(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112830
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】二輪自動車用タイヤ対
(51)【国際特許分類】
B60C 3/00 20060101AFI20230807BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20230807BHJP
B60C 9/06 20060101ALI20230807BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20230807BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20230807BHJP
B60C 3/04 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
B60C3/00 E
B60C11/03 C
B60C9/06 B
B60C9/22 C
B60C11/00 F
B60C3/04 C
B60C11/03 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014784
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小堀 千尋
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA32
3D131BB06
3D131BC13
3D131BC15
3D131CA03
3D131CB07
3D131DA03
3D131DA09
3D131DA52
3D131EA08V
3D131EA08W
3D131EA08X
3D131EA09V
3D131EA09W
3D131EA09X
3D131EB03U
3D131EC02V
(57)【要約】
【課題】車両の旋回性を向上できる、二輪自動車用タイヤ対の提供。
【解決手段】タイヤ対はフロントタイヤ2とリアタイヤとからなる。フロントタイヤ2のトレッド面16の輪郭線TLf及びリアタイヤのトレッド面の輪郭線に基づいて、センター円弧指数Ac、ミドル円弧指数Am及びショルダー円弧指数Asが得られる。このタイヤ対では、ミドル円弧指数Amがセンター円弧指数Acよりも大きく、ショルダー円弧指数Asがミドル円弧指数Amよりも大きい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントタイヤとリアタイヤとからなるタイヤ対であって、
前記フロントタイヤ及び前記リアタイヤのそれぞれが、
一対のビードと、一対の前記ビードのうちの、第一のビードと第二のビードとの間を架け渡すカーカスと、前記カーカスの径方向外側に位置するバンドと、前記バンドの径方向外側に位置するトレッドとを備え、
前記カーカスが並列した多数のカーカスコードを含み、それぞれのカーカスコードが赤道面に対して傾斜し、
前記バンドが実質的に周方向に延びるバンドコードを含み、
前記トレッドが路面と接地するトレッド面を備え、
子午線断面において、前記トレッド面の輪郭線を5等分することで、前記輪郭線が5つのパートに分割され、
5つの前記パートが、赤道を含むセンター部、前記センター部に連なる一対のミドル部、及び、前記ミドル部に連なる一対のショルダー部であり、
前記赤道と、前記センター部の両端とを通る円弧が第一円弧であり、
前記ミドル部の内端及び外端とその中心とを通る円弧が第二円弧であり、
前記ショルダー部の内端及び外端とその中心とを通る円弧が第三円弧であり、
前記フロントタイヤの前記第一円弧の半径R1fの、前記リアタイヤの前記第一円弧の半径R1rに対する比率(R1f/R1r)がセンター円弧指数であり、
前記フロントタイヤの前記第二円弧の半径R2fの、前記リアタイヤの前記第二円弧の半径R2rに対する比率(R2f/R2r)がミドル円弧指数であり、
前記フロントタイヤの前記第三円弧の半径R3fの、前記リアタイヤの前記第三円弧の半径R3rに対する比率(R3f/R3r)がショルダー円弧指数であり、
前記ミドル円弧指数が前記センター円弧指数よりも大きく、前記ショルダー円弧指数が前記ミドル円弧指数よりも大きい、
二輪自動車用タイヤ対。
【請求項2】
前記センター円弧指数が0.40以上0.60以下であり、
前記ショルダー円弧指数が0.70以上1.10以下である、
請求項1に記載の二輪自動車タイヤ対。
【請求項3】
前記赤道から前記トレッド面の端までの径方向距離がトレッド高さであり、
前記フロントタイヤにおいて、断面幅の呼びに対する前記トレッド高さの比率が35%以上45%以下であり、
前記リアタイヤにおいて、断面幅の呼びに対する前記トレッド高さの比率が30%以上35%以下である、
請求項1又は2に記載の二輪自動車用タイヤ対。
【請求項4】
前記フロントタイヤにおいて、断面幅の呼びに対する前記第一円弧の半径R1fの比率が45%以上55%以下であり、
前記リアタイヤにおいて、断面幅の呼びに対する前記第一円弧の半径R1rの比率が45%以上65%以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の二輪自動車用タイヤ対。
【請求項5】
前記トレッド面に、前記赤道を交差する溝が刻まれていない、
請求項1から4のいずれか一項に記載の二輪自動車用タイヤ対。
【請求項6】
前記カーカスコードが赤道面に対してなす角度が20度以上65度以下である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の二輪自動車用タイヤ対。
【請求項7】
前記カーカスコードが有機繊維からなるコードである、
請求項6に記載の二輪自動車用タイヤ対。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪自動車用タイヤ対に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪自動車は車体を傾けて旋回する。二輪自動車に装着されるタイヤのトレッド面は丸みを帯びた形状を有する。直進走行では、トレッド面の赤道面の部分が路面と主に接地する。旋回走行では、トレッド面の軸方向外側部分が路面と主に接地する。
