が互いに連通するよう構成した場合には、前記狭小流路と前記広大流路との間に段差部を設けることができる。
このような構成によって、前記液体供給体が径方向及び/又は周方向に変形するに際しては、前記段差部に応力が集中するので、この段差部を起点として折れ曲がり易くなる。したがって、前記液体供給体を押圧した際には、前記液体供給体の横断面形状が大きく崩れることがないので、予め設計した通りのインクフローが実現される。
また、前記段差部の配設によって、前記外部導管に、毛細管力が強い部分が形成され易くなる。したがって、気孔率を低下させることなく、毛細管力が強い部分を形成することができるので、インクフローが低下しない。
さらに、前記段差部による段差は、前記外部導管の形状に変化を付与し得る。したがって、前記内部導管の内部における前記狭小流路と前記広大流路との間の毛細管力の相違に起因する特性と同様の特性を有する部分を、前記外部導管にも形成することが可能となる。
さらにまた、前記段差部の配設によって、前記液体供給体の軸線方向に対する曲げ剛性が向上する。したがって、前記液体供給体においては、その軸線方向に対する曲げ剛性が向上しているので、前記液体供給体に加工(カット等)を施して所定の形状(特に所定の先端形状)になるよう形成する際には、たわみ量が少なくなり、前記加工を施し易い。
なお、前記段差部の数については、特段の制限はないが、その数を多くすることによって、前記軸線方向に対する曲げ剛性を更に向上させることが可能となる。
【0033】
前記液体供給体においては、前記供給体主体を、前記分岐導管の少なくとも1つが、所要の厚みを有し、かつ軸線方向に沿って延びる板状の隔壁によって他の分岐導管と区画されるよう構成することができる。
このような構成によって、前記液体供給体の強度が向上するので、前記液体供給体を、塗布具を構成する所定の部材と組み合わせる際(例えば、液体供給体の先端を塗布部(ペン先等)の後端に差し込む場合など)には、前記部材に前記液体供給体を挿入することが容易になり、また、前記液体供給体の加工性が向上し、前記液体供給体の製造時の保形性が維持され易くなる。
さらに、前記液体供給体を構成する供給体主体全体の強度が向上するので、前記液体供給体を製造する際には、ローラーなどで押圧した場合であっても潰れにくく、前記液体供給体を精度よく製造することが可能となる。
なお、上記構成は、前記液体供給体を構成する供給体主体の強度が弱いことによって何らかの問題が生じるおそれがある場合において好ましく採用され、上記作用効果が効果的に発揮される。
【0034】
前記液体供給体においては、前記供給体主体を、前記広大流路の周方向の最大幅と前記狭小流路の周方向の最大幅との比が1.2:1~100:1になるよう構成することができる。
このような構成によって、前記狭小流路の強い毛細管力によって、前記液体を構成する液部分が円滑に、かつ安定して供給され、前記液体が大径の粒子(例えば、粒子径6μm~400μm程度の粒子)を含むものであっても、前記広大流路から、前記大径の粒子を含む液体が円滑に、かつ安定して供給される。
その際、前記広大流路の径方向の長さを、前記狭小流路の径方向の長さの半分又はそれ以上の長さになるよう設定することができる。
【0035】
さらに、前記液体供給体においては、前記供給体主体を、周方向に隣接する分岐導管を形成する外殻体(周壁)の外面同士が、補強用壁部によって連結されるよう構成することができる。
このような構成によって、前記分岐導管を形成する外殻体の強度が向上するので、前記外殻体において折れ曲がり等の不用意な変形が発生することを防止することが可能となり、2次加工性の向上や加工品における強度の向上が期待できる。
さらに、前記液体供給体を構成する供給体主体全体の強度が向上するので、前記液体供給体を製造する際には、ローラーなどで押圧した場合であっても潰れにくく、前記液体供給体を精度よく製造することが可能となる。
なお、上記構成は、前記液体供給体の強度が弱いことによって問題が生じるおそれがある場合において好ましく採用され、上記作用効果が効果的に発揮される。
【0036】
前記液体供給体においては、前記広大流路を形成する外殻体(周壁)の外周面に、前記広大流路と前記外部導管が互いに連通するよう外側に向かって開口する一又は複数の開口部を形成することができる。
このような構成によって、ペン先などの液体(インクなど)の排出先への液体供給効率が向上する。
特に、何らかの原因で一部の導管(分岐導管)が詰まった場合であっても、前記開口部を介して前記広大流路と前記外部導管が互いに連通し、前記液体の流路が形成されるため、他の導管を利用して前記液体の供給が可能となる。
したがって、前記液体の塗布部への到達は、極めてスムーズである。
さらに、前記開口部を設けるに際しては、前記液体供給体が備える前記内部導管は、強い毛細管力を有する狭小流路と弱い毛細管力を有する広大流路を備えるように構成されているので、前記外殻体の外周部に、周方向に沿って浅い深さの溝(環状溝)が形成されるよう前記外殻体の最外径部(径方向最外部)を径方向外側に向かって開口させるだけで、前記広大流路(内部導管)と前記外部導管が互いに連通する。
したがって、前記液体供給体の強度の低下が防止され、前記開口部の形成が容易であるため前記液体供給体の生産性は良好である。
【0037】
前記液体供給体においては、前記供給体主体を、前記狭小流路を形成するよう周方向及び/又は径方向に対向配置される一対の側壁及び/又は前記広大流路を形成する周壁が、押圧により周方向及び/又は径方向に変形可能に構成することができる。
このような構成によって、前記液体供給体が塗布具を構成する部材(円筒状の軸筒又は液体一時保持部材等)と組み合わされる際には、前記液体供給体の外径に対して、前記部材の内径がやや小さい場合であっても、前記液体供給体の前記部材への嵌入ないし取付けを容易に行うことが可能となり、前記部材にしっかりと固定することが可能となる一方、前記液体供給体の前記部材からの取り外しも容易に行うことが可能となる。
特に、前記液体供給体を、弾性を有する材料で構成した場合には、変形したのち元に戻ろうとする力(復元力)が働くため、前記部材に対して、よりしっかりと固定させることが可能となる。
また、前記部材の穴径や前記供給体主体の外径を調整することによって、前記供給体主体が縮径される度合いを変えることが可能であり、この縮径によって、隣り合う周壁同士の距離を狭めることが可能となる。これによって、導管のスリットサイズを調整することにより毛細管力の制御を容易に行うことができる。