二輪自動車用タイヤにおいては、旋回性や軽快性といった性能の向上のために、トレッド面の領域に応じてトレッド面の曲率半径を規定することが試みられている(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二輪自動車では、フロントタイヤの旋回力を高めても、例えばリアタイヤが十分な旋回力を有していなければ、ステアリング特性はオーバーステアリング傾向を示す。フロントタイヤが高い旋回性を有していても、フロントタイヤの旋回性に比べてリアタイヤが高い旋回性を有していれば、ステアリング特性はアンダーステアリング傾向を示す。
例えばフロントタイヤに対して旋回性向上のための対策を講じても、組み合わせるリアタイヤによっては、このフロントタイヤに講じた対策が十分に生かされない場合がある。車両の性能向上を図るには、フロントタイヤだけでなくリアタイヤについてもチューニングが必要である。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、車両の旋回性を向上できる、二輪自動車用タイヤ対を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る二輪自動車用タイヤ対は、フロントタイヤとリアタイヤとからなるタイヤ対である。前記フロントタイヤ及び前記リアタイヤのそれぞれが、一対のビードと、一対の前記ビードのうちの、第一のビードと第二のビードとの間を架け渡すカーカスと、前記カーカスの径方向外側に位置するバンドと、前記バンドの径方向外側に位置するトレッドとを備える。前記カーカスは並列した多数のカーカスコードを含み、それぞれのカーカスコードは赤道面に対して傾斜する。前記バンドは実質的に周方向に延びるバンドコードを含む。前記トレッドは路面と接地するトレッド面を備える。前記フロントタイヤ及び前記リアタイヤのそれぞれの子午線断面において、前記トレッド面の輪郭線を5等分することで、前記輪郭線が5つのパートに分割される。5つの前記パートは、赤道を含むセンター部、前記センター部に連なる一対のミドル部、及び、前記ミドル部に連なる一対のショルダー部である。前記赤道と、前記センター部の両端とを通る円弧が第一円弧であり、前記ミドル部の内端及び外端とその中心とを通る円弧が第二円弧であり、前記ショルダー部の内端及び外端とその中心とを通る円弧が第三円弧である。
前記フロントタイヤの前記第一円弧の半径R1fの、前記リアタイヤの前記第一円弧の半径R1rに対する比率(R1f/R1r)がセンター円弧指数であり、前記フロントタイヤの前記第二円弧の半径R2fの、前記リアタイヤの前記第二円弧の半径R2rに対する比率(R2f/R2r)がミドル円弧指数であり、前記フロントタイヤの前記第三円弧の半径R3fの、前記リアタイヤの前記第三円弧の半径R3rに対する比率(R3f/R3r)がショルダー円弧指数である。前記ミドル円弧指数が前記センター円弧指数よりも大きく、前記ショルダー円弧指数が前記ミドル円弧指数よりも大きい。
【0007】
好ましくは、この二輪自動車用タイヤ対では、前記センター円弧指数は0.40以上0.60以下である。前記ショルダー円弧指数が0.70以上1.10以下である。
【0008】
好ましくは、この二輪自動車用タイヤ対では、前記赤道から前記トレッド面の端までの径方向距離がトレッド高さである。前記フロントタイヤにおいて、断面幅の呼びに対する前記トレッド高さの比率が35%以上45%以下である。前記リアタイヤにおいて、断面幅の呼びに対する前記トレッド高さの比率が30%以上35%以下である。
【0009】
好ましくは、この二輪自動車用タイヤ対では、前記フロントタイヤにおいて、断面幅の呼びに対する前記第一円弧の半径R1fの比率は45%以上55%以下である。前記リアタイヤにおいて、断面幅の呼びに対する前記第一円弧の半径R1rの比率は45%以上65%以下である。
【0010】
好ましくは、この二輪自動車用タイヤ対では、前記トレッド面に、前記赤道を交差する溝が刻まれていない。
【0011】
好ましくは、この二輪自動車用タイヤ対では、前記カーカスコードが赤道面に対してなす角度は20度以上65度以下である。
【0012】
より好ましくは、この二輪自動車用タイヤ対では、前記カーカスコードは有機繊維からなるコードである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両の旋回性を向上できる、二輪自動車用タイヤ対が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る二輪自動車用タイヤ対を構成するフロントタイヤの一部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、フロントタイヤにおけるカーカス及びバンドの構成を説明する概略図である。
【
図3】
図3は、フロントタイヤのトレッド面の輪郭線を説明する断面図である。
【
図4】
図4は、トレッド面の変形例を示す展開図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る二輪自動車用タイヤ対を構成するリアタイヤの一部を示す断面図である。
【
図6】
図6は、リアタイヤにおけるカーカス及びバンドの構成を説明する概略図である。
【
図7】
図7は、リアタイヤのトレッド面の輪郭線を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0016】
タイヤはリムに組まれる。タイヤの内部には空気が充填され、タイヤの内圧が調整される。本開示において、リムに組まれたタイヤは、タイヤ-リム組立体である。タイヤ-リム組立体は、リムと、このリムに組まれたタイヤとを備える。
【0017】
本開示においては、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけない状態は、正規状態と称される。
【0018】
本開示においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの断面において、左右のビード間の距離を、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致させて、測定される。
【0019】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本開示におけるリムは、特に言及がない限り、正規リムを意味する。
【0020】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0021】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0022】
本開示において「断面幅の呼び」は、JIS D4203「モーターサイクル用タイヤ-呼び方及び諸元」に規定された「タイヤの呼び」に含まれる「断面幅の呼び」である。
【0023】
本開示において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイド部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイド部を備える。
【0024】
本発明の一実施形態に係る二輪自動車用タイヤ対は、二輪自動車(図示されず)の前輪に装着されるフロントタイヤと、後輪に装着されるリアタイヤとからなる。以下に、フロントタイヤ及びリアタイヤについて説明する。
【0025】
[フロントタイヤ]
図1は、フロントタイヤ2(以下、タイヤ2)の回転軸を含む平面に沿った、タイヤ2の断面(以下、子午線断面とも称される。)の一部を示す。
図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。
図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
図1において、一点鎖線ELfはタイヤ2の赤道面である。
【0026】
図1においてタイヤ2は、リムRf(正規リム)に組まれている。タイヤ2の内部には空気が充填され、タイヤ2の内圧が調整される。
【0027】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、カーカス10、バンド12及びインナーライナー14を備える。
【0028】
トレッド4は架橋ゴムからなる。トレッド4はバンド12の径方向外側に位置する。トレッド4は路面と接地するトレッド面16を備える。タイヤ2はトレッド面16において路面と接地する。
図1に示されるように、子午線断面においてトレッド面16は、その赤道面の部分が径方向外向きに突出するように湾曲する。
このタイヤ2のトレッド4には、溝は刻まれていない。このタイヤ2は、スリックタイヤである。
【0029】
図1において符号Efで示される位置は、トレッド面16と赤道面との交点である。交点Efはタイヤ2の赤道である。赤道面上に溝が位置する場合は、溝がないと仮定して得られる仮想外面(後述のトレッド輪郭線TLf)に基づいて赤道Efは特定される。赤道Efはタイヤ2の径方向外端でもある。
【0030】
図1において符号Feで示される位置は、トレッド面16の端である。両矢印TWfで示される長さはトレッド面16の幅である。トレッド面16の幅TWfは、トレッド面16の第一の端Feから第二の端Feまでの軸方向距離で表される。このタイヤ2のトレッド面16の端Feは、タイヤ2の軸方向外端である。このタイヤ2のトレッド面16の幅TWfは、総幅(JATMA等参照)とも称される。
【0031】
それぞれのサイドウォール6は架橋ゴムからなる。サイドウォール6はトレッド4の端に連なる。サイドウォール6はトレッド4の径方向内側に位置する。
【0032】
それぞれのビード8はサイドウォール6の径方向内側に位置する。ビード8は、コア18とエイペックス20とを備える。図示されないが、コア18はスチール製のワイヤを含む。エイペックス20はコア18の径方向外側に位置する。エイペックス20は外向きに先細りである。エイペックス20は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。
【0033】
カーカス10は、トレッド4及び一対のサイドウォール6の内側に位置する。カーカス10は、一対のビード8のうちの第一のビード8と第二のビード8との間を架け渡す。
【0034】
カーカス10は、少なくとも1枚のカーカスプライ22を含む。このタイヤ2のカーカス10は、1枚のカーカスプライ22で構成される。
カーカスプライ22は、第一のコア18と第二のコア18との間を架け渡すプライ本体22aと、このプライ本体22aに連なりそれぞれのコア18の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部22bとを含む。
【0035】
図2には、後述するバンド12とともにカーカス10の構成が示される。
図2において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の周方向である。紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の径方向である。紙面の表側が径方向外側であり、裏側が径方向内側である。
【0036】
図2に示されるように、カーカス10を構成するカーカスプライ22は並列した多数のカーカスコード24を含む。この
図2においては、説明の便宜のため、カーカスコード24は実線で表されるが、カーカスコード24はトッピングゴム26で覆われる。
【0037】
それぞれのカーカスコード24は赤道面に対して傾斜する。
図2において、符号θfで示される角度は、カーカスプライ22におけるカーカスコード24が赤道面に対してなす角度(傾斜角度θf)である。このタイヤ2では、カーカスコード24の傾斜角度θfは20度以上65度以下である。
【0038】