さらに、前記部材が有する狭い穴部へ前記液体供給体を無理に挿入した場合であっても、前記供給体主体が押圧により周方向及び/又は径方向に変形可能に構成されているので、前記液体供給体において座屈や破損が発生しにくくなる。
【0038】
前記液体供給体においては、前記供給体主体を、その軸線方向に直交する断面視(横断面視)において、前記供給体主体の外周線が形成する円の外周真円度が、0.015~0.20mmになるよう構成することができる。
このような構成によって、前記供給体主体は、横断面視で径方向に沿って長軸が伸びる略楕円形状を呈するものになるので、前記供給体主体を、塗布具を構成する部材(特に円筒状の軸筒又は液体一時保持部材)が有する穴に挿入する際には、前記略楕円形状の長軸側の周壁が潰れ易くなる。
したがって、前記液体供給体を、その外径中心値よりも太くばらついた内径を有する前記塗布具を構成する部材の内部に嵌入ないし取付けることが可能となり、その結果、前記部材に、より確実にしっかりと固定することが可能となる。
この作用効果は、前記供給体主体を、弾性を有する材料で構成した場合に、顕著である。
さらに、製品としての塗布具の組み立ての際には、前記供給体主体の外周線が形成する円は真円ではないので、前記供給体主体で構成される液体供給体を作業台などの上に並べて置く場合であっても、前記液体供給体は転がりにくく、作業台などから落ちにくい。したがって、作業性が向上する。
【0039】
前記液体供給体において、前記外殻体を構成する周壁部の内面には、当該周壁部の内部に向かって突出し、かつ軸線方向に沿って延在する内向きリブを形成することができる。
このような構成によって、前記内部導管内に毛細管力が強くなる部分を形成することができる。すなわち、前記内部導管における毛細管力の調整が可能となる。
なお、前記供給体主体の、横断面視で中央部近傍に前記内向きリブが形成されている場合には、前記供給体主体を、その先端形状が先鋭になるよう精度よく形成することができる。
【0040】
なお、前記液体供給体は、紙や肌等の対象に対して塗布等を行う各種塗布具の液体供給体(特に中継芯)として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】この発明にかかる液体供給体の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す液体供給体のA-A’断面(横断面)を示す断面図である。
【
図3】この発明にかかる液体供給体の他の例の横断面を示す断面図である。
【
図4】この発明にかかる液体供給体の他の例の横断面を示す断面図である。
【
図5】この発明にかかる液体供給体の他の例の横断面を示す断面図である。
【
図6】この発明にかかる液体供給体の他の例の横断面を示す断面図である。
【
図7】この発明にかかる液体供給体の他の例の横断面を示す断面図である。
【
図8】この発明にかかる液体供給体の他の例を示す斜視図である。
【
図9】この発明にかかる液体供給体の他の例の側面を示す概略説明図である。
【
図10】この発明にかかる液体供給体の他の例の横断面を示す断面図である。
【
図11】
図1に示す液体供給体を備える塗布具の一例を示す説明図であって、軸線方向に平行する方向の断面を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、この発明にかかる液体供給体の実施の形態を、添付の図面に基づいて具体的に説明する。
なお、この発明の液体供給体は、図示の実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲内で改良を加えることができるものである。
【0043】
この発明にかかる液体供給体1(以下、「供給体1」という。)は、
図11に示すように、その先端側に接続(配設)される塗布部8や、後端側に接続(配設)される、インクなどの所望の液体が充填された液体貯蔵体などの液体貯蔵部9、プラスチックや金属で構成される軸部(軸筒)10等の所定の部材と組み合わせることによって塗布具12を構成するものである。
【0044】
なお、この発明において、「塗布部」とは、筆記や描画、塗布等を行う際に、紙や肌等の対象と接触する部分又は部材をいい、ペン先や筆状の穂先等を含む。
また、この発明において、「塗布具」とは、筆記や描画、塗布等を行うための手段をいい、筆記具を含む。
さらに、この発明において、「筒状」とは、細長い棒状の物体であって、中が空洞になっているもの(中空のもの)をいい、その軸線方向に直交する断面視(横断面視)が円形のものに限らず、異形形状(例えば多葉断面形状)であるものをも含む。
【0045】
前記液体供給体1は、
図1に示すように、長尺棒状の供給体主体2で構成される。
前記供給体主体2は、
図1に示すように、軸線X方向に沿って延び、かつ内部空間を画定する外殻体3で構成される。
前記外殻体3によって画定される内部空間は、
図1に示すように、前記外殻体3の先端側と後端側が連通するよう軸線X方向に沿って形成されるもので、インクなどの液体を、ペン先などの液体の排出先(塗布部8等)へ供給する内部導管4を構成する。
なお、前記内部導管については、これを形成する空間(内部空間)が分割(区画)されないよう構成することができ、このように構成した場合には、液体(インクなど)の流量が絞られることがないので、前記液体供給体は、供給安定性に優れたものとなる。
【0046】
一方、前記供給体主体2を構成する外殻体3の外周上にも、前記外殻体3の先端側から後端側に亘って所要の大きさの空間が形成される。
この空間もまた、インクなどの液体を、ペン先などの液体の排出先へ供給する導管(外部導管)5を構成する。
したがって、前記供給体1においては、前記内部導管4と、前記外殻体3の外周上に形成される空間からなる外部導管5が、インクなどの液体を、ペン先などの液体の排出先へ供給するので、液体供給効率が向上する。
【0047】
前記外殻体3は、
図1に示すように、所要の厚さを有する筒状体の外殻(周壁部)を厚さ方向に折り曲げるように構成することにより、軸線X方向に直交する横断面視で多葉断面形状になるよう構成される。
したがって、前記内部導管も、軸線X方向に直交する横断面視で多葉断面形状を有するものとなる。
なお、前記外殻(周壁部)の厚さについては、特段の制限はなく、供給体の用途などに応じて、適宜設定することができる。
また前記厚さについては、全周に亘って一定に設定されてもよいし、その一部の厚さが変更されてもよい。
【0048】
図2において、前記外殻体3は、軸線X方向に直交する横断面視で多葉断面形状になるよう適宜折り曲げられ、前記供給体主体の軸線方向に沿った筒状をなすよう構成されている。
したがって、軸線X方向に直交する断面(横断面)視で、径方向中心部近傍から径方向外側に向かって放射状に延びる所要の大きさの空間が複数形成されている。
これらの空間のそれぞれもまた、インクなどの液体を、ペン先などの液体の排出先(塗布部8等)へ供給する導管(分岐導管)41を構成する。
なお、
図2において、各分岐導管41は、前記外殻体3の外周(周壁部)を、軸線X方向に直交する断面(横断面)視で略U字状になるよう厚さ方向に折り曲げることにより、前記外周の対向する内面間に形成された所要の大きさの空間で構成されている。
【0049】
前記分岐導管41については、好ましくは、
図2に示すように、その少なくとも1つが、軸線X方向に直交する横断面視で、左右対称な形状をなすよう構成される。
このような構成によって、前記供給体主体2の歪みが打ち消し合うので、ネジレ等が生じることなく、その成型を簡単に行うことができる。
【0050】
この発明において、多葉断面形状の構成については、特段の制限はない。
図2において、前記多葉断面形状は、分岐導管41として同一形状の葉部を6つ有するものとして構成されているが、2以上の葉部を有するものであればよい。
なお、分岐導管41を1つだけ備える内部導管4については、軸線X方向に直交する横断面視で、前記外殻体3の径方向中央部に形成される所要の大きさの空間からなる部分(分岐導管41以外の導管部分)を、1つの葉部とみることができる。
すなわち、前記内部導管4については、一又は複数の分岐導管41を備えるものとすることができる。
【0051】
また、
図2において、多葉断面形状は、6つの葉部を均等配置したものであるが、前記多葉断面形状は、周方向に沿って所定の間隔を存して、山部と谷部が周方向に交互に繰り返すものであればよく、葉部を均等配置したものに限られず、葉部の一部が偏った位置に配置されたものであってもよい。
なお、前記多葉断面形状、すなわち前記供給体主体2の軸線方向に直交する横断面形状は、好ましくは、左右対称になるように構成される。
【0052】
前記外殻体3を、軸線X方向に直交する横断面視で多葉断面形状になるよう折り曲げるに際し、折り曲げないし折り返しの回数や、位置については、特段の制限はなく、任意に設定することができる。
なお、前記折り曲げないし折り返し回数を多くすることによって、軸線X方向の曲げ剛性を向上させることができる。
したがって、軸線X方向の曲げ剛性を向上させることによって、加工性を向上させたい場合には、折り曲げないし折り返し回数を多くすることが好ましい。
前記軸線X方向の曲げ剛性を向上させることによって加工性を向上させる場合の折り曲げないし折り返し回数については、好ましくは15回以上、より好ましくは20回以上である。
【0053】
図2において、供給体主体2の断面形状は、計48回の折り曲げと折り返しを行うことによって形成され、
図3において、供給体主体2の断面形状は、計45回の折り曲げと折り返しを行うことによって形成されている。
なお、前記折り曲げないし折り返しによって、狭小流路411と広大流路412との間に、後述の段差部32を容易に形成することができる。すなわち、段差部32を狭小流路411と広大流路412との間に形成することで、前記折り曲げないし折り返し回数を容易に多くすることができる。
【0054】
前記折り曲げないし折り返しの方法については、特段の制限はない。
例えば、押出成型による一体成型によって、折り曲げないし折り返された状態にある外殻体で構成される供給体主体を形成することができる。この方法は、作業性が良好である点に加えて、得られる供給体主体が適度な強度及び弾性を兼ね備えたものになる点で好ましい。
【0055】
図1及び2において、前記供給体主体2は、6つの分岐導管41が周方向に、所定の間隔を存して、設けられるよう構成されているが、前記分岐導管41の数や前記間隔については、前記分岐導管41を形成するよう周方向に対向配置される一対の側壁31,31の周方向への変形又は弾性変形に影響を及ぼさない限りにおいて、供給体1の用途などに応じて選択すればよく、特段の制限はない。
なお、隣り合う側壁31,31間の間隔を狭くするほど、前記外部導管5が強い毛細管力を有する傾向にあるので、液体の供給力も強くなる傾向にある。一方、前記間隔を広くすると、大径の粒子を含む液体や高粘度な液体が通り易くなるが、毛細管力は弱くなる傾向にある。
【0056】
図2において、外殻体3は、その外殻(周壁部)を厚さ方向への折り曲げと折り返しを交互に繰り返してつづら折り状に形成することにより、その軸線X方向に直交する横断面形状が、山部(葉部)と谷部が周方向に交互に繰り返す多葉断面形状になるよう構成されている。
【0057】
一方、
図7において、外殻体3の軸線X方向に直交する横断面形状が、周方向に沿って所定の間隔を存して、山部と谷部が周方向に交互に繰り返す多葉断面形状になるように、前記外殻体3の外周の厚さ方向への折り曲げと折り返しが交互に繰り返されている。
【0058】
前記分岐導管41を形成する際には、各分岐導管41の径方向内側、特に外殻体3の径方向中央部に、所要の大きさの空間からなる導管(内部導管)が形成されるよう前記筒状の外殻体3の外周の厚さ方向への折り曲げを行ってもよい。
図2において、前記外殻体3の径方向中央部には、所要の大きさの空間からなる導管が形成され、この導管は、その毛細管力が、後述する狭小流路411の毛細管力よりも弱くなるよう構成されている。
このような構成によって、液体を大量に流す必要がある場合や、大径の粒子を含む液体を使用する場合であっても、液体の目詰まりが生ずることなく、筆先ないしペン先等の塗布部に円滑に前記液体を供給することができる、という有利な作用効果が得られる。
【0059】
この発明において、前記分岐導管41は、
図2に示すように、軸線X方向に直交する横断面視で、その径方向内側に軸線X方向に沿って延びるよう形成される狭小流路411と、前記狭小流路411の径方向外側に軸線X方向に沿って延びるよう形成される広大流路412と、を備えるよう構成される。
【0060】
前記狭小流路411は、所要の毛細管力を有するように構成され、この毛細管力に応じた大きさを有するように構成される。
例えば、前記狭小流路411については、前記狭小流路411の大きさを、液体が通過できる程度のものにすることにより、比較的強い毛細管力が発揮されるよう構成することができる。
【0061】
図2において、前記狭小流路411は、主としてインクなどの液体を構成するもののうち、大径の粒子以外の部分、特に液体のベースとなる液部分が通過できる程度の大きさを有するよう形成されている。