このタイヤ2は、カーカスコード24として、有機繊維からなるコード(有機繊維コード)を用いることができる。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。このタイヤ2では、カーカスコード24が無機繊維からなるコードであってもよい。この場合、無機繊維としては、ガラス繊維及び炭素繊維が例示される。
このタイヤ2では、強度と操縦安定性とをバランスよく整えることができる観点から、カーカスコード24は有機繊維コードであるのが好ましい。
【0039】
バンド12は、カーカス10の径方向外側に位置する。バンド12は、トレッド4の径方向内側において、カーカス10に積層される。バンド12はトレッド4とカーカス10との間に位置する。
【0040】
バンド12はらせん状に巻かれたバンドコード28を含む。
図2においては、説明の便宜のため、バンドコード28は実線で表されるが、バンドコード28はトッピングゴム30で覆われる。このタイヤ2では、バンドコード28は実質的に周方向に延びる。詳細には、バンドコード28が周方向に対してなす角度は5°以下である。バンド12はジョイントレスバンドとも称される。
【0041】
このタイヤ2は、バンドコード28として、有機繊維からなるコード(有機繊維コード)を用いることができる。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。このタイヤ2では、バンドコード28が無機繊維からなるコードであってもよい。この場合、無機繊維としては、ガラス繊維及び炭素繊維が提示される。このバンドコード28がスチールコードであってもよい。
【0042】
図1において符号Bfで示される位置はバンド12の端である。両矢印BWfで示される長さはバンド12の幅である。バンド12の幅BWfは、バンド12の第一の端Bfから第二の端Bfまでの軸方向距離で表される。このタイヤ2では、バンド12の幅BWfの、トレッド面16の幅TWfに対する比(BWf/TWf)は0.80以上0.95以下である。
【0043】
インナーライナー14はカーカス10の内側に位置する。インナーライナー14は、タイヤ2の内面を構成する。インナーライナー14は、気体透過係数が低い架橋ゴムからなる。インナーライナー14は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0044】
図1において符号Hfで示される長さはトレッド高さである。トレッド高さHfは、赤道Efからトレッド面16の端Feまでの径方向距離である。
【0045】
このタイヤ2では、断面幅の呼びに対するトレッド高さHfの比率は35%以上45%以下であることが好ましい。
この比率が35%以上に設定されることにより、このタイヤ2では十分な旋回力が得られる。この観点から、この比率は37%以上であるのがより好ましく、39%以上であるのがさらに好ましい。
この比率が45%以下に設定されることにより、このタイヤ2のサイド部において十分な剛性が得られる。この観点から、この比率は43%以下であるのがより好ましく、42%以下であるのがさらに好ましい。
【0046】
図3には、子午線断面におけるタイヤ2の輪郭線が示される。このタイヤ2の輪郭線は、例えば変位センサーを用いて、正規状態のタイヤ2の外面形状を計測することで得られる。
輪郭線のうち、トレッド面16の第一の端Feからその第二の端Feまでの部分が、トレッド面16の輪郭線TLf(以下、トレッド輪郭線TLf)である。例えばトレッド4に溝が刻まれている場合、溝が刻まれている部分の輪郭線は、溝が刻まれていないとして得られる仮想輪郭線で表される。
後述するリアタイヤにおけるトレッド面の輪郭線もこの輪郭線TLfと同様にして得られる。
【0047】
図3において、トレッド輪郭線TLfは赤道面に対して対称な形状を有する。このタイヤ2では、このトレッド輪郭線TLfを5等分することで、トレッド輪郭線TLfが5つのパートに分割される。
【0048】
5つのパートのうち、軸方向において中央に位置するパートがセンター部CLfである。センター部CLfは赤道Efを含む。センター部CLfの軸方向外側に位置するパートがミドル部MLfである。ミドル部MLfはセンター部CLfに連なる。ミドル部MLfの軸方向外側に位置するパートがショルダー部SLfである。ショルダー部SLfはミドル部MLfに連なる。
5つのパートは、赤道Efを含むセンター部CLf、センター部CLfに連なる一対のミドル部MLf、及び、ミドル部MLfに連なる一対のショルダー部SLfである。
【0049】
図3において符号CMfで示される位置はセンター部CLfとミドル部MLfとの境界である。境界CMfは、センター部CLfの端であり、ミドル部MLfの内端である。符号MSfで示される位置はミドル部MLfとショルダー部SLfとの境界である。境界MSfはミドル部MLfの外端であり、ショルダー部SLfの内端である。ショルダー部SLfの外端はトレッド面16の端Feである。ショルダー部SLfはトレッド面16の端Feを含む。
【0050】
このタイヤ2では、赤道Efと、センター部CLfの両端CMfとを通る円弧が第一円弧である。
図3において矢印R1fは、第一円弧の半径である。図示されないが、第一円弧の中心は赤道面上に位置する。
ミドル部MLfの内端CMf及び外端MSfとその中心とを通る円弧が第二円弧である。
図3において矢印R2fは、第二円弧の半径である。ミドル部MLfの中心は内端CMf及び外端MSfを結ぶ線分の垂直二等分線とミドル部MLfとの交点である。
ショルダー部SLfの内端MSf及び外端Feとその中心とを通る円弧が第三円弧である。
図3において矢印R3fは、第三円弧の半径である。ショルダー部SLfの中心は内端MSf及び外端Feを結ぶ線分の垂直二等分線とショルダー部SLfとの交点である。
【0051】
このタイヤ2では、断面幅の呼びに対する第一円弧の半径R1fの比率は45%以上55%以下であることが好ましい。
この比率が45%以上に設定されることにより、旋回初期においてこのタイヤ2が切れ込むことが抑えられる。この観点から、この比率は48%以上であるのがより好ましい。