このような構成によって、前記狭小流路411の強い毛細管力により、主として前記液部分のみが、供給体1の軸線X方向の先端側、すなわちペン先などの塗布部8に対して、円滑に、かつ安定して供給される。
なお、この実施例において、前記狭小流路411は、それぞれ軸線X方向に直交する横断面視で、周方向長さ(幅)L1が10μm~200μm程度、径方向長さM1が10μm~1.0mm程度になるよう構成されている。
【0062】
前記狭小流路411を形成する際には、
図2に示すように、前記狭小流路411を形成するよう周方向に対向配置される一対の側壁311,311を、前記側壁311,311間の幅(周方向長さ)が径方向内側から径方向外側に向かって一定になるよう構成することができるが、前記一対の側壁311,311が、径方向外側に向かって互いに接近又は離間していく、或いは接近と離間を繰り返すことによって、前記狭小流路411の周方向長さが、径方向外側に向かって、徐々に拡大又は縮小し、或いは拡大と縮小を繰り返すよう形成することができる。
図3において、各狭小流路411は、これを形成するよう周方向に対向配置される一対の側壁311,311間の幅が、径方向内側の端部から径方向所定の位置まで徐々に拡大していき、この位置から径方向外側の端部に向かって徐々に縮小していくように構成されている。
【0063】
前記狭小流路411は、所要の毛細管力を有するように構成されていればよく、その形状に特段の制限はない。
図2において、前記狭小流路411は、軸線X方向に直交する横断面視で、前記略矩形状になるよう構成されているが、略矩形状に限らず、楕円形状や、三角形状、四角形状、多角形状その他の異形状であってもよい。
なお、前記したように、前記狭小流路411については、好ましくは、軸線X方向に直交する横断面視で、左右対称な形状をなすよう構成される。
【0064】
前記広大流路412は、前記狭小流路411よりも毛細管力が弱くなるように構成され、この毛細管力に応じた大きさを有するように構成される。
例えば、前記広大流路412については、前記広大流路412の大きさを、大径の粒子(例えば、粒子径6μm~400μm程度の粒子)が通過できる程度で、かつ前記狭小流路411よりも弱い毛細管力が発揮されるよう構成することができる。
このような構成によって、選択される液体が前記大径の粒子を含むものであっても、液体の目詰まりが生ずることなく、インクなどの液体を、前記広大流路412から円滑に、かつ安定して供給することが可能となる。
また、上記構成は、前記液体を大量に流す必要がある場合において、前記液体を、前記広大流路412から円滑に、かつ安定して供給することを可能とする。
【0065】
より具体的には、前記広大流路412を、軸線X方向に直交する横断面視で、その周方向の最大長さ、すなわち前記広大流路412を形成するよう周方向に対向配置される一対の側壁312b,312b間の最大の幅が、前記狭小流路411の周方向の最大長さ、すなわち前記狭小流路411を形成するよう周方向に対向配置される一対の側壁311,311間の最大の幅よりも大きくなるように構成することができる。
なお、前記広大流路412の周方向の最大長さと前記狭小流路411の周方向の最大長さとの比については、1.2:1~100:1に設定することができる。
前記比が1.2:1を下回ると前記広大流路と前記狭小流路との差がなくなり過ぎて、前記広大流路において、大径の粒子を含む液体が円滑に流れにくくなるか、或いは前記狭小流路において毛細管力が弱くなり、前記液体、特にそのベースとなる液部分が円滑に流れにくくなるか、いずれかの問題が生じ易くなる傾向にある。前記比が100:1を上回ると前記狭小流路の間隔が狭くなり過ぎで、前記液体が通過しにくくなる傾向にある。
前記比は、好ましくは1.5:1~100:1であり、より好ましくは2:1~100:1である。
図2において、前記広大流路412の周方向の最大長さと前記狭小流路411の周方向の最大長さとの比は、10:1に設定されている。
【0066】
一方、前記広大流路412の径方向の長さについては、選択される液体(インク等)の種類や特性などに応じて適宜設定すればよく、特段の制限はない。
例えば、前記広大流路412の径方向の長さを、前記狭小流路411の径方向の長さの半分又はそれ以上の長さに設定することができる。
好ましくは、前記広大流路412の径方向の長さと前記狭小流路411の径方向の長さとの比は、1:0.5~1:150である。
なお、
図2において、前記広大流路412は、その周方向長さL2が0.2~0.7mm程度、径方向長さM2が0.2~0.7mm程度になるよう構成されている。
【0067】
前記広大流路412を形成する外殻体3の外殻(周壁部)については、
図2に示すように、その軸線X方向に直交する横断面が、所定の形状になるよう構成することができる。
なお、前記形状については、前記広大流路412が前記狭小流路411よりも弱い毛細管力を有するように構成されている限りにおいて特段の制限はなく、供給体1と組み合わされる部材、特に円筒状の軸部10又は液体一時保持部材11の横断面形状や大きさなどに応じて適宜選択することができる。
好ましくは、前記外殻部3の外周において、径方向外側に配されている壁部312aが、径方向外側に向かって膨出若しくは突出した山又は弧状を呈するよう形成される。
このような形状になるよう構成することによって、塗布具を構成する所定の部材(例えば円筒状の軸筒10又は液体一時保持部材11)、特にこの部材が備える穴の内壁との接触面が減るので、摩擦が減少する。したがって、供給体1を前記部材にスムーズに挿入することができる。
【0068】
図2において、前記広大流路412を形成する外殻体3の外殻(周壁部)は、供給体1の軸線X方向に直交する横断面形状が全体として略正六角形状になるよう、軸線X方向に直交する横断面が略六角形状を呈するよう構成されている。
なお、前記広大流路412の軸線X方向に直交する横断面形状については、略六角形状に限らず、楕円形状や、三角形状、四角形状、多角形状その他の異形状であってもよい。
また、前記したように、前記広大流路412については、好ましくは、軸線X方向に直交する横断面視で、左右対称な形状をなすよう構成される。
【0069】
図3においては、前記広大流路412を形成する外殻体3の外殻(周壁部)の軸線X方向に直交する横断面は、略逆等脚台形状であって、その径方向外側に配されている壁部(下底部)312aが径方向外側に向かってやや膨出した円弧状を呈するものとされている。
【0070】