この比率が55%以下に設定されることにより、初期応答性の向上が図れる。この観点から、この比率は52%以下であるのがより好ましい。
【0052】
このタイヤ2では、第二円弧の半径R2fの、第一円弧の半径R1fに対する比(R2f/R1f)は、0.88以上1.49以下であることが好ましい。
比(R2f/R1f)が0.88以上に設定されることにより、旋回初期においてこのタイヤ2が切れ込むことが効果的に抑えられる。この観点から、比(R2f/R1f)は0.98以上であるのがより好ましい。
比(R2f/R1f)が1.49以下に設定されることにより、このタイヤ2では十分な旋回力が得られる。この観点から、比(R2f/R1f)は1.30以下であるのがより好ましい。
【0053】
このタイヤ2では、第三円弧の半径R3fの、第二円弧の半径R2fに対する比(R3f/R2f)は、0.96以上2.07以下であることが好ましい。
比(R3f/R2f)が0.96以上に設定されることにより、旋回初期においてこのタイヤ2が切れ込むことが効果的に抑えられる。この観点から、比(R3f/R2f)は0.98以上であるのがより好ましい。
比(R3f/R2f)が2.07以下に設定されることにより、このタイヤ2では十分な旋回力が得られる。この観点から、比(R3f/R2f)は1.33以下であるのがより好ましく、1.23以下であるのがさらに好ましい。
【0054】
前述したように、このタイヤ2のトレッド面16には溝は刻まれていない。このトレッド面16には赤道Efを交差する溝は刻まれていない。
このタイヤ2は、直進走行時に路面と主に接地する赤道面の部分において、赤道を交差する溝が刻まれたタイヤに比べて高い剛性を有する。このタイヤ2は直進走行から旋回走行に素早く移行でき、このタイヤ2が有する優れた旋回性が十分に発揮される。
【0055】
図4はトレッド面16の変形例を示す。
図4に示されるように、このタイヤ2はトレッド面16に溝を刻むことができる。トレッド面16に溝を刻むことで、例えば、
図4に示されるようなトレッドパターンが構成される。
図4において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の周方向である。
図4の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の径方向である。
図4において、矢印Aはタイヤ2の回転方向である。このトレッド面16は、
図4の紙面上側から下側に向かって路面と接地していく。紙面上側が先着側であり、紙面下側が後着側である。
図4のトレッドパターンは、このタイヤ2のトレッド面16に刻むことができるトレッドパターンの一例である。この
図4を用いて、このタイヤ2のトレッド面16に刻むことができるトレッドパターンが説明される。
【0056】
図4に示されたトレッド面16には、溝32として傾斜溝34が刻まれる。傾斜溝34は周方向に対して傾斜する。傾斜溝34の先着端36aはトレッド面16の端Fe側に位置する。傾斜溝34の後着端36bは赤道Ef側に位置する。
傾斜溝34は、赤道Efとトレッド面16の第一の端Feaとの間に刻まれる第一傾斜溝34aと、赤道Efとトレッド面16の第二端Febとの間に刻まれる第二傾斜溝34bとを備える。このトレッド面16では、複数の第一傾斜溝34aが一定のピッチで周方向に配置される。複数の第二傾斜溝34bが一定のピッチで周方向に配置される。第一傾斜溝34aと第二傾斜溝34bとは周方向に交互に配置される。
【0057】
図4に示されるように、第一傾斜溝34aはその全体が、赤道Efとトレッド面16の端Feaとの間に位置する。第二傾斜溝34bもその全体が、赤道Efとトレッド面16の端Febとの間に位置する。
このトレッド面16においても、赤道Efを交差する溝は刻まれていない。したがって、この場合においても、このタイヤ2は、直進走行時に路面と主に接地する赤道面の部分において、赤道を交差する溝が刻まれたタイヤに比べて高い剛性を有する。このタイヤ2は直進走行から旋回走行に素早く移行でき、このタイヤ2が有する優れた旋回性が十分に発揮される。
車両の旋回性の向上に貢献できる観点から、このタイヤ2では、トレッド面16に、赤道Efを交差する溝は刻まれていないことが好ましい。
【0058】
[リアタイヤ]
図5は、リアタイヤ42(以下、タイヤ42)の回転軸を含む平面に沿った、タイヤ42の断面(以下、子午線断面とも称される。)の一部を示す。
図5おいて、左右方向はタイヤ42の軸方向であり、上下方向はタイヤ42の径方向である。
図5の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ42の周方向である。
図5において、一点鎖線ELrはタイヤ42の赤道面である。
【0059】
図5においてタイヤ42は、リムRr(正規リム)に組まれている。タイヤ42の内部には空気が充填され、タイヤ42の内圧が調整される。
【0060】
このタイヤ42は、トレッド44、一対のサイドウォール46、一対のビード48、カーカス50、バンド52及びインナーライナー54を備える。
【0061】
トレッド44は架橋ゴムからなる。トレッド44はバンド52の径方向外側に位置する。トレッド44は路面と接地するトレッド面56を備える。タイヤ42はトレッド面56において路面と接地する。
図5に示されるように、子午線断面においてトレッド面56は、その赤道面の部分が径方向外向きに突出するように湾曲する。
このタイヤ42のトレッド44には、溝は刻まれていない。このタイヤ42は、スリックタイヤである。
【0062】
図5において符号Erで示される位置は、トレッド面56と赤道面との交点である。交点Erはタイヤ42の赤道である。赤道面上に溝が位置する場合、後述のトレッド輪郭線TLrに基づいて赤道Erは特定される。赤道Erはタイヤ42の径方向外端でもある。
【0063】