図2において、前記供給体主体2は、広大流路412を狭小流路411の径方向外側の端部から径方向外側に向かって延設することにより、前記狭小流路411と前記広大流路412が互いに連通するよう構成されているが、前記狭小流路411と前記広大流路412とは、所要の厚みを有しかつ軸線方向Xに沿って延びる板状の区画壁(図示せず)によって区画されていてもよい。
【0071】
前記狭小流路411と前記広大流路412が互いに連通している場合において、好ましくは、前記狭小流路411と前記広大流路412との間に、段差部32,32が設けられる。
図2において、前記段差部32,32は、広大流路412と狭小流路411の周方向長さ(流路の内径)の差異によって、軸線方向に沿って延びるよう形成されている。
このような構成によれば、前記段差部に応力が集中するようになり、この段差部を起点として外殻体3の外周が押圧に対して柔軟に変形するので、横断面形状が大きく崩れることがなく、予め設計した通りのインクフローが実現できる。
なお、前記段差部32の形成方法については、特段の制限はなく、例えば、前記外殻体3の外周の折り曲げないし折り返しによって形成することができる。
【0072】
また、前記段差部32の配設によって、前記外部導管5において、毛細管力が強い部分が形成され易くなる。
しかも、気孔率を低下させることなく、前記内部導管4の内部に毛細管力が強い部分を形成することができるので、インクフローが低下しない。
【0073】
さらに、前記段差部32によって形成される段差は、前記外部導管5の形状に変化を付与し得る。
しかも、前記内部導管4の内部に、前記狭小流路411と前記広大流路412との間の毛細管力の相違に起因する特性と同様の特性を有する部分を形成することが可能となる。
【0074】
さらにまた、前記段差部32の配設によって、前記供給体1の軸線X方向に対する曲げ剛性が向上する。したがって、前記供給体1においては、その軸線X方向に対する強度が向上しているので、前記供給体1に加工(カット等)を施して所定の形状(特に所定の先端形状)になるよう形成する際には、たわみ量が少なくなり、前記加工を施し易い。
なお、前記段差部の数については、特段の制限はないが、その数を多くすることによって、前記軸線方向に対する曲げ剛性を更に向上させることが可能となる。
特に、前記供給体主体2をその軸線方向に対して強度が向上するように構成した場合には、前記供給体主体2を加工して所望の先端形状に形成する際にも、たわみ量が少なくなるので、加工が行い易くなるという作用効果が得られる。
【0075】
前記供給体主体2は、前記分岐導管41が、少なくとも1つの他の分岐導管41と互いに連通するよう構成されていてもよい。
このような構成によって、供給体1の液体(インクなど)の追随性が向上する。
さらに、前記構成によれば、前記狭小流路411が有する強い毛細管力によって導引された液体の影響により、毛細管力が弱い前記広大流路412においても液体が導引されるので、過不足なく十分に液体を通過(供給・排出)させることが可能となる。
さらにまた、前記構成によれば、前記供給体1がその軸線X方向に直交する横断面視で径方向に押圧されたときには、径方向への柔軟な変形が可能となる。したがって、前記供給体1が装着される部材に設けられている穴の径が、前記供給体1の外径より細い場合であっても、前記供給体1が前記変形によって縮径するので、前記穴への前記供給体1の挿入を、極めてスムーズに行うことが可能となる。
【0076】
図2において、全ての分岐導管41は、分岐導管41とは別の空間、具体的には、前記分岐導管41の径方向内側であって、外殻体3の径方向中央部に形成されている導管(内部導管4の径方向中央部分)を介して互いに間接的に連通している。
なお、分岐導管41を他の分岐導管41と連結させることによって、別の空間(分岐導管41以外の導管)を介さずに、分岐導管41と他の分岐導管41とを互いに直接連通させてもよい。
【0077】
この発明において、前記分岐導管41は、その少なくとも1つが、所要の厚みを有し、かつ軸線方向に沿って延びる板状の隔壁6によって他の分岐導管41と区画されるよう構成されていてもよい。
このような構成によって、前記供給体主体2の強度が向上するので、前記供給体1を、塗布具を構成する所定の部材と組み合わせる際(例えば、供給体1の先端を塗布部(ペン先等)の後端に差し込む場合など)には、前記部材に前記供給体1を挿入することが容易になり、前記供給体1の加工性が向上し、前記供給体1の製造時の保形性が維持され易くなる。
【0078】
さらに、この発明において、前記供給体1を構成する供給体主体2を、その軸線方向に対して強度が向上するように構成することができる。
このように構成した場合には、前記供給体主体2を加工して所望の先端形状に形成する際にも、たわみ量が少なくなるので、加工が行い易くなるという作用効果が得られる。
【0079】
図4において、供給体主体2は、
図2に示される供給体主体2とほぼ同様の構成を有するものであるが、
図4に示される供給体主体2は、周方向に隣り合う2つの分岐導管41,41が互いに連通した構造を1単位として、所要の厚みを有しかつ軸線方向に沿って延びる板状の隔壁6によって互いに区画された3つの単位で構成されている。
【0080】
図5において、供給体主体2は、
図2に示される供給体主体2とほぼ同様の構成を有するものであるが、
図5に示される供給体主体2は、狭小流路411と広大流路412が互いに連通した分岐導管41を1単位として、所要の厚みを有しかつ軸線方向に沿って延びる板状の隔壁6によって互いに区画された6つの単位で構成されている。
【0081】
この発明において、前記供給体主体2については、複数の外殻体3を互いに連結させて構成することができる。
【0082】
図4に示される供給体主体2は、所要の厚さを有する筒状の外殻体3の外殻(周壁部)を厚さ方向に折り曲げることにより、軸線X方向に直交する横断面視で、略V字状の内部導管4が形成されるとともに、前記内部導管4の径方向両端に所要の大きさの広大流路412,412が形成され、径方向中央部近傍に所要の大きさの狭小流路411,411が形成されるよう構成された外殻体3を1単位として、3単位の外殻体が、その径方向中央部において互いに連結したものと考えることができる。
【0083】
また、
図5に示される供給体主体2は、所要の厚さを有する筒状の外殻体3の外殻(周壁部)を厚さ方向に折り曲げることにより、軸線X方向に直交する横断面視で、径方向内側に形成される1つの狭小流路411と径方向外側に形成される1つの広大流路412とを備え、かつ前記狭小流路411と前記広大流路412が互いに連通するよう形成された外殻体3を1単位として、6単位の外殻体が、その径方向内側の端部において互いに連結したものと考えることができる。
【0084】
この発明においては、周方向に隣接する分岐導管41を形成する周壁(例えば側壁31)の外面同士を、補強用壁部7によって接続することができる。
このような構成によって、前記周壁の強度が向上するので、前記周壁の形成を精度よく行うことができる。すなわち、前記供給体1を構成する供給体主体2全体の強度が向上するので、前記供給体1を製造する際には、ローラーなどで押圧した場合であっても潰れにくく、前記供給体1を精度よく製造することが可能となる。
さらに、前記供給体主体2全体の強度が向上して軸線Xに直交する方向のたわみを軽減できるので、前記供給体主体2に対する加工を精度よく施すことが可能となる。
特に、前記分岐導管を形成する外殻体3の強度が向上するので、前記外殻体3において折れ曲がり等の不用意な変形が発生することを防止することが可能となり、2次加工性の向上や加工品における強度の向上が期待できる。
なお、上記構成は、前記供給体1を構成する供給体主体2の強度が弱いことによって何らかの問題が生じるおそれがある場合において好ましく採用され、上記作用効果が効果的に発揮される。
【0085】
なお、前記補強用壁部7を設ける際には、隣接する分岐導管41を形成する周壁(例えば側壁31)と前記補強用壁部7で囲まれる部分に、所定の大きさの空間を形成することができる。
この空間もまた、液体の導管(内部導管)42として機能する。
【0086】
図6において、補強用壁部7は、軸線X方向に直交する横断面視で径方向に直交する方向、すなわち周方向に沿って延在するとともに、軸線方向Xに沿って延在し、周方向に隣接する広大流路412を形成する側壁312bの外面の下端部同士を連結している。
このような構成によって、前記側壁31,31と前記補強用壁部7で囲まれる部分に形成される空間は、液体の導管(内部導管)42として機能する。
【0087】
なお、前記狭小流路411を形成する側壁311の外面、特にその上端近傍同士が前記補強用壁部7を介して連結される場合には、前記狭小流路411を形成する側壁311の周方向への変形が規制されやすくなる。
したがって、この場合には、前記広大流路412を形成する側壁312bを、押圧によって周方向に変形可能に構成することが好ましい。
【0088】
一方、
図7において、補強用壁部7は、周方向に隣接する分岐導管41,41を形成する周壁の径方向最外部のそれぞれから径方向外側に向けて立ち上がるように形成された軸線X方向に沿って延びる一対の側壁71,71と、前記側壁71,71の径方向外側の端縁同士を接続する横断面視山状の側壁(径方向外側の側壁)72で構成されることにより、周方向に隣接する分岐導管41を形成する周壁の径方向最外部同士を連結している。
このような構成によって、インクフローの増大が実現される。
なお、
図7において、前記側壁31,31と前記補強用壁部7で囲まれる部分に形成される空間は、その大きさが、大径の粒子(例えば、粒子径6μm~400μm程度の粒子)が通過できる程度の、弱い毛細管力が発揮されるよう構成されている。
【0089】
前記広大流路412を規定する周壁の少なくとも一部には、
図8及び9に示すように、外側に向かって開口する開口部33が形成されていてもよい。
このような構成によって、前記広大流路412は、前記外殻体3の外周上に形成される外部導管5と連通するので、ペン先などの液体の排出先への液体供給効率が向上する。
さらに、何らかの原因で一部の導管(特に分岐導管41)が詰まった場合であっても、前記開口部33を介して前記広大流路412と前記外部導管5が互いに連通し、前記液体の流路が形成されるため、他の導管を利用して前記液体の供給が可能となる。
【0090】
前記広大流路412を規定している全ての周壁の径方向最外部に、所定の大きさの開口部33が形成される場合には、前記開口部33は、その全てについて、上端縁がほぼ面一になるよう構成されていてもよい。
このように構成した場合には、前記外殻体3の外周部には、周方向に沿って所要の深さの溝が形成されているということができる。
このような構成によって、前記供給体主体2では、全ての広大流路412に加えて、これらと連通する外部導管5をも利用して液体の供給が行われるため、液体の排出先(塗布部)への液体供給効率が更に向上する。
【0091】
なお、前記開口部33は、前記広大流路412を規定している周壁の少なくとも1つに対して形成することができる。
【0092】
また、前記開口部33の形成位置については、特段の制限はなく、広大流路412が前記外部導管5と連通するよう構成されている限りにおいて、前記広大流路412を規定している周壁の任意の位置に一又は複数形成することができる。
前記開口部33は、好ましくは前記広大流路412を規定している周壁の軸線X方向の後端部以外、より好ましくは軸線X方向の先端側又は中間部(先端部と後端部以外の任意の位置)に形成される。
【0093】
図8において、供給体主体2は、前記広大流路412を規定している周壁の軸線X方向の先端側と中央部近傍のそれぞれに、複数の開口部33が形成されるよう構成されている。
このように構成された場合には、前記供給体主体2の軸線X方向の先端側の外周に開口部33が形成されているので、前記供給体主体2がペン先などの塗布部8と軸線X方向に嵌合した状態では、前記開口部33が塗布部8の内部に位置し、その結果、塗布部8全体に液体が供給されやすくなる。
【0094】
さらに、前記開口部33の大きさについては、特段の制限はない。
この発明において、前記供給体1が備える前記内部導管4は、強い毛細管力を有する狭小流路411と弱い毛細管力を有する広大流路412を備えるように構成されている。
したがって、前記開口部33を設けるに際しては、前記外殻体3の外周に、周方向に沿って浅い深さの溝(環状溝)が形成されるよう前記外殻体3の最外径部(径方向最外部)を径方向外側に向かって開口させるだけで、前記広大流路(内部導管)412と前記外部導管5が互いに連通する。
このような構成によって、前記供給体主体2の強度の低下が防止され、前記開口部33の形成が容易となるので、前記供給体主体2の生産性が良好となる。
【0095】
前記狭小流路411を形成するよう周方向及び/又は径方向に対向配置される一対の側壁311,311及び/又は前記広大流路412を形成する周壁(例えば、周方向に対向配置される一対の側壁412b,412b)については、好ましくは押圧により周方向及び/又は径方向に変形可能に構成される。
その際、前記狭小流路411と前記広大流路412の間に形成された段差部32を起点として折れ曲がり変形するよう構成してもよい。