図5において符号Reで示される位置は、トレッド面56の端である。両矢印TWrで示される長さはトレッド面56の幅である。トレッド面56の幅TWrは、トレッド面56の第一の端Reから第二の端Reまでの軸方向距離で表される。このタイヤ42のトレッド面56の端Reは、タイヤ42の軸方向外端である。このタイヤ42のトレッド面56の幅TWrは、総幅(JATMA等参照)とも称される。
【0064】
それぞれのサイドウォール46は架橋ゴムからなる。サイドウォール46はトレッド44の端に連なる。サイドウォール46はトレッド44の径方向内側に位置する。
【0065】
それぞれのビード48はサイドウォール46の径方向内側に位置する。ビード48は、コア58とエイペックス60とを備える。図示されないが、コア58はスチール製のワイヤを含む。エイペックス60はコア58の径方向外側に位置する。エイペックス60は外向きに先細りである。エイペックス60は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。
【0066】
カーカス50は、トレッド44及び一対のサイドウォール46の内側に位置する。カーカス50は、一対のビード48のうちの第一のビード48と第二のビード48との間を架け渡す。
【0067】
カーカス50は、少なくとも1枚のカーカスプライ62を含む。このタイヤ42のカーカス50は、1枚のカーカスプライ62で構成される。
カーカスプライ22は、第一のコア58と第二のコア58との間を架け渡すプライ本体62aと、このプライ本体62aに連なりそれぞれのコア58の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部62bとを含む。
【0068】
図6には、後述するバンド52とともにカーカス50の構成が示される。
図6において、左右方向はタイヤ42の軸方向であり、上下方向はタイヤ42の周方向である。紙面に対して垂直な方向は、タイヤ42の径方向である。紙面の表側が径方向外側であり、裏側が径方向内側である。
【0069】
図6に示されるように、カーカス50を構成するカーカスプライ62は並列した多数のカーカスコード64を含む。この
図6においても、説明の便宜のため、カーカスコード64は実線で表されるが、カーカスコード64はトッピングゴム66で覆われる。
【0070】
それぞれのカーカスコード64は赤道面に対して傾斜する。
図6において、符号θrで示される角度は、カーカスプライ62におけるカーカスコード64が赤道面に対してなす角度(傾斜角度θr)である。このタイヤ42では、カーカスコード64の傾斜角度θrは20度以上65度以下である。
【0071】
このタイヤ42は、カーカスコード64として、有機繊維からなるコード(有機繊維コード)を用いることができる。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。このタイヤ42では、カーカスコード64が無機繊維からなるコードであってもよい。この場合、無機繊維としては、ガラス繊維及び炭素繊維が提示される。
このタイヤ42では、強度と操縦安定性とをバランスよく整えることができる観点から、カーカスコード64は有機繊維コードであるのが好ましい。
【0072】
バンド52は、カーカス50の径方向外側に位置する。バンド52は、トレッド44の径方向内側において、カーカス50に積層される。バンド52はトレッド44とカーカス50との間に位置する。
【0073】
バンド52はらせん状に巻かれたバンドコード68を含む。
図6においては、説明の便宜のため、バンドコード68は実線で表されるが、バンドコード68はトッピングゴム70で覆われる。このタイヤ42では、バンドコード68は実質的に周方向にのびる。詳細には、バンドコード68が周方向に対してなす角度は5°以下である。バンド52はジョイントレスバンドとも称される。
【0074】
このタイヤ42は、バンドコード68として、有機繊維からなるコード(有機繊維コード)を用いることができる。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。このタイヤ42では、バンドコード68が無機繊維からなるコードであってもよい。この場合、無機繊維としては、ガラス繊維及び炭素繊維が提示される。このバンドコード68がスチールコードであってもよい。
【0075】
図5において符号Brで示される位置はバンド52の端である。両矢印BWrで示される長さはバンド52の幅である。バンド52の幅BWfは、バンド52の第一の端Brから第二の端Brまでの軸方向距離で表される。このタイヤ42では、バンド52の幅BWrの、トレッド面56の幅TWrに対する比(BWr/TWr)は0.80以上0.95以下である。
【0076】
インナーライナー54はカーカス50の内側に位置する。インナーライナー54は、タイヤ42の内面を構成する。インナーライナー54は、気体透過係数が低い架橋ゴムからなる。インナーライナー54は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0077】
図5において符号Hrで示される長さはトレッド高さである。トレッド高さHrは、赤道Erからトレッド面56の端Reまでの径方向距離である。
【0078】
このタイヤ42では、断面幅の呼びに対するトレッド高さHrの比率は30%以上35%以下であることが好ましい。
この比率が30%以上に設定されることにより、このタイヤ42では十分な旋回力が得られる。この観点から、この比率は32%以上であるのがより好ましい。
この比率が35%以下に設定されることにより、このタイヤ42のサイド部において十分な剛性が得られる。この観点から、この比率は34%以下であるのがより好ましい。
【0079】
図7には、子午線断面におけるリアタイヤ42の輪郭線が示される。
図7に示された輪郭線のうち、トレッド面56の第一の端Reからその第二の端Reまでの部分が、トレッド面56の輪郭線TLr(以下、トレッド輪郭線TLr)である。
【0080】
図7において、トレッド輪郭線TLrは赤道面に対して対称な形状を有する。このタイヤ42では、このトレッド輪郭線TLrを5等分することで、トレッド輪郭線TLrが5つのパートに分割される。
【0081】