このような構成によって、供給体1の外径に対して、塗布具を構成する所定の部材(円筒状の軸部10又は液体一時保持部材11など)の内径(特に前記部材に設けられている穴の内径)がやや小さい場合であっても、前記供給体1の前記部材への嵌入を容易に行うことが可能となる一方、前記供給体1の前記部材からの取り外しも容易に行うことが可能となる。
【0096】
特に、前記供給体主体2を、弾性を有する材料で構成した場合には、変形したのち元に戻ろうとする力(復元力)が働くため、さらに前記部材にしっかり固定させることが可能となる。
なお、前記部材の穴径や前記供給体主体2の外径を調整することによって、前記供給体主体2が縮径される度合いを変えることが可能であり、この縮径によって、隣り合う周壁同士の距離を狭めることが可能となる。これによって、導管のスリットサイズを調整することにより毛細管力の制御を容易に行うことができる。
さらに、前記部材が有する狭い穴へ前記供給体1を無理に挿入した場合であっても、前記供給体主体2で構成される前記供給体1が押圧により周方向及び/又は径方向に変形するので、前記供給体1において座屈や破損が発生しにくくなる、という作用効果も得られる。
【0097】
前記狭小流路411を形成するよう周方向及び/又は径方向に対向配置される一対の側壁311,311及び/又は前記広大流路412を形成する周壁を、押圧により周方向及び/又は径方向に変形又は弾性変形可能に構成する方法については、特段の制限はない。
例えば、前記狭小流路411を形成するよう周方向及び/又は径方向に対向配置される一対の側壁311,311及び/又は前記広大流路412を形成する周壁を、所定の厚さ(薄さ)を有するよう構成する方法や、前記供給体主体2を、その気孔率が大きくなるよう構成する方法などを選択することができる。
また、前記側壁又は周壁が変形可能な程度の弾性を有するプラスチックやエラストマーを用いることで変形させることもできる。
【0098】
この実施例においては、前記供給体主体2は、その気孔率が大きくなるよう構成されているので、各分岐導管41を構成する周壁は、周方向及び/又は径方向に変形しやすい。
その際、前記気孔率については、例えば、30~70%程度にすることができる。
なお、この場合において、前記供給体主体2を構成する材料については、特段の制限はなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABSなどの汎用プラスチック;ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、超硬分子量ポリエチレン樹脂などに代表されるエンジニアリングプラスチックや;四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などに代表されるスーパーエンジニアリングプラスチックなどを適宜選択することができる。
特に、硬く強度がある一方、弾性にも富んだ材料であるポリアセタール樹脂を選択することが好ましい。
【0099】
一方、前記狭小流路411を形成するよう周方向及び/又は径方向に対向配置される一対の側壁311,311及び/又は前記広大流路412を、押圧により周方向及び/又は径方向に変形又は弾性変形可能に構成する場合には、前記変形又は弾性変形を可能にする材料として、例えば、エラストマーなどの弾性変形可能な材料(特に樹脂材料)や、可撓性を有する材料(特に樹脂材料)、より具体的には、例えば、ポリエステルエラストマー、ナイロンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマーなどを適宜選択することができる。
【0100】
この発明において、前記供給体主体2は、その軸線方向に直交する横断面形状が真円になるよう構成されていてもよい。
好ましくは、前記供給体主体2は、その軸線方向に直交する横断面視において、その外周線(外接円)が外周真円度0.015~0.20mm、より好ましくは0.03~0.20mmの円形状を形成するよう構成される。
このような構成によって、前記供給体1を構成する供給体主体2は、その横断面形状が横断面視径方向に沿って長軸が伸びる略楕円形状を呈するものになるので、前記供給体主体2を、塗布具を構成する部材(特に円筒状の軸筒又は液体一時保持部材)が有する穴等に挿入する際には、前記略楕円形状の長軸側の周壁が潰れ易くなる。
したがって、前記供給体1を、その外径中心値よりも太くばらついた内径を有する軸部や液体一時保持部材などの部材の内部に嵌入することが可能となり、その結果、軸部や液体一時保持部材などの部材にしっかりと固定することが可能となる。
この作用効果は、前記供給体主体2を、弾性を有する材料で構成した場合に、顕著である。
さらに、前記供給体主体2の外周線が形成する円が真円ではない場合には、製品としての塗布具の組み立ての際に、前記供給体主体2で構成される供給体1を作業台などの上に並べて置く場合であっても、前記供給体1が転がりにくく、作業台などから落ちにくいものになるので、作業性が向上する。
なお、
図2及び
図9において、前記供給体主体2の横断面の外径中心値は、φ2mmに設定されている。
【0101】
図2、
図4~7及び
図10において、前記供給体主体2は、その全体が軸線X方向に直交する横断面視で略正六角形状を呈するよう、前記広大流路412を形成する周壁が、軸線X方向に直交する横断面視で、略六角形状になるように形成されている。
【0102】
前記外殻体3の周壁部の内面や、前記補強用隔壁7の内面、前記区画壁、前記隔壁には、当該周壁部の内方に向かって突出し、かつ軸線X方向に沿って延在する内向きリブ34を形成することができる。
このような構成によって、前記内部導管4内に毛細管力が強められた部分を形成することができる。すなわち、前記内部導管4における毛細管力を制御ないし調整することが可能となるので、より多くの液体を供給することが可能となる。
したがって、前記内向きリブ34については、毛細管力の制御ないし調整を目的として、適宜配設することができる。
なお、前記供給体主体2の横断面視で中央部近傍に前記内向きリブが形成されている場合には、前記供給体主体2を、その先端形状が先鋭になるよう精度よく形成することができる。
【0103】
前記内向きリブ34は、
図10において、周方向に隣り合う側壁31,31間に、
図3において、狭小流路411を形成する側壁311と前記側壁311の径方向外側の端部から径方向外側に向かって延設される広大流路412を形成する側壁312bとの間に、それぞれ形成されている。
したがって、いずれの供給体1も強い毛細管力を有している。
【0104】
前記供給体主体2については、用途に応じて、軸線X方向の長さが所定の値になるように形成することができる。
なお、
図9において、前記供給体主体2の全長(長手方向長さ)は、35mmに設定されている。
【0105】
前記供給体主体2については、その先端部が、先端側に向かうに従って先細となる先鋭形状を有するよう構成することができる。
図8及び9において、前記供給体主体2の先端部は、先端側に向かうに従って先細となる先鋭形状を有する。
このような構成によって、供給体1の先端に柔軟性を付与することが可能となり、さらに装着されるペン先として筆先が選択された場合には、まとまりが良く、バラケないものにすることが可能となる。
さらに、前記供給体主体2で構成される供給体1の尖鋭な先端をそのまま利用して、塗布先(塗布部)としても使用することができる。
【0106】
かかる構成の供給体1は、特有の横断面組織構造を有していることにより成型の際の溶融・固化による体積収縮の歪が生じにくいので、その成型に際しては、成型体にネジレが生じにくい。
この作用効果は、前記分岐導管41が、前記供給体主体2の軸線X方向に直交する横断面視で、左右対称な形状をなすよう構成されている場合に、顕著である。
【0107】
また、前記供給体1を構成する供給体主体2は、その気孔率が比較的高くなるよう(例えば30~70%程度になるよう)構成されることにより、周方向及び/又は径方向に撓みやすいので、前記供給体1を所定の部材と組み合わせる際には、容易に嵌合が行われ、当該部材にしっかりと固定される。
なお、前記気孔率を、その値が高くなるよう設定することによって、インクなどの液体の供給量を多くすることができる。
【0108】
また、前記供給体1は、
図11に示すように、塗布具12を構成するに際して、円筒体からなる軸部10又は円筒状の液体一時保持部材(供給体1の外部に多量の液体(インクなど)が供給されたとき、液体が溢出した場合であっても、その液体を一時的に保持し、保持した液体を液体貯蔵体などの液体貯蔵部9に供給(リターン)するもの)11の内部に挿入される。
したがって、前記供給体1の外周上、具体的には、前記供給体1の外周面と前記軸部10又は前記液体一時保持部材11、特にその穴の内周面との間に形成される空間が、外部導管5を構成する。
よって、前記供給体1は、前記内部導管4のみならず、前記外部導管5を利用して液体の供給を行うことができるので、追随性の向上が実現される。
【0109】
さらに、前記供給体1は、前記内部導管4の径方向外側を構成する広大流路412よりも前記内部導管4の径方向内側を構成する狭小流路411の方が毛細管力が強くなるよう構成されている。
したがって、前記狭小流路411によって、主として液体を構成する液部分(インクなどのベースとなる液体部分)が円滑にかつ安定して供給される一方、狭小流路411よりも毛細管力が弱くなるよう構成された広大流路412によって、前記液体に含まれうる大径粒子が円滑にかつ安定して供給される。
よって、前記供給体1によれば、インクなどの液体が大径粒子を含むものであっても、ペン先等の塗布部に対して、円滑に、かつ安定して液体を供給することが可能となる。
【0110】
さらにまた、前記供給体1は、前記内部導管4が備える広大流路412が大きくなる(所定の大きさを有する)よう構成されている一方、前記外部導管5は、その毛細管力が比較的強くなるよう構成されている。
したがって、前記供給体1では、その気孔率を下げて毛細管力を調整する必要がない。
よって、前記供給体1は、高い気孔率と高い毛細管力とを兼ね備えたもので、高いインクフロー(液体排出)を維持しつつ液体排出量の調整を可能とするものである。
【0111】
前記供給体1については、マーキングペンやサインペン、筆ペンなどの筆記用の液体供給具(筆記具)や、アイライナーなどの化粧用の塗布具など、紙や肌等の対象に対して筆記や描画、塗布等を行う各種塗布具の液体供給体、特に中継芯として利用することができる。
【0112】
なお、前記供給体1を使用して塗布具を構成する方法については、特段の制限はなく、公知の方法を利用して塗布具を構成することができる。
例えば、塗布具12は、
図11に示すように、前記供給体1を、前記軸部10に前記液体一時保持部材11を介して又はこれを介さないで直接挿入したのち、前記供給体1の先端側と塗布部(ペン先)8を軸線X方向に嵌合し、後端側に液体貯蔵体9を配設し、後端側の開口を尾栓(図示せず)等で閉止することによって構成することができる。
このような塗布具もこの発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
この発明の液体供給体は、長尺棒状の供給体主体からなるもので、前記供給体主体は、内部空間を画定して軸線方向に沿って延びる外殻体で構成され、前記内部空間が構成する内部導管と、前記外殻体の外周上に形成される外部導管と、を備える。
したがって、この液体供給体では、塗布具を構成する所定の部材と組み合わされた状態で、前記内部導管と前記外部導管を利用してインクなどの液体の供給が可能であるので、液体の供給を円滑にかつ安定して行うことができる。
また、前記液体供給体は、特有の横断面組織構造を有しているので、ネジレ等を生じることなく、簡単にその成型を行うことができる。
さらに、前記液体供給体は、前記供給体主体を構成する外殻体が軸線方向に直交する横断面視で多葉断面形状になるよう構成されていることにより、径方向外側に向かって放射状に延びる複数の周壁が形成され、前記周壁は、押圧により周方向及び/又は径方向に変形又は弾性変形可能に構成されているので、前記所定の部材にしっかりと固定することができる。
よって、この液体供給体は、筆記や描画などを目的とする塗布具の液体供給体として使用可能なもので、広い用途での使用が可能なものである。
【符号の説明】
【0114】
1 液体供給体
2 供給体主体
3 外殻体
31 側壁(周壁部の側壁)
311 狭小流路を形成する側壁
312a 広大流路を形成する径方向外側の壁部(側壁)
312b 広大流路を形成する側壁
32 段差部
33 開口部
34 内向きリブ
4 内部導管(内部空間)
41 分岐導管
411 狭小流路
412 広大流路
42 補強用壁部と側壁によって形成される導管
5 外部導管
6 隔壁
7 補強用壁部
71 側壁(周方向の側壁)
72 径方向外側の側壁
8 塗布部(ペン先)
9 液体貯蔵部
10 軸部(軸筒)
11 液体一時保持部材
12 塗布具
L1 狭小流路の周方向長さ(幅)
L2 広大流路の周方向長さ(幅)
M1 狭小流路の径方向長さ
M2 広大流路の径方向長さ