5つのパートのうち、軸方向において中央に位置するパートがセンター部CLrである。センター部CLrは赤道Erを含む。センター部CLrの軸方向外側に位置するパートがミドル部MLrである。ミドル部MLrはセンター部CLrに連なる。ミドル部MLrの軸方向外側に位置するパートがショルダー部SLrである。ショルダー部SLrはミドル部MLrに連なる。
5つのパートは、赤道Erを含むセンター部CLr、センター部CLrに連なる一対のミドル部MLr、及び、ミドル部MLrに連なる一対のショルダー部SLrである。
【0082】
図7において符号CMrで示される位置はセンター部CLrとミドル部MLrとの境界である。境界CMrは、センター部CLrの端であり、ミドル部MLrの内端である。符号MSrで示される位置はミドル部MLrとショルダー部SLrとの境界である。境界MSrはミドル部MLrの外端であり、ショルダー部SLrの内端である。ショルダー部SLrの外端はトレッド面56の端Reである。ショルダー部SLrはトレッド面56の端Reを含む。
【0083】
このタイヤ42では、赤道Erと、センター部CLrの両端CMrとを通る円弧が第一円弧である。
図7において矢印R1rは、第一円弧の半径である。図示されないが、第一円弧の中心は赤道面上に位置する。
ミドル部MLrの内端CMr及び外端MSrとその中心とを通る円弧が第二円弧である。
図7において矢印R2rは、第二円弧の半径である。ミドル部MLrの中心は内端CMr及び外端MSrを結ぶ線分の垂直二等分線とミドル部MLrとの交点である。
ショルダー部SLrの内端MSr及び外端Reとその中心とを通る円弧が第三円弧である。
図7において矢印R3rは、第三円弧の半径である。ショルダー部SLrの中心は内端MSr及び外端Reを結ぶ線分の垂直二等分線とショルダー部SLrとの交点である。
【0084】
このタイヤ42では、断面幅の呼びに対する第一円弧の半径R1rの比率が45%以上65%以下であることが好ましい。
この比率が45%以上に設定されることにより、旋回初期においてリアタイヤ42が切れ込むことが抑えられる。この観点から、この比率は54%以上であるのがより好ましい。
この比率が65%以下に設定されることにより、初期応答性の向上が図れる。この観点から、62%以下であるのがより好ましい。
【0085】
このタイヤ42では、第二円弧の半径R2rの、第一円弧の半径R1rに対する比(R2r/R1r)は、0.81以上1.36以下であることが好ましい。
比(R2r/R1r)が0.81以上に設定されることにより、旋回初期においてこのタイヤ42が切れ込むことが効果的に抑えられる。この観点から、比(R2r/R1r)は0.83以上であるのがより好ましい。
比(R2r/R1r)が1.36以下に設定されることにより、このタイヤ42では十分な旋回力が得られる。この観点から、比(R2r/R1r)は1.09以下であるのがより好ましく、0.92以下であるのがさらに好ましい。
【0086】
このタイヤ42では、第三円弧の半径R3rの、第二円弧の半径R2rに対する比(R3r/R2r)は、0.62以上1.26以下であることが好ましい。
比(R3r/R2r)が0.62以上に設定されることにより、旋回初期においてこのタイヤ42が切れ込むことが効果的に抑えられる。この観点から、比(R3r/R2r)は0.81以上であるのがより好ましい。
比(R3r/R2r)が1.26以下に設定されることにより、このタイヤ42では十分な旋回力が得られる。この観点から、比(R3r/R2r)は1.08以下がより好ましく、0.96以下であるのがさらに好ましい。
【0087】
前述したように、このタイヤ42のトレッド面56には溝は刻まれていない。このトレッド面56には赤道Erを交差する溝は刻まれていない。
このタイヤ42は、直進走行時に路面と主に接地する赤道面の部分において、赤道を交差する溝が刻まれたタイヤに比べて高い剛性を有する。このタイヤ42は直進走行から旋回走行に素早く移行でき、このタイヤ42が有する優れた旋回性が十分に発揮される。
【0088】
このタイヤ42も、前述のフロントタイヤ2のトレッド面16と同様、トレッド面56に溝を刻むことができる。この場合、トレッド面16と同様、赤道Erを交差する溝を含まないように、トレッドパターン(図示されず)が構成される。このタイヤ42は、直進走行時に路面と主に接地する赤道面の部分において、赤道を交差する溝が刻まれたタイヤに比べて高い剛性を有する。このタイヤ42は直進走行から旋回走行に素早く移行でき、このタイヤ42が有する優れた旋回性が十分に発揮される。
このタイヤ42では、車両の旋回性の向上に貢献できる観点から、トレッド面56には、赤道Erを交差する溝は刻まれていないことが好ましい。
【0089】
[タイヤ対]
本発明の一実施形態に係るタイヤ対は、以上説明したフロントタイヤ2と、リアタイヤ42とで構成される。このタイヤ対では、車両の旋回性向上に効果的に貢献するために、主に、フロントタイヤ2のトレッド輪郭線TLfと、リアタイヤ42のトレッド輪郭線TLrとが絶妙なバランスで設定される。
【0090】
このタイヤ対では、トレッド輪郭線TLfとトレッド輪郭線TLrとを適切に設定するために、次に示す、センター円弧指数Ac、ミドル円弧指数Am及びショルダー円弧指数Asが用いられる。
センター円弧指数Acは、フロントタイヤ2の第一円弧の半径R1fの、リアタイヤ42の第一円弧の半径R1rに対する比率(R1f/R1r)である。
ミドル円弧指数Amは、フロントタイヤ2の第二円弧の半径R2fの、リアタイヤ42の第二円弧の半径R2rに対する比率(R2f/R2r)である。
ショルダー円弧指数Asは、フロントタイヤ2の第三円弧の半径R3fの、リアタイヤ42の第三円弧の半径R3rに対する比率(R3f/R3r)である。
【0091】
このタイヤ対では、ミドル円弧指数Amがセンター円弧指数Acよりも大きく、ショルダー円弧指数Asがミドル円弧指数Amよりも大きい。
このタイヤ対では、旋回初期においてリアタイヤ42のキャンバースラストが下がる。このタイヤ対は車体の向きを変えやすい。
この旋回初期においては、リアタイヤ42の旋回性に対してフロントタイヤ2の旋回性が向上するので、車両はフロントタイヤ2が先行して旋回する。車両は、そのステアリング特性がオーバーステア傾向を示すことなく、旋回性を維持できる。
二次旋回においては、フロントタイヤ2の旋回性とリアタイヤ42の旋回性との差が小さく抑えられる。このタイヤ対では、良好な安定性が維持される。
旋回初期において十分に車体の向きを変えることができるので、車両は十分な旋回性を確保でき、二次旋回における旋回力の不足が補われる。これにより、車両は高い旋回性と安定性とを確保できる。
このタイヤ対では、旋回初期における旋回力が向上し、二次旋回における旋回性と安定性とが向上する。
このタイヤ対は、車両の旋回性を向上できる。
【0092】
このタイヤ対では、センター円弧指数Acは0.40以上0.60以下であることが好ましい。これにより、このタイヤ対では、旋回初期における旋回力が向上し、二次旋回における旋回性と安定性とが向上する。このタイヤ対は、車両の旋回性を向上できる。この観点から、センター円弧指数Acは0.50以上であるのがより好ましく、0.51以上であるのがさらに好ましい。センター円弧指数Acは0.58以下であるのがより好ましい。
【0093】
このタイヤ対では、ショルダー円弧指数Asは0.70以上1.10以下であることが好ましい。これにより、このタイヤ対では、旋回初期における旋回力が向上し、二次旋回における旋回性と安定性とが向上する。このタイヤ対は、車両の旋回性を向上できる。この観点から、ショルダー円弧指数Asは0.80以上であるのがより好ましく、0.83以上であるのがさらに好ましい。ショルダー円弧指数Asは、0.88以下であるのがより好ましい。
【0094】
このタイヤ対では、車両の旋回性を向上できる観点から、センター円弧指数Acが0.40以上0.60以下であり、ショルダー円弧指数Asが0.70以上1.10以下であることがより好ましい。
【0095】
前述したように、フロントタイヤ2において、断面幅の呼びに対するトレッド高さHfの比率は35%以上45%以下であることが好ましい。リアタイヤ42において、断面幅の呼びに対するトレッド高さHrの比率は30%以上35%以下であることが好ましい。
このタイヤ対では、車両の旋回性を向上できる観点から、フロントタイヤ2において、断面幅の呼びに対するトレッド高さHfの比率が35%以上45%以下であり、リアタイヤ42において、断面幅の呼びに対するトレッド高さHfの比率が30%以上35%以下であることがより好ましい。
【0096】
前述したように、フロントタイヤ2において、断面幅の呼びに対する第一円弧の半径R1fの比率が45%以上55%以下であることが好ましい。リアタイヤ42において、断面幅の呼びに対する第一円弧の半径R1rの比率が45%以上65%以下であることが好ましい。
このタイヤ対では、車両の旋回性を向上できる観点から、フロントタイヤ2において、断面幅の呼びに対する第一円弧の半径R1fの比率が45%以上55%以下であり、リアタイヤ42において、断面幅の呼びに対する第一円弧の半径R1rの比率が45%以上65%以下であることがより好ましい。
【0097】
以上説明したように、本発明によれば、車両の旋回性を向上できる、二輪自動車用タイヤ対が得られる。
【実施例0098】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0099】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えたフロントタイヤ(120/70ZR17)と、
図4に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えたリアタイヤ(190/55ZR17)とからなる、二輪自動車用タイヤ対を得た。フロントタイヤの断面幅の呼びWfは120であり、リアタイヤの断面幅の呼びWrは190であった。
この実施例1のフロントタイヤ及びリアタイヤはスリックタイヤである。フロントタイヤ及びリアタイヤのトレッド面には、赤道を交差する溝は刻まれていない。このことが、表1の「溝」の欄に「Y」で示されている。
【0100】
[実施例2-9及び比較例1-4]
フロントタイヤの第一円弧の半径R1f、第二円弧の半径R2f、第三円弧の半径R3f及びトレッド高さHf、並びにリアタイヤの第一円弧の半径R1r、第二円弧の半径R2r、第三円弧の半径R3r、断面幅の呼びWr及びトレッド高さHrを調整して、比(R2f/R1f)、比(R3f/R2f)、比(R1f/Wf)、比(Hf/Wf)、比(R2r/R1r)、比(R3r/R2r)、比(R1r/Wr)、比(Hr/Wr)、センター円弧指数Ac、ミドル円弧指数Am及びショルダー円弧指数Asを下記の表1及び表2に示される通りとし、実施例2-9及び比較例1-4のタイヤ対を得た。
実施例1、8及び9、並びに比較例1及び4のトレッド面には、赤道を交差する溝が設けられた。このことが表1及び表2の「溝」の欄に「N」で示されている。
実施例3及び4並びに比較例1のリアタイヤのタイヤサイズは200/55ZR17であった。比較例4のリアタイヤのタイヤサイズは180/55ZR17であった。
表1及び表2に示された構成以外は、実施例1の構成と同じ構成に設定された。
【0101】
[性能評価]
フロントタイヤ及びリアタイヤをそれぞれ正規リムに組み、空気を充填しタイヤ内圧を正規内圧に調整した。
フロントタイヤ及びリアタイヤを大型二輪自動車(排気量=1000cc)に装着した。ドライアスファルト路面のテストコースで二輪自動車を走行させて、テストライダーによる官能評価(10点法)を行った。
評価項目は、初期旋回性、過渡特性、並びに、二次旋回時の旋回性及び安定性である。
評価結果が、下記の表1及び表2に指数で示されている。数値が大きいほど良好であることを示す。
【0102】
【0103】
【0104】
表1-2に示されるように、実施例のタイヤ対は、車両の旋回性の向上に貢献できることが確認されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。